研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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研研研研研研 研研研研研研研研研研研 研研 研 研研研研研研 2016-04-27

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Page 1: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

研究基礎講座 第5回論述で論証を表現しよう石原 尚

新入生講習会 2016-04-27

Page 2: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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今回の学習の目標

4つの論述ルールを知る4つの論述の方針を知る論述の実際例を知る

論証を明確で分かり易い文章として構成できる力「論述力」を身につける• 論述では,書くべき内容とその配置が「全体構造ありき」でシス

テマチックに決まっていくものであることを学びましょう

Page 3: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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論証構造を反映した文章を記述すること

論述とは?

すなわち,「読み進めたときに自然と論証構造が見えてくる」文章

=

上手な論述文は… 上手でない論述文は…

☑ 筆 者 の 意 見 は こ れか! ☑ 筆者の 意見の 根拠は こ れか! ☑ その根拠はつまりこういうことか! ☑ な る ほ ど , 意 見 に 納得!論証構造が伝わる=意見の本来の説得力を発揮できる!

☑ 筆者の意見は…これか?どれだ? ☑ 筆者の 意見の根拠は なんだ? ☑ その根拠は結局どういうことだ? ☑ 意見に納得しようがない…論証構造が伝わらない=意見の本来の説得力を発揮できない!

Page 4: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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論証構造をルールに則って文章構造に転換!

論述の基本

読者と共通のルールで論述されていない文章は分かりにくい!

論証 =「論証のピラミッド構造」で発展的な結論を導出

論述文 =「段落の一直線の連結」で発展的な結論を導出

第一段落

第二段落

第三段落

第四段落

構造転換ルール A

構造転換ルール A’

著者の論述

読者の論証把握

Page 5: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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近接ルール関連が強いものほど近くに置く

4つの論述ルール対応ルール

論述のルール

案内ルール

論証構造を担う内容だけ書く

論証構造を伝える道標を置く 一方向で読めるようにする前進ルール

× ○ 論理展開を 追いやすい

× 論理展開を 追いにくい

これら二つの理由から

B であることもこの主張を支持

× ○

×

○分かる!

分かる! 分からん

分かった!

しんどかった楽に読めた!

おまけの基本!「論証単位を一つの段落にする」

受験でやったパラグラフ整序問題です

これも受験でやった接続詞の穴埋め問題です

先を読まなくても,また戻らなくてもわかるように

Page 6: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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4つの論述ルールのための4つの方針

論述のルール

「論証図」を先に完成させて「説明材料」を揃える!

近接ルールのために…対応ルールのために…

案内ルールのために… 前進ルールのために…

「アウトライン」を練って説明の順序を最適化する!

「接続語」と「役割表現」で論証構造を伝える!

「読者視点」で読み返して推敲する!

Page 7: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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① 「論証図」を先に完成させる最も伝えたいこと

論述の方針の詳細

文章を書く前に論証を整理して「説明材料」を揃えましょう!

それを支える根拠その根拠を支える根拠

を整理できていなければ,それらが伝わる文章は書きようもありません.

ノートへの走り書きでも マインドマップツールでもよいので

Page 8: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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② 「アウトライン」を練る揃えた説明材料をどの順で説明すれば論理展開(話の繋がり)が分かり易いかを検討しましょう.

論述の方針の詳細

文章の骨組みが悪いと,いくら肉(補足文)を付けても結局読みにくい

論証単位① 論証単位②

論証単位③

論証単位①

論証単位②

論証単位③

論証単位②

論証単位①

論証単位③

選択

いきなり①を出しても③の結論が見えにくい…② を出して③を予想させつつ①を出す方がいいか?

Page 9: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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③ 接続語と役割表現で論証構造を表現する論述文は3つの要素で構成されている.

論述の方針の詳細

コンテンツを抜いても内容が推測できる文は読みやすい

構造を表現する「接続語」 A であるので, C であると言える.また, B であることも C という考えを支持する.同時に,D であるために E であるとも言える.これら二つの理由から, Fであると結論づけられる.

意味内容を表現する「コンテンツ」

役割を明示する「役割表現」

A の説明 B の説明 C の説明

D の説明 E の説明 F の説明

Page 10: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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④「読者視点」で読み直して推敲する始めて先頭から読んだ人が,• 接続語によって,その前と後の文の構造的関係を推測でき,• 役割表現によって,構造における文の役割を確認でき,• 先読みや後戻りをしなくても意味内容を理解できるかを確認しながら推敲を重ねよう!

論述の方針の詳細

先を推測できると…構造に当てはめて理解しやすい!役割を確認できると…安心して読み進められる!後戻りしなくてよいと…楽に読める!

Page 11: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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段階① 論証図を書こう

実際例 論証を論述しよう

説明材料が揃ったら,次は並び替え

最終結論(最も言いたいこと) なんで?

なんで?

目安は二段階の論証

直接根拠

間接根拠

Page 12: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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• このロボットには衝撃防護被覆を実装すべき• 理由1 衝撃耐久性が不足

• その理由 A  転倒して壊れた事実• 理由2 機構変更は望ましくないから

• その理由 A  大変• その理由 B  機構性能の悪化避けたい

段階② アウトラインを書こう

実際例 論証を論述しよう

アウトラインができたら,接続語と役割表現を付ける

• このロボットには衝撃防護被覆を実装すべき• 理由1 機構変更は望ましくないから

• その理由 A  大変• その理由 B  機構性能の悪化避けたい

• 理由2 衝撃耐久性が不足• その理由 A  転倒して壊れた事実

説明材料(論証図) 最初のアウトライン

文章化

唐突すぎて理由としての説得力がない!問題!

並び替え

×

○○

この順序なら繋がりが分かり易い!これでいこう!

Page 13: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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• このロボットには衝撃防護被覆を実装すべき• 理由1 衝撃耐久性が不足

• その理由 A  転倒して壊れた事実• 理由2 機構変更は望ましくないから

• その理由 A  大変• その理由 B  機構性能の悪化避けたい

段階③ 接続語と役割表現を付ける

実際例 論証を論述しよう

ここまでできたら,読み返しながら推敲!

アウトライン ここで主張したいのは,このロボットには衝撃防護被覆を実装すべきだ,ということだ. 理由は二つある.一つ目は衝撃耐久性不足だ.これは,転倒して壊れた事実から明らかだ. 二つ目の理由は,機構変更は望ましくないということだ.というのも,機構変更は大変であり,それだけでなく,機構性能の悪化を避けたいからだ.

構造が表現されたアウトライン

論述

Page 14: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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段階④ 読者視点で読み直して推敲する

実際例 論証を論述しよう

 ここで主張したいのは,このロボットには衝撃防護被覆を実装すべきだ,ということだ. 理由は二つある.一つ目は衝撃耐久性不足だ.これは,転倒して壊れた事実から明らかだ. 二つ目の理由は,機構変更は望ましくないということだ.というのも,機構変更は大変であり,それだけでなく,機構性能の悪化を避けたいからだ.

構造が表現されたアウトライン(骨組み)

推敲とは,文章を正確で読みやすいものにする作業復習

どんなロボットか?

推敲の最初の段階では,始めて読む読者が疑問に抱くであろう内容の補足(肉付け)が重要!

どんな被覆か?どの程度の不足か?

いつどのように壊れたのか?機構とは何を指すのか? どう大変なのか?

どのくらい避けたいのか?どのくらい悪化しうるのか?

疑問リスト(肉付けすべき項目)

読者視点でどれだけ疑問を持てるかが,書く文章の分かり易さを決める!

Page 15: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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完成例

実際例 論証を論述しよう

 我々はこれまでに,空気圧で駆動される10の関節の協調動作により歩行,走行,及びそれらの移動モードの任意のタイミングでの切り替えが可能な小型二足ロボットを開発してきた.ここでは,このロボットが走行中に転倒した場合であっても,その関節機構の破壊を防ぐことのできる衝撃防護被覆を実装すべきである必要性について述べる. この理由は以下の二つである.一つ目の理由は,このロボットの関節機構自体の衝撃耐久性が,継続的な動作実験を実施する上で不足していることである.これまでの走行実験における数度の転倒のほとんどの場合において,機構部材の変形やセンサ部の故障が生じたために,実験を中断せざるを得なかった.このことから,機構の衝撃耐久性の不足は明らかである. 二つ目の理由は,これまで安定して良好に動作してきた関節機構の設計変更は望ましくないということだ.なぜなら,この機構部は多くの部品が精密に組み合わされて実現されているため,これ以上の部材の寸法増加や新規部品追加は機構部全体の設計の見直しを意味し,そうなれば,実験の再開までの時間的,金銭的コストは膨大になり,またそれだけでなく,機構性能の悪化が生じる恐れもあるからだ.

実際にはさらなる推敲が必要

Page 16: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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完成例

実際例 論証を論述しよう

 我々はこれまでに,空気圧で駆動される10の関節の協調動作により歩行,走行,及びそれらの移動モードの任意のタイミングでの切り替えが可能な小型二足ロボットを開発してきた.ここでは,このロボットが走行中に転倒した場合であっても,その関節機構の破壊を防ぐことのできる衝撃防護被覆を実装すべきである必要性について述べる. この理由は以下の二つである.一つ目の理由は,このロボットの関節機構自体の衝撃耐久性が,継続的な動作実験を実施する上で不足していることである.これまでの走行実験における数度の転倒のほとんどの場合において,機構部材の変形やセンサ部の故障が生じたために,実験を中断せざるを得なかった.このことから,機構の衝撃耐久性の不足は明らかである. 二つ目の理由は,これまで安定して良好に動作してきた関節機構の設計変更は望ましくないということだ.なぜなら,この機構部は多くの部品が精密に組み合わされて実現されているため,これ以上の部材の寸法増加や新規部品追加は機構部全体の設計の見直しを意味し,そうなれば,実験の再開までの時間的,金銭的コストは膨大になり,またそれだけでなく,機構性能の悪化が生じる恐れもあるからだ.

最も言いたいことは最も際立たせる!

一つの段落には一つの論証単位!

前置きは骨の補足に留める!

各段落で重要な内容は先頭に!

重要な内容は最後におさらい!

これがパラグラフライティング!

Page 17: 研究基礎講座 第5回 論述で論証を表現しよう

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今回学習したこと

まとめ

論証構造を反映した文章を記述すること

論証図・アウトライン・接続語と役割表現・推敲(肉付け)

対応・近接・案内・前進

[次回予告 ]論証を簡潔に訴える方法である「発表」について紹介します.

1. 論述とは何か?2. 4つの論述ルールは?3. 4つの論述方針は?