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中国人観光客の特徴 CHAPTER 1

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Page 1: P007-046 CHAPTER1 責了 10s - Nikkan · あの有名なルイ・ヴィトンもそうだ。ルイ・ヴィトン通の中国人の話を聞 くと、日本のルイ・ヴィトン専売店では、半分以上の商品は上海どころか、

中国人観光客の特徴

CHAPTER1

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8  CHAPTER1★中国人観光客の特徴 9

渡航のハードルの高さゆえに、日本への旅行がステータス

 中国で海外旅行は普及しつつあるが、日本への渡航はビザ申請が難しいこともあいまって、他国への旅行と比較して非常にプレミア感がある。それゆえ、日本に旅行に行った経験のある中国人は当然のように優越感を感じ、しばしば自慢のたねになる。逆説的な話ではあるが、ビザ申請が難しいがゆえに、日本へ旅行できること自体にステータスを感じており、非常に高い満足感を得ているというわけだ。しかしもちろんこれは日本にとって本望ではない。

■日本の良い点

―日本のモラルの高さが、中国人にとって「日本は安心・安全・信頼でき

る」というイメージをさらに高めている

 はじめて日本の土地に足を踏み入れる。そこでまず中国人旅行者の多くは、日本の「清潔さ」に感動する。中国では経済が急成長しているが、一般的に道路や街頭など町並みは乱雑で、公共施設は日本に比べるとまだまだ清潔とは言いがたい。日本を訪れた中国人の多くは、東京や大阪のゴールデンルートを辿りながら、日本に1週間ほど滞在することが多い。この1週間で旅行目的である観光やショッピングはもちろんだが、日本の清潔さや快適さ、社会秩序の良さに感心して中国に戻った後もなかなか忘れられないという声が多く聞かれる。

1-1

 �POINT 〉〉〉日本という国のブランドイメージは安全・安心・本物。日本ブランドを入手すべくネットを中心として情報収集をしているが、彼らが欲しい最新の情報はまだまだ不十分。日本人向けの情報だけでなく、中国人観光客にカスタマイズした情報の発信が求められている。

A. 〉〉〉�もっと気軽に日本に行きたいが、情報が不十分であったり、制度面のハードルが高い点がネック

Q.1

中国人の日本観光への本音とは

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8  CHAPTER1★中国人観光客の特徴 9

 筆者がヒアリングした中国の民間企業経営者は、日本旅行のことを振り返って街の公共トイレの快適性について何度も話してくれた。トイレの美しさに感心しきりの様子だった。日本の秩序の良さも中国人にとって非常に感心するところだ。訪日旅行経験を持つ中国人は、街で見た日本人の秩序の良さを必ず口にする。たとえば地下鉄のエスカレーターや人気料理店の前できちんと列を作って並ぶ日本人の姿……。 そしてその様子は来日経験のない中国人にも知られるところとなった。2011年3月11日の東日本大震災発生時、地下鉄や電車が運行停止、交通網が混乱している状況下長時間かけて徒歩帰宅した日本人が、こんな非常時でさえ、赤信号になったらぴったりと集団で足を止めていることは、中国では大きな話題を呼んだ。 また中国人観光客にとって、旅行の最大の目的は他でもなく、中国では買うことのできない日本製品を購入することである。弊社は上海など中国の主要都市で、何度も訪日した中国人へヒアリング調査を行っているが、彼らに聞くと日本で購入した商品におおむね満足しているという。

―同じものでも日本で購入するほうが、安い、そして信頼できる

 男女別のおおまかな買い物の傾向としては、女性は女性向けや子供向けの化粧品、ファッション、育児用品などを購入することが多く、男性は家電、特にデジタルカメラ、さらに食品を購入している。 特に中国人女性にとって満足度の高い商品は化粧品、ファッション、雑貨、そして日本の百貨店で購入したシャネル、ルイ・ヴィトン、グッチ、バーバリーなどの高級ブランド品だ。彼らの意見をまとめると、日本で購入した商品は中国で買う商品より、品質が高く、使用効果も高いとのこと。さらにデザインがかっこいい、もしくはかわいいという。さらにこれらの商品を親戚や友人・同僚にプレゼントすると相手に非常に喜ばれているとのことだ。 北京や上海だけでなく、今、中国の地方都市の百貨店にもルイ・ヴィトンやバーバリーのような高級ブランドが出店している。それだけ海外の有名ブランドは中国人の消費パワーに注目しているのだ。それなのに、なぜ中国人が日本に来て銀座や新宿の百貨店でブランド品をいっぱい買っているのだろうか?日本人にとってやや理解しにくいことである。現に私たちの会社に

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も日本のテレビ局から、「世界の有名ブランドは中国にも出店しているのに、なぜ中国人がわざわざ日本に来て世界の有名ブランドをあんなにたくさん買っているのだろうか」と聞かれたこともあった。 日本旅行にきた中国人にヒアリング調査の結果その謎が解けた。彼らいわく、「日本は確かに物価は高くとも、実は世界の有名ブランドの最新のファッションなど販売する時期が早く、その種類も中国よりはるかに多い。日本で見つけた有名ブランドの商品は、半年を過ぎてからやっと香港で見かけたこともある」。なるほど、東京は北京と上海だけでなく、香港よりも有名ブランドの品揃えが良いというわけだ。 バーバリーの例はその典型といえる。中国ではバーバリーが出店している百貨店がどんどん増えているが、ブラックレーベルの商品しか取り扱っていない。一方、日本ではブルーレーベルという別のシリーズもある。ブルーレーベルのバーバリーを好きな中国人はかなり多い。特に女性に多く、彼女たちいわく、ブルーレーベルのバーバリーはよりアジア女性のボディラインにフィットするようなカッティングをしている。今の中国人はカッコ良さも大切にしており、日本に来ると当然のように中国では買うことのできないブルーレーベルのバーバリーに目がない女性が多い。 あの有名なルイ・ヴィトンもそうだ。ルイ・ヴィトン通の中国人の話を聞くと、日本のルイ・ヴィトン専売店では、半分以上の商品は上海どころか、香港でも見かけたことがない。しかも東京で販売されているルイ・ヴィトンやグッチなどの有名ブランドのファッション商品は、アジア人のボディラインやアジア人のテイストにもっとフィットしていると彼らはいう。 今でこそ、アジアの高級ブランドの購買力は中国人が次第に日本人を超えるようになってきたが、これまでかなり長い間、アジアでは日本人の高級ブランドの購買力が一番高かった。そのため、世界の高級ブランドの日本進出の歴史も長く、東京や大阪で開発され販売されている高級ブランドの数も規模もアジアの他の街を凌駕している。 これは言ってみれば日本のアドバンテージでもある。つまり今の日本は高級ブランドの数や規模が多いだけでなく、ファッションの研究開発や発信機能もアジアの他の街を凌いでいるというわけだ。 日本人はこのようなアドバンテージをどれほど大事に考えているのだろう

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か?中国は今、猛烈なスピードでさまざまな分野において追い上げてきている。今後、日本の消費パワーが徐々に中国に圧倒され、世界の高級ブランドの研究開発がどんどん中国にシフトしてしまえば、今の日本がもつアドバンテージが弱まる可能性が高い。ファッションは文化でもある。質の高い消費者、デザイナー、お店そして雑誌、テレビとネットなどが共同で創り上げた文化である。文化の発信力は一朝一夕にできるものではない。中国人観光客を見ながら、日本はこのような優位性を保つことがいかに重要か、おのずとわかることであろう。 中国は、高級ブランド品のパクリ版、模倣品が非常に多い。現在、世界の高級ブランドの多くは実は中国の工場で生産されている。高級ブランドを作っている工場から設計図やパターン、あるいは生地などが外部に流出しても特に驚くことがない。だから中国の模倣品も今はピンきりで様々である。中では本物に限りなく近い、かなり精巧にできているものも多い。つまりニセモノがすでに本物と区別をつけにくいところまできていることもよくある。模倣品を褒めるつもりはないが、ある意味それだけ中国の製造力が上がっていることの証ともいえよう。 しかしどんなに精巧にできてもニセモノはやはりニセモノ。本物を買いたい消費者にしてみれば、日本市場はさすが一番、知的所有権の管理が厳しいので、精巧にできている模倣品に遭遇する心配はほとんどない。つまり日本では一番安心して本物のブランドを買うことができる。これもまた日本のアドバンテージと言っても良いことであろう。 日本へ観光に訪れたことのある中国人へのヒアリングによると、上海、香港、東南アジアと日本のすべてに旅行経験がある人でも、ニセモノや模倣品の心配が一番少ないのはやはり日本だと言う。香港も東南アジアの大都市もこういう面においては日本より多少なりともまだ及ばないというわけだ。

―日本には中国人の大好きな「薬粧店」がいっぱい

 上海などの中国の沿海都市の女性の中では、「薬粧」という言葉が流行っている。薬粧とは、ドクターズコスメのことだ。「薬粧」と並んで、「薬粧店」という言葉も流行っている。これは日本のドラッグストアのことを言っている。中国の街にいくと、「薬局」「薬房」というような看板を掲げているよう

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なお店も多い。こうしたお店も今、日本のドラッグストアのように、薬や医療機器だけでなく化粧品やサプリメントをどんどん扱っているように、つまり「薬粧店」を目指してどんどん変貌を遂げている。 最近では日本のドラッグストアも中国に上陸しているところが出てきている。しかし、全体的には、上海のような沿海都市の女性が「薬粧」や「薬粧店」を口にするときは、どちらかというと、日本のドクターズコスメや日本のドラッグストアを頭の中に浮かべながら話していることが多い。 とはいえ実は、もともと「薬粧」も「薬粧店」も、中国に広げたのは日本人ではなく、台湾人のほうだ。特に台湾のタレント、台湾の美容美肌のカリスマなどのような人たちが大きな役割を果たしている。彼らは、台湾のテレビ番組などで日本のドクターズコスメのことにしばしば言及しており、これらの情報はネットを通じて中国の若い女性の中でも広く知られるようになっている。 つまり日本人は宝物を持っていながらそれを上手に利用し販路を広げることができていない。そこへ日本の情報に詳しい台湾人が伝道師のような役割を果たし、ネットや口コミで中国の女性の中でどんどん日本の「薬粧」や「薬粧店」の情報を広げてくれているというわけだ。 ドラッグストアとアウトレットのお店、そして百円ショップなどは中国人の人気が高い。中でも中国で言うところの「薬粧店」、ドラッグストアの人気が高い。日本にやってくる中国人女性にしてみれば、繁華街のあちらこちらで簡単にドラッグストアを見つけることができるのはこの上なく嬉しいことだ。「薬粧店は八百屋よりも多い」。これこそ中国人女性にとっての訪日旅行の一番楽しいところだ。 ドラッグストアでは割引販売が多いのもさらに嬉しいのだ。中国が輸入している日本の化粧品は関税や増値税(消費税)などをかけられており、お店に高い中間マージンを取られているので、販売価格は日本より高い。だからドラッグストアで日本の化粧品を見かけ、さらに割引で販売していることを知ると、買い占めてしまうのもよくわかる。

―日本特有の「薬粧店」ディスプレイが中国人女性の気持ちをつかむ

 日本のドラッグストアの商品展示も中国人観光客にとっては嬉しい。中国