2013 white paper on small and medium enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向...

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第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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第1部

2012年度の中小企業の動向2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 2: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▲3.0

▲2.0

▲1.0

0.0

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

1.0

2.0

3.0

4.0

資料:内閣府「国民経済計算」(注) 1.実質GDPは2005年暦年連鎖価格GDP。   2.2012年第4四半期速報値(2次)。

家計 民間企業設備 民間在庫品増加 公需 輸出 輸入 成長率

1.51.0

1.4

▲0.4

▲1.8

▲0.9

2.5

0.1

1.5

▲0.2

▲0.9

0.0

(前期比季節調整値、%、%ポイント)

10 11 12(年期)

第1-1-1図 実質 GDP成長率と需要項目別寄与度の推移

第1節 我が国経済の動向

本節では、緩やかな回復を続けていた我が国経

済が、世界景気の減速等の影響により弱い動きと

なったものの、足下では持ち直しの動きが見られ

ることなどを概観する。

■最近の我が国の景況2009年から持ち直しを続けてきた我が国経済は、2011年3月の東日本大震災による一時的な落ち込みを乗り越えて、増勢を維持してきたが、

2012年後半には、それまでの円高の進行や世界景気の減速等を背景に、輸出、生産等が落ち込

み、景気は弱い動きとなった。

しかしながら、2013年に入ると、内外の自動車販売の持ち直しや、家計や企業マインドの改善

等を背景に、我が国の景気はこのところ持ち直し

の動きが見られる。

こうした動きを実質 GDPの推移で見てみると、東日本大震災からの復興需要や経済対策等を

背景に、2011年7-9月期以降プラス成長を続けていた実質 GDPは、輸出の減速等を受けて、2012年4-6月期に4四半期ぶりにマイナス成長に転じ、同年7-9月期には、個人消費や設備投資の減少幅が拡大したこと等から、前期比▲0.9%と大幅に減少した。

2012年10-12月期には、個人消費が増加に転じたこと等により、前期比+0.0%となった(第1-1-1図)。

第 1 部

2 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 3: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

資料:内閣府「景気ウォッチャー調査」(注) 1.景気ウォッチャー調査は、全国11地域においてタクシー運転手、商店主等景気を肌で感じる職業の人に「街角の景況感」をヒ

アリングしDI化する調査。   2.各月の調査期間は毎月25日から月末。   3.景気の現状判断DIは、景気の現状に対する5段階の判断にそれぞれ次の点数を与え、これらを各回答区分の構成比(%)に乗

じて算出している。「良くなっている」+1、「やや良くなっている」+0.75、「変わらない」+0.5、「やや悪くなっている」+0.25、「悪くなっている」0。

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

2 3112111098765432112111098765432112 1311

27.7

52.6 51.8

44.2

39.0

57.3

(年月)

(DI)

第1-1-2図 全国の現状判断DI の推移

こうした動きを、2012年以降について、内閣府「景気ウォッチャー調査」で見てみると、同年

5月以降、現状判断 DIは低下傾向が続いていた

ものの、同年11月には再び上昇に転じ、その後も回復を続けている(第1-1-2図)。

■生産・輸出の動向次に、最近の生産及び輸出の動向を見ていく。

輸出の拡大や経済対策等を背景に、順調な回復

を続けていた我が国製造業の生産・出荷活動は、

世界景気の減速や経済対策効果の剥落等により、

2012年5月以降、再び後退に転じた。こうした動きを製造工業生産指数によって見て

みると、2012年4月には95.4の水準にあった生産指数は、その後下落に転じ、同年9月には86.4と、大震災直後の2011年4月(84.4)以来の低い水準まで低下した。特に、自動車等輸送機械工業

(船舶・鉄道車両を除く)の低下は大きく、2012年4月に114.0まで上昇した生産指数は、5月以降

大幅な下落に転じ、同年9月には82.7と大震災後以来の低い水準となった。しかしながら、同年

12月以降、生産指数は、製造工業及び自動車等輸送機械工業(船舶・鉄道車両を除く)共に再び

上昇に転じている(第1-1-3図上)。こうした生産・出荷活動の動きの背景にあるの

は、自動車を始めとする輸送機械工業を中心とし

た輸出の後退と回復である。製造工業の輸出は、

2012年3月に6か月ぶりに前年同月比で増加に転じた後、3か月連続で増加を続けた。しかしながら、同年6月には再び減少に転じ、同年12月まで7か月連続で前年同月比マイナスとなった。特に、自動車を始めとする輸送機械工業の輸出

第 1 部2012年度の中小企業の動向2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

第1節

3中小企業白書 2013

Page 4: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

40

50

60

70

80

90

100

110

120

輸送機械工業(船舶・鉄道車両を除く)製造工業

▲80

▲60

▲40

▲20

0

20

40

60

80

100

120

鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品輸出全体

21121110987654321121110987654321

21121110987654321121110987654321

資料:経済産業省「鉱工業生産指数」

資料:財務省「貿易統計」

(季節調整値、2005年=100)

生  産

輸  出

98.597.7

9.2

▲51.5

10.0

113.1

0.6

▲12.1 ▲7.0▲5.8

6.3 5.0▲2.9▲3.5

82.5

48.3

114.0

95.4

94.9

90.286.4

82.7 82.7

86.7

95.7

89.188.8

97.3

89.6

(前年同月比、%)

11 12 13(年月)

(年月)11 12 13

▲10.3

第1-1-3図 我が国の生産・輸出の推移

は、前年の大幅減の反動により、同年4月に前年同月比113.1%と大幅な増加を記録したものの、5月以降は急速に減速し、同年9月以降は、4か月連続で前年同月比マイナスとなった。しかしなが

ら、2013年1月には、輸出は、製造工業、輸送機械工業共に前年同月比プラスに転じている(第1-1-3図下)。

4 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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▲15.0

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

その他米国EUアジア 全体

21121110987654321

(前年同月比、%、%ポイント)

▲9.2

5.9

10.0

▲8.1▲10.3

▲4.1▲5.8

▲2.9

6.3

12 13

(年月)

資料:財務省「貿易統計」

第1-1-4図 我が国の輸出の伸びと地域別寄与度の推移

第1-1-4図は、我が国の輸出の推移を地域別に見たものである。

これを見ると、2012年5月までは、主に米国向け輸出を中心に我が国の輸出は、高い伸びを示し

ていた。しかしながら、6月以降、米国向け輸出が減速に転じたこと、EU向け及びアジア向け輸

出が大幅な減少に転じたこと等を受けて、輸出は

前年同月比マイナスが続いた。しかしながら、

2013年に入ると、海外景気の底堅さや為替レートの円安傾向を背景に、輸出環境が改善に向かい

始めたこと等を受けて、我が国の輸出は下げ止ま

りに向かうことが期待される(第1-1-4図)。

■為替の動向長期化する円高は、我が国輸出産業の競争力を

低下させ、企業収益を圧迫してきた。また、輸出

を行っていない国内企業においても、輸出企業を

通じたコスト引下げ圧力の高まり等により収益環

境の悪化が進んだ。

為替レートの動きを詳しく見てみると、2012年2月から3月までは対ドル、対ユーロ共に円安

基調が続いたものの、4月以降は対ドル、対ユーロ共に再び円高基調に転じ、同年7月には、対ユーロで94.5円、同年9月には、対ドルで77.7円まで円高方向に推移した。2012年10月頃までは円高基調が続いたが、11月中旬以降は、対ドル、対ユーロ共に大幅な円高修正が進み、2013年2月には、対ドルで94.0円、対ユーロで127.4円まで円安方向に推移した(第1-1-5図)。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第1節

5中小企業白書 2013

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70

80

90

100

110

120

130

140

150

資料:Bloomberg(注) 為替レートは日次のデータを使用している。

長期為替レート(1994年以降)

円/ドル(左軸)(円/ドル) (円/ユーロ)円/ユーロ(右軸)

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

130

資料:Bloomberg(注) 為替レートは日次のデータを使用している。

為替レート(2012年以降)

円/ドル(左軸)(円/ドル) (円/ユーロ)円/ユーロ(右軸)

94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13(年)

(年月)1312

75

80

85

90

95

100

97.294.5

127.4

76.177.7

94.0

80

90

100

110

120

130

140

150

160

170

180

321121110987654321

第1-1-5図 為替レートの推移

■石油製品価格の動向第1-1-6図上は、2009年以降のドバイ原油の取引価格の推移を、月次で示したものである。これ

を見ると、2011年以降のドバイ原油の月当たり平均価格は、107.5ドル/バレルと、2009年~

2010年の月当たり平均価格69.9ドル/バレルを大きく上回っており、原油価格は、高止まりの状

態が続いている。

こうした状況の中、国内の石油製品価格は高騰

を続けている。第1-1-6図下は、石油製品の卸売

6 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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原油価格

資料:IMF「Primary Commodity Prices」(注) Dubai Crude Oilの月平均価格。

(年月)

資料:資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(注) 元売会社の特約店向け卸価格(消費税抜き)。

石油製品卸売価格

レギュラーガソリン(左軸)

(ドル/バレル)

(円/リットル) (円/リットル)軽油(右軸)

(年月)

80

90

100

110

120

130

140

150

2112111098765432112111098765432112111098765432112111098761312111009

5432140

45

50

55

60

65

70

75

85

90

80

0

20

40

60

80

100

120

140

2112111098765432112111098765432112111098765432112111091312111009

87654321

136.7

122.1

131.0

127.1127.1136.683.2

67.2

71.9

82.382.3

69.9

107.6 111.2

43.1

115.8122.3

111.0

94.2

第1-1-6図 原油価格及び石油製品卸売価格の推移

価格の推移を示したものである。これを見ると、

2009年以降、レギュラーガソリン価格、軽油価格共に、おおむね原油価格の推移に沿うようにし

て、上昇傾向を続けていたことが分かる。しかし

ながら、2012年10月以降は、原油価格が横ばいで推移する中、為替レートが円安傾向へ転換した

ことを受けて、国内の石油製品価格は上昇に転じ

ていることが分かる。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第1節

7中小企業白書 2013

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▲50.0

▲45.0

▲40.0

▲35.0

▲30.0

▲25.0

▲20.0

ⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 業況判断DIは、前期に比べて、業況が「好転」と答えた企業の割合(%)から、「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。

10 11 12 13(年期)

▲33.1

▲25.9

▲34.6

▲24.2

▲20.9▲21.7

▲25.6 ▲25.2

(DI、前期比季節調整値)

第1-1-7図 中小企業の業況判断DI の推移

第2節 中小企業の動向

前節では、最近の我が国経済の動向を概観し、

2012年前半は、輸出や経済対策効果により、我が国経済は緩やかな回復過程にあったものの、同

年後半は、世界経済の減速等を受けて、回復の動

きに足踏みが見られたこと、2013年に入り、企業マインドの改善や底堅い個人消費等を背景に、

再び回復の兆しが現れてきたこと等を見てきた。

本節では、こうした我が国経済の動きを受け

て、中小企業の景況感、生産、資金繰り、雇用等

の状況が、2012年度を通じて、どのように推移したかを見ていく。

■景況感まず、中小企業の景況感を、中小企業庁・(独)

中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(以

下「中小企業景況調査」という。)で見てみる1。

中小企業の業況判断 DIは、大震災後の2011年7-9月期に、大震災前の水準にまで持ち直した後は、2012年4-6月期まで緩やかな回復を続けた(第1-1-7図)。同年7-9月期には、我が国経済の後退を受けて、業況判断 DIもやや低下する動きを見せたが、2013年1-3月期の DIは再び上昇に転じている。

1 中小企業基本法に定義する全国の中小企業を対象に、全国の商工会、商工会議所の経営指導員及び中小企業団体中央会の調査員による聴き取り調査。調査対象の約77%が小規模事業者で構成されている。

8 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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▲60.0

▲55.0

▲50.0

▲45.0

▲40.0

▲35.0

▲30.0

▲25.0

21121110987654321121110987654321

資料:全国中小企業団体中央会「中小企業月次景況調査」(注) 1.都道府県中央会に設置されている情報連絡員(中小企業の組合(協同組合、商工組合等)の役職員約2,700名に委嘱。)による調査。   2.景況DIは、前年同月に比べて、景況が「好転」と答えた企業の割合(%)から、「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。

11 12 13

(DI、前年同月比)

▲58.2

▲44.9▲42.3

▲31.5▲28.5

▲43.6

(年月)

第1-1-8図 中小企業の景況DI の推移

続いて、全国中小企業団体中央会「中小企業月

次景況調査」(以下「中小企業月次景況調査」と

いう。)で中小企業の景況感を見てみる。中小企

業の景況 DIは、2012年5月以降、マイナス幅が拡大し悪化傾向が続き、同年10月の DIは▲43.6

と2011年8月以来の低い水準となった。しかしながら、DIはその時点で底を打ち、2012年11月からはマイナス幅の縮小に転じ、その後も引き続き

改善を続けている(第1-1-8図)。

次に、地域別の業況判断 DIを見てみよう。各地域の業況判断 DIは、北海道を除き2012年4-6月期までは、マイナス幅の縮小傾向が続いた。特に、復興需要等を背景に急速な回復を続けてい

た東北地方の業況判断 DIは、4-6月期には▲15.5までマイナス幅が縮小し、他の地域を上回る順調

な回復ぶりを見せていた。

しかしながら、同年7-9月期には、各地域の業況判断 DIは再びマイナス幅の拡大に転じた。特に、東北、関東、近畿及び九州・沖縄では、大震

災直後の2011年4-6月期以来5期ぶりにマイナス幅が拡大した。10-12月期に入っても、関東及び近畿ではマイナス幅の拡大が続くなど、各地域と

も業況の低迷が続いていたが、2013年1-3月期に入ると、東北及び四国を除く各地域とも、マイナ

ス幅の縮小に転じている(第1-1-9図上)。業種別の業況判断 DIを見ると、復興需要等を背景に、2012年4-6月期まで、特に、建設業の業況改善が著しかった。また、個人消費の拡大等を

背景に、小売業やサービス業も改善を続けた。他

方、製造業の業況判断 DIの改善は、緩やかなものにとどまった。製造業は同年4-6月期、建設業等他の業種も7-9月期には再び、マイナス幅の拡大に転じた。しかしながら、2013年1-3月期に入ると、各業種ともマイナス幅の縮小に転じている

(第1-1-9図下)。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

9中小企業白書 2013

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北海道

東北

関東中部

近畿

中国四国

九州・沖縄

製造業

建設業

卸売業

小売業

サービス業

▲50.0

▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

▲50.0

▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 期間は2011年1-3月期~ 2013年1-3月期。

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 期間は2011年1-3月期~ 2013年1-3月期。

地域別

業種別

(DI、前期比季節調整値)

(DI、前期比季節調整値)

第1-1-9図 地域別・業種別の業況判断DI の推移

■売上・収益次に、中小企業の売上・収益動向を見てみる。

まず、中小製造業の売上高は、大震災直後の

2011年4-6月期を底に前年同期比マイナス幅の縮小を続け、2012年4-6月期には、前年同期比0.9%と僅かながらプラスの伸びを記録した。しかしな

がら、7-9月期には、景気の後退を受けて、再び

前年同期比マイナスに転じた。非製造業の売上高

は、大震災以降も前年同期比マイナスの状態が続

き、減収を続けている(第1-1-10図)。また、中小企業の売上高経常利益率は、総じ

て、大企業に比べ、低い水準にある(第1-1-11図)。

10 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0 大企業中小企業

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0 大企業中小企業

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

資料:財務省「法人企業統計季報」(注) 資本金1億円以上を大企業、1千万円以上1億円未満を中小企業としている。

(年期)(年期)10 11 12 10 11 12

▲28.2

0.9

6.4

▲4.7 ▲5.4

▲22.6

▲10.2▲7.6

▲6.0

6.5

▲4.9

▲11.6▲8.3

(前年同期比、%) (前年同期比、%)

製造業 非製造業

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0大企業中小企業

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0大企業中小企業

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

3.43.4

4.4

5.0

2.0

4.1

4.7

4.3

4.3

3.1

2.2

3.5 3.2

2.4

1.9

(年期)10 11 12

(年期)10 11 12

(%) (%)

製造業 非製造業

資料:財務省「法人企業統計季報」(注) 資本金1億円以上を大企業、1千万円以上1億円未満を中小企業としている。

第1-1-10図 規模別・業種別の売上高伸び率の推移

第1-1-11図 規模別・業種別の売上高経常利益率の推移

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

11中小企業白書 2013

Page 12: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

80

82

84

86

88

90

92

94

96

98

100

全企業中小企業

21121110987654321121110987654321

資料:経済産業省「鉱工業生産指数」、中小企業庁「規模別製造工業生産指数」  

82.5

84.4

86.7

89.0

94.0

98.5

95.9 95.6

95.5

86.4

88.2

89.789.1

87.1

89.6

88.1

11 12 13(年月)

(季節調整値、2005年=100)

第1-1-12図 規模別の製造工業生産指数の推移

■生産2012年度の中小企業の生産動向を見てみる。中小製造業の生産指数は、2012年に入っても緩やかな回復を続け、同年3月には95.5と大震災

前の2011年1月(94.0)を上回る水準にまで回復した。しかしながら、2012年4月以降は低下傾向に転じ、同年9月には88.2まで低下し、その後は一進一退の動きが続いている(第1-1-12図)。

次に、こうした中小企業の生産動向を業種別に

見てみよう。

2012年に入ると、世界景気の減速や為替相場の動向等を背景に、鉄鋼業、一般機械工業、電気

機械工業、電子部品・デバイス工業及び輸送機械

工業といった輸出産業を中心に、生産は大きく低

下している。特に、鉄鋼業及び電気機械工業の生

産は、同年9月に大震災直後を下回る水準まで低下した。また、輸送機械工業の生産も、同年11月には大震災直後の2011年4月以来の低い水準まで低下した。

なお、2013年に入ると、輸出環境の改善等を受けて、鉄鋼業、電気機械工業及び輸送機械工業

では、おおむね生産は下げ止まり、回復に向かう

動きを見せている(第1-1-13図)。

■資金繰り2012年度の中小企業の資金繰り DIの推移を見ていく。

中小企業景況調査によると、中小企業全体及び

小規模企業共に、2011年7-9月期に大震災前の水準に回復した後は、緩やかな改善を続けた。しか

しながら、2012年7-9月期以降は、中小企業全体及び小規模企業共に、資金繰り DIはおおむね横ばい傾向となっている(第1-1-14図)。

12 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 13: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

資料:経済産業省「鉱工業生産指数」、「生産動態統計調査」、中小企業庁「規模別製造工業生産指数」再編加工(注) 期間は2011年3月~ 2013年2月。

(季節調整値、2005年=100)

製造工業

鉄鋼業

12年1月90.2

12年9月72.8

11年12月102.5

13年1月80.7

12年1月113.9

12年9月87.8

12年3月109.4

11年12月83.0

12年4月110.7

12年11月87.0

一般機械工業

電気機械工業電子部品・デバイス工業

輸送機械工業

化学工業

食料品・たばこ工業

実線は中小企業、破線は大企業50

60

70

80

90

100

110

120

130

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 資金繰りDIは、前期に比べて、資金繰りが「好転」と答えた企業の割合(%)から、「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。

▲40.0

▲35.0

▲30.0

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

Ⅰ13

(年期)

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ121110

(DI、前期比季節調整値)中小企業全体 小規模企業

▲19.9▲21.7▲21.9

▲20.6▲22.6

▲18.0▲19.8▲20.0

▲18.5▲20.2

第1-1-13図 規模別・業種別の製造工業生産指数の推移

第1-1-14図 中小企業の資金繰りDI の推移

さらに、2012年以降の中小企業の資金繰り DIの動向を中小企業月次景況調査によって見ると、

2012年4月に▲18.1まで回復した資金繰り DIは、その後、マイナス幅の拡大に転じ、同年10月に

は▲25.0まで低下した。しかしながら、同年11月以降、資金繰り DIは再びマイナス幅の縮小に転じ、回復傾向が続いている(第1-1-15図)。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

13中小企業白書 2013

Page 14: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

資料:全国中小企業団体中央会「中小企業月次景況調査」(注) 資金繰りDIは、前年同月に比べて、資金繰りが「好転」と答えた企業の割合(%)から、「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。

(DI、前年同月比)

▲30.0

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

211211109876

13(年月)

12

54321

▲21.4

▲25.0

▲18.1

第1-1-15図 中小企業の資金繰りDI の推移(月次)

資料:金融庁「中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況について」(2012年11月)(注) 1. 金融機関1,521行の中小企業者向けの施行状況である。    2.実行率は、審査中及び取下げを除いた実行率(実行件数/〔実行件数+謝絶件数〕)。

申込件数(左軸) 実行件数(左軸) 実行率(右軸)(万件) (%)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

(年月)

3129631296

121110

312

09

70

75

80

85

90

95

10099.4

12.0 4.8

98.2

49.0 37.6

97.3

80.6 67.3

97.2

112.2 98.6

97.2

145.5129.0

97.2

181.1162.8

97.3

214.8194.9

97.3

245.7225.5

97.3

277.1254.8

97.4313.4

289.3

第1-1-16図 中小企業金融円滑化法による貸付条件変更実績(累計)の推移

なお、リーマン・ショック後の2009年12月に施行された「中小企業者等に対する金融の円滑化

を図るための臨時措置に関する法律」は、2013年3月末まで1年間再々延長されたが、これまでの中小企業者向けの施行実績は、2012年3月末時

点で申込件数が累計約313万件、実行件数が同約289万件となっており、審査中及び取下げを除いた実行率は、おおむね97%程度で推移している(第1-1-16図)。

14 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 15: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

資料:(株)東京商工リサーチ「倒産月報」(年月)

倒産件数(左軸) 前年同月比(右軸)(件) (%)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

09 10 11 12 13

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

321121110987654321121110987654321121110987654321121110987654321

第1-1-17図 中小企業の倒産件数の推移

■倒産2008年のリーマン・ショック後大幅に増加した中小企業の倒産件数は、2009年後半から2010年前半にかけて、前年同月比で大幅なマイナスで

推移した。その後も、引き続き、前年同月比マイ

ナスの傾向で推移している2。

2010年の中小企業の倒産件数は、13,246件(前年比▲14.0%)、2011年、2012年はそれぞれ12,687件(前年比▲4.2%)、12,077件(前年比▲4.8%)となった。2013年3月は927件で、前年同月比▲19.9%となった(第1-1-17図)。

■設備投資中小製造業の設備投資動向について見てみる。

日本銀行短期経済観測調査(以下「日銀短観」と

いう)では、2012年度の設備投資額(実績見込み)は、前年度比▲6.0%と3年ぶりの下落となった。他方、大企業の2012年度の設備投資額(実績見込み)は、前年度比+5.7%と5年ぶりの高い伸びとなった(第1-1-18図)。

こうした2012年度の中小製造業の設備投資の動きを、株式会社日本政策金融公庫(以下「日本

公庫」という)「中小製造業設備投資動向調査」

により投資目的別に見てみると、2012年度修正計画は、前年度実績比で+10.3%と、過去3年間では最も低い伸びとなった。投資目的別の寄与度

を見ると、2012年度は「能力拡充投資」が前年度実績比でマイナスとなる一方、「合理化投資」

が増加しており、中小製造業の業績見通しが悪化

していることをうかがわせる結果となっている

(第1-1-19図)。

2 東日本大震災関連倒産の動向については、付注1-1-1を参照。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

15中小企業白書 2013

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資料:日本銀行「全国短期経済観測調査」(注) 1.2012年度は2013年3月調査の数値。   2.土地投資額を含みソフトウェア投資額は含まない。

(前年度比、%)

▲35.0

▲30.0

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

12111009

大企業製造業

(年度)

中小製造業

5.7

▲0.7

▲3.5

▲32.1

▲6.0

11.39.8

▲32.2

資料:(株)日本政策金融公庫「中小製造業設備投資動向調査」(注) 2012年度は修正計画(2012年9月)、その他は実績の数値。

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0(前年度実績比、%、%ポイント)

12 (年度)1110▲5.0

能力拡充 合理化 新製品・新規事業・研究開発 更新、維持・補修 公害防止

省エネ その他 総投資額

21.2

18.6

10.3

第1-1-18図 大企業製造業及び中小製造業の設備投資の推移

第1-1-19図 投資目的別の中小製造業の設備投資の推移

■雇用完全失業率は、2011年11月以降横ばいが続いていたが、2012年5月以降低下傾向となり、同年

8月には4.2%まで低下した。その後は、4.2%から4.3%の間で一進一退の状態が続いている(第1-1-20図)。

16 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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資料:総務省「労働力調査」(注) 2011年3月~ 8月の完全失業率は、補完的に推計した結果である。

(季節調整値、%)

13年 1月4.2

12 年 12月4.3 13 年 2月

4.3

12 年 8月4.2

12 年 4月4.5

11 年 9月4.2

4.0

4.1

4.2

4.3

4.4

4.5

4.6

4.7

4.8

4.9

5.0

2112111098765432112111098

131211

7654321

(年月)

第1-1-20図 完全失業率の推移

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 従業員過不足DIは、今期の従業員数が「過剰」と答えた企業の割合(%)から、「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。

13(年期)

121110

(DI、今期の水準)全産業 非製造業製造業

▲4.4

2.3

▲6.7

▲4.0

3.0

▲6.4

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

ⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

第1-1-21図 中小企業の従業員過不足DI の推移

こうした完全失業率低下の背景にあるのは、非

製造業における従業員の不足感の高まりである。

中小企業景況調査により、中小企業の従業員過不

足 DIの推移を業種別に見ると、2012年に入り、

製造業が上昇傾向で推移しているのとは対照的

に、非製造業では低下傾向が続いており、従業員

の不足感が強まっていることが分かる(第1-1-21図)。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

17中小企業白書 2013

Page 18: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

資料:(株)リクルート ワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」(注)ここでは、従業員300人未満の企業を中小企業としている。

中小企業の大学卒業予定者求人数(左軸)

中小企業への大学卒業予定者就職希望者数(左軸)

求人倍率(右軸)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0(万人) (倍)

2013 年3月卒

2012 年3月卒

2011 年3月卒

2010 年3月卒

3.27 倍3.35 倍

4.41 倍

8.43 倍

26.627.630.3

40.3

8.148.246.874.78

第1-1-22図 中小企業の大学卒業予定者求人数・就職希望者数の推移

また、大学卒業予定者について、中小企業の求

人数及び中小企業への就職希望者数の過去数年間

の推移を見てみると、中小企業の求人数が減少を

続けた一方、中小企業への就職希望者数は徐々に

増加した結果、中小企業の求人倍率は、低下傾向

にある。しかしながら、2013年3月卒では、求人

数、就職希望者数共にほぼ横ばいとなったため、

3.27倍と、前年に比べ僅かな低下にとどまった(第1-1-22図)。中小企業の雇用のミスマッチ改善に向けた動きは、やや足踏み状態となっている

ことがうかがえる。

■為替レートの影響次に、為替レートの変動が中小企業に与えた影

響について見てみる。

まず、日銀短観で中小企業の想定為替レートと

実際の円ドルレートの動きを見てみる。企業の採

算レートは元々、現実の為替レートに遅行して推

移する傾向があるものの、2011年半ば以降、2012年初めまでは、一貫して、実際の円ドル

レートが想定為替レートを上回って推移してい

た。2012年は、春先以降、円高が再び進行する中で、中小企業の想定為替レートは、80円/ドルをやや下回る水準で推移してきた。

2012年12月について見ると、中小企業の想定為替レートが79.5円/ドルに対し、実際の為替レートはこれを下回る水準となっている(第1-1-23図)。

18 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

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中小企業・想定為替レート 円ドル為替レート(円/ドル)

(年月)10 11 12 13

89.2 89.0

93.1

94.7

78.2

83.6

79.5

75

80

85

90

95

100

321121110987654321121110987654321121110987654321

93.4

資料:日本銀行HP、日本銀行「全国短期経済観測調査」(注) 1.中小企業とは資本金2千万円以上1億円未満の企業をいう。   2.為替レートは日本銀行が公表した月中平均値。

第1-1-23図 中小企業の想定為替レートの推移

■販売単価、原材料価格の動向ここでは、中小企業の販売単価及び原材料価格

の動向を見てみる。中小企業景況調査により、ま

ず、製造業について2011年以降で見ると、売上単価・客単価 DIが横ばいで推移しているのに対し、原材料仕入単価 DIは、2011年7-9月期以降、大幅な下落傾向が続いていた(第1-1-24図)。中小非製造業についても、売上単価・客単価

DIがほぼ横ばいで推移する中、原材料仕入単価DIは、製造業と同様、2011年以降下落傾向が続いていた。

円高による原材料仕入価格低下の恩恵を受け

て、製造業を中心に、収益環境の改善が進んでい

たことが見て取れる。

しかしながら、2013年に入ると、前年末からの大幅な円高修正を背景に、製造業、非製造業共

に、原材料仕入単価 DIは上昇に転じている。依然として、売上単価・客単価が低下したとする企

業の数が、上昇したとする企業の数を上回る状態

が続くなか、中小企業の収益環境は、厳しい状況

に直面しているといえる。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

19中小企業白書 2013

Page 20: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▲50.0

▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

ⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

非製造業、売上単価・客単価DI

非製造業、原材料仕入単価DI

製造業、売上単価・客単価DI

製造業、原材料仕入単価DI

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 1.売上単価・客単価DIは、前年同期に比べて、売上単価・客単価が「上昇した」と回答した企業の割合(%)から、「低下した」

と回答した企業の割合(%)を引いたもの。   2.原材料仕入単価DIは、前年同期に比べて、原材料仕入単価が「上昇した」と回答した企業の割合(%)から、「低下した」と回

答した企業の割合(%)を引いたもの。

▲43.3▲36.4 ▲35.5 ▲36.3

▲31.8 ▲33.4 ▲31.1 ▲30.4 ▲28.8▲24.6

▲27.1 ▲25.6

17.3

30.1

▲16.5

▲28.5▲32.1

▲1.1

7.44.6 4.5 15.8

22.719.4 16.5 15.1 14.7

11.2 9.9

14.618.3

8.7

26.622.0 20.7

37.4

45.0 42.337.7

32.226.2

▲25.9 ▲24.7 ▲23.0▲18.3 ▲16.4 ▲16.0 ▲14.5 ▲15.3 ▲16.2 ▲16.0 ▲17.2

(DI、前年同期比)

10 11 12 13(年期)

第1-1-24図 売上単価・客単価DI、原材料仕入単価DI の推移

■電気料金、石油製品価格の上昇と中小企業2012年度半ば頃まで続いた円高の進展は、輸入原材料等の価格下落を通じて、製造業を始めと

する、中小企業の収益環境の改善に一定程度寄与

したものの、多くの中小企業は、依然として厳し

い収益環境に置かれている。

全国各地で実施ないしは実施が予定されている

電気料金の引上げと最近の為替相場の動向は、今

後、生産コストの上昇を通じて、改善傾向にある

中小企業の収益を再び下押しするおそれもある。

一般に、企業にとって電力や石油製品等といっ

た中間投入財の単価上昇は、それが自社の製品や

サービスの価格に完全に転嫁できるのであれば、

収益面での大きな問題とはならず、電気料金や石

油製品価格の引上げに伴う中間投入額の増加は、

最終的に消費者が負担することとなる3。

しかしながら、価格に転嫁できない場合には、

費用が増加した分、企業収益は減少することとな

り、企業経営にとって大きな問題となる。

特に、中小企業の場合、価格交渉力が弱いなど

の理由から、増加費用の製品・サービス価格への

転嫁が円滑に行えない企業が多数現れることが懸

念される。したがって、中間投入単価と収益の関

係を分析する場合には、中間投入単価の上昇を価

格に転嫁できるかどうかが、重要なポイントとな

る。

第1-1-25図は、中小企業庁「規模別産業連関表」を使って、電気料金が10%上昇した場合に、大企業は生産・営業コストの上昇分を製品・サー

ビス価格に転嫁できるが、中小企業は転嫁できな

いと仮定して、中小企業の利益率(営業余剰/国

内生産額)がどの程度変化するかを試算したもの

である4。

試算結果を見ると、鉄鋼を始め、化学、窯業・

3 現実には、価格に転嫁した場合、生産・販売量が減少することも考えられるが、ここでは、価格に転嫁しても、生産・販売量は変わらないと仮定している。4 試算の詳細については、補論1-1-1を参照。なお、中小企業の全てが、全く価格に転嫁できず、大企業の全ては、価格に完全に転嫁できるという今回の前提条件は、中小企業にとっては、想定し得る諸条件の中で最も厳しいものといえる。したがって、今回の試算結果は、現実に中小企業の収益が電気料金の引上げによって受ける影響の大きさの上限を示すものであることに留意する必要がある。

20 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 21: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0.0 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.3 ▲0.4 ▲0.5 ▲0.6 ▲0.7

対事業所サービス

対個人サービス

商業

その他の製造業

精密機械

輸送用機械

電気機械

一般機械

金属製品

非鉄金属

鉄鋼

窯業・土石

プラスチック

石油・石炭

化学

印刷・製本

木材・パルプ・紙製品

繊維・衣服

食料品

建設(住宅建築等)

農林水産

資料:中小企業庁「2005年規模別産業連関表」(注) 1.本図は、「2005年規模別産業連関表(基本分類)」のうち大企業関係業種に金融・保険業、運輸業等を加えた294業種を「価格

転嫁できる部門」とし、中小企業関係業種に農林漁業や建設業の一部等を加えた236業種を「価格転嫁できない部門」として、電気料金が一律に10%上昇した場合に、これら価格転嫁できない部門の利益率(営業余剰/国内生産額)が受ける影響を21業種に集約して示したもの。

   2.営業余剰には、会社企業では営業利益のほか、受取利息等が、自営業者では個人業主・無給家族従業者の所得等が含まれる。   3.直接波及とは自社が消費する電力の価格上昇を通じて受ける影響、間接波及とは価格に転嫁できる企業から電気料金の引上げに

よって価格が上昇した財・サービスを調達することによって受ける影響。

(%ポイント)間接波及直接波及

中小企業

▲0.06 ▲0.13 ▲0.19

▲0.02▲0.13 ▲0.16

▲0.10 ▲0.16 ▲0.27

▲0.15 ▲0.22 ▲0.37

▲0.10 ▲0.19 ▲0.29

▲0.11 ▲0.15 ▲0.26

▲0.16 ▲0.34 ▲0.50

▲0.14 ▲0.26 ▲0.40

▲0.19 ▲0.20 ▲0.39

▲0.15 ▲0.25 ▲0.40

▲0.27 ▲0.37 ▲0.64

▲0.19 ▲0.20 ▲0.39

▲0.15 ▲0.18 ▲0.33

▲0.08 ▲0.17 ▲0.26

▲0.09 ▲0.27 ▲0.36

▲0.08 ▲0.22 ▲0.30

▲0.09 ▲0.26 ▲0.35

▲0.10 ▲0.22 ▲0.32

▲0.12 ▲0.16 ▲0.28

▲0.16 ▲0.13 ▲0.30

▲0.06 ▲0.14 ▲0.21

第1-1-25図 電気料金が10%上昇した場合の利益率(営業余剰/国内生産額)の変化の試算

土石等製造業を中心に利益率は大きく低下するこ

とが分かる。利益率の変化は直接波及によるもの

と間接波及によるものに分けることができる。ま

た、サービス業を含めた多くの業種で、直接的、

間接的な影響により利益率が低下することが分か

る5。

5 石油製品価格の引上げによる、利益率の変化についての試算は付注1-1-2を参照。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

21中小企業白書 2013

Page 22: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▶▶

主務大臣

申請 認定

・専門家派遣等による協力

・保証付与による資金調達支援

経営革新等支援機関 (支援事業)・経営の診断、事業計画策定及び 実施に係る指導・助言 等

信用保証協会信用保証料の引下げ(予算措置)

中小企業・小規模事業者に対して「チーム」として専門性の高い支援を図る。

中小機構(中小機構法の特例) 中

小企業者信用保証協会

(信用保険法の特例)

(既存の中小企業支援者金融機関、税理士・税理士法人等)

認定件数:6,740件(2013年3月末時点)

税理士 税理士法人

公認会計士 監査法人 弁護士 弁護士

法人 商工会 商工会議所 中小企業団体中央会

中小企業診断士

社会保険労務士

4,178 820 296 13 488 15 39 85 33 116 2

行政書士民間コンサルティング会社

NPO法人 一般財団法人

一般社団法人

公益財団法人

公益社団法人

個人コンサルタント

その他 金融機関 合計

3 115 12 12 5 38 0 6 14 450 6,740

認定支援機関の認定状況(2013年3月末時点)

コラム 1-1-1

事業の円滑化、再生に向けて中小企業が、事業環境の状況に合わせて事業を再生するための支援策として、ここでは、認定支援機関及び再生支援協議会の取組について紹介する。

【コラム1-1-1① 経営革新等支援機関】中小企業を巡る経済環境が大きく変化する中、新たな事業活動を行う際に直面する経営課題は、内需減退や大震災の影響、取引先企業の海外流出、新興国との競争激化、本格的な海外展開等、多様化・複雑化している。これらの経営課題に対応するには、中小企業の経営状況の分析や事業計画の策定支援・実行支援を行うための支援体制の整備が必要となる。このため、平成24年8月に施行された中小企業経営力強化支援法(平成24年法律第44号)において、税務、金融及び企業の財務に関する専門的な知識や実務経験が一定レベル以上の者を国が認定することで、支援の担い手を多様化・活性化するとともに、独立行政法人中小企業基盤整備機構から専門家を派遣し、中小企業に対してチームとして専門性の高い支援を行うための体制を整備している。平成24年度においては、既存の中小企業支援者(商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、中小企業診断士等)に加え、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等の士業関係者等の約6,740の機関を経営革新等支援機関として認定した。こうした経営革新等支援機関を通じて、中小企業に対する専門性の高い支援を実施している。

【コラム1-1-1② 中小企業再生支援協議会】中小企業の再生を支援するため、産業活力再生法に基づき、全国47都道府県ごとに設置された支援機関。中小企業の再生に係る相談等にきめ細かく対応するとともに、事業再生の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士等)が再生計画の策定支援を行い、債権放棄やリスケジュール等に向け、金融機関調整の支援を行う。平成15年2月の設置以降、平成24年第2四半期までの相談対応は累計25,135社。再生計画策定完了は、同期間の累計で3,353社となっている。

22 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 23: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

相談対応

再生計画策定完了

再生手法※再生計画策定完了累計3,353社の内訳

再生計画の策定支援

関係機関との調整・関係金融機関等との調整支援を実施

フォローアップ・計画策定後も定期的なフォローアップ、必要なアドバイスを実施

課題解決に向けたアドバイス

窓口相談(第一次対応)

再生計画策定支援(第二次対応)

中小企業再生支援協議会の構成及び設置状況

中小企業再生支援協議会の再生支援の流れ

中小企業再生支援協議会の活動実績

認定支援機関(産活法第41条)

中小企業再生支援協議会(産活法第42条)

支援業務部門

・常駐専門家・外部専門家

個別支援チーム

報告・相談

指導・助言

再生計画策定支援をする場合に設置

業種特性※再生計画策定完了累計3,353社の内訳

※上記手法を複数実施している案件がある。

都道府県北 海 道青 森 県岩 手 県宮 城 県秋 田 県山 形 県福 島 県茨 城 県栃 木 県群 馬 県埼 玉 県千 葉 県東 京 都神奈川県新 潟 県長 野 県

設置主体(認定支援機関)札幌商工会議所(公財)21あおもり産業総合支援センター盛岡商工会議所(公財)みやぎ産業振興機構秋田商工会議所(財)山形県企業振興公社(公財)福島県産業振興センター水戸商工会議所宇都宮商工会議所(財)群馬県産業支援機構さいたま商工会議所千葉商工会議所東京商工会議所(公財)神奈川産業振興センター(財)にいがた産業創造機構(財)長野県中小企業振興センター

○認定支援機関の内訳 商工会議所 31 県中小企業支援センター 15 県商工会連合会 1    計 47

○常駐専門家の内訳 ・金融機関出身者 194 ・中小企業診断士 32 ・信用保証協会出身者 14 ・税理士 10 ・公認会計士 13 ・その他(中小企業支援機関等) 8    計 271

(平成24年10月1日時点)

その他 2%不動産業 1%

サービス業 7%運輸業 5%

建設業11%

飲食店・宿泊業12%

卸売・小売業23%

製造業39%

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

その他(債務の借換等)

リスケジュール

債権放棄(第二会社方式を含む)

地域の実情を踏まえ、具体的な業務実施方針・方法、その他必要な事項を定める。

全 体 会 議中小企業の再生に係る相談に応じるとともに、必要な場合には、再生計画の策定支援を行う。

・面談や提出資料の分析を通して経営上の問題点や、具体的な課題を抽出・課題の解決に向けて、適切なアドバイスを実施・必要に応じ、関係支援機関や支援施策を紹介

・相談対応は平成24年度第2四半期は795社(第1四半期459社)。うち、約32%が相談段階(1次対応)で課題解決。・平成15年2月の設置以降、平成24年度第2四半期までの相談対応は累計25,135社。

・再生計画策定完了は平成24年度第2四半期は95社(第1四半期は58社)。・平成24年度第2四半期までの累計は、3,353社。

・専門家(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士等)からなる個別支援チームを結成し、具体的な再生計画の策定を支援

中小企業や事業の再生等に知見と経験を有する者が常駐専門家として対応(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、金融機関出身者等)

都道府県山 梨 県静 岡 県愛 知 県岐 阜 県三 重 県富 山 県石 川 県福 井 県滋 賀 県京 都 府奈 良 県大 阪 府兵 庫 県和歌山県鳥 取 県島 根 県

設置主体(認定支援機関)(公財)やまなし産業支援機構静岡商工会議所名古屋商工会議所岐阜商工会議所(財)三重県産業支援センター(財)富山県新世紀産業機構(財)石川県産業創出支援機構福井商工会議所大津商工会議所京都商工会議所奈良商工会議所大阪商工会議所神戸商工会議所和歌山商工会議所(財)鳥取県産業振興機構松江商工会議所

都道府県岡 山 県広 島 県山 口 県徳 島 県香 川 県愛 媛 県高 知 県福 岡 県佐 賀 県長 崎 県熊 本 県大 分 県宮 崎 県鹿児島県沖 縄 県

設置主体(認定支援機関)(財)岡山県産業振興財団広島商工会議所(公財)やまぐち産業振興財団徳島商工会議所高松商工会議所松山商工会議所高知商工会議所福岡商工会議所佐賀商工会議所長崎商工会議所熊本商工会議所大分県商工会連合会宮崎商工会議所鹿児島商工会議所那覇商工会議所

再生計画を作成して金融機関と調整する必要があると協議会が判断した場合

640

2,409

451

平成24年4月の「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」に基づき、全国47都道府県に設置された中小企業再生支援協議会の機能強化を実施(専門人員70名増員、192名→262名)。第二弾として、中小企業再生支援協議会の全国本部を含め、更なる専門家の増員等を図り、一層の機能強化を進めている。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第2節

23中小企業白書 2013

Page 24: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

全 国

東北地方

岩手県

福島県

宮城県

青森県

▲60.0

▲50.0

▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

0.0(DI、前期比季節調整値)

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 期間は、2010年1-3月期~ 2013年1-3月期。

第1-1-26図 東北地方の中小企業の業況判断DI の推移

第3節 東日本大震災被災地域の業況

東日本大震災が発災して、2年が経過した。大きな被害や影響が、東北地方を中心に、日本全国

にもたらされたが、その後の復興がどのように進

んでいるのか、被災地域の中小企業を中心に地域

の業況を見ていく。

■大震災後の東北地方の景況感まず、東北地方の景況感を、中小企業景況調査

で見てみる。

第1-1-26図は、東北地方の中小企業の業況判断 DIの推移を示したものである。業況判断 DIは、大震災の影響で大きく落ち込んだ後、回復し

ていたが、2012年夏以降、やや足踏みが見られる状況になっている。

24 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 25: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▶▶

北海道 東北 関東 中部

▲45.0

▲40.0

▲35.0

▲30.0

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

九州・沖縄四国中国近畿

▲70.0

▲60.0

▲50.0

▲40.0

▲30.0

▲20.0

▲10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 期間は、2010年1-3月期~ 2013年1-3月期。

(DI、前期比季節調整値)

(DI、前期比季節調整値)

地域別・県別の中小建設業の業況判断DI の推移

地域別・県別の建設業の業況判断DI の推移東北地方における中小建設業の業況判断DI を見ると、2010年10-12月期に底を打ち、2013年1-3月期まで、一度も悪化することなく改善し続けている。特に2011年7-9月期からの2四半期で大幅に改善をしており、同期間の改善幅は23.1ポイントであった。また、東北各県で見ても、復興需要等のため、大震災以前の水準を超える改善が見られる。

コラム 1-1-2

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第3節

25中小企業白書 2013

Page 26: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▲30.0

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

東北全国

ⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注) 従業員過不足DIは、今期の従業員数が「過剰」と答えた企業の割合(%)から、「不足」と答えた企業の割合(%)を引い

たもの。

(DI、今期の水準)

10 11 12 13(年期)

8.68.611.811.8

8.18.14.74.7

3.13.1

2.12.1

▲ 8.4▲ 8.4

▲ 20.3▲ 20.3 ▲ 20.3▲ 20.3

▲ 13.4▲ 13.4▲ 16.4▲ 16.4

▲ 26.5▲ 26.5

▲ 15.8▲ 15.8

6.86.8 8.78.73.83.8

0.10.1 1.41.4

3.33.3

▲ 2.0▲ 2.0▲ 5.7▲ 5.7 ▲ 5.9▲ 5.9

▲ 3.8▲ 3.8

▲ 8.9▲ 8.9▲ 13.0▲ 13.0▲ 12.9▲ 12.9

東北地方の中小建設業の従業員過不足DI の推移

■東北地方の雇用状況次に、東北地方の雇用状況を見ていく。

第1-1-27図は、東北地方について、2010年以降の有効求人倍率の推移を示したものである。大

震災直後の2011年4-6月期には、0.02ポイント減少をしたが、復興需要もあり、同年7-9月期以降は2012年末まで改善が続き、全国の水準を超えて0.93倍となった。

■東北地方の生産動向東北地方の鉱工業の生産動向を、鉱工業生産指

数を用いて見ていく。

東北地方の鉱工業生産指数の動きを見ると、

2011年には、大震災の影響により、全国よりも大幅に低下したが、2012年前半には、全国の水準にまでほぼ持ち直した。しかし、世界景気の減

速や経済対策効果の剥落等のため、全国的に弱い

動きが見られ、東北地方も、弱い動きが見られる

(第1-1-28図)。

また、東北地方における中小建設業の従業員過不足DI を見ると、業況の改善を反映して、2011年7-9月期に、過剰から不足へと転じている。不足に転じたのは、2006年10-12月期以来、4年9か月ぶりである。2012年4-6月期より、3四半期連続でマイナス幅が拡大し続けており、中小建設業で、従業員の不足感は強くなっている。

26 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 27: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

東北全国

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

ⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ

(倍)

10 11 12

資料:厚生労働省「職業安定業務統計」(注) 数値は季節調整値。

(年期)

0.470.47 0.500.500.540.54

0.570.57 0.610.61 0.620.62 0.650.650.700.70

0.750.750.800.80 0.810.81 0.820.82

0.380.38 0.400.400.440.44

0.480.48 0.500.50 0.480.48

0.590.59

0.690.69

0.770.77

0.870.87 0.890.890.930.93

東北全国

60

65

70

75

80

85

90

95

100

21121110987654321121110987654321121110987654321

(季節調整値、2005 年=100)

10 11 12 13

資料:経済産業省「鉱工業生産指数」、東北経済産業局「東北地域鉱工業生産動向」(注) 東北の2013年2月は速報値。

(年月)

92.892.8

99.799.7

64.264.2

90.290.2

第1-1-27図 東北地方の有効求人倍率の推移

第1-1-28図 東北地方の鉱工業生産指数の推移

■東北地方の消費動向第1-1-29図は、東北地方の大型小売店舗6の販

売額の推移を見たものである。大震災後の2011年3月は、店舗の被災や物流の寸断等から、2010年(基準年)の同月比で▲22.4%と、大幅に減少

した。しかし、復興需要等から、大震災から2か月後の同年5月には基準年同月比プラスに転じ、2012年12月まで、2010年の同月比プラスで推移した。

6 ここでいう大型小売店舗とは、従業者50人以上の小売事業所のうち、百貨店及びスーパーに該当する事業所をいう。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第3節

27中小企業白書 2013

Page 28: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

東北全国

▲25.0

▲20.0

▲15.0

▲10.0

▲5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

21121110987654321121110987654321

(%、基準年:2010 年)

11 12 13

資料:経済産業省「商業動態統計調査」、東北経済産業局「東北地域大型小売店販売額動向」(注) 1.数値は、地域別の各月の大型小売店舗販売額を、2010年各月の大型小売店舗販売額で除し、増減率を算出したもの。   2.東北の2013年2月は速報値。

(年月)

▲22.4

0.60.6

第1-1-29図 東北地方の大型小売店舗販売額の推移

項目

年地域・県

事業所数 従業者数

09(人)

12(人)

09(人)

12(人)増減率 増減率

全国 6,199,222 5,804,223 ▲6.4 58,442,129 56,324,082 ▲3.6

3県合計 278,755 249,118 ▲10.6 2,451,395 2,265,040 ▲7.6

沿岸市町村合計 81,738 66,810 ▲18.3 686,588 601,750 ▲12.4

岩手県 66,009 59,984 ▲9.1 546,239 512,697 ▲6.1

沿岸市町村 14,889 11,241 ▲24.5 96,767 79,314 ▲18.0

宮城県 111,343 99,052 ▲11.0 1,032,237 964,876 ▲6.5

沿岸市町村 48,324 38,330 ▲20.7 424,962 368,449 ▲13.3

福島県 101,403 90,082 ▲11.2 872,919 787,467 ▲9.8

沿岸市町村 18,525 17,239 ▲6.9 164,859 153,987 ▲6.6

第1-1-30図 被災地域の事業所数・従業者数の推移

資料:総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査」(速報)(注) 1.ここでいう、沿岸市町村は内閣府「平成23年版防災白書」p.94から p.96に挙げられている沿岸市町村のことをいう。ただし、

仙台市については、行政区ごとに集計した。2.調査実施日である平成24年2月1日時点において、市町村の一部又は全部が警戒区域又は計画的避難区域に該当した市町村は除いた。

3.「従業者数」は必要な事項の数値が得られた事業所を対象として集計した。

■被災地域の事業所数・従業者数の推移生産・消費動向や雇用状況から、被災地域の復

興が進んでいることがうかがえるが、事業所数や

従業者数については、まだ大震災前の水準には

戻っていない。

第1-1-30図は、岩手県、宮城県、福島県とそれらの県の沿岸市町村に立地していた事業所の数

とその従業者数の推移を見たものである。同沿岸

市町村地域における事業所数は、大震災前の

2009年には、約8万2千であったが、大震災から1年後の2012年には、約6万7千と約18%減少した。従業者数についても、大震災前は約69万人であったが、大震災後は約60万人と約12%減少している。これは、全国平均と比べても大きな減

少率であり、津波等が数多くの事業所に大きな影

響を与えたことが分かる。

28 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 29: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

事業再開 休業・廃業 不明

0% 100%

11年 6月(n=5,004)

12年 2月(n=5,004)

13年 2月(n=5,004) 72.8

70.1

50.1

26.5

25.3

11.3

0.6

4.6

38.7

資料:(株)帝国データバンク「東北3県・沿岸部「被害甚大地域」5000社の再追跡調査」(注) ここでいう東北3県とは、岩手県、宮城県、福島県のことをいう。

第1-1-31図 東北3県の被害甚大地域の事業再開状況の推移

■被災地域の事業再開状況第1-1-31図は、岩手県、宮城県、福島県沿岸部の被害甚大地域7に本社のあった企業の事業再

開状況を示したものである。約7割が事業を再開している一方、約3割は休業・廃業状態にある。

復興が進む中、生活を再建する被災者に雇用の

場を提供し、地域を活性化する中小企業の果たす

役割はますます大きくなっている。沿岸部を始

め、東北地方全体が、大震災の被害から完全に回

復するために、中小企業の更なる飛躍が期待され

る8。

7 ここでいう被害甚大地域とは、津波被害が特に大きかった地域と東京電力福島第一原子力発電所事故による警戒区域・計画的避難区域をいう。8 第2部第1章及び第2章で、被災地域で地域再生を進める企業、新工場建設による雇用創出に取り組む企業を紹介している(大震災からの地域再生:事例2-1-13、新工場建設:事例2-2-5、事例2-2-7)。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第3節

29中小企業白書 2013

Page 30: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▶▶

全倒壊した工場・施設等

復興事業計画等による整備〈条件〉

◆対象者中小企業グループ、事業協同組合等

◆対象施設倉庫、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、原材料置場、付随する設備等

グループ 補助総額 うち国費

北海道 6グループ 10億円 6億円

青森県 10グループ 86億円 57億円

岩手県 94グループ 753億円 502億円

宮城県 160グループ 2,207億円 1,471億円

福島県 188グループ 800億円 533億円

茨城県 58グループ 195億円 130億円

栃木県 1グループ 5億円 3億円

千葉県 8グループ 28億円 19億円

計 525グループ 4,084億円 2,723億円

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業大震災では多くの企業が被災したことから、復興の牽引役となり得る「地域経済の中核」を形成する中小企業等グループに対する支援策として、「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」が措置された。これは、被災地域で形成された企業のグループが、復興事業計画を作成し、県から認定を受けた場合に施設・設備の復旧・整備に対して、補助金が受けられるものであり、グループ化の要件として、①経済取引の広がりから、地域にとって重要な産業クラスター、②雇用規模の観点から、地域において重要な位置付けを有する中核企業とその周辺企業、③我が国経済にとって重要なサプライチェーンを形成している企業グループ、④地域コミュニティにとって不可欠な地域の中心的な商店街等、の四つの類型が示されている。平成24年度当初予算等により、北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県において、計525グループを支援している。グループ化を契機に新たな取引関係が生まれる、共同で商品開発・販路開拓等の取組が行われるなど、単なる個別企業の復旧にとどまらない、地域の復旧が進んでいる。

◆採択実績525グループに対し、国費2,723億円(県費と合わせて4,084億円)の支援を実施。

コラム 1-1-3

30 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 31: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▶▶

事業者

事業者

事業者

①入居希望

②入居契約

市町村 (独)中小企業基盤整備機構

・市町村への移管

条件

【事業の流れ】

◆事業実績

【予算】23年度1次補正予算額 10億円23年度2次補正予算額 215億円23年度3次補正予算額 49億円

24年度復興特会予算額 50億円25年度復興特会予算案 30億円

        (年度計 274億円)

【仮設工場】【仮設店舗・仮設事務所】

おおふなと 夢 商店街(大船渡市大船渡町仮設店舗:岩手県)

・要望取りまとめ・ 用地の提供・入居条件、入居 者の決定・契約

・仮設施設に対する ニーズ調査・市町村との調整 (要望、用地等)・仮設施設への貸与

本格復興整備事業による施設構築が適切でないと認められるもの建築基準法第85条第2項又は第5項に基づき建築する仮設建築物就業者が直接活動する場であり、雇用創出や集約化・効率化につながるもの施設・設備に係るほかの補助金制度を併用しないもの

いわき四倉中核工業団地仮設工場群(いわき市仮設工場:福島県)

青森県岩手県宮城県福島県茨城県長野県計

18か所327か所128か所47か所1か所1か所

522か所

102事業者1,673事業者679事業者287事業者2事業者1事業者

2,744事業者

完成か所数(13年3月末時点) 入居事業者数(12年12月末時点)

仮設工場・仮設店舗等整備事業東日本大震災により、被害に遭った地域等においては、地域の雇用・経済を支える中小企業・小規模事業者の早期復興を図るため、工場や店舗等の事業基盤の再整備が必要である。「仮設工場・仮設店舗等整備事業」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が主体となり、中小企業・小規模事業者が速やかに事業を再開するため、仮設の店舗や工場等を整備し、市町村を通じて、原則無償で貸し出す事業である。2011年4月11日に事業実施を決定し、2013年3月末までに522か所の仮設店舗や工場等が完成している。なお、完成した仮設店舗や工場等に2012年12月末時点で、2,744事業者が入居しているなど、被災地域における復興に向けた取組が進んでいる。

コラム 1-1-4

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第3節

31中小企業白書 2013

Page 32: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▶▶

貸付額(左軸) 件数(右軸)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

32112111098765432112111098765

資料:中小企業庁(注) 2011年5月21日以降の各週の実績値を毎月合計して作成。

(年月)11 12 13

0.781.21

1.542.06 2.37

2.773.30 3.54 3.81 4.21 4.31 4.45 4.62 4.71 4.79 4.91 4.98 5.06 5.14 5.18 5.315.23

8,7708,770

33,00733,007

54,03054,03070,47670,476

90,69690,696

108,433108,433

129,795129,795

151,803151,803160,244160,244

171,183171,183184,602184,602 191,567191,567

198,404198,404206,689206,689 212,879212,879 217,905217,905 224,100224,100 228,969228,969 232,681232,681 235,953235,953 237,276237,276 238,799238,799 241,167241,167

(兆円) (件)

0.20

東日本大震災復興特別貸付の実績(累計)の推移

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000保証額(左軸) 件数(右軸)

32112111098765432112111098765

資料:中小企業庁(注) 2011年5月21日以降の各週の実績値を毎月合計して作成。

(年月)11 12 13

(兆円) (件)

0.07

0.59

0.981.18 1.37 1.45 1.53 1.61 1.67 1.73 1.83 1.84 1.86 1.89 1.91 1.93 1.96 1.97 1.99 2.01 2.042.02 2.08

2,0992,099

20,74420,744

37,17237,172

46,28946,289

54,83854,83859,46459,464

63,58963,58968,24168,241 70,69970,699

73,84273,84279,48479,484 80,30980,309 81,64181,641 83,30483,304 84,60484,604 85,78285,782 87,38687,386 88,43888,438 89,48689,486 90,99390,993 91,79391,793 94,98494,98492,90992,909

東日本大震災復興保証の実績(累計)の推移

被災地企業への金融支援災害により直接的に被害を受けた中小企業者や、経営の安定に支障が生じている中小企業者等(被災中小企業等)の資金繰りの円滑化のため、信用保証協会が中小企業等に債務保証を行う「東日本大震災復興緊急保証」や株式会社日本政策金融公庫が低利融資を行う「東日本大震災復興特別貸付」が措置された。これらの制度創設から2013年3月末時点までの実績は、東日本大震災復興特別貸付が約24万1千件、5.3兆円余り、東日本大震災復興緊急保証が同約9万5千件、2.1兆円余りとなっている。

コラム 1-1-5

32 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 33: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

▶▶

支援決定数 買取決定数

020

相談・依頼受付件数(件)

406080100120140160180

3211211109876543

403 948 1,015 1,087167 887818728660592501299206

資料:復興庁

12 13

(件)

15

37

41 10(うち1件)

50

(うち15件)

64

104

167

107122

(うち4件) (うち10件)(うち31件)

(うち51件) (うち60件)

(うち86件)(うち108件)

(年月)

東日本大震災事業者再生支援機構の相談受付状況(累計)

金融機関等による金融支援の合意案件数 買取決定数

相談受付案件数(件)

1,244 1,867 1,945 2,070921 1,7791,6941,5901,4881,3961,3131,1501,052

0

50

100

150

200

250

300

321121110987654312 13

(件)

(年月)

2850 60 72

101117

143161 171

198 207

281

(うち106件)

237

(うち11件) (うち11件) (うち16件) (うち22件) (うち24件) (うち31件) (うち48件) (うち58件) (うち62件) (うち75件) (うち79件) (うち93件)

資料:中小企業庁(注) 各週の実績値を毎月合計して作成。

産業復興相談センター・産業復興機構の相談受付状況(累計)

被災事業者の事業再生支援被災地域の事業の再生のために、東日本大震災の被災によって、過大な債務を負っている事業者であって、被災地域で事業の再生をしようとする事業者を支援するため、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が設立された。また、東日本大震災被災事業者の総合相談窓口として「産業復興相談センター」を、二重債務問題における債権買取機関として「産業復興機構」を各県に設立した。株式会社東日本大震災事業者再生支援機構は、2013年3月末時点で、相談受付件数が累計で1,087件、支援決定数が同167件、買取決定数が同108件、産業復興相談センター・産業復興機構は、同年3月末時点で、相談受付案件数が累計で2,070件、金融機関等による金融支援の合意が同281件、買取決定が同106件となっている。

コラム 1-1-6

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第3節

33中小企業白書 2013

Page 34: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,0000.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

資料:総務省「平成21年経済センサス-基礎調査」再編加工、総務省「人口推計」、国土地理院「平成21年全国都道府県市区町村別面積調」(注) 1.ここでは三大都市圏を、関東大都市圏、中京大都市圏、京阪神大都市圏とし、三大都市圏中心市が所在する都府県を埼玉県、千

葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県としている。   2.常用雇用者・従業者の数は、本社所在地で計上される。   3.( )内の左の数値は人口密度、右の数値は従業者割合を示す。   4.人口密度は2009年10月1日時点の人口より算出。

(%)

(人 /km2)

中規模企業

小規模事業者

三大都市圏中心市が所在しない道県の平均(206 , 53.9)

三大都市圏中心市が所在しない道県の平均(206 , 53.9)

三大都市圏中心市が所在する都府県の平均(1,794 , 38.5)

三大都市圏中心市が所在する都府県の平均(1,794 , 38.5)

y = -0.0037x + 32.381R² = 0.5976

y = -0.0037x + 32.381R² = 0.5976

三大都市圏中心市が所在する都府県の平均(1,794 , 15.4)

三大都市圏中心市が所在する都府県の平均(1,794 , 15.4)

三大都市圏中心市が所在しない道県の平均(206 , 29.9)

三大都市圏中心市が所在しない道県の平均(206 , 29.9)

y = -0.0033x + 55.015R² = 0.6494

y = -0.0033x + 55.015R² = 0.6494

第1-1-32図 都道府県別の人口密度と小規模事業者、中規模企業の常用雇用者・従業者割合の関係

第4節 中小企業・小規模事業者の役割・課題

前節までで、中小企業を取り巻く状況を概観し

たが、本節では、第1部を締めくくるに当たって、第2部への導入として、中小企業・小規模事

業者が地域等の雇用に果たす役割、直面する課題

の中長期的な変化等について、政府統計を用い

て、規模別に見ていく。

1.中小企業・小規模事業者の雇用に果たす役割我が国経済社会の再生を図る上で、地域の活性

化は不可欠であり、地域における雇用の創出、競

争力の向上、地域経済の循環性の向上9が重要な

課題となっている。また、我が国の人口が減少傾

向にある中で、持続的な経済成長を実現するに

は、女性の潜在労働力を引き出すための場を創出

することが重要である。

中小企業・小規模事業者は、地域経済において

重要な役割を担っており、また雇用の7割弱を生み出している。

ここでは、都道府県別、規模別の常用雇用者・

従業者数10のデータに基づき、中小企業・小規模

事業者の地域の雇用における役割を見ていきた

い。第1-1-32図は、都道府県別に人口密度と小規模事業者、中規模企業それぞれの常用雇用者・

従業者に占める割合との関係を示したものであ

る。人口密度の低い都道府県ほど、小規模事業

者、中規模企業の常用雇用者・従業者の占める割

合が高い傾向にある11。

9 地域経済の循環性と中小企業の役割について、都道府県別産業連関表や多変量解析手法を用いて分析した結果の詳細は、補論1-1-2を参照。10 ここでいう常用雇用者・従業者数とは、会社の常用雇用者数と個人事業所の従業者数の和である。11 ここでいう会社における常用雇用者・従業者数は、本社の所在する都道府県に支社も合わせて計上されているため、実際の都道府県の常用雇用者・従業者数とは必ずしも一致しないことに留意が必要である。

34 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 35: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

三大都市圏中心市が所在する都府県三大都市圏中心市が所在しない道県

小規模事業者

中規模企業

大企業

資料:総務省「平成21年経済センサス-基礎調査」再編加工(注) 1.ここでは三大都市圏を、関東大都市圏、中京大都市圏、京阪神大都市圏とし、三大都市圏中心市が所在する都府県を埼玉県、千

葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県としている。   2.常用雇用者・従業者の数は、本社の所在する都道府県に計上している。

53.9

29.9

16.2

2,564万人

38.5

15.4

46.1

1,733万人(%)

第1-1-33図 三大都市圏中心市が所在しない道県とそれ以外の都府県における規模別の常用雇用者・従業者割合の比較

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

50.0

300 ~100 ~ 29950 ~ 9920 ~ 495 ~ 191 ~ 4

資料:総務省「平成19年就業構造基本調査」(注) ここでいう雇用者とは、会社員、個人商店の従業員等、会社、個人、個人商店等に雇われている者のうち、農林業、官公庁、   その他の法人・団体(公社、私立学校等)に雇われている者を除いた者をいう。

(人)

(%)46.7

42.738.9 38.6 38.1 36.5

平均 42.4

第1-1-34図 従業者規模別の女性雇用者割合

前図で見た人口密度と規模別の常用雇用者・従

業者割合をもとに、三大都市圏中心市が所在する

都府県と、それ以外の道県で、規模別の常用雇用

者・従業者割合を見たのが第1-1-33図である。

三大都市圏中心市の所在しない道県では、雇用の

約3割を小規模事業者が、5割強を中規模企業が占めている。

また、中小企業・小規模事業者は女性の雇用で

も、重要な役割を担っている。

第1-1-34図は、総務省「就業構造基本調査」を用いて、従業者規模別の雇用者に占める女性雇

用者の割合を示したものである。従業者規模の小

さな企業ほど雇用者に占める女性雇用者の割合が

高いことが分かる。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第4節

35中小企業白書 2013

Page 36: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

1 ~ 4人 5~ 19人 20~ 49人 50~ 99人 100 ~ 299 人 300 人~(%)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

50.0

0702979287

資料:総務省「就業構造基本調査」(注) ここでいう雇用者とは、会社員、個人商店の従業員等、会社、個人、個人商店等に雇われている者のうち、農林業、官公庁、その他

の法人・団体(公社、私立学校等)に雇われている者を除いた者をいう。

(年)

45.645.6 47.147.145.445.4

43.443.446.746.7

41.141.143.643.6

43.643.641.341.3

42.742.7

38.838.841.141.1 41.741.7

39.039.0 38.938.938.938.941.241.2 42.042.0

39.339.338.138.1

37.537.539.939.9

41.141.137.937.9 38.638.6

30.730.733.133.1 34.134.1 34.534.5

36.536.5

第1-1-35図 従業者規模別の雇用者全体に占める女性雇用者割合の推移

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

20.0

300 ~100 ~ 29950 ~ 9920 ~ 495 ~ 191 ~ 4

18.8

13.3 13.2

10.2

5.1

2.4

資料:総務省「平成19年就業構造基本調査」(注) ここでいう管理的職業従事者とは、事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制等、経営体の全般又

は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事する者をいう(官公庁、その他法人・団体に勤めている者は含まれていない)。

(人)

(%)

平均 11.2

第1-1-36図 従業者規模別の管理的職業従事者に占める女性の割合

また、従業者規模別に女性雇用者の割合の推移

を見たものが第1-1-35図である。規模の大きな企業も、徐々に女性雇用者の割合が高くなってき

ているが、従業者規模が19人以下の企業では、20年以上にわたり、雇用者の4割以上が女性であり、女性が活躍し続けている12。

さらに、管理的職業従事者に占める女性の割合

を従業者規模別に見ると、従業者規模が小さな企

業ほど、管理的職業従事者に占める女性の割合が

高くなることが分かる(第1-1-36図)。特に、従

業者が4人以下の企業と300人以上の企業では、女性の管理的職業従事者の割合は7倍以上もの差がある。

12 中小企業白書(2012年版)では、需要の創出・獲得に挑む事業活動として、女性の事業活動を取り上げ、その中で女性の起業と就業が相互に好影響を与える可能性について分析している。また、男女共同参画会議 基本問題・影響調査専門調査会 報告書 p.28、p.29では、女性による起業の効果として「女性個人事業主が新設した事業所の就業者の約9割が、個人事業主である本人を含め女性である」と指摘している。

36 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 37: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

0702979287

1 ~ 4人

5~ 19人

20~ 49人 50~ 99人

100 ~ 299 人

300 人~

(%)

資料:総務省「就業構造基本調査」(注) ここでいう管理的職業従事者とは、事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制等、経営体の全般又

は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事する者をいう(官公庁、その他法人・団体に勤めている者は含まれていない)。

(年)

14.214.2

19.219.2 18.618.6 18.818.8

12.512.514.114.1

15.115.113.313.3

11.411.4

12.212.2 11.811.8 13.213.2

8.38.3 8.38.3 8.88.8 10.210.2

4.44.45.55.5 5.35.3

5.15.11.21.2 1.51.5

19.219.2

13.413.4

12.512.5

10.110.1

4.34.32.22.2 2.02.0

2.42.4

第1-1-37図 従業者規模別の管理的職業従事者に占める女性の割合の推移

また、第1-1-37図は従業者規模別の管理的職業従事者に占める女性の割合の推移を見たもので

ある。規模の小さな企業ほど、管理的職業従事者

に占める女性の割合が高い水準で推移しているこ

とが分かる。

2.中小企業・小規模事業者の財務状況本項では、資金調達、労働生産性に関連して、

中小企業が直面する課題の中長期的な変化等を、

大企業13と比較しつつ、小規模事業者、中規模企

業それぞれについて、見ていく14。

■中小企業・小規模事業者の資金調達に係る財務状況の中長期的な変化第1-1-38図は、製造業、商業・サービス業の企業について、規模別の純資産、固定負債、流動

負債の総資産に対する割合を示したものである。

製造業、商業・サービス業共に、小規模事業者の

純資産の割合が中規模企業、大企業に比べて低い

ことが分かる。一方、長期資金と考えられる純資

産と固定負債の合計割合は、製造業を中心に規模

別で大きな違いは見られない。小規模事業者は、

少ない純資産を固定負債、すなわち、長期借入で

補完することにより、設備投資等の固定資産に見

合った資金調達を行っていることがうかがえる。

13 ここでいう大企業とは、中小企業以外の企業をいう。14 多様な中小企業の活動を平均値、中央値で代表させることには留意が必要であるが、中長期的な趨勢を見ていくためにこのような手法を取っている。なお、中央値とは、ある指標を高低の順番に並べて、その順位が中央に位置する値である。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第4節

37中小企業白書 2013

Page 38: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0% 100%

小規模事業者(n=1,231)

中規模企業(n=1,016)

大企業(n=1,893)

0% 100%

小規模事業者(n=8,442)

中規模企業(n=6,733)

大企業(n=6,491)

流動負債純資産 固定負債

資料:中小企業庁「平成23年中小企業実態基本調査」再編加工、経済産業省「平成23年企業活動基本調査」再編加工(注) 1.ここでいう商業・サービス業とは、小売業、卸売業、各サービス業を総称したものをいう。   2.中規模企業、小規模事業者の数値は平成23年中小企業実態基本調査より、大企業の数値は平成23年企業活動基本調査より算出。

47.262.9

66.1

66.6

59.8

71.0

70.0

19.4 33.4

42.4 20.6 37.1

29.2 36.9 33.9

29.5 30.4 40.2

36.0 35.1 29.0

21.1 48.9 30.0

製造業

商業・サービス業

第1-1-38図 規模別の財務構造

大企業

製造業

中規模企業

小規模事業者

(%) 商業・サービス業(%)

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

大企業

中規模企業

小規模事業者

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

1110090807060504030201009998979695949392919089888786858483

25.625.6

18.718.7

48.048.0

17.017.0

37.137.1

34.434.425.125.1

15.915.914.714.7

38.238.2

20.020.016.416.4

(年)83848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910 11

(年)

資料:財務省「法人企業統計年報」再編加工(注) 1.数値は中央値。   2.各年の数値については、付注1-1-3を参照。

第1-1-39図 規模別の自己資本比率の推移

第1-1-39図は、製造業、商業・サービス業について、各規模の企業の総資産に対する純資産の

比率(自己資本比率)の推移を示したものである。

製造業では大企業、中規模企業が徐々に自己資本

比率を高めている反面、小規模事業者の自己資本

比率は低い水準にとどまっている。規模別の格差

は製造業に比べて小さいが、商業・サービス業で

も、同様の傾向が見られる。これは、小規模事業

者の経常利益率が大企業や中規模企業より低いた

め、内部留保を十分に厚くできないこと、市場か

らの資金調達が難しいこと等が影響していると考

えられる。

38 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 39: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

大企業

中規模企業

小規模事業者

(%)

0

50

100

150

200

250

300

350(%)

0

50

100

150

200

250

300

350製造業 商業・サービス業

小規模事業者中規模企業

大企業

195.3195.3 205.0205.0

103.3103.3

228.0228.0

192.6192.6

188.4188.4159.4159.4

115.1115.1

107.6107.696.196.1

169.3169.3130.3130.3

83848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910 11(年)

83848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910 11(年)

資料:財務省「法人企業統計年報」再編加工(注) 1.固定比率=固定資産/純資産。   2.数値は中央値。   3.各年の数値については、付注1-1-3を参照。

第1-1-40図 規模別の固定比率の推移

このため、大企業や中規模企業では固定比率15

が徐々に低下しているにもかかわらず、小規模事

業者では高い水準で推移している(第1-1-40図)。

一方、固定長期適合率16については、規模にか

かわらず同じような水準にあり、また、小規模事

業者も含めて低下傾向にある(第1-1-41図)。これは、大企業や中規模企業においては、自己資本

比率が上昇したことが主な原因であり、小規模事

業者においては、総資産に対する固定負債比率が

上昇したことが主な原因である。

15 固定比率とは、固定資産額を純資産額で除したものであり、自己資本によって固定資産をどの程度まかなえているかを示す指標。100(%)以下であれば、固定資産の全てを自己資本でまかなえていることを示す。

16 固定長期適合率とは、固定資産額を純資産額と固定負債の和で除したものであり、長期資金によって固定資産をどの程度まかなえているかを示す指標。100(%)以下であれば、固定資産の全てを長期資金でまかなえていることを示す。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第4節

39中小企業白書 2013

Page 40: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

大企業中規模企業

小規模事業者

(%) (%)製造業 商業・サービス業

大企業

中規模企業

小規模事業者

40

50

60

70

80

90

100

110

1110090807060504030201009998979695949392919089888786858483 40

50

60

70

80

90

100

110

1110090807060504030201009998979695949392919089888786858483

62.962.9

70.470.4

69.269.2

66.966.957.057.0

53.853.8

78.478.4

68.068.0

62.962.9

55.655.6

53.453.453.253.2

(年) (年)

資料:財務省「法人企業統計年報」再編加工(注) 1.固定長期適合率=固定資産/(純資産+固定負債)。   2.数値は中央値。   3.各年の数値については、付注1-1-3を参照。

第1-1-41図 規模別の固定長期適合率の推移

■中小企業の労働生産性17に係る財務状況の中長期的な変化最近の労働生産性の状況について、上位10%、下位10%、中央値で、規模の違いを見てみる。第1-1-42図は、労働生産性を規模別に、製造業、商業・サービス業について示したものであ

る。製造業、商業・サービス業共に、企業規模が

大きいほど、労働生産性は高くなる傾向にあるこ

とが分かる。また、小規模事業者のうち、製造業

についてはおおよそ上位10%18、商業・サービス業についてはおおよそ上位20%の企業が、大企業の中央値19を超える高い労働生産性を実現して

いることが分かる。

17 労働生産性とは、一般的に付加価値額を労働投入量で除したものをいうが、労働投入量には、労働時間あるいは労働者数が用いられる。ここでは、労働者数を労働投入量として、労働生産性を算出している。

18 ここでは、100-N パーセンタイルに相当する企業を上位N%、Nパーセンタイルに相等する企業を下位N%と表している。パーセンタイルとはある指標を高低の順番に並べて、その順位が小さい方から数えてN%の順番に相当する値のこと。

19 中央値については、p.37の脚注を参照。

40 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 41: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

大企業(n=1,956)

中規模企業(n=3,386)

小規模事業者(n=1,735)

中央値

下位10%

上位10%

上位20%

製造業(万円/人)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

大企業(n=3,378)

中規模企業(n=4,959)

小規模事業者(n=2,438)

(万円/人) 商業・サービス業

上位10%

中央値

下位10%

5050

360360

900900

278278

638638

1,2651,265

519519

901901

1,5871,587

4444

357357

1,3501,350

767767

204204

579579

1,1031,103

1,6331,633

356356

747747

1,7691,769

1,2321,232

資料:財務省 「平成23年度法人企業統計年報」 再編加工(注) 1.労働生産性=付加価値額/従業者数。   2.付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益。   3.従業者数=役員数+従業員数。

第1-1-42図 規模別の労働生産性の比較

大企業

中規模企業

小規模事業者

(万円/人) (万円/人)製造業 商業・サービス業

大企業

中規模企業

小規模事業者

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1110090807060504030201009998979695949392919089888786858483 0

200

400

600

800

1,000

1,200

1110090807060504030201009998979695949392919089888786858483

643(100)643

(100)

457(100)457

(100)

901(140)901

(140)

638(140)638

(140)

360(111)360

(111)

323(100)323

(100)

562(100)562

(100)

404(100)404

(100)

747(133)747

(133)

579(143)579

(143)

357(121)357

(121)

295(100)295

(100)

(年) (年)

資料:財務省「法人企業統計年報」再編加工(注) 1.数値は中央値。   2.( )の数値は、1983年の各規模の値を100としたときの2011年の数値。   3.各年の数値は、付注1-1-4を参照。

第1-1-43図 規模別の労働生産性の推移

また、労働生産性20を1983年から見ると、製造業、商業・サービス業共に、労働生産性の格差

が、大企業と小規模事業者間だけでなく、中規模

企業と小規模事業者間でも広がっていることが分

かる(第1-1-43図)。

20 労働生産性の推移は名目値を表している。なお、世界通貨基金(IMF)「World Economic Outlook Database, October 2012」によれば、我が国のGDPデフレーターは1983年を100とすると、2011年は95.4となる。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第4節

41中小企業白書 2013

Page 42: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

大企業

中規模企業

小規模事業者

(万円/人)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400(万円/人)製造業 商業・サービス業

大企業

中規模企業

小規模事業者

540(100)540

(100)

368(100)368

(100)

160(100)160

(100)

1,102(219)1,102(219)

770(209)770

(209)

333(208)333

(208)

422(100)422

(100)

248(100)248

(100)

136(100)136

(100)

520(123)520

(123)

345(139)345

(139)

195(143)195

(143)

11 11848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910(年)

8383 848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910(年)

資料:財務省「法人企業統計年報」再編加工(注) 1.数値は中央値。   2.( )の数値は、83年の各規模の値を100としたときの数値。   3.各年の数値は、付注1-1-4を参照。

第1-1-44図 規模別の資本装備率の推移

規模の大小により労働生産性が異なることは以

前から指摘されており、資本装備率21の差が主な

要因であるとの分析がある22。

ここで、1983年から2011年までの各指標の趨勢を見る。製造業では、小規模事業者の資本装備

率を中規模企業、大企業と比較すると、小規模事

業者の数値が低いものの、変化率で見た場合、あ

まり差はない(第1-1-44図)。商業・サービス業では、むしろ、その差は縮小傾向にある23。

一方、同期間において、資本生産性24を見てみ

ると、従来、小規模事業者の方が大企業、中規模

企業よりも高い値であったが、近年、大きく低下

をしている(第1-1-45図)。こうしたことを踏まえると、格差拡大の背景には資本生産性の変動の

寄与が大きいことがうかがえる。

21 資本装備率とは、資本ストック(有形固定資産)を従業者数で除したものであり、従業者一人当たりの設備等の保有状況を示す。一般に、この指標が高いと、生産現場における機械化が進んでいることを示す。

22 中小企業白書(2008年版)p.27では、大企業と中小企業の労働生産性の相違は、おおむね資本装備率の水準の高低で説明できるとの分析がある。23 商業・サービス業を卸売業、小売業、サービス業に分解した生産性の指標は、付注1-1-5を参照。24 資本生産性とは、付加価値額を資本ストック(有形固定資産)で除したものであり、資本ストック1単位が生み出す付加価値額を示す。一般に、この指標が高いと、生産設備を効率的に使用できていることを示す。

42 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan

Page 43: 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in ......第1部 2012年度の中小企業の動向 2013 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 3.0 2.0 1.0 0.0 Ⅰ Ⅱ

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50製造業

大企業

中規模企業

小規模事業者

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50商業・サービス業

小規模事業者

中規模企業

大企業

1.92(100)1.92(100)

1.24(100)1.24(100)

1.14(100)1.14(100)

0.98(51)0.98(51)

0.81(71)0.81(71)

0.79(64)0.79(64)

1.52(100)1.52(100)

1.98(100)1.98(100)

1.32(100)1.32(100)

1.39(105)1.39(105)

1.38(95)1.38(95)

1.32(67)1.32(67)

11 11848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910(年)

8383 848586878889 9091929394959697989900010203 04050607080910(年)

資料:財務省「法人企業統計年報」再編加工(注) 1.数値は中央値。   2.( )の数値は、83年の各規模の値を100としたときの数値。   3.各年の数値は、付注1-1-4を参照。

第1-1-45図 規模別の資本生産性の推移

1980年代には、小規模事業者は、少ない資本ストック、すなわち、少ない設備等で従業者が力

を発揮することで、大企業、中規模企業を超える

高い資本生産性を実現していた。そのため、製造

業、商業・サービス業共に、大企業との資本装備

率格差が3倍以上あったにもかかわらず、労働生産性の格差は2倍以内であった。しかし、経営課題が複雑化していく中で、小規

模事業者の資本ストック当たりの売上高が著しく

低下し、資本生産性も大きく低下した。このた

め、資本装備率は大企業とおおむね同水準で伸び

たものの、労働生産性の向上が大企業ほどは進展

していない状況をもたらしている25。

小規模事業者が労働生産性を高めるためには、

資本ストック(設備等)の蓄積を行うことで、資

本装備率を更に高めていくと同時に、売上を伸ば

す、売上当たりの付加価値額を高めることで、資

本生産性の低下に歯止めを掛けることが重要であ

る。

25 第2部第4章では、小規模事業者の経営課題解決のための情報技術の活用が進んでいない状況を明らかにしており、このことが小規模事業者の資本生産性向上の遅れの背景の一つであると考えられる。

第 1 部2012年度の中小企業の動向

第4節

43中小企業白書 2013