月刊現代ギター - 2015年12月号

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Page 1: 月刊現代ギター - 2015年12月号

現代

ギタ

ー 

昭和

42年

6月

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第三

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49巻

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株式会社 現代ギター社 

(本体 1,200 円 + 税)定価 1,296 円

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【修正日】 2015/11/10_22:42  【出力日】 2015/11/10_22:42

Page 2: 月刊現代ギター - 2015年12月号

17 特集 

ギタリストの使うギター弦

CONCERT PHOTO REPORT

27 コンサート・フォトレポート 福田進一 渋谷 環〔共演〕マリア・エステル・グスマン、     高木洋子(Pf) 松尾俊介 益田正洋 & 西澤安澄(Pf) カニサレス & 新日本フィル 林 祥太郎 中林淳眞 堀井義則

REPORT

64 第 22回埼玉ギターコンクール65 第 7回中部日本アマチュアギターコンクール

INTERVIEW

34 レオナルド・ブラーボ36 Jiro'sBar ~濱田滋郎対談[33]    大塚直哉(チェンバロ奏者)

50 今村泰典54 ガブリエル・ビアンコ

READING / ESSAY / LECTURE

40 愛器を語る[81]    田嶌道生(マーティン O-21)44 ポインツ・オブ・ギターテクニック[21]    益田正洋57 あなたの街の~ギター教室紹介〔9〕62 フォリアへの補遺   (小川和隆)71 オールド・ポップス・コレクション〔21〕   冬が来る前に(浦野 直) (たしまみちを)75 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔33〕    スマイル(チャップリン)   (小関佳宏)

INFORMATION

66 めもらんだむ67 新譜案内68 外盤案内70 新刊案内74 コンクール・インフォメーション94 今月の見どころ聴きどころ96 イベント&コンサートガイド

ENSEMBLE

92 アンサンブルの広場

SCORE

113 今月の楽譜解説114 「スペインのフォリア」による第 5幻想曲   Op.12(ド・フォッサ~小川和隆)120 北方のテルプシコーレOp.147-12,13(ジュリ   アーニ)122 愛の挨拶Op.12(エルガー~佐藤弘和)124 花~Bloomagain(上野まな~瀬田創太   ~角圭司)126 ブラック・イルミネーション(冨山詩曜)128 美味しい舞曲第 2番(永島志基)

Vol.49 No.12 December2015 No.624 December

        林祥太郎

●表紙 レオナルド・ブラーボ●写真RominaRota

78 EtudePub ~ギター・ベーシック・レパートリー     完全攻略〔9〕           (坂場圭介)80 アンサンブルに聴く巨匠の名技〔9〕                    (朝川博)82 atempo 日記〔69〕(渡辺和彦)84 レパートリー充実講座〔249〕(岩崎慎一)        ワルツ・ホ長調 Op.32-2(ソル)

88 ロンドン便り〔71〕(ワシリー・サバ/訳:関塚亮司)90 スペイン便り          (手塚健旨)

58 第 2 特集 グラフィック・アナリシス~構造で聴くギター名曲のしくみ:秋岡 陽

002目次.indd 2 2015/11/10 9:21:45

Page 3: 月刊現代ギター - 2015年12月号

【質問 1】現在、メインで使用されている楽器名を教えてください。

【質問 2】その楽器に使っているギター弦を教えてください。     (1)メーカー名、(2)銘柄、(3)テンション 高音弦と低音弦でメーカー・銘柄を変えているとか、各弦ごとに変えているとか、独自に組み合わせて     いる場合は、何弦に何を使っているかご記入ください。      ①弦= ②弦= ③弦= ④弦= ⑤弦= ⑥弦=

【質問 3】なぜその弦を選んだのか、理由をお聞かせください。

【質問 4】弦の交換頻度をご教示ください。    (1)普段(月に何回、週に何回)、(2)コンサート前(どのタイミングで弦を張り替えるか)

●質問項目

※楽器ごとに使用弦を変える人も多いため、今回はメインの楽器に限定して使用弦を尋ねた。

Gendai Guitar 17

ギタリストの使うギター弦

―― 国内・海外のプロ・ギタリストに聞いた            “使用ギター弦”アンケート調査 ――

特集

「あのギタリストが使っているギター弦の名前を教えて欲しい」。こうした問い合わせが、かなりの頻度で当編集部に寄せられる。プロ・アマ問わずギター弾きなら誰しもギター弦にはこだわりを持つもの。また、贔屓のギタリストと同じ弦を使いたいと思うのも人情であろう。今回こうした要望に応えるべく、内外のプロ・ギタリストに使用弦についてのアンケート調査を行ない、55名のギタリストの皆さんから回答を得ることが出来た。その詳細を以下に紹介したい。

ギタリストの使うギター弦

●新井伴典 Tomonori Arai

【Q1】今井勇一。【Q2】①②弦=オーガスチン/リーガル、③弦=ハナバッハ/ゴールディン、④⑤弦=オーガスチン/青、⑥弦=サバレス/カンティーガ[青]/ハイ。【Q3】音が良い。ビリつきが少ない。③弦はカーボン系なのに硬すぎない。【Q4】(1)高音弦:傷が付いたら、ピッチが狂ってきたら。低音弦:張りのある音が出なくなってきたら。(2)高音弦:コンサートの 3 日前、低音弦:コンサート前日。

●井上仁一郎 Jin-ichiro Inoue

【Q1】ウィリアム&ジョン・ギルバート。【Q2】高音弦= ハナバッハ/シルバー 200 /ミディアムロー、低音弦= サバレス/コラム[赤]/ノーマル。【Q3】張力・太さ・フィット感といった形状に関するものと、艶・華やかさ・まろやかさ・深みといった音色に関するものとの兼ね合いで。【Q4】(1)何もなければ替えない。何かあれば短

期間でも替える。(2)コンサートの 24 時間前くらいを目安に。24 時間以内に続けて次の本番がある場合は替えない。

●いちむじん/宇高靖人 Yasuhito Udaka

【Q1】川田一高。【Q2】高音弦=サバレス/アリアンス[青]/ハイ、低音弦=サバレス/コラム[青]/ハイ。【Q3】長持ちするからです。【Q4】(1)ライヴごとなので、週に 2 回ほど。(2)ライヴ当日です。レコーディングの場合は、前日に替えて少し弾き込みます。

●いちむじん/山下俊輔 Shunsuke Yamashita

【Q1】川田一高。【Q2】高音弦=ハナバッハ/シルバー[青]/ハイ、低音弦=サバレス/コラム[青]/ハイ、【Q3】楽器に合った弦であり、自分のタッチに合うから。【Q4】

(1)高音弦:月 1 回交換、低音弦:本番の度に交換。(2)コンサートの 1 時間前に替えます。

国内ギタリスト編(五十音順)

017-24:特集ギタリスト使用弦.indd 17 2015/11/10 17:10:44

Page 4: 月刊現代ギター - 2015年12月号

Gendai Guitar 27

彩の国さいたま芸術劇場のシリーズ企画「次代へ伝えたい名曲」の第 4 回として福田進一が登場した。同企画は過去に堤 剛(Vc)、仲道郁代(Pf)、堀米ゆず子(Vn)が出演。今後も今井信子(Vla)、小山実稚恵(Pf)といった、国内外で活躍する名演奏家が名を連ねる人気シリーズであり、会場に詰めかけた聴衆もギターファンのみならず、幅広い音楽愛好家が見受けられた。約 600 席とギターにはやや広めの会場ではあったが、音響の良さもあり前半の桜井 RF、後半のサントス・エルナンデスの美音が隅々まで響き渡った。《魔笛》、《シャコンヌ》、《5 つのバガテル》など、最初はやや早めのテンポで始まったが、次第に落ち着きを見せ、後半の大曲〈ノクターナル〉と〈幻想ソナタ〉ではじっくりと味わい深い演奏が楽しめた。アンコールには、ヴィラ=ロボス〈前奏曲第 1 番〉、アルベニス〈アストゥリアス〉、ポンセ〈エストレリータ〉が

演奏され会場も大いに盛り上がり、〈アストゥリアス〉演奏後には「ブラーヴォ!」の掛け声が響いた。大曲でギターのイメージを覆しつつ、親しみやすい小品でギターの魅力を存分に伝える、福田の狙い通りのコンサートとなったのではないだろうか。余談だが、同シリーズでは福田に続き、今井、小山と3 回連続で〈シャコンヌ〉が取り上げられる。ギター、4 台のヴィオラ、ピアノと形を変えても名曲と感じさせる〈シャコンヌ〉の懐の深さということだろうか。プログラム:モーツァルトの「魔笛」による序奏と変奏曲Op.9(ソル)、シャコンヌ・ニ短調 BWV1004/5(バッハ~福田)、5 つのバガテル(ウォルトン)、アランブラの想い出、アラビア風綺想曲(タレガ)、ノクターナル Op.70(ブリテン)、幻想ソナタ Op.A-22(マネン)  [9 月 12 日/彩の国さいたま芸術劇場・音楽ホール]

福田進一Shin-ichi Fukuda

写真:加藤英弘

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Page 5: 月刊現代ギター - 2015年12月号

34 Gendai Guitar

●『タンゴ名曲集~カナロからピアソラまで』

――「タンゴ名曲集」のCDがもうすぐ発売になりますね。一昨年に出した同名の曲集を音にしたものが。ブラーボ(以下 B) 曲集を作っている時から、同じ内容の CD も出したいと思っていました。タンゴは特に、楽譜だけでは伝わらないものがありますから、音で私のこの編曲アイディアを伝えたいと思いました。その前に、私のソロ・アルバム『ブエノスアイレスの四季』も作っていたので、それを去年出して、それからこちらにとりかかりました。――今回は韓国で録音しましたね。B ギタリストのイ・ソンウー(Lee Song-Ou)さんにディレクションをお願いしました。彼とは庄内ギターフェスティバルで初めて会って、ハイレベルな生徒たちを連れてきていたのでびっくりしました。それから彼は韓国のソニーのプロデューサーもしていて、良い CD をたくさん作っているので、いつか彼と CD を作りたいと思っていました。――いつ韓国に?B 7 月です。韓国もすごく暑かったです。数日滞在しましたが、録音は2日間で済ませました。彼は普通、ギターの録音はホールで行ないますが、二重奏の編集をしやすくするため、今回はスタジオで録ることにしました。――二重奏はどうやって録ったのですか?B 韓国のギタリストと合わせるという案もあったのですが、リハーサルの時間がなかったのでそれは諦めて、

一人でやることにしました。ソンウーさんは編集のためにメトロノームを使いましょう、と言いましたが、タンゴではそれでは音楽にならないので、メトロノームなしになりました。結局、伴奏パートを先に録って、それを聴きながらメロディー・パートを重ねました。――サンプルCDを聴いた感じでは、楽譜と違う部分もあったような……。B それはわざとやりました。タンゴは決まった通りに弾く音楽ではありません。だから、楽譜を買ってタンゴを弾いてみようとする人は、楽譜どおりでもいいですが、私の CD の演奏が良かったら、耳コピして弾いてもいいし、自分でもっと良いフレーズを作ってもいいです。タンゴのスタイルから離れなかったら、自由に変えていいのです。――ジャズなどと同じですね。B ジャズのようにインプロヴィゼーションするわけではありませんが、メロディーやフレージングを変えることはあります。――サンプルを聴いてみて、やはりアルゼンチンの人でないと弾けない表現を感じました。速いフレーズの中での素早いヴィブラートなど、歌心たっぷりですね。B 私のタンゴはクラシック音楽の影響も入っていますから、少しまろやかにしています。本当のタンゴはもっと荒っぽい、ピックでガリガリ弾くようなところがあります。〈ベンタロン〉ではかなりそのように荒く演奏しました。ソンウーさんはびっくりしていました(笑)。――CDでは曲の順番が違いましたね。

Leonardo Bravo

  ニューアルバム「タンゴ名曲集~カナロからピアソラまで」発売!!

cover story

レオナルド・ブラーボ

2015 年 10月 21日 現代ギター社インタビューア:中里精一

枠にとらわれない、オリジナリティ溢れた 新しいタンゴサウンドが今ここに。

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Page 6: 月刊現代ギター - 2015年12月号

──大塚さんがチェンバロを弾かれるようになったきっかけというのはどういうことからだったんでしょう。大塚 もともとピアノを弾いていたのでバッハが好きだったということもあるんですけど、小学生の時に少年合唱隊に入っていて、「昔の楽器の音はいいな」と漠然と思っていたんです。その後に、中学校の音楽の先生がスピネット(小型のチェンバロ)を弾かせてくれて、「通奏低音で伴奏するのも面白いな」と思ったのがチェンバロに興味を持ったきっかけです。──そして東京藝大に進まれたんですね。大塚 はい、楽理科に入りました。──当時は古楽器の専攻はなかったんですか?大塚 実は「藝大にチェンバロの専攻はない」と聞いていたんですけど、実際には楽理科入学した後にチェンバロ専攻があるということがわかりまして(笑)。それで大学院からチェンバロ専攻に移ったんです。──大塚さんはチェンバロはもちろんですけど、オルガ

ンやクラヴィコードなどすべての鍵盤楽器をお弾きになられるんですか?大塚 いえ、フォルテピアノなどは時々しか弾かないので、すべてというわけではないです。やはりチェンバロとオルガンを弾く機会が多いですね。「バッハやクープランはチェンバロとオルガンの両方を演奏したんだな」と思うとどちらも弾きたくなるんです(笑)。──留学されたのはアムステルダム音楽院でいらっしゃいましたよね。大塚 現在では“アムステルダム音楽院”に校名が統一されましたけれど、当時はアムステルダム音楽院とスウェーリンク音楽院が合併したところだったので、 “アムステルダム・スウェーリンク音楽院”という校名でした。──オランダと言えば古楽の中心ですね。大塚 本当に古楽が盛んな場所です。ロマン派の作曲家がいないからかもしれません。現代音楽と古楽ばかりなんですね。

No.33

36 Gendai Guitar

大塚直哉Naoya Otsuka(チェンバロ奏者)

東京藝術大学楽理科を経て、同大学院チェンバロ専攻修了。アムステルダム音楽院チェンバロ科およびオルガン科を卒業。チェンバロを渡邊順生、鈴木雅明、小林道夫、B.v.アスペレン、オルガンを今井奈緒子、早島万紀子、P.vダイク、W.vディッペンホルスト、J.vオールトメルセン、廣野嗣雄、クラヴィコードをM.vデルフト、ピアノを原田 稔、高橋泰子、岡野寿子の各氏に師事。チェンバロ、オルガン、クラヴィコードなど、昔の鍵盤楽器の奏者として活発な活動を行なっている。ソロCD『トッカーレ』ほか多数。また、ヘンデル『メサイア』、バッハ『ロ短調ミサ曲』、パーセル『ディドとエネアス』など、バロック時代の声楽作品を中心とする指揮活動でも注目を集めている。現在、東京藝術大学准教授、国立音楽大学、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師、アンサンブル・コルディエ音楽監督、宮崎県立芸術劇場、彩の国さいたま芸術劇場、台東区旧奏楽堂のオルガン事業アドヴァイザー、日本チェンバロ協会副会長、NHK-FM『古楽の楽しみ』に案内役として出演。 http://homepage3.nifty.com/utremi/ 

©堀田力丸

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Page 7: 月刊現代ギター - 2015年12月号

40 Gendai Guitar

写真:木田新一

愛器を語る

田嶌道生 ◆マーティン O-21

(1935)

Michiwo Tashimaギター・デュオ・グループ「ドゥーズ・コルデ」のギタリストとして、ブラジル音楽のショーロやタンゴ、クラシック音楽を主に活動している。海外ミュージシャンとの共演も多く、エヴァンドロ・ネルソン・セルジェント、デオ・ヒオン、シェン・ヒベイロ、エンヒキ・カゼスなどのブラジル音楽アーティストとのツアー、レコーディング、各メディアなどに出演。また、ブラジルの伝統音楽・ショーロのグループ「ホーザ・ホーシャ」そして「ランサ・ペルフーミ」のメンバーでもあり独自のスタイルを築いている。さらには沢田知可子、米良美一、ピーター、秋元順子他、国内外アーティストのアレンジ、サポート、そして DVD などの作・編曲なども多彩に手掛けている。ギター教本や CD 付き曲集なども数多く、幅広いジャンルで活躍。本誌に『オールド・ポップス・コレクション』を好評連載中。

写真:木田新一

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Page 8: 月刊現代ギター - 2015年12月号

58 Gendai Guitar

文・イラスト/秋岡 陽(フェリス女学院大学学長・音楽学者)

◎略歴東京都目黒区生まれ(1954)/国際基督教大学卒業(1979)/シカゴ大学大学院修士課程修了(1981)/株式会社音楽之友社国際出版部入社(1982)/フェリス女学院大学音楽学部専任講師(1993)/フェリス女学院大学音楽学部助教授(1996)/フェリス女学院大学大学音楽学部教授(2000)/フェリス女学院大学学長(2009 ~)◎主な学会並びに公的活動日本音楽学会、アメリカ音楽学会、横須賀市文化振興審議会委員、横浜みなとみらいホールオルガン委員、日本キリスト教団出版局専門委員◎主な著作・論文著書『自分の歌をさがす―西洋の音楽と日本の歌』(フェリス・ブックス)、共編『山田耕筰作品全集第 1 巻:管弦楽曲 I』(春秋社)、編集・執筆『新訂 標準音楽辞典』『ポケット音楽辞典』『音楽中辞典』『新編 音楽小辞典』(音楽之友社)

■グラフィック・アナリシスとは? 「楽曲分析」というと難しそうな印象がありますが、英語圏で一般的な「グラフィック・アナリシス」は、まさに「図解」で曲の「構造」をわかりやすく視覚化してくれます。その代表が「シェンカー風分析 Schenkerian

analysis」。英語で音楽書を読むと、シェンカー風註 1)の分析のグラフがごく普通に使われているのを目にします。たとえば『ニューグローヴ音楽事典』の「ソナタ形式Sonata Form」の項目。そこでもシェンカー風のグラフを使った説明が行なわれています。 使われるのは、一目見て直感的に理解出来るグラフです。ただ、直感的にすぐ分かるというのは、反面、単純化による誤解の危険性も孕んでいます。とは言うものの、ものは使いよう。「第1楽章はソナタ形式で、提示部で第1主題がニ長調で現われたあと、推移部を経てイ長調

(属調)の第 2 主題が提示され……」といった文章の説明だけだと頭がついていけないとき、グラフも併用するとすっきり腑に落ちて理解出来ます。

■ソナタ形式の基本構造 ではさっそく、フェルナンド・ソルの〈グラン・ソロ作品 14〉という、ソナタ形式で書かれた曲を例に、グラフィックな分析をしてみましょう。 まずその前に、ソナタ形式がどういうものなのか、ひととおりまとめておきます。

 ソナタ形式の曲は、基本的に、次のような部分から構成されます。

 さらにこの前に序奏がつけられたり、最後にコーダがつけられることがあります。 今回のソルの作品は、後掲したグラフからも分かるように、序奏と短いコーダがついたソナタ形式です。 さて、各部の内容を説明しましょう。 (1)提示部:まず第1主題(群)が主調で提示されます。そのあと、推移による橋渡しを経て、別の調の領域へ。そこで第 2 主題(群)を提示。ホームグラウンドの主調を離れ、他所に連れていかれた音楽は、このままで終われない不安定な感覚を残したまま提示部を終えます。 (2)展開部:提示部の最後で、別の調の領域に移ったままになっていましたが、その後引き続き展開部に突入。しかも、この展開部、なかなか主調にもどしてくれない!それどころか、あちらの調、こちらの調、と転調を繰り返す。聴き手の中で、不安定感が増し、緊張感が高まります。 (3)再現部:再現部の冒頭は楽章全体のなかでいちばんの聴きどころです。展開部で高められた不安感や緊張感が、ここで一気に解決します。待ちに待ったホームグラウンドの調(主調)がいよいよ回帰。さらに、曲の冒頭で聴いた第 1 主題も回帰。主調と第 1 主題が同時に回帰する「ダブル・リターン」の効果は劇的です。また、このように劇的な回帰をしたあとは、これ以上さらに転

グラフィック・アナリシス   ~構造で聴くギター名曲のしくみ~

第二特集

ソル〈グラン・ソロ 作品 14〉

(1)提示部 (2)展開部 (3)再現部

註 1)ハインリヒ・シェンカー Heinrich Schenker (1868-1935)オーストリアの音楽学者。シェンカー理論(楽曲分析理論の一つ)の創始者。

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