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Staphylococcus capitisによる感染性内膜炎の 津久 純平 剛史、 平澤 康孝、 藤井 修、 幸、 井上 哲也 由佳、 真知、 下澤 信彦、 森澤 健、 崇史、平 泰彦 聖マリアンナ医科学 救急医学教室 はじめに 症: 78歳 考察 結語 本集中治医学会 COI 開 筆頭発表者名:津久 純平 演題発表に関連し、開すべきCOI関係にある企業などはありません。 Staphylococcus capitisはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulasenegative Staphylococcus )として知られている菌ではあるが、感染性内膜炎 (infective endocarditis ; 以下IE)の起因菌としては稀な菌である。 今回、弁置換後に発症したS. capitisによる感染性内膜炎を経験した。 現病歴搬送される前から37台の発熱を認めていたが発熱以外の症状が無いため経過観察 していた。その後38台まで上昇し、加えて悪寒・戦が出てきたため救急要請となった。 周囲に同症状のはおらず、ペット飼育歴や海外渡航歴などはなかった。 ワクチン接種歴:インフルエンザ毎 肺炎球菌ワクチン未接種 最近の科治歴:なし 病歴以外の熱に関連する陽性症状:頭痛、傾眠傾向 陰性症状:汁、頭痛、湿性咳嗽、呼吸困難、腹痛、下、排時痛、関節痛、背部痛 既往歴:胸部動脈瘤 動脈弁狭窄症 脂質常症 術歴:X1 上部動脈管置換術および動脈弁置換術 内服歴:アスピリン100mg 1錠分1 ビソプロロール2.5mg 2錠分1 エソメプラゾール20mg 1錠分1 ロスバスタチン2.5mg 2錠分1 アレルギー歴:特記事項なし 搬送時バイタルサイン 圧151/69mmHg 脈拍103bpm(NSR) 呼吸数24/分 体温39.4 SpO 2 94%(4L/min face mask) 体所 意:E3V4M6 苦悶様 頭頸部:貧無し 染なし 点状出無し 腔内リンパ節腫脹なし 扁桃腫脹なし 項部硬直なし jolt accentuationなし 胸部:呼吸清 左胸傍第4間を最強とする収縮期駆出性雑あり(Levine Ⅱ/Ⅵ) 腹部:平坦・軟 BS正常 明らかな局所の圧痛なし 背部:CAV叩打痛なし 四肢:疹なし Osler結節なし Janeway結節なし 神経所:脳神経ⅡXⅡ問題なし 筋:両上下肢 左右差なく共に5/5 反射:左右差なし 病的反射は認めず 院後経過 血算 生化学 白血球 11,800 /μL TP 6.8 g/dL Na 143 mEq/L 赤血球 4.72 10 6 /μL Alb 4.1 g/dL K 3.6 mEq/L ヘモグロビン 14.7 g/dL Tbil 0.7 mg/dL Cl 101 mEq/L Ht 44.0 % AST 39 IU/L MCV 93.2 ALT 37 IU/L 血糖 110 mg/dl 血小板 124 10 3 /μL LDH 273 IU/L 凝固 BUN 10.7 mg/dL CRP 2.78 mg/dL APTT 31.7 sec Cre 0.73 mg/dL PCT 0.13 ng/mL PTINR 1.01 pH 6.5 蛋白 潜血 沈渣 赤血球 14 白血球 14 細菌 円柱 細胞数 6 単核球 1 多核球 5 蛋白 48 クロール 125 66 検査 採検査 髄液検査 胸部レントゲン検査 胸部CT検査 臓超波検査 胸左縁短軸断像;動脈レベル 胸左縁軸断像 抗菌薬 10.1 X 8.5mm VCM GM RFP 液培養 3セット陽性 S.capitis day1 day3 day14 day19 day24 day32 day44 day56 左上下肢痺 頭部MRI検査 臓超波検査 胸部レントゲン検査 VCM:バンコマイシン GM:ゲンタマイシン RFP:リファンピシン 14mm フォロー液培養 2セット陰性 左協調運動拙 栓症状発症後も可動性のある 10mm以上の疣贅 経VCM O 2 (L/min) 246=======HFNC======43210 C.difficile toxin陽性 術中 HFNC:high Flow Nanal Cannula ネーザルハイフロー® lasix 疣贅消失 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 2 4 6 8 10 12 14 WBC(X10^3/μg) Cre(mg/dL) 35.0 35.5 36.0 36.5 37.0 37.5 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 発熱() S.capitisによる感染性内膜炎を内科的治のみで合併症を最限に抑えたを経験した。 S.capitisはヒトの常在菌で病原性は低く、物へ癒着する能がくないため、弁および弁のIEの起因菌としては稀である 1) 。わが国では齢者における有症状の 弁膜症への臓術が増加しており、弱毒菌である本菌も感染性宿主である齢者においては脅威となりうる 2) 弁置換後のS.capitisによるIEは診断後早期に術をうことで栓合併症を回避出来たという報告もある 2)3) 。本症でもS.capitisによるIEの診断がついていたことから、 早期術が最優先されるべきであったかもしれない。ただし内科的治のみで合併症が最限で済んだことを考えると、術耐性の低い症にはclose monitoringでの適な 抗菌薬治も考慮しうる。 1) Kamalakannan:Staphylococcus capitis Endocarditis:A Case Report and Review of Literature. Infect Dis Clin Pract 2004:12:314317 2) Tamaki Takano: Prosthetic valve endocarditis caused by Staphylococcus capitis: report of 4 cases. Heart Lung 2009:37:380384 3) Terada Y, Mitsui T, Enomoto Y: Prosthetic valve endocarditis caused by Staphylococcus capitis. Ann ThoracSurg 1996:62:324

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  • Staphylococcus  capitisによる感染性⼼心内膜炎の⼀一例例津久⽥田  純平、  川⼝口  剛史、  平澤  康孝、  藤井  修⼀一、  ⻄西⼭山  幸⼦子、  井上  哲也⾼高松  由佳、  柳柳井  真知、  下澤  信彦、  森澤  健⼀一郎郎、  和⽥田  崇史、平  泰彦

    聖マリアンナ医科⼤大学  救急医学教室

    はじめに

    症例例:  78歳  ⼥女女性

    考察

    結語

    ⽇日本集中治療療医学会  COI  開⽰示      筆頭発表者名:津久⽥田  純平    演題発表に関連し、開⽰示すべきCOI関係にある企業などはありません。

    ü  Staphylococcus  capitisはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-‐‑‒negative  Staphylococcus  )として知られている菌ではあるが、感染性⼼心内膜炎                (infective  endocarditis  ;  以下IE)の起因菌としては稀な菌である。

    ü 今回、⼈人⼯工弁置換後に発症したS.  capitisによる感染性⼼心内膜炎を経験した。

    現病歴:搬送される前⽇日から37度度台の発熱を認めていたが発熱以外の症状が無いため経過観察    していた。その後38度度台まで上昇し、加えて悪寒・戦慄慄が出てきたため救急要請となった。  周囲に同症状の⽅方はおらず、ペット飼育歴や海外渡航歴などはなかった。

    ワクチン接種歴:インフルエンザ毎年年  肺炎球菌ワクチン未接種最近の⻭歯科治療療歴:なし

    病歴以外の熱に関連する陽性症状:頭痛、傾眠傾向陰性症状:⿐鼻汁、咽咽頭痛、湿性咳嗽、呼吸困難、腹痛、下痢痢、排尿尿時痛、関節痛、背部痛

    既往歴:胸部⼤大動脈瘤  ⼤大動脈弁狭窄症  ⾼高⾎血圧  脂質異異常症      ⼿手術歴:X-‐‑‒1年年  上⾏行行⼸弓部⼤大動脈⼈人⼯工⾎血管置換術および⼤大動脈弁置換術

    内服歴:アスピリン100mg  1錠分1  ビソプロロール2.5mg  2錠分1  エソメプラゾール20mg  1錠分1  ロスバスタチン2.5mg  2錠分1アレルギー歴:特記事項なし

    搬送時バイタルサイン⾎血圧151/69mmHg  脈拍103bpm(NSR)  呼吸数24/分  体温39.4度度    SpO2  94%(4L/min  face  mask)⾝身体所⾒見見  意識識:E3V4M6  苦悶様  頭頸部:貧⾎血無し  ⻩黄染なし  点状出⾎血無し  ⼝口腔内リンパ節腫脹なし  扁桃腫脹なし          項部硬直なし  jolt  accentuationなし  胸部:呼吸⾳音清  左胸⾻骨傍第4肋肋間を最強とする収縮期駆出性雑⾳音あり(Levine  Ⅱ/Ⅵ)  腹部:平坦・軟  BS正常  明らかな局所の圧痛なし  背部:CAV叩打痛なし  四肢:⽪皮疹なし  Osler結節なし  Janeway結節なし

      神経所⾒見見:脳神経Ⅱ-‐‑‒XⅡ問題なし  筋⼒力力:両上下肢  左右差なく共に5/5  反射:左右差なし  病的反射は認めず  

    ⼊入院後経過

    血算 生化学

    白血球 11,800/μL TP 6.8 g/dL Na 143 mEq/L

    赤血球 4.72 106/μLAlb 4.1 g/dL K 3.6 mEq/L

    ヘモグロビン14.7 g/dL T-‐bil 0.7 mg/dLCl 101 mEq/L

    Ht 44.0 % AST 39 IU/L

    MCV 93.2 fl ALT 37 IU/L 血糖110 mg/dl

    血小板 124 103/μLLDH 273 IU/L

    凝固 BUN10.7mg/dLCRP 2.78mg/dL

    APTT 31.7 sec Cre 0.73mg/dLPCT 0.13ng/mL

    PT-‐INR 1.01

    pH 6.5

    蛋白 −  

    糖 −  

    潜血 −  

    沈渣

    赤血球 1-‐4  

    白血球 1-‐4  

    細菌 −  

    円柱 −  

    細胞数 6

    単核球 1  

    多核球 5  

    蛋白 48  

    クロール 125  

    糖 66  

    尿尿検査採⾎血検査 髄液検査

    胸部レントゲン検査 胸部CT検査

    ⼼心臓超⾳音波検査胸⾻骨左縁短軸断⾯面像;⼤大動脈レベル胸⾻骨左縁軸断⾯面像

    抗菌薬

    10.1  X  8.5mm

    VCMGMRFP

    ⾎血液培養3セット陽性S.capitis

    day1      day3                            day14            day19      day24              day32                        day44          day56

    左上下肢⿇麻痺

    頭部MRI検査

    ⼼心臓超⾳音波検査胸部レントゲン検査

    VCM:バンコマイシンGM:ゲンタマイシンRFP:リファンピシン

    14mm

    フォロー⾎血液培養2セット陰性

    左協調運動拙劣劣

    塞塞栓症状発症後も可動性のある10mm以上の疣贅

    経⼝口VCM

    O2  (L/min)    2-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒4-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒6-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒ç=======HFNC======è4-‐‑‒-‐‑‒3-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒2-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒1-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒0-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒

    C.difficile  toxin陽性⼿手術中⽌止

    HFNC:high  Flow  Nanal  Cannulaネーザルハイフロー®

    lasix

    疣贅消失0  

    0.5  

    1  

    1.5  

    2  

    2.5  

    3  

    0  

    2  

    4  

    6  

    8  

    10  

    12  

    14  

    WBC(X10^3/μg)  Cre(mg/dL)  

    35.0    35.5    36.0    36.5    37.0    37.5    38.0    38.5    39.0    39.5    40.0    

    発熱(℃)  

    S.capitisによる感染性⼼心内膜炎を内科的治療療のみで合併症を最⼩小限に抑えた⼀一例例を経験した。

    ü  S.capitisはヒトの常在菌で病原性は低く、異異物へ癒着する能⼒力力が⾼高くないため、⾃自⼰己弁および⼈人⼯工弁のIEの起因菌としては稀である1)。わが国では⾼高齢者における有症状の    弁膜症への⼼心臓⼿手術が増加しており、弱毒菌である本菌も易易感染性宿主である⾼高齢者においては脅威となりうる2)。

    ü ⼈人⼯工弁置換後のS.capitisによるIEは診断後早期に⼿手術を⾏行行うことで塞塞栓合併症を回避出来たという報告もある2)3)。本症例例でもS.capitisによるIEの診断がついていたことから、  早期⼿手術が最優先されるべきであったかもしれない。ただし内科的治療療のみで合併症が最⼩小限で済んだことを考えると、⼿手術耐⽤用性の低い症例例にはclose  monitoringでの適切切な  抗菌薬治療療も考慮しうる。

    1)  Kamalakannan:Staphylococcus  capitis  Endocarditis:A  Case  Report  and  Review  of  Literature.  Infect  Dis  Clin  Pract  2004:12:314-‐‑‒317          2)  Tamaki  Takano:  Prosthetic  valve  endocarditis  caused  by  Staphylococcus  capitis:  report  of  4  cases.  Heart  Lung  2009:37:380-‐‑‒3843)  Terada  Y,  Mitsui  T,  Enomoto  Y:  Prosthetic  valve  endocarditis  caused  by  Staphylococcus  capitis.  Ann  ThoracSurg  1996:62:324