350 感染症学雑誌 第49巻 第9号

原 著

Streptozyme Testの 反 応 機序 に関 す る研 究:

複 数抗 体 価 の総 合 的表 現 法 を用 い た

ASO, ASK, AHと の 関係 の検 討

九州大学医学部小児科*(主 任 合屋長英教授)

小 田 禎 一

Key words: Streptococcus infection, Seroepidemiology, Streptozyme test.

1. は じめ に

Streptozyme test (Wampole Laboratories)は,

5種 類 の レ ンサ 球 菌 々体 外 成 分 を抗 原 とす る凝 集

反 応 で あ る.す なわ ち,streptolysin O, strepto-

kinase, hyaluronidase, deoxyribonuclease B, nico-

tinamide adenine dinucleotidaseを 吸 着 さ せ た

aldehyde固 定 羊 赤 血 球 浮 遊 液 を 患者 血 清 と 混 合

し,2分 後 に 凝 集 の 有 無 を み る 。 凝 集 価(以 下

SZと 略 記)100倍 以 上 を 陽 性 と判 定 す る.SZ

が 抗streptolysin O (ASO), 抗streptokinase

(ASK), 抗hyaluronidase (AH)お よび 抗deo-

xyribonuclease B (ADN-B)の 価 とそ れ ぞ れ 相 関 す

る こ とはす で に報 告 され て い る1)2)3)4)5).し か し,

本 テス トの特 徴 は複 数 の抗 体 が 同 時 に 関 与 す る こ

とに あ る の で,個 別 に単 一 の抗 体 価 との 関 係 を み

るだ け では そ の本 質 を 解 明 で きな い.本 テ ス トが

各 抗 体 の総 和 に反 応 す る のか,あ るい は 各 抗 体 中

最 強 の も のだ け と選 択 的 に 反 応 す る もの か を 明 ら

か に す る こ とは,臨 床 応 用 の上 で重 要 で あ るが,

複数 抗 体 価 の 総 合 的 表 現 法 が 今 まで な か つ た た

め,そ の検 討 は 残 され てい た.そ こで 私 は 後述 の

相対 的 抗 体 量 とい う新 しい 概 念 を創 案 して,異 な

る抗 体 ど う しを 同一 の 尺 度 で あ らわ して互 に加 算

で き る もの と し,そ れ に よつ て こ の問 題 の解 析 を

試 み た.

2. 方 法

九 州大 学 病 院 中央 検 査 部 に お い てASOお よび

ASKを 測 定 した血 清103検 体 を,年 齢,病 名 を

問 わ ず 無 作 為 に 抽 出 し,全 例 に つ い てStrepto-

zyme testを 行 い,う ち27例 に は更 にAHを も測

定 した.ASOの 測 定 はRantz-Randall法 に よ り,

ASKの 測 定 は キ ナ ー ゼ テス ト(富士 臓 器)に よつ

た.後 老 は正 し くはantivaridaseで あ る が,わ が

国 で はASKと して通 用 して い る.AHの 測 定 は

Bacto-AHTキ ッ ト(Difco)を 用 いた .Strepto-

zyme testの 被 験 血 清 の 稀 釈 は,Fig.1以 下 にみ

られ る通 り12段 階 と した,

Fig. 1 Relationship between Streptozyme Test and Relative Amount of Antibody (ASO)

以 上 の測 定 の結 果 か ら, SZと ASO, ASK,

* 現勤務先 福岡市西区七隈34

福岡大学医学部小児科

昭 和50年9月 20日 351

AHそ れ ぞ れ の関 係 を検 討 し,更 に相 対 的 抗 体 量

を 用 い て,SZと 他 の3抗 体 を総 合 した値 との関

係 を 求 め た.

相 対 的 抗 体 量 (relative amount of antibody)

とは,正 常 上 限 値 と され て い る 抗 体 価 (ASO

166, ASK1, 280, AH128)を1と した場 合

の相 対 的 な 抗 体 量 で あつ て,た とえ ば ASO 500

で あれ ば500/166= 3.012が そ の 相対 的抗 体 量

で あ る(Table1).但 し 抗体 価 が 最 低単 位 以下

(ASO<12, ASK<40, AH<32)の 場 合 は

Table 1 Relative Amount of Antibody

そ の相 対 的 抗体 量 を0と した.同 一 血 清 につ い て

2種 類 以 上 の 抗 体 の 量 を総 合 的 に あ らわ す た め に

は,そ の血 清 の もつ 各 相 対 的抗 体 量 を 加算 した も

の を 用 い,そ れ を 加 算 相 対 的 抗 体 量 (cumulative

relative amount of antibody)と 名 づ けた.

3, 結 果

(1) SZと 他 の抗 体 価 お のお の との 関係

図 は 省 略 した が,各 相 関 係 数 は 次 の 通 りで あ

る.ASO対SZ:r= 0.7999, N=103, P<

0.005, ASK対SZ: r=0.6927, N=97,

P< 0.005, AH対SZ:r= 0.7646, N=27,

P< 0.005.

これ らにつ い て,互 に 一 致 しな い例 が どれ く ら

い あ るか を 評 価 す る た め に,不 一 致 率 (rate of

Table 2 Discordance between Streptozyme Test

andother Antibodies

low SZ: ≦ 50 High SZ:≧ 100

low ASO: ≦ 166 High ASO :≧ 250

low ASK: ≦ 1280 High ASK: ≧ 2560

low AH:≦ 128 High AH: ≧ 256

Rate of Discordance

= No, of discordant cases (bold-faced numerals)/

Total No.of cases

× 100

discordance)を 算 出 した.Table2の 註 に示 す よ

うに,同 一 検 体 の もつ2種 類 の抗 体 価 を互 に比 較

して,低 一 低 お よび 高 一 高 の 組 み 合 わ せ(一 致

例)以 外 の もの,す なわ ち不 一 致 例(太 字)を 合

計 して,そ れ を総 例 数 で除 した 率(%)で あ る.

ま た,SZの 偽 陰 性 率(rate of false negative)

を 算 出 した.こ れ は,SZが 低 い に も 拘 らず 他

の抗 体 価 が 高 い め の例 数 を総 例 数 で除 した 率(%)

Fig.2 Relationship between Streptozyme Test and

Relative Amount of Antibody (ASK)

n= 27

r= 0.6485

p< 0.005

352 感染症学雑誌 第49巻 第9号

で あ り,不 一 致 例 の特 別 な場 合 で あ る.

SZと 各 抗 体 価 との不 一 致 率 は28.9%か ら51.4

%に 及 び,中 で もSZ対ASOで もつ と も大 きか

つ た.SZを 基 準 に とる と,ASOは 低 値,AS

Kは 高 値 を と りや す い 傾 向 が 伺 わ れ る.SZの 偽

陰 性 率 は,SZ対ASKの2%を 除 い て は す べ て

0で あつ た.こ の こ とは,SZで 陰 性 な ら他 の 抗

体 価 も ほ とん ど す べ て の 場 合 低 い こ とを 意 味 す

る.

(2) SZと 相 対 的 抗 体 量 との関 係

Fig. 3 Relationship between Streptozyme Test and Relative Amount of Antibody (AH)

N= 27

r= 0.7216

p < 0.005

Fig. 4 Relationship between Streptozyme Test and Cumulative Relative Amounts of Antibody

(ASO and ASK)

N= 27

r= 0.7956

p< 0.005

a) SZと 各 相対 的 抗 体 量 との関 係 はFig.1,

2,3に 示 す通 りで あ る.

b) SZと 加 算 相 対 的 抗体 量(2者)と の 関 係

はFig.4,5,6に 示す 通 りで あ る.相 関 係教 は

一 般 にa)よ り良 好 で あ る .

c) SZと 加 算 相 対 的 抗 体 量(3者)と の関 係

は,Fig.7に 示 す 通 りで あ る.a),b)の いず れ

よ りも 良 い相 関 が み られ た.

d) SZと 最 大 相 対 的 抗 体 量 との関 係 はFig.8

の通 りで あ る.こ の相 関 はFig.7に く らべ て 明 ら

Fig. 5 Relationship between Streptozyme Test and Cumulative Relative Ammounts of Antib-ody (ASK and AH)

N= 27

r=0.8455

p < 0.005

Fig. 6 Relationship between Streptozyme Test and Cumulative Relative Amounts of Antibody

(ASO and AH)

N= 27

r= 0.8708

p< 0.005

昭 和50年9、 月20日 353

Fig. 7 Relationship between Streptozyme Test and Cumulative Relative Amounts of Antibody

(ASO, ASK and AH)

y=2.274x - 1.866 s=2.581 N=27 r=0.9076 p< 0.005

Fig. 8 Relationship between Streptozyme Test and the Maximum Value among Relative Am-outs of Antibody (ASO, ASK and AH)

y=1.109x -0.177

s=2.569N=27r=0.7270p<0.005

か に悪 く,両 相 関 係 数 をz変 換 に よつ て統 計 学 的

に 比 較 す る と,5%の 有 意 水 準 で 有 意 差 が あ つ

た.最 大 相 対 的 抗 体 量 とは,あ る検 体 の示 すAS

O,ASK,AH各 相 対 的 抗 体 量 の うち最 大 の値

を示 す ものだ けを とつ た も の であ る.そ れ らの値

が も し1.0,2.0,0.5だ つ た とす る と,2.0が

最 大 相 対 的 抗 体 量 で あ る.

Table3に は,Fig.1～8の 基 礎 とな つ た数 字

が 示 して あ る.

4. 考 察

A群 レ ンサ 球 菌 感 染 症 の診 断 に は,菌 の検 出 と

な らん で血 清 学 的 証 明が 重 要 で あ るが,そ の 遅発

性 合 併 症 で あ る リウ マチ 熱 の診 断 に は と くに 後 者

の重 要 性 が 大 き い.一 般 にASOが 用 い られ る

が,急 性 期 リ ウマ チ熱 の20～40%に 有 意 な 上 昇 が

み られ な い の で,AH, ASK, ADN-B, anti-

DPNase,anti-NADaseの いず れ か1つ 以 上 を 同時

に 測 定 す る こ とが 望 ま しい と され て い る6).発

病 後長 期 間 を経 た リウマ チ熱 で は,そ れ らの抗 体

の 反復 測 定 に よつ て そ の変 動 を確 認す る必 要 が あ

る.

Stollermanら7)は,発 病2カ 月 以 内 の リウ マチ

熱 では,ASOの 上 昇(>200単 位)が78%, A

Hの 上 昇(>256倍)が68%,ASKの 上 昇(>

200倍:キ ナ ーゼ テス トで は>2,000倍 に相 当)

が53%あ つ た が,ASOとAHを 併 用 す る と90

%,3者 を併 用す る と95%に いず れ か の上 昇 が み

られ た とい う.ま た,Wannamakerら8)は,同 じ

く発 病2カ 月 以 内 の リウマ チ熱 で,ASO, AS

K,AHの 他 にADN-B,anti-DPNaseを 加 え る と

ほ とん ど 全 例 に いず れ か の 上 昇 が み られ た とい

う.要 す るに,溶 レ ン菌 感 染 の 血 清 学 的 証 明 に は

1種 類 の抗 体 価 の測 定 だ け で は 不 充 分 で あ り,3

～5種 の測 定 に よつ ては じめ てほ ぼ 目的 を 達 し得

る と言 え よ う.し か し,多 種 抗 体 の,し か も継 時

的 な測 定 に は現 状 で は多 大 の困 難 が 伴 う.Strepto-

zymetestは,こ の 困 難 を 克 服す る 試 み の1つ と

言 え る で あ ろ う.Streptozymetestと 他 の抗 体 と

の 関係 につ い て は,次 の よ うな報 告 が み られ る.

Janeffら2)に よれ ぱ,ASO166単 位 以 上 を 陽 性

と した場 合,SZの 偽 陰 性 率 は1.7%,不 一 致 率

は21.5%と な る.ま た,SZ陽 性 でASO陰 性 の

例 の うち,40%にAH陽 性(≧256), 34%に AS

K陽 性(≧160),44%にAH,ASKの いず れ か

が 陽 性 で あ つ た とい う.残 りの56%で は,そ の他

の抗 体 が 関 与 して い るか も しれ な い し,ま た,A

SO,AH,ASKの 各 々 の相 加 的 効果 に よつ て

SZが 陽 性 化 す る のか も しれ な い と彼 らは考 察 し

て い る.

354 感染症学雑 誌 第49巻 第9号

Collins3)に よる と,SZ対ASO (≧250)の

不 一 致 率 は21.8%,SZの 偽 陰 性 率 は4.1%と な

る.

Klein&Jones1)に よる と,不 一 致 率 はSZ対

ASO(≧170)で15.0%, SZ対AH (≧256)

で24.4%で あ り,SZの 偽 陰 性 率 は 対ASOで

0.7%,対AHで3.1%,対anti-DNAse Bで

9.4%で あつ た.こ の こ とか ら彼 らは, Strepto-

zyme testがanti-DNAse Bを 検 出す る 感 度 は,

他 の2者 を 検 出す る感 度 に く らべ て 劣 る もの と推

測 して い る.

成 田 ら5)の 報 告 か ら は,SZ対ASO (≧250)

の不 一 致 率 は18.7%,SZの 偽 陰 性 率 は4.6%と

計 算 され る.

村 中 ら4)は報 告 か らは,SZ対ASO (≧250)

の不 一 致 率 は43.3%,SZの 偽 陰性 率 は1.0%で,

私 の成 績 に近 い.

以 上 を ま とめ る と,SZ陽 性 で しか もASOが

低 い例 はか な り多 くみ られ るが,逆 にSZ陰 性 で

ASOが 高 い例 は少 な く,1～5%程 度 で あ る.

SZと 他 の抗 体 との問 の不 一 致 率 が 報 告 に よつ て

違 う こ とは,対 象 の と り方 の差 に よ る可 能 性 が あ

る.新 しい 溶 レ ン菌 感 染 では 多 種 の 抗 体 価 が 上 昇

して い る こ とが 多 い ので 不 一 致 率 は 低 い が,古 い

感 染 や 緩 徐 な感 染 で は,ど の抗 体 も少 しず つ 上 昇

す るか,あ る い は少 数 の抗 体 だ け しか上 昇 せ ず,

不 一 致 率 は 高 くな る こ とが予 想 され る.本 研 究 で

は対 象 中 に新 しい溶 レ ン菌 感染 を意 識 的 に と り入

れ る こ とを しな か つ た た め,不 一 致 率 が大 き くな

つ た のか も しれ な い.し か し,全 く同様 の 感染 や

感 作 に よつ て も上 昇 す る抗体 の種 類 や 上 昇 の程 度

に 著 しい 個 体 差 が み られ る こ とは 血 清 学 上 周 知 の

事 実 で あ り,不 一 致 率 が0に 近 づ くこ とは あ り得

な い と考 え られ る.感 染 の証 明 のた め に多 種 類 の

抗 体 を 同時 に測 定 す る こ とが必 要 な 理 由は こ こに

あ る.一 方,SZの 偽 陰 性 例 が ほ とん どな い こ と

は私 の成 績 か ら言 え る が,本 テス トの陰 性,陽 性

の判 定 に は あ る程 度 の熟 練 を 要 す る こ とに注 意 し

て お きた い.

本 研 究 お よび他 の報 告 か ら, ASO, ASK,

Table 3 Interrelationship among simultaneously

determined various Antibody Titers

High titers are shown by bold-faced numerals.

AHの うち どれ か1つ で も上 昇 して いれ ば ほ とん

ど確 実 にSZが 陽 性 で あ る と 言 え る.し か し逆

に,SZが 陽 性 で あつ て も,他 の抗 体 の どれ か が

必 ず 上 昇 して い る とは言 え な い.Table 3に そ の

関 係 が示 され て い る.こ こでSZ陽 性 例21例 を と

つ て み る と,他 の 抗 体 の1つ が単 独 で 高値 を示 す

率 は,ASOで28.5%, ASKで47.6%, AHで

57.1%に す ぎな い が,2抗 体 を 組 み 合 わ せ て い ず

れ か が 陽 性 を 示 す 率 は,ASO+ASKで 52.3

%,ASO + AHで61.9%, ASK + AHで71.4

昭和50年9月20日 355

%と 上昇 し,更 に3者 の組み合わせでは76.1%に

上昇する.し かし,そ れでも残 りの23.9%は 検出

されない.す なわち,Streptozyme testに よる検

出率は他の3種 の抗体価測定による検出率 より高

い.SZ陽 性で他の3抗 体価がすべて正常範囲に

ある5例(No.7, 8, 11, 14, 18)の3者 加算

相対的抗体量は,No.11の0.822を 除いて,す べ

て1.0以 上である.こ れに対 して,SZ陰 性の6

例では3者 加算相対的抗体量がすべて0.822以 下

を示 した.上 記の3群 間で,3者 加算相対的抗体

量が1.0未 満のもの出現率に関 してx2検 定を行

うと,高 度の有意差がみ られた(P<0.005).こ

のことからも,SZが 個 々の抗体価の高さよりも

加算相対的抗体量 とより密接に関係 していること

を推定できるであろ う.も ちろん,と くにSZに

比較 して加算相対的抗体量が小 さい例(No.11,

14, 18)で は,anti-DNAse Bやanti-NADaseが

関与 している可能性もあり,今 後の検討を要する

が,そ の可能性を仮定 しても本研究の結論に影響

が及ぶとは考えられない.

SZが 単独で高値を示す抗体の存在によるので

はなく,多 種類の抗体量の和に反応するという仮

説は,Fig.7とFig.8と を比較することによつて

より直接的に検証されるであろう.ま た,Fig.1

～6に おいて,単 独相対的抗体量 より2者 加算の

方が,更 にそれよりも3者 加算の方が,SZと よ

りよい相関を示すこともその傍証 とな り得る.

相対的抗体量の概念そのものにも多 くの批判があ

り得るが,通 常の抗体価か ら直接算出されたもの

であるか ら,そ の信頼性や鋭敏度も,通 常の抗体

価測定に準 じて考えることができる.ま た,算 出

の基準 として,臨 床的に正常上限 とされている抗

体価を用いたことは,本 テス トが臨床的応用を 目

的とする以上,も つとも妥当であつた と考える.

重量単位であらわ される絶対的な抗体量の方が

信頼性が高いと考 える立場 もあ り得 ようが,そ れ

だけでは 目的を達 し得ないであろ う.相 対的抗体

体量は絶対的抗体量と全 く平行する もので ある

が,一 方では後者と異つた独自の意味をもつてい

るのである。これは臨床血清学における新 しい概

念 と して今 後 応 用 し得 る も の と思 う.

Streptozyme testが 各 抗 体 の量 の 和 に反 応 す る

もの で あ る こ とは,い ろ い ろ な面 か ら裏 づ け られ

た.次 に,そ の こ との 臨 床 的 意 味 を 考 え て み た

い.

溶 レ ン菌 感 染 症 の一 部,と くに 緩 徐 な,あ るい

は古 い も の では,各 種 の抗 溶 レ ン菌 抗 体 が いず れ

も正 常 範 囲 内 に と どまつ つ い る こ とが あ り,多 種

類 の抗 体 価 を 測 定 して も感 染 が把 握 で き な い こ と

が あ る.こ の よ うな こ とは,心 炎 型 また は舞 踏 病

型 の リウマ チ 熱 や 糸 球 体 腎 炎 で しば しば み られ

る.そ の場 合,各 抗 体 の和 に 反 応 す るStreptozyme

testは,各 抗体 を単 独 に測 定 す る よ りも大 きな診

断 力 を発 揮す るで あ ろ う.ま た,Streptozyme凝

集 価 の 信 頼 性 と再 現 性 も充 分 で あ る と考 え られ る

の で,継 時 的 に凝 集 価 を 追 跡 す る こ とに よつ て,

各 抗 体 の単 独 反 復 測 定 で は得 られ な い よ うな抗 体

量 の変 動 を検 出 で き る で あ ろ う.ま た,こ の検 査

が ベ ッ ドサ イ ドで即 時 に で き る こ とは,急 を 要 す

る場 合 の診 断 法 と して大 き な利 点 で あ る.

Streptozyme testは,溶 レ ン菌 感染 の ス ク リー

ニ ン グに と どま らず,そ れ 自身 独 自の意 義 を もつ

た 重要 な検 査 法 と して,他 の抗 体 測 定 を平 行 して

行 うべ き もの で あ ろ う.

5. 結 論

Streptozyme test凝 集 価(SZ), ASO, AS

K, AHと の関 係 を 検 討 し,次 の結 果 を 得 た.

(1) SZとASO,ASK, AHと の間 に は

お の お のr=0.7999, 0.6927, 0.7646の 有 意 な相

関 が み られ た が,不 一 致 率 も 高 く,お のお の51.4

%,28.9%,33.3%で あ つ た.こ の不 一 致 の大 部

分 はSZ陽 性 で他 の抗 体 価 が低 い例 で あ る. SZ

陰性 で 他 の 抗体 価 の高 いSZ偽 陰 性 例 は, ASK

に お け る2%を 除 い て は み られ な か つ た.

ASO, ASK, AHの どれ か が 高 け れ ばSZ

は ほ とん どす べ て 陽 性 と言 え るが,SZ陽 性 で も

他 の抗 体 価 が す べ て 正 常 範 囲 に あ る こ とが 少 な く

な い.

(2) ASO, ASK, AHの 価 を お の お の 正

常 上 限 値(166,1,280,128)で 除 した 値 を

356 感染 症学雑誌 第49巻 第9号

相対的抗体量 と名づけ,こ れをStreptozyme test

の反応機序の解析に用いた.単 独の相対的抗体量

よりも2者 加算,そ れ よりも更に3者 算相対的抗

体量の方がSZと より強い相関を示 した.3者 加

算相対的抗体量 とSZと の間にはr=0.9076の 相

関が成立 し,こ れは各相対的抗体量中最大のもの

とSZと の間の相関係数0.7270よ り有意に高かつ

た.こ のことから,Streptozyme testは,各 抗体

の算術的な和に反応するものであつて,各 抗体中

最大のものとだけ反応するものでないことが結論

される.

SZ陽 性でしかも他の抗体がすべて正常範囲に

ある例でも,す べて3者 加算相対性抗体量はSZ

陰性例にはみられない大 きな値を示 していた.

(3) 以上のことは,溶 レン菌感染にも拘 らず

各抗体価の上昇が充分でない場合(緩 徐な,あ る

いは古い感染でリウマチ熱の場合問題になる)の

診断にさいしてStreptozyme testが独自の重要な

役割を果 し得ることを示 している.

謝辞 貴重な指導,助 言,便 宜を与えられた大河内一雄教授(九 大中検),神中寛教授(九 大医療短大),武

谷健二教授(九 大細菌),合 屋長英教授(九 大小児科),

沢江義郎助教授(九 大医療短大),久富都実栄技官,柿原

史恵技官に心か らの謝意 を表 す る.

文 献

1) Klein, G.C. & Jones, W.L.: Comparison of the streptozyme test with the antistreptolysin O, antideoxyribonuclease B, and antihy-

aluronidase tests. Appl. Microbiol., 21: 257•\

259, 1971.

2) Janeff, J. & Jan.eff, D.: A screening test for

streptococcal antibodies. Lab. Med., 2: 38•\

40, 1971.

3) Collins, O.D., III: Antistreptolysin O deter-

mination by sheep cell agglutination. Am. J.

din. Path., 57: 598-602, 1972.

4) 村 中正 中, 勝 木 建: ス トレ プ トザ イ ム と 溶 連

菌 感 染. 診 療 と保 険, 14: 935-938, 1972.

5) 成 田揚 煕, 熊 谷 直 秀: Streptozyme Testの 臨

床 的 価 値. 臨 床 検 査, 17: 546-550, 1973.

6) Committee report: Jones criteria (revised) for guidance in the diagnosis of rheumatic fever. Circulation, 32: 664-668, 1965.

7) Stollerman, G.H., Lewis, A. J., Schultz, I. & Taranta, A.: Relationship of immune re-sponse to group A streptococci to the course of acute, chronic and recurrent rheumatic fever. Am. J. Med., 20: 163-169, 1956.

8) Wannamaker, L.W. & Ayoub, E.M.: Anti-body titers in acute rheumatic fever. Circula-tion, 21: 598-614, 1960.

Studies of Reacting Mechanism in Streptozyme Test by means of a New Synthetic

Index of Multiple Antibody Titers (ASO, ASK and AH)

Teiichi ODA, M.D.

Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, Kyushu University

The relationship between Streptozyme test (SZ) and other antistreptococcal antibody titers was

studied.

Correlation coefficients between SZ and ASO, ASK and All were 0.7999, 0.6927 and 0.7646, respec-

tively. Discordance rates were 51.4%, 28.9% and 33.3% respectively. The majority of discordance

was consisted of the cases with positive SZ and low titers of other antibodies. False negative cases of

SZ were seen in only 2% exclusively with ASK. In the sera with positive SZ, 28 to 57% had high titers

of single antibody; 52 to 71% had high titers of at least one of two antibodies; and 76.1% had high titers

of at least one of three other antibodies; therefore, 23.9% of them were not detected by simultaneous ,

determinations of ASO, ASK and All.

Given titers of ASO, ASK and All were divided by each highest normal values (166, 1280 and 128,

respectively) and named "Relative Amount of Antibody (RAA)". RAAs of different antibodies are

昭和50年9月20日 357

comparable in the same scale each other. They are added and called "Cumulative RAA (CRAA)".

SZ had the highest correlation coefficient with CRAA of three other titers (r = 0.9076) as compared with

those of two titers or of each single RAA. On the other hand, the correlation coefficient between SZ

and the single maximum value of three RAAs was 0.7270, which was significantly lower than that of SZ

vs. CRAA of three titers (p< 0.05). It was concluded that SZ reacts with the arithmetic sum of other

antibodies, not with single strongest one. In the above mentioned cases with positive SZ and negative

three antibodies, CRAA of three titers were significantly higher than that of negative SZ group. This

additive character of antibodies in Streptozyme test is important in the clinical application of it.