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2016年版 中小企業白書概要 平成28年4月 中小企業庁調査室

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Page 1: 2016年版 中小企業白書概要 - Minister of Economy, …...2016 年版中小企業白書について 中小企業白書 1.現状分析 我が国経済の動向 中小企業・小規模

2016年版 中小企業白書概要

平成28年4月

中小企業庁調査室

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概要 中小企業基本法第十一条に基づく年次報告書(法定白書)。 毎年、中小企業政策審議会の意見を聴いた上で、中小企業の動向に関する報告を国会に提出することが義務付けられている。 中小企業基本法の制定以降、2016年版で53回目の年次報告。

1

中小企業基本法(抄) (年次報告等) 第十一条 政府は、毎年、国会に、中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2政府は、毎年、中小企業政策審議会の意見を聴いて、前項の報告に係る中小企業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

大企業 約1.1万者0.3%

中小企業基本法の定義と企業数、従業者数

中規模企業 約55.7万者 14.6%

小規模事業者 約325.2万者 85.1%

中小企業 380.9万者 99.7%

(資料)「平成26年経済センサス-基礎調査」再編加工

中小企業 うち 小規模事業者

業種 資本金 または 従業員 従業員 製造業 その他 3億円以下 300人以下 20人以下

卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下

サービス業 5,000万円以下 100人以下 5人以下

小売業 5,000万円以下 50人以下 5人以下

企業数 従業者数

大企業 1.1万者 1,433万人

中小企業 380.9万者 3,361万人

うち小規模 事業者 325.2万者 1,127万人

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2016年版中小企業白書について

中小企業白書

1.現状分析 我が国経済の動向 中小企業・小規模事業者の動向 中小企業の生産性

4.中小企業の稼ぐ力 稼げる中小企業の特徴分析

支援

2.稼げる中小企業の取組 生産性向上のためのIT活用 売上拡大のための海外展開 稼ぐ力を支えるリスクマネジメント

中小企業の稼ぐ力を決定づける経営力

3.中小企業を支える金融

• 中小企業・小規模事業者の景況が緩やかな回復基調にある中、国内市場の縮小、人材不足、設備の老朽化など、様々な環境変化や課題も顕在化。

• 中小企業白書では、こうした状況の中、稼ぐ力を強化し、「多様で活力ある成長発展」を目指す中小企業の取組について分析する。

2

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1.現状分析 (1)企業収益、景況感 中小企業の経常利益は過去最高水準となり、景況感も改善傾向にあるが、売上高は伸び悩んでいる。

3

(資料)図1,2:財務省 法人企業統計季報 (注)後方四半期移動平均。中小企業とは資本金1千万円以上1億円未満、大企業とは資本金10億円以上の企業をいう。 図3:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」、中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」 (注)1. 短観の業況判断DIは、最近の業況について、「良い」と答えた企業の割合(%)から「悪い」と答えた企業の割合を引いたもの。 2. 景況調査の業況判断DIは、前期に比べて、業況が「好転」と答えた企業の割合(%)から、「悪化」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。 3. 日銀短観では、大企業とは資本金10億円以上の企業、中小企業とは資本金2千万円以上1億円未満の企業をいう。

景況感(業況判断DI)の推移 図3 経常利益の推移 図1

5.2

9.9

0

2

4

6

8

10

12

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

07 08 09 10 11 12 13 14 15

中小企業 大企業 (兆円)

(期)

(年)

139

126

120

130

140

150

160

170

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

07 08 09 10 11 12 13 14 15

(兆円)

(期)

(年)

売上高の推移 図2

中小企業 大企業

▲ 18.1

1.0

13.0

▲ 60.0

▲ 50.0

▲ 40.0

▲ 30.0

▲ 20.0

▲ 10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

中小企業(景況調査)

中小企業(短観)

大企業(短観)

(DI、%ポイント)

(期)

(年)

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中規模→大企業 大企業→中規模 中規模→小規模 小規模→中規模

廃業 開業 その他

366 334 325

54 51 56

2009 2012 2014

小規模事業者 中規模企業 (万者)

1.現状分析 (2)中小企業の数 中小企業の数は381万者となり、うち中規模企業の数は56万者、小規模事業者は325万者。中小企業全体の減少ペースは緩やかとなった。

4

(資料)図1,2:総務省「経済センサスー基礎調査」 総務省・経済産業省「平成24年経済センサスー活動調査」再編加工 (注)企業数=会社数+個人事業所(単独事業所及び本所・本社・本店事業所)数。(注)1.平成26年と平成24年の経済センサスを用い、平成26年又は平成24年どちらかでのみ企業情報が確認された企業のうち、全ての事業所が「開業」したとされている企業を「開業」と見なし、全ての事業所が「廃業」とされているものを「廃業」とみなす。これらの分類に当てはまらなかった企業については「その他」とする。2.集計上、事業所移転等の理由により、開廃業数が実際より多く算出されている可能性がある。

中小企業数の推移 図1 中規模企業数の変化の内訳(2012年→2014年) 図2

増加

減少

中規模企業 4.7万者 増加

開業 +7.2万者

小規模→中規模 +6.8万者

廃業 ▲ 4.8万者

中規模→小規模 ▲ 6.3万者

その他 +1.8

大企業→中規模 +0.1万者

中規模→大企業 ▲ 0.1万者

中小企業 420万者 中小企業

385万者 中小企業 381万者

▲4万者

+5万者

▲9万者

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1.現状分析 (3)収益増加の背景 中小企業における2009年から2015年にかけての経常利益の変化を要因別にみると、①売上高の減少、②変動費の減少(原材料・エネルギー価格の低下等が背景の一つ)、③人件費の減少(企業数や従業員数の減少が背景の一つ)が主なものであり、全体としては2.5兆円の増加となった。

5

(資料)図1:財務省「法人企業統計年報」 (注)1.大企業は、資本金10億円以上の企業とし、中小企業は、資本金1000万円以上1億円以下の企業とする。 図2:IMF「Primary Commodity Prices」 (注)1.1次産品価格指数は、食料品、金属、エネルギー(石油)等の商品価格を、2002年から2004年の輸出金額の平均をウェイトに指数 化したもの。 2.食料品は、穀物、植物油、食肉、砂糖、果物等。 3.金属は、銅、アルミニウム、鉄、錫、ニッケル、鉛等。4.エネルギーは、原油、天然ガス、石炭。図3:総務省「労働力調査」

規模別雇用者数の推移 図3

一次産品価格の推移 図2

1735万人

1523万人 1252万人

1565万人

600

1,100

1,600

2,100

96 00 05 10 15

1~29人 30~99人 100~499人 500人以上

(万人)

(年)

42.3 0

100

200

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10

11 12 13 14 15

1次産品価格指数(全1次産品) 1次産品価格指数(エネルギー) 1次産品価格指数(食料品) 1次産品価格指数(金属)

(月) (年)

(2005=100、 ドル/バレル)

大企業 中小企業

2009年と2015年を比較した場合の 経常利益の増加額(要因別) 図1

売上高要因 +2.0兆円

売上高要因 ▲0.9兆円

変動費要因 +2.2兆円

変動費要因 +1.7兆円

減価償却費要因 +1.3兆円

営業外損益要因 +1.1兆円

(計+6.7兆円) (計+2.5兆円)

人件費要因 +1.6兆円

営業外損益要因 +0.04兆円 減価償却費要因

+0.1兆円

人件費要因 +0.02兆円

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▲ 11.4 ▲ 14.8

-20

-15

-10

-5

0

5

10

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

11 12 13 14 15 16

製造業 非製造業 (%p)

(期)

(年)

5.4

2.8

0

2

4

6

8

10

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

大企業 中小企業

(兆円)

1.現状分析 (4)人手不足と設備老朽化 中小企業でも賃上げは行われているが、人手不足感が強まっている。また、設備投資も伸び悩み、中小企業の設備の老朽化が進む。こうした状況を踏まえれば、経常利益が過去最高水準にある今こそ、省力化・合理化や売上拡大等を通じて稼ぐ力を高める必要がある。

6 (資料)図1:厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」 (注)すべて若しくは一部の常用労働者を対象とした定期昇給、ベースアップ、諸手当の改定等をいい、ベースダウンや賃金カット等

による賃金の減額も含む。図2:(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」 ,図3:財務省「法人企業統計」 (注)ここでいう大企業とは資本金10億円以上の企業、中小企業とは資本金1千万円以上1億円未満の企業とする。図4:財務省「法人企業統計調査年報」より(一財)商工総合研究所「中小企業の競争力と設備投資」を基に作成。

設備投資額の推移 図3

設備年齢の推移(規模別、1993年=100) 図4

100 大企業 143.4

1993年 2014年

中小企業 175.7

約1.4倍 老朽化

約1.8倍 老朽化

(期) (年)

設備投資額は、リーマン・ショック前の水準に届いていない

中小企業の設備年齢は、 1993年と比べて、 約1.8倍老朽化

賃上げ(一人平均賃金の改定率) 図1

2.2

2.0 1.8

1.6

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

10 15

5000人以上 1000-4999人

300-999人 100-299人

(前年比、%)

規模が小さい企業の方が 賃上げ率が低い

(年)

従業者数過不足DI 図2

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中小企業の中にも、生産性の高い、稼げる企業は存在する。こうした企業は、成長投資に積極的に取り組んでいると考えられるため、その投資行動や資金調達等の特徴について分析する。

1.現状分析 (5)中小企業の生産性

資料:図1,2:「平成26年企業活動基本調査」再編加工(注)1.従業員数50人未満もしくは資本金又は出資金3000万円未満の会社は含まない。 2.労働生産性(従業員一人あたり付加価値額)の分布割合を10万円/人毎に集計し、累積を計上したもの。

労働生産性の累積分布 労働生産性の高い中小企業の特徴(平均値) (例:小売業)

図1 図2

生産性の高い中小企業は、設備投資やIT投資等に積極的で、一人あたりの賃金が高い傾向にあることがうかがえる。 そこで、稼げる中小企業がどのような成長投資等を行っているのか、分析していく。

0102030405060708090

100

0 1.5 3 4.5 6 7.5 9 10.5 12 13.5 15 16.5 18 19.5

大・製造 中小・製造

(%)

構成比 (%)

資本金 (百万円)

従業員数 (人)

設備投資額

(百万円)

情報処理・通信費

(百万円)

従業員一人当たり人件費

(百万円)

資本装備率

(百万円/人)

大企業小売業平均以上中小企業

(n=383)

25.9 43.0 224.3 338.6 34.6 5.1 26.7

大企業小売業平均以下中小企業

(n=1,095)

74.1 42.2 350.0 97.8 17.4 2.4 15.2

中小小売業全体

(n=1,478) 100 42.5 306.0 182.0 23.4 3.7 19.2

0102030405060708090

100

0 1.5 3 4.5 6 7.5 9 10.5 12 13.5 15 16.5 18 19.5

大・非製造 中小・非製造

(%)

大企業非製造業平均 (899万円)

大企業製造業平均 (1,171万円)

製造業では、約1割の中小企業が大企業平均以上

非製造業では、約3割の中小企業が大企業平均以上

(百万円/人)

(百万円/人)

高 低 生産性

1割

3割

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43.3 39.8

26.3 25.7 25.7 19.3

7.0 4.7

ITを導入 できる人材がいない

導入効果が

分からない、評価できな

コストが負担できない

業務内容にあったITがない

社員がITを使いこなせない

適切なアドバイザー等がいない

個人情報漏えいの恐れがある

技術・ノウハウ流出の恐れがある

(%)

(n=171)

中小企業の課題の中には、自社の経営状況の的確な把握など、IT活用が解決策となり得ると考えられるものもあるが、人材不足や効果がわからないこと等を背景にIT投資が進んでいない。 それに対し、高収益企業では、IT投資により、営業力強化や売上拡大等の効果を得ている。

2.稼げる中小企業の取組 (1)IT投資①

(資料)図1:中小企業庁委託「平成24年度中小企業の会計に関する実態調査」((株))帝国データバンク)、図2:写真は第4回 FinTech研究会 資料3から引用、 図3,4:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク)、 8

16.5

10.0

28.3 16.8

20.1

7.9

0.3 納品書、請求書、領収書等の作成・保管までを社内、後は会計専門家に外注 仕訳伝票の起票までを社内、あとは会計専門家に外注 記帳までは社内、決算特有の仕訳等の処理は会計専門家に外注 総勘定元帳の作成まで社内、財務諸表の処理と税務申告は会計専門家に外注 財務諸表の作成まで一貫して社内、税務申告は会計専門家に外注 財務諸表の作成、税務申告まで一貫して社内で実施 その他 (n=1,266)

図2 ITを十分に活用できていない 中小企業では、 パソコンは一人に1台もなく、 事務所は伝票の山で…

…メモ用紙で情報伝達する ためにミスが生じ、 間違い探しも伝票の山から、 というケースも少なくない。

ITを十分活用できていない中小企業のイメージ

自社の経営状況を適切に把握できていない企業も一定数存在 中小企業の会計管理方法 図1 IT投資を行わない理由 図3

IT投資の効果 図4

①守りのIT投資の効果 ②攻めのIT投資の効果

47 33

18

50 33.5 33.5

39.8 31.1

18.1

42.2

24.6 20.1

業務プロセスの合理化・意思決定の迅速化

利益率・生産性の向上

在庫圧縮・省材料化

営業力・販売力の強化

売上の拡大 業務プロセスの合理化・意思決定の迅速化

高収益企業 低収益企業

(①n=540、②n=206) (①n=508、②n=199)

特に、攻めのIT投資の効果については、差がある

(%)

(%)

(%)

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高収益企業は、各事業部門、従業員から現場の声を聞き、研修も行い、業務プロセスの高度化なども同時に進め、人手不足の中でも外部機関をうまく活用しながら、IT投資を計画的に実施している。

2.稼げる中小企業の取組 (1)IT投資②

(資料)図1,2:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク) 9

IT導入を収益拡大につなげるための取組 図2

65.9 58.7

49.3 48.5 37.6

22.0

43.2 55.0

28.3 26.1 19.1 15.2

業務プロセス・社内ルールの見

直し

目的・ビジョンの明示

各事業部門、従業員からの声

の収集

計画・戦略策定

IT・業務改善等についての社員教育・研修の

実施

外部専門家・支援機関の活

高収益企業 低収益企業

(%)

稼げる企業は、IT導入に伴い、従業員とコミュニケーションをとり、業務プロセスの見直し等を行っている割合が高い。

図1

24 12 14

74

11 23 13 17

71

9

電子商取引 (BtoB)

電子商取引 (BtoC)

SNS HP 海外向けHP

高収益企業 低収益企業

(n=803) (n=758)

収益力別 IT導入状況

IT活用企業の中では導入状況に顕著な差はないが…

(n=542) (n=329)

【事例】株式会社オオクシ(千葉県千葉市)

同社の理容室

POSシステム導入による顧客データの収集・分析と 人材育成により、リピート率向上と売上拡大を実現

千葉県を中心に全39店舗の理美容店を展開している。全店舗にPOSシステムを導入しており、従業員情報、顧客情報をはじめとした各種データの管理・分析を行っている。

各種データの分析により、各店の売上、繁閑状況、顧客のリピート率等、問題発見に繋がる情報の把握・見える化を進めるとともに、従業員の技術力向上を図る人材育成に取り組み、顧客満足度の向上を実現。

「数字」が従業員を追い詰めないように、風通しのよい職場環境づくりを目指して、毎年年度方針を策定し、会議を通して全従業員と経営方針を共有している。

同システムの導入により、全店 平均で約85%という高い再来 店率を実現し、売上高も10年 以上に二桁成長を達成している ほか、従業員定着率は 96%となっている。

(%)

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国内市場が縮小し、また、海外の中間層・富裕層が増加する中、海外需要の獲得は重要。現状、中期的にみれば、海外展開を行う中小企業は増加傾向。こうした企業は、生産性向上や国内従業者の増加を達成している。

2.稼げる中小企業の取組 (2)海外展開①

10

中小製造業における直接輸出企業数 図1 規模別・業種別の直接投資企業数 図3

(資料)図1:経済産業省「工業統計表」、総務省・経済産業省「平成26年経済センサス-基本調査」再編加工、 図2:総務省「事業所・企業統計調査」、「平成21年、26年経済センサスー 基礎調査」再編加工、 図3:経済産業省「企業活動基本調査」再編加工 (注)ここでいう輸出実施企業とは、2001年度から2013年度まで継続して輸出を行っている企業を、輸出 非実施企業とは一度も輸出を行っていない企業。 図4:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク)

4,342

3,568 4,603

4,702 4,838

5,348 6,196

6,303 5,937

5,920 6,336

6,302 6,397

1.5 1.4

1.7 1.9 1.9

2.3 2.7 2.7 2.8 3.0 3.0

3.3 3.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

直接輸出中小製造業企業数(左軸) 中小製造業全体に占める割合(右軸) (%)

(年)

(社)

2,013 2,944 2,869 3,221

1,019

1,366 1,298 1,406

125

142 147 129

986

1,343 1,316 1,590 1,931

2,416 2,347 2,418

01 06 09 14

中小製造業 中小卸売業 中小小売業 その他中小企業 大企業

(社)

(年)

中小企業 4,143 68.2%

5,795 70.6%

5,630 70.6%

6,346 72.4%

(6,074)

(8,211) (7,977) (8,764)

輸出実施企業と輸出非実施企業の労働生産性 (中小製造業) 図2 海外展開投資別に見た国内従業者数の変化 図4

19

19

21

19

80

70

76

76

1

11

2

4

輸出(n=591)

直接投資(生産拠点) (n=228)

直接投資(販売・サービス 拠点)(n=203)

インバウンド対応(n=72)

増加した 変化はない 減少した

101

108 115

119

128 129

113

95

112 114 112 113

100 100 101 104 105

112 112

104 97 103 104 104 104

90

100

110

120

130

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

輸出実施企業(n=897) 輸出非実施企業(n=3,353) (2001年度=100)

(年)

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高収益企業は、マーケティングや計画策定を進め、外国人も含めた人材の確保・育成を行いつつ、モニタリングを通じてリスクにも備えながら、海外展開により売上拡大等を達成している。

2.稼げる中小企業の取組 (2)海外展開②

11 (資料)中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク)

58 52

43 42

31

20 19

45 43

31 32

21

11 13

海外展開投資の目的・ビジョンの明示

海外展開に向けての計画の策定

海外展開投資による効果の予測

外国人人材の採用

海外展開を主導できる日本人人材の採用

海外展開の段階的な実行・導入後の国内・現地モニタリン

海外展開にかかる社員教育・研修の実施

高収益企業 (n=170)

低収益企業 (n=152)

(%)

海外展開を収益拡大につなげるための取組 図1 【事例】 WILLER TRAVEL株式会社(大阪府大阪市) 訪日外国人旅行客を対象とした商品企画、マーケティングにより

インバウンド需要を獲得し、売上拡大

高速バス等による旅行サービスを提供するWILLER ALLIANCEグループのうち、インターネットによる旅行予約をメインとしたポータルサイトの運営と、WEBマーケティングを担当している。

訪日外国人旅行客が増加し始めた2009年から、他社に先駆けてITを活用した受入体制の構築を開始。訪日外国人旅行客専用の商品の開発、自社予約サイトの多言語対応、オンラインクレジット決済システム導入、バスターミナルや社内での多言語アナウンスのほか、外国人スタッフも配置。インターネットをメインとすることで、コールセンターの設置など、通常の旅行会社で必要な費用を大幅に抑えることができた。

これらの取組を行う上で、訪日外国人旅行客対応のビジョンと事業計画を策定。ビジョンは全従業員に周知、共有し、事業計画は、毎月見直しを行いながら、インバウンド対応の取組を進めた。

その結果、2014年の利用客 年間7万人に対し、2015年は 年間15万人と倍増。 今後も更なる成長が期待される。

同社の高速バス

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自然災害の頻発やIT導入に伴う情報セキュリティの必要性の高まりにより、大企業はリスクへの対策を進めているが、中小企業におけるBCP策定率は15%と中小企業の取組は遅れている。

2.稼げる中小企業の取組 (3)リスクマネジメント①

12 (資料)図1:ルーバン・カトリック大学疫学研究所「災害データベース(EM-DAT)」から中小企業庁作成、図2:中小企業庁委託「中小企業のリスクマネジメントへの取組に関する調査」(2015年12月、 みずほ総合研究所(株) 図3:経済産業省「情報処理実態調査」再編加工

BCP策定状況(中小企業、従業員規模別) 図2

15 8 27 28

9 7 12 16 11 10 12 15

64 75

49 41

全体 (n=3,158)

100人以下 (n=1934)

101~300人 (n=994)

300人以上 (n=230)

策定済み 現在策定中 策定する計画がある 策定していない

中小企業の策定率はわずか15%。また、100人以下の企業では8%の企業しか策定していない。

※BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、企業が自然災害、テロ等の緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限にとどめつつ、事業の継続・早期復旧を可能とするために、 平常時に行うべき活動や緊急時における対応を取り決めておく計画のこと。

情報セキュリティトラブルの被害額(中小企業、売上規模別) 図3

30.6

55.9

31.0 30.3 23.1

4.4

8.8

7.1 1.6

7.7

0.5 0.2 0.9

9.1

2.9

9.5 7.0 13.7

55.4

32.4

52.4 60.5 54.7

全体 ~10億円以下 (n=31)

10億円超 ~ 20億円以下

(n=39)

20億円超 ~ 100億円以下

(n=182)

100億円超 ~ (n=108)

50万円未満 50~200万円 200~400万円 400~600万円 600~800万円 800~1,000万円 1,000万円以上 わからない 発生しなかった

中小企業の約35%が、なんらかのセキュリティトラブルの被害にあっており、 また、特に、規模の小さな企業では約65%の企業が被害にあっている。

日本の自然災害発生頻度及び被害状況 図1

9 17 8 79

1,137

185 497

180

2,208

12

20 24

17

28 24

37

23

39

0

10

20

30

40

50

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1971-1975

1976-1980

1981-1985

1986-1990

1991-1995

1996-2000

2001-2005

2006-2010

2011-2015

被害額(左軸) 発生件数(右軸) (億ドル) (件)

(%)

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稼げる中小企業はリスクへの対策を行い、業務の効率化や人材育成、売上の拡大にもつなげている。平時の経営改善の一環として、積極的に取り組むことが必要。

2.稼げる中小企業の取組 (3)リスクマネジメント②

13 (資料)中小企業庁委託「中小企業のリスクマネジメントへの取組に関する調査」(2015年12月、みずほ総合研究所(株)

平常時におけるBCMの効果 図1

53.6

31.7 28.9

21.1

15.0 14.7

7.9

2.0 1.5

経営資源の把握

人材育成 経営陣と従業員間のコミュニケーションの改善

取引先との取引状況の把握

業務効率化・工程改善

販売先との関係強化

仕入先との関係強化

資金繰り改善

新規取引先先の開拓

(%) (n=394)

取り組んだ場合には、平時の経営改善に大きな効果。

※BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)とは事業継続事計画を策定し、継続的に運用していく活動や管理の仕組みのこと。

【事例】大成ファインケミカル株式会社(千葉県旭市)

BCMにより平常時の経費削減を実現

溶液型のアクリル樹脂メーカー。オーダーメイドで樹脂を設計し、顧客の試作開発から量産品立ち上げまでを支援。

以前からBCPの取組を進めていたが、東日本大震災では操業を1ヶ月停止。サプライヤーとしての責務を果たすため、東京都の支援事業を通じて民間コンサルティング会社からの指導を受け、BCPを新たに策定。

事業継続策として、倉庫の分散、1.5ヶ月分の在庫確保、自家発電装置の導入等を実施。また、被害低減策として、ネットワーク管理サーバとファイルサーバを、震度7クラス対応外部施設へ移設し、運用を外部のデータセンターに 委託した結果、年間100万円弱の 運用コスト削減を実現。

BCMの取組がメディアに取り上げられ、 注目度が高まったほか、金融機関、 保険会社からの評価も上がり、結果 として受注増につながっている。

<震災後導入した発電機>

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中小企業が成長投資を進めるためには資金供給が必要。現状、中小企業の資金繰りや、中小企業に対する金融機関の貸出態度は改善傾向にある一方で、金融機関から中小企業への貸出は、大企業ほど伸びてない。

3.中小企業の成長を支える金融 (1)金融機関からの貸出状況

14

資金繰り・金融機関からの借入難易度の推移 図1 企業規模別に見た金融機関からの貸出の推移 図2

資料:図1:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」 (注)1.ここでいう大企業とは資本金10億円以上の企業、中小企業とは資本金2千万円以上1億円未満の企業をいう。 2.資金繰りDIは、最近の資金繰りについて「楽である」と答えた企業の割合(%)から「苦しい」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。 3.金融機関の貸出態度DIとは、最近の金融機関の貸出態度について「緩い」と答えた企業の割合(%)から「厳しい」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。 図2:日本銀行「金融経済月報」 (注)1.貸出には信託勘定、海外店勘定も含む。 2.国内銀行のみを集計している。

6

22

16

27

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

93 96 99 02 05 08 11 14 15

資金繰りDI (中小企業)

資金繰りDI (大企業)

金融機関の貸出態度DI (中小企業)

金融機関の貸出態度DI (大企業)

(DI=%p)

(年)

68.3

72.3 72.5

95.0

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

93 97 02 07 12

中小企業 大企業

(年)

(1993年第2四半期=100)

15

リーマン・ショック

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37.8 53.7 100.6 99.3 45.8 48.0 58.2 97.2

217.3 204.0

170.8

287.2

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2005年 2014年 (兆円)

(630.5) (789.5)

85.7 107.9 91.0 87.0 46.9 46.7 42.9 47.9 204.2 213.2 70.1 76.4

現預金 売掛債権 棚卸資産 流動資産その他 有形固定資産・無形固定資産 投資等その他

①中小企業

②大企業

近年、大企業は、内部留保のみならず、金融機関借入、増資等を活用し、海外を中心とした関係会社への投資等を進めた。一方、中小企業では、金融機関借入れは増加せず、設備投資等も小幅な増加に留まった。

3.中小企業の成長を支える金融 (2)金融機関借入が増加しなかった背景

15 (資料)財務省「法人企業統計年報」再編加工 (注)資本金1億円未満の企業を中小企業、資本金10億円以上の企業を大企業としている。

75.8 68.6

177.8 172.3

73.6 67.7

101.4 88.4

49.7 51.7

62.6 130.4

0

100

200

300

400

500

600

2005年 2014年 (兆円)

(579.1) (540.8)

(資産の部) (負債・純資産の部) 利益剰余金他 資本金,資本準備金 その他の債務 金融機関以外からの借入 金融機関借入 仕入債務

85.7 107.9

91.0 87.0 46.9 46.7 42.9 47.9

204.2 213.2

70.1 76.4

0

100

200

300

400

500

600

2005年 2014年 (兆円)

(579.1) (540.8) +7.1%

+9.0%

+4.4%

+25.9%

+25.2%

▲6.1%

+42.1%

+7.1%

+108.3%

▲3.1%

80.1 71.3

151.0 183.5 23.0

36.3 129.6

146.0 117.8

172.1 129.0

180.2

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2005年 2014年 (兆円)

(630.5) (789.5) +25.2%

+39.7%

21.5%

• 設備投資(有形・無形固定資産)と関係会社への出資金等(投資等その他)は小幅に増加

• 現預金は大幅に増加 • 資産は小幅に増加

• 設備投資は減少 • 関係会社への出資金等は大幅に増加

• 現預金は大幅に増加 • 資産は大幅に増加

• 金融機関からの借入は減少

• いわゆる内部留保(利益剰余金)は大幅に増加

• 金融機関からの借入も内部留保も資本金も大幅に増加

+68.1%

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17.2 35.4

11.8

41.8

83 86 89 92 95 98 01 04 07 10 13

中小企業 大企業

(%)

(年)

3.05

4.90

4.45 4.53 4.45 4.41

2.59

3.45 3.18

3.64 3.26

2.92

4.32 4.80

5.05

5.63 5.15

4.89

10年以下 11年以上 ~20年以下

21年以上 ~30年以下

31年以上 ~40年以下

41年以上 ~50年以下

51年以上

無借金企業 借入のある企業全体 借入のある企業 (負債比率下位25%)

(%)

金融機関借入のない無借金企業が増加傾向だが、無借金企業はある程度借入れのある企業よりも利益率が低くなる傾向。それは、無借金企業が投資に積極的でないことや金融機関を含めた外部との関係が希薄であることによるものと考えられ、こうした企業も賢く資金を調達し、成長に向けた投資を検討すべき。

3.中小企業の成長を支える金融 (3)無借金企業の現状と課題

16

設立年数、借入状況別に見た経常利益率 図2

設立年数、借入状況別に見た投資比率 図3

(資料)図1:財務省「法人企業統計年報」再編加工 (注)ここでいう無借金企業とは、当期末に金融機関からの借入がない企業。 図2,3:経済産業省「平成26年企業活動基本調査」 (注)1.経常利益率が▲100%以上~100%未満の企業の経常利益率の平均値を集計している 2.負債比率下位25%とは、金融機関から借入のある企業のうち、負債比率(総資産に占める金融機関借入の割合)が下位25%の企業をそれぞれ集計している。ここでいう投資比率とは、総資産に占める設備投資額(有形固定資産と無形固定資産の合計)の割合を指す。 図4:中小企業庁委託「中小企業の資金調達に関する調査」(2015年12月、みずほ総合研究所(株))

3.77

3.08 2.97 2.71

3.15

2.43

4.81

3.81 3.43

3.02 2.99 2.63

10年以下 11年以上 ~20年以下

21年以上 ~30年以下

31年以上 ~40年以下

41年以上 ~50年以下

51年以上

無借金企業 借入のある企業全体 (%)

企業規模別に見た無借金企業の割合 図1

29.0

9.9

34.8

14.6

13.9

11.4

9.5

11.6

5.2

8.4

7.6

44.1

0% 100%

借入のある企業

無借金企業

1ヶ月に2回以上 1ヶ月に1回程度 3か月に1回程度 半年に1回程度 1年に1回程度 ほとんどない

メインバンクとの面談頻度 図4

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中小企業にとっては、金融機関は最大の資金調達先。金融機関は今後、事業性評価に基づく融資に重点を置く考えであるが、現状は、財務内容、会社や経営者の資産余力を評価している。事業性評価に基づく融資を実現するためには、まずは企業が今後の事業計画等を積極的に伝えていくことが重要である。

3.中小企業の成長を支える金融 (4)資金調達手法

17

成長のための課題解決に必要な資金の調達先 図1

金融機関が現在重視している融資手法と 今後重点を置きたい融資手法 図2

23 20 7

86

7 2 1 2

45

25 23 19

1 1 1 7

内部留保 経営者等の個人資金

親会社・関係会社からの借入

金融機関からの借入

私募債 金融機関以外からの借入

出資(増資)

その他

借入のある企業 (n=2,876)

無借金企業 (n=1,073)

(%)

内部性の高い先 外部性の高い先

(資料)図1~3:中小企業庁委託「中小企業の資金調達に関する調査」(2015年12月、みずほ総合研究所(株)) (注) 上位5つまでを集計している。

39

86

51 60

12 13 2 8

25 10

61 50 49

41

代表者等の保証による融資

信用保証協会の保証付融資

不動産を担保とする融資

事業性を評価した担保・保証によらない融資

売掛債権の流動化による融

動産担保による融資

知的財産担保による融資

重点を置いて取り組んでいる融資手法 今後重点を置きたい融資手法

(%) (n=2,996) (n=2,744)

金融機関が担保・保証以外に評価している項目 図3

99.0 94.1

76.9

63.8 59.4

48.5

21.4 21.6

8.4 2.7

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事業性評価に積極的な金融機関は、企業のニーズに応えるため外部機関との連携にも取り組み貸出案件拡大等の効果を得ている。金融機関は、中小企業から相談を受けることが多い士業等専門家等の関係者と連携を深め、事業性評価に基づく融資や企業の成長に向けた非金融面での支援を実施していくことが重要。

3.中小企業の成長を支える金融 (5)支援体制の強化

18

事業性評価に基づく融資への取組状況別に見た 貸出判断能力の向上に向けた取組とその効果 図1

75

57

33 28

8

30

64

22

2

63

42

21 18 5

19

54

19 7

既往取引先の貸出案件拡大につながった

既往取引シェア拡大につながった

預金の増大等、貸出以外のサービスの拡大につながった

既往取引先の格付が向上した

貸出利鞘の適正化につながった

不良債権の抑制に効果があっ

新規取引先の獲得につながった

具体的な効果は表れてないが競合他行との差別化ができた

効果はほとんど感じられない

事業性評価を現在重点的に取り組む金融機関

事業性評価を現在重点的に取り組んでいない金融機関

91 89

60

34 18

50

91 81

54

25 11

35

財務内容分析に 関する教育

経営内容把握に 関する教育

顧客折衝に 関する教育

業界動向に関する 情報収集・分析を 行う部署の設置

技術動向に関する 情報収集・分析を 行う部署の設置

業界・技術に関する 外部専門家・機関

との連携

事業性評価を現在重点的に取り組む金融機関 事業性評価を現在重点的に取り組んでいない金融機関

(%) ①貸出判断能力の向上に向けた取組

②得られた効果

(資料)図1,2:中小企業庁委託「中小企業の資金調達に関する調査」(みずほ総合研究所(株))、「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(株式会社帝国データバンク)

リスクテイク行動をとる上で 相談する相手 図2

60.2

44.0

30.8

25.8

17.5 16.3

税理士・会計士等

金融機関

従業員 コンサルタント

販売先 業界団体

(n=1,809)

(n=1,181)

(n=1,800)

(n=1,171)

(n=2,091)

(%)

(%)

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稼げる中小企業の特徴をみるため、中小企業を利益率と自己資本比率の観点から分類し、分析した。利益率では中小企業の二極化が進んでいる。

4.中小企業の経営力 (1)収益性

19

【企業分類】※

①稼げる企業 ②経常利益率の高い企業 ③自己資本比率の高い企業 ④その他の中小企業

分類のイメージ 図1

自己資本比率の平均

経常利益率の平均 (大企業

の平均)

③ ①

(大企業 の平均)

41.0%

② ④

4.0%

(19.0%)

(10.3%)

(24.0%)

(46.7%)

※大企業の平均経常益率(4.0%)および平均自己資本比率(41.0%)を軸とし、中小企業約1万社における2011年から2013年にかけての3年分の平均値を基に分類を行った。

売上高経常利益率の推移 図2

7.41

6.12

9.35

3.93

2.14

8.16

3.61

0.75 1.41

1.68

▲ 0.21

1.12

▲ 2

0

2

4

6

8

10

12

04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

稼げる企業(①) 経常利益率の高い企業(②)

自己資本比率の高い企業(③) その他の中小企業(④)

(%)

(年度) (資料)図1,2:「平成26年企業活動基本調査」再編加工(注)従業員数50人未満もしくは資本金又は出資金3000万円未満の会社は含まない。

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実際の投資行動に着目すると、高収益企業は、積極的に投資しており、情報セキュリティなどのリスクへの対応も進んでいるが、低収益企業には投資に保守的な傾向が見られる。

4.中小企業の経営力 (2)投資

20

売上高固定資産取得額割合の推移 図1 売上高情報化投資割合の推移 図3

売上高能力開発費割合の推移 図2 リスクへの対策状況 図4

(資料)図1~4:経済産業省「企業活動基本調査」再編加工、中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク)

50.4

54.4

60.0 59.6

39.3

44.1

35

40

45

50

55

60

65

04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

稼げる企業(①) 経常利益率の高い企業(②) 自己資本比率の高い企業(③)

(%)

(年度)

0.13

0.09 0.11

0.06

0.07

0.05 0.03

0.05

0.07

0.09

0.11

0.13

06 07 08 09 10 11 12 13

(%)

(年度)

36

52 55 46

61

32

52 46

40

56

27

46 45 37

56

自然災害 施設、設備の事故・故障

情報セキュリティ コンプライアンス違反

商品の品質

稼げる企業(①) 経常利益率の高い企業(②) 自己資本比率の高い企業(③)

(%)

0.045

0.050

0.040

0.044

0.036

0.032 0.030

0.035

0.040

0.045

0.050

0.055

09 10 11 12 13

(%)

(年度)

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企業風土については、高収益企業の方が、計画的かつ積極的に新たな試みに挑戦する傾向がある。また、投資行動を決定する経営者の年齢に着目すると、中小企業の経営者は高齢化してきており、新陳代謝が進んでいないことがわかる。

4.中小企業の経営力 (3)経営者の特徴①

21

中小企業の経営者年齢の分布(年代別) 図3

0

5

10

15

20

25

30歳~ 45歳~ 60歳~ 75歳

(万人)

1995年

2000年

2005年

20年間で経営者年齢の 山は47歳から66歳へ移動

2010年

2015年

(資料)図1~3:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、株式会社帝国データバンク)、(株)帝国データバンク「COSMOS1企業単独財務ファイル」、「COSMOS2企業概要ファイル」再編加工 (注)図2,3は(株)帝国データバンクの保有する中小企業約120万者分のデータを元に作図。

17.5

37.4

20.8

33.4

22.8

34.5

23.6

31.3 24.9

31.5

15

20

25

30

35

40

95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

20人以下 21人以上50人以下 51人以上100人以下 101人以上300人以下 301人以上

(%)

(年度)

規模の小さな企業ほど、 経営者の高齢化が進んでいる。

経営者年齢の高齢化比率の推移(従業員規模別) 図2

企業風土 図1

58 47

35 21

30 22

59 45

28 27 30 18

51 44

28 17

24 16

自社の意思決定スピードは速

全社一体となり顧客の課題解決に取り組んで

いる

経営計画や経営戦略の内容が現場まで浸透

している

失敗を恐れず、新たな試みに挑戦する考えが根付いている

従業員は個々の能力向上への意識が高い

従業員は個々の収入・待遇に満足している

稼げる企業(①) 経常利益率の高い企業(②) 自己資本比率の高い企業(③)

(%)

(n=757) (n=730)

(n=695)

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経営者年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる。実際に、経営者が交代した企業の方がわずかながら利益率を向上させていることから、計画的な事業承継が重要。

4.中小企業の経営力 (4)経営者の特徴②

22

経営者の年代別に見た成長への意識 図1

今後3年間の投資意欲 図2

79 77

32 29 23

16

75 72

27 29 23 18

76 68

26 32

20 21

82

65

21

38

18 25

売上高を伸ばしていく必要がある

雇用を維持・拡大していく必要がある

積極的に投資していく必要がある

自社の成長は市場の成長に依存し

ている

成長には、リスクを伴う行動が必要であるし、積極的にリスクを取るべきだ

リスクを伴ってまで成長はしたくない

49歳以下 50歳以上~59歳以下

60歳以上~69歳以下 70歳以上

(%)

(資料)図1,2:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク) 図3:(株)帝国データバンク「COSMOS1企業単独財務ファイル」、「COSMOS2企業概要ファイル」再編加工 (注)1.2007年度時点で55歳~64歳の経営者について、2007年度から2008年度にかけて経営者の交代の有無により、経常利益率を比較。

73

48

84

21

37 41

70

45

78

18

36 37

69

43

78

16

36 31

67

39

74

12

31 29

設備投資 IT投資 人材投資 海外展開投資 研究開発投資 広告宣伝投資

49歳以下 50歳代 60歳代 70歳以上 (%)

経営者交代による経常利益率の違い 図3

3.62

5.50

2.21

3.37

0

1

2

3

4

5

6

08 09 10 11 12 13 14

経営者の交代あり 経営者の交代なし (%)

(年度)

(n=79) (n=1,746)

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23

• 2016年版中小企業白書では、中小企業の稼ぐ力に注目。稼ぐための取組は様々だが、そのうち、IT投資、海外展開、リスクマネジメントの3点を分析した。

• こうした取組を行い、稼いでいる企業には、経営者が①ビジョンを明示し、②従業員の声を聞きながら、③人材育成、④業務プロセスの高度化などを行うことにより、さらに生産性の向上につなげているという共通点があった。また、共通の課題として、人手不足があった。

中小企業の稼ぐ力 まとめ 稼げる中小企業の取組

中小企業の成長を支える金融 • 無借金企業の割合が増えているが、適度な借入れのある企業の方が収益力がある。 • 成長投資を行うために必要な資金供給元となるのは金融機関。 • 金融機関借入に当たっては現在の財務内容や資産余力などが評価されている。

稼げる中小企業の経営力 • 低収益企業は投資に保守的な傾向が見られるが、高収益企業は、計画的かつ積極的に投資を

行い、リスクへの備えも行っている。 • 経営者が交代していない企業より、経営者が交代した企業の方が収益力が高い。

経営者が理念を明示し、金融機関等外部専門家と連携しながら、現場の意見を聴いて組織的な経営を行い、成長投資と新陳代謝を進め、稼ぐ力を向上させていくことが重要。

事業性評価に基づく融資を実現するためには、金融機関側は、他の支援機関と連携した支援を行う姿勢への転換が、企業側は、事業計画等を積極的に金融機関に伝えることが重要。