q & a · 2019-11-29 · 加速器 電子や陽子等の荷電粒子を加速する装置...
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① Q & A
Q:粒子と反粒子は電荷しか違わないのに片方しか普通に存在しないのが不思議に思った。
A: もっともな疑問です。授業でも電子と陽電子の対生成の話をしましたが、粒子と反
粒子は対で生成されたり、消滅したりするので、粒子と反粒子の数は同じであるはずです。しかし、現在の宇宙は片方(粒子)しか存在していません。これは物理学(人類?)最大の謎の一つで、その理由はわかっていません。現在の物理学が未完成である証拠の一つです。
Q:普通の水素と反物質の水素では、性質は違いますか?A:水素(陽子と電子の原子)と反水素(反陽子と陽電子の原子)のことかな?。反水素の性質は、まだ詳し調べられていませんが、2016年に反水素の励起状態(2S)から基底状態(1S)に移る際に発せられる光の波長が、水素の場合と誤差の範囲で同じであることが確かめられました。
Q:負の質量をもつものがあると聞いたのですが本当ですか?A:前回、たくさんの素粒子(クォークやレプトン)の話をしましたが、その中には負の
質量を持つ粒子はありません。少なくとも負の質量をもった粒子はないと思います。ちなみに、重力(万有引力)は常に引力ですが、負の質量を持つ粒子は、重力で反発します。
加速器実験
②
6種のクォーク
電荷
+2/3 e
電荷
-1/3 e
第3世代 t
トップ
b
ボトム
第2世代 c
チャーム
s
ストレンジ
第1世代 u
アップ
d
ダウン
陽子・中性子の構成要素
質量大きい
質量小さい
短寿命で崩壊する
1994年にアメリカのフェルミ加速器研究所のテバトロンという加速器で発見される。
1個で陽子の200倍弱の質量(次回説明)
1977年に発見された質量は陽子の約5倍
1974年に発見された質量は陽子の2倍程度
1970 年、丹生潔(名古屋大)がX粒子(現チャーム)を発見。小林・益川理論(1973年)に影響(4つ目のクォークの存在を確信させた。)
なぜ周期律表のような繰り返し(世代)があるのかまだわかっていない。
前回の㉕
二人とも当時名古屋大
静止エネルギー(復習)
E0 = m0c2
静止している粒子が持っているエネルギー(力学で勉強したときは、この静止エネルギーを除外して考えている。)
静止エネルギー 静止質量 光速 (3×108 m/s)2.9979・・・
素粒子の話では、質量をこの静止エネルギーで表現することが多い単位は国際単位のJ(ジュール)ではなく
eV (電子ボルト)を用いる。
③
クォークの質量(静止エネルギー)重粒子(バリオン)の例
第1世代 u アップ,d ダウン uud (陽子) 938 MeV
udd (中性子) 939 MeV
第2世代 sストレンジ sud( L0 ) 1116 MeV
cチャーム cud( Lc+ ) 2285 MeV
第3世代 bボトム bud( Lb0 )5624 MeV
t トップ 寿命が短く、他のクォークと結合する前に崩壊。 174000 MeV (174 GeV)
(注)クォークの質量の合計が粒子(ハドロン)の質量に一致するわけではない。クォーク等の運動エネルギーや結合エネルギーも質量に関係している。
例:水素原子の質量は陽子と電子の質量より結合エネルギー(13.6 eV)だけ軽い。
問題:L0→ p + p- エネルギー的に許されることを確かめよ。( pの静止エネルギーは 140 MeV である。)
④
崩壊後の静止エネルギーの合計は、938 + 140 = 1078 で 1116 より 38 MeV 小さい。
38 MeV は、崩壊後の p と pの運動エネルギーとなる(重心系で)。だから、崩壊後の p と pの方向は(実験室系で)異なっている(次のスライド参照)
W-生成の事象で L0→ p + p-を確認
W-(sss)
L0(uds)
X0(uss)
p(uud, 陽子)
e-
(電子)
(陽電子)e+
g(光子)
p- (du)
K- (su)
K+ (us)
⑤
s
p- (du)
崩壊L0→ p + p-
uds uud ud
s u
W-u
d
崩壊
崩壊
K-が泡箱中の原子核と衝突
d du u
L0
p-
p
時間
後で詳しくやります
重いクォークの作り方( t , b , c , s )
電子 陽電子
陽子 反陽子
エネルギー:E エネルギー:E
高エネルギーの粒子同士を正面衝突させる
合計のエネルギー:2E
静止エネルギーで最大 2Eの物質(粒子)を作りだすことができる
E = m0c
2
1-
v << cでは
E≒ m0c2 + m0v
2 + ・・・1
2
v << c では、静止エネルギーを基準( E = 0 )にすると、 E = m0v21
2(力学で勉強した運動エネルギー)
v2
c2
(非相対論的極限)
速度 v
1より小さい
⑥
すべて短寿命 例:L0→ p + p-
静止エネルギーを除外すると、
問題
速度 vが光速 cより十分に小さい時(非相対論的極限)、
E = = m0c2 + m0v
2 となることを示せ。m0c
2
1- v2
c2
1
2
ただし、 |x| << 1 のとき、 (1 + x )n = 1 + nxを用いてもよい。
E = m0c2(1- )-1/2 = m0c
2{1 + (- )(- )} v2
c2
1
2
v2
c2
= m0c2 (1+ ) = m0c
2 + m0v21
2v2
c2
1
2
静止 運動エネルギーエネルギー
⑦
前期勉強した力学では、エネルギー Eのうち、静止エネルギーを除外して考えている
問題:電子と陽電子をそれぞれ同じ電位差で加速して正面衝突させ、陽子と反陽子を生成するためには最低どれだけの電位差が必要か?
ただし、陽子の静止エネルギーを 940 MeVとし、電子と陽電子の静止エネルギーは 0.5 MeV と小さいので無視せよ。
電子 陽電子エネルギー:E エネルギー:E
答:陽子と反陽子を生成するには、最低でも のエネルギーが必要。
衝突させる電子,陽電子のエネルギー Eは 以上でなければならない。
電子,陽電子の電荷の絶対値は [C] であるので、電位差 V0 [V]で加速すると、
それぞれ [J] の運動エネルギーを得る。
このエネルギーを電子ボルトの単位で表現すると [eV] である。
V0 [eV] > 940M [eV] でなくてはならないので、 V0 > 940M (9.4億)
→9.4 億 V 以上の電位差で電子,陽電子を加速すれば、陽子・反陽子を生成できる。
必要な電位差の値が、静止エネルギーと同じ値。(電子ボルトを使う理由の一つ)
1880 MeV
940 MeV
e
eV0
V0
⑧
加速器電子や陽子等の荷電粒子を加速する装置
(参考)電子の静止エネルギー 511 keV,陽子の静止エネルギー: 938 MeV
⑨
世界最高エネルギーの加速器:LHC (Large Hadron Collider)7 TeVの陽子と7 TeVの陽子を衝突。合計 14 TeV
T(テラ) 1012,G(ギガ) 109
M(メガ) 106,k(キロ) 103
全周:27 km
地下トンネルに加速器
真空パイプ陽子が通る
磁場B
ローレンツ力:F = qE+ qv×B電場で加速
磁場で曲げる
磁気力F
(向心力)
超電導コイル
光の速度の99.999999%まで加速容易に曲がらない
⑩
加速のしくみ
ローレンツ力:F = qE + qv×B電場で加速
磁場で曲げる
E
加速する粒子群例:陽子
サーフィン(波乗りの原理)で加速
加速する粒子群例:陽子
電気力による位置エネルギー
波の進行方向
静電場による加速(粒子が入ってきたときだけ)
F
F
⑪
陽子と陽子の衝突の様子を観測する装置組み上げ作業中の様子
人間
巨大な加速器と巨大な測定装置
→膨大なマンパワーと予算が必要
⑫
観測例ヒッグス粒子が生成されたと思われる例
オレンジ色の線は、陽子と陽子の衝突で生成されたたくさんの粒子の秘跡ヒッグス粒子はすぐに崩壊してしまうので、ヒッグス粒子の秘跡は見えないが
ヒッグス粒子が崩壊で発生した娘粒子の秘跡等は観測されている。また、生成されたたくさんの粒子の秘跡の中に、単体のクォークは存在しない。
⑬
クォークは単体では存在しない
電気力
粒子間の距離 r
クォーク間に働く力強い力
クォーク間の距離 r
F ∝1
r2
q q
q q
q q q q
クォークと反クォークを引き離すと次第に位置エネルギーが増大する。
新たにクォーク・反クォーク対を生成した方がエネルギーが小さい
中間子 中間子
重力
面積位置エネルギー
引き伸ばすと・・・
中間子
1 fm 程度までは∝
それ以上:一定
⑭
r = ∞まで積分しても有限
r = ∞まで積分すると発散(位置エネルギー)
1
r2
強い力と「カラー」
電磁気力-電荷強い力- カラー
色(color)
電磁気力における電荷に対応するものは、強い力においては、「カラー」
色の3原色
R
RG
Red
Green
BrueG
B
B
強い力におけるカラーは実際の色とは全く関係ありません
テレビや液晶も・・・
正負の2種
RGBの3種
電磁気力の場合正の電荷と負の電荷合わせると中和
||
電荷 0
強い力の場合R と G と B を合わせると中和
||
色荷 0
(白色)
⑮
色荷(しきか)
問:なぜ、これらの組み合わせしかないのか? qq はなぜダメ?答:全体で白色となる組み合わせはこれらしかないから。
RR GG BB RGB RGB
ハドロン(復習)
クォークからできている粒子には、「メソン」と、陽子や中性子の仲間の「バリオン」
メソン(中間子):クォークと反クォークからできている。
バリオン(重粒子):クォーク3つ、または、反クォーク3つからできている。
q q
q q q q q q
例:p+ (ud)
⑭で引き伸ばした際に対生成されるクォークは、白色になる色荷を持っている。(白色になる色荷を持っているから、対生成した方がエネルギーが小さい)
メソンとバリオンをあわせてハドロンという
例:陽子 (uud)
LHC
Large Hadron Collider⑯
力を媒介する粒子
水素分子イオン 核力 電磁気力 強い力
光子は電荷を持っていないが、グルーオンは色荷を持っている
H p n p e e u u
電子
時間時間
水素原子 陽子中性子 陽子 電子 電子 R G
p- 光子 グルーオン
H p p n e e u u
電磁気力が複雑な形で発現
強い力が複雑な形で発現
RG
⑰
電場磁場
クォーク・レプトンに働く力
クォーク レプトン
u,d,c,s,t,b e,m,t ne,nm,nt
重力 ○ ○ ○
弱い力 ○ ○ ○
電磁力 ○ ○ ×
強い力 ○ × ×
カラー無し 電荷無し
弱い
強い
ニュートリノは弱い力しか作用しない
(重力は弱すぎるので無視)↓
地球をも簡単に素通り
弱い力については後で詳しく勉強します。
⑱
基本的な力は4種類ある。
物理学I,II では、その内の2つを学んだ
宇宙線起源は超新星等後で説明
(1次宇宙線)
陽子90%, a粒子8%
p中間子 K中間子
ud, ud
加速器の衝突点と同じ→
us, us
p中間子やK中間子は、ミュー粒子に崩壊
見た目がシャワーのようなので
(2次宇宙線)
p+u
d
W+ m+
nm
m±
Heの原子核
⑲
宇宙線重イオン
原子核の破片(陽子等)
原子核乾板の顕微鏡画像荷電粒子の飛跡を記録できる特殊な写真フィルム
フィルム中の原子核に衝突
p±等がたくさん生成されている
名古屋大学理学部F研HPより転載
加速器の正面衝突と違い、生成された粒子は前方(重イオンの方向)に集中する
最も軽いハドロン
衝突のエネルギーにより、たくさんの粒子が生成されている。(多重発生)
⑳
観測例ヒッグス粒子が生成されたと思われる例
オレンジ色の線は、陽子と陽子の衝突で生成されたたくさんの粒子の秘跡ヒッグス粒子はすぐに崩壊してしまうので、ヒッグス粒子の秘跡は見えないが
ヒッグス粒子が崩壊で発生した娘粒子の秘跡等は観測されている。また、生成されたたくさんの粒子の秘跡の中に、単体のクォークは存在しない。
⑬
6種のレプトン(電子の仲間)レプトンも、クォークと同じく、点状の粒子で基本粒子だと考えられている。
電荷
-e
電荷
0
第3世代 t-
タウ粒子
nt
タウニュートリノ
第2世代 m-
ミュー粒子
nm
ミューニュートリノ
第1世代 e-
電子
ne
電子ニュートリノ
地上に降ってくる宇宙線はほとんどがミュー粒子質量は電子の
200倍自然放射線の約2割
質量は電子の10000倍
(陽子の5倍)
ニュートリノの質量はほぼ 0
太陽で発生した ne は、
皆さんの体を1秒間に数百兆個突き抜けている。
後日解説します。
2000年発見
同じく3世代ある。その意味は不明
㉖
短寿命
短寿命
2015年ノーベル物理学賞ニュートリノ振動(nm→nt)梶田隆章、後日解説
前回の㉖
宇宙線
スパークチェンバー宇宙線(ミュー粒子)等の荷電粒子の飛跡を観察できる機械
高エネルギー加速器研究機構HPより転載
1個/(cm2・min)
飛跡に沿って放電が起こる
実験サーベイ・メータ(放射線測定器)
㉑
放射線の単位は後で勉強します
宇宙線
大気シャワーの発達する上空は地上より遥かに宇宙線が多い
㉒
問題ミュー粒子( m )の寿命t (崩壊するまでの平均時間)は、2.2×10-6秒です。
ミュー粒子がほぼ光速(3×108 m/s)で運動すると、2.2×10-6秒で進む距離は
ct = 3×108×2.2×10-6 = 660 [m]
となる。2次宇宙線の崩壊により上空10000 m 付近で生成されたミュー粒子が地上に到達できるのはなぜか?
ヒント:ミュー粒子の静止エネルギーは約 100 MeV (電子の約 200倍)で、地上に到達するミュー粒子のエネルギーは数 GeV くらいです。
E = m0c
2
1- v2
c2
ミュー粒子のエネルギー Eを 5 GeV とする。
100 MeV
1
1- v2
c2
= 50 (g , ローレンツ因子)
㉓
ミュー粒子の時計の進み方は地上の観測者が見ると50分の1である。
宇宙線のフラックス×
E3
宇宙線のエネルギー
一次宇宙線のエネルギー分布宇宙線のフラックス
LHCのエネルギー
1個で1J
陽子中性子
トップクォーク
㉔
ヒッグス粒子
ペタ エクサ ゼタ
超高エネルギー宇宙線のイメージ(参考)㉕
宇宙線の起源
太陽
~109eV
パルサー超新星
活動銀河核(銀河中心の巨大ブラックホール)
起源についてはまだよくわかっていない
陽子やa粒子は荷電粒子なので宇宙に存在する弱い磁場によって曲げられる
ローレンツ力:F = qE+ qv×B
宇宙線の到来方向から起源を探ることができない
ガンマ線(高エネルギー光子)は到来方向からが起源わかる
㉖