希土類化合物の...

160
進呈 尊号、 三九2 東京大学博士論文 希土類化合物の 光電子、逆光電子分光 工学系研究科物理工学専門課程 8 7 1 3 0 指導教官石本英彦助教授 〈菅滋正助教授〉 1 9 9 1 3小川晋

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進呈 尊号、 三九2二

東京大学博士論文

希土類化合物の光電子、逆光電子分光

工学系研究科物理工学専門課程

8 7 1 3 0

指導教官石本英彦助教授

〈菅滋正助教授〉

1 9 9 1年 3月

小川晋

目次

第 1章序論

第 2章 光電子、逆光電子分光法

2 - 1 光電子、逆光電子分光法概観

2 - 2 光電子、逆光電子分光法の原理

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第 3章 光電子、逆光電子分光 (XPS-BIS)装置

3 - 1 装置の構成

3-2 設置製作

3 -2 - 1 電子銃

3-2-2

3-2-3

検出器

真空系

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3-2-4 コントロール及びデータ処理系

3-2-5 その他

3 - 3 装置の性能評価及びまとめ

付録 1

第 4章 希土類化合物の光電子、逆光電子スペクトル計算

4 - 1 序

4ー 2 モデル

4-3 計算結果の例

付録 2

付録 3

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第 5章 Ce (Pdt-XCUX)3の光電子、逆光電子分光

5-1 CeX3の物性

5 - 2 実験結果

5 -3 考 察

5 - 4 まとめ

82

82

85

97

112

第 6章 LnSb (Ln=La 、 Ce 、 Sm)の光電子、逆光電子分光

6-1 LnSbの物性

6 - 2 実験結果

6 - 3 考察

6 - 4 まとめ

第 7章 全体のまとめ

謝辞

図の一覧

参考文献

既発表論文

113

116

125

143

144

147

148

152

156

第 1章序論

希土類 4 f波動関数は、その大部分が閉殻 (5s5p) の内側にあり非常に局在

性が強いが〈図 1- 1 1】〉、希土類化合物ではしばしばそのエネルギー準位が

フェルミ面付近にあり、わずかながらもまわりのバンド電子と混成することに

よって、遍歴的な性格をもあわせ持っている。このように関内殻 (open inner

s he 1 1)であり局在性の強い 4 f電子を持つ希土類化合物は、 4 f電子の局在性

とそのエネルギーレベルがフェルミ面に近いことからくる不安定性とから、 4

f電子が絡んでいると考えられる種々の異常な現象が知られてきた 1• 2)。たと

えば、電気抵抗が高温で近藤的な振舞い〈抵抗極小がある〉をした後低温では

T2に比例すること〈高濃度近藤効果〉、電子比熱係数が異常に大きいこと〈通

常のアルカリ金属の 1000倍もある heavyfermion)、帯磁率が高温では

Curie-Weiss的な振る舞いをするのに対し低温では温度に依存しない Pauli-

para magnetic的な振る舞いをすること〈しかも x(0)が大きいこと)、格子定

数からは価数が整数と考えられる場合の中間的な格子定数の値が見いだされて

いること、光電子スベクトルには二つの異なる価数に対応する終状態が見える

こと〈価数揺動現象)などである。このほかにも、磁性と近藤効果の競合によ

って複雑な磁気構造が現れる場合や、重い 4f電子が超伝導を示すと考えられ

る場合もあり、多彩な物理現象が知られている。現在のところ、重い(電子相

関の強い) 4 f電 子 (heavyfermion) が結晶中を動き回るという描像がたてら

れているが、この描像は従来の遍歴モデル〈バンドモデル)と局在モデル〈ク

ラスターモデル〉の中間的な描像であり、理論的な取扱いが困難なだけでなく、

多体問題であるため直観的な理解も容易でない領域に属している。このような

強い電子相関をもっ系の研究は、電子相関の大きさとしては遍歴性の強い 3d

遷移金属化合物と局在性の強い希土類化合物の中間に位置すると考えられるア

クチナイド化合物にも研究対象は広がってきている。また、従来バンド的な描

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ポテンシャル〈クーロン+遠心力〉

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下図は各軌道の

を示す

像が良くなり立っていた 3d選移金属化合物の場合ら、電子相関が重要な役割

をはたしていることは最近の酸化物高温超伝導体の例をみても明らかである。

本研究では希土類化合物を例にとり、その 4 f電子がどのような電子状態に

あるのか、すなわち、 4 f電子のエネルギーレベル er、 4 f電子聞のクーロン

反発 Urr、 4 f電子とバンド電子との混成 Vを、固体中の電子の占有状態およ

び非占有状態を直接観測することのできる光電子分光法(x P S X-ray

photoelectron spectroscopy)及び逆光電子分光法 (B1 S bremsstrahlung

isochromat spectroscopy)を用いて実験的に評価することを目的とした。これ

らのパラメータは、希土類内殻の光電子スベクトルのサテライトに良く反映さ

れること、また逆光電子分光実験によって 4 f準位を選択的に観測するために

は crosssectionの 関 係 上 少なくとも-40eV以上のエネルギーの光を使わな

ければならないことから、本研究ではまず X線領域の光電子、逆光電子分光装

置の設計、製作、立ち上げを行った。ついで対象試料としては.Ce (Pdl・H

Cux) 3 (X=O. 0.017. 0.033. 0.067.0.133)および LnSb (Ln=La,

Ce, Sm) の系について実験を行ったo また、実験スベクトルの解析には

Anderson Impurity Model にもとづいてスベクトルの計算を行い、 εr、 Urr、

V等を評価するとともにモデルの妥当性についても考察を行ったo

本論文の構成は次の通りである。

第二章では、物質中の電子の占有状態及び非占有状態を実験的に観測するこ

とのできる光電子分光法および逆光電子分光法についてその原理について述べ、

ついで電子の遍歴性と局在性〈あるいは電子相関の弱い場合と強い場合〉がス

ベクトルにどう反映されるかを述べる。

第三章では xP Sおよび B 1 Sの装置の概略について述べるo 特に、逆光電

子分光法は信頼できる実験がされ始められてからまだ歴史が浅く (-1977年以

後)わが国にはまだ X線領域の B 1 Sの装置はなかったので、装置の設計、開

発について詳しく述べる。

第四章では、不純物アンダーソンモデルに基づいて光電子スベクトル(3d-

。5H'

XPS、 4f-XPS) および 4f-BISスベクトルの計算を行い、モデルハミルトニ

アン中のパラメータ〈 εf. Urr. Ucf. V 等〉がスベクトルにどのように反映

されるかを調べた。

第五章では Ce (Pdl・xCUx) 3、 C e R h 3について光電子、逆光電子ス

ベクトルを測定し、その電子状態を考察した。

第六章では LnSb (Ln=La, Ce, Sm) の光電子、逆光電子光電子

スベクトルを測定し、その電子状態を考察した。

第七章では、全体をまとめるとともに今後の課題、展望を述べるo

以上が本論文の構成である。

-4-

第二章 光電子、逆光電子分光法

2 - 1 光電子、逆光電子分光法概観

本節では光電子、逆光電子分光法について概観し、本研究の実験手段とした

X線領域の光電子分光 (Xp S )および逆光電子分光 (Xー B1 S)の位置づ

けをおこなう。

物質にその仕事関数よりも大きなエネルギーを持つ光を当てると、物質中の

電子は光電子として外部に放出される。光電子分光とは、この光電子の運動エ

ネルギー及び角度分布、さらに最近では光電子のスピンをも解析することによ

って物質中の占有電子状態の知識を得ょうとするものである。このいわゆる光

電効果自体は、 1887年Hertz3)やHallwachs4

)によって発見され、その後1905年

のEinsteinの光量子仮説引によって光の粒子性を示す大きな実験的根拠となり

量子論の発展の礎石となった訳であるが、光電子分光という分光法が確立され

てきたのは、 1960年代、 K.Siegbahn6)や D.W.Turner7

)らによって「高分解能J

の測定が行われ化合物を区別する能力ができはじめてからである (ESCA:

Electron Spctroscopy for Chemical Analysis)。最近では、エレクトロニク

ス、真空技術、強力な真空紫外光源〈シンクロトロン放射光源)、高分解能ア

ナライザーの開発等によって、単に元素分析に使用されるにとどまらず、電子

の占有状態の情報をえるための非常に強力な手段となってきているo

図 2ー 1に光電子分光の一般的な概念図を示すo 入射光のエネルギ -hν 、ア

ナライザーの仕事関数。 a、アナライザーによって測定される光電子の運動エネ

ルギー Ekとするとこの電子が固体中でどのようなエネルギー準位を占めていた

かの情報は

EAW

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DOS

Sample Analyzer

図 2- 1 ー電子描像における

光電子分光の概念図

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Ee = hν ーEk-φ ー

として求められる。これはちょうどフェルミ面からはかった電子の束縛エネル

ギーに相当するo すなわち、 hν を固定してEkをスキャンする、あるいは Ekを固

定してhν をスキャンしながら光電子放出強度を測定することによって、国体中

の電子の占有状態密度を反映したスペクトルがえられることになる。ただし、

ここで注意しておかなければならない点は、放出された光電子が始状態〈基底

状態)においてフェルミ面から束縛エネルギ-Eeのところに存在するという上

の描像は、周囲の電子系との相互作用が弱い遍歴的性格を持った電子にはよく

当てはまるものの、周囲の電子系と強く相互作用をしている比較的局在性の強

い電子には当てはまらないということである。このことについては 2ー 2で少

し詳しく述べる。

光電子分光は単色光源を使用するが、その光源のエネルギー領域によって現

在のところ大きくふたつに分けられている。ひとつは主として 1keV以上の特性

X線を利用した X線光電子分光でxP S (X-ray Photoelectron Spectroscopy)

と呼ばれているo 本研究では Al及び Mgを対陰極とした X線管を使用しており、

それぞれ 1486.6eV. 1253.6eVのエネルギーの光を取り出すことができるo も

うひとつは He放電管や真空紫外、軟 X線領域のシンクロトロン放射光源を使用

するもので uP S (Ultraviolet Photoelectron Spectrscopy) と呼ばれているo

He放電管では 21.2eV(He 1), 40. 8eV(HeII)のエネルギーの光を、またシンクロ

トロン放射光源では分光器により異なるものの 30- 130eV (ISSP SOR-RING

BL-2)の連続光を使用することができる o X P Sの利点は、

1 )内殻のスベクトルが得られる

2 )より Bulksensitiveな情報が得られる

3) 80-100eV以上の光に対しては 4 f電子のイオン化断面積 (cross

section)が他の状態よりも相対的に大きい

ことである。

内殻のスペクトルにはさまざまな始状態、終状態効果によってサテライトが

-7-

生じることがある。このため、さまざまな状態が複雑に混ざった valence band

のスベクトルよりも定量的な情報が得られることがあり、特に希土類化合物の

場合は 3d内殻スベクトルを解析することで多くのことがわかるようになって

きた。また光電子分光は光電子の平均自由行程によって probingdepth がきま

っており〈図 2-2 8 • 9 】〉、表面に非常に敏感な分光法でもある o しかし XP

sでは光電子の運動エネルギーが大きいので、より Bulksensitiveなスベク

トルが期待できる。希土類化合物の表面ではバルクとは異なった価数になって

いることがよくあるので、この点においても XP Sは有利である。図 2-3に

Ce灯油5pLa5d La6s Yb4fの計算されたイオン化断面積 (crosssection) を

示す 1目、 C eでは 4 f電子の cross section のピークは 60eVあたりだが元素

が重くなるにつれてこのピークは高エネルギー側にシフトしていき Y bでは 1

40eVあたりになる。 50eV以下の He放電管の領域では 5d6 s 、また化合物の場

合では相手の元素の軌道 (Sb5p)の cross section の方が大きくなり 4 fの情

報は埋もれてしまう。 XP Sの領域 (-1000eV) では全体的に crosssection

は小さくなるものの 4 fのcrosssectionは相対的に大きいので、選択的に 4

fの情報を引き出すことができるo しかし 100eV前後のエネルギーの光はシン

クロトロン放射光源でカバーできるし、 4d-4f共鳴過程を利用することにより

選択的に 4f状態だけを増大させることができる点、及び光源の強度が強いこ

とからくる分解能の良さなどの点から、 valencebandのスベクトルはシンクロ

トロン放射光源を使った方がよりよいスベクトルが得られる。

光電子分光では、占有電子状態(フェルミ面より下の状態〉の情報は得られ

るもののフェルミ面より上の非占有状態の情報は直接的には得られない。物質

の光学的性質、熱的性質、電気的性質などはフェルミ面の上下付近の電子状態

によるため、非占有状態の情報を得ることも非常に重要である。そこで最近注

目されてきたのが逆光電子分光法である。これは定エネルギー電子ビームを物

質にあて、その電子が非占有状態聞で双極子遷移するときの発光〈制動稿射〉

-8-

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図 2ー 2 光電子の平均自由行程8.9)

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photon energy (e V)

図 2-3 Ce4f Sb5p La5d La6s Yb4f

各軌道のイオン化断面積 1B)

ー10-

を観測することによって非占有状態の情報を得ょうとする手法である。これも

現在では入射電子の角度及びスピンを制御することによりより多くの情報を得

ることができるようなってきた。

物質に電子ビームを当てたときの制動幅射も、その発見は、 Rontgen11)が陰

極線のあたっている陽極から X線がでていることを見つけた 1895年にまでさか

のぼるo その後1915年、 Duane1れらによって電子の加速電圧 Vaを変化させる

ことにより、 X線単色計を使って制動幅射のしきい値hν maxが

hνmax=eVa+φ 〈φは陽極の仕事関数〉

と与えられることが示され、プランク定数が測定された。 1942年、このスベク

トルのしきい値近傍に陽極の材質固有の構造があることが Ohlinl3)によって指

摘され、 1946年 Nijboer14】はこの構造が試料〈陽極〉の非占有状態密度を反映

していると解釈した。 Oh1 i nl;{来この分光法は 8 1 S (Bremss trahl ung I so-

chromat Spectroscopy) と呼ばれている。しかしこの分光法が確立されてきた

のは、やはり超高真空技術や、電源の精度の向上などの周辺のエレクトロニク

ス機器の進歩を待たねばならず、 1970年代の後半になってからである。 1977年

Dos e 15)は、 hν=9.7eVを中心とする比較的狭いバンドパス特性 (-0.7eV)を

もっ検出器をCaF2結晶窓とガイガーミュラ一計数管を組み合わせることにより

工夫し、真空紫外 (Vu V)域での 8 1 S測定を可能にしたo X線領域(-15

OOeV)では、 1979年J.K.Lang16)らが結晶分光器を使って monochro-XPSおよび

BISのできる装置を発表している。

このように逆光電子分光法が光電子分光法の確立に比べてさらに遅れたのは、

光電子及び光子の収量の違いにある。逆光電子光電子放出の微分断面積は、遷

移確率及び放出粒子の状態密度を考慮すると

(u;/dD=(α/2丈)(ωi11lc2)(1/lik)jくfiz・fJji)l!:

と表される。一方、光電子放出の微分断面積は

dσidfJ=(α/2:=)(kj11l)(1/克ω)1くfiz・Pli)IZ

となる 17)。ここでdQは立体角、 ω=2Trνは光子の角振動数、 k.m. i. fは電子の

-11-

波数、質量、始状態、終状態を表す。また Fは電気双極子、言は偏光方向の単

位ベクトル、 αは微組構造定数である。したがって、逆光電子と光電子放出断

面積の比は

(dσ/ d!])iJl-.:ors:J/( do/ dQh.botoen:I!¥Slon

=ωtJ♂k'!.=q~/が= (i.~lcctron/ J.phO!Ol:):

となり電子と光子の波長の比の二乗になるo 電子及び光子のエネルギーはそれ

ぞれEe=1i2k2/旬、 Ep=賀cqであるから、この比はEp/2mc2となり扱うエネルギー

に比例することになる。 vuv領域の E=10eVで10・5、 X線領域の E=1000eV

で10・3となり、光電子分光に比べて著しく収量が小さくなるのである。

図 2-4に逆光電子分光の概念図を示すo 物質に入射された電子は、物質中

の電子を励起することによってエネルギーを失い散乱される非弾性散乱過程や、

エネルギーを失わずそのまま散乱されてしまう弾性散乱過程を経る電子もある

が、ここで注目しているのは、国体内波動関数と結合し、運動量及びエネルギ

一保存則を同時に満足するような非占有状態に直接遷移して光を放出する過程

であるo すなわち

E i (k ;)ー Er(kr) = hν

ki -kf = G + q

ここでEi. k iおよびEf. k fは、始状態及び終状態のエネルギー及び運動量、 G は

結晶の逆格子ベクトル、 q は光子の運動量である。 q は、真空紫外域 (hν~

10eV)では Gに比べて無視できるが X線領域 (hν-1500eV)では無視できな

い大きさになるため、 X線領域の逆光電子分光では終状態の運動量を見積もる

ことは難しくなり角度分解型の逆光電子分光はなされていない。さて,図 2-

4に示すように一定のエネルギーの光子だけを検出する測定モードを B 1 S (

Bremsstrahlung Isochromat Spectroscopy)モードというが、この方法は、入

射電子のエネルギーをスキャンしてその時の発光の強度を測定することにより

非占有状態の状態密度を知ろうとするものである。この場合も先ほどの光電

-12国

Energy

Vacuum level

。 empty states

Fermi level

DOS

図 2-4 逆光電子分光の概念図

-13-

子分光の場合と同じく、始状態の状態密度と考えて良いのはー電子的な取扱い

がよい s、 p状態などの状態に対してであり、本研究の研究対象である強い電

子相関を持った f電子系に対しては、一電子エネルギーレベルはもはや意味を

持たず、系全体のエネルギーレベルの変化を考えなければならない。一方、一

定のエネルギーの電子ピームを物質にあてたとき、その電子は非占有状態のい

ろいろなエネルギーレベルに幅射選移するわけであるが、この時の光子をすべ

て検出すれば非占有状態全体の状態密度がわかることになるo このような測定

モードを TP E ( Tunable Photon Energy )モードという o B 1 Sモードおよ

びT P Eモードの測定原理を図 2- 5 18)に示すo 現在のところ、このような装

置は Himpsell9)および Johnson2白》のところで VUV(10......30eV)のエネルギ

ー領域で実現されている(図 2- 6)。この TPEモードの逆光電子分光の利

点は、情報量が多いことである o すなわち、ちょうどシンクロトロン放射を使

った光電子分光のように、入射電子エネルギーを変化させながらそれぞれスベ

クトルをとることにより、 crosssectionの違いを利用して軌道対称性がわか

る可能性があることであるロまた、プラズモンや内殻励起を介した共鳴過程も

見つかっている 21.22】。しかし図 2- 3でも見たように、 4 f電子の cross

sec t ion は 50eV以下では他の軌道対称性を持った状態よりも小さいので、 10

-30eVのエネルギー領域では 4fのシグナルは埋もれてしまって見ることがで

きない。従って希土類化合物の 4 f状態を見るには少なくとも 100eV以上のエ

ネルギーの光で見る必要がある。ちょうど 100eV前後の光を分光するような光

学系を設計することがベストと考えられるが、この領域では反射率を稼ぐため

に斜入射型の分光系にしなければならない点、なるべく大きな立体角を稼ぐた

めに大きな回折格子を使用しなければならない点、検出器として position

sensitiveな二次元検出器を使用しなければならず周辺のエレクトロニクス機

器が非常に高価になる点などの欠点があるため、本研究では市販の分光器 (14

86.6eVの光を分光する〉を使用でき、検出器や電子銃が比較的安価にできる X

線領域の B 1 Sモードの逆光電子分光装置を製作した。装置については三章で

国 H国

BIS ( Bremsstrahlung Isochromat Spectroscopy) mode

clcctron bcam

Samplc

photon detector

electron energy

mon∞hromator

eO

Photon Jntenslly Density of Slates

TPE ( Tunable Photon Energy ) mode

S<lmplc

eleclron bCJm

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ド及び T l' EモードB

の測定原理 18)

-15-

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図 2- 6 TPE型逆光電子分光装置2目・ 21)

国 16-

述べる。 VUV(10-30eV) 領域の逆光電子分光では、先ほども述べたように

角度分解逆光電子分光、共鳴逆光電子分光、さらには入射電子のスピンを制御

することにより固体中の up-spinband及び down-spinbandが分離できるス

ピン偏極逆光電子分光などが試みられているが、その詳細を述べるのは本論文

の目的ではないので他の文献にゆずる 23)0 X線領域での逆光電子分光では、放

出光子の運動量が無視できない大きさになるため角度分解型の逆光電子分光は

先ほども述べたようにできない。共鳴現象を見るには TPEモードでなければ

できないわけであるが、現在のところ光学系が暗く SN比が悪いため成功して

いない。スピン偏極逆光電子分光はスピン偏極電子源が必要であるわけだが、

図 2- 3を見てもわかるように X線領域では VUV領域に比べてさらに cross

sectionが小さいためより高輝度〈数百 μA) の電子銃が必要になる。現在の

ところスピン偏極電子源から取り出せる電流は 1μA程度であるので、 X線領

域でのスピン偏極逆光電子分光は成功していない。 X線領域あるいは 100eV前

後のエネルギー領域でのこれらの分光法の確立は、将来の課題であろう。

-17-

2 - 2 光電子、逆光電子分光法の原理

N個の電子がいる系を考え、この系と高エネルギーの光子〈光電子分光〉あ

るいは電子〈逆光電子分光)との相互作用を考える。

系のハミルトニアンを H(N)、基底状態の多電子系の波動関数をゆo(N)、基底

状態のエネルギーを EdN) とすると

H (N)φG{N)=EdN)ゆG(N)

がなりたっている。

この系に光子あるいは電子を入射したときに起きる光電子放出あるいは逆光

電子放出の確率は、黄金律より

p = (2π/百) p {O 1 (f 1 H' 1 i) 12δ (Ei-E,)

とかける。ここで 1i).1 f) .Ei.E,は始状態、終状態及びそのエネルギー

を示すロ H'は外部の刺激による摂動項であるロ ρ(Oは、光電子放出の場合は

光電子の、逆光電子放出の場合は放出光子の終状態の状態密度である。これが

光電子放出と逆光電子放出では 10・3-10・5 程度違うことは 2- 1で述べた。

光電子放出の場合を考えると

i) = 1φG{N))

f) = 1φm{N-1)r/Jε〉

E = hν+ E dN)

E r =ε+ Em{N-1)

である o ここで φE、 εは光電子の波動関数及びエネルギーである。簡単のた

め系の仕事関数は無視しているo φm{N-1)、 Em{N-l)は N-l電子系の m番目

の固有状態及びエネルギーであるo したがって

H (N-I) o m (N-I) = E m (N-l)φ.(N-l)

が成り立っている。ここで注意しなければならない点は、終状態として観測さ

れるのは、あくまでも N-1電子系の固有状態であるということである。 N-

-18-

1電子系の固有状態 φm(N-l)は N電子系の基底状態(最低エネルギーの固有状

態)φG(N)とは一般にはかなり異なっているわけであるが、この点については

後で述べる。

ここで考えているような高エネルギーの遷移では、入射電子あるいは放出光

電子のスピードは非常に速いので、それらが系と相互作用する時間 τは非常に

短い〈 τ-10・15S)。始状態で φiという状態を占めている電子の光電子放出を

考える。 τ→ Oの極限を考えると、系にとっては φiの電子が突然消滅したよう

に見えるため、残された N-l電子系の波動関数は波動関数の時聞に関する連

続性より始状態の軌道〈 φG,r(N-l)、 fr:frozen)をそのまま占めていると近似

できるo これを突然近似 (suddenapproximation) というが実際この近似がよ

く成り立っていることがこれまでのスベクトル解析からわかっている。したが

って

1 i) = 1φG(N)) =φG ' r (ト1)) 1φd

と分離できる。

さて、 φGfr(N-l)は Nー 1電子系の固有状態ではないので観測可能量ではな

い。観測されるのは先ほども述べたように N-l電子系の固有状態 6バト1)で

ある。ここで φG,r(N-1)は、 N-l電子系の固有状態 φ111(N-1)の線形結合(

linear combination)で表されており

φGfr(N-l)= l: a mO冊 (N-1)

a m = (φm(N-l) IφG,r(N-l}) である。この終状態依 m(N-l}と放出された光電子 φε が相互作用しない〈これ

も突然近似である〉と仮定すると

I f) = Iφm(N-l}Oε) = Iφ 圃 (N-l}) 1 oε)

とかけるo 従って遷移確率の式は

P = (2π 11i)ρ(f) I (f I H' I i) I 2δ(Ei-E,)

= (2π/目)ρ(f)I (φm(N-1) 1φG,r(N-l}) (φεIH'IOi) 12

・O (hν-ε+ E G (N)ー E圃 (N-1) )

-19司

= (2π/1i)ρ(f) I a. I 2 I M i I 2δ( hν -e + E G (N)ー Em(N-1))

となるo ここで 1Mi 12はー電子の遷移確率であり、 2- 1で述べたイオン化

断面積 (cross section) に相当するo

観測量である束縛エネルギー EBは

E B= hν 一ε

= Em(N-1)ー Ea(N)

であり、基底状態を基準にしたときの Nー 1電子系のエネルギ一分布〈あるい

は一個のホールのエネルギ一分布〉を与える。

N電子系を取り扱うのにもっとも一般的な方法は H F (Hartree-Fock) に代

表されるような平均場近似を用いる方法であるo すなわち N-l個の他の電子

がつくる self consistent field の中を運動する N個のー電子問題に帰着させ

る方法であるo 今、このような系から e というー電子エネルギーレベルを占

める一個の電子を取り去ることを考えるo 非常に弱い電子相闘を持つ自由電子

的な性格を持つ電子系においては、この一個の電子を取り去った影響は非常に

小さいと考えられる。すなわち始状態である N電子系の基底状態は、i.jといっ

た始状態のラベルを維持しながら断熱的 (adiabatic) にN-l電子系の基底状

態に移ると考えられる〈図 2- 7)。つまり終状態 Em (ト1)はほとんど m=O の

N-l電子系における基底状態である。したがってエネルギーレベルの変化は

E B= E m(N-1) -E G(N)

= EHF(..(ni-1)..nj..)ー EGHF(..ni..nj..)

ここでniは iというー電子レベルを占める電子数である。

一電子エネルギーレベル εiに関して

E fr (.. (ni -1).. nj..) -E GHF (.. ni.. nj..) =一 εi

であるロ Efr(.. (ni-1)..nj..)はN電子系の基底状態 EG HF (. . n i . . nj . . )の各軌

道.. . i. . j. .を凍結して iの電子数を一個減らしたものである。 Efr(..(ni

-l)..nj..)はN-l電子系の基底状態ではないので

-20-

EgF(N)

εi

N electron system ground state

.#I#"#""#"'~"""'"

,."""""",,"""'"

",.,.",..,,,..,,.,.,.' .,. ".".,##...,'"

""""""""""""

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""""""""",.,.,,'

.,.".,. r.." ,,, #'.." .."".,..,. #'" r r,,,..,,

""'" rr." , ,.....,." ""..", ".

EHF(N_l)

0--

N・1elecron system ground state

図 2ー 7 N→ N-l断熱遷移

-21・・

E rr (.. (ni-1).. nj..) 孟 EH F (. . (n i -1) . . n j . . )

である。したがって

Es= EHF(..(ni-l)..nj..)ー EGHF (.. ni.. nj..)

塁王 E f r (. • (n i -1) . . n j. . ) ー EGHF(..ni..nj..)

=-e

ここで

Es--εi

とするのがクープマンの近似 (Koopmans approximation24】)であり、 s, pな

どの対称性を持つほとんど自由電子的なパンド電子に対してはよく成り立つこ

とが知られている。つまりこのような場合に限って、光電子分光での観測量で

ある Esが始状態での電子のエネルギ一一 εiを表しているといえるのである。

しかし、本研究の対象である希土類化合物のように強い電子相関を持つ電子系

に対してはそもそも平均場的なアプローチが余り良くないため、一電子エネル

ギーレベルというのはあまり意味を持たず、光電子分光で実際観測されるのは

Nおよび N-lの系全体のエネルギーレベルの差であるということである。

以上、光電子分光を例にとって考えたが、逆光電子分光についても Nー 1が

N + 1になること以外はほとんど同じなので省略する。

ここまで見てきたように、光電子、逆光電子スペクトルは、対象とする電子

系が自由電子的な性格を持つ場合はほとんど始状態の固有状態を表していると

考えてよい。また、電子相関が強くても完全に局在した電子系に対しては(例

えば core level )、 φ圃 (N-l)あるいは φm(N+1)といってもたかだか N-10個

( d )、 -14個(f )の電子系を考えればよいので、原子スベクトルと同様解

析は比較的容易である。解析が困難なのは、その中間の強い電子相関を持ちな

がら遍歴する電子系である。この場合は φm(N-1)あるいは φ飢 (N+1)として、フ

ェルミ面付近に electron-holepair を伴う励起や、プラズモンなどの索励起、

-22-

あるいは電荷移動に伴うサテライトなどさまざまな多体効果を伴った終状態が

出現し複雑なスベクトルが現れる。系全体の N-I023個の電子についてその

φm(N-l)あるいは φm(N+l)といった固有状態を求めることは現在のところ不可

能であるが、さまざまな試みがなされている。このことについては四章で述べ

る。

-23-

第三章 光電子、逆光電子分光 (XPS-BIS)装置

3 - 1 装置の構成

希土類化合物の 4 f電子系の研究をするには、図 2- 3の C eのイオン化断

面積からもわかるように 50eV以下のエネルギーでは他の軌道のcrosssection

( 2ー 2で述べた〈 φεIH' Iφi) )が相対的に大きいので〈図 2- 3 )う

まく 4 fの電子状態を見ることはできない。本研究では比較的安価にできる B

1 Sモードの逆光電子分光蓑置を、市販の結晶分光器(VSW社製、 1486.6eVの光

を分光する〉を利用して製作したo 基本的に必要な構成要素は XPSの場合、

X線管及び電子エネルギ一分析装置であるロ X線管は、 Al 及び Mgをアノー

ドとしており、それぞれ 1486.6eV (A 1Kα>. 1253.6eV(MgKα) の特性 X線を出

すことができる。電子エネルギ一分析装置としては DC M A (Double Pass

Cylindrical Mirror Analyzer) を用いたo ともに φ 〈ファイ〉の製品である。

B 1 Sの場合の基本的な構成要素は、高輝度高指向性電子銃、分光器、及び光

検出器である。分光器は先ほども述べたように VSW社の結品分光器を用いた。

電子銃及び光検出器については 3ー 2で述べるo 装置全体の仕様は次の通りで

あるo

A) X P S部分

1)X線管 (AIKα. MgKα 特性 X線)

2) D C M A (電子エネルギ一分析装置〉

3) X線管コントローラー(高圧電源、水冷ポンプ等〉

B) B 1 S部分

1)電子銃〈高輝度、高指向性、エネルギ一分散の小さい〉

2)結晶分光器

3)光検出器

-2(-

4)Mylar膜

5)mesh ( stray electronを防止〉

6)電子銃電源、検出器電源、 mesh電源、絶縁トランス

C) 測定系

1)パルスカウンティングシステム (pre-Amp.• Scal er & t i mer. 1 inear Amp.

等〉

2)コンピューター (PC-9800

3)電流計〈ビーム電流測定〉

D) 試料ホルダ一部分〈分析室〉

1)マニピュレーター (xy z可変及び回転〉

2)ファラデーカップ(ビーム電流測定用〉

3)蛍光板

4)クライオスタット

E) 試料準備

1)ファイラー

2)蒸着源

3)試料準備室及び試料導入装置

4)サンプルホルダー

F)真空系

1)イオンポンプ(分析室、分光器室)

2)ゲッターポンプ〈分析室〉

3)ターボポンプ、ロータリーポンプ〈全体排気用〉

4)真空ゲージ

5)マニホールド〈分析室と分光器室を結ぶ〉及びパルプ

6)荒引き用フレキシプルチュープ〈試料準備室一分光器室、試料準備室ー

ロータリーフィードスルー〉

G) その{也

四 25申

1)ベーキング用ヒータ〈テープヒー夕、シーズヒータ)及び電源

2)架台〈分析室、分光器、試料準備室〉

3)各種ケープル (BNC. HBNC. SHV)

図 3- 1に装置全体の概略の構成を示すo サンプルホルダーに取り付けられ

た試料は、試料準備室 (samplepreparation chamber)から試料導入装置〈試

料導入棒及びベローズからなる〉によって分析室 (analyzerchamber) にトラ

ンスファーされる。試料準備室はこの図にはあからさまに書いてはいないが、

分析室とパルプで仕切られており、分析室を超高真空に保ったまま試料準備室

をリークしてサンプルを取り替えることができるo 蒸着、およびファイリング

は主として分析室で行うがこの試料準備室でも可能である。試料準備室からト

ランスファーされたサンプルホルダーは、分析室中のサンプルホルダーにはめ

込まれる。 Analyzerchamberは、設計したものではなくありあわせのものであ

ったため、 X線管の取付口が offcen t erになっており、 B 1 S及びxp Sの

両方の測定を可能にするため分析室中のサンプルホルダーの回転中心は off

centerになっている(図 3- 1 )。すなわちサンプルホルダーを回転させるこ

とによって両方の測定が可能である。 X P Sの場合は、 X線管で発生した特性

X線が試料に当たり光電子を発生させるo この光電子は DCMAによってエネ

ルギ一分析をされ、増幅、パルスカウントされてコンビューターに取り込まれ

る。一方 B 1 Sの場合は、電子銃からでた電子がサンプルに当たり、この時の

発光を結晶分光器で分光する。 X線領域の分光器としては一般に X線の Bragg

反射を利用した結晶分光器が用いられている。この分光器は、 quartz (10IO)

面の Bragg反射(Bragg angle 78.5・)を利用して 1486.6eVの光を分光

するものであるo この分光器の構造は Johanntype といわれており 25)、試料、

結品、検出器はローランド円〈直径 700mm)上にある(図 3ー 2)。すなわち

ローランド円上にある発光点(試料〉からの発光は、ローランド円上の検出器

に集光する仕組みになっている。また、 S/N比をよくするためには、できる

自 26-

schen1atic vievv of XPS and BIS systen1

sample

quartz crystal

(1010) surface

Bragg ang le = 78.5。

hv = 1486.6eV

rotatable baffles

図 3ー 1 装置全体の概略

申 27-

E-gun

Csl evaporated plate

ceratron

(700mm diameter)

X.RAY SOURCE

___CRYS7瓦L

日戸aM

門パ「しV

llD

N

A

fL

W

O

R

図 3-2 ロM ンド rJ

-28‘

だけ大きな立体角で集光することが有利となるが、この分光器では Quartz の

湾曲結晶をたくさん張り合わせることにより最大で O.1 sr.の立体角を実現して

いる〈図 3- 3 )。また、発光点と集光点の大きさは、ほぼ 1 1になってい

るo この分光器の分解能は、光源の幅にある係数をかけたものになっており、

その係数は

dE/dX =ー E/Rtan ()

と表される 25.26】。ここで Eはフォトンのエネルギ一、 Rはローランド円の直

径、。は Braggangleである(付録 1) '0 この分光器の場合、

E = 1486.6eV

R = 700mm

。=78. 5。

であるので分光器自体の分解能は O.43eV/mm となるo 分光器の分解能が、光源

〈電子ビームのスポット〉の幅にのみ依存し長さに依存しない為、明るくしか

も分解能をよくする為には電子ビームのスポットは矩形状にした方がよい事が

わかる。電子銃については 3-2-1で述べる。図 3- 1中にある rotatable

baffle板は、迷光を抑えるためのものである。 Bragg反射された 1486.6eVの光

は光検出器でパルスカウントされる。検出器部分については 3-2ー 2で述べ

る。また分析室と分光器室の聞は Mylar (polyethylene tetraphtalate)の膜が

あるが、これはパックグラウンド光を防ぐ為のものである (3-2-2)0 こ

の膜は、分析室と分光器室を真空的に遮断することによって分析室の真空をよ

りよくするとともに、ファイリング等で生じた分析室中のゴミが分光器室に入

り込み結晶表面を痛めることを防いでいる。また、 Mylar膜の前、及び検出器の

前には meshがあり、 -lKeV程度の電圧をかけることにより strayelectron が

検出器中に入ってくることを防ぐとともに、 Mylar膜の高エネルギー電子による

損傷を防いでいるo

-29-

図 3- 3 結晶分光器の写真

-30-

3 - 2 装置製作

3 - 2ー 1 電子銃

X線 B 1 Sの電子銃として使えるためには、いくつかの条件を満たさなけれ

ば白ならない。

1) X線領域においては 2- 1でも述べたように電子の稿射遷移の cross

sectionが非常に小さいため、 100μA--1 mA程度の電流がとれなければならな1.'0

V--1500Vで 1--1mAの電流をとる場合、パーピアンス Pは

P=I/Vレ 2= 1. 7判。-8 AV・3〆2

となるが、通常の LEED/Augerの電子銃は P-10・げであり、不適である。

2 )できるだけエネルギ一分散の小さい等色電子ビームでなければならない。

TVの電子銃等、 W フィラメントを用いているものはフィラメント部分におけ

る電圧降下によるエネルギ一分散や、フィラメント温度が高い(-2000.C) こ

とからくる熱電子のエネルギ一分散 (-0.6eV)の為、不適である。

3 )ビームスポットの大きさがサンプルよりも小さく、 しかも分光器の特性を

生かすものでなければならない。

以上が主な要請である。現在のところ、以上の要請を満たす一番ょいと恩われ

る電子銃は BaOの傍熱型カソードを用いた cylindricalPierce type gun 26

• 27)である。

Pierce gunは、平行に進む電子ビームをまず考え、その空間電荷(電子ビー

ム〉のつくる電場を見積もり、その等電位面に沿った電極をつくることにより、

逆に平行に進む電子ビームがえられるだろうという充足!に基づいたものである

(図 3-4 )。この電子銃は、比較的大電流がとれ、平行性、集束性のよいビ

ームがえられることで知られている。 Pierceの論文 27)がでた後、 Piercegun

については種々の論文がでており 28.29)、目的に応じた Piercegunが設計で

-EA

の気H

w .之

0..

0.1

.0.1

a-sa・

3

2

8

a

o

a

a

a

(J4)

ミωaEESSE凶

υミ恒例石

1.'

平行電子ビームの作る電場 28.29)

-32-

1.2 1.。「I-I_~I II\-

図 3-4

...o.e

Z.O

t

a

'

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a

2

o

e

-

-

z

c

a

t

L

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z・2d‘ωω

Oωο

。W20g也

ωuzdt“・0.2

.0.4 -1.。

1..

きるように parameter set が与えられている。

1 )の要請は Piercegun を用いることで満たすことができる。 2)に関し

ては BaO の傍熱型カソードの使用、及びカソードからサンプルすなわちビーム

の焦点までの距離を短くすることが有効だと考えられる。傍熱型カソードでは、

カソード自体の電位を一定に保つことができるため、フィラメント型のように

電圧降下を生じることはない。また、 BaO カソードは比較的低温 (-800.C) で

熱電子を放出するので、熱電子のエネルギ一分散 (-O.25eV) も小さい。また

カソードからサンプルまでの距離が長いと、電子ビーム中の電子間クーロン反

発により電子のエネルギーがぼけるので、なるべくこの距離を短くするように

設計した (--23mm)。また同じ理由から、点状のスポットになる spherical

type よりも矩形状のスポットになる cylindrical type にすることで、集束さ

せすぎることでのエネルギ一分散の悪化を防いでいる o cylindrical type とは、

電極を円筒状にすることで一方向にのみビームが集束するようにしたものであ

り、矩形状のビームスポットがえられる o このことは 3- 1で述べた分光器の

特性とも一致しており、 3)の要請をも満たすものである。

現在使用している電子銃を図 3- 5、図 3- 6に示す。この電子銃のパラメ

ータは

re/ra= 2.0

r c 20mm cathode radius

r a 10mm anode radius

BaO cathode diameterφ 1. 5mm

anode hole o 1. 5mm

である。 rc/ra= 2.0 としたのはこの付近で平行性のよい絞れたビームがえ

られるためである(図 3ー 7) 28)。また anodeholc は焦点距離が次の式で表

8れる発散レンズ効果を持っている U30

f=-4V/ V'

ここで Vは印加電圧、 V' は anodehole での cat h od e側の電圧勾配である o

-33-

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U且

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U

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-34-

図 3-6 cylindrical Pierce type gun

の写真

-35-

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F

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tγ'日山.戸......γ 1 い εU s

the emerging electron stream for various rc/ra

図 3ー 7 ビームの rc/ r a依存性 28)

-36-

従って anodeholeからの焦点距離は

l/F=l/fa-V' /4V

で与えられる。この電子銃の場合、

fa = 10mm

V 1500eV

V' = 150eV/mm

であるので、 F- 13.3mm、すなわちカソード表面から焦点までの距離は--23

mmである。これは実測値とほぼ同じである。

焦点での実測したスポットの大きさは -0.8宇3mm2 である。電流は 1500Vで

lmA以上とることが可能であるが、測定中は electronstimulated desorption

により分析室中の真空度が悪くなるため、試料表面の汚れを防ぐために通常

300μA以下で使用している。

以上 Piercegun について述べたが、この電子銃は比較的作りやすくしかも

安価であり、 電子レンズ系を使用しないため必要最小限の電源で動作させるこ

とができるという点も長所ではないかと思われる。

3 -2ー 2 検出器

検出器部分は、図 3ー l、図 3-8に示すように、 photoelectronemitter

としての CsI を蒸着したステンレス板と、その photoelectron をパルス計測

するセラトロンからなっている。ステンレス板、セラトロン前段及び後段に 電

圧をかけることができるようになっている。ステンレス板からでた光電子は効

率よくセラトロンにはいるように、セラトロン前段はステンレス板よりもプラ

スの電位になっている o この二者の電位は微妙に S/N比に影響するが、現在

は、

CsIステンレス板 -20V

-37-

図 3-8 検出器部分の写真

-38-

セラトロン前段 OV

セラトロン後段 2400V

で使用している。

この矩形状の Csl を蒸着したステンレス板は、そこに当たった光子のみを検

出するという意味でスリットの役目もはたしている o しかし、 Csl は可視光不

感 (solarblind)ではあるものの、 100oiよりも波長の短い光に対して数十%

の photoelectricyieldがあるため 31) (図 3-9 )、このままではかなりの

パックグラウンドが乗ることになる。なぜなら、この領域の光の結晶表面での

鏡面反射を無視できないからである。この領域の光のパックグラウンドを抑え

るために、この領域の光を吸収する Mylar(polyethylene tetraphtalate )膜

〈図 3- 1 )を使用しているが、薄い Alfilmを使用しているグループもある。

この Mylar膜については、高エネルギー電子が当たることにより変色して吸収

特性が変わり、 1486.6eVのシグナル光まで吸収してしまうことが装置のたち上

げの過程で判明したため、この Mylar膜の前に meshをはりー1keV程度の電圧

をかけることにより、分析室中の二次電子が当たることを防ぐようにした。

〈ここでこの meshにー2keV程度の電圧をかけると、逆に Mylar膜から脱ガス

が起こり真空度が急激に悪くなった) この mesh は、検出器の前にもいれて

おり、分光器室中の浮遊電子(後に分光器室についているイオンポンプがノイ

ズ源であることが判明した〉が検出器に入り込むことを防いでいる。以上、光

及び電子のパックグラウンドを最小限に防ぐことで、現在のパックグラウンド

は-0.3counts/sである。

3-2-3 真空系

真空系の構成を図 3- 1 0に、装置全体の写真を図 3-1 1に示す。分析室

と分光器室は 3ー 1で述べたように Mylar膜で仕切られているので、排気のた

-39-

100

10

EZC同コO

~-Mi山川m ~....、peak /'

response

(民)huC町一U一之副

0.001 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

Wavelength (A)

100

90

長 80

てコ

ま70

t包 60

-o o ag

5: 50

30 600 700 800

Wavelength (A)

900 1000

図 3-9 C s 1の photoelectricyield31)

-40-

Leak valve

Manipulator

Sample preparatlOn chamber Sample

transfer system

D& mいり

ULH

nyハU

n4

0官

i

YEA

,,‘、

Ti getter p山np

Vacuum system

図 3ー 10 真空系の椛 !;A

-41-

-圃園田園圃

図 3ー 11 装置全体 の写真

-42-

めに分析室と分光器室は別の口でつながっていなくてはならない。この口には

パルプがついているが、測定中は分析室の真空度をあげるために閉じている。

分析室には、排気速度 140l/sのイオンポンプおよびチタンゲッターポンプ、

分光器室には排気速度 601/sのイオンポンプがついているo 荒引きは試料準備

室を通じてターボポンプ及びロータリーポンプによって行う。超高真空にあげ

るためにはチェンパー全体のベーキングが必要であるが、 Mylar膜部分及び分光

器の結晶部分は温度が余り高くなりすぎないような注意が必要である (-800C)

。ベーキング等により、分析室の真空は-5*10・11Torrまであげることが可能

である o X P S測定時 (X線管 300W運転時〉は-1*10・1日Torr、 B1 S測定時(

電子銃150μA運転時〉は-5*10・11ilTorrであるo B 1 S測定時は真空度が若干悪

くなるので、表面が酸化し易い試料の場合は、分析室中でこまめにファイリン

グすることにより試料表面を清浄に保つようにしている。

3 - 2 -4 コントロール及びデータ処理系

図 3ー 12にコントロール及びデータ処理系のダイアグラムを示すo X P S

の場合、 DCMAの内簡にかける retardat ion電圧をスキャンするわけである

が、これはコンピ品ーター (PC-9801)の 16bitD/Aコンパーターを通じて

高圧電源 KEPCOAPH2000Mをドライプすることで行っている。 B1 Sの場合は、

cathode electrode (図 3-6 )にマイナスの電位をかけてスキャンするわけ

であるが、これも同様であるo ただしこの時、電子銃のヒータ一部分も~ー1.5

KVに浮いてしまうため、ヒーター電源の破損を防ぐためにヒーター電源自体は

絶縁トランスによりグランドより浮いている o D C M Aのチャネルトロン (X

p S )またはセラトロン(B 1 S)からのパルス電流は、 pr・e-Ampにより電圧に

変換及び増幅されるo この信号は 1inear-Ampでさらに増幅され discriminator

によりノイズ部分がカットされた後、 scaler-timerでカウントされる。

-43司

L

X-raymon∞hromator

匂erationa1HV pow釘 suplly(KEPCO APH2∞OM)

Comouter (PC 9801)

Control diagram

図 3- 1 2 コ ン ト ロ ー ル 及 び デ ー タ 処 理 系

のダイアグラム

-(4-

この scaler-timer は GP 1 Bを通じてコンビューターによる制御されており、

その出力は同じく G P 1 Bを通じてコンビューターに取り込まれる。

3-2ー 5 その他

低温での実験を可能にするために液体窒素用のクライオスタットを製作した。

クライオスタットの先端部以外は上部からの熱伝導を抑えるためにステンレス

でできているが先端部はサンプルとの温度差を小さくするために熱伝導のよい

銅でできている。またこのステンレスと銅の接合部分は、それらの熱容量の違

いから Ar溶接ができないため、 Jox-Joint という熱圧着の方法で接合しである。

その先端部分のサンプルホルダーの様子を図 3ー 13に示すo 液体窒素をいれ

てクロメルーアルメル熱電対によりサンプル部分での温度を測定したところ~

130K まで冷えることがわかった。またその時、真空度-5*10・llTorrで XP S

が測定できる。

3-3 装置の性能評価及びまとめ

X P Sの場合、装置の分解能は、光源の自然幅および光電子エネルギ一分析

装置の分解能によって決まっている。光源の AIKα(1486.6eV>. MgKα (1253.6

eV)特性 X線の自然幅はそれぞれ -leV-0.8eVである。 AIKα 特性 X線の場

合は、 B 1 Sで使用する X線分光器によって単色化することにより分解能をあ

げることが可能であるが、この装置では Analyzer chamber (order-madeでは

ない〉の構造上 monochro-XPSおよび BlS を同時にすることは困難であるので、

この点については今後の課題であるo 0 C M Aの分解能 (AE) は pass-

energy ( E )で決まっており、

-45-

liq.N 2 cryostat

stainless

,/! jox-Joint

Cu

sample holder

図 3- 1 3 クライオスタット先端部

-46-

II E / E --1/100

である。本研究では E= 85 eV及び 42.5eVで使用していたので IIE --0. 85eV及

び0.425eVである。したがって total の分解能としては O.geV-1. 3eVである。

B 1 Sの場合、蒸着した金のスペクトルを図 3-14に示すo フェルミエッ

ジを、ガウス分布型に幅をもたせた階段関数で、最小自乗法により実験スベク

トルに合わせてみると、 GaussianF.W. H.Mは 0.71eVとなるので(図 3ー 14)

、分解能は--O. 7eVと考えられるo パックグラウンドは前にも述べたが -0.3

coun ts/sec、 シグナルの大きさは金のフェルミエッジ直上で--15coun t sl sec、

希土類化合物の 4fのピークで 20--30counts/sである。

以上この章では XPS-BIS装置及び現在の性能について述べたが、その

立ち上げの過程で苦労し、また現在もなお問題点として残っていることは、 s

/N比および真空度をあげるという事である。 backgroundについては光、イオ

ン、電子の三つが考えられるが、これらはこれまで述べたようにその源を追求

し、 meshを 3枚入れる事によってかなり小さくなっているが、一枚のmeshの透

過特性が 90%であるためシグナル強度も落ちているo この事は測定上、試料表

面の安定度と深く関連しているので、真空度をあげる事も同時に非常に重要で

ある。真空度の悪化の原因として、特にサンプルホルダー付近からのElectron

stimulated desorptionがあるため、サンプルホルダ一周辺にmeshを張り、集

中的にサンプルホルダー付近から脱ガスさせることも試みた。また、特に試料

を固定するための supervac sealからの脱ガスが大きい事が判明したため、

直接電子ビームが当たりそうな部分はやすりで削り落とすようにしたo これら

の事により若干の効果があったが現在のところ十分であるとはいえない。この

ことは今後の課題でもある。

-47-

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • " • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

BIS Au

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

Gaussian

FWHM=O.71 eV

aF S

F

¥a,

d'

aF

, ,

dF

J' ,

(ωtcコ.2」何)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

.・..-..-.寸ーア可

1 2 1 0

(eV)

8 6

Energy above E F

図 3- 1 4

4

B 1 S

2 。

Au

-48-

-2 -4 -6

付録 1

光源が dXずれたときの Bragg反射する光のエネルギーのずれを dE とする。

図 3- 1 5に示すように、ローランド円の半径を r、直径を R、 Braggangle

のずれを d8、結晶の格子定数を d とすると

dX = 2 rd 8 = Rd 8

2dsin8 = nλ

が成り立っているo したがって

2 d cos e d 8 = ndλ= -nhc/E2 dE

、‘,,,、‘.,,

-

E

A

a

F

,,E・、,,a

‘、

、‘,,の‘“.

,,.‘、

よって

2 d cos e /R dX = -nhc/E2 dE

2 d = nλ/si n e

(3' )

(2' )

より

dE/dX =ー E/Rtane

が成り立つ。

-49-

Rowland circle

図3- 1 5 結品分光器の分解能

-50国

第四章 希土類化合物の光電子、逆光電子スペクトル

4 - 1 序

第二章で述べたように物質中の電子のエネルギー準位は、占有状態に関して

は光電子スベクトル、非占有状態に対しては逆光電子スベクトルで調べられる

が、種々の希土類化合物において単純な一体的描像では理解できないスベクト

ルの異常が見いだされているo その解釈を発端に、電子相関の強い f電子系 の

光電子、逆光電子、吸収スベクトルなどに反映される多体効果の研究が1980年

代を通じて盛んになり、固体物理学における一つの主要なテーマとなってきて

いるo またこれらの研究を通して、逆にこれらの実験スベクトルからモデルハ

ミルトニアンのパラメータを見積もろうという試みもなされてきているo ここ

でいうスベクトルの異常とは、例えば光電子スペクトルにおいては、内殻スベ

クトルに伴うサテライトの問題〈図 4ー 132') 、また特に Ce化合物において

価電子帯スペクトルにおける 4f成分が 2ピーク構造を持つ事〈図 4-233')

である o また X線吸収スベクトルにおいても吸収端よりも小さなエネルギーの

ところに吸収ピークが現れる(図 4-334') ことが知られている。図 4- 3は

L a金属の 3dXPS, 3dXASを示している。 3dXPS における光電子ピークの束縛

エネルギー (bindingenergy EB) は、フェルミ準位と 3d内殻準位とのエネル

ギー差〈以下フェルミ端エネルギーと呼ぶ〉であるわけであるが、 3dXAS

のピークはこのフェルミ端のところに構造を持たず、これより -2eVほど低エ

ネルギー側に鋭いピークを持っていることがわかる o

内殻の光電子スペクトルあるいは光吸収スペクトルについては特に Ln3d内殻

について実験及び解析が精力的に行われている (Ln4d内殻の場合には、 4d-4f

波動関数の重なりが主量子数が同じであるため大きく 4d-4fクーロン・交換相

互作用が大きくなるので、 4d-4f多重項分裂が無視できなくなり多重項を考

-51-

'‘-、t!lt I .;^'~ ,,)-正OC1 . ~,

山川地訴 wtAE.- fA、': j 片、;-¥‘ '-O.- ~CeNし

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512 " f:-A

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」 lLce92百 880

BE (c:V)

XPS Ce 3d

〉」

F-凶Z凶」

Fz-o凶N

コ4ZEoz

Ce3d XPS

920

Ce 3d XPS ofCe-Ni compounds

トルの例 32)スベクe o r

-52-

c

BE

Ce 3d XPS of Ce-Pd compounds

3 d C e 図 4- 1

-、ー一

一 Jf 、J¥・.1.,.. ..... ,.--.、一/. :、,一

ノょ 1一一/ノ Jdhvl¥ー

4 /. J t

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CeRU2

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1

、一ーー

CeOS2

CeCo2

CeNi2

(ω之Cコ弘』伺』

ZD』の)〉ト一

ωzuトZ

CePd3

CeSi2

CeAI

O

ENERGY BELOW EF (eV)

5 10

4 f光電子スペクトル

の例 33)

C e

(共鳴光電子分光)

-53-

図 4-2

;__fO i-f。

---¥~ーノ ;_(1

ー『、、、

LJIJ1

{同

MW}UU凶

kA』

O』】一円以』

O)

〉LF

一ωZU』Z

850 u E (eV)

Comparison of the XAS and ~"PS spcctra of La in the region of the 3d lines. The indi¥'idual multi-plet lines of the calculated curve ha¥'e been broadened by only ..... 0.1 eV. The multiplet terms that c::tn be reached in XAS are labeled with arrows.

図 4-3 X A S 34> 3 d X P S, L a金属の 3d

-54-

860

慮したモデルでの解析が必要となるo 一方 Ln4s内殻の場合は 1=0 であるため、

4s内殻hole のスピンの向きに応じて 4f電子との交換相互作用による二本のピ

ークだけが現れ、そのエネルギー差及び強度比より 4 f電子スピン、交換相互

作用の大きさを求めることができる 35)) 。

前述した Ln3d内殻のスベクトルの異常は、初め L a化合物で見つかった 36)。

すなわち、

1 )光電子ピーク位置から推定されるフェルミ端には吸収スベクトルに構造

がみられない。

2 )フェルミ端よりも低エネルギー側に鋭い吸収ピークが観測される o

3 )光電子スベクトルにはサテライト構造がある。

ということである〈図 4-334り o これらの実験結果は単純なー電子描像では

理解できない。なぜならフェルミ端以下への光選移はパウリの排他律によって

禁止されているからであるo また Laの基底状態では 4 f電子は存在しないた

め、光電子スベクトルにおけるサテライトを交換分裂によるものとすることは

できない。この吸収ピークの異常及びサテライトの分裂の機構については A.

Kotani and Y. Toyozawa37 • 38 ) によって与えられたo 3d XAS (XAS X

-ray absorption spectrum) では、 3d内殻電子が4fあるいは伝導帯に光励起さ

れるためその終状態においては 3d内殻にholeが残される。すると内殻正孔の引

力ポテンシャル(ー Ufc) によりそのサイトの 4 f準位は引き込まれて εFJ;{下

〈εr=ε 円一 Ureεf目は始状態での 4 f電子のエネルギー準位〉にまで低

下する。もしこのレベルに電子が励起されれば、 3d電子が εFに励起されること

に対応したフェルミ端よりも低エネルギー側に鋭い吸収ピークが生じることに

なるというわけである〈図 4-439))0 一方光電子スペクトル中のサテライト

の生成原因としては、 3d内殻に hole があいたとき、同様に 4 f電子のエネル

ギー準位(e r目〉は 3d内殻hole と4 f電子とのクーロン相互作用(U , e) だ

け引き下げられるが、この時 c-f混成相互作用(cは伝導電子、価電子など

のバンド電子を表す〉により 4 f電子数の異なる終状態が現れる為とするも

'hHV

P町HV

-・ト ~

-E;

4・Ec

( 0 )

EF'

ー‘w 222J

( b)

Es

図 4-4

のJqk

の仏)へ

3 d X A Sの吸収ピークの生成原因 39)

-56申

のである。すなわち、ひとつは引き下げられた 4f準位〈 ε=ε 円一 Ur c) に

バンド電子が飛び込んだ 3d94fl終状態でサテライトを与え( well screened

state)、一方メインピークのほうは B rが空のままの 3d9(f1!l終状態 (poorly

screened state) であるというものである。始状態において4f1!l. 4ft 状態が

混ざっている Ce化合物については、(f日始状態に対しては(fl!l. (fl 終状態が、

4fl始状態に対しては4fl. (f2 終状態が現れることになり 3ピークが現れるこ

とになる〈図 4ー 1) 0 このおおまかな様子を図 4-5に示す。 3d内殻hole の

エネルギーを εc(内殻holeのスピンが S= 1/2であるか S=ー1/2であるかによ

って J=IL+S I-IL-S Iすなわち J= 5/2. 3/2のスピン軌道分裂をおこ

す)、 4 f電子のー電子エネルギーを εr、内殻hole と4 f電子とのクーロン

相互作用〈引力相互作用)を Ufc、 4 f電子聞のクーロン相互作用〈反発力〉

をU"とする。すると 3d94f1!l. 3d9(fl. 3d9(f2 といった終状態のエネルギー

E (3d94f1!l) =ε 。

E (3d94fl) =εc er-Urc

E (3d94f2)εc 2Br-2Urc+U"

と表されおおまかに 3 ピークが現れることになる。 GunnarssonとSchδnhammer

4日}は、これらの La及び Ce化合物の xp Sの定量的な解析にはじめて成功し

た。

価電子帯のスベクトルから 4f電子に起因するスベクトルを抜き出すには共

鳴光電子分光という手法を用いるo すなわち

(f" + hν →(fn-1 + e・ 、.,tA ,,.‘‘

というのが 4 f光電子放出の直接過程であるが

(f" + hν → 4d94fn+1 → 4dl日4f"-1 + e・ (2)

という過程が 4d-4f吸収端でおこる o (1)の過程と (2)の過程は始状態と終状態

が同じであるため、量子力学的にはどちらの過程を経てきたかは区別できず、

両方の過程が干渉しあい、 4f成分のみが共鳴的に増大あるいは減少するo こ

-57-

3d94fU

εf: Ufc

42εf .... :~

.....

4

3d94f1 3d94f2

.... Uff

ー-2Ufc

εc

EB

-1・

ヘャ→

ground state energy

EfくoUff>O Ufc>O

図4- 5 3 d X P Sのサテライトの生成原因

-58骨

の効果は最初原子のスベクトルにおいて Fano4りにより計算された。この現象

を利用することにより、かなり選択的に 4 f成分だけを抜き出すことができる

わけであるが、 C e化合物においてはこれが 2 ピーク構造を持つことが特徴的

な異常である。価電子帯における 4f成分とはふつうに考えれば、 4fl 始状態

に対応する4f0 終状態のエネルギ一分布であるから一本のピークになるはずだ

からである。実験的には Ceモノプニクタイト (CeX X=P, As, Sb,

B i )ではじめて観測された〈図 6-12421)。この場合 X=P,As, Sb,

B iと重くなるにつれて深い方のピークが相対的に大きくなっていく。この 2

ピーク構造の生成原因としては、 c-f混成相互作用が本質的であるという考

え方が有力であるo すなわち浅いピーク及び深いピークはそれぞれ|伊豆(E))

及び Ifl y(Et, E2)) という多体状態〈後述〉の結合.反結合状態 (A.Fujimori

431 T.Takeshige44l)、あるいは wellscreened state, poorly screened

state ( S.H.Liu and K.M.Ho451)などと呼ばれることもあるが、いずれにして

もc- f混成相互作用によって 2 ピークが現れると考えられているo C eの場

合、始状態は Ifl y(E))的な状態が多いため、 4 f P E Sスベクトル強度とし

ては終状態として If自主(E)) 状態の分布が主に見えるわけである。しかし、

bonding stateである浅い方のピークには、始状態 If2 y(El, E2}) に対応する

I fl y(Et, E2))終状態の成分もより混ざっている(後述)。

4 - 2以降では、 Gunnarssonand Schonhammerと本質的に等価なA.Kotaniら

461に準じたハミルトニアンを用いるが、さらに個々の物質の特徴をより反映さ

せるため c-f混成 V のエネルギー依存性を考慮することにより、 3d内殻ー

XPS, 4f-valence XPS, 4f-valence BISの計算を行う。

田 59-

4-2 モデル

スベクトルの計算は、系のハミルトニアンを(fB,(ft, (f2 配置の基底を用

いて数値的に対角化する方法で計算する。

系のハミルトニアンを次のように定義するo

H = Hc+ H r+ H int+ Hcore

H c = l: εk a +dν) a dν)

Hr=l: e ra+r(ν) a dν)+Urrl: a+r(ν) a r<ν) a + r (ν , ) a r<ν, )

Hint=l: (V(k)a+dν) a r(ν)+h. c.)

Hcore=εc a九 ac一(1 - a 九 ac) Urcl: a+r(ν) a r(ν)

ここで、 Hcは伝導電子ないし価電子の運動エネルギー (k は各エネルギーレベ

ルの index:1-N、 νはスピン軌道の対称性:1-NF)、 H,は4f電子の運動エネ

ルギーおよび(f電子聞のクーロン反発、 H i nt は c-f混成エネルギー、 Hco r e

は内殻3d電子の運動エネルギーおよび内殻holeがあいたときの内殻 hole -4f

電子閣の引力相互作用を表すo

このモデルには Ce5d電子等によるスクリーニング効果、すなわち Ud' (Ce

(f-5d クーロン反発エネルギー〉などの効果はあからさまに含まれていない。

したがってこのモデルに含まれる εハ Urr、 V (k)等のパラメータにはそれら

の効果が繰り込まれた値になっていることに注意しておかなければならない。

始状態 (groundstate):および終状態 (3dXPS,4fXPS, 4fBI S) について、計算で

四 60-

用いたそれぞれの基底を以下に示すとともに、図 4-6、図 4-7に図示する。

《始状態》

I f目) =nna+dν) a + c I vac)

I fl y(k)) = .[" O/NF) l: a +r (ν) a dν) I fO) (.r 0三 SQRT0)

I f2 y(kl. k2)) = .["(2/NF/(NF-1))l: a 勺 (νda kdνd

a + r(ν2) a蛇1(ν2) I fO) (kl =k2)

= .["O/NF/(NF-l))l: a 勺 (νda kdνd

a + r(ν2) a k2(ν2) I fO) (kl<k2)

ここで Ivac) は電子の存在しない真空状態である。価電子帯としては、 N本の

離散準位を考え〈計算では N= 10)、そこに対称性 ν= 1-14 を持った価電子

が詰まると考えている。すなわちここで If2 V(kl. k2)) という状態は、 4 f電

子が 2個存在し、離散準位 k1. k2に価電子holeがあいている状態を示している

〈ただし対称性 ν=1-14については和をとっている〉。

( 3dXPS終状態》

I f自主)=aclf目〉

I fl v(k)ε) = ac I fl y(k))

I f2 y(kl. k2) 旦) = a c I f2 Y (k 1 • k 2) )

ここで εは内殻hole. a c は内殻holeの消滅演算子を表すロ

(4fXPS終状態》

I f" y(k)) = a dν) I f自〉

I fl y(kl. k2)) = .[" O/(NF-l)) a kl (ν) I a +r(ν・)a k 2 (ν ・)I f目〉

(4fBI S終状態》

I fl) = a + r<ν) I fO)

自 61-

ground state

N=10 ーーーーー εf

εc

3d XPS final state

εf -Ufc

εc

EF

ー-・-ー四 εf

εc

εf-Ufc --0-ーー

εc

図 4-6 Basis state of initial state

and 3dXPS final state

国 62-

一・噌戸圃 εf

εc

εf四 Ufc園田@ー@ーー

εc

4f XPS final state

N=10 ーーーーー εf 一・-Ef

4f BIS final state

Ep凶幽 Ephm・ ・ Ep

4 一一 Ef 騒騒語圏 ー争← εf 騒議選麹 . . .・ εf

図4ー7 Basis state of 4fXPS

and 4fBIS final state

-63-

I f2 y'(k)) = .r (1/(NF-l)) a 勺 (ν)l:a+r(ν・)a dν ・)I f0)

I f3 y'(k1. k2)) = .r (2/NF/(NF-1)) a 勺 (ν)l: a 汁 (νda k1 (νd

a + r(ν2) a k1 (ν2) I f0) (kt =k2)

= .r (1/NF/(NF-l)) a + r(ν) l: a 勺 (νda kdνd

a + r(ν2) a k2(ν2) I f自) (kt <k2)

計算では、より現実的なバンド構造を反映させるため、 4f電子と価電子と

の混成 (c-fhybridization) V (E) の自乗 V2 (E) の E-依存性として、 Ln

S bの場合はバンド計算の結果 47)を用いた〈図 4- 8 ) 0 ここでは価電子帯と

して N= 1 0の離散的なエネルギー準位を考えているので、図 4- 8の V2 (E)

を 10個の領域に分け、それぞれの領域の面積を V2 (k) とした。 C e P d 3の

系の場合は V2 (E) の E-依存性の直接の計算は報告されていないため Y P d 3

のバンド計算 48】の Pd-4d部分状態密度を Ce P d 3の valenceband PES に合

致するように -O.5eV深い方に rigidshiftさせたものを V2 (E) として考えた

〈図 4- 8) 0 したがって C e P d 3の場合は c-f混成として最近接原子である

Ce4f-Pd4dのみを考えており Ce4f-Ce5dの混成は考えていない。ちなみに V2

( E) が状態密度にほぼ比例すると考えられる理由は、 V2 (E) の定義が

L V • k (ν)Vdll')o (E-Ek)

= L I V k I 2 o (E-Ek)δ 〈νーν.)

== V 2 (E)δ 〈νーν・〉

であり Lo (E-Ek) を含んだ形になっているからである o

始状態および各終状態のハミルトニアンの行列要素を付録 2に示す。このハ

ミルトニアン行列を数値的に対角化することにより、 始状態のエネルギーと波

動関数 Ii) (始状態は系の基底状態であるので、最低の固有値および固有ベ

クトル)、および終状態のエネルギーと波動関数 If) がそれぞれの基底の線

形結合として求められるo

突然近似によれば、光電子放出の選移確率は、

-64-

P = (2π/百)p (f) I (f I H' I i) I 2δ(Ej-Er)

= {2π/的 ρ(f)1 (O m{N-1) 1φGfr{N-l)} (ゆ ε1H' 1 o j) 1 2

・δ(hν 一ε+E G (N) - E m (N-l) )

={2π/的 p(f) 1 a m 1 21M i 1 2 O (hν 一ε+E G (N)ー Em{N-l))

と書けることは第二章で述べたo したがってここでは、 3dXPS. 4fXPS. 4fBIS

のそれぞれのスベクトルは,

F 3dXPs{E8) =ヱ 1 (flaeli) 12δ (E8 -E r (3dXPS) +Eg)

F 4rXPs{E8)=:E I (f I a,(ν) 1 i} 1 2δ(E8-Er(4fXPS)+Eg)

F 4r 81 s(E8) = :E I (f I a r + (ν) I i} 1 2δ(E8-Er (4fBIS)+Eg)

に比例するとして求めた。ここで ae、 adν)、 ar + (ν)はそれぞれ 3d内殻

hole. 4f電子の消滅および生成演算子である。ここで、 1 i) 、 1 f) は上で

述べた基底でハミルトニアンを数値的に対角化することによって求めた始状態

および終状態の波動関数である。 (flaeli) 、 (f 1 8 r(ν) 1 i}、

(fI8,+(ν) 1 i) における各係数は付録 3に示す。

-65-

N==10

y2(ε)

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(eV) O

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a-, ... ,! Ja--a'v l'

3

4d) (Pd V; f-d

(eV) O 6

のエネルギー依存性

-66-

( E ) v2 図4-8

4-3 計算結果の例

図 4- 9、図 4- 1 0 、図 4-1 1にVを変化させたときの 3dXPS,4fXPS,

4fBI Sのスペクトルの変化を示す。

εr、 Urr、 Utcのパラメータは、 C e化合物において典型的な値である εr

=-3.0eV、 Urr=7.0eV、 Ufc=10eVとしているo また、 3dXPS,4fvalenceスベ

クトルはそれぞれ r=1.8eV,O.3eVの Lorentzianで一律に幅をもたせてい

るo

またここでの Vと前述した V2 (k) との関係は、

V 2 == 1: V 2 (k)

であり、図 4-8のV2 (E)の面積に相当する量であるo

v=oの時、始状態における 4f電子数はほぼ 1なので〈図参照) 3dXPSに

おいては 3d94fl という一本のピークしか見えていない。実際は 3dholeのス

ピン軌道分裂 (-18eV) によって J= 5/2, 3/2の 2ピークが現れ、また3d94fl

の multipletcouplingによってそれぞれのピークは一本ではなく多重項にな

るがこの計算ではそれらは無視されている。 Vをしだいに大きくしていくと、

始状態で4f自,終状態で4f2 状態が良く混ざってくることを反映して、終状態

で 3d94fIi!, 3d94f1, 3d94f2 の 3ピークが現れてくる様子がわかるo

一方 valence領域では、 v=oのときはほぼ4flの始状態に対応して、それぞ

れ4f0 ( P E S) , 412 ( B 1 S)の終状態だけが現れている。しかし Vが大き

くなっていくと、 PE Sでは 2ピークが現れ、ピークの分裂幅は Vが大きくな

るとともに大きくなっていく様子がわかる。図 4- 1 1は4f1i!終状態成分およ

び4fl終状態成分を分離して描いているが〈ただし縦軸のスケールは同じでは

ない)、この図からわかるように、深い方のピークは4f0終状態成分が多く、

4fl終状態成分は浅い方のピークにより多く混ざっていることがわかるo B 1 S

では Vの増加とともに4f2終状態の強度が減少し4f1i!始状態に対応する4fl終

-67-

状態が現れてくるが、始状態では4f2状態はほとんど混ざっていないため4f3

終状態はほとんど見えていない。

図 4- 1 2、図 4- 1 3、図 4- 1 4に εrを変化させたときの 3dXPS.4fXPS

. 4fB 1 Sのスベクトル変化を示すo εrが深いときには始状態において f電子は

1個以上詰まっているため、 3dXPSにおいては 3d94fl. 3d94f2 のピークが現

れ 3d94f自のピークはほとんど見えない。 εrが浅くなっていくと f電子数は減

少していくため、 3d94fl. 3d94f2 のピークは弱くなっていき 3d94f目のピー

クが成長していく。この時、 3d94fl 3d94f2 のピーク聞のエネルギーおよび

3d94fD 3d94fl のピーク聞のエネルギーが減少していくことは、図 4ー 5から

理解できる。4fXPS においては、 εrが浅くなるとともに 4flil終状態の主成分も

浅い方にシフトしていく。 Brが深い場合には、 f電子数が多いため4f2始状態

に対する4fl終状態も現れているo しかし εr>0になると、 f電子数が Oに近

づいてくるので、 4fXPSの全体の強度は小さくなりほとんど見えなくなってい

くことがわかる。4fBISでは、 εrが深い場合には4ft始状態に対する4f2終状

態が支配的であるが、 B rが浅くなるとともにその強度は減少していき、 εr>

oでは、ほぽ~εfのところに4fl終状態が現れてくる。

図 4- 1 5、図 4- 1 6、図 4- 1 7にUr rを変化させた時の 3dXPS.4 rxps

. 4fB ISのスベクトル変化を示すo U r rがかなり小さい場合には、 flilfl f2以

外の configuration も重要になってくると考えられるので、ここでは Ur r > 4

eVのスペクトルを示している。このパラメータの領域では、 f電子数は 1より

大きいので、 3dXPS においては 3d94f自のピークはほとんど見えていない。

U rrが大きくなるとともに 3d94fl と3d94f2 のピーク聞のエネルギーが減少し

ていくのは図 4ー 5に示したとおりである。 Ur rが大きくなっていくと、 f電

子数は減少していくわけであるが、4fXPSのスベクトル変化は、この f電子数

の減少とともに4f1il終状態の強度が増し4fl終状態の強度が減少していくこと

を反映している。4fBISにおいては、 4f電子数が-1であるため4f2終状態

が 支配的であるが、 Utrが大きくなっていくとともに4f2終状態のエネルギ

-68-

ーが上昇していくのは、 4f2終状態のエネルギーが EO+ 2 e r - ε k + U trで

あり〈付録 2参照〉、 Urrを含んだ形になっているからである o

-69申

Ce 3d XPS

41 valence

0.983 0.999 1.016 1.028 1.035 1.037 1.035 1.032 L 1.029 L 1.025 1.021 1.017 1.013 1.010 1.007 1.004 1.003 1.001 1.000 1.000

9 10

3d94fO

900

3d94f1

890

εf = -3.0

Uff = 7.0 V =0.0~0.5

Ufc = 10.0

r = 1.8

(eV)

3d94f2

0.50

0.40

0.30

-0 .20

-0 .10

0.00

880 870

BINDING ENERGY (eV)

図 4- 9 Vを変化させたときの 3d X P Sスペクトル

-70-

V

(〉

ω)比…

ω凶〉

O∞〈〉

OE凶Zω

N-

00・01-

OH.01

(〉

ω)

cl 0 σ N ・.o 0

,II II I I I I

。守.01

0ω.0

.0H

ω一∞

0.2H£D

m.0t0.0H

0.ト

Hと門戸LHω

0.円・

H

(〉白)〉の江凶

Z凶

OZ一口

Z一∞

ω凶仏

円四国国的 h 凶 Nmt.n-,.....MO......空円 F 史 2C)Cñ;::è\j円円円円èSj(Sj ~~~~QQ2222E再 ~~qq~q~q~~q~~q~q~qqOO~~~~~---~---------

@UC@一司〉』守

f X P S 、Vを変化させたときの 4

f B 1 Sスペクトル

-71-

4

。図 4- 1

41 valence

0.983 0.999 1.016 1.028 1.035 1.037 1.035 1.032 1.029 1.025 1.021 1.017 1.013 1.010 1.007 1.004 1.003 1.001 1.000 1.000

-12

41 valence

0.983 0.999 1.016 1.028 1.035 1.037 1.035 1.032 1.029 1.025 1.021 1.017

. 1.013 1.010 1.007 1.004 1.003 1.001 1.000 1.000

-12

tf = -3.0 Uff = 7.0 V =0.0-0.5

Ufc = 10.0 (cV)

4f1-ー令4fO

r =0.3

0.50

-0.40

-'1 .・., I・・ 0 ・t-0.00 -8 o 4

BINDING ENERGY (eV)

4f~ー→4f1

-0.30

三三寸:::-, -,-,・ ・E 下T'i I I I ""一~,--,~,-・ー~寸寸ー 0.00-8 -4 0 4

BINDING ENERGY (eV)

図4- 1 1 Vを変化させたときの 4 f X P S

における f2→ f 1, f 1→ f 0成分

-72-

:V

Ce 3d XPS

41 valence

0.035 0.042 0.050 0.062 0.077 0.099 0.129 0.175 0.244 0.349 0.511 0.767 0.957 1.006 1.022 1.032 1.042 1.053 1.067 1.086

9 10 900

3d94fO

3d94f1

890 880

εf =・5.0-5.0

Uff = 7.0

V =0.300

Ufc = 10.0

r = 1.8

(eV)

3d94f2

870

:-S.CC

4.CJ

3.20

2.20

-1 .00

-L.C8

BINDING ENERGY (eV)

図 4ー 12 B ,を変化させたときの 3d X P Sスベクトル

-73-

εf

(〉

ω)比凶凶〉

O∞

OE凶Z凶

(〉φ)〉

O江凶

ZUOZ一(]Z一∞

もー

仏』

N-

00・凹

tJ-

00.守司

h

oo-mte山

00・Nt'h

oo--11

00.0'h

oo--L

oo-N『

h

oo-的

L

OO-守

L

oo-ω

-.

。。

(〉

ω)

の一∞

.0H

C.....

守-

‘←ー

0.2Hど戸

。on.0H

0.ト

H

』柏戸』

ω

0.mIC.m-H

N

H‘

-

-

-

-

-

0・F

h由0.F

門的0.F

N寸

0.F

N円

0.F

NN0.F

00.F

h山田口

huh-D

F

F

.0

m守門.。

守可制

.0

悶hFO

mNF.0

mmロ.0

hhDO

N由

0.0

0凶

0.0

N苛

0.0

田町

0.

ω凶止

@UE@一帽〉』守

f X P S 、εrを変化させたときの 4

トJレ1 Sスベク

-74-

f B 4

3 図 4- 1

4f 1ー→4fO

εf =・5.0-5.0

U1'r = 7.0

V =0.300

U1'c = 10.0

r =0.3 (cV)

5.00

1:-4.00

子3.00

:-2.00

ト1.00

Ef !:-O.OO

ミー -1.00

子-2.00

二『ー3.00

:ー -4.00

~-I -~-I---'-----'-------' ,-,-,-,-, -~,-~二ー -5.00

4 。

Ce 4f XPS

41 valence

0.035 0.042 0.050 0.062 0.077 0.099 0.129 0.175 0.244 0.349 0.511 0.767 0.957 1.006 1.022 1.032 1.042 1.053 1.067 1.086

41 valence

E-w内4nuηζ

守'nwdnvraaa守内ヨ

-a,,,,戸O

内4内,h内'h

内d,,

mO

34567927441650234568

00000011235790000000

・4

ununuAvnunuwnu《

unuAU《

Ununu--,,E

・l'''l'l‘ー

12

BINDING ENERGY (eV)

4f~ー→ 4f 1

ァ 5.00

4.00

子3.00

'-2.00

:-1 .00

:-0.00

:--1.00

:.. -2 .00

--3.00

--4.00

-5.00

Ef

12 。BINDING ENERGY (eV)

図 4- 1 4 e rを変化させたときの 4 f X P S

における f2→ f 1, f 1→ f 0成分

-75-

Ce 3d XPS

4f valence

1.012 1.013 1.015 1.016 1.Q18 1.020 1.023 1.026 1.029 1.032 1.037 1.042 1.048 1.055 1.063 1.074 1.086 1.102 1.121 1.146

910 900

3d94f1

890

εf = -3.0

Uf[ = 4.0 -10.0

V = 0.300

Ufc = 10.0

r = 1.8

(eV)

3d94f2

10.00

9.00

-8 .00

-7・00 Uff

6.00

-5.00

4.00

880 870

BINDING ENERGY (eV)

図4-15 Urrを変化させたときの 3d X P Sスベクトル

-76-

(〉φ)

(〉

ω)〉

O江凶

Z凶

OZ一QZ一∞

N-

00・守!?

ー∞ LL.w w

ア〉O ∞

ー噌 〈

〉。プ庄

w Z

= w

、司D

o 0 o 0

co ['、

,.崎、〉

ω)

ω一∞

ぞず、

Cコ11

N 坤ー

o Cコ

マg co 内 oてt C:コ F 司

11 11 11 』 υ古〉ゴ

ω凶nL

Cコ

匂....

む』

円・

H

岨守

F.F

FNF.F

NDF.戸

国国ロ.F

h0.F

円由

0.F

凶凶

0.F

回可白.F

N守

0.F

h円0.F

N円0.戸

罰則

0.F

由利口.

F

円N0.F

DN0.F

F0.戸

F0.F

凶戸

0.F

門戸口.

F

NF0.F

@UEω一国

〉-守

f X P S 、U rrを変化させたときの 4

f B 1 Sスベクトル

由 77-

4

6 図4

4f1-一予4fO

εf =・3.0

Uff = 4.0 -10.0

V =0.300

Ufc = 10.0

r =0.3

Ce 4f XPS

41 valence

41 valence

1.012 1.013 1.015 1.016 1.018 1.020 1.023 1.026 1.029 1.032 1.037 1.042 1.048 1.055 1.063 1.074 1.086 1.102 1.121 1.146

1.012 1.013 1.015 1.016 1.018 1.020 1.023 1.026 1.029 1.032 1.037 1.042 1.048 1.055 1.063 1.074 1.086 1.102 1.121 1.146

12

5.00

8 4 ~4.00

BINDING ENERGY (eV)

4f~ー→4f1

10.00

-9.00

4.00

12 8 4 0

BINDING ENERGY (eV)

図4-17 Urrを変化させたときの 4 f X P S

における f2→ f 1, f I→ f 0成分

-78-

! Uff

U

付録 2 matrix elements

(initial state)

diagonal part

(f0 I H I f目) = EO

< EO = L 8 k +εc: valence electron および core electron

からなる系のの total energy)

(fl y(k) I H I fl y(k)) = EO +εr - 8 k

(f21(k i.kj)|H|f21(k i.kj)〉=EO+2εr -εi -ε+ U rr

off diagonal part

(f0 I H I fl y(k)) = V (k)/""(Nr) </""=SQRT)

(fl y(k) I H I f2 y(k.k)) = V(k)/""(2(Nr-1))

(fl y(k;} I H I f2 y(ki. kj)) = V (kj)/""(Nr-l)

(3dXPS final state)

diagonal part

(f自主 IH I f自主) = EO - 8 c

(fl y(k) 旦IH I fl y(k)ε) = EO ー εc+εr -εH

(f2 y(ki. kj) 旦IH I f2 y(ki.kj) 旦) = EO -εc + 28 r-εi 田 εj

+ U r f

off diagonal part

(f目立 IH I fl v (k)ε) = V (k)/""(Nr)

(fl y(k)εI H I f2 y(k. k)ε) = V (k)/""(2(Nr-l))

(fl y(k;} 旦IH I f2 V(ki.kj) 旦) = V(kj)/""(Nr-l)

-79-

(4fXPS final state)

diagonal part

(f自主(k)I H I f自主(k)) = E 0 - e k

(fl y(ki. kj) I H I fl y(ki. kj)) = EO +ε , -εi -εj

off diagonal part

(f目工(ki)I H I fl y{ki. kj)) = V {kj)1"" (N,-l)

(4fBIS final state)

diagonal part

( f 1 I H 1ft> = EO +εr

(f2 y(k) I H I f2 y{k)) = EO + 2e, -e k + Urr

(f3 y{ki. kj) I H I f3 y{ki. kj}) = EO + 3ε ,-e -e +3U"

off diagonal part

(fl I H I f2 y(k)) = V {k)y'"" (N,-l)

(f2 y{k) I H I f3 y{k. k)) = V (k)I""{2{Nr-2))

(f2 y{k;) I H I f3 y{ki. kj}) = V {kj)1"" (N,-2)

-80-

付録 3

( 3dXPS)

F3dXPs(EB)=II (f 1 acl i) 12δ (EB-Er(3dXPS)+Eg)

(f自主 1a c 1 f0) = 1

(f1 y'(k) 旦1a c 1 f1 y'(k)} = 1

(f2 y'(ki.kj) 旦1a c 1 f2 y'(ki.kj)} = 1

(4fXPS)

F 4tXPs(EB)= I 1 (f 1 a r(ν) 1 i} 1 2 O (EB-Er (4fXPS)+Eg)

(f自主(k)1 ar(ν) 1 f 1 Y. ( k)} = r (1 /N r) (f1 y(ki. kj) 1 a r(ν) 1 f2 y(ki.kj)} = r{1/Nr)

(f1 y(k. k) 1 a r(ν) 1 f 2 Y. ( k. k)} = r (2/N r>

(4fBIS)

F 4t B I s(EB) = I 1 (f 1 a r + (ν) 1 i} 1 2δ(EB-Er (4fBIS)+Eg)

(f1 1 a rφ(ν) 1 f自} = 1

(f2 v(k) 1 a f+(ν) 1 fl y(k)} = r{(N,-l)/Nr)

(f3 y(ki. kj) 1 a r+(ν) 1 f2 V(ki. kj)} = I((Nr-2)/Nr)

(f3 v(k. k) 1 a r+(ν) 1 f2 y(k. k)} = r ((Nr-2}/Nr)

-81-

第 5章 Ce (Pdt-XCUX)3の光電子、逆光電子分光

5-1 C e (Pdl-XCUX) 3の物性

C e (Pdl・XC u X) 3の結晶構造は、図 5- 1に示すように AUCU3構造とい

う結品構造をしている。 Ceはこの立方体の頂点の位置を占めており、 Pd及

びそれと置換した Cuは面心のサイトに入っている。周期律表でみると、 Pd

および C uは図 5- 1に示すような位置関係にあり、 Cuが一個余分な価電子

を持っていることがわかる。 CuはP d ,こ比べてその原子半径は小さいが(Cu

:1.278i,Pd :1.3761〉、 Pdを Cuで置換していくと格子定数は小さくなるの

ではなく、図 5- 1の示すように大きくなっていく 4930 この系については電気

抵抗及びホール係数の測定結果があり 5日》、図 5ー 2に示すように、特に x=O.

033 においてギャップ的振る舞いを示している (Eg圃 p-数10K)0 CePd3の

近藤温度 Tkは 100-200Kであるから、この温度より低温側では 4 f電子は遍

歴的性格を持ったフェルミ液体的な状態( coheren t Kondo sta te or Kondo

lattice)になっており、フェルミ面付近には非常に幅の狭い 4fバンドが形成

されていると考えられるので、この 4 f電子状態中にギャップができているの

ではないかと注目されている。

-82喧

Ce(Pd 1・xCux) 3 AuCu 3 structure

f tt1'. COH Ni21 Cun ZnJO

③ 3d・ 3d' 3d・ 3d'・3d'・4,' 4,1 4,1 4, 4,1

Ru“ Rh" Pd叫 AgH Cd刊

ぬJ' ぬI・4<1'. 4J'・ ム/'.5, 5, ー 5, 5,1

Os'・frl1 Pt" AU'D Hピa

sd"' 5d' 5d' 5<1・-伝JI.6,' . ι, 邑s 6,'

図 5-1 Ce (Pdl・xC u X) 3の結晶構造及び格子定数

-83由

Cd I'd 1・匁C':II見';1

^ 1.0∞8 ・..0017

• .00))

• .0~7

• .0.1))

b .鈎

CC'(Pd,...Cu..】3

.. =00 • = 0008 .. .0017 • .0033 .. .OC唱s.. .0 'JJ

-a----z

a

3∞

ヨユAレーーーーー

ー........?ζ三三之"===ヨ?宅内φ......司

1幻 2∞ 2:-0r (K)

sの電気抵抗及びホール係数日】

-84-

..

"0

( P d 1・xC u x)

100 一一~

100 ぉo x淘 2:-0T (K)

C e 図 5-2

50

5

r・2Mh,

5 - 2 実験結果

実験は Ce (Pdl・xC u X) 3、X=O. 0.017. 0.033.0.067.0.133の各多結

晶サンプルについて行われた。これらのサンプルは東北大学の笠谷光男助教授

より提供いただいたものである。サンプルは Ce,Pd, C uを組成比に応じ

て混ぜたものをアルゴン雰囲気中の電気炉の中で Arc-meltingmethodにより

作製された。単一組成であることは X-raydiffractionによってチェックされ

ている o X P Sは真空度1*10・l0Torrの超高真空中で行われた。サンプル表面

の contaminationは 01s. C1sのピークによってモニターされており、それら

のピークがほとんど検出されない程度までファイリングすることにより表面を

清浄化した。一方 B1 Sにおける真空度は 6-1*10・1目Torr と若干悪いため、

20-30分程度の間隔でこまめにファイリングすることにより表面の劣化を防い

だ。測定は XPS, BISともに室温(293K) で行われたo

まず図 5-3に Cu2pXPSの結果を示すo これらのスペクトルは background

の高さで強度を規格化しであり、 Cu置換とともに Cu2pピークの強度が大

きくなっていく様子がわかるo スベクトルには J=3/2. 1/2の二本のピークだけ

が現れており、典型的な Cu +のスベクトルである(C U 2+の場合のスベクトル

は、高エネルギー側にサテライトを伴なっている〉。したがって、 unitcell

あたり 3x-0.05(x=0.017). 0.1(ド0.033>. o. 2(x=0. 067>. 0.4(x=0.133)個の

電子を系に供給していることがわかる。

図 5-4に Pd3dXPSの結果を示すo スベクトルは主に J=5/2.3/2の二本の

ピークからなっており、高エネルギー側には若干プラズモンピークをともなっ

ているように見えるがその強度はかなり弱い (-5%以下)0 J=5/2の束縛エネ

ルギーは 336.3:t0.2eVであり、 Pd金属の束縛エネルギー 335eV51】に比べ

て-1.3 eVほど深くなっている。これは、 Pdの方が Ceよりも電気陰性度が

-85-

Ce{Pd1・xCUx)3 Cu2p

hV=1486.6eV

X=O.017

.・-・・.‘ー・ ・-・..・ー一 一ー. - L a -k-・・ ・・ー』・_'_-.~" 0_. ‘.."--. ・ ・. ー・ ..... --_.... -..-.目、リー・ " 島町山一0_." "_ ・マ角...-.. -y. ・ v. ・~----.",;ぉ・ .・.:-0... -.-.ー..一・・.-""-.・・.'・..守、 .. :.,..~士、.,令~,- V七、" -.•.. .... 、 .・・

X=O.033

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X=O.067

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(ωト一

Zコ.∞広〈)〉ト一

ωZ凶ト

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X=O.133

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i

950

BINDING ENERGY (eV)

. --L-940

x p s

.

c u 2 p

-86-

.

図 5-3

..L 960 970

.... 一一『T T T t

hV=1486.6eV Ce(Pd1・xCUx)3

Pd3d

ーヘ内、----、一叫』世

x=O.O

.. . ・.

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x=O.017

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x=O.033

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x=O.067

(ωト一

Zコ.∞庄〈)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

J 320

~ . . . . . . .・-. - . . .

. ・・. ・.、・. .

350 340 330

BINDING ENERGY (eV)

x=O.133

.....L

x p s P d 3 d

-87-

図5-4

hV=1486.6eV • I

Ce(Pd1・xCUx)3

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • • • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • •

• • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

valence

x=O.O

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

x=O.017

• • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • • •

• • • • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • •

・• • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • ・・

x=O.033

• • • • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • ・

x=O.067

(ωト一

Zコ.∞庄〈)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

• • • • • • 1

{

• • • --•

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• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • ・

x=O.133

O 、‘.. ,, vv

L2'倍、

一VE

G

R

ム4阻

一G

L6附

一D

M川

l

一RM

L8

X P S e n c e

-88-

v a 1 図 5-5

大きいので(Pd : 2. 2. Ce: 1. 1 52)) 、 C e 5 d電子等が Pdサイトに流れ込み-

P d 4 dバンドをほぼ満たしているため、 Pdサイトのフェルミ面が上がった

ためと考えられる。 Cuを置換していったときの ch em i c a 1 s h i f t は、装置の

分解能(-1.0eV) を考えると正確な評価は難しいが 0.3eV以下であり、大き

な変化はみられていない。

図 5-5にvalenceXPSの結果を示すo hν=1486.6eVにおける crosssection

は、 σ(Ce4f)/σ(Pd4d) - O. 14 であり、かっ Ce4f及び Pd4d の電子数

の比はほぼ 1:1 0であるので、 Ce4fの寄与は Pd4d のそれの 1%程度にすぎず、

ほとんどこれらのスベクトル中には現れていない。また σ(Cu3d)/σ(Pd4d)

-- 0.75 であるので、 x=0.133では Cu3d の寄与は Pd4dに比べて 10%程度

あると考えられるが、 x=0.133 のスペクトルにおける -4eV付近の肩は Cu 3

dによるものと考えられるo このようにこれらのスベクトルでは、 Pd4d が支

配的であるわけであるが、 rigidshift のような変化はほとんど見られていな

いことがわかるo

図 5-6に CePds について、入射光エネルギー hν=35--130eVでとった

valence領域の光電子スベクトルを示す。第 2章でも述べたが、 hν-121eV付

近で次の共鳴過程が起こるo すなわち

4fl + hν →4f0 + e・

4d104fl + hν → 4d94f2 → 4d104f0 + e

というふたつの過程がおこり、お互いに干渉しあうことで 4f成分だけが増大

して見えるのであるo 従って、 on-resonance{hν=121eV) 及び off-resonance

(hν=113eV) の差分をとることによって、 4f成分の寄与を抜き出してみるこ

とができるロ図 5-7は同様のスペクトルを CC(Pdl・xCUx>S(x=0.067) につい

て測定した結果であるo CePd3 のスベクトルに比べて--3 eV付近の強度が大

きくなっているが、これは Cu 3 dの寄与であると考えられる。図 5-8には

CePd3及び Ce{Pdt・xCUx>S(x=0.067)についての on-resonance{hν=121eV)

及び off-resonance(hν=113eV)及びその差分スベクトルを示している。

-89-

BISを測定した結果を図 5-9に示す。フェルミ面上......o. 5eV付近にあるピ

ークは主に終状態 fl からなる doublet、 4-7eV付近にあるのは主に終状態

f2からなる多重項である。図中の f2多重項は Y.BaerS31 らの計算を用いた。

2...... 3eVの構造は、 AUCU3 という結品構造に特有な主に Ce5dからなる Ce5d-Pd

4d antibonding stateであるo 図 5- 1 0にC.Koenig481による同じ結晶構造を

持つ Y P d 3のバンド計算の結果を示す。 Y5dの部分状態密度がちょうどフェ

ルミ面上......3eV に -leV程の狭いパンド幅で存在することがわかるo さて実

験結果に戻ると、 Pdをcuで置換していくにつれて、 f 1ピークは減少し f2

ピークは増大していくとともに、 f2ピークの位置が x=O と x=0.133を比べる

と......O. 5eV低エネルギー側にシフトしていく様子がみられているロまた Ce5d

ピークは、弱くかっ広くなっていくようにみえるが、これは cu置換とともに

Cu 4sp状態が増大し、 Ce5d-Cu4spの混成が大きくなっていくことに対応して

いると考えられる。実際 spの寄与の大きい CeA13では、同じ結晶構造にも関

わらずこのような狭い Ce5d ピークはないことが知られている判、

図 5ー 11に Ce3dXPSの結果を示す。図 4-9でもみたように 3dsノ2,3d3〆2

の各ピークはそれぞれ主に 3d9(fI/J, 3d9(fl, 3d9(f2の成分からなる 3ピーク

からなっている o EB-915eVのピークは 3d9(3/2) (f1/Jのピークであるが、 cu

置換とともにその強度が減少していく様子がわかる。 X=0.067及び X=0.133 に

おいてわずかにみえる EB......923eVのピークは、 CU2P3ぺ (EB-932eV)の光源に

よるサテライトであると考えられる。またEs-880eVの 3d9(5/2) (f2の強度

をみると、これも cu置換とともに減少していく傾向があると思われるo また

c u置換に伴う chemi cal shi ft については、 3d9(5/2)(f1のピークをみてみる

と EB......885.15(x=0). 884.98(x=0.017). 885.03(x=0.033). 884.83(x=0.067).

884.70(x=0.133) となりわずかに浅い方にシフト (-O.45eりしているように

みえるが、分解能及びピークの幅が大きいことを考えるとはっきりシフトして

いるとはいえない。

-90-

I I 1 T

resonance PES -.... • .、

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CePd3

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hV=113eV

hV=100eV

(ωト一

Zコ.∞江〈)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

i O 10 8 .6 4 2

BINDING ENERGY (eV)

L 12 14

4f resonance PES

-91-

のCePd3 図 5-6

Ce(PdO.933CUO.067)3 resonance PES .-. .・~~..

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hV=113eV

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(ωト一

Zコ.∞江〈)〉↑一

ωZ凶」・・Z一

i O

4f resonanee PES

10 .8 6 4 2

BINDING ENERGY (eV)

の、‘.,"fs ahv

aHuw

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,,E‘‘

-92-

Ce(Pdl・xCUxb

i 12

t 14

図 5ー 7

T I I T F

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""""-凶晶司崎匂拘偽同 抽時付師凶'T \~ー

•. ・

Ce 4f resonance

(hV=121, 113eV)

CePd3

〉ト一

ωzuトZ一

O 10 8 6 4 2

81NDING ENERGY (eV)

よー12 14

の(x=0.067)

4f共鳴差分スベクトル

-93-

CePd3 及び Ce(Pdt・xCu x) 3 図 5-8

T 一τ

BIS

τ一一寸-¥

Ce(Pd1・xCUx)3F

Ce5d

X=O

---・

4l

h

f

-.・.・『11パHHHHU.

内h

A7 、

X=O.017

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(ωト一

Zコ.∞広〈)〉ト一

ωZ凶トZ一

-・'V. 、

X=O.133

. 圃

・.・. ,・、・..J..・. .-.

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10 '

0 24

ENERGY ABOVE EF (eV)

8 ' よ

6 L ・2

S I B Ce(Pdt・xCUx)3

-94-

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1111 1 ‘v lLUL上~ ~.I':::.:.:

f2

M ・・.・'

・.・'

図 5-9

YPd3 (LMTO)

125

43 1

vg

DH t

oE

1 。。nu po

nu 't-nu

、,‘nv .nu

U

YPOJ -TOlal dcnsily or slalCs Vspin/Ry/unil ce¥l)

LO

M

N

m

m

E20三区、c-a帥322凶

Y Pd J ....d.. ran or lhe pallial dcnsily on rd alOIl1S

(fspin/lly/alom)

30

E 豆20-1〉、

区、、目Ea vl 、'" E 10 vl

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0 00 02 OL 06 08 10 12

E IRy)

Y ¥'d) -",/"' 1'''" or lhc p:1I1ial dell~ily 01¥ ¥'・,1101l1S

USl'in{Ry/al。川}

図 5-10 YPd3のバンド計算 48)

-95-

hV=1486.6eV Ce(Pd1・xCUx)3Ce 3d

fヘ fj 入 ¥,、、'_e _.

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4f1 4f2、¥・、三L-J ~."""", .. , ... -.

3/2 4fO 4f1 4f2‘, 111'、

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(ωト一

Zコ.白江〈)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

,'" J tf、"・九.

" '、 J て x=O.133、-......... ..,~ ... ・〆『ザ.三

¥り・1 ・~

870 910 900 890 880

BINDING ENERGY (eV) 920

Ce 3dXPS Ce(Pdt・xCux)a

-96-

1 図 5-1

5 -3 考察

図 5- 1 2に CePd3の Ce3dXPS実験スベクトルと、第 4章で述べたモデル

により εr=ー1.1, Urr=7.5. V=O.465. Urc=11.0 (eV) というパラメータで計算

したスベクトルとをあわせて示す。実際のスベクトルは、残されたホールの寿

命の為にローレンツ型の幅を持つので、ここでは半値幅 r=1. 8eVのLorentzian

で一律に幅をもたせているo また、 3d3....2のピークは、 spin-orbitsplitting

energy=18.90eV. spin-orbit intensity ratio=O. 667で 3d 5"" 2のピークに

重ねて描いている。 backgroundの曲線は、

Fback (EB) =ac!EBPspec(E)dE

という integraltypeの backgroundを仮定し、係数 acを最小自乗法で実験

スペクトルに合わせることによって求めた。(この場合 ac=O.042)

始状態の波動関数を

I i) =al4f0) +Ibi 14ft y'(kd) +ICij 14f2 y'(kikj))

とおけば、 4f電子数(n 4r)は

n 4r= Ibi2+2Icij2

と表されるが、 CePd3の場合、上述のパラメータで計算すると n4r=O.900で

ある。

EB-885eVの主ピークは主に 3d9(fl からなるピークであるが、このピーク

は本質的に 3d94fl の多重項であり、この計算では多重項効果は考えていない

ので、単に Lorentzianbroadeningさせただけでは合わせることはできない。

また、 EB-876eV及び EB-896eV付近の不一致は、これも単純な Lorentzian

で broadeni ngさせたためであり、実際は装置の分解能を表す Gaussianを考

慮にいれなければならないことを示している。ここでの目的は、比較的簡単な

モデルで計算した(多重項効果を考慮していな Lリ計算スベクトルと実験スベ

クトルとを厳密に fittingさせることではないが、第 2章でも述べたように、

-97-

(ω日

C

コ.2」何)

〉ト一

ωZ凶ト

Z

εf = -1.1

Uff = 7.5

CePd3 v =0.465

Ufc = 11.0

4f valence = 0.900 r = 1.8

(eV)

Ce 3d XPS . hv = 1486.6eV

.‘-ーー『一ー

920 900 880

BINDING ENERGY (eV)

図5ー 12 CePda Ce 3dXPS fitting

-98-

3d94fl の多重項分裂は 4d94fl の場合ほど顕著ではなく、実際、図 5- 1 2の

計算スペクトルでもかなりよく実験スペクトルを再現できることがわかる。

このように Ce3dXPSについては、 εr=ー1.1. U,,=7.5. V=0.465. Urc=l1. 0

(eV) というパラメータで良く再現されるが、同じパラメータを使って4fXPS.

4fBI Sの計算をした結果を図 5- 1 3に示す。ただし、ここでのスベクトルは

ローレンツ幅 r=0. 3eVで一律に幅をもたせているo まず、4fXPS について実

験スベクトル(図 5-8) と比べてみると、低束縛エネルギー側に大きなピー

クがあり、高束縛エネルギー側に裾を持っているという大まかな形については

ほぼ一致している。ここで、計算スペクトルにおいて高束縛エネルギー側の裾

に凹凸がみられるのは、価電子帯を 10本の離散的な準位に置き換えたためで

あるo 低束縛エネルギー側の大きなピークは4f目終状態と Pd4d との bonding

sta 旬、高束縛エネルギー側の裾は4f日終状態と Pd4dとの anti-bondingstate

である。計算スベクトルにおいてこの bon d i n g st a t eの束縛エネルギーが~

0.5eVで実験スベクトルのそれ-1.5eV に比べて低くなっているのは、4fXPS

スベクトル計算において終状態の基底数(110)が始状態の基底数(66) よりも

多いために、終状態のエネルギーがより下がって見えていることと、計算では

Ce5d-Ce4fの混成を考慮していないことが原因と考えられる。 Ce5dの状態は、

図 5ー 11の Y5dの状態密度からもわかるようにフェルミ面付近に若干の状態

密度を持っており、結品構造を考えれば Ce4f-Ce5d は最近接の混成ではないも

のの若干の寄与があると考えられる。図 5-8の実験スベクトルでは、低束縛

エネルギー側の大きなピークは-1.5eVだけでなく --0.7eVにも小さな肩が

みられるが、これはフェルミ面近傍にあるこの Ce5d との混成によるものと考

えられる。

4fBI Sについては、計算では fl doublet. f2 multiplet の効果、及び寿命

の違いをを考慮してローレンツ幅をフェルミ面よりも離れれば離れるほど大き

くしていくといったことはしていないので(フェルミ面から離れるほど寿命は

短くなるのでローレンツ幅は大きくなる〉、特に f2 ピークの形については

-99-

εf=・1.1

Uff = 7.5 v = 0.465 Ufc = 11.0

r =0.3 (eV)

4f valence = 0.900

CePd3

PES 2.5

〉ト一

ωzωトZ

。(eV)

2

BINDING ENERGY

4 6 8 10 。

BIS 40

〉ト一

ωZ凶ト

Z一

10 8

(eV)

6

ENERGY ABOVE E F

2 4 。。

4 f B 1 S計算結果4 f X P S 、

-100-

図 5- 1 3

実験とはあっていない。 しかしそれぞれのピークの強度比については、ほぼ実

験と同様な値になっているo 計算では fl ピークのエネルギー(......T k :近藤温

度)は 2.71牢10・2eV......314Kであり電気抵抗、ホール係数、比熱等の実験による

値 100......200K とオーダーとしてはよく一致しているo しかし、戸ピークの位

置 (......6.5eV) については、 f2多重項の効果を考えていないため定量的にはい

えないが、実験のピーク位置 (......5eV) に比べて高い位置にあると思われるo こ

れは、 Urr の値を Ce3dXPSから見積もった値と同じにしたことに原因がある可

能性がある。なぜならば、 Ce3d内殻holeのあく 3dXPSでは、その終状態にお

いて 4 f波動関数が収縮し、それに伴い終状態での Ur r は始状態のそれよりも

大きくなっている可能性があるためである。逆に、終状態において 4f電子が

一個増える4fBISでは、終状態における 4f波動関数が膨張して始状態の

U" よりも小さくなっている可能性がある。始状態、終状態においてどれだけ

U" が変化するかということを見積もることは非常に難しいので、今回の計算

では、始状態終状態ともに同じ Urr を用いているが、この事に対する正確な見

積り、評価は今後必要であると考えられる。

5 - 2で述べたように、 Cu置換とともに、 4fB 1 Sでは fl ピークが減少し

f2 ピークが増大していくとともに f2 ピークが低エネルギー側にシフト(......

0.5eV) していった。また、 Ce3dXPSでは、 fB ピークが減少していくとともに

f2 ピークもやや弱くなっていく傾向があった。そこで、 CePd3 について求め

たパラメータ(e r =ー1.1. Urr=7.5. V=0.465. Ufc=11.0 (eV)) を出発点として、

εf、 V、 Urrが変化していくと XPS.BlS スベクトルがどのように変化していく

かを調べた。

まず、 εfを変化させたときのスベクトルを図 5ー 14 (Ce3dXPS)、図 5-

1 5 (4fvalence) に示すo Ce3dXPSでは、 erが下がっていくとともに 4 f電

子数は増加していき、 3d9 4fB ピークは減少していく o しかし、 3d94f2 ピーク

についてはそれほど顕著な変化はみられていない。 4fB 1 Sにおいては f1 ピー

クが減少していくとともに f2 ピークが増大しながら低エネルギー側にシフト

-101・・

していく様子がわかる。

Vを変化させたときのスベクトルを図 5- 1 6 (Ce3dXPS)、図 5- 1 7

(41valence) に示す。 Ce3dXPSでは、 Vが減少していくと、 3d9410 ピークが

減少していくとともに 3d9412 ピークも減少していく様子がわかるo しかし、

4fBISにおいては、 fl ピークは減少していき f2 ピークは増大していくものの、

戸ピークのシフトはほとんど見られない。

Urr を変化させたときのスペクトルを図 5- 1 8 (Ce3dXPS)、図 5- 1 9

(41valence) に示すo 4 f電子数は Ur rが減少していくとともにわずかに増

えていく。 Ce3dXPSでは、 Urr が 7.5eVから 6.5eVに減少すると、 3d941l

ピークと 3d9412 のピークのエネルギー差が増大するため〈第 2章でも述べた

が 3d941l ピークと 3d9412のピークのエネルギー差は大まかにいって~ー εr

+Urc-Urrである〉若干 3d9412 のピークの強度は減少しているが、ほとんどそ

の形状に変化はみられない。一方4fB1 Sでは、 fl ピークについてはほとんど

変化がないものの f2 ピークは大きく低エネルギー側にシフトしていく様子が

わかる。

P dをcuで置換していったときに期待される変化は、 cuによって供給さ

れた電子が Ce5d にはいることによってフェルミ面がわずかに上がり εrが深く

なることである。確かに図 5- 1 4、図 5- 1 5でみたように、4fBISでは fl

ピークが減少し f2 ピークが増大していくとともに戸ピークが低エネルギー

側にシフトしていくこと、また、 Ce3dXPSでは、 f0 ピークが減少していくこと

などスベクトルの変化の大部分はこの εrが深くなっていくことで説明できる。

41BI S実験スペクトルで f2 ピークが低エネルギー側に O.5eV シフトしていく

ことを考えると、 εrは O.4eV ほど、すなわち-1.1 cVからー1.5eV まで深く

なっていくと考えられる。しかし、 εFがー1.1 c Vからー1.5eVまで深くなるこ

とだけでは Ce3dXPS における 3d94f2 ピークの減少を説明できない。図 5- 1

でもみたように Pdをcuで置換すると格子定数は増大していく。この時 Ce

4f-Pd4dの波動関数の重なりは減少していき、また置換された Ce4f-Cu3d混成

-102-

は小さいので、 Vが減少していくものと考えられるo 確かに、図 5- 1 6では

Vを減少させていくと 3d94f2 ピークが実験スベクトルのように小さくなって

いくのがわかるo この時 3d9U" ピークも減少していくが、この Vの変化だけ

では 4fBISの f2 ピークのシフトは説明できない。一方 Urr が減少していけ

ば、この UBISにおいて f2 ピークは低エネルギー側に大きくシフトしていく

ものの、そのほかのスベクトル変化は説明できない。 cu置換によって Cu4s

電子が系に供給されるわけであるが、 Urr が変化するとすればこの余分な電子

によって Urr がよけいに遮蔽されることによって減少するというメカニズムが

考えられる。しかし、 Urr の遮蔽に寄与していると考えられる電子は、 unit

c e 11あたり Pd4d(Cu3d)が 30個もあるので、ここで Cu4s電子が 0.4個 (x=0

. 133)増えてもそれほど Urr が大きく変化することは考えられない。したがっ

て、 P dをcuで置換していくと、 εfがたかだかO.4eV深くなるとともに Ce

4ト Pd4d混成が若干減少していくということでスベクトルの変化を説明できる

と考えられる。

図 5-2 0に、スベクトル強度比 (3dXPS:f"/(f"+f1+f勺.BIS:fl/(fl+f2))

から見積もった 4 f電子数柑 32】と cu置換量 xとの関係を表した図を示す。

4 f電子数 o,は、 o,-0.9(x=O)から 0 ,-1.0{x=0.133)まで増加していくこと

がわかるo 原子半径が小さな C uで Pdを置換していくとともに格子定数が大

きくなっていくのは、 4 f電子数が増加し C eの半径が大きくなっていくこと

によると考えられる。ただし、電気抵抗及びホール係数の実験でギャップが開

いているように見える x=0.033では 0 ,-0.92であり、ちょうど 4 f電子が

一個詰まっているわけではないことは、フェルミ面付近で一本の 4 fバンドが

他の 4 fバンドあるいは Ce5d-Cu4sバンドと分製してギャップを作っているの

ではないことを示唆しているo 図 5- 2 1に同じく<1 f電子数と格子の膨張率

との関係を示す。この図をみると、 4 f価数と格子定数は直線的な関係にはな

いことがわかり、格子定数の変化〈図 5- 1 )から 4 f価数を見積もることは

必ずしも正しくないことを示唆している。

-103-

41 valence

03624303046913467890

U内

Jpa守

wdnU内

U41

‘,唱E41内

t内

4内

ζ

ζ

司ζ

4司

4内

J

9999990000000000000o

nvnununununu

・』‘,‘,咽,4E噌

E唱

E噌

E4E4E4E唱

''a'E

Ce 3d XPS

εf =・1.1-・2.1

Uff = 7.5

V = 0.465

Ufc = 11.0

r = 1.8

(eV)

3d94f1

3d94f2

ー 3d94fO

一ー 1.10

子-1.20

=--1 .30

一ー 1.40

子ー 1.50

::--1.60

ニーー 1.70

ァー 1.80

--1.90

::--2.00

ー2.10

890 880 810 9 10 900

BINDING ENERGY (eV)

図 5-1 4 e rを変化させたときの Ce3dXPS スベ ク ト ル

-104-

εf

ト.一』

匂司

仏J

ω.}1

ω.

『。

廿

--t

N.-t

(〉

ω)比凶凶〉

O∞〈〉

O江凶

Z凶

NF

-.N1

αコ

ー寸

0

・N1

切-一ー∞-一ー

111

-.-ー

ω一∞

(〉O)

〉川)庄凶

Z凶

OZ一(]Z一∞

Cコ

-cコ

αコ

(〉ω)

n.CH

0.HHuohD

S寸

.0u〉

m.トH出

D

H.Net--H

,HiH一ω

ω凶nL

れiT"-

OM<O 何回円 O <DO 守(Om ,..-("')寸巴0"'"∞0'1 0o 門的 h ∞MOO--,.....,..-N NC¥JNNNN円0'10'10'10'10'10'1 00000000000000

OOOOOO~---- ,.....,.....-----,.....,.....

。oco一ω〉

』守

トルスペクvalence 4f e fを変化させたときの

-105-

5 図 5- 1

4f valence

0.900 0.912 0.924 0.934 0.942 0.951 0.958 0.963 0.969 0.973 0.978 0.981 0.985 0.987 0.990 0.992 0.994 0.996 0.997 0.999

9 10

εf = -1.1

Uff = 7.5 Ce 3d XPS v = 0.465 -0.389

Ufc = 11.0

r = 1.8 (eV)

0.'::80

-0.460

0.4':0

0.420

- U. 400

• I・'''1''パ II I I I I I II'・a ・l' I , I I i ・:-0.330

900 .890 880 870

BINDING ENERGY (eV)

図 5- 1 6 Vを変化させたときの Ce3dXPS スベクトル

ー106-

V

。∞何.0

CJ 0 N 0 セT 、.. CJ 0

斗片山

。ω守.0

。∞マ.0

(〉

ω)比凶凶〉

O凹〈〉の江凶

Z凶

(〉

ω)

NF

ω一∞

O

O江凶

Z凶

OZ

一(]Z一∞

NF

ω凶仏

(〉ω)

.0H

0.ご日記戸〉

A

山∞n.0lmuマ.0u

m.トH

ヒロ

.H

,Hhω

回目白

.o

hmm.o

umm.

mm.0

何回目

.0

0mm.o

h

∞∞.0

町田町.O

F

回目

.0

hm.

h0.o

mum-

円曲目

.0

国的

m.o

F

m.0

N守

m.

司円切.0

Nm.O

NFm.0

000.

ooco

一ω〉』寸

トルスベクvalence 4f Vを変化させたときの

-107-

7 図 5ー 1

4f valence

0.900 0.902 0.903 0.904 0.905 0.907 0.907 0.899 0.906 0.911 0.924 0.914 0.914 0.915 0.918 0.920 0.920 0.920 0.922 0.924

9 10

Ce 3d XPS

900 890 880

εf=・1.1

Uff = 7.5 -6.55 v = 0.465

Ufc = 11.0

r = 1.8 (eV)

ー 7.50

:... 7.40

ァ 7.30

-7.20 .-ァ 7.10

ミー 7.00『

ニー 6.90

ァ 6.80ー二 6.70

L仁

ァ 6.60

.:... 6 .50 ' ー

87 0..

BINDING ENERGY (eV)

図 5ー 18 じ rr を変化させたときの Ce3dXPS スペクトル

-108-

Uff

D。守.ト

。ω.F

(〉

ω)比一凶凶〉

O∞〈〉の江凶フ臼

(〉

ω)〉川)江

ωZ凶

OZ一OZ一回

- (¥l 宅ー・

αコ

Cコ

亡コ

o cコ!D lJ)

・-!D !D

OF

・ω。∞・ω

。∞.ω

00.ト

O-.ト

ON

・ト。何・ト

ω一∞

(〉ω)

.CM

0.

コ"υhD

mmvマ.0u

IJ"') v・3Uコ

...... ~ "!

t"、

11 11 斗司 許ー

ω にゴ

ω凶止

れ』守司・

Nm.0

NNm.0

0Nm.0

0Nm.0

0Nm.

Fm.0

Fm.0

Fm.0

F0.0

Nm.o

FFm.0

uom.o

mm∞.o

hom.o

hom.D

om.。

om.0

門口町

.O

Nom.0

ロO

四.。

ooco

一ω〉』寸

スベクト Jレ4f valence を変化させたときの

四 109帽

Urr 9 図 5-1

。+c d

'-

4〉・4、cn c <D → ..... c

1.2

x=O

1.0

b

0.8

0.4ト

0.2

0.0 U.OO

• 0.017

0.033 g

fO

回 fO+ f1 + f2

• f1 ~ (8IS)

f1 + f2

0.067

(XPS)

-1 0.9

→ 悼ー

c

0.133 4

• 固 ー

1.0 0.10

X

図 5- 2 0 4 t電子数と xとの関係

-110-

0.0 u.oo 0.01

lattice expansion

図 5-2 1 4 f電子数と格子の膨張率との関係

-111-

1.0 0.02

5-4 まとめ

Ce (Pdl・xCUX) 3 (: x=O, 0.017, 0.033,0.067,0.133) について、

X P S, B 1 S, 4 f resonance PESの測定を行った。また、その実験結果と

Impurity Anderson model によって計算されたスベクトルとを比較することに

より次のことがわかった。すなわち、 Ce P d 3について、 εr=ー1.1, Urr=7.5

V=0.465, Urc=11. 0 (eV)というパラメータで Ce3dXPS,4f resonance PES,

4fBIS の各スペクトルをほぼ再現できる。ただし、同ーの Urr で XPS, BIS を

再現するのは若干の無理があり、 XPS,81 S過程における始状態及び終状態にお

いて Urr が異なる可能性が指摘された。 Pdを CU で置換する事により、 CU

は系に unitcellあたり O(x=O>' 0.05(x=0.017>.. 0.1(x=0.033) 0.2(ド 0.067)

0.4(x-0.133)個の余分な電子を供給するo この電子は主に Cusp-Ce5d状態に

はいると考えられるが、このため εrが高々 0.4eV ほど、すなわちー1.1eVか

ら寸.5eVまで深くなっていくことにより、 4f電子数 nrもnr-0.9(x=0)か

らnr-1.0(x=0.133)まで増加していく。一方 Pdサイトには、フェルミ面付近

に状態密度がかなり小さいことや rigidshift がみられないことからほとんど

入らないものと考えられる。また、 CU置換とともに格子定数は膨張していく

が、それにともない Ce4f-Pd4dhybridizationが減少する様子がスベクトルに

認められたD 格子定数が大きくなるのは Ce れ→ Ce 3+となるにつれ Ceのイ

オン半径が大きくなることを反映していると考えられる。しかし、 Ce価数

(4-n r) と格子定数とは直線的には対応していないことがわかった。。またギ

ャップが開いているとされる X=0.033では、 nr--0.92 であり、ちょうどバン

ドを一本うめているわけではない。

-112-

第 6章 LnSb (Ln=La, Ce, Sm) の光電子、逆光電子分光

6-1 LnSbの物性

L n S bの結晶構造は単純な Na C 1構造であり、その格子定数は LaSb:

6.475i.CeSb:6.412i,SInsb:6.271155hと lanthanidecontraction を反映し

て重い Lnであるほど小さくなっていく o バンド構造 56)は図 6- 1に示すよう

に、 r点付近ににホールがあり、 X点に electronpocket があるという半金属

である。磁気的性質は、 LaSb は Pau 1 i常磁性であるが、それ以外の Ln S bは

L nがモーメントをもっており低温で反強磁性的にオーダーする(T N-16. 2K

(CeSb). -2. 7K (SmSb))。特に Ce S bは、単純な結晶構造を持つにも関わら

ず、温度、圧力が変化するとさまざまな磁気的秩序相を示し(図 6ー 257)) 、

その多彩な磁気的性質により注目を集めているo この Ce S bにおける複雑な

磁気構造には Ce4f-Sb5p の異方的な混成が本質的であるという指摘がなされて

いる 58)。

-113-

YSb

0.8

_0・6"0 〉、

α

〉、0.1.

。、』

C

O

X Z、VOL ^ r d XK 工 r 0 60 120 N (E) (states I Ryd cetl )

LaSb

0,8 (d)

0・6 J~

〈之;ιーー

0.1.

0.2

O

X Z W 0 L ^ r d. X K [ r 0 60 120

NIE)ls:ates/Hyd cell)

図 6ー 1 YSb. LaSbのバンド構造 56)

-114-

6

3

O

6

3

O

(eV)

.

.-

(eV)

一-Ce Sb H 11 [001J

(Increo:.ing lemperolure)

'

f ' ,

f ' w...w..

いk= 6/11 U骨 U叫ん+

FPK::況にu-ド k=2s uん..tU時

12 k=97 .1J......lι AFFI ーπιrI 1 k. '2/J J.l....tL

11 k ,.2/.) 1.....九

いしい3 円~AFPI3 k =~/.~ ~内

ピk..::'/9 円円n,-llrr'・3

lS k. 6/11 円τ1J-rr1千1~

AF k =1/2 叫r

k.O

k .1/2

F

FP'

1:20

F

5

110

100

d 90 e 60 O -' 70 w LL 60

U 戸 50w Z り<{

Z

o o

J・+・・・・01:・一JJ・-+--to----JJ・-

nu -nu

0, 。t

15.9Kく Tく 16.2KTく 8.9K

の磁気秩序相 57】

-115-

CeSb 図 6ー 2

6 - 2 実験結果

実験は LaSb. CeSb. SmSb多結品試料について行われた。これらの試料は東

北大学の鈴木孝助教授に提供いただいたものである。サンプルは、 La, C e,

S m, S bを組成比に応じて混ぜたものを、アルゴン雰囲気中の電気炉でArc-

melting methodにより作製された。単一組成であることはトraydiffraction

によってチェックされている o X P Sは真空度 1キ10・I"Torrの超高真空中で行

われた。サンプル表面の contaminat ionは 01s. Clsのピークによってモニタ

ーされており、それらのピークがほとんど検出されない程度までファイリング

することにより表面を清浄化した。一方 B 1 Sにおける真空度は 6-7*10・1"

Torrと若干悪いため、 20-30分程度の間隔でこまめにファイリングすることに

より表面の劣化を防いだ。測定は XPS, BISともに室温 (293K)で行われ

たo

図 6- 3に BISの結果を示すo -5eV{LaSb). 2.5-6eV{CeSb). 0.5-7eV

(SmSb) に見えている構造はそれぞれ終状態 fl. f2. f6 の多重項である。図中

に示した多重項は Y.Baer らの計算53)によるものであり、表 6- 1に Laド.

Ce3 ・ • Sm3 +の場合の多重項の強度およびエネルギーを示しておく。実験スベク

トルはほとんどこの多重項と同じ形をしており、従って LaSb. CeSb. SmSbに

おいて La. Ce. Smサイトはほとんど 3価の状態にあることがわかるo LaSbの

スベクトルにおいて 2-3eV付近になだらかな構造が見えているが、これは図

6 - 1のバンド計算から La5d四 Sb5pの状態であると考えられるo この状態は

CeSb. SmSbにおいてはそれほどはっきり見えていないが、これは同じエネルギ

ーのところに crosssectionの大きな 4tの構造があるからである。前述の

LaSbのバンド計算では 4 tの幅の狭いバンドがフェルミ面上-2eV付近にある

が、実験では f1 ピークは-5eVにありバンド計算の結果とは一致していない。

-116-

• • ・

• • • • ・.

• • • ・

BIS

.. . • • • .

ー_0 .."......... ー句・ ,・4

.冒ー I .

‘吋同-,. .. ・- ・.制切・l、.主・--~、ー.. ,._r

LaSb

句--h

ハh

•.

4

-

-

E

a

-

-

a

u

L

"

1

4

¥

.

.

f

l

H

U

----EE'a-EEEEEL

.d --

v

いaF

Mf

CeSb

, • 00 、・・. . . . ・-・、. . . • • o. .・.・-• ,0 0・ oー.ー・ι ー・-".・・.-.-ー・e_.-_ • -. . .・・.

. ・• •

、• . ・• "

• "

、• •

(ωtcコ.n七回)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

J ー

-耐

ι

. .

. . • ・ー.ー.,句"、.r崎内輔J・

SmSb

1 0 1 1 9 8 7

Energy above E F (eV)

6 5 4 3 2 。-2 -3

B 1 S L n S b

-117-

図 6- 3

Transilion from 4P 10 4f" Tr:msilion from 4fo 10 4fl

Inilial Slalc 6H "2 Final Slalcs

5mJφ: Inili:1I sl:11C 15。Final slal~S

じIJ・:

Inlcns.

0993350860713

υ四品

m刊

HHロ白川

842H4974nお

MWMη打

・・

4d-SI---

ヲ--lAHV

ヲ‘、,.‘,,.1J弓

4

1・4.

、,.

0oaoalaaaaalaanua0・aaa

E(cV)

0.0

0.047

0.130

0.237

0.359

3.150

3.830

3.882

4.111

4.202

4.265

4.496

4.647

4.802

4.869

5.671

5.723

1!.036

8.538

8.601

J'

AU---

‘41ddτ'01daa守ヲ-a匂

qd

,、d'nv

‘41dtdaa守1

・4・4d

Inlcns. S'L' Inlcns. E(cV) J' IIllCI1S. S'L'

2.333 'F 6 8

0.0

0.2l(2 5,2

7i2 14 !F

Transilion from 4fl 10 4f2

1.545

1.0∞ 'L 'H

Inilial SI:IlC 2 Fm Final slalCS

CcJ・:

0.303

1.182

1.364

0.817

'F

'K

'G

'H

Inlcns.

JF

GDP

••••

,a

0.454 'D '/

2.571 1.833 0.310

1.190 1.167 0.6.t)

1.286 0.714

0.191 0.500 1.857 0.595

0.143

E(cV)

0.0 0.258

0.527 0.608

0.780

0.834

1.195 2.057

2.537

2.614

2.635

2.764

5.784

J'

凋値

yeJ

,。、,.,J

4

骨組句、,-nu--,。、,.nu

Inlcns.

4.714

3.000

1.286 0.714

1.286

S'L'

JH

1.857 EaDz-ea

--‘,

..

BIS 終状態 53J の

0.143

La3+, Ce3+, Sm3+

ー118-

表 6-1

Johansson model

LnSb

trivalent

z--F』

5

2

1

4

3

(>ω)

(+N↑+の)凶司

divalent -1

La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb

Johansson model

-119-

図 6-4

-2

4fBI Sの実験から、 4 f"→4f"+ 1 の遷移に必要な最低のエネルギーはそれぞ

れ-4. 7 eV (LaSb) --3. 2eV (CeSb) --O. 6eV (SmSb) とみつもられる。これを

Johanssonのモデル S9.6引にあてはめ Ln S bの場合に拡張して考えてみると、

図 6-4のようになるo 図の縦軸はd.E (3+→2つで、 Ln3+→Ln2+ に必要なエ

ネルギーを表している。図中の白丸を結んだ折れ線は、希土類単体金属の場合

の企 E (3+→ 2つであり、これが正の領域にあれば Ln2+にするのに必要なエ

ネルギーが正ということなので基底状態は Ln3+ である。逆に負の領域にあれ

ば基底状態は Ln2+である。これを mono田 antimonideの場合に当てはめてみる

と、今回の実験から LaSb. CeSb. SmSbについてその基底状態のエネルギーを

見積もることができる。図中の・印がそれであるが、これは単体金属の場合の

白丸を基準にして、実験から得られた4f"→4f" + 1 の遷移に必要なエネルギー

(最低の 4fn+1ピークのエネルギー〉を差し引いた点である o これらの 3点はほ

とんど一直線上に乗り、これからすべての Ln S bの場合の基底状態のエネル

ギー(図中の EF)を見積もることができる。このような解析は、かなり荒っ

ぽいように見えるが、 LnA12. LnPd. LnPd3など経験的には良く当てはまって

いる 61'1)。この図をみると、直線 EF よりも下にあるのは EuSbの場合だけであ

り、ほかの L n S bの Lnサイトはすべて Ln3+ が安定であることを示してい

るo ただし、 YbSbでは、 Ln3+ と Ln2+ のエネルギー差がかなり小さいので、

周囲の Sb5p との混成により Ybの価数は不安定であることを示唆しているo

しかし現在のところ、良質な YbSbを作ることは難しく YbllSbl日となってし

まうようである 61l。また、 EuSbにしても、 Sbは 3価になり易いと考えられ

るので、 Eu3 S b2となり易いと考えられ、 1: 1のEuSbができるかどうかは疑問

がある。

図 6-5、図 6-6に Ln3dXPSの結果を示すロ閃 6-6は光源の satellite

を数値的に消去したものである。大きな二つのピークはそれぞれ 3dレ 2.3d3....2

のピークである。この図では、それぞれの 3ds〆2のピークをそろえて、 3ds〆2

を基準にして示している。 3d5"" 2. 3d3ぺの spinorbit splittingはLnが重

自 120-

, .

3d XPS

..... 、-・ ‘・・.倫向、, ・ . ぜ・、~.,..... '、 . . . .町『伊・

、 .MNN Auger .、¥j

、、"'""'.....眠、、--・ 、

、、、』句・、d、"-

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与1・、"......、,叫肉、... !....干ーφ1、、~柏、、v.JJ XU 、・、‘・・戸、・,】 .ー

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SmSb(1486.6eV)

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LaSb(1486.6eV)

LaSb(1253.6eV)

CeSb(1486.6e V}

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ωZ凶ト

Z一

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20 10

energy (eV)

。-10

relative binding

-20 -30 -40 -50

x p s 3 d

-121-

Ln 図 6-5

Ln3d XPS

I I 1 I I

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しaSb(1253.6eV)

SmSb(148.6.6eV)

ノ-

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L-ー園田ーーー '=l,.PL1f 0

CeSb(1486.6eV)

(ωト一

Zコ.∞広〈)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

-L 10

O 」

-10 止一

・20よー

・30斗一

・40 20

RELATIVE BINDING ENERGY (eV) -50

X P S (satellite subtracted)

-122-

3 d L n 図 6- 6

くなるほど大きくなっているが、これは spinorbit energy Eso が、

Eso = f L . S

f = 1/2mc2 • l/r・dV/dr

とかけ、中心力場のポテンシャルの微分 dV/drに比例しているからである。各

ピークは、低束縛エネルギー側に小さなピークを伴っているがこれは図中に示

すように終状態において 4 f電子が 3d内殻holeを遮蔽した状態であることは

第 4、 5章で述べたo ただし SmSbについてはほとんどこの wellscreened

peakは見られていない。また、 LaSbにおける 3d9 4[0 ピーク幅に比べて、 3d

94fl (CeSb). 3d94fS(SmSb) ピークの幅が大きいのは 3d-4f多重項の為であるo

hν=1486.6eV における LaSbのスベクトルには LaM4SN45N45 Augerスベク

トル( La3dにあいた内殻holeを La4d電子が埋め、他の La4d電子が Auger

電子として外部に放出される〉が重なっているので、入射エネルギーをhν=12

53.6eV (MgKα) に変えたスベクトルを同時に示している。各 3da〆2 のピーク

より、 10-15eV高束縛エネルギー側に弱いなだらかなピークが認められる。

CeSbの場合は 3d94f0 である可能性もあるわけであるが、4fBISにおいて fl

ピークがほとんど認められないことから、 3d94f0 ピークはあったとしてもかな

り弱いと考えられる。 LaSbについては 3d94f0 ピークよりも高い束縛エネルギ

ー側にでているわけで、そもそも第 4章で述べた ImpurityAndeson modelの

範囲内ではこのピークは説明できない。

図 6ー 7に Sb3dXPSの結果を示す。大きな 3ds〆2 3da〆2 の 2ピークがある

が、それぞれのピークより -14eV高い束縛エネルギー側にも弱くなだらかな

ピークがあることが認められる。

-123-

(ωtcコ.2」回)〉ト一

ωZ凶ト

Z

hv = 1486.6eV

Sb3d

LaSb

. .

CeSb

SmSb

560 550 540 520 530

図 6ー 7 S b 3 d X P S

-124-

510

6 - 3 考 察

図 6- 8に LaSbおよび CeSbの Ln3dXPSの実験スベクトルを、第 4章で述

べた impurityAnderson model により fit した結果を示す。 SmSbについては、

計算の base として f4. f5. f6等を考える必要がある点、また、 4f電子数

が増えるため多重項相E作用を考えなければならない必要性が増すことなどか

ら今回は計算を行っていない。 LaSbについては、 εr=4.8. Urr=6. O. V=0.244

Urc=9.6 r =1. 2 (eV) というパラメータで実験スベクトルを良く再現できるロ

また CeSbの場合は、 εr=ー2.3. Urr=6.4. V=0.215. Urc=9.6 r=2.0 (eV) で

ある。ここで Lorentzwidth r が LaSbの場合よりも CeSbの方が大きくな

っているのは、 6-2でも述べたように 3d94fl 多重項の為である(厳密に

Lorentzianでは合わせられないことは第 5章でも述べた〉。またこれらの計算

スベクトルには、図 6ー 7の Sb3dXPSからみつもったエネルギー損失ピークも

含めて表している。 Sb3dXPSからみつもった損失エネルギーはそれぞれ 14.038

eV(LaSb). 14.48geV(CeSb). 15. 146eV(SmSb) であり、強度はメインピークのそ

れぞれ 21.8% (LaSb). 21. 0% (CeSb). 22.6% (SmSb) である(図 6ー 1)。図

6 -8における Ln3dXPSの場合、損失エネルギーのみを Sb3dXPSの場合と同

じにしている。この fi tt i ngにおけるエネルギー損失ピークのメインピークに

対する強度比は、それぞれ 13.2%(LaSb). 14.3% (CeSb) である。この図から

わかるように、特に LaSbの場合 -865eV付近は実験スベクトルと合っておら

ず Sb3dの場合とは異なるサテライトないしエネルギー損失過程であることが

予想されるo また、 CeSbの場合はほとんど合っているように見えるが、-915

eV付近にわずかな相違がみられている。このエネルギー損失ピークの生成原因

として次の過程が考えられる。

① plasmon

② p-d antibonding state82)

四 125-

〉ト一

ωZ凶ト

Z

LaSb (La 3d) hv = 1253.6eV

(ωZED-D」回)

〉ト一

ωZ凶トZ

880 860 840

BINDING ENERGY (eV)

CeSb (Ce 3d) hv = 1486.6eV

(ωZCコ・2』

)

920 900 880

BINDING ENERGY (eV)

図 6-8 LaSb CeSb Ln3dXPS fit

ー126-

εf =4.8

Uff = 6.0 V =0.244

Ufc = 9.6 r = 1.2

(eV)

820

εf = -2.3 U ff = 6.4 V =0.215

Ufc = 9.6

r =2.0 (eV)

860

③ interband transision

まず、①の plasmon とした場合を考える。 Sb3dXPSから求められた 14-15

eVの損失エネルギーは、単体の Sbの bulkplasmon energyが ωt-15eV、

また InSbでは ωT-13eV であることから plasmonloss energy としてもお

かしくない。また、 LaSb→ CeSb→ SmSb と損失エネルギーが増加していくことは、

価電子数が増えていくこと、および格子定数が収縮していくことによって電子

密度が増加していくためであると考えることができる。問題は Ln3dXPSでの損

失エネルギーと Sb3dXPSの損失エネルギーとの相違をどのように考えるかであ

る。図 6-8の La3dXPS の場合は入射エネルギーが hν=1253.6eVであること

を考えると光電子の運動エネルギーは-400eVであるのに対し、図 6ー 7の

Sb3dXPSの場合の光電子の運動エネルギーは -950eVであり、 La3dXPSのスベ

クトルの方がより表面に敏感であると考えられる。 surfaceplasmon energy は

bulk plasmon energyの-1/';-2であるので、 -865eV付近のピーク (6E-

10eV) は surfaceplasmonであると考えられるo また、 Ce3dXPSにおいて~

915eV付近の不一致が La3dXPSのに比べて小さいのは、 Ce3dXPSスベクトルに

おける光電子の運動エネルギーが-..600eVであり、 La3dXPS スベクトルに比べ

てより bulksensitiveであることによると考えられる。しかし、このように

plasmonと考えた場合、図 6-9に示す Arai等のデータを説明することができ

ない。これらのスペクトルは光電子の運動エネルギー EKが、 EK-llOOeV{Ln

3d) E K-2000eV(Sb4d)という高い領域でとられているが 471、やはり La3d内殻

スベクトルには企 E-10eVのサテライトが見えているからである。従って

surface plasmon と考えるならば、ほぽ同じ運動エネルギーである図 6ー 7の

Sb3dにも 6E -10eVのサテライトが見えているはずであるので、矛盾があ

るo

次に Takeshige62】等の主張する p-dantibonding state について考える。

Takeshige等は通常の ImputityAnderson model に Ln5d電子をあからさまに

考え、 Udf(Ln5d-4fcoulomb) Vpd(Sb5p-Ln5d hybridization) Udd(Ln5d-5d

-127-

(〉

U)

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OM-ωZω

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入射光エネルギー--2000eV

トJレ62l における光電子スベク

ー128-

図 6- 9

Coulomb) Ucd(Ln 内殻hole-5dCoulomb) を含んだモデルで計算しているo この

モデルでは Ln3d内殻holeを遮蔽する過程において、内殻holeを Ln4f電子が

遮蔽する過程のほかに Ln5d電子が遮蔽する過程も考えられる。この Ln5d電

子が遮蔽する場合、 Ln5d-Sb5p混成 Vpd のため、大まかにいって 13d95d"5plll)

という多体状態と 13d95d"+15plll・t)という多体状態が bondingstateおよび

antibonding stateを作ることが期待されるが、この antibondingstateがサ

テライトであるという考え方であるo 図 6-9の A (p-d bonding state) およ

び B (p-d antibonding state)が計算された結果であるo 計算結果をみると

Ce3dXPS の場合、 p-dantibonding stateのエネルギーはほぼ実験のサテライ

トのエネルギーと一致している。しかし、 antibondingstateのピークのほう

だけがなぜなだらかになるのか、また、 Sbサイトのサテライト(このモデルの

場合、逆の遮蔽過程が Sb内殻XPSでも期待される〉のエネルギーおよび強度に

現在のところ問題があると思われるo

③の interbandtransision も可能性としては考えられる。しかし現在のと

ころ実験、理論的根拠はない。

このように今のところこのサテライトの原因ははっきりしない。また、この

サテライト強度には若干の励起光のエネルギー依存性〈光電子の運動エネルギ

ー依存性〉もあるように見える〈図 6-6、図 6ー 7、図 6-9)0 Lnサイ

トおよび Sbサイトのサテライトのエネルギーが異なるため、このサテライト

が extrinsicなサテライト〈光電子が試料表面まで移動する過程で起こるエネ

ルギー損失)であるとは考えにくいが、このサテライト強度の励起光依存性も

含めて〈光電子の運動エネルギーが低い領域では充分 suddenlimit に達して

いないという考え方もある)今後の解明に期待したい。

図 6- 8に示すように LaSbの場合 ε,=4.8. U,r=6.0. V=0.244. U'c=9.6

(eV) また CeSbの場合は、 er =ー2.3. U,,=6.4. V=0.215. Urc=9.6 (eV) とい

うパラメータで Ln3dXPSを良く再現できているが、同じパラメータで4fXPS.

4fB IS を計算したものを図 6ー 10、図 6- 1 1に示す。ただしローレンツ幅

自 129-

εf = 4.8 Uff = 6.0 v = 0.244

Ufc = 9.6 了 =0.3

(eV)

4f valence = 0.022

LaSb

PES

0.06

〉ト一

ωZ凶ト

Z一

。 。(eV)

2

BINDING ENERGY

4 8 10

BIS

70

〉ト一

ωZ凶ト

Z一

10 8

(eV)

6 4 2 O

ENERGY ABOVE E F

LaSb 4fXPS 4fBIS

-130-

図 6- 1 0

εf =・2.3

Uff = 6.4 V =0.215

Ufc = 9.6 r =0.3

(eV)

4f valence = 1.017

CeSb

PES

1.6

〉ト一

ωZ凶ト

Z一

。(eV)

2 4

BINDING ENERGY

6 8 10 O

BIS

画畠昌量画。

45

〉ト一

ωZ凶ト

Z一

10

(eV)

6

ENERGY ABOVE E F

4 2

CeSb 4 fXPS 4tB 1 S

-131-

図6- 1 1

は一律に r=O.3eVにしているo これらのパラメータで計算した 4f電子数 nr

は、 0.022(LaSb). 1. 017(CeSb) である。 LaSbの場合、 n,がほとんど Oである

ので 4fXPSの強度はかなり小さい〈ただし図中の縦軸の scaleには、第 2章

で述べた p(εr)の因子は入っていない)0 CeSb 4fXPSでは、計算スベクトル

は 2ピーク構造になっているが、これは実験スベクトル 42】〈図 6ー 12 )をよ

く再現している。実験は第 5章でも述べた Ce4d-4f resonanceを利用した実験

であるが、 -1eV と -3eV にほぼ 1:2の強度比を持っており、ほぽ計算スベ

クトルと一致している。また、4fBIS において fl ピークのエネルギーは 2.6

9*10・3eV-31Kであり、電気抵抗、ホール係数、比熱等の結果(T k 数 10-

100K) とほぼ一致している。(ちなみにf2ピークのエネルギーは CePd3 の場合

と異なり実験とよく一致していると考えられるが、これは 3dXPSがほとんど 2

ピークであり情報量が少ないのでうまく合わせることができたためであり、第

5章の議論とは矛盾しない〉

計算から見積もられた Urr は、 6.0eV(LaSb) 6.4eV(CeSb) であるが、 SmSb

については 4fXPS の実験スベクトル63) (図 6ー 13) および今回の4fBIS の

実験スベクトルから Urr-6.geV とみつもられる。なぜならば Urr の定義が

E(4f")+E(4fn)+Urr= E(4fn+1)+E(4f"・ 1)

であることから

U,,= (E(4f"+l)ーE(4f")) + (E(4fn-1)ーE(4fn))

と書け、右辺第一項は4fBIS により-O. 6eV、第 2項は 4fXPS により--6. 3

eV とみつもられるからであるo 図 6-1 3の 4fXPSは --0.3eVの分解能で測

定しており SmSbの場合は f4 の多重項が見えている。ここで -6.3eV はこの

f4 の多重項の最低エネルギーであり、最低のE(4fn-1)ーE(4f")のエネルギーに

相当する。

表 6ー 2に求めたパラメータをまとめる。 spin-orbit splitting d.Eso は、

Thole らによる Hartree-Fock の計算64)とほぼ一致している。 4f電子間クー

ロン反発 Urr は、 LaSb→ CeSb→ SmSb となるにつれて大きくなっているが、こ

-132-

CeAs

持一ー吋

UHtll

CeP

叶}←res. {ω

七C

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O}〉ト一

ωzωド

Z

UHE'

図 6- 1 2

。2

実験スベクトル

F宅ー

2 0 6 . t. BINDIt-lG ENERGY (eV)

申 133-

CeBi

CeSb 4f resonance

uHEE

4

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CeAs

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図 6- 1 3 LaSb CeSb SmSb 4fXPS63)

-134-

LaSb CeSb SmSb

I(3d9fn+り0.136 0.107

I(total)

dE(3d9fn-3d9fn+l) 3.8 3.6

dEso 16.7 18.7 26.7

5 * ~ C3d 17.0 18.6 26.3 2

E(fn・1) -3 a 6.3b

E( fn+l) 4.7 3.2 0.6

Uff 6.0 6.4 6.9

V 0.244 0.215

εf 4.8 -2.3

Ufc 9.6 9.6 (eV)

* B.T.百101eet al., Phys. Rev .B, 32, 5107 (1985)

a y.Baer et aL,J-Electron Spectrose-,15,27(1979)

b M.Campagna et al., Photoemission in SoIids 2, Springer-VerIag (1979)

表 6ー 2 L n S b パラメータ

-135-

-

A

U

n

D

/

O

-

h

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手l

-

‘l円

J

L

A

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S1m l GT-b」寸-17す]Pm -E u -Tb -J H 0 -T m L u

図 6-14 Hill plot

-136-

れは原子番号が大きくなるほど 4f波動関数が収縮する〈ランタニド収縮〉こ

とを反映していると考えられる。図 6- 1 4に4f波動関数の最大値における

半径を原子半径で規格化した図 (Hillplot65') を示す。 Ybの場合は Ceに

比べて 30% も減少していることがわかるo このため、 Ln4f-Sb5p混成エネル

ギーも減少していくことが予想されるが、 Ln3dXPSから見積もられた Vは、 O.

244eY(LaSb), 0.215eY(CeSb) であり、 CeSbのほうが予想どうり小さくなって

いる。 SmSbについては 3d94f6 のピークがほとんどみられないため、正確に見

積もることはできないが CeSbの場合よりもさらに小さくなっていると考えら

れる。バンド計算によると〈図 6ー 15) 66)、y2=0.141ey2(Y=0.375 eY)で

あるが、 La3dXPSから見積もった Vはこれよりもかなり小さくなっている o Ref

. 66によれば、 Ce5d電子による遮蔽効果を考慮すると、 y2は60%程度になる

ということであるが、 60%の y2は -0.085ey2であり、 La3dXPSによる値

y2_ O. 060ey2はさらにこれよりも若干小さい。これは、 3dXPSでは内殻に hole

があくので、終状態において波動関数が収縮し、終状態における Ce4f-Sb5p混

成が始状態におけるそれに比べて小さくなっている可能性があるにもかかわら

ず、計算では始状態と終状態の Vは同じにして計算しており、このために Vが

小さめに出ていることによるものと考えられる。

通常、 Sm化合物では、バルクで Sm 3+であったとしてもその表面は Sm2+

となっており、 valencetransitionがあることが知られているo しかし、 SmSb

の場合はその 4fXPSにおいて Sm3吋終状態ド)のみが現れ、表面に起因する

Sm2 + (終状態 f5)の構造がほとんど見えないことから(図 6- 1 3 )表面でも

S m 3+である可能性が指摘されていた。今回測定した Sm3dXPSにも表面の Sm

h に起因する構造は見えていない〈図 6- 6)。表面が Sm 2+であるような化

合物では〈例えばバルクでは混合原子価状態にある Sm4Bi3. Sm4Sb3)、図 6-

1 6、図 6ー 17に示すようにかなり大きなピークが 3d94f5 のメインピーク

よりも -10eYほど浅いところにでてくるo このピークが表面に起因する Sm2+

のピークと考えられる理由は、酸化させるとこのピークは消える〈表面には

回 137-

0.02E 11 l 0・02LaP

j¥ 八 A ~ 10・01

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占?-o. ra . -~-. 置 畠 d,I 司._.--F IV

喧 o.0.10 0.30 0.50 0.70 0.90・0.10 0.10 0.30 0.50 0.70

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(Ry)

図 6- 1 5 LaSb hybridization計算 661

時 138-

E

hv = 1486.6eV I E

Sm3d XPS Sm4Bi3

τ

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ωZ凶ト

Z一

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oxydized (exposed to air)

1120 1100 1080

BINDING ENERGY (eV)

Sm4 Bi3 Sm 3d XP S

-139骨

図 6-1 6

'

τ I E B

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Sm4Sb3 Sm 3d XPS . . . .・.・.-・.-.

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Zコ.∞庄〈)〉ト一

ωZ凶ト

Z一

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oxydized (1486.6eV)

1120 1100 1080

81NDING ENERGY (eV)

Sm4Sb3 Sm3dXPS

-140-

図 6- 1 7

Sm203ができる〉、より表面敏感な 1253.6eVの光源でとったスベクトルの方が

ピーク強度が大きい、といった理由からである。 Sm3dXPSにおける光電子の運

動エネルギーが-400eVであり、 4fXPSの場合 -1400eVに比べて表面に敏感

であることを考えると、たしかに SIISbの表面は Smれであるといえる。この

ことはまた、4fBISの結果からも示唆される。図 6ー 18に、金属Smおよび

SmSbの energydiagramを示す。金属Smではバルクは Sm3+であるが、この

Sm3+金属の状態は Sm3φ原子の状態に比べて凝集エネルギー E3・cOh-l03Kcal

だけエネルギーが低い状態にあるo また、 Sm2+原子の状態は、原子の光吸収ス

ベクトルの実験から Sm3+原子の状態に比べて -53.7Kcal低いことが知られて

いるo ここで、4fBIS終状態のエネルギー (-0.46eV-I0.6Kcal)67)を仮想的

に Sm2+金属の状態であるとすると、 Sm2+原子の状態と、この Sm2+金属の状態

の差が Sm2+の凝集エネルギー E2+coh-38.7Kcal ということになる。一方、

SmSbの場合は、金属Smに比べて生成熟d.Hrorm-29.1Kca1 6れだけエネルギ

ーが低くなっているが、この状態と Sm3+原子の状態との差が E3φcOh-132.1K

calである。4fB1 Sの終状態のエネルギー (-0.65eV-15Kcal)から、同様に

Sm2+化合物の凝集エネルギーを見積もると、 E2+coh-64.6Kcal ということに

なる。経験的に表面の凝集エネルギーはバルクの凝集エネルギーの -80% で

あるといわれており 691、 80% であると仮定すれば、図中に示すように SmSb

の場合は surfaceSm3φ のエネルギーが surfaceSm2+よりもさがり、 Sm3+の

方が安定であることが示唆される。一方金属Smの場合は surfaceSm3 +のエ

ネルギーが surfaceSm2φ よりも上になって Sm2+の方が安定になることがい

えるo このことは金属Smについての4fXPS,Sm3dXPSにおいて、表面 Sm 2+

の成分が観測されていることと一致しているo

-141-

total energy / mol Sm 4f 5 5d 6s2 atom

Eg品-103kca1 promotional

energy -53.7kcal

Sm 4f66s2 atom

E3品目 38.7kca1 EZA

-64.6kca1

d

p』bh

司コ

+-ウー-

qr一~

cu-e-」d-

d-u 2+

-20.6kcal J -7.7kca1 (Sm2+ metal

四 EBIS:0.46ev-10.6kcda

Sm3+ me阻1

-12.7kcal

surface Sm 2+

L¥Hfonn . -29.1kca1 u

SmSb

-EBIS -O.65e V -15kca1

E3品目 132.1kcal

-1.3kcal

a J.K.Lang and Y.Baer, Solid State Commun., 31, 945 (1979)

bG.Borzone et al., Z.Metallkd., 76,208 (1985)

図 6ー 18 SmSb energy diagram

-142由

surface Sm 3+

-26.4kcal

6-4 まとめ

LnSb (Ln=La. Ce. Sm)について Ln3dXPS4fXPS 4fBISの実験

を行った。その結果、希土類サイトはほぼ 3価の状態にあることがわかったo

Johansson modelによると、 Ln = E u 、 Ybを除くすべての Ln S bで希土

類サイトは 3価になっていることが予想される。 Ln3dXPSの結果から LaSbの

場合 er=4.8,Urr=6.0, V=0.244, Urc=9.6 (eV)また CeSbの場合は、 er =

-2.3, Urr=6.4, V=0.215, Urc=9.6 (eV) というパラメータでスペクトルを良く

再現できることがわかったo またこれらのパラメータで4fXPS,4fBISの結果も

よく再現できる。また SmSbの場合は4fBIS,4fXPSの実験から Urr=6.9と評

価できた。 La→ Ce→ Smと重くなるにつれて Urrが大きくなり、また Ln4f-

Sb5p混成エネルギー Vが減少していくが、これは 4 f波動関数の収縮(ラン

タニド収縮)を反映していると考えられる。この La3dXPSから見積もられた

La4f-Sb5p混成 Vはバンド計算の値に比べて小さくなっているが、バンド計算

に Ce5d電子による遮蔽効果が十分反映されていないこととともに、 3dXPSで

は終状態の Vが始状態のそれに比べて小さくなっていることが原因として示唆

される。また、 SmSbの表面は Sm3+ となっていることが Sm3dXPS,4 fB 1 Sの結

果からわかったo

-143-

第 7章 全体のまとめ

本研究では希土類化合物の 4 f電子状態を光電子、逆光電子分光法によって

実験的に調べるため、まず XP S - B 1 S装置の設計、製作、立ち上げを行っ

た。

X P Sは、光源として MgKα(1253.6eV). AlKα(1486.6eV)特性 X線が使用で

き、光電子は DCMAでエネルギ一分析される。 XPSの分解能は、 DCMA

のpassenergyに依存するが o.geV-1. 3eVであるo B 1 S部分はcylindrical

Pierce type gunおよび検出器部分を設計製作し、ほぽ期待通りの性能を得た。

電子銃からは -1mAの電流が取り出せ、 B 1 S全体の分解能としては o.7eVで

ある。電子銃の電流を増加させると真空度が悪くなるので、主としてビーム電

流-150μA、真空度 5-7*10・1日Torr(室温293K)で、試料表面の汚れをファイ

リングで取り除きながら測定を行っている。 4 fピークのシグナルとしては~

30counts/sec(ビーム電流150μA時)、パックグラウンドとしては.....O. 3coun t s/

secであり、 2-4時間で S/N比の良いスベクトルを得ることができるo この

装置は、 X線 B 1 Sの装置としてはわが国では最初に動きだした装置である。

実験で得られた光電子 (3dXPS.4fXPS)、逆光電子スベクトル(4fBIS) を解

析するため、 AndersonImpurity modelに基づいたスペクトル計算を行った。

そして、 εr、 V,U rrといった系を特徴づける量が変化したときにスベクトル

がどのように変化するかを調べた。またこの計算においては、試料の個性を反

映させるため、 4 fとバンド電子との混成 Vに従来取り入れられていなかった

エネルギー依存性を取り入れたo その結果、特に4fXPSについて、従来の一様な

Vで計算した場合に比べてかなりの改善 (CeSb4fXPSにおける 2 ピーク出現等)

がみられた。

実験は Ce (Pdl・xCUx) 3および LnSb (Ln=La, Ce, Sm) の

系に対して行った。得られた実験スベクトルに対してこの AndersonImpurity

-144-

model に基づいた計算スベクトルと比較し er、 V、 Urr... nr:H電子数、 TK

:近藤温度、を評価することにより系の電子状態を考察したo CePd3の Pd

をCuで置換していくと、 erが--O. 4eV深くなるとともにc-f混成 Vも減少して

いき、 nrは0.9{x=O)-1. 0 (x=O.133)と増加していくことがわかったo このこと

は価数揺動的であった系が近藤的になる〈近藤温度が下がる〉ことを意味して

いる。 Ln S bの系では、ランタニド収縮を反映したパラメータで良く実験ス

ベクトルを再現できることがわかったo このような er、 V. U rrの評価におい

ては、その一義性を高めるため、 fi tt i ngにおけるパラメータをなるべく少な

くし〈パラメータは εr、 V、 Urr、 Utc、 εc:3d内殻hcleenergy、Eso:spin

-orbit splitting energy、 r:ローレンツ幅、 ac:background係数、 1 :スベク

トル強度である〉、かっ 3dXPS.4fXPS.4fBISの三つのスペクトルを同ーのパラ

メータで良く再現できるように選んだ。このようにして選んだ εr、 V、 Urrか

ら計算された近藤温度 TK(BIS flピークのエネルギー〉は、電気抵抗、比熱、

ホール係数等から評価された TKと良く一致することが確かめられたo しかし、

本研究における AndersonImpurity model においては、始状態、終状態におけ

るV、 Urrは同じと仮定しているが、第 4、 5章で述べたようにそれらが異な

っている可能性が示唆された。これらのパラメータ εr、 V、 Ur rのこのモデル

における誤差は、 εr:土 O.2eV、 V:::!:O.5eV... Urr:::!:O.5eV程度と考えられる。

ただし、ここで注意しておかなければならないのは er.. V、 Ur rといった量は

モデルに依存するということであるo 例えば伝導電子による遮蔽効果をあらわ

に取り入れたようなモデルでは er =-25eV、 Urr=15eVで良くスベクトルを再現

する“ .62)。

今後の課題としては TK (近藤温度〉以下での興味深い heavyfermion的な

4 f電子の電子状態を調べるため、低温での高分解能光電子、逆光電子分光実

験が必要と考えられるo Ce (Pdl・xC u x) 3のギャップの生成原因について

は、今回の実験では分解能の関係上直接的なデータは得られていない。低温高

-145-

分解能光電子分光の実現のため、現在、 PF (KEK Photon Factory)で物性研

を中心に挿入型高輝度光源を利用したビームラインの立ち上げが行われている。

高分解能逆光電子分光の実現のためには、高輝度高分解能電子銃の開発が必要

である。高分解能を実現するため、熱電子を使用しない電子銃〈例えば NEA(

negative electron affinity)や fieldemissionを利用したカソード〉の発展

が期待されるが、高輝度高分解能という相反する命題を追求しなければならな

いため困難があるo 解析的なことでは、多重項、結晶場を考慮したモデルが

望まれるが、現在の単純な AndersonImpurity modelの範囲内でも始状態、終

状態において Ur r. Vが異なる可能性があり詳細な検討が必要である。また、

L n S bの Ln3dXPSには、単純な AndersonImpurity model の範囲内では説

明できないピークがあり、 Ce5d電子等をあからさまに考慮したモデルの発展も

望まれる。

-146-

謝辞

菅滋正助教授〈現阪大教授〉には、大学院入学以来 5年間にわたって光電子

分光、逆光電子分光の初歩から、現在の固体物理のトピックとなっている様々

なテーマ〈希土類化合物、 3d遷移金属化合物、高温超伝導体、準結晶物質、

固体表面など〉について御指導していただき、今日博士論文を書き上げるまで

にいたりました。ここに深く感謝の念を表しますo

石本英彦助教授には最後の一年間でしたが指導教官として博士論文の審査や

様々な事務手続きをしていただきありがとうございました。

藤森淳助教授には、修士課程の時以来、様々な洞察に満ちた御指導御助言を

いただき感謝の念にたえませんo

石井武比古教授、柿崎明人助教授には、装置の部品の便宜をはかつていただ

いたり、研究以外の面でも様々な御指導をいただきありがとうございましたo

東北大学の鈴木孝助教授、笠谷光男助教授には Ln S b 、 Ce (P d 1・xC u

x) 3のサンプルを提供いただいただけでなく、様々な御助言をいただきました。

谷口雅樹助教授、曽田一雄氏、藤沢正美氏、大熊春雄氏、木下豊彦氏、森多

美子氏、小林洋子氏、故渡辺香史氏、篠江憲治氏、九谷昌之氏、生天目博文氏、

野原進一氏、 A.E. Bocquet氏、林明彦氏、松原秀樹氏、そのほか藤森研究室の人

々には、常日頃研究室で接しともに楽しく大学院生活をおくれたことを、

に改めて感謝の意を表しますo

-147-

" 、.、.

図の一覧

図 1- 1 4 f波動関数の空間分布

図 2- 1 光電子分光の概念図

図 2-2 光電子の平均自由行程

図 2-3 各軌道のイオン化断面積

図 2-4 逆光電子分光の概念図

図 2-5 B 1 Sおよび TPEモード測定原理

図 2- 6 TPE型逆光電子分光装置

図 2ー 7 N→ N-lの断熱遷移

図 3-1 XPS, BIS装置概略

図 3ー 2 ローランド円

図 3-3 結晶分光器の写真

図 3-4 平行電子ビームのつくる電場

図 3-5 cylindrical Pierce type gun

図 3-6 cylindrical Pierce type gunの写真

図 3-1 ビームの rc/ r 11依存性

図 3-8 検出器部分の写真

図 3-9 Cs 1の photoelectricyield

図 3- 1 0 真空系の構成

図 3- 1 1 装置全体の写真

図 3- 1 2 コントロール及びデータ処理系のダイアグラム

図 3- 1 3 液体窒素用クライオスタ':/ト先端部

図 3- 1 4 金の B 1 Sスベクトル

-148-

図 3- 1 5 分光器の分解能

図 4-1 Ce 3d core光電子スベクトルの例

図 4-2 C e 4 f光電子スベクトル〈共鳴光電子分光〉の例

図 4-3

図 4-4

図 4ー 5

図 4-6

図4ー 7

図 4-8

図 4-9

図 4- 1 0

図 4- 1 1

L a金属の 3d X P S 、3dXAS

3 d X A Sの吸収ピークの生成原因

3 d X P Sのサテライトの生成原因

Bases state of initial state and 3dXPS final state

Bases state of 4fXPS final state and 4fBIS final state

V 2 (E) の E依存性

Vを変化させたときの 3d X P Sスベクトル

Vを変化させたときの 4 f X P S 、4 f B 1 Sスペクトル

Vを変化させたときの 4f X P S

における f2→ f 1, f 1→ f 0成分

図 4- 1 2 εfを変化させたときの 3d X P Sスベクトル

図 4- 1 3 e fを変化させたときの 4f X P S 、 4f B 1 Sスベクトル

図 4- 1 4 εfを変化させたときの 4f X P S

における f2→ f 1, f 1→ f 0成分

図 4-15 Urrを変化させたときの 3d X P Sスペクトル

図 4ー 16 U ffを変化させたときの 4f X P S 、4f B 1 Sスベクトル

図 4-17 Uffを変化させたときの 4f X P S

における f2_f1, f1→ f 0成分

図 5-1 Ce (Pd1・)(C u X) 3の結晶構造及び格子定数

図 5ー 2 Ce (Pd1・)(C u X) 3の電気抵抗及びホール係数

図 5-3 Cu2pXPS

図 5-4 Pd3dXPS

国 149-

図 5ー 5

図 5-6

図 5ー 7

図 5-8

図 5-9

図 5-1 0

図 5ー 11

図 5-1 2

図 5-1 3

図 5ー 14

図 5-1 5

図 5-1 6

図 5-1 7

図 5-1 8

図 5-1 9

図 5ー 20

図 5ー 21

v a 1 e n c e X P 5

C e P d 3 4f resonance PES

Ce (Pdl・)(C U)() 3 (X=O. 067) H resonance PES

4f difference spectrum

B 1 5

Y P d 3の状態密度

Ce3dXP5

C e 3 d f i t t i n g

4 f X P 5, 4 f B 1 5 計算結果

e fを変化させたときの Ce3dXPSスベクトル

e rを変化させたときの4fvalenceスベクトル

Vを変化させたときの Ce3dXPSスベクトル

Vを変化させたときの4fvalenceスベクトル

Urrを変化させたときの Ce3dXPSスベクトル

Urr を変化させたときの4fval enceスベクトル

4 f電子数と xとの関係

4 f電子数と格子の膨張率との関係

図 6-1 Y5b, La5bのバンド構造

図 6-2 Ce5bの磁気的秩序相

図 6- 3 B 1 5

図 6-4 Johansson model

図6-5 Ln3dXPS

図 6-6 Ln3dXPS(satellite subtracted)

図 6ー 7 Sb3dXPS

図 6-8 LaSb, CeSb Ln3dXPS fit

図 6-9 LnSb Ln3dXPS Sb4dXPS(Arai data)

-150-

図 6- 1 0 LaSb 4fXPS 4fBIS

図 6- 1 1 CeSb 4fXPS 4fB I S

図 6- 1 2 CeSb 4f resonanee実験スベクトル

図 6ー 13 LaSb. CeSb. SmSbの 4fXPS

図 6- 1 4 Hill plot

図 6- 1 5 LaSb hybridization計算

図 6- 1 6 Sm..B I3 SII3dXPS

図 6- 1 7 Sm..Sb3 Sm3dXPS

図 6- 1 8 SmSb energy diagram

表 6-1 La 3 + • Ce3¥Sm3+ の BIS終状態

表 6-2 LnSbパ ラメータ

四 151-

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ー155-

既発表論文

1)-Localized versus itinerant character of d electrons in NiS:

photoemission spectroscopic study-.

A. Fuj imori. M. Ma toba. S. Anzai. K. Terakura. M. Taniguchi. S. Ogawa and

S. Suga. J. Mag. Mag. Mat. 1立.67(1987).

2)-Electron correlation and magnetism In NiS-

A.Fujimori.K. Terakura.M. Taniguchi.S.Ogawa.S.Suga.M.Matoba and

S. Anzai. Phys. Rev. B. 笠.3109(1988).

3)・Surfacevalence transition in YbxInt-xCu2-

S.Ogawa.S.Suga.M. Taniguchi.M.Fujisawa.A.Fujimori. T.Shimizu.

H. Yasuoka and K. Yoshimura. Sol id Stat. Commun. 包.1093(1988).

4)・Ultravioletphotoemission and inverse photoemission spectra of

h. sMoOs-

S.Ogawa.H.Namatame.M. Taniguchi.M.Fujisawa.S.Suga.S.Nohara.A.Misu.

K. Terashima and R. Yamamoto. Jap. J.Appl.Phys. !!. L269(1989).

5)-XPS and UPS studies of valence fluctuation and surface state of

Yb4As3. Yb4Sb3 and Yb4Bi3-

S. Suga. S. Oga曹a.H. Namatame. m. Taniguchi, A. Kakizaki. T. 1 shi i. A. Fuj imori

S.ーJ.Oh.H.Kato.T.Miyahara.A. Ochiai. T.Suzuki and T. Kasuya.

J.Phys. Soc. Jap. ll.4534(1989).

6)" X線 B 1 S装置の製作とスペクトル測定"

小川音、菅滋正

アクチナイド化合物の物性研究、科研費研究成果報告書 p32(1989).

-156-

7)-The effect of high energy electron beam bombardment on single

crystal Bi2Sr2CuOS surfaces-

A.E.Bocquet.S.Ogawa.S.Suga.H.Eisaki.H. Takagi and S. Uchida.

Jap.J.Appl.Phys.ll.L551(1990).

8)-逆光電子分光"、菅滋正、生天目博文、小川音、木下豊彦、

分光研究、 39、 (1990).

9)-Electronic structure of Bi2Sr2CaCU20S by photoemission and

bremsstrahlung isochromat spectroscopy-

A.E.Bocquet.S.Ogawa.H.Eisaki.H. Takagi.S. Uchida.a.Fujimori and

S. Suga. Physica C 169.1 (1990).

10)-Electronic structure of MnO・

A. Fuj imor i. K. Kimizuka. 1. Akabane. T. Chiba. S. Kimura. F. Minami.

K.Shiratori.M.Taniguchi.S.Ogawa and S.Suga.

Phys. Rev. B. 生1.7 5 8 0 (1 9 9 0 ) .

11)" Ce(Pdl-xCUx)3及びLnSb(Ln=La.Ce.Sm)の B1 S及びxp S"

小川晋、菅滋正

アクチナイド化合物の物性研究、科研費研究成果報告書 p35(1990).

-157-