sr...
TRANSCRIPT
SRモータと他種モータとの違い
東京大学 電気電子工学科4年 堀・藤本研究室所属 矢崎雄馬
2
目次
● 代表的なモータの種類● EV用モータへの要求● SRモータについて● 他種モータとの比較
・直流モータ
・同期リラクタンスモータ
・籠型誘導モータ● 論文紹介
3
代表的なモータの種類●直流モータ(DCモータ)
●正弦波駆動(ACモータ)
●非正弦波駆動
➢巻線界磁式
➢永久磁石界磁式
➢誘導機 (IM)
➢同期機 (SM)
➢永久磁石界磁式 (ブラシレスDCモータ )➢リラクタンス式 (SRM)
➔直巻式➔他励式
➔籠型➔巻線型
➔巻線界磁式➔永久磁石界磁式 (PM)
4
各種モータの性能比較
●SM
●IM
●SRM
効率制御装置の簡単さ{
{堅牢性高速性コスト
最大回転数
[電気自動車の駆動系 -どんなモータが最適か -,堀 ,平成 7年電気学会全国大会シンポジウム ] http://mizugaki.iis.u-tokyo.ac.jp/paper_2004/paper/hori/ZentaiH7.pdf
5
電気自動車用モータへの要求 (1)
1.堅牢性が高い
2.構造が簡単でコストが安い
3.効率が高い
4.高速回転 , 大トルク運転が可能
5.信頼性が高い
など
[電気自動車の駆動系 -どんなモータが最適か -,堀 ,平成 7年電気学会全国大会シンポジウム ]
http://mizugaki.iis.u-tokyo.ac.jp/paper_2004/paper/hori/ZentaiH7.pdf
6
電気自動車用モータへの要求 (2)
これらに加えて・・・
● 時代の要請
レアアース、金属の使用量の削減
SRモータに期待が集まる
7
SRモータとは
● SRモータ
= Switched Reluctance Motor
励磁されている相の磁気回路の
リラクタンスが低くなる向きに
トルクが発生し、リラクタンスが
最小になる前にスイッチング素子によって
励磁を別の素子に転流させるモータ
8
SRモータの原理
日本電産株式会社「EV用 SRモータの開発と展望」 http://www.nidec.com/ja-JP/technology/story/srmotor/
① A相が励磁されているとすると、A相で整列状態、B相で非整列状態
② 励磁をAからBに切り替えるとBのポールはロータポールのギャップ端を吸引して時計方向に回転する
③ 再びA相に転流することで持続的に回転をすることが出来る
9
直流モータの構造
● DCモータは界磁(固定子)、電気子(回転子)、整流子、ブラシからなる。
● DCモータのトルク特性には、電流に比例する分巻特性と、電流の2乗に比例する直巻特性の2種類がある。
http://www.miyazaki-gijutsu.com/series4/densi0911.html
宮崎技術研究所「電気と電子のお話」
強い界磁の特性:起動トルクが高く無負荷速度が低い
弱い界磁の特性:起動トルクが低く無負荷速度が高い
回転速度
トルク
起動トルク
10
他種モータとの比較(直流モータ)
● 直流直巻モータ→EVに好ましい特性を表す
トルク
回転数
求められる特性
直流直巻モータの特性
=簡単な原理で広い速度領域
欠点ブラシと回転子が摩耗する
ブラシレスにするために永久磁石磁界を用いたモータがあるが、レアアースが使われる。
SRモータは直流直巻モータに近い特性を持ちながら、永久磁石を使わないブラシレスなモータである
11
同期リアクタンスモータの構造
● DCモータと異なり、巻線を固定子部に、永久磁石を回転子部に配置する。
● 固定子に交流を流すことで、固定子の力の反作用によって
回転子を回転させる。
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/b_class/b2a.htmlヘイシンモーノポンプ
12
他種モータとの比較(同期リラクタンスモータ )
同期リラクタンスモータ SRモータ
磁界 回転磁界 局所磁界
巻線 分布巻(複雑) 集中巻(簡単)
トルク式 T=1/2 ×(L_d – L_q)I^2 T = mN/2π ×(L_max – L_min)I_c(I-1/2 I_c)
① SRモータは集中巻なのでモータサイズを小さくしやすい
② 同期リラクタンスモータは電流が正弦波であるのが基本なので、トルクを滑らかに発生させられるが、 SRモータは電流が方形波に近いのでトルクに脈動が現れやすい。
③ しかし電流制御によりトルク脈動は解消できる。
④ SRモータのインダクタンスの差は同期リラクタンスモータのインダクタンスの差よりも大きいのでトルクが大きい。
13
籠型誘導モータの構造
● 巻線を固定子部に、鉄心を回転子部に配置する。
● 固定子に交流を流すことで、回転子に誘導電流を発生させ、この電流と磁場の変動によって回転子を回転させる。
http://www.crane-club.com/study/crane/motor.htmlCRANE-CLUB
14
他種モータとの比較(籠型誘導モータ )
誘導モータ SRモータ
巻線 △ 分布巻 ◎ 集中巻
ロータ構造
△ 銅、アルミを鋳込む ◎ 凸極型成層鉄心
駆動回路 ○ 汎用インバータ回路
△ SRモータ特有のハーフブリッジ回路
始動特性 △ ステータ銅損+ロータ銅損
○ ロータ銅損
連続運転特性
○ 周波数による制御 ○ 連続電流モードの活用
エネルギー変換効率
△ ロータの銅損が不利
○ 若干有利
騒音 ○ 3相がバランスしているため静か
△ 1つの相に力が集中し、騒音が発生しやすい
見城尚志「 SRモータ」 P229
① 通常非連続電流モードでは、始動だけでなく、全領域でSRモータが有利
② 誘導モータは銅やアルミニウムの使用量が多い
15
論文紹介
<Title>A Design of Axial-gap Switched Reluctance Motor for
In-Wheel Diret-Drive EV(Electrical Machines(ICEM),2012
<Authors>Tohru Shibamoto, Kenji Nakamura, Hiroki Goto, Osamu Ichinokura
(Tohoku University)
内容アキシャルギャップ
スイッチトリラクタンスモータ
16
論文の要旨 (1)
● EVの一般的な動力用モータには、レアアースを材料とする永久磁石を用いた同期モータが用いられている。
● しかしレアアースは将来の供給が不安である● 永久磁石を使用しないモータとして SRモータ
がある。これは簡単、堅牢な構造を持ち、材料も鉄、銅であり、安価で、高温環境でも利用可能なモータである。
17
論文の要旨 (2)
● SRモータを動力源とする際、制御性の観点からインホイールダイレクトドライブ方式を採用する
● しかしながらホイール内というスペースのため、トルク密度が低下することが問題として挙げられる。
● トルク密度の改善策として、アキシャルギャップ構造を用いることで空間の利用率を上げることにする。
18
論文の要旨 (3)
● アキシャルギャップ構造とは、構成部品が軸方向に順に配置され、ギャップ面を軸方向に有しているのが特徴である
19
論文の要旨 (4)
● 4相アウターロータ型ラジアルギャップSRモータ
● シングルステータ・シングルロータモデルアキシャルギャップSRモータ
● シングルステータ・ダブルロータモデルアキシャルギャップSRモータ
の比較をシミュレーションで行なったところ、軽負荷領域では差はあまりないが、高負荷領域では差が生じた。
20
論文の要旨 (5)
● シングルステータ・シングルロータモデルとラジアルギャップモデルでは 12%
● シングルステータ・ダブルロータモデルとシングルステータ・シングルロータでは 78%のトルク向上となった。
21
論文の要旨 (6)
● 実際に三相シングルステータ・ダブルロータモデルアキシャルギャップSRモータをつくり、トルクを測定したところ、ほぼシミュレーション通りの結果を得た。
22
論文への批評
● アキシャルギャップSRモータの有効性をシミュレーション、実験の両方で示せている。
● アキシャルギャップSRモータにおいてトルクが向上した理由を、磁化曲線の囲む範囲の比率を用いて説明できている。
● トルク向上が主眼のためか、騒音については述べられていない
● アキシャルギャップSRモータの構造で、騒音を低減できるかは不明
23
SRモータの課題
● 騒音や振動
対応策➔ ロータ、ステートコアの形状の最適化➔ モータ駆動を行なうための
スイッチングタイミングの最適化
24
まとめ
● 脱レアアースの時代となって、レアアースを用いず、銅の使用量も少ないSRモータが注目されている。
● SRモータは他種のモータと比較すると有利な点が多い。
● SRモータは騒音や振動が多いという問題があるので、それが解決できれば使用されることが多くなるはずである。