1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1993/jspf1993_05/...dp y石r=q-sp...

16
1.真空の作り方 赤石 (核融合科学研究所〉 (1993年3月8日受理〉’ Introductory Technique for Vacuum Produc K“nya Akaishi (Received March8,1993) Abstract An exp豆anation Qf vacuum technique is ma(ie{or beginners o contents of this article are as follows;,1)basic quantities to(1e essential components or parts for vacuum system constructi vacuum apParatus and4)leak test. Keywords= vacuum technique,vacuum pumping,vacuum pump,pressure gau testing, 1.はじめに 本講では,プラズマ実験のために初めて真空を 取り扱う人達に,わかりやすく真空の作り方を解 説する.本講座の企画編集子からは,たとえば “真空ハンドブッグの読み方,使い方を書いて 欲しい,と言う注文があ「った.国内では,アルバ ック社が非売品として真空ハンドブックを発行し ている。あとはECのBalzers社やLeybold- Heraus社の総合カタログ中に真空技術の基礎が 解説されている.本講を書くにあたって,これら の資料を参考にした. 以下では,まず真空技術入門の立場から真空で 扱う基礎量について述べ,真空装置の基本機器, 設計の具体例およびその実際的な運転結果につい て解説し,最後に真空もれ対策について触れる. 2.真空技術の基礎 2.’1 圧力と関連諸量 真空とは,通常の大気圧より低い圧力の気体で 満たされた空間内の状態をいう.そして,真空の 減圧状態は一般に圧力で表現される.標準大気圧 は,気温20℃,地上Z=OmにおいてLO1325× 105Paである.したがって,真空はこの圧力以下 の空間となる。真空技術で用y・る圧力の単位は, S夏単位のパスカル(Pa=Mn2)以外に準単位と してのミリバール(mbar),それに古くから使わ ハ厄あoπα∫1π3瓦孟%孟6∫ヒ)7F%ε¢oπS6¢oπoε,1〉α8’(りα464-01. 452

Upload: others

Post on 30-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

1.真空の作り方

 赤石 憲 也(核融合科学研究所〉

(1993年3月8日受理〉’

Introductory Technique for Vacuum Production

  K“nya Akaishi

(Received March8,1993)

Abstract

  An exp豆anation Qf vacuum technique is ma(ie{or beginners of plasma experiment..The

contents of this article are as follows;,1)basic quantities to(1escribe vacuum condition,2)

essential components or parts for vacuum system construction,3)example of a designed

vacuum apParatus and4)leak test.

Keywords=

vacuum technique,vacuum pumping,vacuum pump,pressure gauge,vacuum components,leak

testing,

1.はじめに

 本講では,プラズマ実験のために初めて真空を

取り扱う人達に,わかりやすく真空の作り方を解

説する.本講座の企画編集子からは,たとえば

“真空ハンドブッグの読み方,使い方を書いて

欲しい,と言う注文があ「った.国内では,アルバ

ック社が非売品として真空ハンドブックを発行し

ている。あとはECのBalzers社やLeybold-

Heraus社の総合カタログ中に真空技術の基礎が

解説されている.本講を書くにあたって,これら

の資料を参考にした.

 以下では,まず真空技術入門の立場から真空で

扱う基礎量について述べ,真空装置の基本機器,

設計の具体例およびその実際的な運転結果につい

て解説し,最後に真空もれ対策について触れる.

2.真空技術の基礎2.’1 圧力と関連諸量

 真空とは,通常の大気圧より低い圧力の気体で

満たされた空間内の状態をいう.そして,真空の

減圧状態は一般に圧力で表現される.標準大気圧

は,気温20℃,地上Z=OmにおいてLO1325×

105Paである.したがって,真空はこの圧力以下

の空間となる。真空技術で用y・る圧力の単位は,

S夏単位のパスカル(Pa=Mn2)以外に準単位と

してのミリバール(mbar),それに古くから使わ

ハ厄あoπα∫1π3瓦孟%孟6∫ヒ)7F%ε¢oπS6¢oπoε,1〉α8’(りα464-01.

452

Page 2: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講 座 真空の作り方 赤石

表1 圧力の単位換算

Einhe琵 N・m讐2,Paり mbar bar  l Torr、

11001 1051331 10曹51・10『311・33・10-3 10辱3

表2 圧力領域と関連諸量.この表では,低真空がさらに二つの領域に区分され,圧力の

  高い方を低真空(Grobvakum)低い方を中真空(Feinvakum)となっている.

Grobvakuum Fehvaku口m Rochvakuqm   Ultrahochvakuum

Drロckp【rnbar1TeilchenaqzahldicMo n lcm曹31

Miltl、freie Weglang¢1〔cm】

Fはchens畦oβra電e ZA[cm-1・S一Il

VolumenstQ肋ヒeZv〔cm幅3・’s『彗8edeckungszeil Y fs】

Arl d3r Gasstr6mung

Wei量ere besondere Elgenschaften

1013-1          1-10-3 P

IO19-1016   1016-1013く10幅2      10冒2-10

1023_1020   1020-1017てQ29-1Q23   1023-1017く10幽5    10曽5_10q2StrOmungs・      Knudsen・

kon轟nuum     一 Str6mOng(viskose Sヒr6mungl

     st証rkereAnderungKonvektion    derwarme・druσkabh謹ngig     lei歴ahigkeitdes

     Gases

10『3-10餉7    く10“7

1Q1$_109     く109

10-105    >1051017-1013    <10,3

~017弓G9   く10910鴨2_100     >100Molekubr・      Molekular・

Strbmロhg       S亀r6mung

starke Abnahme     Teilchen auf den

def             Obe61琶chen Oberg

VolumenstoBrate   wiegen bei weitem

     gegen“ber     den Teilchen im、     Gasraum

れてきたトル(Torr〉=水銀柱ミリメートル

(mmHg)などである.これらの単位の換算は表1

のようになる.本講では主としてPaを用いる

が,引用データの関係でやむをえずmbarや

Torrも使用する.

 真空は圧力が大気圧から減少するにしたがっ

て,ある特定の圧力範囲に低真空,高真空,超高

真空のように名前が付けられている.表2は,そ

の圧力の領域を示している.本講では,とくにプ

ラズマ実験のためには必要でないと思われるの

で,超高真空の作成については言及しない.表2

では圧力Pに対応する他の諸量として,気体分

子密度n,気体分子の平均自由行程4が併記され

ている.例えば低真空の下限圧力P=1mbar(=

102Pa)では気体分子密度はn認101%m3のオー

ダーであり,気体分子が衝突しないで運動できる

平均距離は’=10}2cmのオーダーであることを

示している.圧力Pは温度丁(K),気体分子密度

をηとすると,

.P=嬬丁, (んはボルツマン定数〉 (1)

で表される.これから気体分子密度%(m-3)め圧

力P(Pa)からの換算は,20℃(T=293.15K)の

気体について%誕2.47×1020P(m一3)となる.

また平均自由行程は,熱平衡状態で個々に運動す

る気体分子の衝突間の平均の走行距離であり,

4=1/(⑫餓δ2) (δは気体の分子直径)(2)

で与えられ,空気の場合δ33.74×10-10mなの

で,4(air,20℃)=6.51×10}3/P(m)となる.

圧力が低くなるにつれて,気体分子密度は減少

し,分子間の衝突距離は長くなる.プラズマ実験

では,電子やイオンなどの荷電粒子を取り扱う

が,このために真空が必要となるのは,これらの

粒子が保持容器内で中性ガス分子と頻繁に衝突し

ないで,ある程度自由に運動させるためである.

2.2 気体流量

 真空技術では,気体流量を体積と圧力の積で扱

う.したがって,体積yの容器内に圧力Pで気

体が満たされているとき,その気体量は,

Aニpγ(Pa・m3) (3)

である.また,真空容器での気体の導入や排気の

場合には,単位時問当たりの移動気体量を流量と

呼び,

    (L4 d(.Pの  Q嘉一謡        (Pa・m3冷)       (4)    d渉  d∫

と定義する.流量Qで気体が真空容器に導入さ

453

Page 3: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5号  1993年5月

れるときの容器内圧力の変化は,

   dP  y蕊二Q          (5)

の関係から求められる.また,圧力.Pの真空容

器から気体が流量Qで排気されるとき,

     dy       dy  Q=P一驚PS,  Sニー(m3/s)  (6)     d∫       d渉

と書き,比例定数Sを排気速度と呼ぶ.(5)式の

気体導入で,気体があるパイプの中を圧力差』

P=.P1-P2のもとで流れるときは,

Q竃C』PニC(.P、一P2),C(m3冷) (7)

と書き,比例定数Cをコンダクタンスと呼ぶ.

ここで,P1はパイプの上流側,P2は下流側の圧

力である.(6)式の排気における容器内の圧力変

化は,

   dP  y一二一SP             (8)   d∫

で記述され,右辺のマイナス符号は圧力の減少を

表す.気体の導入と排気が同時に行われるとき

は,(8)式に気体導入項Qが付加され,

   dP  y石r=Q-SP       (8り

である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,

(6)式に戻る.

 気体の流れは,連続流体として扱われる粘性流

と,個々の熱運動分子の導管の壁での衝突,反射

の繰り返しで扱われる分子流とに区別される.あ

るパイプの中を気体が流れるときに,その流れが

粘性流か,分子流のどちらであるかを判定するの

にはしばしば次の条件が適用される.平均自由行

程4(あるいは圧力.P)とパイプの直径4の間に,

4〈4/100, (P4>0.6Pa・m)

の関係が成立するならば粘性流,

4>4/2, (P4<1.3×10-2Pa・m)

の関係が成立するならば分子流である.上の条件

から,一般的には4は高々4=0.1mの程度なの

で低真空なら粘性流,高真空なら分子流というこ

とができる.さて,分子流では長さL(m),直径

4(m)の円形パイプ(五>4)のコンダクタンス

は,20℃の空気の場合,

C(20℃)=121d3/L  (m3冷) (9)

である.コンダクタンスは気体の流れやすさを表

す量である.(9)式から当然のことであるが,直

径が小さくかつパイプが長くなるとCは小さく

なり,流れにくくなる.4=0.15m,L=0.5mのパイプの場合そゐ面ンダクタンスはC=8.16

×10-1m3冷(=8.16×1024冷)と計算される.通

常の真空技術では,余程のことがない限り粘性流

領域での導管のコンダクタンスを知る必要はな

い.連続流体的な流れとなるため,コンダクタン

スの値が分子流の場合に比べて1桁以上大きいか

らである.したがって,ここでは粘性流のコンダ

クタンス計算法についてはふれない.

 真空装置の設計では,しばしば真空容器の直前

ポートにおけるネットの排気速度を知る必要が起

きる.例として,ポンプがバルブや接続導管を介

して容器に接続される場合である.これは直列結

合なので,バルブ,接続導管のそれぞれのコンダ

クタンスをC、,C2とし,ポンプの排気速度を5

とすれば,容器直前でのネットの有効排気速度

Seffは,

1/Seffニ1/C1+1/C2+1/S (10)

のように合成計算で与えられる.導管やバルブが

付くだけ,ポンプの排気速度は実効的に低下する

ので,C、,C2を適度に大きくとる設計が大切と

なる.

3.真空ポンプ 真空は容器内の空気を排気することで作られ        ずノる.この目的で使用する機器を真空ポンプとい

う.通常低真空から超高真空までの全圧力領域を

一種類のポンプだけで達成することは難しい.し

たがって,最底限排気原理が異なる二種類のポン

プの組み合わせで,真空排気を行なう.真空ポン

プの種類はきわめて多い.ここでは代表的なポン

プとして,低真空排気用の油回転ポンプ(rotary

vanepump),高真空排気用の油拡散ポンプ(dl

454

Page 4: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講座 真空の作り方 赤石

ult「ahlghi high i l。w

vacuum vacuumi vacuum ・v鎚uumpump

._L_ヒ._重璽[一        oil di”usion pump一一十……r一一一一一

1電urb㈱lecular岬p

1.33×10冒810甲

 1σて0 10’

10-

10一

510 Pa

760Torr

V白nti卜

blaU-

feder

書r制㎞凋

IIN (

図1 ポンプの使用可能な圧力範囲 図2 油回転ポンプの構造

diffusionpump)とターボ分子ポンプ(turbo-

molecularpump)の三つをとりあげる.図1は

これらのポンプの使用可能な圧力範囲を示してい

る.以下に各ポンプの構成,排気原理および特性

について述べる.

』3.1 油回転ポンプ

 図2はローターが2段直列式となっている油回

転ポンプの構成図である.この機械式ポンプは大

気圧からの減圧排気のために不可欠である.排気

の原理は図3に示すように,ローターの回転毎

に,ローターとシリンダーの間に微少体積の空間

を作り,ここへ排気ガスを吸入し,ローターの回

転と共にその吸入ガスを圧縮し続け,最終工程で

その圧縮ガスを大気放出する.2段直列式の目的

は,ポンプの到達可能圧力をより低くするためで

ある.市販ポンプの到達圧力は1段式で7Pa位

であり,2段式でそれが約2桁低くなっている.

通常のプラズマ実験では高真空までの排気を必要

とするので,1段式を用いることはほとんどない.

 表3は市販の2段式油回転ポンプの主要な特性

値を示している.排気速度は公称値と (ECの標

準規格による〉実測値とが示されている.ロータ

ーの回転数は毎分1500回である.図4は表3の

モデル機種で体積y=104の容器を排気した場

合の圧カー時間曲線である.例えば,D2Aのポンプ

の場合実測のS値はS=2.5m3/h(41.7伽nin)で

あり,大気圧.Po=103mbarからP=1mbarまで

の排気所要時間は,F1.7minとなっている.

(8)式から排気時問は,

a1

aざ

a3

a4

b1

b2

b3

b4

図3 油回転ポンプの気体排気の原理図.aはノーマルモ

  ード,bはガスバラストモード.

云=(y/S)ln(P。/P) (11)

で表されるので,上式にy=10乙S=41.7min

/s,㎞(Po/P)=ln(103)=6.9を代入すると,

455

Page 5: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5号  1993年5月

Two・stage rota『y vaneρump

表3 2段型油回転ポンプの特性値.

    D2A .    D4A     D8A     D16A     D30A     D60A

Nominal speed lvOlume1bw ra匙el.1.......

Pumping speed lvolume奮low r創e》’1。...。.,

田timale partial pressure wi[houヒgaS ba”astUi亀imaしe to電al preSSロre wiεh gas ballast....

Waセer vapOuf tOleranCe’》....,.......,....

Oil∫illhg-min/max..レ.,.,『脅...。,....,...

Motor power{single13畠ph,》,..,、..........

Rota竃ional speed o‘pump 。..。............

Weight(sing巳e13-Ph,〕 .。,,_、.,.,...,..,...

m31h  3.2mヲh  2.5mbarく2,5貫10榊‘

mbar く1.3属10-2

mbar  40cm3 400/600

wat!s  250/250

r、P,m、  1500

 kg 18《5

 6,4     10 4.ア     7.6く2.5”10『4  く2.5翼10“4

く1.3翼10曙2  く1.3旨10-2

 20     40500/700     700!1100

2501250     7501550

1500    150019.5116。5      35.5126

 20     38     76 15.2        30         60

く2,5属10噌4  く2.5駒10-4  く2.5直10哨4

く6.5貰10-3  く6.5翼10}コ  く6.5鴛10騨3

 20     40     33900!1300    260013400   3200/4100

7501550      1100       2200

1500        1500        1500

37.5!28       75         90

10

10

10

程 10。τ52のと  1σ事

10-2

1σ3

 0 2 4

Time(min)

6

図4 体積102の容積に対する油回転ポンプの排気(P-t)

  曲線

渉=1.65minとなり,計算値は実測値によく合致

している.図4でP漏1mbar以下で,排気時間

がやや長くなり始めている.これは図5の圧力の

関数として求められた排気曲線が示すように,各

機種の排気速度が圧力減少と共に低下する特性を

もつためである。図4および図5の点線の特性は

ポンプをガスバラストモードで運転した場合を示

している.ガスバラストは多量の水蒸気排気の場

合,潤滑油に混入する水を除去するために必要と

なる運転モードなので,本講座では特に重要でな

い.ただ,図3に図解が示されているので参考に

されたい.

3.2 油拡散ポンプ

 油拡散ポンプは,最も一般的な高真空排気用ポ

ンプであり,かつ低価格であるため,普通実験室

で最も多く用いられてきている.図6は油拡散ポ

ンプの構造図である.このポンプは室温で蒸気圧

100

2詮 10EoΦΦ

ユの

oに’i

Eコ

 1

oマ。唱

D60A一 一 岬

D30A

D16A

ノ D8A’

,’’ D4A

’’

D2A一

讐ノ

,’’

10甲4  {0-3 10’2  10幽1  100

  Pressure(mbar)

101 102 103

図5 油回転ポンプの排気速度.(S-P)曲線

456

Page 6: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講座

5

4

3

2型

O   O

      O⑨o   の o   母 一一一一一一6

Q       O        O  O   岬    O   、プ駄多 ⑨    ’一   〇    Ao

。膿・蝋鷹

嘉嚢撫7%//鰯離晦、。  B

鰯羅襲

真空の作り方

             oO           C O o            の のの           D  含o髭灘欝轍饗謝             %oOO            OOoO

灘嚢辮拶郵

奮撒……i……驚il

威1

      、1轍無

O

図6 油拡散ポンプの気体排気の原理図

がきわめて低い(10-4Pa以下)合成油を作動液と

して用いる.ポンプの構造は単純で,水冷蛇管(4)

赤石

付きポンプケース(3),多段ノズル(AからDま

で)付きジェットおよび作動油(2)入りボイラー(1)

から成っている.ケースの上端は高真空吸気口

(5),ケース側壁のL型パイプ(8)は低真空排出口

である.ジェットの底部で加熱された油は高圧

(数100Pa程度)の蒸気となり,各ノズルから水

冷却されたケース側壁に向かって噴射される.上

部フランジを通過しポンプケース内に飛び込んで

きた気体分子(6)は,ノズルから噴射する蒸気分子

との衝突により,下方に向かって運動し,より下

段のノズルの噴射蒸気分子との多重衝突を受けな

がらケースの下部容積中に圧縮され,最終的には

排出口を通って後段の油回転ポンプにより排気さ

れる.油蒸気は壁で冷却され,凝縮し液体に戻

り,ボイラーにまで還流する.

 表4は市販の拡散ポンプの技術資料の例であ

る.表の上から順にポンプ機種番号,接続フラン

ジの規格,排気速度,作動油量およびボイラー電

力,冷却水量,推奨後段ポンプおよび附属品など

が記述されている.これをみると排気特性に関し

ては,例えばポンプの作動上限圧力がP=10『3mbarとなっている.これは図7に示す排気

速度曲線から分かるように,10-3mbar以上の圧

力で排気速度が低下するからである(逆にこの圧

表4 油拡散ポンプの特性値.

LEYBODIFF pump 40 180 4tQ 1010

HighvacuロmConnec縫on、.Fore-vaα心mconnec監ioo  .

NW    40KFNW    I6KF 辮 1辮 128扉

Pumping speed(volume llow rate)fOr airat l x I O’3-nbar .『...  . 響響,...... ....       1tr!sec

a目x肇0-5mbar響.....,..響....『...り.甲.、   itrlsec

Workingrange..,,.。..,.... ..,..    mbaf

U腱imate馳o量al pressure ..,.......。....,     mbar

Maximum admiss由le fore-vacuum presSure(critical ba‘;kl腸9ρドe皇渇ure} ,..,,..,.,.....       mbar

3540

く10甲3

4x10冒1

160

180く10『3

see page4、4。

4x10層1

3304IO

く10-3

5×10卿1

7801010く10電3

4.5XIO-2

Pump伽id葦”lingminimumloptimumlmaximum .   cm3MahSSUPP!ジ》一.6『齢ひ..雫...9『......,..響.,.    V

Heaterpower.,...。,WWarm・uptime,approx..,             min

10!15/20

220220

101012

30!50!70

220450

12to15

70!140!180       1001300/500

 220        220 800       1200

15to18       15ヒ018

Coolingwa監er(minimumrlowl.Numbero『coolingcircu詮s..,..

COO腿ng・wa量orconnec吐ion ...

卜k》se nozzleロO.D, ....量.

Weightolpump。,......

[tr!h

NWぼぼkg

15

16

11.5

6

20

16

11.5

9

25

16

11.518

Recomm㎝dod bacldng pump1》fαc㎝ヒinu“8sop晩亀bnaUn吐akepressuresabove IO-4mba『 .。。.。.. ..  .,,...,。.,

bebw10”4舳ar......,B訟 目訟 鰍 Bl訟

LEY80DIFF。pump2),readyforconneclion,wiζhoutpump畑dColdcapbaf髄o ........

She腔baIIle,s驚ainleSssteel .,......,.,。......

LN2cdd!rap  『薗r9,。...   .. .....,.....,. .

τhermal swiヒch(5A,220V),......,....,..........

Sparehea電erplate ,、,,.、,,..............,. Re『.No.

Ca電.No.

21920

22595t301012284

40155634

Cat.吋o、

2192522622226252301712284

40155604

Ca電.No.       Cat.No.

21930        2193522632          22022

22635          22645

23020          23021

12284           12284

40155638       40155625

457

Page 7: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5号  1993年5月

表5 作動油とバッフルの組み合わせに対する油拡散ポンプの特性値.

A賦ainable uitima重e pressureswith oil diffusion(しEYBODIFF,Dり

A腱ainable ultima象e pressurell using            DIFFELEN Iight

              mbar

DIFFEしEN normal    DIFFEしEN ui㍑a

      orDC7〔博 mbar             mbar

DC705

mbar

WiUloutbameVViIh ookj cap ba矧e

Wi!hshe調ba貿ie

VViこh oo膣d cap and ref薦gera巳ed baf邪e

Wilhcoldcapba層le andしN2cold trap

1,3XIO-5

6×10扁5

1.3x10-6

2.6x10『7

1.3x10曽7

1.3x↑0冒8

6x10脾7

1.3×10-7

2.6x!O噂6

1,3x10-8

6×10}7

2.6x10冒7

2.6×1¢6

1.3x10”5

1.3x10”9

4x墨0甲7

1.3x10-7

1,3x10響8

4x10-9

6×10『102)

9,Al頃冊dbyobsen而g量her晦smon1ゆned剛er,.Sea弱ng曝anda盤erse》eral枷rsbake㎝toIthecomec電ed》acuumchamberaI200。C。りUslng㏄705pumplbidandba頴ngoutal400℃,ρfessuresbe畑een6其10-90and13x10’Bmbararoa聴ai㎎ble,

 10538}10

0Φ 10Φ

αの

o.⊆…10

αεコα10耳

 105

     1しEYBODIFF1010し巨YBOOIFF410

,一

1G

甲一⑩

1「 奴 7 ノ 一 一

! 一 7 レ }

一 1 一め

1》

ゐ!

E

♂。め

《 弍! ハ

一LEYBQDIFF40

伯4  !

LEYBODIFF180σ5 “5      σ’.      1σ310                                 σ百=10 1σ.    10     1σ

Pressure(mbar)

1G『

 o の 黒10。主

 お つめ1E

 コ 1Ω.

 ニがo ゑ の ≧ガ←

1げ

図7 油拡散ポンプの排気排気速度(S-P)曲線.点線は

  排気流量(throughput)でSとPの積である.

力以下で排気速度は一定値を示している).しか

し,ポンプがギリギリ作動できる実際の上限圧力

すなわち臨界背圧(crit圭cal backing pressure)は

4×104mbarと高いので,プラズマ実験などで

は排気速度の低下を許容して10-2mbar台の圧力

まで無理して使用することが多い.

 拡散ポンプで大切な附属品はバッフルである.

バッフルはブラインド型につくられた一種の遮蔽

板で,油蒸気の高真空側への逆流防止のために,

水冷して用いられる.拡散ポンプを用いる真空排

気系では,拡散ポンプと本体容器との接続で中問

にゲートバルブとこの水冷バ.ッフルをいれるのが

,最も標準的な設計である.特に拡散ポンプの立ち

上げ運転で,ボイラー温度が定常値になるまで,

通常20分から30分を要する.この間に最も油蒸

気は上流に逆流するので,バッフルのみでなくゲ

ートバルブを装備し,これを閉じた状態で拡散ポ

ンプを定常運転にまで立ち上げるのが望ましいか

らである.ポンプ作動油は,通常各メーカーのカ

タログにどのようなものを選ぶべきか指定してあ

る.高価格の油ほど蒸気圧が低いので,ポンプ性

能としての到達圧力は超高真空領域にまで延び

る.しかし表5に示すように,ポンプを冷却バッ

フル付きで運転する場合どの製品油を使用して

も,到達圧力は高々2×10-7mbarの程度であ

る.したがって,DC-704クラスまでの油を選ん

で使用すれば良いであろう.運転上のトラブルで

多いのが,水の流し忘れや,水圧によるホースの

水口からのはずれなどである.対策は流量スイッ

チを入れ,インターロックをとる,またホースの

水口への固定をホースバンドでするのでなく,シ

ンフレックスチューブ用のジョイントにすること

である.

3.3 ターボ分子ポンプ

 ターボ分子ポンプは油拡散ポンプに代わるべく

登場した機械式タービンポンプである.このポン

プが拡散ポンプに比べて有利な点は,油の逆流の

ぷうなトラブルがないため,いわゆるクリーンな

真空が作り易いことである.また,水蒸気や炭化

水素系ガスをよく排気するので,到達圧力も1桁

近く改善されることである.欠点は,高価なこと

である.図8はターボ分子ポンプの構造図であ

る.ポンプケース内に静止翼(1)と動翼(2)とが交互

に積み重ねられている.動翼は高周波モーター(9)

で高速回転され,高真空側から吸気(3)を通過し流

入する気体分子の後段のタービンにまで輸送圧縮

し,最終的に油回転ポンプにより排気する.モー

ターの軸受部の潤滑は油浸のベアリング(7)によっ

ており,潤滑油は空冷または水冷される.ポンプ

の吸気口部には固体落下物によるタービン翼の破

損防止のため半球状の金網が付加される.図9は

ターボ分子ポンプの各種気体に対する排気速度曲

線を示している.表6は技術資料の一例である.

上から順に機種番号,排気速度,推奨後段ポンプ

の機種,圧縮比,接続フラジンの規格,冷却水量

などが提示されている.圧縮比(compression

458

Page 8: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講座 真空の作り方 赤石

9

5

図8 ターボ分子ポンプの構造

3

4

2

 600

欝500』

_400τ

&3002§200野

お100

 0 10’5

Ar1 1

…Lu『t

\He

H2

1 1 k 1

310’4   10冒3   10-2 Ansaugdruck lmbar1

104

8  図9 代表的なガス(L峨はair〉に対するターボ分子ポ    ンプの排気速度(S-P)曲線.

6

ratio)とは,特定のガスの排気におけるポンプの

上流と下流でのそのガスの分圧の比である.気体

分子の熱運動速度は質量数が小さい程大きくなる

ので,水素やヘリウムなどの気体は窒素や空気に

比べてタービン翼を通過する確率は小さくなるの

で,結果としてこれら軽い気体の圧縮比は小さく

なる.通常のプラズマ実験で,超高真空を必要と

しない限りこの圧縮比の違いが問題となることは

ない.超高真空を作る場合,一般的に水素が真空

壁からの主要な放出気体となるため,水素分圧を

いかに低くするかが問題となり,圧縮比性能の高

いポンプが望まれる.図9の排気速度曲線にみる

ように,排気速度は2x10-3mbar以上の圧力で

急速に低下する.また,この真空領域で長時問気

体を排気し続けると摩擦熱のためタービン翼が熱

膨張により変形し,破損する危険がある.低真空

領域での運転が必要な場合は,ター,ボ分子ポンプ

の一種であるネジ溝付き分子ポンプあるいは複合

分子ポンプが市販されているので,それらのポン

表6 ターボ分子ポンプの特性値.

TURBOVAC 220 450 1500 3500

Pumping speed‘volume flow rate)

forN2 _、

forHo..。

lorH2 .,。

Rec・mmepdedbackingPump…U既ima霊epress“『e 一・◎

Compressionratio

forN2 _、。

IorHO .。..

forH2 ....

Ro驚ationa量speed  .,,,.,                 r,p,m。

Start・up象ime_          mins・

Oiけi睡ing..          cm3High vacuum po践…・・            NW

Fαevacuum pod __             NW

Coo賑ng-water connection,hose n◎zzle .  。mm dia

Cooling・wa往erconsumption._._    1量r!h

Cooling-wa匙erpressure .一 ._。。,、r          bar

Bake-ou匙亀emperature(pump neck) .. 。         oC

Mounting position 。。。。.、,。..、...。,

Weight㌔._                  kg

Itr!sec.        220

ftrlsec曾       205

Rr/sec.        2QG

   Dで6Ambar     く10一葛o

1x109

5.5x104

2.5x103

36,000

 3

100

100

25KF11の

30

4to7120

vertical

18

450

400

310

D30Aく1〔rlo

3x1(戸

4×103

630

24,000

4to5100

て50

40KF11φ

30

4to7120

vertical

30

1450

1300

1~50

D60A<10-10

1×109

4×105

10‘

21,000

10

100

250

65LF

11φ

50

4to7120

vertical

50

3500

3400

3000

DK200<10-10

>1010

6×105

10‘

13,500

20

220

400

100LF

11φ

50

4to7120

vertical

160

459

Page 9: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5号  1993年5月

プの採用をすすめたい.

4.真空計 真空の圧力を測るいわゆる真空計(単にゲージ

とも言う)もポンプと同様に,一種類のゲージで

全真空領域の圧力を測ることはできない.ここで

は最も代表的なゲージとして,低真空用のピラニ

ゲージ(Piranigauge)と高真空用の熱陰極イオ

ンゲージ(hotcathodetypeion重zationgauge)

を取り上げ,図10にそれらの圧力測定範囲を示す.

4.1 ピラニゲージ

 大気圧からの真空排気では,しばしば圧力降下

を監視することが必要となる。この場合圧力を精

度良く測る必要がないので,ゲージは頑丈で壊れ

にくいものであることが望ましい.この要請に合

致して最も一般的に用いられているのがピラニゲ

ージである.このゲージでは,圧力測定の原理と

して加熱電線の温度が,これに接触する気体の熱

伝導により変化することを利用している.図11

は定温度(定抵抗)式ピラニゲージの動作回路を

示している.Wが一定温度に保たれるタングス

テン線からなる測定素子で,これを他の三つの固

定抵抗(R、から1~3)と組み合わせブリッジ回路

を構成する.圧力が減少すると,タングステン線

からの気体熱伝導による熱損失が減り,線の温度

ultrahighvacuum  highvacuum  lowvaCUロm

vacuum gauge

Pirani gauge

 hot cathodeionization gauge

電.33x10-810層

10印10 10一

10』

{o’

510 Pa

760Torr

図10 真空計の測定可能な圧力範囲.

が上がる(抵抗が増える).このとき回路で線の

温度(抵抗)を一定に保つように加熱電力が自動

的に調整されるので,その場合の補償電流の変化

を圧力変化としてメーター114に表示する.図12

は定温式ピラニゲージの各種ガスに対する圧力校

正曲線である.縦軸は絶対圧(真の圧力),横軸

はゲージの指示圧力である.(02,N2,CO2など

の)空気成分ガスに対しては10-4mbarから

103mbarまでの広い圧力範囲にわたってほぼ直線

応答している.しかし,それ以外のガスについて

は約10mbar以上の圧力で,感度のバラツキが大

きくでてきている.例えば,水素,ヘリウムに対

しては真の圧力が10mbarのときすでに指示圧は

103mbarに達している.逆にアルゴンでは真の圧

力が103mbarでも,指示圧は10mbar付近を示し

ている.

W

P1

R3

S

R2

R1

103

102

』   10  100Ei)   oヱ  10

80   。1』  10

9ぷ⊂可   92タ 10

10。3

10-4

oo 2i

….2

2...2

図11 ピラニゲージの動作回路.

1σ410・31σ21σ11001♂102103   Angezelgter Druck(mbar)

図12各種ガスに対するピラニゲージの圧力校正曲線.縦  軸は絶対圧力,横軸は指示圧力.

460

Page 10: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講座 真空の作り方

4.2 イオンゲージ

 イオンゲージは熱陰極型と冷陰極(ペニング放

電)型の二種類がある.ここでは熱陰極型イオン

ゲージのみをとりあげる.イオンゲージはその名

前のとおり,陰極である赤熱したタングステン線

から熱電子を放射し,これを陰極一陽極問の電界

で加速し,気体をこの電子によりイオン化し,そ

の生成イオン数を圧力の関数として測る.図13

は,種々の形状のイオンゲージの構造図を示して

いる.K,A,Jはそれぞれ順に陰極,陽極,イ

オンコレクターを表している.a)は通常型で

10-5Paから10-1Paの高真空測定用であり,b)は

a)の形状に比べて圧力測定域が約2桁高圧側に

シフトする,c)は超高真空用で,別名B.Aゲー

ジと呼ばれている.d〉とe)は10-9Pa以下の圧

力の超高真空測定用である.図14はイオンゲー

ジと電子電流制御部の動作回路で,電子はKか

ら出てAに入る.この図ではJに入るイオン電

流の測定回路は示されていない.イオンゲージに

おける生成イオン電流1+と圧力Pとの間の関係は,

  1+=C1-P,C(Pa-1)     (12)

   a)

麺  ふ(争50V}                (十50V)

    ?)

』齢《+450V》

    d)      e)

_自誘黛風繍動繍診

b250V》    K

 」く0

赤石

で与えられる。ここで1一は陰極Kから放出され

る電子電流,Cはイオンゲージの感度と呼ばれ

る定数である.電子衝撃による気体分子のイオン

化の断面積は,気体の種類によって異なるので,

感度Cも気体の種類に依存して変わる.真空計

は一般に窒素ガスを用いて絶対圧力と比較し感度

係数を定める.したがって,イオンゲージの場合も

窒素以外の気体の圧力を測っている場合は,指示

圧力は窒素等価圧力(N2equivalentpresSure)と

して表示される.通常の真空排気における圧力監

視では,この指示圧力をそのまま用いている.し

かし水素やヘリウムなど特定のガスを使ってプラ

ズマを生成する場合に,しばしばその気体の導入

圧力を絶対圧力換算する必要が出てくる.通常,

イオンゲージの感度補正係数Fは,各メーカー

のゲージのマニュアルに記載されている.表7は

Balzers社のイオンゲージ(IMR-122)の各種ガ

スに対する感度補正係数の例である.F値は任意

の気体および窒素の感度係数をそれぞれCx,CN、

とすれば,F=Cx/CN、で与えられる.ごの表か

ら,例えばヘリウムガス導入時の絶対圧PHeはF

=6なのでイオンゲージの指示圧力Pを6倍す

ればよい(PHe=FP).最近のイオンゲージのコ

ントローラーでは,電子電流が1mAないし2

mAに固定されている.したがって,ユーザーが

操作を許されるところは,イオンゲージの測定モ

ードと脱ガスモードのどちらかにスイッチを切り

替えることだけである.この脱ガスモードも余程

のことがない限り,通常の高真空領域の圧力測定

R

A 十

」一一一一一

K l  +・  き

  l  l UK

編__         1

9

uA

図13各種熱陰極イオンゲージの構造. 図14 イオンゲージの電子電流制御回路.

461

Page 11: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5一号  1993年5月

表7 各種ガスに対するイオンゲージの感度補正係数.

Gas

Nitrogen

OxygenHydrogen

HehumNe◎nAr9◎n

×enon

Krypton

Carbon monoxide

Carbon dl◎xide

Water vapor

Mercury vapor

lodinevapor

MethanePump fluid vapors

N202H2HeNeAr

XeKr

COCO2H20Hg

JCH4

FactorF

1.0

1.2

2.2

640.8

0.360.5

0.9

0.7

1.1

0.3

0.180.7

0.1-0.2

では使用することがなくなってきている.イオン

ゲージの操作で大切なことは,決して指定された

使用可能な上限圧力以上で,ゲージを点火しない

ことである.高い圧力では,放電や不純物ガスと

の反応などが原因で,フィラメントが破損断線

し,使用不能となるからである.ガラス球の中に

電極が封入されているゲージでは,フィラメント

の断線が即廃品となる.ヌード型のフランジマウ

ント方式のゲージの場合は,スペアフィラメント

が附属品として用意されているので,修復して使

うことができる.’

5.真空部品

 真空装置の製作のためには,各種の組み立て用

部品が必要である.とくに重要なものはフランジ

とバルブである.

5.1 フランジ

 フランジは大きく二種類に分類される.一つ

は,ボルト,ナットで締め付ける形式で,大気と

真空の間のシール材として有機弾性体(elastomer〉であるバイトンあるいはニトリルの

0一リングを用いる,いわゆるJIS規格フランジ

と,銅ガスケットを用いるISO規格のコンフラ

ット(conflat)フランジ(ICF)である.これらフ

ランジの規格は,真空ハンドブックに記載がある

ので参照されたい.JISフランジは通常高真空用

として最もよく使用されている.『ICFフランジは

10-6Pa以下の超高真空の利用や0一リングからの

翔轟.牌鍾⇒L              」」

L一一 鼎 クランプリング     シール      フランジ

  図15 クランプフランジの構成部品図.

放出ガスが問題とされる場合に採用される.もう

一つはクランプフランジである.これは主とし

て,低真空での真空配管の接続や高真空でのイオ

ンゲージの取付けなどで利用される.フランジそ

のものの材料は,上述のJISフランジやICFフ

ランジと同様に,ほとんどが304ステンレス鋼で

あり,シールはバイトン0一リングである.この

クランプフランジの特長はしばしばクイックカッ

プリング(quickcoupling〉と別称されるように,

フランジの接続締め付けで,ボルト,ナットを使

用しないでクランプリングを使うことである.図

巧は,締め付けリング,シールリング,フラン

ジの図解を示している.重要な寸法はフランジに

接続するパイプの内径であり,それは公称呼び径

にほぼ一致している.ECのカタログではDNま

たはNWのあとに10,16,25,40(いずれも

mm直径)の数字がつく.JISもこれに準じてい

る.この例から分かるように,クランプフランジ

は小口径の配管用であり,大口径の配管用には

JIS規格フランジやICFフランジが使われる.

ICFフランジの取り扱いでは,ボルトの締め付け

力を均等にしなければならない.このためトルク

レンチとレンチソケットを用意する必要がある.

通常,150kgcmから250kgcmのトルクで締め付

けている.

5.2 バルブ

 バルブは主としてゲートバルブ,L型(アング

ル)バルブおよびストレートバルブの三種類があ

る.ゲートバルブは,通常真空容器と真空ポンプ

の接続のために使用され,ふたを閉じたり開けた

りするいわゆる弁が真空接続パイプの軸と直角の

方向にスライドする形式のバルブである.L型バ

462

Page 12: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講 座 真空の作り方

ルブは真空接続パイプの方向が90。変わるもので

あり,ストレートバルブは文字通り,パイプ方向

は直線でその途中を栓で止める(遮断する)もの

である.バルブには方向を指定して使うものと,

方向に区別が特にないものとがある.ストレート

バルブは後者に属する.ゲートバルブの場合,弁

が弁座が押さえ付けられて,バルブが閉じるが,

バルブのどちらかの側を大気開放して用いるとき

は,弁の戻りによる空気もれを防ぐ意味で,大気

圧のかかる方向と弁の押さえ込み方向とを一致さ

せるようにする.L型バルブもストレートバルブ

と同様に,弁が大口径にならない限りは,片側が

大気圧でも弁のバックラッシュ(戻り)は考える

必要がなく,方向性は気にしなくて良い.

6.真空の作り方

 著者は,最近各種真空材料のガス放出率を測定

するための真空装置を設計,製作した.この装置

を教材にして,真空の作り方を述べる.図16は

装置のブロック図である.真空機器を表わす記号

は,作図が簡潔であるという理由で,ECの真空規格

(Pneuropestandards)を採用した.真空容器

(sample chamber)とマニホールド(manifold)

は304ステンレス鋼製で,内面は電解研磨により

処理されている.これらに取付けた接合フランジ

は全てICFフランジである.排気系はターボ分

子ポンプ(TMP)と油回転ポンプ(RP〉から構成

w・B∀ ∀ CPU

sample chamber    maaifold

G工一D6   PC-9801NS/T

MFCorVLV

 VAT-IOgaしe vaユve

TMP ◎300工/s

sample gas

∀TR901

1eak cock

PR3501/皿in

しo venヒ Sしac

∀PG-3

図16 ターボ分子ポンプを用いた真空装置.

赤石

しており,マニホールドとは口径150mmφのゲ

ートバルブを介して接続されている.油回転ポン「

プの排出口にはビニールホースが配管され,排気

ガスを実験室から外気に放出し,室内の油蒸気に

よる汚れを防いでいる.もう一つの排気ライン

は,あら引きラインと呼ばれるが,NW-25(25mmφ)ステンレス鋼パイプがマニホールドか

らL型バルブ,ストレートバルブを中継して油

回転ポンプにまで配管されている,あら引きと

は,真空容器を大気圧から油回転ポンプ単独で排

気する過程を言う.あら引きラインを用意するこ

との利点は,真空容器を大気開放して,サンプル

の出し入れを行う間中,主排気系を作動状態に保

ち,いつでも高真空排気に移行できるように待期

できることである.あら引きラインのL型バル

ブとストレートバルブの中間にリークコック

(leak cOck)が付いている.これは真空容器を大

気開放するときに用いる.プラズマ実験装置で

も,頻繁に大気開放を繰り返すことが多いので,

あら引きラインの設置は必須である.排気過程の

圧力監視には,イオンゲージ(WIB)とピラニゲ

ージ(TR901)とを用意した.ピラニゲージは,

油回転ポンプの近傍にNW-10(10mmφ)のクラ

ンプフランジを用いて設置されており,高真空排

気時およびあら引き時のどちらの場合でも,排気

状況を監視できるようにしている.イオンゲージ

はガラス管球型であるためマニホールドの

ICF-70フランジヘの接続では,ガラス・コバー

ルシール管を中継ぎに入れてある.イオンゲージ

とピラニゲージの圧力出力信号はノートパソコン

(PC-9801NS/T)にメモリしている.真空容器の

ところに,サンプルガスボンベがマスフローコン

トローラー(MFC)または可変リーグバルブ

(VLV)を介して排管されている.これは現実の

装置には付いていない.もしプラズマ実験なら

ば,プラズマ生成ガスの導入がこのような配置で

なされるであろうとの,想定図である.MFCは

ガス流量が電子制御で可変できる機器であり,流

量Qmi.=0.1SCCM以上のものが市販されている.

(SCCMは毎分標準気圧ミリリットルの略で,1

SCCM瓢105Pa×10-6m3/60s躍0.1Pam3/sであ

463

Page 13: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5号  1993年5月

10’3

 1σ4

β1σ5ご

91σ6

10噛7

10-8

一〇一一SUS304

→一一#12メタルミーS

1  10time(h)

100

ヱoコ 

o

図17 真空排気(P-t)曲線、

る.)導入ガスの純度を気にする場合は,配管は

ステンレスパイプでありジョイントはスウェジロ

ックが普通である.純度が気にならないならば,

シンフレックス(ナイロン製)チューブの配管も

よく用いられる。

 さて,本装置の場合,マニホールドと真空容器

を合わせた体積はy=10乙壁の全表面積は且

=0。5m2である.本装置のあら引きを開始した

結果,大気圧から.P=10-4Torr(=1.3×

10-2Pa)までの所要排気時間は渉=4minであっ

た.またP=1Torr(鑑1.3×102Pa)す『なわち

(P。/P)=103となる所要時問は約オ=0.61min

(=36s)であり(11)式から油回転ポンプの実効

排気速度は,Seff=180〃minと見積られた.ポ

ンプの公称値はS=350〃minなので,実効値

はその半分近くに落ちていることが分かった.

10-4Torr(1.3x10-2Pa)までのあら引き後,主

排気ラインのターボ分子ポンプによる排気に切り

替えたときの排気曲線を図17に示す.使用した

ターボ分子ポンプの窒素ガスに対する排気速度は

S=300〃sである.このポンプの上部フランジ

からマルホールドまでのゲートバルブも含めた接

続パイプの合成コンダクタンスは0=462〃s

である.したがって,実効排気速度は(10)式か

らSeff=182〃sと計算される.主排気に切り替

える前の圧力はP1=10Torr(=1.3×10-2Pa)で

あり,切り替え一時問後の圧力は図17でP2=

10-6Torr(=1.3×10-4Pa)である。圧力P、か

らP2までの排気所要時問1は(11)式にy/S。f{=

         Zeit図18 真空装置のバルブ閉における圧力上昇の時間変化   (ビルドアップ曲線).

8.8×10-2s,ln(.P1/P2)=4.6を代入すると,∫

=0.4sとなり,とても一時間と言う答えはでて

こない.図17は圧力の下降がきわめて緩慢にし

か進行しないことを示している.これは真空工学

では,真空壁からの吸着ガスの放出があるためで

あると説明されていて,圧力変化は(81)式で記

述され,Qを壁からのガス供給率とみなす.d.P/

虚霊0とおけば,圧力変化P(渉)は,

P(オ)=Q(∫)/Seff (13)

となる.すなわち排気と共に壁からのガス放出率

Qが減少し,真空容器の圧力は減少する.真空

工学ではガス放出率は単位面積当たりで評価し,

それをg(outgassingrateordesorptionrate)

で表わす.本装置のステンレス鋼壁について,

9(∫)=Q(∫)/A (14)

となる.式(13),(14)と図17のデータから304ステ

ンレス鋼のガス放出率は排気1時間後でg(1)=3.6

×10-8Torr〃scm2(=2.4×10-6Pam3/sm2)で

ある.実験では東洋レーヨン社製のポリエステル

シート(#12メタ、ルミーS),厚さ12μm,幅

35cm,長さ50mをテスト試料として容器に挿入

し,排気している.図から分かるように,この試

料からはQ値の比較で排気初期段階で約50倍,

最終段階で約3倍ステンレス鋼よりも高いガス放

出率を示している.以上のように,真空排気での

464

Page 14: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講座 真空の作り方 赤石

表8 代表的な真空材料の室温時のガス放出率.

Materこa思 §ご離。 難職。奮

聯・・㎞一隣調

1h        5h        璽Oh

Stee『,stainless

Steel,s電ainlass

Stee濫.s亀a垂nless

SIee6,5ヒainless

bright

polishedpickled

ba麗騨blasted

deanedcleanDdhea巳ed for lh、ventod

w砥h oor㎜6air

2,フ。10冒7

2・1σ81.4・10’9

340’零o

5、4・10[8       2,7・10胃8

4・10』9       2・10’10

2,8・1040       1,4・10’10

6、5・10-1』     4・10薗1量

Steei,Ni・P8a監ed

S象eel、Cr曹plaヒed

S重eal

Steel

Steel

polished

po膨shed

bright

balトbIasted

dea“ed

cloanedcorrodedcleanedcle8nod

2・10。7

1,3・10噂8

6・1σ7

54α74・10’7

1,5・10-e

2,2・10’9

1、6・10’7

レ10978・IO’o

5・10響9

1,2・10’9

1・10」

5・10’8

3,8・1C’8

A短miniumBrassCOpper

clea“edoloanedcleaned

6・1α8

1,6・10’5

3。5・10’7

1,7・10’8

5、6・10『7

9、5・10’8

1。1・10-8

4・10・75,5・10。8

Po『celain

GlasgAcryllcglass

gla~od

clea聰d

8,7・10冒7

4、5・10’9

!.6・10臼6

4・1α7

1,1・10。9

5、6。10’7

2、8・10’7

5,5・10’10

4・10・7

離獄2:18:1 ll箏:18:: 捻19二1

VitonVitonVl亀on

leflon

hea璽6dfor4hr&at100{℃hea窟ed for4hrs、at1500Cdegassed

1,2。10’6

1,2・10”7

1,2・10’9

840・7

3、5・10’7        2,2・10-7

5・1ρ一8   2、8・1αa3、3・10■10       2.5・10臼10

23・10-7     1。5・10’7

表9

Matori81

各種エラストマーの気体透過係数(g).透過流量は,Q=姻溢P/五であり,(、4;断面積,ハP;圧力差,L;長さである).

     識bi撤y一一一囲

 CO~       H2       He       O2       閥2       Ar

VitonAPerbunan

”eoprone

6・1α12

2・1σ11

3.5・10-12

7,5り10甲1z

7.5・10『12

7,5プ10’12

7.5。10”12

7,2・10-12

6・10・曾3

1,4・10’12 1,9・1043

1,3・10r12

1,2・10-12

PTFE           、,2・、0’協

R■bber          7・10’11

VespeUpolyamld81 2・10-13Si畢icone        25・10冒10

1。8・、O『u

3、4・10’1,

9,5・10’BO

5,3・、040

2r2・10-u1,9・10’12

2、9・10・噛o

7,5・、04ユ

2・1041

ト10435・10・電o

2・、0・賃2

5,3・10’恥2

3・10-142、7・10一一〇

4.4・、α亀2

1,5・10’11

5,3・10’10

Valuostakenfromva面ouspublication80f Ba慮on、R.S.、J Vac,

Sc、Tachool、vo117.No、1,Jan,Feb.1980,Espe,Wer㎏toκkunde

到達圧力は真空内の材料の表面からの放出ガス量

と排気量との釣り合いで定まるので,各材料のガ

ス放出率を知ることが重要である.表8はBal-

zers社のカタログに提示されている1代表的な

真空材料のガス放出率である.ガス放出率は,一

般に表面の処理条件で大きく変わると言われてい

る.本装置のステンレス鋼は室温(20℃)排気70

時問後でも10-9Torr〃scm2のオーダーであるの

に対して,Balzers社が示す例えばpolishedのス

テンレス鋼は,10時間後に2×10一10mbar4/

scm2(=1.5×10-10Torr〃scm2)を与えており,

約1桁低いガス族出準となってヤ・る。この違い

は,著者には説明がっけられないが,メーカー提

示なので最良のデータが使われているためかも知

れない.金属以外の材料で,ネオプレンとかバイ

トンのようなエラストマーはステンレス鋼に比べ

て2桁位高いガス放出となる.この意味でシール

部にエラストマーを沢山使うと,到達圧力もそれ

だけ高くなるごとになる.またこれらのエラスト

マーでは,大気側からの気体の透過もあるので,

そのデータも参考のため示しておく(表9).

7.もれ探し(リークテスト)

 真空装置を運転したとき,一しばしば予期したよ

うに圧力が下がらないことがある.前節で述べた

ように,ポンプが正常に働く限り,圧力は(13)式

に従って減少するし,その減少の目安はポンプめ

実効排気速度と真空内材料の排気時問毎の推定ガ

ス放出率とから予想可能である.したがって,実

際の真空圧力がその予想値よりも極端に低く,か

つ排気時間に無関係に一定値にとどまるならば,

装置のある場所から大気空気がもれて(侵入し

て)きていると思わなければならない.この大気

のもれ(リークとも言う)を探すことをもれ探し

465

Page 15: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

プラズマ・核融合学会誌 第69巻第5号  1993年5月

あるいはリークテストと言う.

 最も単純で,発見が容易なリークは大モレなど

と言うが,これはフランジの締め忘れや,O一リ

ングの付け忘れなどといった,いわゆるケアレス

ミスによるものである.この類のリークは耳をす

ますとシュウシュウという音が聞こえてきたり,

油回転ポンプがいつまでもガタガタ鳴ってうるさ

いのですぐに発見できる.リークの大きさは,流

量単位で表わされ,リークレート(1eak rate)と

呼ぶ.リークレートは,当然真空圧力の減少と共

に小さくなる.そしてポンプの排気流量でその大

きさを対応づけて評価できる.例えば,S=

300〃min(=5〃s)の油回転ポンプで真空装置

を排気し,ピラニゲージでP=10『3mbarから

10mbarまでの圧力を監視しているとき,リーク

があるならばそのリークレートQLは,

5×10『3mbar〃s≦QL≦50mbar〃s

の範囲にある.S=・300〃sのターボ分子ポンプ

で排気し,イオンゲージでP=10-8mbarから

10-3mbarまでの圧力を監視しているときは,リ

ークレートは,

3×10}6mbar〃s≦QL≦3×10『1mbar〃s

の範囲にある.

 通常10-6mbar〃s以下のリークは微少リーク

と呼ばれ,そのリークレートの測定のためには,

ヘリウムリークディテクター(Heleakdetector)を用いる.勿論,より大きなもれの探

査のためにも,このディテクターは使用できる

が,高価なので一般の実験研究室ではほとんど使

われていない.したがって我々が真空装置のリー

クを探すときは,検出器はそれに付いている真空

計を用いることになる.この場合,真空装置のリ

ークのありそうに思われる場所に,アセトン

(CO(CH3)2)やアルコール(C2H50H〉のような

液体を注射器やサイフォン付きの小型ポリタンク

を使ってかけて,真空計の圧力変化を観察する.

アルコールやアセトンは高分子量なので,その気

体分子はイオンゲージ内での電離過程で多数のラ

ディカル分子に割れてイオン化するため,みかけ                    、

上感度Cが大きくなる.したがってリーク箇所

から空気に代わって,このような液体が気化して

流入すると,真空計の指示圧が大きく変化する。

これを発見すれば,液をかけた所がリークの発生

場所であるということになる.ピラニゲージを用

いるときは,イオンゲージのような著しい感度増

大の効果があるわけではない.ただもれている場

所に液体が一瞬かかると,孔がふさがれるため,

空気の流れが止り指示値が一旦マイナスに振れ

る.その後孔から真空側に入った液体はガス化す

るので,今度はピラニゲージの指示値はプラスに

振れ,液が蒸発してなくなってもとの指示値に戻

る.このような応答を検知して,リークの場所を

判定することができる.真空計を使うリークテス

トでは,デジタル表示モードでは圧力観察が難し

いので,レコーダーにアナログ表示させて,アル

コールやアセトンをかけ,信号変化をモニターす

ることが大切である.最近,ガス分析計が分圧計

として実験室で使用されてきている.本講では,

分析計の解説を省略した.しかし,ガス分析計が

使える場合は,リークテストはよりやさしくな

る.ヘリウムガスを検知ガスに使い,リークと思

われる場所に吹きつけ,ヘリウム分圧の変化をみ

ればよい.リークがあると,その分圧が大きく増

大するからである.

さて、リーク探しは

どうやって行うのかね。

説明してごらん。

はい、まずアルコールをかけます。

10騨1~10-2Toπでは、ガイスラー管が

青色に変色放電するからわかるの・

王〇一5-10冒6TOIτでは、リークがあると

電離計が大きくふれるからすぐわかるの。

でも、この作業って意外と大変なのよね。

グ。》.甑一    r酬p  ‘

電離計

r’

油拡散ポンプ

1・

u『’“少,・

油回転ポンプ

        筆平井克宰。中部大学慢画薪究会、 1993

466

Page 16: 1.真空の作り方jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1993/jspf1993_05/...dP y石r=Q-SP (8り である.定常状態では,dP/磁二〇と置いて,(6)式に戻る.

講座 真空の作り方

 リークが発見できた場合,その欠陥部品を新し

くしたり,フランジの締めが足りなければ増し締

めする.また,シール材が不良なら交換したりし

てリークを止めることになる.しかし,実験の続

行を優先する必要があるときは,応急処置のリー

ク止めをすることがしばしばある.この目的のた

めにトルシール(Torr-seal〉が市販されている.

また接着材であるアラルダイトもよく用いられ

る.この場合,リーク封止剤の塗布部を乾燥させ

るため,ヘアドライヤーが有用である.真空リー

クは一般的に電気導入リード線のロウ付け部分と

か,真空メーカーでない一般加工業者に発注した

熔接部品(自家加工も含めて〉などに発生するこ

とが多い.ヘリウムディテクターによるリーク検

査なしで入手される部品は,リーク発生の危険性

が高いわけである.近年,中小の真空専門加工業

者が多く活躍しているので,これらの業者に部品

発注することをおすすめする.

 最後にゲートバルブ付きの真空装置の場合,ビ

ルドアップ(build-up)法と呼ばれる,ガス放出

率診断法があるので,これについて言及する.真

空装置でゲートバルブを閉じると,その後の容器

の圧力上昇は(5)式で記述される.例えばガス負

荷Qが一定ならば,圧力は時間と共にP(∫)=

(Q/y)∫+.P。のように一定の勾配で増大する(P。

はバルブを閉じた渉=0における圧力〉.実際の

圧力は時間に対して図18に示す曲線3のような

上昇(build-up)をすると説明されている.この

図で曲線1は,例えば容器にもれがあり,Q=

QLの一定流量の空気導入がある場合に相当し直

線的な圧力上昇となる.リークがなくても壁から

の放出気体が,再吸着しにくい性質の気体であれ

ば,分圧は曲線1のようになる.再吸着し易い気

赤石

体の分圧は,最初放出が優勢で時間が経つにつれ

て壁への再吸着のため圧力は飽和傾向を示し,曲

線2のようになる.したがって,ビルドアップに

おける圧力変化は曲線1と2の合計で曲線3のよ

うに応答する.この曲線3の曲がり始める以前の

直線勾配(」P/4∫)から,特長的な壁のガス放

出率Qwallを

QwaH=y(」P/」オ) (15)

のように定めることができる.普段リークのない

状態で時々このQw、11の大きさを経験的に知って

おけば,リークの有無は,このビルドアップ法か

らも推定できることになる.その場合は,明らか

にビルドアップレートは,

y(4P/虚)=Qwa11+QL (16)

のように,リークレートQLの分を余分に測るこ

とになるからである.

       参考文献[1]真空ハンドブック:最近非売品でなく,出版本

  として発売された(オーム社,日本真空技術株

  式会社編,平成4年n月30日).

[2]Leybold-HerausGMBH編:Grundlargender

  Vakuumtechnic,Berechnungen und Tabellenお

  よび製品総合カタログ

[3]Balzers社Turbomolecular-pumpsのカタログ:

  Intro(iuction/Description/Design, Fun(iamental

  and Compilation of Data.および製品総合カタロ

  グ[4]真空技術入門の最近の出版書として,例えば:

  わかりやすい真空技術,日本真空協会関西支部

  編,日刊工業新聞社(1990),および山科俊郎,

  広畑優子:真空工学,共立出版(1991)

467