第5章 波の生成と シアー中の重力波について
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北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる -. 第5章 波の生成と シアー中の重力波について. 前章ではおもに重力波の 存在性 (大気中に波として存在可能であること、さらに大気を強制したときに,条件によっては 鉛直に伝播可能であること )を議論した。. 大気には散逸過程が存在するので、常に強制がないとそのうち波動はなくなってしまう。実際には常に波動が観測されるので、何か 生成 のメカニズムが存在するはずである。そこでこの章の前半では、この問題のいくつかを簡単に議論する。 後半は、波動の働き(6章)の準備として、基本的流れのシアー中の波動の振る舞いについて述べる。. - PowerPoint PPT PresentationTRANSCRIPT
第5章 波の生成と シアー中の重力波について
前章ではおもに重力波の存在性(大気中に波として存在可能であること、さらに大気を強制したときに,条件によっては鉛直に伝播可能であること)を議論した。
大気には散逸過程が存在するので、常に強制がないとそのうち波動はなくなってしまう。実際には常に波動が観測されるので、何か生成のメカニズムが存在するはずである。そこでこの章の前半では、この問題のいくつかを簡単に議論する。
後半は、波動の働き(6章)の準備として、基本的流れのシアー中の波動の振る舞いについて述べる。
北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる -
5−1:赤道ケルビン波の生成について15 日程度の下部成層圏 Kelvin 波の話し > 簡単化された励起の問題−
赤道下部成層圏における Kelvin 波の時間変動
図(温度の時間変化)から想像されるように >− 温度が変動している
そこで,熱帯対流圏で熱的な強制が時間的に振動すれば,その周りに波動として伝わることが出来るであろう.
ー>
熱帯対流圏のところで、以下の式のような局所的で一定の時間変動の Heating を考える.( Holton, 1972, J. Atmos. Sci. )
下図が変動成分である、 Ricciardulli and Garcia, 2000, JAS
Q=Q(y,z)exp(−(λ/λ0)2)cosωtここで は Heating の南北鉛直構造を表し, K/day の大きさ, は経度, , は与えられる Heating の振動数である。Heating Q をフ リエ分解する(西向き、東向き成−分に分ける)。
Q(y,z)λ λ0=36o
ω
Q= Qkk∑ +ei(kλ+ωt)+ Qkk
∑ −ei(kλ−ωt)
ここでは,熱帯下部成層圏の応答を考えているので,観測されている Kelvin 波を想定して,周期は15 日に決め,南北対称な Heating の形を与える.平均東西風もある形に仮定.線型の方程式を解いて応答を調べる。
加熱の鉛直構造(実線)
対流圏で局所的な関数形の熱強制を与えているので、対流圏は複雑である。 熱の強制のない成層圏では大気の運動は鉛直伝播的に振舞う.この場合波数1が卓越している。
c=ω/k=2*3.14/ (15 日) /(2*3.14/4x107)=30m/sm=N/c=2x10-2/30=2/3x10-3 ー> Lz=2x3.14x3/2x103
波の鉛直波長を見積もると約 10 kmとなる.図の鉛直構造の波長と大差はない。
ω=Nkm
u’
shade が西風
Kevin 波の分散式で( 1/4H2 は無視):
大気大循環モデル( GCM )中の Thermal Heating による波動生成:
GCM 中の熱的加熱の時間高度断面図
波数 1 で東に伝播する成分。経度 0 での時間変動、緯度 10 度の平均、 Manzini and Hamilton (1993, J. Atmos. Sci.) 、このモデルは湿潤対流調節で対流を起こしている
GCM の Heating を与えて、東西平均風の線形的な応答をみる。 GCM の結果との比較。波数 1 成分の時間 高度断面図、上図は− GCM の結果で、下図が線形モデルの結果(線形の方が応答が大きい、自己調節(例えば壊れたりする)が十分でないからであろう)。基本的な応答はよく似ている。
時間高度断面図(位相の下方伝播が見える)
間隔 0.1K/d
波数 1 、東に伝播する東西風
2m/s 間隔、鉛直波長が 12-15km 、周期が12-14days
対流圏中のケルビン波:成層圏のものより遅い
Kelvin 波のバンド域のシグナルの強いところ、対流圏は locality が強い
ある部分が分散式にのっていること
OLR の data からスペクトル解析して対称のモードを取り出す 東向き西向き
周期等価深さ h=25m
h=25m
Wheeler and Kiladis, JAS, 1999
Wave-CISK (2種条件不安定)の考え:
赤道での GMS データのスペクトル解析と赤道波の分散式(線であらわされている)をあらわしている。赤道波の分散式にのっている部分がある。
対応する固有値は √ gh=14m/s(h=20m)、Kelvin 波の場合は c = √gh 、の浅い波の赤道波に対応している。鉛直波長は
√gh=N/m →14/1x10-2 x2x3.14 -> 9km
半波長では 5km でかなり鉛直スケールが小さい波に対応している。
境界層 topの上昇流に比例して熱 Q をだし、波の位相速度を小さくすることを考える。
RH∂T∂t
+N2w=η(z)N2wB
のような熱力学の式を仮定して問題を解く.残りの線形運動方程式も使い、線形の固有値問題をとく (cf. Hayashi, 1970, JMSJ) 。
Kelvin 波等が不安定になる.3層モデルで固有値問題をとく。下の図は2つの η の鉛直分布と差分化、右図は η 1=0として η 2の値を変化したとき、それにともなって波の固有値 c (時間微分から -ikc がでる)が変化することを示している。 Heating Q をきめる ηを変化させることで、位相速度 c を変化させて、比較的ゆっくりした波の速度( 10m/s程度)を出すことができる( Takahashi,1987, JMSJ )。ある部分はこのようなメカニズムで赤道波が生成されている可能性がある。
問題点 >熱の鉛直分布を決めるパラメ タ− − η に敏感に依存する.
c の虚部 ci
位相速度
補足:より一般的な局所的 wave-CISK<ー ENSOに適用
Watanabe and Jin, 2003, J. Climate
熱力学と水蒸気の式(対流と表面 flux からの)
€
∂tT ' ....= Q'c +Q'h∂tq' .... = Q'q +Q'e
Q'c = ec
τ c
(T 'c −T '−δT 'c )
Q'q = ec
τ c
(q'c −q')
雲について、境界層 bの湿潤静的エネルギーを factor A, Bをとおしてつかう
€
h'b = c pT 'b +Lq'bc pT 'c = Ah'b Lq'c = Bh'b
境界層と雲層の保存則から
€
c pT 'c +φ'c +Lq's (T ,T 'c ) = c pT 'b +φ'b +Lq'b
Lq's = γc pT 'c γ = Lc p
dqs
dT T =T
φ'c = κ c pσ
1∫ T 'c d lnσ
計算して、 A は
€
A = 1(1+ γ )
exp −κ 1(1+ γ)σ
dσσ
σ b∫ ⎡ ⎣ ⎢
⎤ ⎦ ⎥
€
c p Q'cσ t
σ b∫ dσ + L Q'qσ t
σ b∫ = 0対流評価は Relaxation 型の heating
Heating と moisturesinkバランス
€
q c + q'c = qs(T ) +c p
LγT 'c
B = γ A
飽和を仮定して
€
δT 'c = 1c p
( A + B )h'b −c p T ' − L q'[ ]
isverticalaveragebetweencloudbase and top
ec = min( M Mc
,1−ε)
€
Q'h = gP sδσ
ρCh W 0(T 's −T '0 ) + W '0 (T s − T 0)[ ]
Q'e = β eg
P sδσρCh{W 0 c pL−1γ (T s)T 's −q'0[ ] + W '0 qs(T s) − q 0[ ]}
+ β 'eg
P sδσρCh{W 0 qs(T s) − q 0[ ]}
W '0 = 1W 0
(u 0u'0 +v 0v'0 )
また
表面での顕熱,潜熱 flux による
over bar は基本状態で prime は摂動
W: surface wind
Ch: バルク係数
上から SST の anomaly ( ENSO-LaNina の差)、 OLR の差、 500mbの高度差
定常解:ドライな Linear Baroclinic Model に対する (a) 鉛直平均加熱 Q’c と、 (b)500mbでの height 応答、 Moist な LBM に対する加熱 (c) 、と 500mbの高度差 (d) の応答(赤道で高気圧偏差)
高度場の応答が dry と moist で異なる、東西および南北の構造の違い
類似性
5 2 :対流と重力波生成について−
12例を集めた composite の図
対流圏 (5.4km-15km) と下部成層圏 (16-22km) との関係
鉛直流
Sato et al. ( 1994, J. G. R. ) :対流圏の対流(夏7月の日本、 35N, 136Eでの観測)と成層圏擾乱が結びついているように見える。つながっていない時もある。対流が強いと、成層圏に影響をあたえるのだろう。ただし、この緯度では1日振動は上方に伝播しない。
対流圏の振動する updraft からの重力波生成:モデル実験から、 Fovell et al., 1992, JAS
16m/s で動く系でみた雨の時間的振る舞い、時間的に振動している
t=6h における東西風(上 , 4m/s 間隔)と鉛直流(下 ,1m/s 間隔)の東西 - 高度分布、雲は太い実線
x=291km における t=5.5h から t=6.5h での鉛直流の時間高度分布図、対流圏において updraft が時間的に振動している
平均東西風の鉛直分布;2次元対流モデル
別例:2次元対流モデルの対流と重力波、 Eitzen and Randall, JAS, 2005
対流圏の対流と成層圏の重力波、中緯度の状況 鉛直波長 7km 程度の重力波が生成
実線の方が中緯度状況での基本流鉛直速度のスペクトル(実線は 14km の高度)
流体粒子に軌跡について:
規格化された鉛直流(縦軸)と変位(横軸)で分類された、波/乱流
波/乱流に分類された流体粒子の軌跡の例:上下に振動的か、起点は (0,0) にとってある。
Updrafts の軌跡例
5 3:その他いくつか−
台風 Kelly ( 1987, 10月)とからんだ重力波 (Sato, 1993, J. Atmos. Sci.) この図は南北風が卓越した、水平波長が 600km (台風全体のスケールを感じている?)で鉛直波長が 6km の重力波らしい。周期は地面にたいして6時間程度の重力波(下図の9に対応)。
台風からの重力波
地衡風調節からの中緯度の重力波?
中緯度の重力波のスペクトル図MU観測 Model結果
地衡風調節で生成されていると言われているが、詳細な生成メカニズムは調べられていない
高分解能の GCM (分解能は 100km 程度)に現れた重力波(右):中緯度の重力波、左は観測で見られるもの、構造がよく似ている。 Sato et al., 1999, J. Atmos. Sci.
MU観測 Model結果東西風
南北風
5 4:山岳強制波−
図:奥羽山脈で作られた重力波?
重力波の生成問題で最も簡単な問題は山岳による強制問題であろう。それは東西に一様な風が吹いており、下端に凸凹した山がある場合である。図にその様にして生成されたと思われる山岳重力波の写真をのせておく。
簡単のために sin または cos の形の山を考えよう。実際の山は非常に複雑な形をしているが、それをフーリエ分解して1つの成分を取り出してみたとする。すると山の形は、
このような山があって、風が吹いた時にどのような波が生成されるか が今の問題である。
高さによらない一様な西風が吹いているとする。その風が山にあたり重力波が作られることになる。そのとき、境界条件は z = 0 で、
ここで鉛直波数は
ここで h0 は山の高さの振幅、 k は sin 的な山の波長の逆数の 倍である。
€
w = u0∂h∂x
at z = 0
€
h = h0 exp( ikx )
€
u0∂u∂x
= − 1ρ 0
∂p∂x
u0∂w∂x
= − 1ρ 0
∂p∂z
+ g θθ0
∂u∂x
+ ∂w∂z
= 0
u0∂∂x
(g θθ0
) + wN 2 = 0
定常状態を仮定した方程式は
として、上方に伝播する定常な重力波は
€
w = iku0h0 exp(ikx + imz)
€
m2 = N 2
u02 − k 2
をみたす
右図のようにかなり非線形的な様相をしていて、最近は数値実験になってしまうが、位相などの定性的振る舞いはよく似ている
図:観測された Rocky Mountain による山岳波の一例。横軸は mile ではかってある。 Lilly (1978) 引用は Gill から。
数値実験の例: Satomura and Bougeault(1994, J. M. S. J. ) から、ピレネー山脈の風下波。
高さとともに位相が増加している(同位相線はうしろの方へ傾ぐ
sinkx
sin(kx+π/2)=coskx
鉛直に伝播する山岳重力波を図示すると、下のようになるであろう
衛星による山岳重力波の観測について: Eckermann and Preusse, 1999, Science
重力波の分散式から、鉛直波長をみつもる。上図からU=20 m/ s の風で、数百 km の長波として(アンデスで長いであろう) , 94年 11月
€
Lz = 2 × π UN
= 2 × π 202 ×10−2 = 6km 30 km で急に波が違ったようにみえる?
リチャートソン数はかなり小さいー> シアー不安定?
高さに依存する基本風
€
∂u'∂z
≈ mu'≈ m φ'U
≈ m 1m
RH
T '(7K) /U(20m /s)
≈ 0.014m /s N 2
(∂u' /∂z)2 ≈ 2
5—5:シアー流中の重力波
高さに依存する基本風の中での伝播の問題ー>波の作用の準備−>流れの不安定による生成問題は8章で議論。
基本風のシアー流中の内部重力波について考察する。東西方向に平均をした東西風を考えれば最も簡単な一般風とみなせる。それは実際には時間変動をしている(例えば太陽放射が時間的に変っていたり、非線形のため)がここではその事は考えない。
基本状態に prime のついた摂動(それを内部重力波とする)がつけ加わり、その摂動の振幅が小さいと仮定して前と同様にして線形方程式を導く。長波で東西・鉛直の2次元運動の仮定をおく。
以下の話しに必要なため、運動量と熱力学の式に線形の小さな damping を入れておく。
∂ u∂ t
+ u 0(z) ∂ u∂ x
+ wdu 0
dz = − ∂∂ x
(p
ρ 0) − a u
その基本風は高さと南北方向の関数である。しかもそれは地衡風バランスと静力学平衡のバランスから、温度も高さと南北方向の関数でもあるが、
ここでは簡単のために東西風が高さのみの関数と仮定する。さらに温度場は話しの簡単化のために等温大気と仮定する。すなわち速度場として、前章の拡張として以下の形を仮定する。(1)
(3)∂∂z( pρ0) =−g ρ
ρ0
(4) ∂∂ x
(ρ 0u) + ∂∂ z
(ρ 0w) = 0
(5) ∂∂ t
( θθ 0
) + u 0(z) ∂∂ x
( θθ 0
) + w S = − a θθ 0
ρρ 0
= − θθ 0
(6)
高さ緯度に依存する平均風 u0(y,z)
u =u0(z) + u′ , w =w′
( 2)
ここで prime は省略
Newtonian cooling について成層圏ではいい近似で成り立っていることは2章で議論した。とにかく a を一定として以下議論を進める。また Rayleigh friction と Newtonian cooling の係数が同じというのもおかしいのですが(変えるとおもしろいことも起こる、 cf. Andrew and McIntyre ( 1976, J. Atmos. Sci. ); Takahashi and Uryu ( 1981, J. M. S. J. ) )。
の形を仮定する。ここで c は波の東西方向の位相速度であり、 ω= c k である。 damping の効果は(9) c =c+ i akのように複素数の位相速度を導入して使い分ければよい。 (8) を使うと以下のような方程式が導かれる。(10)
d2W
dz2 + N
(c−u0) +
(δu0
δz+ 1
Hδu0
δz )
(c−u0)− 1
4H
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
non-Hydro の場合は { } の中に − k 2 がつく。
この式と前章で求めた式とを比較してみると中括弧の第2項の部分がつけ加わっている。もちろん第1項の u0 は高さの関数である。式は解析的には解けないので、普通は数値的に解くことになる。
鉛直に伝播するとき、どんな風に振舞うかがここでの問題である。
と思えばよいであろう。ここで は鉛直方向の、渦による(考えている擾乱のスケールより小さい)拡散係数で、 m は波の鉛直波数。
ν
前章との違いは東西方向の運動方程式において基本流による移流の項、及び基本流の鉛直シアーの項がつけ加わったこと、熱力学の方程式に基本流による温位の水平移流の項がつけ加わったことである。
運動方程式での linear damping を Rayleigh friction ( a を Rayleigh friction coefficient )、熱力学での linear damping を Newtonian cooling と呼ぶ。運動方程式の中で運動量がその場で消えてなくなる?は物理的におかしいが、簡単なので(微分の階数が上がらない)よく使われる。物理的には運動量は拡散するので例えば(7)
ν ∂2u
∂ z2 ≈ − ν m 2u = − a u
これまでと同様に(8) w =W(z)e
zH ex(ik(x −ct))
位相速度と基本風が等しい u0=c で特異点になる
5—6:WKB近似
さらにWKB近似解を求めるために、教科書に従って無次元のパラメータを導入して (11) を以下のようにかくことにする。(12)
解き方の1例である:あとの評価(振幅の2次の order )のときに使う。適当な物理数学の教科書を見る。寺沢寛一編の’自然科学者のための数学概論(応用編)’を眺める。するとまず基本場 u0(z) は緩やかに変化していることが必要とかいてある。そこで
d2u 0
dz2 ≈0 ,δu0
δz ≈0
とおけそうである。そうすると (10) は以下のようになる。(11) d2W
dz2 + N
(c−u0) − 1
4H
⎧⎪⎨⎪⎩
⎫⎪⎬⎪⎭W =0
ここで u0 が一定ならば前章と同じになる。しかし今は u0 が高さの関数となる。前章とのつながりから
N2
(c −u0) − 1
4H =m (z)
d2W
dz2 + bm (z)W =0
d2W
dz2 + N
(c−u0) +
(δu0
δz+ 1
Hδu0
δz )
(c−u0)− 1
4H
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
ここで b は無次元のパラメータで ある。いま波の位相速度 c が u0 より速いとしよう。u0(z)
c
このとき上向きに伝わる波を考える。前章の群速度の議論を思い出してW =ex( −i bϕ (z))
の形の解を選ぶことにする。微分して
∂W∂z
=−ib∂ϕ∂z
exp(−i bϕ(z))
∂2W∂z2
=(−ib∂ϕ∂z)2exp(−i bϕ(z))−ib∂
2ϕ∂z2
exp(−i bϕ(z))
上式を (12) に代入すると(13)
−b2(∂ϕ∂ z
)2
− ib∂
2ϕ
∂ z2 + b2
m2(z) = 0
z
u0(z)
−b2(∂ϕ∂ z
)2 − ib∂
2ϕ
∂ z2 + b2 m2(z) = 0
ϕ 0 = m dz∫となる。次の order に高めるにはbが大きいとして
ϕ =ϕ 0 +ϕ 1
b +ϕ 2
b2 + …
を (13) に代入して、(14)
−b2(∂ϕ 0
∂ z+ 1
b∂ϕ 1
∂ z+ … )2 − ib (
∂2ϕ 0
∂ z2 + 1b
∂2ϕ 1
∂ z2 + … ) + b2 m2 = 0
b2 の項は前と同じ。 b 項として(15) −2
∂ϕ 0
∂ z∂ϕ 1
∂ z − i∂
2ϕ 0
∂ z2 = 0
上式に0次の項を代入すると ∂ϕ 1
∂ z = − i2
∂∂ z ( ln m )
だから(16) W ≈ex(−ib m δz − i
b lνm∫{ } )
最終的に b=1 とおいて(17) w = Ae
zH
m 1 / ex( −i m δz∫ )⋅ex(ik(x −ct))
が求めるWKB近似解である。 A は境界条件から求められる。m1/2 のように振幅が変化する事は大事である。
臨界層( u0=c ) では 大 w は小、 一方 u は大になるm
N2
(c −u0) − 1
4H =m (z)
だから(前と同様、以下 m は正を選ぶことにする)
となる。 b2 のみの項から第0近似を取り出せば(∂ϕ 0
∂ z)=m
赤道波にたいしては、 Lindzen, 1971, JAS を参照のこと、力作ですが、式の変形が大変.
<ーそれぞれの場所の u0 を感じている
<ー
<ー 波の位相がきまる
<ー 波の振幅変化がきまる
5—7:臨界層 ( Critical Level ) での線形重力波の振舞い
d2Wdz2 + N
(c−u0) +
(δu0
δz+ 1
Hδu0
δz )
(c−u0)− 1
4H
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
数学的な話し(重要なので少しは述べないと)をします。それは特異点の話しです。線形の critical level の話しは何とか理解出来るから。非線形の話しは数学の得意な人に任せます。数学が好きでそういうことをやってみたい人に、例えば Kelly and Maslowe (1970) など
方程式 (10) で、基本流と重力波の位相速度が同じになったらどうなるかという話しです。この問題をはじめて解いたのは Booker and Bretherton ( 1967, J. Fluid ) 。ここではあとの話しに必要なさわりのみ。
山
一定の風
高さの1次関数の基本風
上のような状況を考えます。t<0 の時 w=0t>0 w=a coskx z=山のところで
こんな問題をきちんと解く。高さの1次関数なら解は第1種の modified Bessel function で表現される。時間的にどんな変化をするか? —> Laplace 変換なんかして、詳しいことは Booker and Bretherton を参照。
U=c ->
(10)
ここでは Critical level を z=0 におきます。話しをわかり易くするために基本流の設定をしておきます。c があってもいいとしておきます。
z < 0 で位相速度 c は基本流より速く動き、 z > 0 で基本流の方が速く動いているとします。すなわち z<0 で波は相対的に東に、 z > 0 で波は西に伝播しているとします(左図のような状況)。ここで z = 0 の近傍のみを議論する。このとき基本流は
u 0 =c+δu0
δz z
と書かれる。ここでいまの場合 du0 / dz > 0 である。すると、 z=0 近傍において (10) 式は次のようになる。
d2W
dz2 + N
(δu0
δz )z
+
1Hδu0
δz
−δu0
δz z− 1
4H
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
Ri < 1 / 4 のとき流れが不安定となり大気中に擾乱が発生する(可能性があると書いた方が正確か)。不安定のための必要条件が積分定理から導かれるが、ここでは述べない。積分定理の基本論文は Miles (1961) と Howard(1961) 。応用数学の世界です。Ri を導入すると、(22)
である。これからの議論は Ri が十分に大きいときのみ。—>(波が吸収される)
Ri ≡ N
(δu0
δz )
ν =1 ± 1 − 4Ri2
Ri を評価する。 N2 は成層圏で 4x10-4 程度。 shear は50kmで100ms— 1とすると、 Ri = 100 になる。 Ri は 1/4 に比べて大きい。そのような場合を考える。すると解は(23) W =z1 / e±im lνz
ここで m = Ri − 1 / 4
Critical levelu0 =c
u0(z)
ここで重要な無次元量 Richardson 数( Ri と書く)は以下のように定義される。(21)
ν (ν − 1) + N2
(du 0
dz )2
= 0とおく。これを (18) に代入して、(20)
この方程式はオイラー型(の特別な形)なので、(19)
z=0 の近傍では中括弧の第一項が大きいのでその項のみを残すと方程式は、(18)
今 z が大きい所で一定の風が吹いているとする。
そして基本流に対しての波の位相速度の関係(基本流が位相速度より速い)が z >0 近傍と同じとする。そのとき波の鉛直波長に比べスケール・ハイトが非常に大きいとして、 m > 0 に選んで、 m ≈ N
u0 −c
となる。書き直すとmNuc −= 0 ω=ku0−
Nmk
∂w∂ m = N
m2 k
だから の形が上向きの波であることがわかる。 これを、 Critical level近傍の波につなげる。
€
exp(ikx − ikct + imz)
W =Azν
c
d2W
dz2 + N
(δu0
δz )z
W =0
波の形は exp (ikx ikct + imz) − だから (23) において z > 0 の解として(24)
W =z1 / e im lν z
を選ぶのが都合がいい。z>0のとき増加する位相の変化の仕方が同じであるから。
z
この z>0 解をどのように z < 0 につなげばよいか? z = 0 が分岐点である。これを処理するために大気はいつも粘性等があるため damping が存在することをつかう。そのために (2), (5) で linear damping を導入していた。これにより、 z = 0 の分岐点をすこしずらすことを考える。複素数の位相速度になるので、 Critical point は
c + iak −u0 =c+ iak −(c+δu0
δz z) =0
を満足するから、分岐点が虚軸の正の方になる。(25)
z =
aikδu0
δz
z軸z軸をマイナスの方へ移動させるとき、位相の変化は− iπ(図)である。だから z < 0 で
z = z e−i
を選ぶべきであるので、解 は z < 0 でW = z
1 / e−i
e im ( lν z −i ) =−i z1 /
em eim lνz z < 0
今は風に対して西に伝播している。
u0-c >0だからpとwは正の相関を持つ -> pwはエネルギーの流れだから、これは上向きの波である _
補足:波のエネルギーの流れ(フラックス)から
w =Aex(ikx−ikct+ imz)∂u∂x
+∂w∂z
= 0
iku =−imw =−imAex(ikx−ikct+ imz)u =−
mk w
さらにik(u0 −c)u=−ik (u0 −c)u=−
p =−(u0 −c)u =(u0 −c)mkw
( critical level の近くで m〜N/zなので、 wがWKB的とすれば、m 1/2に逆比例だからwはz1/2に比例して小さくなる )
z
ここで critical level の上下で振幅の因子が exp(πμ) だけ異なることに注意(この差はかなり大きい)。 Critical level の下の振幅と比較してCritical level の上の振幅はほとんどゼロになる。さらなる詳しい議論は原論文を読んで頂くとして(例えば時間的にどんなふうに変化するか?)ここでは先に進むことにする。参考として図に Critical level 近傍の鉛直流の振舞い、および実験室で得られた Critical level における波の吸収( Critical level の上で波がなくなっている)の写真をのせておこう(図)。
図は実験室での Critical Level 近傍の重力波の振舞い。 Thorpe(1981) , 引用は Gill の教科書(1982)より。
Critical Level 近傍の重力波(W、鉛直流)の振舞い。松野、島崎(1981)より。
5 8:数値計算例−
1つは z= 0 (地面)から 20 kmまでは 20 msー1の風、次に 20 kmから 40 kmまでは風はゆっくり減少して 40 kmで− 20 msー1になる(このとき Ri = 100 )、 40 kmから 50 kmまでは− 20 msー1とする。もう一つの風プロフィールはz= 0 から 20 kmまでは 20 msー1の風、次にすぐ次の差分点なる 20.1 kmから 50 kmまでは− 20 msー1とする(図参照)。このとき Critical level で Ri = 0.0025 である。山の高さは 100 m、山の波長は 200 kmと仮定して計算をした。 x= 0 の鉛直風の高さ分布を示したのが図aとbである。前者は波が吸収されており、前図と同じ構造をしている。一方後者は Critical level から波が放射している。
線形の範囲:吸収と over-transmission ( Ri が1/4以上では波の吸収、1/4以下では不安定と絡んで over-transmission (過剰伝播)、が条件に依存して起こる )
数値的な方法を使って Critical level 近くの解を数値的に求める。2つの基本状態を以下のように仮定。
z
d2Wdz2 + N
(c−u0) +
(δu0
δz+ 1
Hδu0
δz )
(c−u0)− 1
4H
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
図a: Critical level absorption の例。縦軸は高度、横軸は wの振幅を表す;波が臨界層で吸収されている。
図b:シアーが強い風のときの波の振舞い。縦軸が高度、風の shear が大きい時、波は成長している。