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活動期感染性心内膜炎の外科治療 帝京大学 心臓血管外科 講師 真鍋 晋

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Page 1: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

活動期感染性心内膜炎の外科治療

帝京大学 心臓血管外科 講師 真鍋 晋

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感染性心内膜炎 ↓

弁の感染症 ↓

① 感染の進展→敗血症

② 弁の破壊→心不全

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敗血症 ↓

心不全 ↓

弁膜症手術

内科治療

外科治療

±

菌塊の除去 人工弁置換

抗生物質 薬物治療

(利尿剤、血管拡張在、 カテコラミンなど)

Page 5: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

Drug ? Surgery ?

はたしてどちらが有効なのか?

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文献1 外科治療 vs. 内科治療

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12.1%

20.7%

入院死亡率(%)

外科治療 内科治療

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文献4 外科治療 vs. 内科治療

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文献4 外科治療 vs. 内科治療

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文献4 外科治療 vs. 内科治療

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手術のタイミング 手術はどの時点で行うのが有効か?

Page 12: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

薬が先か?

薬でコントロールがつかなければ、 どんどん状況が悪くなってしまう。

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手術が先か?

最近がまだ体内に残った段階で、 人工弁を入れないといけない。

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活動期感染性心内膜炎とは? “Operation before completion of a standard course of antibiotic treatment, irrespective of whether there were ongoing signs of sepsis, or whether blood and valve cultures were positive for the infective microorganism.” Ann Thoracic Surg 1997;63:1737

つまり、 規定の期間の抗生物質投与を行わずに実施する手術。

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文献1 活動期感染性心内膜炎の外科治療

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文献1 活動期感染性心内膜炎の外科治療

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文献1 活動期感染性心内膜炎の外科治療

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文献1 手術のタイミング

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入院死亡率(%)

早期手術 (<1週間)

後期手術 (>1週間)

15.0%

12.0%

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感染の再燃または弁機能不全(%)

早期手術 (<1週間)

後期手術 (>1週間)

16.0%

4.0%

Page 21: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

提言 1 初回入院期間中に手術治療を行うことは、治療成績を改善する可能性が高い。 • 初回入院期間中に外科治療まで行うことの是非ついては、すべての報告で結果が一致しているわけではない。

• 特に心不全、弁輪膿瘍、塞栓症では有用性が高い可能性がある。

Page 22: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。 • 単施設の後ろ向き試験における自己弁の活動期感染性心内膜炎の手術死亡率は7-10%。 • 移植した人工弁が感染する可能性は、7-14%。1年あたり2.1%。

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活動期感染性心内膜炎の外科治療

帝京大学 心臓血管外科 講師 真鍋 晋

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感染性心内膜炎 ↓

弁の感染症 ↓

① 感染の進展→敗血症

② 弁の破壊→心不全

Page 26: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

敗血症 ↓

心不全 ↓

弁膜症手術

内科治療

外科治療

±

菌塊の除去 人工弁置換

抗生物質 薬物治療

(利尿剤、血管拡張在、 カテコラミンなど)

Page 27: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

Drug ? Surgery ?

はたしてどちらが有効なのか?

Page 28: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

文献1 外科治療 vs. 内科治療

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12.1%

20.7%

入院死亡率(%)

外科治療 内科治療

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文献4 外科治療 vs. 内科治療

Page 31: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

文献4 外科治療 vs. 内科治療

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文献4 外科治療 vs. 内科治療

Page 33: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

手術のタイミング 手術はどの時点で行うのが有効か?

Page 34: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

薬が先か?

薬でコントロールがつかなければ、 どんどん状況が悪くなってしまう。

Page 35: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

手術が先か?

最近がまだ体内に残った段階で、 人工弁を入れないといけない。

Page 36: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

活動期感染性心内膜炎とは? “Operation before completion of a standard course of antibiotic treatment, irrespective of whether there were ongoing signs of sepsis, or whether blood and valve cultures were positive for the infective microorganism.” Ann Thoracic Surg 1997;63:1737

つまり、 規定の期間の抗生物質投与を行わずに実施する手術。

Page 37: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

文献1 活動期感染性心内膜炎の外科治療

Page 38: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

文献1 活動期感染性心内膜炎の外科治療

Page 39: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

文献1 活動期感染性心内膜炎の外科治療

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文献1 手術のタイミング

Page 41: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

入院死亡率(%)

早期手術 (<1週間)

後期手術 (>1週間)

15.0%

12.0%

Page 42: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

感染の再燃または弁機能不全(%)

早期手術 (<1週間)

後期手術 (>1週間)

16.0%

4.0%

Page 43: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

提言 1 初回入院期間中に手術治療を行うことは、治療成績を改善する可能性が高い。 • 初回入院期間中に外科治療まで行うことの是非ついては、すべての報告で結果が一致しているわけではない。

• 特に心不全、弁輪膿瘍、塞栓症では有用性が高い可能性がある。

Page 44: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。 • 単施設の後ろ向き試験における自己弁の活動期感染性心内膜炎の手術死亡率は7-10%。 • 移植した人工弁が感染する可能性は、7-14%。1年あたり2.1%。

Page 45: 活動期感染性心内膜炎の外科治療 - Teikyo-cvs提言 2 活動期に感染性心内膜炎に対して手術治療を行うことは、今なお高い手術死亡 率と、高い人工弁感染のリスクが危惧される。

帝京大学医学部心臓血管外科学講座ホームページ

http://www.teikyo-cvs.com/index.html

※このスライドは帝京大学で行っている CVS セミナーで使用しております。CVS セミナーは

心臓外科に関するレクチャーを毎月一回開催しています。心臓血管外科、麻酔科、循環器

内科を中心に、看護師、臨床工学技師、理学療法士など毎回 30 名前後のメンバーが参加

しています。下記のホームページより他のスライドもご覧いただけます。