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Title 低温菌Shewanella sp. SIB1株の低温適応機構の分子 論的解析 Author(s) 鈴木, 裕 Citation Issue Date Text Version ETD URL http://hdl.handle.net/11094/45815 DOI rights Note Osaka University Knowledge Archive : OUKA Osaka University Knowledge Archive : OUKA https://ir.library.osaka-u.ac.jp/ Osaka University

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  • Title 低温菌Shewanella sp. SIB1株の低温適応機構の分子論的解析

    Author(s) 鈴木, 裕

    Citation

    Issue Date

    Text Version ETD

    URL http://hdl.handle.net/11094/45815

    DOI

    rights

    Note

    Osaka University Knowledge Archive : OUKAOsaka University Knowledge Archive : OUKA

    https://ir.library.osaka-u.ac.jp/

    Osaka University

  • 低温菌Shewa

    分子論的解析

    Mechanisms for cold adaptation of proteins in a

    psychrotrophic bacterium Shewanella sp. SIBl

    2005年 3月

    大阪大学大学院 工学研究科

    物質・生命工学専攻

    鈴木裕

  • 目次

    序論

    第 1章低温 菌由来APaseの遺伝子クローニングと特性解析 7

    1-1. はじめに 7

    1-2. 実験方法・材料 8

    ト2-1. 菌体、プラスミド 8

    1-2-2. 材料 8

    1-2-3. SIBl APase遺伝子のクローニング 8

    1-2-4. プラスミドの構築 8

    ト2-5. 大量発現および精製 9

    1-2”6. 蛋白質濃度 9

    1-2-7. 生化学的特性解析 9

    1-2-8. 酵素活性測定 9

    1-2-9. 熱失活 10

    1・3. 実験結果 11

    1-3-1. クローニング 11

    ト3-2. アミノ酸配列 11

    1-3-3. 組換え蛋白質の生化学的特性解析 12

    1-3-4. 酵素活性 15

    1-3-5. 安定性 15

    1-4. 考察 19

    1-4-1. 低温適応機構 19

    1-4-2. 応用の可能性 20

    1・5. 参考文献 22

    第 2章低温適応に関与する PPlaseの同定と遺伝子クローニング 25

    2-1. はじめに 25

    2・2. 実験方法・材料 27

    2-2-1. 菌体、プラスミド 27

    2-2-2. SIBl株からの可溶性蛋白質の抽出 27

    2-2-3. 二次冗電気泳動 27

    2-2-4. 遺伝子操作 27

    2圃 2圃 5. SIBl FKBP22の大量発現と精製 28

    2-2-6. 大腸菌 FKBP22の大量発現と精製 28

    2-2”7. 分子量測定 29

  • 2・2・8. 蛋白質測定 29

    2・2・9. 酵素活性 29

    2・3. 実験結果 31

    2・3・1. 低温での生育時に細胞内存在量が増加する蛋白質の

    同定 31

    2・3・2. 遺伝子クローニング 32

    2-3・3. アミノ酸配列 32

    2・3-4. 大量発現と精製 35

    2・3・5. PPiase li舌↑生 36

    2-4. 考察 39

    2-4・1. 低温でのみ活性をもっ PPlaseの同定 39

    2-4-2. SIB 1 FKBP22の構造と触媒機構 39

    2・4-3. PPlase活性の温度依存性 40

    2-4-4. 予想される生理機能 41

    2・5. 参考文献 44

    第 3章低温菌PPlaseの各ドメインの役割 48

    3-1. はじめに 48

    3・2. 実験方法・結果 50

    3・2”1. 菌体、プラスミド

    3・2・2..プラスミドの構築

    3・2・3. 大量発現と精製

    3・2-4. 蛋白質濃度

    3・2・5. 分子量測定

    3・2-6. 活性測定

    3・2・7. 円二色性(CD)

    3・2・8. 熱量測定

    3・2・9. ホモロジーモデリング

    3-3. 実験結果

    3-3-1 デザイン

    3・3・2. 大量発現と精製

    0

    0

    0

    1

    1

    1

    2

    2

    2

    3

    3

    4

    ,3

    ,コ戸3F3

    ,コ戸コ,、dF3ζJ

    戸、d,3mコ

    3・3・3. CDスペクトル 55

    3・3-4. PPlase活性 57

    3-3・5. 熱安定性 58

    3・3-6. SIBl FKBP22*と大腸菌 FKBP22*の熱安定性の比較 59

    3-4. 考察 61

  • 3-4・1. α3ヘリックスの役割

    3-4・2 N末端ドメイン、 C末端ドメインの役割

    3・4-3. SIBI FKBP22の構造安定性一活性相関

    3・5. 参考文献

    I噌

    I

    司ノ-

    a斗

    4U

    ofofo

    第4章低温菌 PPlaseと蛋白質の結合

    4・1. はじめに

    4・2. 実験方法・材料

    4-2-1. 材料

    6

    6

    7

    7

    ζurorofo 4・2・2. CDスペクトル 67

    4-2・3. 表面プラズモン共鳴を用いた分子間相互作用の解析 67

    4-2-4. インシュリンの凝集抑制効果の測定 68

    4-3. 実験結果 69

    4・3-1. 基質蛋白質のコンブオメーションの影響 69

    4・3-2.. SIB 1 FKBP22のドメインと蛋白質の結合 71

    4-3・3. 蛋白質凝集抑制効果 72

    4-4. 考察 73

    4-4-1. SIB 1 FKBP22の基質および基質認識機構 73

    4-5. 参考文献 75

    第 5章総括(全体を通しての考察)

    5・1. 蛋白質の低温適応機構とは

    5-2. 低温適応と蛋白質

    5・3. 低温での蛋白質折り畳み

    5-4. 本研究の副次的成果と展望

    5・5. 参考文献

    KU

    O

    〆O

    マ’

    OOAυ

    ゥ,ヴーマ’守I

    守I0

    0

    本研究に関する論文

    謝辞

    82

    83

  • 序論

    1.生物の生育可能な温度範囲は何によって決まるのだろうか

    ヒトを含む晴乳類、は、莫大なエネルギーを消費してまでも体温を±l°Cという

    正確さで一定に保っている。これは、生命活動にとって温度がいかに重要な環

    境因子であるかを示しているロでは、この温度範囲を超えると何が起こるのだ

    ろうかロヒトの場合体温が 44・45°Cになると死亡する。これは、この温度で生存

    に必須な酵素が不可逆的に失活しまうからである[I]。これは、もっと単純な生

    物である大腸菌についてもいえる。腸内細菌の一種である大腸菌の最適生育温

    度はヒトの体温と同じ 37°Cである。そして、高温側の生育限界も 45・48°Cとヒ

    トとほぼ同じである[2]oヒトと大腸菌におけるこの一致は、高温側の生育限界

    が細胞の複雑な機能が損なわれることによるのではなく、ある種の生体高分子

    (酵素)が壊れることが唯一の原因であることを考えれば納得がいく。さらに、

    高温で生育する生物、つまり、超好熱菌(90℃以上で増殖可能)、高度好熱菌(75℃

    以上)、好熱菌(55°C以上)由来の酵素の研究から、生育至適温度が高いほど酵

    素の構造安定J|生が高いことが明らかになっている[3]oこれは、構造安定性の高

    い酵素を手に入れることが高温で生育する生物にとっての高温適応戦略のひと

    つであることを示唆しており、酵素の失活が高温での生育にとっていかに本質

    的な問題であるかを示している。

    一方、低温では、ヒトは体温が 33°Cまで低下すると意識がなくなり、 26・28°C

    で心筋細動がおこり死亡する[I]。いわゆる凍死である。しかし、この温度で細

    胞自体が死ぬわけではなく、人工心肺を使った手術ではわざと低温にすること

    さえある。大腸菌の場合、低温側の生育限界は 8°Cで、 4°Cになると徐々に死滅

    していく[4]o一方で、適切な条件下で急激に冷却すれば生育はできなくても死

    滅せず、 ・80°Cで細胞を保存することが研究室では日常的に行われている。また、

    37。Cから 4。Cに移動させるより 15。Cから 4°Cに移動させるほうが死減速度が遅

    いことも知られている。このように低温限界での細胞の振る舞いは高温のよう

    に単純ではない。しかし、生物には、はっきりとはしないまでも低温の生育限

    界が必ずあり、多くの場合それは氷点以上の温度である。

    低温で生物が直面するマイナス要因のなかで最もよく調べられているものと

    して、細胞膜の流動性の問題がある。生体膜は脂質の二重膜であり、様々な膜

    蛋白質がその中に浮かぶように分布している。生体膜が単なる袋以上の機能、

    たとえば、物質の選択的透過や電気化学的濃度勾配の発生、情報伝達などを発

    揮するには、脂質が液体の状態でなくてはならない。しかし、低温では脂質が

    ゲル状に変化し、膜の機能が著しく低下すると考えられる。この考えは、低温

    で生育する細菌(0。C付近でも生育する細菌、低温菌)の生体膜を調べることで

    1

  • 確かめられた[5]oこれらの細菌は明らかに、鎖長が短く、飽和度の低い脂質を

    多く含んでいたのである。これは、液ーゲル状態遷移温度の低い脂質成分で生

    体膜を構成することが低温で生育する生物にとっての低温適応戦略であること

    を示唆しており、膜の流動性が低温での生育にとっていかに本質的な問題であ

    るかを示している。また、大腸菌を様々な温度で培養し脂質の成分を比較する

    と、温度の低下に従って不飽和脂肪酸の割合が増加することが報告されている

    [6]。大腸菌は、環境温度に応答して脂質の成分を変えることにより、温度変化

    に適応しているといえる。しかし、培地の成分を変えることにより、温度と不

    飽和脂肪酸含量の関係が±10。C程度変化することも同じ研究から分かつている。

    大腸菌の低温側の生育限界温度は培地成分によって変化しないので、膜の流動

    性の低下は必ずしも生育限界温度の決定因子とはなっていないようだ。

    また、もう一つ、低温で生物が直面するマイナス要因として、化学反応速度

    の低下がある。低温では、生命を維持していくために必要な化学反応のネット

    ワークが反応速度の低下により滞ってしまうと考えられる。これらの化学反応

    はほとんどすべてが酵素と呼ばれる触媒の作用により進行することから、低温

    における反応速度の低下を防ぐためには 2つの戦略が予想される。一つは、低

    温で高い触媒活性を発揮する酵素を手に入れることである。実際、低温菌から、

    低温での触媒活性が非常に高い酵素が多く見つかっている[7]o しかし、低温菌

    の酵素がすべて低温で高い活性をもっているわけではない。低温菌の酵素であ

    るにもかかわらず、低温域において大腸菌由来酵素より活性の低い酵素も数多

    く報告されている[8・11]。これは、反応速度の低下がそれほど重要でない反応を

    触媒しているからかもしれないし、あるいは以下に述べる別の戦略で反応速度

    の低下を克服しているのかもしれない。もう一つの方法は、酵素の存在量を増

    やす方法である。当然、酵素濃度が高いほど平衡に達するまでの時間は短くな

    り、反応系がスムーズに進むようになる。多くの酵素を生産するのは細胞にと

    ってエネルギー的に不利であるが、活性の強弱を細かく設定できるという利点

    がある。しかし、この戦略で低温における反応速度の低下を防いでいるという

    確実な証拠は示されていない。このように、反応速度の低下は生命にとってマ

    イナス要因ではあるが、それほど本質な問題のようには見えない口また、反応

    速度の低下だけでは、低温における生育速度の低下を説明することはできても、

    生育が完全に止まってしまう現象を説明することはできない。低温で生物が直

    面するマイナス要因として、他にも、物質移動速度の低下、 DNAが融解しにく

    くなることによる DNAの複製、転写の効率低下などが考えられる。その他の現

    在知られていないものも含めて、それらが複雑に絡み合って低温での生育限界

    が決まるのだろう。

    2

  • 2.低温適応と蛋白質

    本研究では、生物の低温適応機構を低温菌由来蛋白質の構造という視点から

    捉え、考察していく。それには以下のような理由がある。

    生命とは、一連の複雑な化学反応系が体系化したものと捉えることができる。

    これらの化学反応はほとんどすべてが酵素と呼ばれる触媒の作用により進行す

    る。そして、酵素の物質としての正体は蛋白質である。上で述べた生体膜の低

    温適応の例では、直接的には脂質組成の変化により低温適応を実現しているが、

    脂質合成は酵素によって触媒されるので、各種の脂質合成酵素の活性を適切に

    調節することでにより低温に適応しているともいえる。このように、ほとんど

    の生化学反応は酵素によって触媒されるので、どのような低温適応機構でも酵

    素の作用機構を抜きに考えることはできない。酵素は立体構造を形成してはじ

    めて触媒機能を示すので、低温適応に関与する酵素の構造的特性を調べるとい

    う手法は、その酵素の作用機構を解明するために不可欠である。

    蛋白質の構造安定性が生物の高温側での生育限界を規定する決定的な因子で

    あることは上で述べた。高温で生育する微生物から単離された蛋白質はほぼ例

    外なく構造安定性が高い。これらの蛋白質の研究が、蛋白質が構造をどのよう

    に維持しているかという基本的な原理の理解に大きな貢献をしたことは注目に

    値する。蛋白質とは、特定の三次元構造に折り畳まれ、何らかの機能をもった

    ポリペプチドのことをいう。ランダムにアミノ酸が連なったポリペプチドは安

    定な折り畳み構造をとることはできないのに、どのようにして蛋白質は折り畳

    み構造を維持しているのか。超好熱菌由来酵素の安定性が極端に高い理由を研

    究することで、蛋白質の構造を維持する様々な因子が見つかり、それらがどの

    程度安定化に寄与しているかが明らかになってきている[12,13]oこのように、

    極限環境に適応した酵素では、蛋白質の基本的な性質が顕在化することがあり、

    その顕在化の理由を明らかにすることで蛋白質一般にわたる基本原理の解明に

    つながることが期待できるo 低温に適応した酵素ではどうだろうか。上で述べ

    たように、低温菌由来酵素は低温域での活性が常温菌より高いものが多い。こ

    のような高い活性はどのような原理によって成し遂げられているのだろうか。

    また、低温菌由来酵素は一般に、常温菌由来酵素に比べ構造安定性が低いが、

    これは高い活性と関係があるのだろうか。それとも、安定性の低さには他の理

    由があるのだろうか。これらの視点から蛋白質を構築している基本的な性質の

    理解、ひいては蛋白質を自由に設計する方法論の構築へと進んでいくことがで

    きるのではないだろうか。

    3.研究の目的

    本研究では、研究対象として低温菌Shewanellasp. SIBl株を用いた。この細菌

    3

  • は当研究室において新潟県渋柿油田石油備蓄タンクから単離された(14]。この耐

    冷菌は、 20°Cで最も速く増殖するが、 4°Cでも比較的速く増殖し(世代時間約 8

    時間)、 0。Cでの増殖も確認されている。一方 30°Cでは増殖できない。大腸菌の

    低温側生育限界温度の 8°Cより低い温度においても十分に生育する SIBl株は、

    細胞レベルでも分子レベルでも低温に適応していると考えられる白そこで、本

    研究では、 SIBl株由来酵素を用い、構造安定性、酵素活性と低温適応の関係を

    明らかにすることを目的とした。

    本論文では、まず、第 1章で、低温での高い活性と低い構造安定性という典

    型的な低温適応酵素の特徴を有している SIBl株由来アルカリフォスファターゼ

    のクローニング、および構造の不安定化を生み出す分子機構について述べる。

    第 2章では、プロリン異性化酵素(PPiase)が SIBl株細胞内において、低温で

    の生育時にのみ働いている可能性があることを示す。第3章および、第4章では、

    この PPlaseの物理化学的特性からこの蛋白質の機能について考察する。その結

    果、この PPlaseは蛋白質の折り畳み機構に関与することが強く示唆された。こ

    れは、生物が低温で生育する際、蛋白質折り畳み反応がいかに本質的な問題と

    なるかを示している。つまり、低温に蛋白質が適応するには、高い活性だけで

    なく迅速な折り畳み反応も実現しなくてはならないということである。低温菌

    由来酵素の安定性の低さはこの点にも関係しているのかもしれない。

    4.用語について

    原核生物の生育温度に着目する場合、生育可能温度の違いにより、超好熱菌

    ( hyperthermophile、90。C以上で増殖可能)、高度好熱菌(extremethermophile、75°C

    以上)、好熱菌(thermophile、55°C以上)、耐冷菌(psychrotroph、20°C以上に至

    適生育温度があり、 0°C近辺で増殖可能)、好冷菌(psychrophile、20。C以下のみ

    で増殖可能)、および常温菌(mesophile、耐冷菌と好熱菌の中間に属する)に便

    宜上分類されている。この分類に従えば、 Shewnellasp. SIBl株は耐冷菌の一種

    である。しかし、菌種によっては、生育至適温度や生育可能温度が培地組成等

    によって変化することもあり、すべての菌が厳密に分類できるわけではない。

    少なくとも本論文の内容では、耐冷菌と好冷菌を区別する必要はなく、むしろ

    混乱を招くと思われるため、両者をまとめて低温菌と呼ぶことにする。

    参考文献

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    6

  • 第 1章低温 菌APaseの遺伝子クローニングと特性解析

    1-1.はじめに

    低温で生育できる生物は、当然ながら低温に適応した酵素を生産していると

    考えられる。一般に、低温菌由来酵素は、常温菌の同じ酵素に比べ 1)低温域で

    の触媒効率が高い、 2)反応至適温度が低温側へシフトしている、 3)温和な温

    度域での構造安定性が低いといった特徴をもつことが多い[1”6]o これらの特徴

    はどのような分子機構によってなし遂げられているのだろうか。本章では低温

    菌Shewanellasp. SIBl株アルカリホスファターゼ(APase)の遺伝子クローニン

    グと特性解析の結果を述べ、その特性と低温適応との関係やそれを生み出す分

    子機構について考察する。

    アルカリホスファターゼ(APase)は細菌からヒトまで広く存在するリン酸モ

    ノエステラーゼの一種である[7]。大腸菌APaseはBAPと呼ばれ、遺伝子工学の実験室において、 DNAの 5’末端のリン酸基を除去する反応に用いられている。

    しかし、反応後の DNAはほとんどの場合DNA連結反応に用いられるが、 APase

    はその反応を限害してしまう。そのため、反応後の DNA溶液に含まれている

    APaseは完全に取り除くか、失活させなくてはならない。現在では、フェノール

    /クロロホルム抽出など煩雑な作業ににより蛋白質の除去を行っている。熱安定

    性が低いことが予想される低温菌由来 APaseは、熱処理により容易に失活させ

    ることができることが期待され、 BAPに比べ便利であると考えられる。そのよ

    うな理由もあり、低温菌由来酵素の代表として SIBl株由来 APaseを選んだ。

    APaseの中では、大腸菌由来の APaseが構造、機能ともに最も詳しく調べられて

    いる[8・14]。この酵素はホモダイマーとしてペリプラズムに存在し、無機リン酸

    欠之時にエステルからリン酸を取得する反応に関与している。ひとつのサブユ

    ニットは 449アミノ酸残基からなり、 2つの Zn2+と 1つの Mgz+を含んで、いる。

    結品構造はすでに明らかにされており、触媒機構に関与する残基、金属イオン

    結合サイト、基質結合部位も同定されている。そこで、常温菌酵素の代表とし

    てこの大腸菌APaseを選ぴ、低温菌の APaseと比較することにした。

    7

  • 1-2.実験方法・材料

    1・2・1.菌株、プラスミド

    低温菌 Shewanellasp. SIBl株は新潟県渋柿集油所オイルサンプルから当研究

    室で単離された [15]ophoA遺伝子欠損大腸菌 AC109株 [16]は A.Nishimura氏

    から頂いた。プラスミド pET25bはNovagen社から購入した。大腸菌AC109(DE3)

    株はλDE3Lysogenization Kit (Novagen社)を用い T7RNAポリメラーゼ遺伝子を

    有するファージ(λDE3)で AC109を溶原化し構築した。 λDE3の溶原菌は pETベ

    クターにクローニングされた目的遺伝子の発現に用いることができる。大腸菌

    の形質転換体は 50mg/Lのアンピシリンを含む NZCYM培地で培養した。

    1-2・2.材料

    大腸菌由来APase及び?同ニトロフェニルリン酸 (pNPP)は和光純薬より購入

    した。

    1-2-3. SIBl APase遺伝子のクローニング

    Shewanella sp. SIBl株のゲノム DNAはSarkosyl法により調製し[17]、これを

    SIBl APase遺伝子の一部を増幅するための PCRの鋳型として用いた。このとき

    PCR のプラ イ マ ー と し て 用 いたオリコヌクレオチドの配列は 5'-

    AGTGGTTATGTT ACCGACTCGGCCGC-3’及び 5’-GTATGACCGCCCGTT

    GTCCAACC-3’であるoPCR反応は KODポリメラーゼ(東洋紡)を用いて、

    GeneAmp PCR system 2400 (Perkin-Elmer社)にて行った。増幅した DNA断片を

    SIBl APase遺伝子全長をクローニングするためのサザンハイブリダイゼーショ

    ン、コロニーハイブダイゼーションのプローブとして用いた。サザンハイブリ

    ダイゼーション、コロニーハイブダイゼーションは AmershamPharmacia Biotech

    社の AlkPhosDirect Systemを用いて行った。 DNAの塩基配列は Prism310 DNA

    sequencer (Applied Biosystems)を用いて決定した。

    1・2-4.プラスミドの構築

    SIBl APaseの大量発現プラスミド pET-SAPは、SIBlAPase遺伝子そ含む DNA

    断片を pET25bのXbal-Sallサイトに挿入して構築した。この DNA断片はクロー

    ニングされた SIBlAPase遺伝子を鋳型として、 PCRにより増幅した。このとき

    PCR のプライマーとして用いたオリゴヌクレオチドの配列は T・

    CCTCTAGAAAGAAGGAGATATACATATGCTTATGGATGCCATCG・3’及び 5’-

    CAACCG’TCGACσITGATAGCGGAGG・3’である(下線部は Xbal及び Sallサイ

    トを示す)。このプラスミドでは、 SIBlAPase遺伝子の開始コドンがXbalサイ

    トの 70bp下流に、終止コドンがSallサイトの 40bp上流に位置している。

    8

  • 1・2・5.大量発現及び精製

    SIBl APaseの大量発現には大腸菌 AC109(DE3)株を pET-SAPで形質転換した

    株、 ACl 09(DE3)/pET-SAP株を用いた。この株では、 SIBlAPase遺伝子の転写が

    T7プロモータによって制御される。この株を 660nmのODが05・1.0に達する

    まで 37。Cで培養したところで、終濃度 lmMのisopropyl~-D-thiogalactopyranoside

    (IPTG)を添加し、その後さらに 15°Cで 15-20時間培養を続けた。 4000g、7分の遠心分離により菌体を集め、浸透圧ショック法[18]によりペリプラズム空間に

    存在している蛋白質を細胞外に排出させ、さらにこのペリプラズム蛋白質を硫

    安沈殿により分画した。 20-40%硫安濃度で沈殿した蛋白質を 5mM MgChを含

    んだ 50mM Tris-HCl (pH 8.0)に溶解させ、同バッファーで平衡化した HitrapQカ

    ラム(AmershamBioscience)に供した。このカラムから 0ー0.5MNaClの直線勾

    配で蛋白質を溶出させ、 SIBlAPaseが十分な純度に精製されたフラクションを

    集め、以降の特j性解析に用いたo 蛋白質の純度は蛋白質を SDS-PAGE[19]に供

    し、 CoomassieBrilliant BlueR250で染色することで判定した。

    1-2・6.蛋白質濃度

    蛋白質の濃度は 280nmの吸光度を測定して求めた。成熟型 SIBlAPase (残基

    番号 28-455)については A2so0・13= 1.0、大腸菌APaseについては A2so0・13= 0.7 の関係を用いた。これらの値は 280nmにおける TyrとT中のE値、それぞれ 1,576

    及び5,225M-1 cm・1,を用いて決定した[20]a

    1・2・7.生化学的特性解析

    蛋白質の分子量は、 150mM NaClを含む 20mM Tris-HCl (pH 8.0)で平衡化した

    Superdex 200 (Amersham Bioscience)によるゲルろ過クロマトグラフィーで推定

    した。スタンダードとして aldolase(158 kDa)、 bovineserum albumin (67 kDa)、

    ovalbumin (43 kDa)、 chymotrypsinogenA (25 kDa)、 RNaseA(14印 a)を用いた。

    短波長 UV(200・260nm)及び長波長 UV(250・320nm) CDスペクトルは日本分

    光のJ-725 spectropolarimeterにより測定した。バッファーには 100mM Tris-HCl

    (pH 8.0)を用い、 25°Cで測定した。短波長領域の測定では蛋白質濃度 0.18・0.27

    mg/mで光路長 0.2cmのセルを用い、長波長領域の測定では蛋白質濃度 1.2-1.6

    mg/mで光路長 l.Ocmのセルを用いた。平均残基分子楕円率[8](deg・cm2・dmolサはアミノ酸の平均分子量 110を用いて換算した。

    N末端アミノ酸配列は Procise491 automated protein sequencer (Perkin Elmer

    Jaman)を用いて決定した。

    1・2・8.酵素活性測定

    APase活性はp-ニトロフェニルリン酸 (pNPP)を基質として測定した。以降特

    に言及しない限り、 SIBlAPaseに対しては 20mMMgCh、5mMZnCh、lOOmM

    9

  • KCl、5mMpNPPを含む 50mM Gly-NaOH (pH 10.5)のバッファーを用い 20°Cで

    10分反応させて酵素活性を測定した。同様に、大腸菌APaseに対しては lOmM

    Mg Ch、400mM NaCl、5mMpNPPを含む lOOmMCAPS・NaOH(pH 10.0)のバッ

    ファーを用い 60°Cで 10分反応させて酵素活性を測定した[21]o反応は酵素の添

    加によって開始し、 0.2MNaOHの添加によって停止させた。反応生成物である

    P”ニトロフェニルリン酸(pNP)は、 410nmにおけるモル分子吸光係数、 16,200M-1

    cm-1を用いて決定した。酵素活性の 1単位は 1分間に 1μmolのpNPを生成する

    酵素量と定義した。また、比活性は酵素活性を蛋白質重量(mg)で、割った値と

    定義した。 SIBlAPaseのpH、二価金属イオン、塩濃度依存性は、その他の条件

    を活性の最適条件に固定して検討した。

    1-2・9.熱失活

    熱失活に対する安定性は、 5mMMgChを含む 50mM Tris-HCl (pH 8.0)中の酵

    素(0.05-0.1 mg/ml)を様々な温度でインキユベートして解析した。適当な間隔

    でサンプリングした酵素の残存活性を、 SIBlAPaseについては 20°C、大腸菌

    APaseについては 60℃で測定した。

    10

  • 1・3.実験結果

    1-3-1.クローニング

    Shewanalla sp. SIBl株と同属のShewanellaoneidensis MR・1株はゲノム配列が

    すでに解読され、公開されている[22]oSIBl株から以前クローニングされた

    RNase HI [23]のアミノ酸配列は MR・1株の RNaseHIのアミノ酸配列と最も高い

    配列同一性を示したので、 SIBlAPaseもMR・1株の APaseと高いアミノ酸配列

    同一性を有していると予想される。また、様々な細菌由来 APaseのアミノ酸配

    列[24・26]を比較してみると、活性部位周辺のアミノ酸残基はよく保存されて

    いることがわかる。これらのことを踏まえ、 MR・1株 APaseの活性残基付近、

    Ser92-Ala 100および Gly396_ Thr4o3をコードする領域の塩基配列に基づいたオリゴ

    DNAを設計し、 SIBlAPase遺伝子の一部を増幅する PCRのプライマーとした。

    SIBl株のゲノム DNAを鋳型として PCRを行った結果、 936bpの単一バンドが

    増幅され、シーケンシングにより APase遺伝子の一部であることが確かめられ

    たD この DNA断片をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション及び、コロ

    ニーハイブリダイザーシヨンにより、 SIBlAPaseの全長が含まれている 2.5kbp

    の SIBl株ゲノム kpnI消化断片を取得した。塩基配列を決定したところ SIBl

    APaseは455アミノ酸残基からなり、理論分子量は 49,104Da、等電点(pl)は

    4.9と分かつた。また、 Shine-Dalgarno(SD)配列(AGGA)は開始コドンの 11bp

    上流に位置しており、プロモーター配列と予想される配列も SD配列の上流に存

    在していた。

    1・3-2.アミノ酸配列

    SIBl APaseのアミノ酸配列とその他の低温菌、常温菌、好熱菌由来APaseの

    アミノ酸配列とのアライメントを作成し、 Fig.1・1に、示した。SIBlAPaseはMR・1

    APase [21]と最も高い配列同一性(66%)を示した。また、低温菌Shewanellasp.

    APl株由来 APase(SCAPase) [26]と 62%、低温菌 TAB5株由来 APase(TAB5

    APase) [24]と 55%、大腸菌 APase[27]と 37%、枯草菌 APaseIII[28]と 42%、

    Thermus sp. FD3041由来 APaseと35%、高度好熱菌 Thermotogamaritime由来

    APase [29]と 38%のアミノ酸配列同一性を示した。大腸菌APaseにおいて活性部

    位を形成していることが示されている残基[8]のうち、Asp73、Ser124、Thr177、Argtss、

    Glu344、Asp349、His353、Asp391、His392、His434(残基番号は大腸菌のもの、 SIBlAPase

    では Asp6t、Ser110、Thrt63、Arg174、Glu274、Asp219、His2s3、Asp321、His322、His4t4

    に対応する)は保存されており、唯一Asp11sだけが SIBlAPaseでは Hist6tに変

    わっていた。この同一性の高さから、 SIBlAPaseは構造的にも機能的にも大腸

    菌APaseによく似ていると考えられる。

    大腸菌APaseで活性部位の残基のうち唯一 SIBlAPaseと異なっている Asp11s

    は金属イオン結合部位を形成する残基の一つである。この位置の残基は晴乳類

    11

  • APaseでは His残基がよく保存されいることが知られており[30]、 Fig.1に示し

    たAPaseでも大腸菌APaseを除きすべてHis残基が保存されている。大腸菌APase

    の比活性が哨乳類 APaseと比べ著しく小さいが[30]、 Asp11sをHisに置換したと

    ころ、 Mg2+との結合の親和性が上昇するとともに比活性が大きく上昇したと報

    告されている(31]oさらに、大腸菌 APaseとSIBlAPaseのアミノ酸配列の違い

    として欠失、挿入配列が挙げられる。 α3 ヘリックスとその両端部位

    ( Cys19o_Gly20s)および1310鎖ーα9ヘリックス聞のループ領域(Val2ss _Cys3os)は

    大腸菌 APaseには存在しているが SIBlAPaseでは欠失している。一方、 SIBl

    APaseでは大腸菌 APaseのjH5鎖-j316鎖聞に 37残基の挿入がある。これらの欠

    失、挿入は他の APaseにも見られることから、これらの違いは大腸菌に特徴的

    なものと考えられる。

    1-3-3.組換え蛋白質の生化学的特性解析

    ホスト大腸菌由来APaseの混入を防ぐため、SIBlAPaseの大量発現には APase

    欠損大腸菌株AC109(DE3)株を用いた。組換え蛋白質はホスト大腸菌のペリプラ

    ズムに分泌されたものを抽出し、 SDS・PAGEでシングルバンドとなる純度まで

    精製した(Fig.1-2)。 lLの培養液から約 l.Omgの精製した組換え蛋白質が得ら

    れた。この蛋白質の N末端アミノ酸配列は Asp-Glu-Val-Ile-Met圃 Pro-Pro-Alaであ

    り、組換え蛋白質が細胞質からぺリプラズムに輸送される際にシグナルペプチ

    ド(Met1-Ala27)が除かれたことを示している。

    SIBl APaseの分子量は SDS-PAGEでは 44kDa、ゲルろ過クロマトグラフィー

    Fig.1・1.Alignment of the bacterial APase Sequences.

    The most conserved amino acid residues at each position are highlighted in black. Gaps are

    denoted by dashes. The serine and arginine residues forming the catalytic site

    (phosphorylation site) and phosphate binding site of E. coli APase are denoted by① and ti,

    respectively. The amino acid residues forming the three metal binding sites of E. coli APase

    are denoted by asterisks (勺.Numbers along the sequences indicate the positions of the amino

    acid residues which start from the initiator methionine for each protein. The ranges of the

    α-helices and f3-strands of E. coli APase are indicated above the sequences. The accession

    numbers of these sequences are AB073982 for Shewanella sp. APase (SCAP), Y18016 for

    Antarctic strain T AB5 APase (T AB5), AE015527 for Shewanella sp. MR・1APase (MR-1),

    M29670 for E. coli APase (Eco), D88802 for B. subtilis APase III (Bsu3), AF079878 for

    Thermus sp. FD3041 AP蹴(TFD),and AEOOl 701 for T. maritima APase (Tm斗 Underlined

    sequences represent the N-terminal signal sequences, which were either experimentally

    determined or are estimated using the SignalP V2.0 World Web Server. The signal sequences

    were determined for SIBl APase (this study), TABS APase[24], E. coli APase[27], and B.

    subtilis APase III[28].

    12

  • SJ Jll

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    噌!lM 1』園重量温室 -Pょa自社 l\L阻VFT'~日以L£五CK"CT SVLV則 的 L KTト ー 盟店11 阻 fill哩:Q

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    一冊割問割高品羽芯

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    m哩必必司即寸川

    一mE輩哩Ma川

    園都

    ω捕時措

    強調週間喝川田湖

    W

    臨臨醐

    J

    m彊調盟問晶

    ω占

    V

    mm圃噛

    叫趨

    ι唱

    企臨較鴨嘩蝦

    謹一醇

    ω息山首花忠司

    -mm喝

    一唱団的

    引出札

    M

    一問山町附

    S!Bl .J!;.2 VQTP

    SCA!' ,99 N I A日へ .

  • では 100kDaと推定され、 SIBlAPaseは大腸菌APaseと同様、二量体を形成

    していることが示唆された。短波長UV/CDスペクトルは SIBlAPaseと大腸

    菌APaseでよく似ていた(Fig.1・3)。長波長 UV/CDスペクトルでは 280nm

    を中心としたピークの高さと幅に違いが認めらた(Fig.1・3)。これらの結

    果から、全体的な主鎖の折れ畳み構造は両者で似ているが、芳香族アミノ酸

    残基付近の局所的なコンフォメーションには若干の違いがあると考えられ

    る。

    2 3 kDa

    97 剣欄酔

    66 繍勝

    .. , 45 剣勝欄惨

    30 輔副闘伊

    Fig.1・2.SDS・PAGEof purified SIBl APase.

    The samples were subjected to 12% SDS-PAGE and stained with

    Coomassie Brilliant Blue. Lane 1, a low molecular weight

    marker kit (Amersham Biosciences); lane 2, SIBl APase; lane 3,

    E. coli APase. Numbers along the gel represent the molecular

    masses of individual standard proteins.

    nu ∞

    ra

    p-一

    05をω宏司}

    A n

    u

    n

    u

    za

    LoE刃向

    εuooS{

    @}

    e:・10000

    ・50・15000

    200 220 240

    Wavelength (nm)

    260 260 280 300 320

    Wavelength (nm)

    Fig.1・3.百 efar-UV (A) and near・UV(B) CD spectra of SIBl APase (thick line)

    and E. coli APase (thin line).

    14

  • 1・3-4.酵素活性

    温度以外の、反応至適条件はすべてpNPPを基質として用い、20。Cで決定した。

    まず、50mM Tris-HCl (pH 7.6・8.8)及び Gly-NaOH(pH 7.7-12.4)を用いて様々な pH

    で活性を測定したところ、 pH10.5で最大活性(比活性 950units/mg)を示した

    (Fig. 1・4)。 Gly-NaOHの濃度は 50mMの時に最大の活性を示し、 20mMや 200

    mMGly-OHでの活性は 50mMの時の約 30%であった。次に、 NaClとKCIを用

    い塩濃度依存性を調べたところ lOOmMKCI存在下で最大の活性を示した。 KCI

    非存在下、 200mMKCI存在下での活性は最大活性の約 50%程度であった占 NaCl

    は酵素活性に阻害的に働き、200mMNaCl存在下での活性は NaCl非存在下での

    活性の約30%であった。 SIBlAPaseの活性は金属イオンに依存しており、特に

    Mg2+と Zn2+をともに加えたとき、比活性の大きな増加が認められた(Fig.1-5)。

    20 mM MgC}z、5mMZnC}zの存在下で最大活性(比活性950units/mg)を示し、

    金属イオン非存在下では最大活性の 5%まで低下した。その他の金属イオン

    Mn2+、 Fe2+、 Co2¥Ni2¥ Ba2¥ Cu2¥ Ca2+、 Sr2+を添加しても活性の上昇は認め

    られなかった。

    APase活性の温度依存性は、 50mM Gly-NaOH (pH 10.5)、 lOOmMKCI、20mM

    Mg Ch、5mMZnC}z、5mMpNPPの条件下、様々な温度で活性を測定して解析

    した。 10分の反応時間後に存在する生成物(pNP)量を各温度で比較すると、

    SIBl APaseは50。C、大腸菌APaseは80°Cで最も効率的に基質の加水分解を触媒

    した(Fig.1-6)。したがって、 SIBlAPaseのこの条件での見かけ上の反応至適

    温度は大腸菌 APaseに比べ 30。C低温側にシフトしているロ各温度での比活性は

    Table. 1-1に示した。 50°Cにおける SIBlAPaseの比活性は 80°Cにおける大腸菌

    APaseの比活性の 3.1倍であり、つまり、それぞれの最適条件下での加水分解速

    度を比べると SIBlAPaseの方が高いことを示している。また、 50°C、20°Cでの

    SIBl APaseの比活性は大腸菌APaseと比べ、それぞれ 7.3倍、 25.3倍高く、 SIBl

    APaseは低温によりよく適応しているということができる。 SIBlAPaseの場合、

    55°Cより高い温度で、は反応時間に対する生成物の直線的増加が認められなかっ

    たため、比活性を測定していない。同様の理由から、大腸菌APaseの場合は 85°C

    より高い温度で、は比活性の測定を行わなかった。これは、これらの温度では酵

    素が反応時間中(10分間)安定に存在できないためであると考えられるD

    1ふ5.安定性

    熱失活に対する安定性を SIBlAPaseと大腸菌APaseで比較した(Fig.1・7)。

    大腸菌 APaseは非常に安定性が高く、 80°Cにおいても半減期が 6時間以上であ

    った口一方、 SIBlAPaseは60。Cでの半減期が 22分、 70°Cでの半減期が3.9分で

    あり、大腸菌APaseよりもかなり安定性が低かった。

    15

  • 1000

    、”‘mE コ句.ー、,、, 800

    600

    400

    R』5昌~ さl. 200

    。7 8 9 10 11 12 13

    pH

    Fig.1・4.pH dependence of the SIBl APase activity.

    The e回 ymaticactivity was determined at 20°C in 50 mM Tris-HCl (pH 7.6-8.8) (口) or 50mM

    Gly-NaOH (pH 7.7-12.4) (・)containing 20 mM MgC}i, 5 mM ZnC}z, 100 mM KCI, and 5 mM

    pNPP.

    p、1000 r『 1000

    ミ‘E0、、~ 800 3ロE~ 800 主.fE、600 .哩〉=、

    さ(.) 600 ーt・3•

  • 0.1

    0.08

    0.02

    0.06

    0.04

    (石Eユ)aZ門ごo芭コOE〈

    。。 100 80 60 40 20 Temperature (。C)

    Fig.1・6.Temperature dependent activities of SIBl and E. coli APaes.

    The enzymatic reaction was carried out at the temperatures indicated in 1 ml of the reaction

    mixture for 10 min, and the amount of pNP accumulated upon reaction was plotted against the

    temperature. The reaction mixture contained 50 mM Gly-NaOH (pH 10.5), 20 mM MgC}z, 5

    mM ZnC}z, 100 mM KCl, 5 mM pNPP, and 5 ng of SIBl APase (・), or 0.1 M CAPS・・NaOH

    (pH 10.0), 0.4 M NaCl, 10 mM MgC}z, 5 mM pNPP, and 5 ng of E. coli APase (0).

    Table 1. Specific activities at different tempera加res.

    The specific activities of the enzymes were determined using pNPP as a substrate. The

    substrate concentration was 5 μM. The reaction was carried out for 10 min at the temperatures

    indicated. Each experiment was carried out in duplicate and the average value is shown.

    Errors from the average values were within 6%.

    vd t

    ・1v

    、ノ

    iz

    M

    C

    世.

    m

    c

    u

    eit

    pa

    F3

    Temperature

    (。C)

    Enzyme

    392 4 SIBl APase

    952 20

    1880 50

    37.7 20 E. coli APase

    257 50

    600

    17

    80

  • 100 ,,.崎、

    '*' 、、_,司〉圃d、〉

    噌t・2• ro

    10

    吋g,,悶四2国.

    Q)

    。 20 40 60 80 Incubation time (min)

    Fig.1・7.Thermal stability of SIBl and E. coli APases.

    SIBl APase was incubated at 60°C (・) and 70°C (・), and E. coli APase was incubated at

    80°C (口) in 50 mM Tris同 HCI(pH 8.0) containing 5 mM MgC!i・Atappropriate intervals,

    an aliquot was withdrawn and determined for residual activity at 40°C for SIBl APase and

    60°C for E. coli APase.

    18

  • 1-4.考察

    1-4-1.低温適応機構

    本研究では、大腸菌内で大量発現させた SIBlAPaseの活性と安定性を測定し、

    常温菌である大腸菌由来 APaseと比較した。低い安定性、活性至適温度の低温

    側へのシフト、低温での高い酵素活性といった特徴から、 SIBlAPaseは典型的

    な低温適応酵素であるということができる。 TABS株[24]、 Vibriosp. G15・12株

    [25]、 Shewanellasp. APl株[26]といった低温菌からすでに APaseをコードする

    遺伝子がクローニングされ、大腸菌内での大量発現が行われている。これらの

    APaseは大腸菌由来APaseと32-34%のアミノ酸配列同一性を有している。しか

    しこれらの APaseは以下のような理由から、大腸菌 APaseの比較対照としては

    適当と思われる。TABS株由来APase(TABS APase)は低温酵素としての特徴を示

    すが分子サイズが小さい(353アミノ酸残基)上に、二量体ではなくより大きな

    多量体を形成する[17]aVibrio sp. GlS-12株由来APase(Vibrio APase)も非常に

    熱安定性が低いが、こちらは単量体として存在する[25]a Shewanella sp. APl株

    由来 APase( SCAP)は天然型酵素の活性至適温度は 40°Cであるのに対し[32]、

    組換え蛋白質の活性至適温度は 70°Cであると報告されており[26]、一般的な低温

    適応酵素としての特徴からはかけ離れている。一方、 SIBlAPaseは455アミノ

    酸残基からなり、大腸菌APase(449アミノ酸残基)にサイズが近く、配列同一性

    も 37%と比較的高い。さらに、二量体として存在していることや、活性の金属

    イオン依存性、 CDスペクトルの形状から、 SIBlAPaseと大腸菌APaseは構造、

    触媒機構の点でよく似ていると考えられる。それにもかかわらず、活性の温度

    依存性や構造安定性は両者で大きく異なっていた。したがって、 SIBlAPaseは

    大腸菌 APaseの比較対照として、構造、活性と低温適応機構の関係を解析する

    ためのモデルとしては、以前報告されている低温菌由来 APaseよりも優れてい

    るといってよいだろう。

    SIBl APase (成熟型)のアミノ酸配列を大腸菌のものと比べると、荷電アミノ

    酸残基(Lys+Arg+Glu+Asp)の割合は SIBlAPaseの方がわずかに少ない(SIBl

    は 17.5%、大腸菌は 20.7%)。 Nakashimaらのコンビューターを用いた解析によ

    れば、荷電アミノ酸残基含量の減少は蛋白質構造の不安定化をもたらす[32]o荷

    電アミノ酸残基は通常蛋白質分子の表面に分布し、静電相互作用により蛋白質

    の構造を安定化している。したがって、静電相互作用の減少は SIBlAPaseの不

    安定化因子のーっとして重要であると考えられる。また、大腸菌 APaseは4つCys残基を含んでいるが、 SIBlAPaseはCys残基を有していない。大腸菌の Cys

    残基はジスルフィド結合を形成しており[旬、ジスルフィド結合は通常、蛋白質

    の構造を安定化するので[34]、ジスルフイド結合がないことは SIBlAPaseの不

    安定化因子のーっと考えることができる。一方で、ループ領域に Pro残基を導入

    すると変性状態のエントロビーが低下し構造が安定化されることから[34]、 Pro

    19

  • 残基の数が少ないほど蛋白質の安定性が低いという提案がなされているが[35]、

    SIBl APaseと大腸菌APaseを比較するとこの点では両者に大きな差はない(SIBl

    は4.9%、大腸菌は 4.7%)。

    Fig. 1-1に示したその他のAPaseのアミノ酸配列も SIBlAPaseと比較してみる

    と、荷電アミノ酸残基含量の減少、ジスルフィド結合の数の減少は必ずしも全

    ての低温菌由来 APaseに当てはまる特徴ではなく、また低温菌 APaseだけの特

    徴でもない。TABSAPaseの荷電アミノ酸残基含量は 20.7%と大腸菌と変わらず、

    常温菌由来酵素の MR・1APase、枯草菌由来APaselllはジスルフィド結合を有し

    ていなし\o T AB5 APaseはその代わり Pro残基の含量が 2.3%と大腸菌 APaseや

    SIBl APaseより低くなっている。これらの結果はそれぞれの低温菌由来 APase

    は、それぞれ異なった戦略で不安定化していることを示唆している。

    SCAPaseの不安定化因子のーっとしてα5ヘリックスの欠失が提案されている

    [26]oこの領域の欠失は SIBlAPaseでも認められるが、低温菌由来 APaseだけ

    でなく常温菌、好熱菌のものでも見られる(Fig.1・1)。同様に1310鎖とα9ヘリ

    ックスの聞に領域に見られる欠失や1315鎖と1316鎖の聞に見られる挿入は SIBl

    APaseだけでなく他の低温菌や常温菌、好熱菌由来APaseでも見られる。これら

    の欠失、挿入は SIBlAPaseの構造安定性とはあまり関係がないと考えられる。

    大腸菌 APaseの結晶構造によれば、二量体を形成している 2つのサブユニッ

    トは互いに強く相互作用している[8]o二量体形成面を構成しているのは主に N

    末端領域に位置する領域(α1・α3ヘリックスと132鎖)と C末端領域(仰、。10鎖と

    α16ヘリックス)である。 SIBlAPaseと大腸菌APaseのアミノ酸配列を比較する

    と、二量体形成面のアミノ酸配列はコア領域(α4、α6、α13、α14ヘリックス、

    判、 133、134、師、。7、138鎖)に比べ、保存性が低い(Fig.1・1)。このことから、 SIBl

    APaseは大腸菌APaseに比べ、サブユニット聞の相互作用が弱く、それによって

    全体の構造安定性を低下させている可能性がある。しかし、 APaseの二量体形成

    面は全蛋白質表面の 20%もの領域を占めるため、アミノ酸配列の単純な比較か

    ら二量体構造の不安定化に重要なアミノ酸置換を同定することは困難である。

    大腸菌APaseは唯一3次構造が明らかになっている APaseであるが[旬、 SIBl

    APaseには大腸菌と異なる挿入配列や欠失配列が存在するため、SIBlAPaseの立

    体構造モデルを作成することは困難である。従って、 SIBlAPaseの適応機構を

    理解するには結品構造の解析が必要であると思われる。大量発現が容易な SIBl

    APaseは結品化には有利であると期待される。

    1-4-2.応用の可能性

    DNAの脱リン酸化酵素として遺伝子工学に用いる場合、熱に対して不安定な

    APaseは有用である。本研究では、・SIBlAPaseは予想通り、熱に不安定であるこ

    とが確かめられた。また、 SIBlAPaseは5’末端突出 2本鎖 DNAの5’末端リン

    20

  • 酸基を効率的に除去できるだけでなく、 3’末端突出 2本鎖 DNAや平滑末端2本

    鎖 DNAの 5’末端リン酸基も効率的に除去できることが確かめられている

    (Nagahora, H 未発表データ)。熱安定性が低いことが知られているエビ由来

    APaseはすでに、有用な APaseとして遺伝子工学に使用されているが、大量発現、

    生成の容易さを考えると、 SIBlAPaseの方が優れているo

    SIBl株と同属のShewanellasp. APl株由来APaseの遺伝子はすでにクローニン

    グされており、大腸菌内で大量発現した組み換え蛋白質(SCAPase)の特性解析

    が行われている[26]oしかし、 SCAPaseのアミノ酸配列を SIBlや MR・1のAPase

    と比べると、SCAPaseはペリプラズ、ムへの分泌に必要なシグナルペプチド配列、

    およびα1ヘリックスを含むN末端40・50残基を欠いている(Fig.1-1) oShewanella

    属細菌は大腸菌と同様グラム陰性細菌に分類される。グラム陰性細菌の APase

    はベリプラズムに分泌されるので SCAPaseにもシグナル配列が存在しているは

    ずである。おそらく、報告されている SCAPaseの配列は N末端 40-50残基を欠

    いた不完全なものであると考えられる。さらに、組み換え SCAPaseの反応至適

    温度は 70°Cと報告されており、 SIBlAPaseと比べ著しく高い。一方で、天然

    SCAPaseの反応至適温度は 40°Cと報告されている。組み換え SCAPaseは染色体

    phoA遺伝子に変異を加えていない大腸菌内で大量発現された上に、精製蛋白質

    の収量が低い(30gの菌体から 1.7時)ため、検出された APase活性の少なくと

    も一部はホスト大腸菌由来 APaseのものであることが考えられる。別の可能性

    として、 N 末端配列欠失したことにより、至適温度が高温側にシフトしたのか

    もしれない。いずれにしても、 N 末端が通常の状態のまま大量に発現、精製で

    きる SIBlAPaseに比べ問題が多い。もうひとつの低温菌由来APaseであるTABS

    APaseもDNAの5’末端リン酸基を効率的に除去することが報告されている[24]o

    しかし、この蛋白質は界面活性剤を用いて膜画分から回収しなくてはならず、

    大量に精製するのは SIBlAPaseほど容易ではない。

    21

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    24

  • 第2章低温適応に関与する PPlaseの同定と遺伝子クローニング

    2-1.はじめに

    序論で述べたように、低温側の生育限界温度付近での細胞の振る舞いは非常

    に複雑であり、多くの因子が絡み合って限界温度が決定されているようであるo

    これらの因子として、生体膜の流動性の低下、化学反応速度の低下、物質移動

    速度の低下、 DNAが融解しにくくなることによる DNAの複製、転写の効率低

    下などが考えられる[l]oこのような因子を新たに見つけるにあたり、現実に低

    温での生育を実現している低温菌の適応機構から有益な情報が得られると考え

    られる。現在までに、世界中で多くの低温菌が単離されており、最も低い温度

    で生育可能なものは-13°Cでの生育が確認されている。当研究室で単離された

    Shewanella sp. SIBl株はδ。Cまでの生育が確認されているが、 20°Cで最も速く生

    育する[2]o低温環境に特化して適応し、最低生育温度、最適生育温度が SIBl株

    より低い低温菌は数多く報告されており[3]、それらの方がより顕著に低温適応

    機構を発達させているかもしれないD 一方で、大腸菌でも十分な生育が可能な

    20。Cで最も速く生育し、氷点付近でも生育可能な SIBl株の生育特性は、同じ菌

    株が温和環境と低温環境で生育しているときの細胞の相違点から低温適応機構

    を調べるという戦略を可能にする。

    生体内でおこる化学反応はほとんど全て酵素に触媒されて進行し、それぞれ

    の化学反応は酵素活性を介して厳密に制御されている。酵素活性の制御には大

    きく 2つの方法がある。一つは、酵素の構造変化によるものである。例えば、

    リン酸化されて初めて活性型酵素になるもの、ポリペプチドの一部が切断され

    て活性化されるもの、補因子の結合により基質特異性を変化させるものが知ら

    れている。また、熱による構造変化により、機能が変化したり不活性化するも

    のもある。もう一つは、細胞内の酵素量を変化させる方法である。転写、翻訳、

    分解と様々な段階で各々の酵素量は厳密に制御されている。これらの制御によ

    り、生物は必要時に必要な酵素活性を増加させ、不必要な酵素活性を抑えてい

    る。したがって、低温適応機構について調べる場合、温和環境と低温環境で生

    育している細胞の酵素量を比較することから有益な情報が得られると期待され

    る。

    本章では、FKBPファミリー蛋白質の一つである FKBP22の細胞質含量が 20°C

    に比べ4。Cで増加していることを示す。 FKBPファミリー蛋白質は、ボリペプチ

    ドに含まれるプロリン残基の N末端側ペプチド結合のシスートランス異性化を

    触媒する活性(PPlase)を持つことが知られている(Fig.2-1)。この蛋白質を大腸

    菌内で大量発現させ、精製し、 PPlaseを測定したところ、 10。Cで活性が最大と

    25

  • なり、 20°Cでは大きく低下することが分かつた。これらのことから、 FKBP22は

    SIBl株が低温で生育しているときのみ必要な蛋白質である可能性が示唆される。

    ClS 甘ans

    PPia~

    F」

    DH

    O

    円UdEV古,.

    RN

    ... N>-NCJ \ド

    CO-Re

    Fig. 2・1Schematic presentation of cis-trans isomerization about a peptide bond N-terminal of a praline

    residue in a polypeptide chain. This reaction is catalized by PPlases.

    26

  • 2-2.実験方法・材料

    2・2・1.菌体・プラスミド

    低温菌 Shewanellasp. SIBl株は新潟県渋柿集油所オイルサンプルから当研究

    室で単離された[2]。大腸菌JM109[recAl, supE44, endAl, hsdRl 7, gyrA96, rel4l,

    的i,1!..(lac-ProAB)IF', traD36, ProAB+, lacfl lacZ企MlS]は東洋紡から、大腸菌

    BL21(DE3) [F-, ompT, hsdS8(r8-, m8-), gal(λc/857, indl, Sam7, nin5,

    /acUVS・T7genel),dcm(DE3)] およびプラスミド pET-28aはNovagenから購入し

    た。プラスミド pUC18はタカラバイオ社より購入した。形質転換した大腸菌は

    50 mg/Lアンピシリン、または 35mg/Lカナマイシンを含む Luria-Bertani培地

    で培養した。

    2・2-2.SIBl株からの可溶性蛋白質の抽出

    Shewanella sp. SIBl キ朱は 1.5%Bacto Tryptone、0.1 % yeast extract、0.1% glycerol、

    0.2% KzHP04、0.1%KH2P04、0.01%MgS04・7H20、3%NaClの組成からなる 200

    mlの培地(pH7.2)を用い、 4。Cまたは 20°cで対数増殖期まで培養した。遠心

    分離(8000x g、10分間、培養時と同じ温度)により細胞を集め、 50mM Tris・HCl

    (pH7.0)に懸濁した。超音波破砕により細胞を破壊した後, 15,000x gよ30分間、4°C

    の遠心分離により、沈殿と上清を分離した。上清画分を全可溶性蛋白質画分と

    し、以降の二次元電気泳動による解析に用いた。

    2-2・3.二次元電気泳動

    二次元電気泳動(2D-PAGE)は Oh-Ishiらの方法[4]に若干の変更を加えて行っ

    た。 SIBl株から抽出した可溶性蛋白質を、 50mM Tris-HCl (pH 7.0)、 5M urea、3

    M thiourea、蛋白質濃度 3mg/mlとなるように調製し、一次元自の等電点電気泳

    動に供した。等電点電気泳動は 600V、20時間、 4。Cの条件で、行った。二次元日

    の SDS-PAGEは 12%SDSポリアクリルアミドゲルを用い、 CoomassieBrilliant

    Blue染色によって可視化した。 N 末端アミノ酸配列は Procise491 protein

    sequencer (Applied Biosystems)を用いて決定した。

    2・2-4.遺伝子操作

    Shewanella sp. SIBl株のゲノム DNAは Sarkosyl法により調製した。サザンハ

    イブリダイゼーション、コロニーハイブダイゼーションは AmershamPharmacia

    Biotech社の AlkPhosDirect Systemを用いて行ったD PCR反応は KODポリメラ

    ーゼ(東洋紡)を用いて、 GeneAmpPCR system 2400 (Perkin-Elmer社)にて行つ

    27

  • た。 DNAの塩基配列は Prism310 DNA sequencer (Applied Biosystems)を用いて決

    定した。

    2・2・5.SIBl FKBP22の大量発現と精製

    ヒスチジンタグが連結された SIB1 FKBP22 (SIB 1 FKBP22 *)を大腸菌内で大

    量発現させるためのプラスミド pSIBlは Shて芦田遺伝子を含む DNA断片を

    pET-28aの NdeI-BamHIサイトに挿入することによって構築した。挿入した

    DNA断片は PCRによって増幅した。 PCRに用いたプライマーの配列

    5'-AGAGAGAATI℃~ATATGTCAGATTI、GTTCAG-3’及び 5'-GGCCACTGGATCCA

    ACTACAGCAATTCTCA-3’(下線部はNdeIサイト及びBamHIサイトを示す)で

    あり、鋳型には SIBlゲノム DNAを用いた。

    SIBl FKBP22*の大量発現には大腸菌 BL21(DE3)をプラスミド pSIBlで形質転

    換した株、 BL21(DE3)/pSIB1株を用いた。この株を 660nmのODが0.5-1.0に

    達するまで 30。Cで培養したところで、終濃度 1mM の isopropyl

    β0・thiogalactopyranoside(IPTG)を添加し、その後さらに 30°Cで 1時間、続いて

    l0°Cで40時間培養を続けた。培養後の細胞は 6000xg、10分間、 4。Cの遠心分

    離によって集め、 0.5M NaClを含む 20mMリン酸ナトリウム(pH8.0)に懸濁し

    た。この細胞を超音波破砕によって破壊し、 15,000x g、30分、 4°Cの遠心分離

    によって得られた上清を、 Ni2+を添加した HiTrapChelating HP column (5 ml)

    (Amersham Pharmacia Biotech)に供した。蛋白質のカラムからの溶出は、流速2

    ml/minでイミダゾール濃度を 10から 500mMに直線的に増加させることで行っ

    た。得られたフラクションのうち、イミダゾール濃度 330mM付近のフラクシヨ

    ンを集め、 50mMNaClを含む 50mM Tris-HCI (pH 8.0)に透析した後、同パッフ

    ァーで平衡化した Superdex200 16/60 gel filtration column (Amersham Pharmacia

    Bio記ch)に供した。流速は 0.5ml/minで、行った。蛋白質の含まれるフラクション

    を集め、特性解析に用いた。以上の精製はすべて 4°Cで行った。蛋白質の純度は、

    蛋白質を 12%ポリアクリルアミドゲルを用いた SDS・PAGEに供し、 Coomassie

    Brilliant Blueで染色することで判定した。

    2-2-6.大腸菌 FKBP22の大量発現と精製

    ヒスチジンタグの連結された大腸菌 FKBP22(大腸菌 FKBP22*)を大量発現

    するためのプラスミド pECOLIは大腸菌のjklB遺伝子 (Ec-jklB)をpET-28aの

    NdeI-Sallに挿入して構築した。 Ee作m遺伝子は内部に NdeIサイトを有しているためPCRによって増幅した遺伝子をそのまま pET”28aのNdeI-SalIサイトに挿

    入する方法で pECOLIを作製することはできない。 そこでまず、 Ee持沼遺伝子

    を5'-TAAGAAAGGAAATCATATGACCACCCCAAC・3’及び 5’-ATTGCTGAA TG

    28

  • CCGGATCCCCTCTCG廿 CG-3’の配列のプライマーを用いたPCRで増幅した(下

    線部はNdeIサイトをしめす)。 PCR産物を pUC18のSmaIサイトに挿入しプ

    ラスミド pUCECOLIを得た。このプラスミドでは、 EeてfklB遺伝子内部に 2つの

    NdeIサイト(一つは遺伝子の 5’末端)が存在しており、その聞にEcoRIサイト、

    遺伝子下流にSanサイトが存在している。そこでこのプラスミドをNdelとEcoRI

    及び EcoRIとおIIで処理し、 Ec-j丑沼遺伝子の 5’末端領域を含む 450bpの

    NdeI-EcoRI断片と 3’末端領域を含む 250bpのEcoRI-Sall断片を得た。これらの

    断片を pET28aのNdel-SalIに挿入しプラスミド pECOLIを作製した。.

    大腸菌 FKBP22*の大量発現には大腸菌 BL21(DE3)をプラスミド pECOLIで形

    質転換した株、 BL21(DE3)/pECOLIを用いた。この株を 30°Cで培養し 660nmに

    おける濁度が 0.6になったところで終濃度 lmMのIPTGを添加した。さらに、

    30°Cで 3時間培養した後、細胞を集め、超音波破際により破壊した。細胞の破

    砕、 Niカラムクロマトグラフィ一、ゲルろ過クロマトグラフィーは SIBl

    FKBP22*の精製と同様の方法で行なった。

    2-2-7.分子量測定

    SIBl FKBP22*の分子量測定には LCQelectrospray ionization mass spectrometer

    (Finnigan Mat)を用いた。スキャンレンジは 300-4000m/zで、行った。得られた

    ESI-MSスペクトルから FinniganBioWorks softwareを用いてポリペプチドの分子

    量を計算した。溶液中における SIBlF阻 P22*の分子量は超遠心分析(沈降平衡

    法)によって測定した。 BeckmanOptima XL-A Analytical Ultracentrifugate及び

    An・60Ti rotorを用い、 19,000中m、l0°Cで解析を行った。セル内の蛋白質濃度分

    布は 280nmの吸光度によって測定した。超遠心分析のためのサンプルはあらか

    じめ 20mMリン酸ナトリウム(pH8.0)で透析したものを用いた。超遠心分析の

    データ解析には XLAVEL (Beckman, version 2)を用いた。 SIBl FKBP22*と大腸

    菌 FKBP22*の分子量の見積もりには、ゲルろ過クロマトグラフィーも用いた。

    ゲルろ過クロマトグラフィーの方法は両蛋白質の精製で行った方法と同じであ

    る。分子量を見積もるためのスタンダードとして Thyroglobulin(670 kDa),

    トglobulin(158 kDa), and ovalbumin (44 kDa)を用いた。

    2-2-8.蛋白質濃度

    蛋白質の濃度測定は 280nmの吸光度を測定して求めた。 SIB1 FKBP22 *につ

    いては A1so0・1%= 0.68、 大腸菌 FKBP22*については A1so0・1%= 0.69の関係を用いた。これらの値は 280nmにおける TyrとT中のE値、それぞれ 1,576および5,225

    M・Icm-1、を用いて決定した[5]。

    29

  • 2・2・9.酵素活性

    PP lase活性測定にはプロテアーゼカップリング法[37,38]およびRNaseTiリフ

    ォールディング法[6]を用いた。プロテアーゼカップリング法では 2種類のオリ

    ゴペプチド基質 N-succinyl-Ala-Ala-Pro-Phe・p-nitroanilideおよび N-succinyl・Ala-

    Leu・Pro-Phe-p-nitroanilide(Wako Chemicals)を用い、プロテアーゼはキモトリプシ

    ンを用いた。反応は 35mM Hepes-buffer (pH 7.8)、 25μMオリゴペプチド基質、

    適当量の酵素からなる 2.lmlの反応液で行った。反応開始前3分間、反応温度で

    プレインキユベーションを行った後、 30μlの0.76mMのキモトリプシンを反応

    液に加え反応を開始した。高濃度のプロテアーゼ存在下では、プロリン残基が

    トランス型のコンフォメーションしているオリゴペプチドは直ちにプロテアー

    ゼによって分解され p-nitroanilineを生ずる。一方でプロリン残基がシス型のコ

    ンフォメーションをしているオリゴペプチドはプロテアーゼによって分解され

    ず、 p-nitroanilineも生じない。従ってp-nitroanilineの生成量をモニターすること

    でプロリン残基の異性化反応を測定することができる。酵素の触媒作用により

    異性化反応が促進されると、基質がトランス型になる頻度が増加するので、

    p-nitroaniline生成速度がそのまま異性化反応の速度になる。 p-nitroanilineの濃度

    はHitachiU・2010UV NIS spectrophotometer (Hitachi Instruments)を用いた 390nm

    の吸光度(モル吸光度系数 8,900M-1cmつの測定から計算し求めた。触媒効率

    (kcatlKm)はkca1/Km= (kp -kn)/Eの関係から計算した。ここで Eは酵素濃度、 kpと

    knはそれぞれ酵素存在下、非存在下でのp-nitroaniline生成速度である[7]o

    RNase Tiリフォールデイング法では、 50mM Tris-HCl (pH 8.0)、 1mMEDTA、

    5.6 M guanidine hydrochloride、16μM RNase T1 (Funakoshi)からなるバッファーを

    10℃で一晩インキユベートし、RNaseTtを変性させたものを基質として用いた。

    リフォールディング反応は変性させた RNaseTiをSIBlFKBP22*あるいは大腸

    菌FKBP22*を含んだ 50mMTris-HCl (pH 8.0)で 80倍希釈することで開始した。

    RNase Ti、SIBlFKBP22ヘ大腸菌FKBP22*の終濃度はそれぞれ0.2μM、8.9nM、

    l.OnMである。反応の進行は RNaseTiのトリプトファン蛍光強度の変化により

    モニターした。この測定にはF・2000spectrofluorometer (Hitachi Instruments)を用い、

    励起波長と蛍光波長はそれぞれ295、323nm、バンド幅 10nmで測定を行ったo

    kcatlKm は上で述べた関係を用いて計算した。ただし、ここでの kpとknは、リフ

    ォールディング反応曲線に対し二重指数関数近似を行ない[8]、得られた 2つの

    一次速度定数のうち、速い相の速度定数を用いた。

    30

  • 2-3.実験結果

    2-3・1.低温での生育時に細胞内存在量が増加する蛋白質の同定

    細菌細胞内に存在している蛋白質の量や種類は、培養条件によって大きな影

    響を受ける。細菌が過酷な条件で生育しているとき、その環境に適応するため

    に必要な蛋白質の細胞内含量は増加していると考えられる。低温適応に関して

    いえば、生育最適温度よりかなり低い温度で生育しているとき、低温適応機構

    に関与する蛋白質の細胞内含量は、最適温度で生育しているときより増加して

    いると考えられる。 Shewanellasp. SIBl株において、このような蛋白質が存在す

    るかを調べるため、この株を 20°Cと 4°Cで生育させ、細胞内蛋白質の存在パタ

    ーンを比較した。両温度で 660nmの培養液濁度が 1.0になるまで培養した後、

    ただちに可溶性蛋白質を抽出し、二次元電気泳動を行った。両温度サンプルの

    二次元電気泳動パターンを比較すると、等電点約4、分子量28kDaの蛋白質(P28)

    は明らかに 4°Cで細胞内含量が増加していた(Fig.2・2)。 0。C、l0°C、15°Cでも同

    様に培養し二次元電気泳動に供すると、 P28の細胞内含量は 0。C、10℃では大き

    く、 1s°Cでは小さかった(datanot shown)。これらの結果は P28の細胞内含量

    が l0°C以下での生育時に増加していることを示している。このことは再現性よ

    く観察されたため、 P28の遺伝子をクローニングすることにした。

    A

    Acidic Ba日C

    pl

    Fig. 2-2. 20-PAGE analysis of the proteins

    extracted from the SIBl cells.

    Soluble proteins extracted from the SIBl ロ「were

    cells grown at 20 (A) and 4°C (B) were

    applied to 2D-PAGE. Slab gels

    stained with Coomassie Brilliant

    Arrows indicate the position of P28.

    Blue.

    γ批

    JO-r

    20.I

    B (問。ぷ)明日司

    E』

    228-02

    31

    A山id1c官--anド

    Basic

  • 2-3-2.遺伝子クローニング

    N 末端アミノ酸配列解析の結果 P28 の N 末端アミノ酸配列は

    SDLFSTMEQHASYGVGとわかった。この配列情報に基づき DNAオリゴマーを

    作製し、サザンハイブリダイゼーションおよびコロニーハイブイダイゼーシヨ

    ンのプロープを作製した。 SIBl株ゲノム DNAをKpnl、Saclあるいはその両方

    で切断し、サザンハイブリダイゼーシヨンを行ったところ 1.3kbのKpnl-Sacl断

    片に P28をコードする遺伝子が含まれていることが分かった。そこで、 SIBl株

    ゲノムの Kpnl-Sacl消化断片ライブラリーを作製し、コロニーハイブリダイゼー

    ションを行った結果、 1.3kb Kpnl-SacIのDNA断片を含むプラスミドを得た。こ

    のDNA断片の塩基配列を決定したところ P28をコードする遺伝子の全長が含ま

    れていることが分かつた。 P28は205アミノ酸残基からなり、配列から計算され

    る分子量は 21,783Da、等電点は4.3であった。また、 N末端のアミノ酸配列は

    上で決定したものと同じだった。 P28は Shewanellaoneidensis MR司 1由来

    FKBP22(accession number AE015558)と最も高いアミノ酸配列同一性(85%)を示

    したので、P28をSIBlFKBP22、それをコードする遺伝子を Sh-fklBと名づけた。

    1.3 kbのKpnl-Sacl断片には Sh-声lB遺伝子に加え、 Sh-fklB遺伝子の 79bp上

    流に h伊!X-like遺伝子の一部が存在し、 84bp下流に dapB-like遺伝子の一部が存

    在していた(Fig.2-3)o htpX-like遺伝子、 dapB-Iike遺伝子はそれぞれ、亜鉛依存

    性プロテアーゼ、 dihydrodipicolinatereductaseのホモログ蛋白質をコードしてお

    り、転写の方向は Sh持沼遺伝子と同じであったoh伊!X-like遺伝子と Sh件沼遺伝

    子の間 79bpにはσ70プロモーター配列[9]及びShine-Dalgarno配列[10]と予想で

    きる領域が存在しており、これらはSh圃jklB遺伝子の転写、翻訳のシグナルとし

    て機能していると考えられる。この領域にはステム閉ループを形成すると予想で

    きる領域(6番目の Tから 50番目の A)が存在し、その後ろに 6個の Tが連続し

    ている。この領域は h伊!X-like遺伝子の転写終結シグナルと予想される。また、

    この領域は、 Sh持LB遺伝子のプロモーター配列と予想される部分と重なってお

    り、何らかの発現調節機能を有している可能性も考えられる。 Sh-fklB遺伝子と

    dapB・like遺伝子の間の 84bpの領域にもステムーループを形成すると予想される

    領域が存在する。この配列は終止コドン TAGの6塩基下流に存在していること

    から、 Sh-j正沼遺伝子の転写終結シグナルであると考えられる。この領域には

    Shine-Dalgarno配列と予想できる配列は存在していたがプロモータ配列と予想

    できる配列は見つからなかった。

    2-3-3.アミノ酸配列

    Fig. 2-4に、 SIBlFKBP22のアミ J酸配列および、それと比較的配列同一性の高

    い蛋白質のアミノ酸配列を示した(ただし humanFKBP12は最もよく研究され

    32

  • ている FKBPファミリー蛋白質として選んだ)。 SIBlFKBP22との配列同一性

    は大腸菌 FKBP22が56%、大腸菌 FkpAが43%、Lpneumophila MIPが41%であ

    る。 humanFKBP12はSIBlFKBP22のC末端側約半分の領域とアライメントを

    作成することができ、その部分の配列同一性は 43%であった。

    切砂 一一一一ーーベ〉 唯一一一一一一嗣~-TGTTTTTTGCCAACATTTACGGGGTTTATTGTGATAAACTCTCGTGCGAATTTTTTATGTTTATTGAGAGAAAATTATT

    一ータ・・ーーーーーーーーーーー----’

    回 10

    TA T A G-C A-T A-T T-A C-G C-G G-C C-G

    /f! A-T A-T A-T

    十1

    TTGTT GTA T ATGCTGTTTGTGTGTTT t¥CCTTTAG TTAACACTGGG AGM TGAA

    Fig. 2・3.Schematic representation of 1.3 kb Kpnl・-Saclfragment of the SIBl genome

    containing Sh件lBgene.

    Localization of the hψX同 like,Sh件lB,and dapB-like genes, as well as the nucleotide

    sequences of the noncoding regions, are shown. This fragment does not contain the entire

    h伊IX-likeand dapB-like genes. The truncated regions of these genes a問 shownby boxes

    with broken lines. The direction of the transcription for each gene is shown by an arrow. A

    putative 070-type promoter site (ー10and -35 regions) and a putative Shine-Dalgarno (SD)

    sequence are shown. A putative initiation site for transcription is marked by “+1”. A putative

    stem-loop structure, which may function as a transcription termination signal for the Sh-fklB

    gene, is also shown. Broken aηows represen