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1 17検査血液学会学術集会 形態診断のためのケースカンファレンス 症例 2 大川 有希 沖縄赤十字病院 医療技術部 臨床検査課 日本検査血液学会沖縄支部 松田 賢也 沖縄県立中部病院 臨床検査科 天願 聖子 那覇市立病院 検査室 朝倉 義崇 沖縄県立中部病院 血液・腫瘍内科

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第17回 検査血液学会学術集会 形態診断のためのケースカンファレンス

症例 2

大川 有希

沖縄赤十字病院 医療技術部 臨床検査課 日本検査血液学会沖縄支部 松田 賢也 沖縄県立中部病院 臨床検査科 天願 聖子 那覇市立病院 検査室 朝倉 義崇 沖縄県立中部病院 血液・腫瘍内科

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第17回日本検査血液学会学術集会

CO I (利益相反)の開示

筆頭発表者名:大川 有希

すべての共同発表者を代表し、本発表演題に関連して

開示すべきCO I 関係にある企業などはありません。

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症例2 50歳代男性

3

【主訴】 労作時息切れ、発熱、汎血球減少。

【既往歴】 特記事項なし。内服なし。

【家族歴】 悪性腫瘍、血液疾患、膠原病はいない。

【現病歴】 2ヶ月前より度々発熱を認め、1ヶ月前より乾性咳嗽が続き白色痰を認めていた。徐々に咳嗽が悪化するとともに、動悸と呼吸困難感が出現し、喀痰も黄色に変化したため近医内科を受診したところ、倦怠感と汎血球減少を認めたことから血液内科へ紹介となった。

【身体所見】 鎖骨上リンパ節腫脹、胸部単純CTにて右下葉にスリガラス様陰影、気管支拡張症を認めた。

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【血液一般】 WBC 3.6 x109 /L RBC 1.71 x1012/L Hb 5.0 g/dL Hct 14.9 % PLT 72 x109 /L Reti 0.6 % Blast 35.0 % Mye. 2.0 % Meta. 2.0 % St. 1.0 % Seg. 7.0 % Eo. 0.0 % Ba. 0.0 % Mo. 10.0 % Ly. 42.0 % A-Ly. 1.0 % EBL 1 /100WBC

【生化学】 TP 6.5 g/dL ALB 3.5 g/dL LD 202 U/L AST 12 U/L ALT 17 U/L ALP 166 U/L T-Bil 0.8 mg/dL BUN 13.0 mg/dL Cre 0.85 mg/dL UA 4.6 mg/dL CRP 12.44 mg/dL

【止血・血栓】 PTs 17.5 秒 PT% 46.0 % PT-INR 1.51 APTT 43.4 秒 Fbg 594 mg/dL FDP 6.5 μg/mL D-D 2.4 μg/mL AT-Ⅲ 69.0 %

症例 2 入院時検査所見

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生化学・凝固検査所見

5

T-Bil 0.8 mg/dL

AST 12 IU/L

ALT 17 IU/L

LDH 202 IU/L

ALP 166 IU/L

γ-GTP 31 IU/L

BUN 13.0 mg/dL

CRN 0.85 mg/dL

UA 4.6 mg/dL

TP 6.5 g/dL

ALB 3.5 g/dL

Na 133 mEq/L

K 3.7 mEq/L

Cl 98 mEq/L

Ca 7.8 mg/dL

Mg 2.1 mg/dL

Glu 124 mg/dL

CRP 12.44 mg/dL

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末梢血液検査所見

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末梢血一般検査

WBC 3.6 ×109/L

RBC 1.71 ×1012/L

Hb 5.0 g/dL

Ht 14.9 %

MCV 87 fL

MCH 29.2 pg

MCHC 33.6 %

PLT 72 ×109/L

RET 0.6 %

RET# ×1012/L

末梢血液像

Mye. 2.0 %

Met. 2.0 %

St. 1.0 %

Seg. 7.0 %

Lym. 42.0 %

Mo. 10.0 %

Eo. 0.0 %

Ba. 0.0 %

A-Ly. 1.0 %

Blast 35.0 %

EBL 1.0 / 100WBC

凝固機能検査

PT 17.5 秒

PT% 46.0 %

PT-INR 1.51

APTT 43.4 秒

Fib 594 mg/dL

FDP 6.5 μg/mL

D-D 2.4 mg/mL

AT3 69.0 %

好中球減少➡発熱・感染症 貧血➡動悸・息切れ

凝固検査異常の原因は 特定できなかった。

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症例 2 末梢血所見 【MG染色:弱拡大】

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末梢血液像

8

Monoblast/Promonocyte likely

Abnormal Lymphocyte

Monocyte

Monoblast?

EBL 1/100WBC

Myelocyte

リンパ球系異常細胞と幼若細胞も含む 単球系を思わせる細胞の混在が観られた

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末梢血液検査所見

9

末梢血一般検査

WBC 3.6 ×109/L

RBC 1.71 ×1012/L

Hb 5.0 g/dL

Ht 14.9 %

MCV 87 fL

MCH 29.2 pg

MCHC 33.6 %

PLT 72 ×109/L

RET 0.6 %

RET# ×1012/L

末梢血液像

Mye. 2.0 %

Met. 2.0 %

St. 1.0 %

Seg. 7.0 %

Lym.* 42.0 %

Mo. 10.0 %

Eo. 0.0 %

Ba. 0.0 %

A-Ly. 1.0 %

Blast* 35.0 %

EBL 1.0 / 100WBC

*成熟リンパ球の中に、

異常リンパ球(リンパ芽球様)もカウントしている可能性があると思われた。また、Blastはリンパ

芽球と単芽球を分けていない。

成熟リンパ球:約15% リンパ芽球:約60% 単球系:約12%

別日のサンプルで再カウント

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症例 2 骨髄所見 1 【骨髄MG染色:弱拡大】

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【骨髄MG染色:強拡大】

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Lymphoblast ➡Monoblast

Promonocyte ➡Monocyte

症例 2 骨髄所見 2

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症例2 骨髄所見 2

【骨髄MG染色:強拡大】

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➡Monoblast Promonocyte

➡Monocyte

リンパ芽球様細胞と 幼若も含めた単球系細胞 の増殖を認めた

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【骨髄MG染色:強拡大】

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背景の成熟細胞に形態異常を認めた。

症例 2骨髄所見 3

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顆粒球系 赤芽球系 巨核球・血小板系

分布密度 減少 減少 減少

成熟分化 正常 正常 正常

芽球細胞 増加なし

血小板産生像 減少

形態異常 あり あり あり

脱顆粒好中球 核辺縁不整 微小巨核球

偽Pelger核異常 多核赤芽球

巨大好中球 核融解像

異形成の合計 10~50%未満 10%未満 10%未満

その他特記事項 POD陰性好中球 なし

骨髄所見3 形態学的 特徴

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骨髄所見3(異常細胞)

Blast1 Blast2

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Blast1 Blast2

大きさ 中 大

N/C比 >80% 60~80%

核の形状 類円形 不整

クロマチンの性状 粗剛 繊細網状

核小体 不明瞭・明瞭 明瞭

細胞質 好塩基性 やや強い やや強い

顆粒 なし あり

細胞質辺縁

その他構造 空胞あり

異常細胞の 形態学的特徴

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症例 2 骨髄所見 4 【骨髄ペルオキシダーゼ染色(DAB法):強拡大】

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症例 2 骨髄所見 5 【骨髄特殊染色:強拡大】

エステラーゼ二重染色 (αNB/NASDCA) PAS染色

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骨髄所見 4・5 特殊染色

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ペルオキシダーゼ染色(DAB法) PAS染色 エステラーゼ二重染色

POD PAS αNB-EST ASD-EST

Blast1 - ドット状+ - -

Blast2 -/+(少数) - - -

POD 陰性 好中球

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骨髄検査所見

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採取状況:良好 標本の評価:不良 脂肪滴:減少

ANC 200 ×109/L

MegK 31.2> ×106/L

過形成

ME比=1.64

赤芽球系(5.9%)

Baso-E 0.2 %

Poly-E 5.2 %

Ortho-E 0.4 %

Mitosis 0.1 %

その他

Blast1 62.2 %

Ly. 1.6 %

Plasma 0.3 %

顆粒球系(9.7%)

Promye. 1.3 %

Mye. 2.3 %

Met 2.6 %

St. 1.3 %

Seg. 1.5 %

Eo. 0.6 %

Ba. 0.1 %

単球系

Blast2 6.0 %

Promono. 6.1 %

Mo. 8.2 %

Blast1はリンパ芽球と思われ、約60%を占めた。 Blast2は単芽球を疑い、前単球を合わせると約12%であった。

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確定診断に必要な追加検査 形態学的には、

リンパ球系と骨髄球系(単球系)の混在

背景の異形成は、1系統で50%未満

急性混合性白血病

Mixed Phenotype Acute Leukemia(MPAL)

表面マーカー(Blast1および2の表面形質の確認)

染色体・遺伝子検査 (特定の染色体・遺伝子異常/付加的染色体異常の有無)

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免疫表現型(細胞表面マーカー)

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① ② ① ②

細胞集団①Blast1:CD19+, CD10- ➡ Pro-B形質 細胞集団②Blast2:CD33+, CD64+ ➡ Myeloid形質 CD19+, CD64+ ダブルポジティブ

CD15+, CD65+, cyCD79a+, MPOdim, HLA-DR+➡細胞集団を明確に分け

ることが出来ない。ゲートを絞って検討する必要があった。また、単球系のマーカーが不足している。

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EGILによるBALを診断するためのスコアリングシステム (European Group for Immunological Classification of Acute Leukemias)

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ポイント B-lineage T-lineage Myeloid lineage

2 CD79a CytIgM

CytCD22

CD3(s/cy) Anti-TCRα/β Anti-TCR γ/δ

Anti-MPO

1 CD19 CD10 CD20

CD2 CD5 CD8

CD10

CD117(C-kit) CD13 CD33

CD65a

0.5 TdT CD24

TdT CD7

CD1a

CD14 CD15 CD64

血球系統 必須条件

Myeloid 好中球性 単球系

MPOがフローサイトメトリー(FCM),免疫組織化学,細胞化学のいずれかで陽性 非特異的エステラーゼ,CD11c,CD14,CD36,CD64,リゾチームのうち2つ以上が陽性

T-lymphoid cyCD3(CD3ε鎖に対する抗体を用いたFCM)あるいはsCD3

B-lymphoid CD19強陽性かつCD79a,cyCD22,CD10のうち少なくとも1つが強陽性 CD19弱陽性かつCD79a,cyCD22,CD10のうち少なくとも2つが強陽性

3.5 5.0

MPAL診断のための基準(WHO第4版)

0.5

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染色体・遺伝子検査

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白血病キメラ マルチスクリーニング定量 MLL-AF4キメラmRNA 1.4×105copy/µgRNA

20細胞中11細胞に t(4;11)(q21;q23) 相互転座を認めた

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Mixed phenotype acute leukemia MPAL with t(v; 11q23); MLL rearranged

t(v;11q23)MLL遺伝子再構成を伴う 混合形質性急性白血病

診断

本症例は、t(4;11)(q21;q23):MLL-AF4再構成を伴い、表面マーカー検索は不十分であったものの、形態学的にリンパ芽球と単球系の2系統の細胞集団を認めた。

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Mixed phenotype acute leukemia MPAL with t(v; 11q23); MLL rearranged t(v;11q23)MLL遺伝子再構成を伴う混合形質性急性白血病

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成人より小児に多く、予後は不良である。

形態的には、リンパ芽球様の細胞と単芽球や前単球を含む単球系幼若細胞と思われる2種類の芽球集団を認める(Bilineal)ことが多い。

リンパ芽球集団の表面形質は、CD19陽性、CD10陰性のPro-B cell 形質でCD15も陽性となる。CD22、CD79aなど他のB細胞マーカ―は弱陽性である。

11q23の異常を伴う白血病はCSPG4遺伝子にコードされるneural-glial antigen2(NG2)ホモログを発現することが多い。

MLL遺伝子の再構成を認め、様々な転座相手の中では、AF4が最も多い。11q23の欠失は含めない。

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mixed lineage leukaemia gene

Andrei V. Krivtsov & Scott A. Armstrong MLL translocations, histone modifications and leukaemia stem-cell development Nature Reviews Cancer 7, 823-833 (November 2007)

70種類以上の転座相手が知られており、H3K4メチル転換酵素活性を

損失するような 融合遺伝子の形成により、白血病を誘発する。頻度の高い5種類の転座により、80%以上の 関連急性白血病を占める。

AF4 t(4;11)(q21;q23) ENL t(11;19)(q23;p13.3) AF9 t(9;11)(p23;q23) AF10 t(10;11)(p12;q23) AF6 t(6;11)(q27;q23)

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11番染色体q23上の 遺伝子は、多数の異なる融合パートナーのうちひとつとの間に相互転座をおこし、遺伝子の再構成を認める。

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C Meyer, J Hofmann, T Burmeister, et.al The MLL recombinome of acute leukemias in 2013 Leukemia 27: 2165-2176

The MLL recombinome of acute leukemias in 2013

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謝辞

【症例提供・検討】 沖縄県立中部病院 血液・腫瘍内科 朝倉 義崇 先生 同 臨床検査科 松田 賢也 技師 那覇市立病院 検査室 天願 聖子 技師 本症例は、日本検査血液学会沖縄県支部のメンバー

で検討を重ねました。今後も施設の垣根を越えて、血液内科診療に貢献出来るよう、より相談しやすいネットワークの構築に努めたいと思います。

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