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ISSN 0836-7858 土木研究所資料第 4222 号 土木研究所資料 岩盤上の基礎の鉛直方向の安定照査法 のための地盤反力度の評価に関する研究 平成 24 3 月 独立行政法人土木研究所 橋梁構造研究グループ

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ISSN 0 8 3 6 - 7 8 5 8

土木研究所資料第 4222 号

土木研究所資料

岩盤上の基礎の鉛直方向の安定照査法 のための地盤反力度の評価に関する研究

平成 24 年 3 月

独立行政法人土木研究所 橋梁構造研究グループ

Copyright © (2012) by P.W.R.I.

All rights reserved. No part of this book may be reproduced by any means,

nor transmitted, nor translated into a machine language without the written

permission of the Chief Executive of P.W.R.I.

この報告書は、独立行政法人土木研究所理事長の承認を得て刊行したも

のである。したがって、本報告書の全部又は一部の転載、複製は、独立行

政法人土木研究所理事長の文書による承認を得ずしてこれを行ってはなら

ない。

土 木 研 究 所 資 料 第 4222 号 2012 年 3 月

岩盤上の基礎の鉛直方向の安定照査法

のための地盤反力度の評価に関する研究

CAESAR 上席研究員 中谷 昌一

総括主任研究員 七澤 利明

主任研究員 西田 秀明

研 究 員 河野 哲也

交流研究員 木村 真也

要 旨

山岳部における道路建設の増加や施工技術の進歩に伴い,岩盤上に建設される基礎が増

加している.平成 14 年道路橋示方書・同解説Ⅳ下部構造編において,岩盤を支持層とす

る直接基礎の鉛直支持力照査については,最大地盤反力度の上限値の目安が示されている

一方で,深礎基礎やケーソン基礎のように深い基礎を岩盤に支持させた場合の鉛直支持力

照査については,明確な規定が示されていない.本研究では,岩盤上に設置される基礎の

鉛直支持力の統一的な照査方法および照査値を検討し,提案を行った. キーワード:岩盤,地盤反力度の上限値,支持力,直接基礎,ケーソン基礎,深礎基礎

目 次 第1章 はじめに 1

1.1 研究の背景と目的 .............................................................................................................................. 1

1.2 岩盤上の基礎の安定照査法の現状と問題点 .................................................................................... 2

1.3 研究の目的と概要 .............................................................................................................................. 4

第2章 H14 道示における岩盤の最大地盤反力度の上限値の検証 6

2.1 概説 ....................................................................................................................................................... 6

2.2 岩盤の支持力特性に関する既往研究成果の整理 ............................................................................ 6

第3章 深度に応じた岩の極限支持力の評価 18

3.1 概説 ....................................................................................................................................................... 18

3.2 試験データの分析方法 ......................................................................................................................... 16

3.3 分析に用いたデータ ........................................................................................................................... 19

3.3.1 実橋梁の設計および施工時における試験データ ..................................................................... 19

3.3.2 模型地盤における試験データ ...................................................................................................... 21

3.4 各種物理定数および載荷試験結果の整理......................................................................................... 22

3.4.1 岩石の一軸圧縮強度と孔内水平載荷試験による変形係数の関係 .......................................... 22

3.4.2 孔内水平載荷試験と平板載荷試験による変形係数の関係 ...................................................... 24

3.4.3 平板載荷試験による変形係数と降伏支持力度の関係 .............................................................. 26

3.4.4 平板載荷試験による降伏支持力度と極限支持力度の関係 ...................................................... 27

3.4.5 岩石の一軸圧縮強度と平板載荷試験による極限支持力度の関係 .......................................... 28

第4章 岩盤上の基礎の鉛直支持力照査法の検討 30

4.1 概説 ......................................................................................................................................................... 30

4.2 極限支持力度および最大地盤反力度の上限値 ................................................................................ 30

4.3 岩盤上に支持させた基礎の鉛直支持力に対する照査方法 ............................................................ 33

第5章 まとめ 35

参考文献 ............................................................................................................................................................. 33

付録

1. 分析に用いた試験データの区分方法 .............................................................................................37

2. 分析に用いた室内試験および原位置載荷試験データの整理 ....................................................44

3. 最大地盤反力度の上限値の提案値と従来の設計値との関係 ....................................................57

1

第1章 はじめに

1.1 研究の背景と目的

近年,山岳部における道路建設の増加や施工技術の進歩などに伴い,岩盤上に建設される基礎の事

例が増加してきている.図 1.1.1 に平成 17 年度に土木研究所が実施した橋梁基礎形式選定手法調査結

果 1)をもとに整理した各基礎形式の割合を示す.これらのうち,岩盤を支持層とした実績があるのは,

直接基礎・ケーソン基礎・場所打ち杭基礎・深礎基礎の 4 形式であり,これらの基礎が全基礎形式に

占める割合は,直接基礎が約 20%,ケーソン基礎が約 2%,場所打ち杭が約 46%,深礎基礎が約 13%

である.図 1.1.2 は,直接基礎・ケーソン基礎・場所打ち杭基礎・深礎基礎について,支持層が岩盤

である割合を示したものである.直接基礎は,60%程度が岩盤に支持されたものであり,深い地盤を

支持層とするケーソン基礎や場所打ち杭基礎についても 30%程度が岩盤を支持層としている.また,

深礎基礎は,ほぼ全数が岩盤に支持されている.これより,全基礎数に対して岩盤を支持層とする基

礎の割合は 40%程度であり,比較的多いことがわかる.

平成 14 年道路橋示方書・同解説Ⅳ下部構造編 2)(以下,「H14 道示」という.)において,岩盤を支持

層とする直接基礎の鉛直方向の安定性については,基礎底面に生じる最大地盤反力度が地盤反力度の

上限値を超えないことを規定している.一方で,ケーソン基礎や場所打ち杭のように深い基礎を岩盤

に支持させた場合の鉛直方向の安定性については,明確な規定が示されていない.このため,設計実

務においては,H14 道示に規定されている直接基礎の照査手法や各機関の設計基準を準用しながら上

限値や極限支持力を設定し,鉛直支持力に対する照査を実施しているのが実状である.さらに,岩盤

中に設置される深礎基礎の設計については,H14 道示では体系的な設計手法が規定されていないため,

基準化が求められているところである.

本研究では,既往の原位置載荷試験や岩石試験を収集・分析し,根入れの深い基礎も含めた岩盤上

に設置される基礎の鉛直支持力の照査方法および照査値を提案した.

図 1.1.1 基礎の施工実績 1)

2

図 1.1.2 岩盤上に支持された基礎の割合 1)

1.2 岩盤上の基礎の安定照査法の現状と問題点

基礎は,常時・レベル 1 地震時については最も厳しい部位・部材に着目して照査を行い,レベル 2

地震時については系として全体の不具合に着目して照査を行っている.表 1.2.1 に橋に求められる性

能と基礎の状態の関係を示す.橋の要求性能に関して,常時,暴風時およびレベル 1 地震時において

は,「橋の健全性を損なわない」こと,すなわち,「設計供用期間内に発生する確率が高い荷重に対

し,橋全体系として力学特性が弾性域を超えない状態であること」が基本とされている.また,レベ

ル 2 地震時においては,「速やかな機能回復が可能,もしくは落橋しない」こと,すなわち,「供用

期間中に生じる可能性が低いレベル 2 地震動を受けても,橋は,速やかな機能回復が可能な状態にと

どまること,又は,地震による損傷が橋として致命的にならない状態にとどまる状態であること」が

基本とされている.こうした橋の要求性能を満足させるための基礎の設計を考えるとき,上部構造を

どのような状態で支持するのか,上部構造からの荷重に対してどのような復元力を確保するかという

観点から基礎の状態を照査する必要がある.

ここで,死荷重や活荷重のような鉛直荷重に対する照査に着目すると,H14 道示では,支持に対し

て十分に安全であること,また過大な沈下が生じないことを意図した照査が規定されている.表 1.2.2

に H14 道示に規定されている岩盤に支持された基礎の鉛直支持力に対する照査手法を示す.一般に,

基礎については,極限支持力に対して十分安全である場合には変位については問題にならないと考え

られる.しかし,岩の場合,極限支持力は,亀裂・割れ目等により左右され,剛塑性理論を用いて極

限支持力を計算するためには,理論式に入力する地盤定数の評価に亀裂や割れ目等の影響を考慮する

必要がある一方で,そのような照査式や対応する亀裂等の地盤調査法は必ずしも確立されていない.

このため,岩盤を支持層とする場合,鉛直支持力の照査を極限支持力に基づいて行うのは困難である.

3

この問題に対して,H14 道示における岩盤上に設置される直接基礎の設計は,経験的に求められた最

大地盤反力度の上限値を定め,基礎底面に分布する地盤反力度がこれを超えないことを確認している.

場所打ち杭やケーソン基礎については,岩盤上に構築する事例が多い一方で明確な規定が示されてい

ない.深礎基礎については,H14 道示に体系的な設計法の規定がなく,設計実務においては平成 18

年度改訂版杭基礎設計便覧 3)の参考資料にも一部記載されている西・中・東日本高速道路株式会社「設

計要領 第二集 橋梁建設編 4)」(以下,「設計要領」という.)の照査方法による場合が多いため,表 1.2.3

にこれを示す.設計要領では,静力学公式より求めた極限支持力に対して所定の安全余裕が確保され

ることを照査している.このように,特に深い基礎については,岩盤に支持させた場合の照査方法が

明確でなく,運用上は各種設計基準を参考に極限支持力を求めて照査をしていることが実状であり,

基礎形式によって照査方法や照査値の求め方が異なっている.今後,採用割合が増加している深礎基

礎の設計法の体系化も踏まえて,各基礎形式で岩盤に支持される場合の鉛直支持の照査法を整理し,

統一的な考え方のもと同等の安全性を有する照査法を検討・提案する必要がある.

表 1.2.1 橋に求められる性能と基礎の状態の関係

想定している

荷重状態 橋に求められる性能 基礎の状態 (群杭基礎では各杭の状態)

常時

橋として健全性を損

なわない

以下の(A)から(C)を満足する.

(A) 十分に安全な状態であり,

(B) 基礎の各部材の力学特性が弾性域を超えることなく,

(C) 基礎を支持する地盤の力学特性に大きな変化が生じて

ない状態

暴風時 レベル 1 地震時

レベル 2 地震時

速やかな機能回復が

可能,もしくは落橋

しない

(A) 復旧上問題にならない復元力を地震後も有し, (B) 復旧に支障となる残留変位が残留せず, (C) 基礎本体の補修・補強等の処置法が明らかである

または,

(A) 復元力を喪失しない

4

表 1.2.2 H14 道示における岩盤上の基礎の鉛直方向の安定照査方法

基礎形式 岩盤を支持層とする場合の照査

直接基礎 基礎底面の地盤反力度≦最大地盤反力度の上限値*

*:常時における岩盤の最大地盤反力度の上限値(地震時は,常時の 1.5 倍) 最大地盤反力度 目安とする値

岩盤の種類 常時 一軸圧縮強度(MN/m2)

孔内水平載荷試験による 変形係数 (MN/m2)

硬岩

亀裂が少ない 2,500 (kN/m2) 10 以上 500 以上 亀裂が多い 1,000 (kN/m2) 500 未満

軟岩・土丹 600 (kN/m2) 1 以上

深礎基礎 (H14 道示では体系的な深礎基礎の設計法の規定がない.) ケーソン基礎

規定なし 場所打ち杭基礎 照査の意図 岩の地盤定数と支持力推定の不確実性を担保して最大強度点に対する照査をする.

表 1.2.3 設計要領 4)における岩盤上の基礎の鉛直方向の安定照査方法

基礎形式 岩盤を支持層とする場合の照査

直接基礎 H14 道示に同じ

深礎基礎 基礎底面の鉛直反力度≦許容鉛直支持力度(静力学公式による理論値*に斜面の影響

を考慮し,所定の安全余裕を確保して求

める.) *:Qu = cNc + qNq + 0.5 BN (H14 道示ケーソン基礎の設計に用いる

式(11.4.1)と同じ) ※直接基礎のような最大地盤反力度の上限値の規定はない.

ケーソン基礎 規定なし 場所打ち杭基礎 土丹・軟岩の場合の極限支持力度 qd(kN/m2)

qd=3qu (≦9000kN/m2) ここに,qu は杭先端地盤の一軸圧縮強度(kN/m2). ※計算モデルや支持力照査式は,H14 道示の場所打ち杭と同じ.

5

1.3 研究の目的と概要

本研究の目的は,既往の載荷試験や岩石試験を収集・分析しながら,岩盤上に設置される基礎の鉛

直支持力について,基礎形式によらず統一的な考え方のもと同等の安全性を有するよう照査方法およ

び照査値を提案することである.

本文の構成は図 1.3.1 に示すとおりである.

1 章では,岩盤を支持層とする基礎の鉛直支持力照査に対する現状と問題点を整理した.

2 章では,H14 道示において岩盤上の直接基礎に適用されている最大地盤反力度の上限値の設定経

緯・根拠についてレビューした.

3 章では,岩盤上の基礎の鉛直支持力推定法に関する過去の研究成果 5)を参考に,既往の載荷試験

や岩石試験を収集・分析し,深度の違いが岩の極限支持力に与える影響について評価した.

4 章では,3 章で分析した結果をもとに岩盤上の基礎の鉛直支持力の照査方法および照査値を提案

した.

5 章では,以上の成果を要約して総括した.

図 1.3.1 本文の構成

第 1 章 はじめに

第 3 章 深度に応じた岩の極限支持力の評価

(既往の載荷試験や岩石試験を収集・分析する.)

第 4 章 岩盤上の基礎の鉛直支持力照査法の検討

(第 3 章で分析した結果をもとに,各基礎の鉛直支持力に対する

照査方法および照査値を提案する.)

第 5 章 まとめ

第 2 章 H14 道示における岩盤の最大地盤反力度の上限値の検証

(直接基礎に適用されている最大地盤反力度の上限値の設定経緯・根

拠のレビューする.)

6

第2章 H14 道示の直接基礎の照査における岩盤の最大地盤反力度の上限値の検証

2.1 概説

H14 道示における岩盤に支持された直接基礎の鉛直支持力照査は,基礎底面に分布する地盤反力度

が表 2.1.1 に示す最大地盤反力度の上限値を超えないことを確認するものである.ここでは,H14 道

示で示されている表 2.1.1 の最大地盤反力度の上限値の設定経緯・根拠について,文献 5)に基づきレ

ビューする.

表 2.1.1 直接基礎の設計に用いる岩盤の最大地盤反力度の上限値

最大地盤反力度

( kN/m2 ) 目安とする値

岩盤の種種 常時 レベル 1 地震時

一軸圧縮強度

( MN/m2 ) 孔内水平載荷試験に よる変形係数( MN/m2 )

岩 亀裂が少ない 2,500 3,750

10 以上 500 以上

亀裂が多い 1,000 1,500 500 未満

軟岩・土丹 600 900 600

2.2 岩盤の支持力特性に関する既往研究成果の整理

昭和 55 年道路橋示方書・同解説Ⅳ下部構造編 6) (以下,「S55 道示」という.) では,直接基礎にお

ける岩盤の支持力の評価方法及び照査方法について,推定による場合の許容支持力度(表 2.2.1)が示さ

れていた.しかし,この許容支持力度は経験的に定められたもので明確な根拠はなく,また,構造物

の重要度が高くないと考えられる場合にのみ適用できるとの規定となっているため具体の扱いなどは

不明確であった.そこで,文献 5)の研究において,当時の岩の物性値評価法と岩盤を支持層とする直

接基礎の設計手法の実態について把握することを目的として,岩盤上に構築された道路橋基礎を対象

に旧建設省地方建設局・都道府県・旧日本道路公団・旧首都高速道路公団・旧阪神高速道路公団・旧

本州四国道路公団へのアンケート調査が行われた.そして,これらの調査結果から明らかになった,

実務において実施されている岩の物性評価のための調査・試験方法を踏まえて,岩盤の極限支持力の

評価手法が検討され,岩盤を支持層とする直接基礎の鉛直支持力に対する照査法が提案された.

7

表 2.2.1 直接基礎の設計に用いる推定による場合の許容支持力度 6)

岩盤の種類 常時 ( kN/m2 )

地震時 ( kN/m2 )

目安とする値 一軸圧縮強度

( MN/m2 ) 亀裂の少ない 均一な硬岩

1000 1500 10 以上

亀裂の多い硬岩 600 900 10 以上 軟岩・土丹 300 450 1 以上

(1) 当時の岩の物性値評価法及び鉛直支持力に対する照査法の実態

アンケートでは,主に以下 2 項目について調査されている.

① 設計に用いる岩盤の物性・支持力・強度定数等を決定するため,どのような調査・試験がどの

位の頻度で行われていたか.

② 調査・試験結果を踏まえて,どのような方法で支持力が推定され,どのような方法で照査され

ていたか.

アンケート調査の結果,502 橋の橋梁の①②に関する情報が収集され,調査・試験の種類や頻度等

について統計的な整理が行われている.

岩盤の調査・試験としては,ボーリング調査・原位置試験・岩石試験・物理探査等が実施されてお

り,調査した全橋梁に対してこれらが実施された割合はそれぞれボーリング調査 96%程度,原位置試

験 21%程度,岩石試験 17%程度,物理探査 17%程度であることが明らかにされている.これらをさ

らに詳細に分析すると,原位置試験は,大半が孔内水平載荷試験であり,平板載荷試験やブロックせ

ん断試験は殆ど実施されていない.これは,これらの試験の試験設備が大掛かりになることや地形上

試験を行うことが困難である場合もあること等の理由によると思われる.岩石試験は大半が一軸圧縮

試験であった.また,物理探査は大半が弾性波探査であり,橋長が 200m を超える場合や最大径間が

100m を超える場合のような大規模な橋梁を除いては殆ど実施されていないことが確認された.

以上から,当時の設計では,ボーリング調査に加えて,ボーリング調査孔を利用して比較的簡易に

試験を行うことができる孔内水平載荷試験や採取したコアを用いた一軸圧縮試験により得られた情報

をもとに,岩盤の強度や亀裂の状態等を確認した上で岩盤の種類を区分し,S55 年道示に示されてい

る推定による場合の許容支持力度(表 2.2.1)により照査しているものと推察される.

(2) 岩の支持力評価のための検討方法

このような設計の実態を鑑みて文献 5)では,アンケート調査で収集された情報の中から原位置試験

や岩石試験が実施された橋梁を対象として,岩盤の各種試験により得られている物理定数及び載荷試

験結果の関係性を分析・整理し,比較的容易に求めることができる一軸圧縮強度や孔内水平載荷試験

から得られる変形係数との対応で判定できるよう許容支持力度の見直しの検討が行われた.残念なが

ら,荷重・変位曲線など調査・試験結果の詳細は残存していないが,鉛直支持力推定方法の検討にあ

8

たり分析に用いたデータは文献 5)に記載されている(表 2.2.2).

表 2.2.2 分析データの内訳(その 1) 5)

No. 橋梁名 年代 岩種

室内試験 RQD (%)

孔内水平載荷試験 平板載荷試験亀裂の

多少

一軸圧縮 強度

qu(MN/m2)

変形係数 Eb(MN/m2)

深度 (GL m)

降伏支持力度 py極限支持力度 pu

(MN/m2)

深度 (GL m)

1 仮称①橋 東京都首都高速 12 号

土丹 py: pu:

2 仮称②橋 同上

3 生月大橋 長崎県主要地方道

第三紀 泥質~砂質岩

py:

4 能登島大橋 石川県主要地方道

泥岩 py: pu: 以上

5 平戸大橋 長崎県主要地方道

新第三紀砂岩,泥岩

py: pu:

6 早瀬大橋 広島県

中生代 風化花崗岩

py:1.3

7 関門橋 福岡県,山口県

ホルンフェルス

py: pu:

8 兵庫県北神戸線

洪積世 固結粘土

9 川口橋 新潟県関越自動車道

新第三紀砂岩,泥岩

10 魚野川橋 新潟県関越自動車道

新第三紀砂岩,泥岩

11 神居大橋 旭川市国道12 号

新第三紀泥岩 py:

12 宿布大橋 福井市国道158 号線

凝灰角礫岩 py: 以上

13 在所橋 高知県

白亜紀 弱風化泥岩

py: pu:

14 内海大橋 広島県

砂質粘板岩 py: 以上

15 静岡県富士川身延線 熔岩 py: 以上

16 秩父橋 埼玉県

第三紀 泥岩 pu: 少

17 東鴉川橋 福島県国道115 号線

洪積世 風化凝灰角礫岩

py:pu: 以上

18 川走川橋 熊本県

洪積世 火砕流

py:pu:

19 青海 I.C. 新潟県北陸自動車道

砂岩 pu:

9

表 2.2.2 分析データの内訳(その 2) 5)

No. 橋梁名 年代 岩種

室内試験 RQD (%)

孔内水平載荷試験 平板載荷試験亀裂の

多少

一軸圧縮 強度

qu(MN/m2)

変形係数 Eb(MN/m2)

深度 (GL m)

降伏支持力度 py極限支持力度 pu

(MN/m2)

深度 (GL m)

20

外波東高架橋 新潟県北陸自動車道

蛇紋岩 py: 以上

21 実験① 広島県中国自動車道

粘板岩 pu: 多

22

試験① 神奈川県南横浜バイパス

第三紀 シルト岩 砂岩

23 熊見橋 北海道 砂岩

24 円谷橋 長野県中央自動車道

安山岩 凝灰角礫岩

25

横浜ベイブリッジ 神奈川県東京湾環状道路

新第三紀 泥岩

py: pu:

26 六方沢 栃木県霜降高原道路

第四紀 火山岩

py: pu: 未満

27

歩古丹 1 号橋 北海道国道231 号線

熔岩 風化変質

28 明石海峡大橋

新第三紀砂岩,泥岩

29 大鳴門橋 砂岩,頁岩

py:pu: 多

30 本州四国連絡橋 A ルート

新第三紀砂岩

py: pu:

31 本州四国連絡橋 D ルート

白亜 花崗岩 少

32 本州四国連絡橋 E ルート

白亜 花崗岩

py: pu: 多

10

文献 5)で提案されている岩盤の鉛直支持力の推定方法は,図 2.2.1 に示すように一軸圧縮試験から

得られる一軸圧縮強度や孔内水平載荷試験から得られる変形係数から,平板載荷試験により得られる

極限支持力度を相関関係を用いて間接的に推定する方法である.本来,鉛直支持力に対する照査方法

については,平板載荷試験により得られた荷重・変位関係を多数収集し,これらを岩盤の強度や亀裂・

風化の状態に応じて分析することで工学的に有意な限界点を見出し,限界点に対して十分な安全性を

担保するためにはどのような照査を行えばよいのかという観点で検討するのが望ましい.しかし,岩

盤の支持力は,亀裂や節理,風化の状況等による影響を大きく受けるとともに地域性もあることから,

支持力の評価式または照査値として一般化するためには,様々な岩盤で行われた平板載荷試験結果が

多数必要となる.前述したように,平板載荷試験が殆ど行われていない一方で,一軸圧縮試験や孔内

水平載荷試験は様々な岩盤に対して多数の試験値が得られていることから,一軸圧縮強度や孔内水平

載荷試験から得られる変形係数から岩盤の支持力を推定する方法が考えられた. この場合,各試験値

の関係性を整理して,それぞれの試験値の相関関係を分析する必要がある.文献 5)では,各試験値の

相関関係を整理して,図 2.2.1 に示す関係を提案し,最終的に一軸圧縮強度と極限支持力度の関係が

明らかにされている.

ただし,このように多くのパラメータを介して支持力を推定する方法は,最終的に必要となる岩盤

の極限支持力度を求めるまでに様々な不確実要素が入ることから,本来は直接的に一軸圧縮強度と極

限支持力度或いは孔内水平載荷試験の変形係数と極限支持力度の相関関係を確認することが望ましい.

今後,相関関係が定量化されるようになるため,更なる平板載荷試験データの蓄積が望まれる.

図 2.2.1 各種試験値の関連性 5)

(3) 各種試験値の関連性の分析結果

図 2.2.2~図 2.2.5 に,各種試験値の関係を示す.なお,図中の凡例の名称については文献 5)に合わ

せている.

図 2.2.2 は岩石の一軸圧縮強度 qu と孔内水平載荷試験による変形係数 Eb の関係,図 2.2.3 は孔内水

平載荷試験による変形係数 Eb と平板載荷試験による変形係数 Ed の関係,図 2.2.4 は平板載荷試験に

岩石試験

孔内水平載荷試験

平板載荷試験

一軸圧縮強度 qu

変形係数 Eb

降伏支持力度 py

極限支持力度 pu

変形係数 Ed

LogEb=3.189+0.323Logqu (図 2.2.2)

LogEd=0.520+0.912LogEb (図 2.2.3)

Logpy=0.021+0.423LogEd (図 2.2.4)

Logpu=0.257+0.941Logpy (図 2.2.5)

11

よる変形係数 Ed と降伏支持力度 py の関係,また図 2.2.5 は平板載荷試験による降伏支持力度 py と極

限支持力度 pu の関係である.なお,図中には,両対数 1 次式と標準偏差 を文献 5)より引用して示す.

両対数 1 次式は各相関関係を最小二乗法により定式化したものであり,標準偏差 は各試験により得

られた測定値 y(図 2.2.2~図 2.2.5 のプロット)と両対数 1 次式による推定式から算定した推定値 Y(図

2.2.2~図 2.2.5 の直線)の差(Logy LogY)を確率変数としたときの分布から求めた値である.また,図

2.2.4 及び図 2.2.5 に示す降伏支持力度 pY は載荷試験で得られる荷重・変位関係を両対数で整理した

曲線により確認された折れ点の値であり,図 2.2.5に示す極限支持力度 pUは荷重・変位関係において,

荷重がほぼ横ばいとなり最大抵抗力とみなしうる荷重となった値である.ただし,極限支持力度 pU

が明確に極限荷重まで至っていない場合には,極限支持力度 pU が概ね降伏支持力度 pY の 1.5 倍の関

係にあったことから,pU=1.5pY により求められている.いずれの図においても各試験値間で相関性が

確認され,標準偏差 は 0.09 から 0.28 程度とばらつきが小さく,比較的高い相関を有している.

図 2.2.2 岩石の一軸圧縮強度 qu と孔内水平載荷試験による変形係数 Eb の関係 5)

12

図 2.2.3 孔内水平載荷試験による変形係数 Eb と平板載荷試験による変形係数 Ed の関係 5)

図 2.2.4 平板載荷試験による変形係数 Ed と平板載荷試験による降伏支持力度 py の関係 5)

13

図 2.2.5 平板載荷試験による降伏支持力度 py と平板載荷試験による極限支持力度 pu の関係 5)

(4) 岩種の違いを考慮した岩の極限支持力度の評価

文献 5)において極限支持力度は,図 2.2.6 に示すように,図 2.2.1 に示す各物性値の関係により表

2.2.3 の両対数 1 次式に回帰した推定式を用いて,一軸圧縮強度 qu と平板載荷試験による降伏支持力

度 py(破線)・極限支持力度 pu(実線)の関係として提案された.なお,図中に示すプロット(□,*)は 3.3.2

に示す模型地盤における平板載荷試験および一軸圧縮試験により得られた結果である.また,図中に

は,信頼区間を正規分布の片側 5%有意水準より上限値 95%・下限値 5%と定め,誤差の評価を行った

ものをあわせて示す.平均値・上限値 95%・下限値 5%の各ラインを対比するとばらつきが非常に大

きくどれほどの信頼性を確保するかによって極限支持力度が大きく異なる.このばらつきの要因は,

整理に用いた岩盤のデータが亀裂や岩種の違いによる様々な物性の違いや試験深度の違い等の影響を

区分することなく用いられたためであり,これらの様々な不確実性を含んだものであることによる.

直接基礎は一般に地表面付近の平地や斜面等に計画され,地下水等の影響による風化層を含む岩盤が

対象になることが多いことから,風化や亀裂の影響を受けやすい環境にある.したがって,本成果を

直接基礎の照査に反映させる際には,これらの影響を考慮する必要がある.平成 2 年道路橋示方書・

同解説Ⅳ下部構造編 7)では,文献 5)の検討結果に基づいて表 2.2.4 に示すように一軸圧縮強度 quおよ

び孔内水平載荷による変形係数 Eb を目安にして,3 つの岩種に区分して地盤反力度の上限値を定めて

いる.

14

図 2.2.6 回帰式により求めた岩石の一軸圧縮強度と

平板載荷試験による降伏支持力度 py・極限支持力度 pu の関係

表 2.2.3 回帰式の係数および標準偏差 4) Y X A B σ1 Eb:孔内水平載荷試験の変形係数 qu:一軸圧縮強度 3.189 0.323 0.2792 Ed:平板載荷試験の変形係数 Eb:孔内水平載荷試験の変形係数 0.520 0.912 0.2423 py:平板載荷試験の降伏支持力度 Ed:平板載荷試験の変形係数 0.021 0.423 0.2564 pu:平板載荷試験の極限支持力度 py:平板載荷試験の降伏支持力度 0.257 0.941 0.087 LogY = A + B・LogX Z・σ Z = +1.645 95 信頼区間 Z = 0 平均値 Z = 1.645 5 信頼区間

表 2.2.4 直接基礎の設計に用いる岩盤の最大地盤反力度の上限値 ( kN/m2 )

岩種 常時 設定方法 目安とする 一軸圧縮強度

目安とする 孔内水平載荷試験の

変形係数 ①亀裂の少ない硬岩 2,500 極限支持力度 puの平均値の 1/3 10 MN/m2

以上 500 MN/m2 以上

②亀裂の多い硬岩 1,000 降伏支持力度 py の 5%下限値 500 MN/m2 未満

③軟岩・土丹 600 降伏支持力度 py の 5%下限値 1-10 MN/m2

15

ここで,この 3 つの岩種とは,①亀裂の少ない硬岩,②亀裂の多い硬岩,③軟岩・土丹である.

①②硬岩と③軟岩・土丹の区分に関して,図 2.2.7 に原位置せん断試験より求めた地盤定数(粘着力

c・内部摩擦角 )と室内試験により求めた地盤定数(粘着力 c・内部摩擦角 )を比較して示す。図 2.2.7(a)

は一軸圧縮強度 qu≧10 MN/m2 の結果であり,いずれも亀裂を多く含む岩盤である.また,図 2.2.7(b)

は一軸圧縮強度 qu<10 MN/m2 の結果である.図 2.2.7(a)では原位置試験により得られた結果と室内試

験により得られた結果に大きな差があり,亀裂のないコアにより求めた室内試験の結果の方が著しく

大きくなっている.一方で,図 2.2.7(b)では原位置試験により得られた結果と室内試験により得られ

た結果に大きな差はない.一軸圧縮強度 qu の大きな岩盤(qu≧10 MN/m2)は,材料自体が硬質であるた

め原位置での地盤定数は亀裂の影響により室内試験と大きく変わる一方で,一軸圧縮強度 qu の小さな

岩盤(qu<10 MN/m2)は材料自体があまり硬質でないため材料自体の物性で地盤定数が決まることがわ

かる.こうした結果を受けて,一軸圧縮強度 qu=10 MN/m2 が硬岩と軟岩の区分の目安とされた.

図 2.2.7 原位置せん断試験と室内試験により求めた地盤定数(粘着力 c・内部摩擦角 )の関係

(a) 一軸圧縮強度 qu≧10 MN/m2 (b) 一軸圧縮強度 qu<10 MN/m2

16

また,硬岩の場合で①亀裂の少ない硬岩と②亀裂の多い硬岩を区分する目安に関して,図 2.2.8 に

一軸圧縮強度 qu と孔内水平載荷試験による変形係数 Eb ,割れ目頻度を表すコア採取率 RQD (Rock

Quality Designation)値の関係を示す.RQD は,採取コア 1m あたりにおける 10cm 以上のコアの合計長

さの割合を示すものであり,100%に近づくほど亀裂が少なく均質な岩盤であると評価される.一般に

は 50%が亀裂の多少を区分する目安とされている 8).図 2.2.8 より,一軸圧縮強度 qu≧10 MN/m2 の硬

岩は Eb 500 MN/m2 を目安に RQD 値が 50 %未満の亀裂が比較的多いものと 50%以上の亀裂が少ない

ものに区分される.また,平板載荷試験結果より得られる極限支持力度の値にも差が確認されたこと

を踏まえ,硬岩の亀裂による影響として Eb 500 MN/m2 を目安とした区分が設けられた.

図 2.2.8 一軸圧縮強度 qu 及び孔内水平載荷試験による変形係数 Eb とコア採取率 RQD 値の関係

17

以上の方法により区分された,“②亀裂の多い硬岩”や風化の影響を受けやすい“③軟岩・土丹”

については,長期荷重に対して地盤を弾性範囲内にとどめることが設計上支配的な要素になると考え

られるため,降伏支持力度の下限側である 5 %信頼値が最大地盤反力度の上限値として提案された.

図 2.2.6 に示す軟岩を想定した模型地盤での実験結果(□,*)では一軸圧縮強度が増加するにしたがっ

て極限支持力度が増加傾向にあるものの,実験における極限支持力度は非常にばらつきが大きく極限

支持力度の平均値を 3 で除した値を下回る結果もあること,実際の岩盤でもこうしたばらつきは顕著

であると想定されることも,こうした提案の理由となっている.

“①亀裂の少ない硬岩” については,試験データがないため,軟岩のデータに基づいて提案された.

すなわち,軟岩を想定した模型地盤の実験結果(□,*)では,一軸圧縮強度 5 MN/m2 を超えたあたりか

ら平均値を上回り上限値に近づく傾向にあることから,平均値に安全率を考慮すれば十分安全側であ

るとみなせるため,一軸圧縮強度 10 MN/m2 における極限支持力度の平均値の 1/3 が常時の最大地盤反

力度の上限値として提案された.

18

第3章 深度に応じた岩の極限支持力の評価

3.1 概説

深礎基礎やケーソン基礎など深い支持層に設置する基礎の底面地盤は,大きな土被り荷重により拘

束され,応力解放されない状態にある.大きな拘束力により亀裂の影響等を受けにくい状況にあるこ

とを踏まえると,深い基礎での最大地盤反力度の上限値は,直接基礎に適用している値よりも大きく

できる可能性がある.

前章で示した結果は,直接基礎に適用することを前提として,試験深度に関わらず全ての試験デー

タに対して整理されたものである.ここでは,前章で示したデータを深度の情報,すなわち浅い位置

で試験したものと深い位置で試験したものとで区分し,前章に示した方法により各相関関係を整理す

ることにより,深度の違いが支持力に及ぼす影響を評価する.

3.2 試験データの分析方法

試験データの分析方法を以下に示す.

Step1.各種力学試験・載荷試験の試験深度の区分

各種力学試験および載荷試験データを試験深度が浅いものと深いものに分類する.分析に用い

るデータは 3.3 節に示す通りである.本検討に用いることができるデータは,一軸圧縮強度や変

形係数,極限支持力度等の試験値が明らかであることに加えて,試験を実施した深度についても

明らかである必要がある.このため,前章で述べた文献 5)で対象とした 32 橋のうちこれらが明

らかな 16 橋と,3.3.2 に示す模型地盤における試験データ 9 件を分析対象とした.なお,一部の

データについては深度が明確でないものの,当該橋梁の工事誌などから深度を推定した.分析に

用いた試験データに対して試験深度を判定した方法については付録 1 に示す.

なお,硬岩については亀裂の多少により支持力が大きく変わるため,本来はこの影響について

も区分して分析することが望ましい.しかし,硬岩の亀裂の多少の情報が明らかであることに加

えて,一軸圧縮強度・変形係数・支持力の全ての試験値が揃っているものが 1 橋(後述する表 3.3.1

の橋梁 No.13)しかなかったことから,ここでは,主に深度の違いのみに着目して整理を行うこと

とした.また,深い位置と浅い位置の境界は,深い基礎の根入れ長の実績 1)等を踏まえ,最も根

入れ長を浅くした条件を想定して 5m とした.

Step2. 各種力学試験および載荷試験の相関関係の整理

3.3 節の表 3.3.1 および表 3.3.2 に示す各試験データから,一軸圧縮強度,孔内水平載荷試験

の変形係数,平板載荷試験の変形係数・降伏支持力度・極限支持力度に着目して,浅い位置で実

19

施された試験結果と深い位置で実施された試験結果を区分して各試験値の相関関係を整理する.

Step3. 各種力学試験および載荷試験の相関関係に基づく極限支持力度の評価

Step2 で求めた各試験値の相関関係から各要素間の回帰式を求める(図 3.2.1).求めた回帰式か

ら,浅い場合と深い場合のそれぞれについて,一軸圧縮強度と極限支持力度の関係を評価する.

図 3.2.1 各種試験値の関連値

3.3 分析に用いたデータ

文献 5)で収集されたデータの中には,実地盤のものと,土槽内に作製したソイルセメント地盤のも

のがある.ここでは,それぞれについてデータの概要を述べる.

3.3.1 実橋梁の設計および施工時における試験データ

表 3.3.1 に実地盤で行われた試験データを示す.データは橋梁の設計及び施工時に実施されたもの

である.文献 5)では,表 2.2.1 に示したとおり分析に 32 橋のデータを用いているが,ここでは試験

深度に関わる情報が明らかであり,かつ,H14 道示で岩盤と定義されている一軸圧縮強度 qu=1MN/m2

以上の強度を有する 16 橋分のデータを対象とした.

土質試験

孔内水平載荷試験

平板載荷試験

LogEb= +△△Logqu

LogEd= +△△LogEb

Logpy= +△△LogEd

Logpu= +△△Logpy

LogEb= +◇◇Logqu

LogEd= +◇◇LogEb

Logpy= +◇◇LogEd

Logpu= +◇◇Logpy

浅い位置で実施された

試験結果 深い位置で実施された

試験結果

直接基礎 ケーソン基礎・深礎基礎

一軸圧縮強度 qu

変形係数 Eb

降伏支持力度 py

極限支持力度 pu

変形係数 Ed

20

表 3.3.1 分析データの内訳(実地盤) 5)

No. 橋梁名 年代 岩種

室内試験

RQD (%)

孔内水平載荷試験 平板載荷試験

亀裂の

多少

一軸圧縮 強度

qu(MN/m2)

変形係数 Eb(MN/m2)

深度 (GL m)

降伏支持力度py

極限支持力度pu

(MN/m2)

深度 (GL m)

1 仮称①橋 東京都首都高速 12 号

土丹 py: pu: [浅い]

2 生月大橋 長崎県主要地方道

第三紀 泥質~砂質岩

py: [浅い]

3 能登島大橋 石川県主要地方道

泥岩 py:pu: 以上 [浅い]

4 平戸大橋 長崎県主要地方道

新第三紀 砂岩,泥岩

[浅い]

[深い]

py: )pu: [深い]

5 関門橋 福岡県,山口県

ホルンフェルス py:

pu: [深い]

6 神居大橋 旭川市国道12 号

新第三紀 泥岩 py: [深い]

7 秩父橋 埼玉県

第三紀 泥岩 pu: [浅い] 少

8 川走川橋 熊本県

洪積世 火砕流 [深い]

py:pu: [浅い]

9 青海 I.C. 新潟県北陸自動車道

砂岩 pu: [浅い]

10 実験① 広島県中国自動車道

粘板岩 pu: [浅い] 多

11

横浜ベイブリッジ 神奈川県東京湾環状道路

新第三紀泥岩 py:

pu: [浅い]

12 明石海峡大橋

新第三紀砂岩,泥岩 [深い]

13 大鳴門橋 砂岩,頁岩 [深い]

py:pu: [深い] 多

14 本州四国連絡橋 A ルート

新第三紀砂岩 [深い]

py:pu:

[深い]

15 本州四国連絡橋 D ルート

白亜 花崗岩 [深い] [深い] 少

16 本州四国連絡橋 E ルート

白亜 花崗岩

[深い]

py: pu:

[深い] 多

( ) 内の数値は,分析に用いたデータ数.

21

3.3.2 模型地盤における試験データ

表 3.3.2 に本分析に用いた模型地盤のデータを示す.この模型地盤は,岩盤の力学定数および支持

力特性を調べるとともに,岩盤上の直接基礎の鉛直支持力の推定の基となる物性値を得ることを目的

とし,軟岩に見立てたソイルセメント地盤を対象に 300mm の剛体円板による平板載荷試験等の各種

試験を行うために作製されたものである.地盤は,土木研究所基礎特殊実験棟内にある実験土槽(土槽

寸法は幅 5 m×長さ 10 m×深さ 3 m)内に作製された.図 3.3.1 に平板載荷試験における載荷状況図を

示す.実験土槽は,地盤の一軸圧縮強度を変化させるために図 3.3.2 のように平面的に 8 分割されて

いる.地盤の厚さは 1.5mであり,ソイルセメントの配合は実際の軟岩に近似させるために予備試験

を行って決定されている.図 3.3.2 示すように, 8 分割された強度の異なる模型地盤の各区画内で一

軸圧縮試験及び平板載荷試験が行われ,合計 16 箇所の試験データが得られている.また,1 区画 1

箇所で孔内水平載荷試験が行われ,合計 8 箇所の試験データが得られている.分析には,これらのう

ち H14 道示において岩盤と定義されている条件(一軸圧縮強度が 1MN/m2 以上)を満たす試験データ

(表 3.3.2 参照)を用いた.なお,孔内水平載荷試験は,ボーリング孔内の 0.45m~0.55m の深度で行

われた結果である.

表 3.3.2 分析データの内訳(模型地盤) 4)

ケース 室内試験 平板載荷試験 孔内水平載荷試験

一軸圧縮強度 qu (MN/m2)

極限支持力 pu (kN)

降伏支持力 py (kN)

変形係数 Ed (MN/m2)

変形係数 Eb (MN/m2)

CASE4 1 1.7 501 181 58 CASE4 2 1.3 450 205 149CASE5 1 2.0 1100 500 375 94 CASE5 2 2.6 1410 370 755CASE6 1 2.9 1170 355 390 44CASE7 1 1.6 640 316 237 41 CASE7 2 1.9 925 950 164CASE8 1 5.7 2400 950 1035 97 CASE8 2 5.5 2300 1540 1296

図 3.3.1 載荷状況図 4) 図 3.3.2 模型地盤の概要 4)

22

3.4 各種物理定数および載荷試験結果の整理

本節では,孔内水平載荷試験,一軸圧縮試験及び平板載荷試験の結果を用いて岩盤の極限支持力度

を推定する上で重要となる以下の関係について整理する.

① 岩石の一軸圧縮強度と孔内水平載荷試験による変形係数の関係

② 孔内水平載荷試験と平板載荷試験による変形係数の関係

③ 平板載荷試験による変形係数と降伏支持力度の関係

④ 平板載荷試験による降伏支持力度と極限支持力度の関係

3.4.1 岩石の一軸圧縮強度と孔内水平載荷試験による変形係数の関係

岩石の一軸圧縮強度 qu と孔内水平載荷試験による変形係数 Eb の関係について深い位置の結果を図

3.4.1 に,浅い位置の結果を図 3.4.2 に示す.深度に関わらず,一軸圧縮強度 qu が増加するにつれて

孔内水平載荷試験による変形係数 Eb も増加する傾向にあり,多少のばらつきは認められるが比較的

よい相関を示している.

図 3.4.2 に示す浅い位置における試験値は,一軸圧縮強度 qu が 1MN/m2~10MN/m2 の軟岩に定義

されるデータのみであった.これらのデータのみを用いて相関式を求めた場合(図 3.4.3 の①)と,調

査深度による区分をせずに全データから求めた相関式の勾配(図 3.4.3 の②)に合わせて試験値の差が

最も小さくなるように相関式を求めた場合(図 3.4.3 の③)を比較すると,図 3.4.3 に示すように,硬

岩と定義している一軸圧縮強度 qu が 10MN/m2 以上の領域(硬岩)において,相関式①は相関式③より

も変形係数を大きく評価することになる.このため,安全側に配慮して,ここでは図 3.4.3 に示す③

の相関式を採用することとした.

23

図 3.4.1 岩石の一軸圧縮強度 qu と孔内水平載荷試験による変形係数 Eb の関係(深い試験)

図 3.4.2 岩石の一軸圧縮強度 qu と孔内水平載荷試験による変形係数 Eb の関係(浅い試験)

24

図 3.4.3 浅い試験の相関式の見直し

25

3.4.2 孔内水平載荷試験と平板載荷試験による変形係数の関係

孔内水平載荷試験による変形係数 Eb と平板載荷試験による変形係数 Ed の関係について深い位置の

結果を図 3.4.4 に,浅い位置の結果を図 3.4.5 に示す.調査深度に関わらず,孔内水平載荷試験によ

る変形係数 Eb が増加するにつれて平板載荷試験による変形係数 Ed も増加する傾向にあり,多少のば

らつきは認められるが比較的よい相関を示している.

図 3.4.4 孔内水平載荷試験による変形係数 Eb と平板載荷試験による変形係数 Ed の関係(深い試験)

図 3.4.5 孔内水平載荷試験による変形係数 Eb と平板載荷試験による変形係数 Ed の関係(浅い試験)

26

3.4.3 平板載荷試験による変形係数と降伏支持力度の関係

平板載荷試験による変形係数 Ed と降伏支持力度 py の関係について深い位置の結果を図 3.4.6 に,

浅い位置の結果を図 3.4.7 に示す.この関係についても多少のばらつきは認められるが比較的よい相

関を示しているといえる.

図 3.4.6 平板載荷試験による変形係数 Ed と平板載荷試験による降伏支持力度 py の関係(深い試験)

図 3.4.7 平板載荷試験による変形係数 Ed と平板載荷試験による降伏支持力度 py の関係(浅い試験)

27

3.4.4 平板載荷試験による降伏支持力度と極限支持力度の関係

平板載荷試験による降伏支持力度 py と極限支持力度 pu の関係について深い位置の結果を図 3.4.8

に,浅い位置の結果を図 3.4.9 に示す.深度に関わらずばらつきが少なくよい相関を示している.降

伏支持力度 py と極限支持力度 pu の関係は深度によらず概ね pu=1.5py の関係にある.一般的に,杭の

鉛直載荷試験や平板載荷試験結果から,土砂の降伏支持力度 py と極限支持力度 pu は py=0.63pu

(pu=1.5py)の関係にあることがわかっており 9),岩盤についても同様の傾向にあることがわかる.

図 3.4.8 平板載荷試験による降伏支持力度 py と平板載荷試験による極限支持力度 pu の関係(深い試験)

図 3.4.9 平板載荷試験による降伏支持力度 py と平板載荷試験による極限支持力度 pu の関係(浅い試験)

28

3.4.5 岩石の一軸圧縮強度と平板載荷試験による極限支持力度の関係

図 3.4.10 に 3.4.1~3.4.4 で整理した各種試験値の関連性を示す.図中に示す式は各相関関係を最

小二乗法により両対数 1 次式に回帰した推定式である.これより,間接的ではあるが一軸圧縮強度 qu

から極限支持力度 pu を求めることができる.

図 3.4.10 各種試験値の関連値

図 3.4.11 に,図 3.4.10 に示した相関式を用いて一軸圧縮強度 qu と極限支持力度 pu の関係を推定

した結果を示す.破線(C)は浅い位置における試験値を用いて求めた一軸圧縮強度 qu・極限支持力度

pu 関係の平均値であり,実線(B)は,深い位置における試験値を用いて求めた平均値である.また,

全てのデータを用いた相関関係により推定した一軸圧縮強度 qu・極限支持力度 pu 関係の平均値(実線

(A))と,信頼区間を正規分布の片側 5%有意水準とした上限値 95%・下限値 5%のラインを併せて示し

ている.さらに,H14 道示の直接基礎に適用されている地盤反力度の上限値も参考として示している.

また,図中には,限られたデータ数ではあるが,図 3.4.10 に示した相関関係からではなく,直接

的に一軸圧縮強度 qu と極限支持力度 pu の関係が得られている試験値をプロットした.なお,硬岩に

ついては,支持力が亀裂の多少により大きく影響を受けることから,亀裂の多少を区分して示してい

る.直接的に一軸圧縮強度 qu と極限支持力度 pu の関係が得られている試験値は,相関関係より推定

した(B)や(C)付近にプロットされ,相関関係による推定値と試験値は同様の傾向を示していることが

わかる.深い位置で行われた試験値のプロット(○◇□)は,浅い位置で行われた試験値のプロット

(●◆■)と比べると全体的に極限支持力度 pu が大きい傾向にある.また,深い試験値の平均値(B)は,

全データの平均値(A)や H14 道示の直接基礎の地盤反力度の上限値よりも大きい.すなわち,深い基

礎については,直接基礎のような浅い基礎に比べて極限支持力度を大きく評価することが可能である

と考えられる.

土質試験

孔内水平載荷試験

平板載荷試験

LogEb=2.408+0.368Logqu

LogEd=1.049+0.829LogEb

Logpy=-0.009+0.420LogEd

Logpu=0.281+0.991Logpy

LogEb=3.247+0.306Logqu

LogEd=0.595+0.892LogEb

Logpy=-0.037+0.492LogEd

Logpu=0.355+0.867Logpy

浅い位置で実施された

試験結果 深い位置で実施された

試験結果 一軸圧縮強度 qu

変形係数 Eb

降伏支持力度 py

極限支持力度 pu

変形係数 Ed

29

また,深い位置の試験値は,亀裂の多(◇)少(○)による硬岩の極限支持力度 pu の差は少ない一方で,

浅い試験値は,亀裂の多(◆)少(●)による差が大きく表れている.この結果から,深い位置では大きな

土被り荷重により拘束され,亀裂の影響等を受けにくい状況にあることが推察される.また,亀裂の

少ない硬岩(○と●)の極限支持力度 pu については,数は少ないものの,深い位置と浅い位置で有意な

差は認められない.

図 3.4.11 回帰式により求めた岩石の一軸圧縮強度と平板載荷試験による極限支持力度 pu の関係

30

第4章 岩盤上の基礎の鉛直支持力照査法の検討

4.1 概説

岩盤の極限支持力は亀裂・割れ目等により大きく左右されるため,岩石としての物性や一様な地盤

としての仮定では必ずしも適切に推定できず,一般に支持力推定式により極限支持力を評価すること

は困難である.このため,岩盤を支持層とする基礎に対しては,本来は平板載荷試験等から支持力を

評価して安全性を照査するのが望ましい.ただし,設計実務の実状を考慮した場合,平板載荷試験よ

りも適用が容易な支持力評価法や照査法を提案することも重要である.ここでは,3.4.5 にて整理した

一軸圧縮強度 qu と極限支持力度 pu の関係に基づき,岩盤に支持される基礎の鉛直支持力照査のため

の最大地盤反力度の上限値を提案する.

4.2 極限支持力度および最大地盤反力度の上限値

図 4.2.1,図 4.2.2 に前章で評価された一軸圧縮強度 qu と極限支持力度 pu の関係を示す.なお,

図中に示すプロットは,一軸圧縮強度 qu と極限支持力度 pu の関係が試験により直接的に得られたも

のである.図 4.2.1 は,前章の図 3.4.11 に示した試験値のうち,浅い位置での試験値のみをプロッ

トしており,図 4.2.2 は,深い位置での試験値のみをプロットしている.

最大地盤反力度の上限値は,長期荷重に対して極限支持力度 pu から十分な安全余裕を担保できるよ

うにするため,極限支持力度 pu に安全率 3 を担保した値として設定することが基本であると考えられ

る.このときの極限支持力度 pu としては,相関関係より求めた極限支持力度 pu の平均値(図中の①)

とすることが考えられるが,岩盤は非常にばらつきが大きいため,極限支持力度 pu の平均値に安全率

3 確保した場合でも必ずしも弾性範囲内に収まらないことも想定される.したがって,ここでは安全

側を考慮して,直接的に一軸圧縮強度と極限支持力度の関係が得られている試験値の下限値を極限支

持力度の基準値(図中の②)として位置づけ,そこから安全率 3 が確保できるよう最大地盤反力度の上

限値を設定する.

図 4.2.3 には,表 3.3.1 に示した橋梁のうち唯一平板載荷試験における荷重・変位関係のデータが

確認された No.8 川走川橋の荷重・変位関係を示す.この平板載荷試験 6 ケースは,いずれも近い場所

で同種の軟岩地盤に対して実施されたものであるが,各ケースの荷重・変位関係はばらつきがみられ

る.図中には,両対数にした荷重・変位関係から確認される降伏点(□点),平板載荷試験から得られ

た極限支持力の最小値 pU 最小値,その最小値を 3 で除した値(pU 最小値/3)及び 2 で除した値(pU 最小値/2)をあ

わせて示している.図より,降伏点が大きくばらつくなかでも,極限支持力 pu の最小値を 3 で除して

いれば十分安全な範囲にとどまること,また 2 で除した値を用いることとなるレベル1地震時等に対

しても降伏には至らないことがわかり,このような基準値の設定が妥当であるといえる.

この方法により極限支持力度および最大地盤反力度の上限値を設定した結果を表 4.2.1 に示す.直

31

接基礎については,本検討により最大地盤反力度の上限値の設定方法を見直したものの,結果的に

H14 道示に規定されている値と同値となった.一方,H14 道示には規定のない深礎基礎及びケーソン

基礎に用いる最大地盤反力度の上限値については,直接基礎に用いる地盤反力度の上限値よりも 2.5

倍~3 倍程度大きく評価できることとなる.ただし,亀裂の少ない硬岩については,3.4.5 での整理の

結果から,試験深度に関わらず極限支持力度 pu に大きな差がなかったことを踏まえて,深度による区

分は行なっていない.

なお,ここでは,岩盤の各種物理定数や載荷試験結果の相関関係から間接的に極限支持力度を評価

する手法としている.また,浅い基礎での最大地盤反力度の上限値は,図 3.4.3 に示したように深い

位置でのデータも考慮しつつ軟岩での試験結果に基づき定めているため,今後浅い位置における硬岩

の試験データの蓄積に応じて再度検討を行うことが望ましいと考えられる.

図 4.2.1 極限支持力度および最大地盤反力度の上限値の設定(浅い基礎)

32

図 4.2.2 極限支持力度および最大地盤反力度の上限値の設定(深い基礎)

図 4.2.3 平板載荷試験より得られた荷重・変位関係の例(川走川橋)

33

表 4.2.1 試験結果の整理に基づく岩盤の極限支持力度および最大地盤反力度の上限値

岩種

浅い基礎 (直接基礎)

深い基礎 (深礎基礎・ケーソン基礎) 目安とする

一軸圧縮 強度

(MN/m2)

目安とする

孔内水平 載荷試験の

変形係数 (MN/m2)

極限 支持力度 ( kN/m2 )

地盤反力度の

上限値(=極限

支持力度/3) ( kN/m2 )

極限 支持力度 ( kN/m2 )

地盤反力度の

上限値(=極限

支持力度/3) ( kN/m2 )

岩 亀裂:少 7,500 2,500

7,500 2,500 10 以上 500 以上

亀裂:多 3,000 1,000 500 未満

軟岩 1,800 600 6,000 2,000 1-10

4.3 岩盤上に支持させた基礎の鉛直支持力に対する照査方法

表 4.3.1 に鉛直支持に対する照査方法と照査値を示す.直接基礎,深礎基礎及びケーソン基礎を対

象とし,試験の整理結果に基づき浅い基礎と深い基礎に対する基礎底面の鉛直地盤反力度の上限値を

示している.

鉛直力に対する照査としては,直接基礎やケーソン基礎のように地盤反力度に着目した照査と杭基

礎のように支持力に着目した照査がある.いずれも極限状態に対して十分な安全余裕を担保し,長期

荷重に対しても弾性挙動を示すことを意図した照査であるが,荷重の支持機構が異なることから区分

している.すなわち,杭基礎では一般に基礎底面での水平荷重や曲げモーメントは小さく計算上無視

できるとみなせる一方で,直接基礎やケーソン基礎では基礎底面の水平荷重や曲げモーメントが基礎

の挙動に影響しうるため,基礎底面の鉛直地盤反力を回転の影響を考慮して計算し,最大地盤反力度

に対して照査を規定することが適切である.

なお,深礎基礎やケーソン基礎の設計において提案した最大地盤反力度の上限値は,これまでの設

計で許容していた支持力度と大きく異なる.一方で,既往の設計事例 1)より基礎の諸元は基礎底面の

鉛直地盤反力度の照査以外により決定されることが多いことから,表 4.3.1 に示した照査を行った場

合にもこれまでと同程度の基礎諸元となると推察される (詳細は付録 3 を参照.).

場所打ち杭についても岩盤を支持層とする実績が増加してきているが,この場合の照査方法につい

てはここでは検討しておらず,今後の課題である.H14 道示に示す杭反力及び変位を求めるための計

算モデルでは,単杭の鉛直載荷試験に基づき杭頭に置き換えた軸方向バネ Kv が用いられている.場

所打ち杭の軸方向バネ Kv の評価式は,砂質土や砂礫を支持層とした場合の鉛直載荷試験により求め

られたものであり,岩盤を支持層とした場合の試験は含まれていないため,岩盤を支持層とした場合

にこの評価式を適用できるかは定かではない.一方で,岩盤を支持層とする場所打ち杭の載荷試験の

実績は殆どないのが実態であるため,今後岩盤を支持層とする場所打ち杭の軸方向バネ Kv 評価式を

34

検討するためには,載荷試験データの実績蓄積が必要となる.

表 4.3.1 岩盤上に支持させた基礎の鉛直支持力に対する照査方法の提案(常時の場合)

基礎形式 照査方法

直接基礎 基礎底面の鉛直地盤反力度 ≦ 最大地盤反力度の上限値

表 最大地盤反力度の上限値

岩盤の種類 最大地盤反力度 目安とする値 一軸圧縮強度(MN/m2)

孔内水平載荷試験による 変形係数 (MN/m2)

硬岩

亀裂が少ない 2,500 (kN/m2) 10 以上 500 以上 亀裂が多い 1,000 (kN/m2) 500 未満

軟岩・土丹 600 (kN/m2) 1 以上

深礎基礎 ケーソン基礎

基礎底面の鉛直地盤反力度 ≦ 最大地盤反力度の上限値

表 最大地盤反力度の上限値 岩盤の種類 最大地盤反力度 目安とする値一軸圧縮強度(MN/m2) 硬岩 2,500 (kN/m2) 10 以上 軟岩・土丹 2,000 (kN/m2) 1 以上

35

第5章 まとめ

本研究では,既往の載荷試験や岩石試験を収集・分析して,岩盤上に設置される基礎の鉛直支持力

の照査方法および照査値を提案した.本研究で得られた結果を以下にまとめる.

(1) 浅い位置で実施された試験と深い位置で実施された試験とを区分して整理を行ったところ,それ

ぞれ各種物理定数および載荷試験結果の間に相関関係が認められた.

(2) 相関関係から推定した極限支持力は,浅い位置で実施された試験を用いて推定した極限支持力よ

りも深い位置で実施された試験を用いて推定した極限支持力のほうが大きく評価できることが明

らかになった.これは,深い位置では大きな土被り荷重により拘束され応力解放されない状態に

あるため,亀裂の影響等を受けにくい状況にあるためであると考えられる.

(3) ただし,亀裂の少ない硬岩については,試験深度に関わらず極限支持力に大きな差は認められな

かった.

(4) (1)~(3)の結果を踏まえて,鉛直支持力照査に用いる最大地盤反力度の上限値と目安とする試験値

(一軸圧縮強度・孔内水平載荷試験)との関係を明らかにした.

(5) (4)の結果から,統一的な設定の考え方に基づく,直接基礎・ケーソン基礎・深礎基礎が岩盤上に

設置された場合の鉛直支持力の照査手法を提案した.

36

参考文献

1) 中谷昌一,石田雅博,白戸真大,井落久貴:構造物基礎形式の選定手法調査,土木研究所資料, 4037

号, 2007.2.

2) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV 下部構造編,2002. 3.

3) (社)日本道路協会:杭基礎設計便覧,2008. 1.

4)東日本/中日本/西日本高速道路株式会社:設計要領第二集橋梁建設編,2011. 7.

5) 岡原美知夫,小幡宏,森浩樹,津川優司:岩盤上の直接基礎の鉛直支持力推定法に関する研究,土

木研究所資料, 第 2512 号, 1987.11.

6) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV 下部構造編,1980. 5.

7) (社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV 下部構造編,1990. 2.

8) (社)地盤工学会:岩盤分類基準化検討報告書,2002. 3.

9)中谷昌一,白戸真大,横幕清:杭の軸方向の変形特性に関する研究,土木研究所資料第 4139 号,

2009.3.

37

付録 1. 既存の載荷試験データの区分方法

本研究では,多数の既往の岩石試験や原位置載荷試験を収集し,これらに基づいて岩盤の極限支持力と岩

石試験との関係の整理及び鉛直支持力照査で適用する地盤反力度の上限値を検討した.分析に用いたデータ

は本編第 3 章に示した通りであり,これらは昭和 59 年度から 60 年度にかけて実施されたアンケート調査 1)

において収集された試験データである. 分析をするためには,試験値が明らかであることに加えて,岩盤の支持力は亀裂や深度に強く依存すると

考えられるため,試験を実施した深度や亀裂の多少・風化の進行等の岩盤の状況についても明らかである必

要がある.一方で,文献 1)には,試験値と試験を実施した深度や亀裂の状況が一対で確認できる記述は少な

い.そこで,本文では,文献 1)に示されている情報に加えて,既往の文献や工事誌等によりこれらの情報収

集を行い,文献 1)の試験値の深度・亀裂の程度を推定して検討を行っている.

ここでは,分析に用いた試験データに対して試験深度や岩盤の亀裂の多少を判断した経緯を整理した.

【試験深度の判定】

本分析において必要な試験深度は,試験が浅い地盤で行われたもの(試験深度が GL-5m より浅い位置)か,

深い地盤で行われたもの(試験深度がGL-5m より深い位置)かの二種類であり,試験の実施深度を特定する必

要はない.そこで,下記の通り判定した.

①:文献 1) 2)において,各試験結果と各試験が実施された深度が併記され,それぞれの試験の実施深

度が一対で表記されているデータは,文献 1)2)に記載されている情報を用い,浅い地盤で実施された

試験か深い地盤で実施された地盤かを判定する. ②:①が無い場合,文献 1) 2)以外の工事誌,土研資料等の文献にて,文献 1)2)の試験結果が引用され

ている情報から試験深度を推定する.ただし,これらの文献には①のように各試験結果と試験深度が

一対で表記されているわけではない.すなわち,試験の結果も試験の実施深度も記載されているが,

どの試験がどの深度で実施されたのかは明記されていない.そのため,各試験結果が実施された深度

を類推する必要があり,5m より浅いか深いかを確実に判定できるものだけを分析対象とした.

③:①および②でも深度を特定できなかった情報のうち,当該橋梁付近の地盤柱状図から試験が実施さ

れた地層を特定でき,かつ,その層が 5m より浅いか深いかが特定できたものについては,その情報

をもとに浅い地盤か深い地盤かを判定した.したがって,例えば特定された層がGL-5m を跨ぐ場合

は,その試験の実施深度がその層のどの深度で実施されたかが特定できず,GL-5m より浅いか深い

かが判定できないため,分析対象から除外した.

さらに,特に②③で推定した深度について,当該橋梁の基礎形式から妥当性を評価した.例えば,直接

基礎の場合は基礎底面以深で載荷試験を実施することはごくまれであるため,直接基礎を有する橋梁に対

する試験深度が,基礎底面位置付近であることを確認した.

38

【亀裂の多少の判定】

①地質調査によるRQD から判断 ②孔内水平載荷試験結果の変形係数Ebより判断

硬岩の亀裂の多少は,①~②を目安に判定した.RQDは,採取コア 1m あたりにおける 10cm 以上

のコアの合計長さの割合を示すものであり,100%に近づくほど亀裂が少なく均質な岩盤であると評価

される.一般に,50%を境に亀裂の多いものと少ないものに分類される 1)ことからRQD が 50%を超え

るものは亀裂が少ないと判定した.また,②については,H14 道示において亀裂の多少を区分する目

安として Eb 500 MN/m2が示されており,これにより判定した.H14 道示では,一軸圧縮強度 quが

10 MN/m2以上の硬岩であってもEb 500 MN/m2を目安にRQD値が50 %未満の亀裂が比較的多いも

のと 50%以上の亀裂が少ないものに区分でき,平板載荷試験結果より得られる極限支持力の値に差が

あったことを踏まえ,亀裂による影響としてEbを目安とした区分が設けられている.また,①②のみ

ならず,当該地区の地層構成や地質に関する情報を収集し総合的に判断した.

39

表 付 1.1 分析に用いた試験データの分類(その 1)

1 2 3 4 5 6

仮称①橋東京都首都

生月大橋長崎県主要地方道

能登島大橋石川県主要地方道

平戸大橋(長崎県主要地

方道)

関門橋福岡県,山口県

神居大橋旭川市国道12号

土丹 泥質岩 泥岩 軟岩 ホルンフェルス 泥岩

軟岩 軟岩 軟岩 軟岩 軟岩 軟岩

図2.5.1 Qu-Eb関係(深い) - - - ○ - -

図2.5.4 Eb-Ed関係(深い) - - - ○※1 - -

図2.5.6 Ed-py関係(深い) - - - ○※1○※1

○※1

図2.5.8 py-pu関係(深い) - - - ○※1○※1 -

図2.5.2 Qu-Eb関係(浅い) - - - ○ - -

図2.5.5 Eb-Ed関係(浅い) - - - - - -

図2.5.7 Ed-py関係(浅い) ○※1○※1

○※1 - - -

図2.5.9 py-pu関係(浅い) ○※1 - - - - -

図2.5.11 Qu-pu関係 - - ○ - - -

- - - 浅い・深い - -

0-30m

①文献1)2)において試験深度を確認 - - - ○ - -

②文献1)2)以外の工事誌,土研資料等

の文献により試験深度を確認- - - ○

4)5)6)- -

③工事誌等の文献から試験を実施した岩盤の堆積状況から深度を推察

- - - ○4)5)6)

- -

④基礎形式から判断 - - -○

4)5)6)

(直接基礎)- -

浅い 浅い 浅い 深い 深い 深い

0.1m-3.8m 2.5m-5.5m 0-5m 4.3m-8.3m 15.7m-22m 9.2m-20m

①文献1)2)において試験深度を確認 ○ ○ - ○ ○ ○

②文献1)2)以外の工事誌,土研資料等

の文献により試験深度を確認- - - - - -

③工事誌等の文献から試験を実施した岩盤の堆積状況から深度を推察

- - ○11)

○4)5)6)

- -

④基礎形式から判断 - -○

11)

(直接基礎)

○4)5)6)

(直接基礎)- -

- - - - - -

①地質調査によるRQDから判断 - - - - - -

②孔内水平載荷試験結果の変形係数Ebより判断

- - - - - -

※1:文献1)の図より読み取りにより試験値を確認したデータ.

No.

橋梁名

地層名

岩種

H14道示における岩区分

分析に用いたデー

亀裂の状態の判定(硬岩のみ)

深度の判定(孔内水平載荷試験)

深度の判定(平板載荷試験)

40

表 付 1.2 分析に用いた試験データの分類(その 2)

7 8 9 10 11

秩父橋埼玉県

川走川橋熊本県

青海I.C.新潟県北陸自動車道

実験①広島県中国自動車道

横浜ベイブリッジ神奈川県東京湾環状道路

凝灰角礫岩

硬岩 軟岩 軟岩 硬岩 軟岩

図2.5.1 Qu-Eb関係(深い) - ○ - - -

図2.5.4 Eb-Ed関係(深い) - - - - -

図2.5.6 Ed-py関係(深い) - - - - -

図2.5.8 py-pu関係(深い) - - - - -

図2.5.2 Qu-Eb関係(浅い) - - - - -

図2.5.5 Eb-Ed関係(浅い) - ○※1 - - -

図2.5.7 Ed-py関係(浅い) - ○※1

- - -

図2.5.9 py-pu関係(浅い) - ○※1 - - -

図2.5.11 Qu-pu関係 ○ ○ ○ ○ ○

- 深い - - -

13m-

①文献1)2)において試験深度を確認 - ○ - - -

②文献1)2)以外の工事誌,土研資料等

の文献により試験深度を確認- - - - -

③工事誌等の文献から試験を実施した岩盤の堆積状況から深度を推察

- - - - -

④基礎形式から判断 - - - - -

浅い 浅い 浅い 浅い 浅い

0-5m 3-4m 0.1m-3.8m 0-5m 0.1m-3.8m

①文献1)2)において試験深度を確認 - ○ ○ ○ -

②文献1)2)以外の工事誌,土研資料等

の文献により試験深度を確認- - - - ○

5)

③工事誌等の文献から試験を実施した岩盤の堆積状況から深度を推察

- - - - -

④基礎形式から判断○

(直接基礎)- - - -

少 - 多 多 -

①地質調査によるRQDから判断 - - - ○1)2)

②孔内水平載荷試験結果の変形係数Ebより判断 ○

1)2) - ○1)2) - -

※1:文献1)の図より読み取りにより試験値を確認したデータ.

No.

橋梁名

地層名

岩種

亀裂の状態の判定(硬岩のみ)

H14道示における岩区分

分析に用いたデー

深度の判定(孔内水平載荷試験)

深度の判定(平板載荷試験)

41

表 付 1.2 分析に用いた試験データの分類(その 3)

12 13 14 15 16

明石海峡大橋 大鳴門橋

本州四国連絡橋Aルート

本州四国連絡橋Dルート

本州四国連絡橋Eルート

神戸層 和泉層 神戸層

軟岩 硬岩 軟岩 花崗岩 花崗岩

軟岩 硬岩 軟岩 硬岩 硬岩

図2.5.1 Qu-Eb関係(深い) ○ ○ ○ ○ ○

図2.5.4 Eb-Ed関係(深い) - ○※1 - ○

※1 -

図2.5.6 Ed-py関係(深い) - ○※1

○※1

- ○※1

図2.5.8 py-pu関係(深い) - ○※1

○※1 - ○

※1

図2.5.2 Qu-Eb関係(浅い) - - - - -

図2.5.5 Eb-Ed関係(浅い) - - - - -

図2.5.7 Ed-py関係(浅い) - - - - -

図2.5.9 py-pu関係(浅い) - - - - -

図2.5.11 Qu-pu関係 - ○ ○ - -

深い 深い 深い 深い 深い

27m- 5m-24m 27m- 5m- 13m-23m

①文献1)2)において試験深度を確認 ○ - ○ - ○

②文献1)2)以外の工事誌,土研資料等

の文献により試験深度を確認- - - - -

③工事誌等の文献から試験を実施した岩盤の堆積状況から深度を推察

○7)9)

- ○7)9)

○ ○5)

④基礎形式から判断 ○7)9)

○7)10)

○7)9)

○ ○5)

- 深い 深い 深い 深い

21m-24m 10m-13.5m 5m- 5m-

①文献1)2)において試験深度を確認 - ○ ○ - -

②文献1)2)以外の工事誌,土研資料等

の文献により試験深度を確認- ○

7)10)- - ○

5)

③工事誌等の文献から試験を実施した岩盤の堆積状況から深度を推察

- - ○7)9)

○ ○5)

④基礎形式から判断 - ○7)10)

○7)9)

○ ○5)

- 多 - 少 多

①地質調査によるRQDから判断 - ○1)2)

- ○1)2)

○1)2)

②孔内水平載荷試験結果の変形係数Ebより判断

- ○1)2) - ○

1)2)○

1)2)

※1:文献1)の図より読み取りにより試験値を確認したデータ.

No.

橋梁名

地層名

岩種

亀裂の状態の判定(硬岩のみ)

H14道示における岩区分

分析に用いたデー

深度の判定(孔内水平載荷試験)

深度の判定(平板載荷試験)

42

(a) 孔内水平載荷試験

(b) 平板載荷試験

図 付 1.1 試験深度の分布

付録 参考資料

1) 岡原美知夫,小幡宏,森浩樹,津川優司:岩盤上の直接基礎の鉛直支持力推定法に関する研究,土木研

究所資料, 第 2512 号, 1987.11. 2) 岩盤の力学的性質に関する調査業務報告書,基礎地盤コンサルタンツ(株), 1985. 3. 3) 日本道路公団:関門橋工事報告書,1977. 3 4) 長崎県土木部道路建設課:平戸大橋工事報告書,1978. 3 5) (社)土木学会:軟岩 調査・設計・施工の基本と事例 ,(社)土木学会, 1984. 12 6) 国広哲男:平戸大橋設計施工調査報告書,土木研究所資料, 第 1200 号, 1977.3. 7) 矢作枢,大志万和也,島崎一男,杉崎光義:基礎工に関する調査試験 明石層および神戸層のクリープ

特性に関する調査研究 ,土木研究所資料, 第 1140 号, 1976.6.

43

8) 坂本良一,犬束洋志:平戸大橋の地盤調査-主として軟岩の調査と設計について,土質工学会論文報告集,

No.6, Vol.22, 1979. 6. 9) (社)土木学会:岩盤上の大型構造物基礎,(社)土木学会, 1998. 5. 10) 遠藤武夫,山口浩二,野村直茂:大鳴門橋多柱基礎の平板載荷試験,土と基礎, No.28, pp43-48, 1980. 11. 11) 平成 19 年(2007 年)能登半島地震被害調査報告,土木研究所資料, 第 4087 号, 2008.2.

44

付録 2.分析に用いた室内試験および原位置載荷試験データの整理

ここでは,分析に用いた室内試験および原位置載荷試験データについて整理する.表に示す試験値は,文

献 1)にて確認した値である.整理にあたり,本編第 2 章に示した各相関関係の図毎に試験値を整理すること

とした.表 付 2.1 に,本編第 2 章に示した各図にどの試験値を用いたか対応表で示す.なお,表 付 2.2~2.6に示した値以外は,文献 1)に示されている相関図より値を読み取っている.

表 付 2.1 本編第2章に示した各相関図との対応

試験値を用いて整理した図 備考

表 付 2.2 ~表 付 2.6 図2.5.1 岩石の一軸圧縮強度quと孔内水平載荷試験

による変形係数Eb(深い試験)

表 付 2.7 ~表 付 2.8 図 2.5.4 孔内水平載荷試験による変形係数 Eb と平

板載荷試験による変形係数Edの関係(深い試験)

表に示すデータは,文献 1)

に示されている相関図によ

る読み取り値. 表 付 2.9 図 2.5.6 平板載荷試験による変形係数 Ed と平板載

荷試験による降伏支持力度 pyの関係(深い試験)

表 付 2.10 図2.5.8 平板載荷試験による降伏支持力度pyと平板

載荷試験による極限支持力度 puの関係(深い試験)

表 付 2.11 図2.5.2 岩石の一軸圧縮強度quと孔内水平載荷試験

による変形係数Eb(浅い試験)

表 付 2.12 図 2.5.5 孔内水平載荷試験による変形係数 Eb と平

板載荷試験による変形係数Edの関係(浅い試験)

表に示すデータは,文献 1)

に示されている相関図によ

る読み取り値. 表 付 2.13 図 2.5.7 平板載荷試験による変形係数 Ed と平板載

荷試験による降伏支持力度 pyの関係(浅い試験)

表 付 2.14 図2.5.9 平板載荷試験による降伏支持力度pyと平板

載荷試験による極限支持力度 puの関係(浅い試験)

45

表 付 2.2 岩石の一軸圧縮強度 quと孔内水平載荷試験による変形係数Eb (1)

対象橋梁一軸圧縮強度

qu(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Eb)-LOG(Eb*)※Eb*=1766qu

0.31

本州四国連絡橋D・Eルート

46

表 付 2.3 岩石の一軸圧縮強度 quと孔内水平載荷試験による変形係数Eb (2)

対象橋梁一軸圧縮強度

qu(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Eb)-LOG(Eb*)

※Eb*=1766qu0.31

本州四国連絡橋D・Eルート

47

表 付 2.4 岩石の一軸圧縮強度 quと孔内水平載荷試験による変形係数Eb (3)

対象橋梁一軸圧縮強度

qu(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Eb)-LOG(Eb*)※Eb*=1766qu

0.31

本州四国連絡橋D・Eルート

48

表 付 2.5 岩石の一軸圧縮強度 quと孔内水平載荷試験による変形係数Eb (4)

対象橋梁一軸圧縮強度

qu(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Eb)-LOG(Eb*)

※Eb*=1766qu0.31

大鳴門橋

49

表 付 2.6 岩石の一軸圧縮強度 quと孔内水平載荷試験による変形係数Eb (5)

対象橋梁一軸圧縮強度

qu(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Eb)-LOG(Eb*)

※Eb*=1766qu0.31

明石海峡大橋

平戸大橋長崎県主要地方道

川走川橋熊本県

本州四国連絡橋Aルート

50

表 付 2.7 孔内水平載荷試験による変形係数Ebと平板載荷試験による変形係数Ed(1)

対象橋梁孔内水平載荷による

変形係数Eb(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Ed)-LOG(Ed*)※Ed*=3.94Eb

0.89

本州四国連絡橋Dルート

51

表 付 2.8 孔内水平載荷試験による変形係数Ebと平板載荷試験による変形係数Ed (2)

対象橋梁孔内水平載荷による

変形係数Eb(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Ed)-LOG(Ed*)※Ed*=3.94Eb

0.89

本州四国連絡橋Dルート

大鳴門橋

平戸大橋長崎県主要地方道

52

表 付 2.9 平板載荷試験による変形係数Edと平板載荷試験による降伏支持力度 py

対象橋梁平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)平板水平載荷による

降伏支持力py(MN/m2)LOG(py)-LOG(py*)※py*=0.92py

0.49

平戸大橋長崎県主要地方道

本州四国連絡橋Eルート

大鳴門橋

本州四国連絡橋Aルート

神居大橋旭川市国道12号

関門橋福岡県,山口県

53

表 付 2.10 平板載荷試験による降伏支持力度 pyと平板載荷試験による極限支持力度 pu

対象橋梁平板水平載荷による

降伏支持力py(MN/m2)平板水平載荷による

極限支持力pu(MN/m2)LOG(pu)-LOG(pu*)※pu*=2.27py

0.87

関門橋福岡県,山口県

本州四国連絡橋Aルート

大鳴門橋

本州四国連絡橋Eルート

平戸大橋長崎県主要地方道

54

表 付 2.11 岩石の一軸圧縮強度 quと孔内水平載荷試験による変形係数Eb

対象橋梁一軸圧縮強度

qu(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Eb)-LOG(Eb*)※Eb*=256qu

0.37

模型地盤実験

平戸大橋長崎県主要地方道

表 付 2.12 孔内水平載荷試験による変形係数Ebと平板載荷試験による変形係数Ed

対象橋梁孔内水平載荷による

変形係数Eb(MN/m2)平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)LOG(Ed)-LOG(Ed*)※Ed*=11.2Eb

0.83

川走川橋熊本県

模型地盤実験

55

表 付 2.13 平板載荷試験による変形係数Edと平板載荷試験による降伏支持力度 py

対象橋梁平板水平載荷による

変形係数Ed(MN/m2)平板水平載荷による

降伏支持力py(MN/m2)LOG(py)-LOG(py*)※py*=0.98Ed

0.42

川走川橋熊本県

模型地盤実験

仮称①橋東京都首都高速12号

生月大橋長崎県主要地方道

56

表 付 2.14 平板載荷試験による降伏支持力度 pyと平板載荷試験による極限支持力度 pu

対象橋梁平板水平載荷による

降伏支持力py(MN/m2)平板水平載荷による

極限支持力pu(MN/m2)LOG(pu)-LOG(pu*)※pu*=1.91py

0.99

仮称①橋東京都首都高速12号

川走川橋熊本県

模型地盤実験

付録 参考資料

1) 岡原美知夫,小幡宏,森浩樹,津川優司:岩盤上の直接基礎の鉛直支持力推定法に関する研究,土木研

究所資料, 第 2512 号, 1987.11.

57

付録 3.最大地盤反力度の上限値の提案値と従来の設計値との関係

岩盤を支持させた深礎基礎とケーソン基礎の照査方法は明確でなく,運用上は各種設計基準を参考に許容

支持力度を求めて照査をしている実態を第 1 章に示した.ここでは,設計実務において深礎基礎やケーソン

基礎でこれまで許容してきた支持力度 (以下,「従前の許容値」という.) と本研究により提案した最大地盤

反力度の上限値 (以下,「提案値」という.) との関係を整理する.また,既往の設計実績 1) において基礎諸

元の決まり手となった照査項目を整理した結果を踏まえて,提案値が基礎諸元に与える影響について考察す

る.

3.1 深礎基礎

(1) 従前の許容値と提案値の関係 深礎基礎は,H14 道示に体系的な設計法の規定がなく,設計実務においては平成 18 年度改訂版杭基礎設計

便覧の参考資料にも一部記載されている西・中・東日本高速道路株式会社「設計要領 第二集 橋梁建設編」

の設計法が参考にされている.そして,基礎底面の鉛直支持力度の照査では,理論式である式 付(3.1)により

極限支持力度を算定し,これに安全率(常時は 3,レベル 1 地震時は 2)を確保して求めた許容支持力度を基礎

底面に生じる地盤反力度が超えないことを確認している.式 付(3.1)は,H14 道示のケーソン基礎の設計で,

砂・砂れき・硬質粘性土を支持層とする場合に基礎底面の極限支持力度の算定に用いる推定式と同じである.

qu = cNc + qNq + 0.5 BN 式 付(3.1)

ここに,qu:極限支持力度(kN/m2), c:粘着力 (kN/m2),q:サーチャージ (kN/m2), :地盤の単位体積

重量 (kN/m3),B:基礎幅 (m), Nq・Nc・N :それぞれ粘着力項・サーチャージ項・地盤自重項の支持力係

数,Sq・Sc・S :基礎の寸法効果を考慮するための補正係数, ・ :長方形基礎・正方形基礎に対する形状

係数である.深礎基礎は,一般に山岳部で採用され,斜面上に建設されるため,式 付(3.1)により求めた極限

支持力度に斜面の影響を考慮して極限支持力度を低減していることが多い 2) .

図 付 3.1 に,既往の設計事例より従前の許容値と提案値との関係を整理した.(a)に硬岩(一軸圧縮強度

qu=1MN/m2~10 MN/m2) ,(b)に軟岩(qu=10 MN/m2以上)を示す.図中のプロットは従前の許容値であり,

前述した方法により斜面の影響を考慮して求められたものである.図中のプロットが 9750kN/m2で頭打ちに

なっているのは,求めた許容値がコンクリートの軸圧縮強度を上回るため,コンクリートの軸圧縮強度を許

容値としているためである.これは特に(a)硬岩で多くみられる.なお,図 付 3.1 はレベル 1 地震時の場合を

示している.

図 付 3.1 より,提案値は,従前の許容値の 40%程度となっていることがわかる.

58

(a) 硬岩(qu=1MN/m2~10 MN/m2)

(b) 軟岩(qu=10 MN/m2以上) 図 付 3.1 従来の許容値と提案値の関係(レベル 1地震時の場合)

(2) 基礎諸元の決定要因 図 付 3.2 に,既往の設計事例 1)より基礎諸元の決定要因となった照査項目の割合を示す.(a)は橋台の橋軸

方向,(b)は橋脚の橋軸方向,(c)は橋脚の橋軸直角方向である.なお,図中のその他には,施工上の制約によ

り基礎諸元が決定された場合,その照査方向では基礎諸元が決定されなかった場合等が含まれている. 図 付 3.2 より,基礎底面の鉛直地盤反力度照査で基礎諸元が決定されたケースは,橋台で 10%,橋脚で

5%程度である.これは,図 付 3.1 で示したように,大きな支持力度を許容した設計を行っているため,結果

的に基礎底面の鉛直地盤反力度の照査が基礎諸元の決定要因となっていないと考えられる.基礎諸元の決定

要因となる照査項目は,橋台の場合はレベル 1 地震時の水平方向の安定照査や基礎本体の照査が多く,橋脚

の場合はレベル 2 地震時の照査が多い.

59

(a) 橋台橋軸方向

(b) 橋脚橋軸方向

(c) 橋脚橋軸直角方向

図 付 3.2 設計事例 1)における基礎諸元の決定要因となった照査項目の割合

60

(3) 提案値による影響度

ここで,提案値は従前の許容値に対して十分小さく設定されているため,提案値を適用すると基礎底面の

鉛直地盤反力度の照査により基礎の諸元が決定され,これまでよりも基礎諸元が大きくなることが考えられ

る.このため,提案値が基礎諸元に与える影響を確認するために,既往の設計事例における基礎底面に生じ

る最大地盤反力度と提案値の関係を図 付3.3に整理した.(a)に硬岩(一軸圧縮強度qu=1MN/m2~10 MN/m2),(b)に軟岩(qu=10 MN/m2以上)を示す.

図 付 3.3 より,殆どの場合において基礎底面に生じる最大地盤反力度は提案値よりも小さいことがわかる.

これより,提案値は従前の許容値に対して 40%程度小さくなるものの,基礎諸元がこれまでと比べて著しく大

きくなることは殆どないと想定される.また,提案値は,実橋梁の基礎底面に生じているであろう最大地盤

反力度の上限側付近に対応しており,これまで基礎底面の支持力不足による破壊が原因で基礎に損傷が生じ

た事例が確認されていないことを踏まえると厳し過ぎずそれなりに妥当な値であると推察できる.なお,提

案値よりも基礎底面に生じる地盤反力度が大きく,提案値を適用することにより諸元の見直しが必要となる

基礎は,橋脚高が 30m~40m 程度となるような特殊な条件下の基礎が主に該当している.これらの基礎は,

橋脚高に比べて極端に基礎長が短い等,一見すると全体的なバランスが悪いと思われるようなものであり,

今後は改善が図られるものと思われる.

(a) 硬岩(qu=1MN/m2~10 MN/m2)

(b) 軟岩(qu=10 MN/m2以上)

図 付 3.3 設計事例における基礎底面に生じる地盤反力度と提案値の関係(レベル 1地震時の場合)

61

3.2 ケーソン基礎

(1) 従前の許容値と提案値の関係

ケーソン基礎の設計においてH14 道示では,砂・砂れきを支持層とする場合は過大な沈下を避けるために

図 付 3.4 に示す許容鉛直支持力度の上限値が設けられている.この上限値は,直接基礎の設計で用いている

最大地盤反力度の上限値に根入れ効果の 48Dfを考慮して設定されたものである.48Dfについては,基礎周面

地盤を砂層と仮定して内部摩擦角 =30°にて求めた支持力係数 Nq=18 に有効単位体積重量 '=8kN/m3 を乗じ

て,安全率 3 で除した値である.

図 付 3.4 H14道示における砂・砂れきの場合の許容支持力度の上限値(常時の場合)

一方で,岩盤を支持層とした場合の鉛直支持力度の照査方法に関しては規定されていない.岩盤を支持層

とした場合の照査方法の実態について定かではないが,設計事例の中には砂・砂れきと同様に直接基礎の設

計で用いる最大地盤反力度の上限値に根入れ効果を考慮して許容支持力度を求めている場合が確認された.

そこで,この方法により求めた許容支持力度を従前の許容値と想定して,提案値との関係を図 付 3.5 に整理

した.

図 付 3.5 より,亀裂の少ない硬岩を除いては従前の許容値に比べて提案値のほうが大きいことがわかる.

62

(a) 硬岩(qu=1MN/m2~10 MN/m2)

(b) 軟岩(qu=10 MN/m2以上) 図 付 3.5 従来の許容値と提案値の関係(レベル 1地震時の場合)

(2) 基礎諸元の決定要因と提案値による影響度 ここで,提案値は従前の許容値に対して大きく設定されているため,提案値を適用することでこれまでよ

りも基礎諸元が小さくなることが考えられる.そこで,既往の設計事例 1)における基礎諸元の決定要因となっ

た照査項目の割合を図 付 3.6 に整理した.なお,図中のその他には,施工上の制約により基礎諸元が決定さ

れた場合等が含まれている. 図 付 3.6 より,基礎底面の鉛直支持力照査で基礎諸元が決定されたケースは 10%程度であり,基礎諸元の

決定要因としてはレベル 2 地震時の照査による場合が多い.これより 10%程度の基礎は,従前よりも基礎の

諸元を小さくできることになるが,基礎諸元を小さくすることで結果的にレベル 2 地震時の照査が厳しくな

る.したがって,基礎底面の鉛直支持力照査で基礎諸元が決定された場合においても従来に比べて著しく基

礎諸元が変わる可能性は低いと考えられる.

63

図 付 3.6 設計事例 1)における基礎諸元の決定要因となった照査項目の割合

付録 参考資料

1) 中谷昌一,石田雅博,白戸真大,井落久貴:構造物基礎形式の選定手法調査,土木研究所資料, 4037 号,

2007. 2)東日本/中日本/西日本高速道路株式会社:設計要領第二集橋梁建設編,2011. 7

土木研究所資料

TECHNICAL NOTE of PWRI No.4222 March 2012

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