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1 2017 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文 「東急田園都市線の混雑は緩和できるのか」 A1442658 原田脩平 提出年月日 2018 1 15

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2017年度 上智大学経済学部経営学科

網倉ゼミナール 卒業論文

「東急田園都市線の混雑は緩和できるのか」

A1442658 原田脩平

提出年月日 2018年 1月 15日

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【目次】

I. はじめに II. 基本情報:ⅰ東急電鉄について

ⅱ東急田園都市線の概要 ⅲ東急田園都市線の混雑状況

III. 仮説:①田園都市線を複々線化する事はできないか ②混雑区間の乗客を他の交通手段に促せないか

IV. 検証・考察 V. 結論 VI. 終わりに 参考文献

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Ⅰ. はじめに 首都圏において、ほとんどの人々が鉄道を利用して通勤・通学を行っている。私もそのうち

の一人であり、かれこれ幼稚園児の頃から現在に至るまで鉄道を利用して通学を行ってきた。

おそらく大学卒業後、会社への通勤する際も鉄道を利用する事になるはずだ。そんな20年間

の鉄道通学において、私を悩ませる事が1つある。それは朝の満員電車である。この朝の満員

電車を好ましいと感じる人はまずいないはずだ。実際に私は東急電鉄の東急田園都市線に20

年間乗車し、通学を行ってきた。田園都市線を利用する友人などとも、「今日の田都は大変だっ

た」などという話題が絶えないぐらい、私にとって田園都市線の朝の満員電車で通学する事は

億劫な事であった。そこで本論文では私の田園都市線通学20年の歴史と経験を生かし、「東急

田園都市線は果たして混雑緩和を実現できるのか」解明していきたい。もちろん東急田園都市

線と同程度・もしくはそれ以上に混雑する鉄道もあるだろうが、私にとって馴染みの深い東急

田園都市線の混雑を取り上げる。

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Ⅱ. 基本情報

ⅰ 東急電鉄について 東急電鉄は1922年に設立され、現在(2018年1月)において「田園都市線」・「東横

線」・「目黒線」・「大井町線」・「池上線」・「多摩川線」・「こどもの国線」・「世田谷線」の合計8

路線を運行している。また鉄道事業だけでなく、都市開発といった不動産事業・仙台空港の運

営など非鉄道事業への多角化も進んでおり、首都圏を代表する鉄道会社である。

東急電鉄路線図

(東急電鉄の路線図 東急電鉄 HPから引用)

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グラフ1

(国土交通省 平成26年度鉄道統計年報より作成)

上記のグラフの通り、東急電鉄は首都圏私鉄7社の中でトップの輸送人員を保持している。

JR東日本(62億人)は元々国鉄であったため敷設する県の多さ・東京地下鉄(24億人)は

東京都内のみ運行といった理由から、外れ値とし比較対象から除外した。東急電鉄は小田急な

らば「箱根」・東武鉄道なら「日光」といった観光地を持っていないけれども、なぜトップの輸

送人員を保持できるのか分かる表があるので、見ていただきたい。

データ1

(住んでみたい街ランキング MAJOR7・マンショントレンド調査より引用)

0

200000

400000

600000

800000

1000000

1200000

東急電鉄 東部鉄道 小田急電鉄

京王電鉄 西武鉄道 京浜急行 京成電鉄

私鉄7社年間輸送人員

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データ1の通り、自由が丘・中目黒・横浜・代官山・武蔵小杉(東横線)・二子玉川(田園都市

線)・目黒(目黒線)といった人気の駅が東急線沿線に数多く存在するため、東急電鉄は輸送人

員を大きく伸ばしている事が分かる。

ⅱ 東急田園都市線の概要 東急田園都市線は渋谷〜中央林間までの27駅を結ぶ路線である。1977年に渋谷〜二子

玉川間で開通し、1984年に現在の通りに全通した。また東京メトロ半蔵門線・東部伊勢崎

線・日光線との相互直通運転を行い、川崎・横浜・町田・大和の4市にまたがる「多摩田園都

市」や横浜市の都市計画により開発された「港北ニュータウン」と都内を結んでいる。(東急電

鉄 HP・田園都市線紹介ページより抜粋)

グラフ2

(東急電鉄 HP 2016年度 乗降人員より作成)

田園都市線は上記のグラフから分かるように、東急電鉄でトップの輸送人員を誇る路線であ

る。住んでみたい街ランキングには二子玉川駅のみしかランクインしていないが、東急グルー

プが開発し人気を集めたたまプラーザなど、田園都市線沿線には住みやすい街並みが広がって

いる。

0 200,000 400,000 600,000 800,000

1,000,000 1,200,000 1,400,000

田園都市線

東横線 目黒線 大井町線

池上線 多摩川線

こどもの国線

世田谷線

2016年度1日平均輸送人員

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ⅲ 東急田園都市線の混雑率 次に田園都市線の混雑率について紹介する。私は20年近く田園都市線を利用しているが、

朝の通勤ラッシュは常に混雑しているという印象を抱いている。下記のグラフの通り、ここ1

0年で1日平均輸送人員が10万人増加している。

グラフ3

(東急電鉄 HP 2005年度〜2016年度 田園都市線 乗降人員より作成)

まず混雑率について定義付けをしておきたいが、データ2のように国土交通省が発表してい

る混雑率の目安を参照したい。180%以上を越えると他の乗客と密着する可能性が高くなり、

不快に感じると私は考える。

データ2

(国土交通省 混雑率の目安より引用)

1,050,000

1,100,000

1,150,000

1,200,000

1,250,000

1,300,000

田園都市線1日平均輸送人員推移

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次に田園都市線が東京圏の中でも屈指の混雑路線である事を裏付けるデータがあるため紹介

したい。データ3は平成28年度東京圏における主要区間の混雑率(最混雑時間帯1時間の平

均)を表している。田園都市線は池尻大橋〜渋谷間がランクインし混雑率は184%である。

田園都市線以上の水準は、東西線199%(木場〜門前仲町)・総武線198%(錦糸町〜両国)・

小田急192%(世田谷代田〜下北沢)・横須賀線191%(武蔵小杉〜西大井)など頻繁に混

雑していると有名な路線がランクインしている。

データ3

(国土交通省 首都圏における主要区間の混雑率)

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Ⅲ. 仮説 田園都市線混雑の実態について論じてきたが、本章では「田園都市線の混雑緩和は可能なの

か」という問題提起に対し2つの仮説を設定した。

①「田園都市線を複々線化する事は出来ないか」 そもそもなぜ田園都市線は異常な程混雑するのか考えてみた。まず思い浮かんだのが田園都

市線沿線住民に見合った本数の列車を運行出来ていないのではないかという事である。朝の通

勤ラッシュ時の運行本数を調べるために、渋谷方面の池尻大橋駅時刻表を参考にした。7時3

0分〜8時30分の間で26本運行し、「渋谷駅8時〜8時30分到着の電車」に限ると15本

運行している事が分かった。運行間隔を調べてみると、大体2〜3分間隔で運行されているた

め、現在の路線において運行本数は妥当ではないかという結論に至った。したがって現状の運

行本数では沿線住民に見合っていないので、本数を増加できる可能性があるか模索した結果こ

の仮説に至った。

池尻大橋駅時刻表

②「混雑区間の乗客を他の交通手段に促せないか」 この仮説に至った経緯は私の経験に基づく。私の最寄り駅は神奈川県川崎市にある溝の口駅

で朝のラッシュ時に乗車する際、混雑はしているが身動きが全く取れないわけではない。しか

し多摩川を渡り東京都世田谷区にある二子玉川駅に到着すると徐々に乗客が増加し、三軒茶屋

駅からは全く身動きが取れなくなる。私が体感した二子玉川駅からの混雑を裏付けるデータが

あるので紹介したい。

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データ4

(東急電鉄 2016年度 田園都市線 乗降人員)

上記のデータを活用して、二子玉川駅〜池尻大橋駅と中央林間駅〜二子新地駅の輸送人員の

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平均を比較してみた。二子玉川駅〜池尻大橋駅は「85540人」・中央林間駅〜二子新地駅「6

7948人」の結果となり、田園都市線の混雑に拍車をかけている区間だと断定した。したが

って二子玉川駅〜池尻大橋駅間の乗客を他の交通手段に促せれば、混雑緩和に貢献できるので

はないかと仮説を考えた。

Ⅳ.検証・考察

①「田園都市線を複々線化する事は出来ないか」 この仮説を検証するにあたり、複々線を実現した実績のある他社の事例を参考にして考えて

いく。参考他社として小田急電鉄を挙げる。その中でも田園都市線と並行して走行する小田急

小田原線は、小田原〜新宿間を47駅繋ぐ長距離路線である。小田急小田原線は田園都市線と

同様に慢性的な混雑・遅延する路線として有名で、本論文を執筆段階(2018年1月15日)

では複々線化が実現されていないが、2018年3月17日のダイヤ改正により複々線化の運

用開始となる。なお皮肉な事に複々線化が実現される区間は、田園都市線の混雑区間と定義付

けた「二子玉川駅〜渋谷駅」とほぼ同区間の「和泉多摩川駅〜東北沢駅」である。

小田急複々線化によるメリットが「HELLO NEW ODAKYU」というキャッチコピーで発

表されていたので、朝ラッシュ時のメリットを3つ程紹介する。1つ目は混雑緩和に関してだ

が、朝6時〜9時30分の間で現状から21本増加の105本(ロマンスカーを含む)運行出

来るそうだ。また一番のラッシュ時7時30分〜8時30分においては9本増加の36本の運

行が可能になり、混雑率192%→を150%まで減少できるそうだ。P.7の「データ2混雑の

目安」を参照すると、混雑率150%は広げて楽に新聞を読める状態らしい。朝の通勤ラッシ

ュ時に車内で新聞を広げられるなど、田園都市線では信じられない事である。2つ目は所用時

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間の短縮である。その要因としては主要駅にしか停車しない快速急行を25本増加の28本へ

と大幅な増加を可能にし、急行よりも早い通勤急行・通勤準急など列車のバリエーションを増

やしている。3つ目は朝方ロマンスカーの増発である。全席指定列車のロマンスカーを「モー

ニングウェイ号」として運行し、利用者が早く・座って目的地まで向かえる所が最大のメリッ

トである。複々線化は同時間帯に上り・下りそれぞれで2路線運行できるため、急行・各停専

用路線を作る事ができるので、混雑緩和・時間短縮が可能になる。朝ラッシュ時の混雑緩和と

いう点だけに焦点を当てても、複々線化は様々なメリットを生む事ができると分かった。

さて田園都市線も小田急のように複々線化を導入できるか考えていく。田園都市線は急行・

準急(中央林間〜二子玉川は急行運転・二子玉川〜渋谷間各停)・各停の3つで走行し、中央林

間〜渋谷間の路線は複線である。溝の口〜二子玉川間は複々線であるが、大井町線の乗り入れ

のためである。また後続の急行が各停を追い抜ける駅は、長津田・江田・鷺沼・梶ヶ谷・桜新

町の5駅しか存在しないのが現状である。小田急が混雑区間を複々線化した様に、田園都市線

で混雑区間である二子玉川〜渋谷間を複々線化する事は難しいだろう。

データ5

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なぜならデータ5小田急の工事過程を見てみると工事開始前の線路は地上に面していたので、

複々線を確保するだけのスペースがある地下へ移行は可能であった。しかし田園都市線は二子

玉川を出発すると渋谷まで、既に地下鉄として運行している。複々線化のためには現行の幅で

は足りないため、新たに穴を掘らなければならない。また国道246号線の地下を運行してい

るため、地上からの工事は不可能であろう。こうした地理的な側面が田園都市線の複々線化を

妨げる要因の1つになっている。また仮に複々線化を実現することになったとしても、「工事期

間の田園都市線をどうするか」・「工事による更なる混雑の増加」など新たな問題が生まれる。

そのうえ工事には莫大な資金を投資しなければならず、今後人口減少が進んでいく中その資金

を回収出来ないかもしれない。そして小田急は14年を要したが、田園都市線は工事への弊害

によってそれ以上の年月を要する可能性がある。

[考察]

小田急が公表している通りに複々線化によって朝の通勤ラッシュの混雑が解消されるのであ

れば、大変魅力的である。しかし複々線化には「時間」と「お金」が必要である。もし小田急

の複々線化が成功したとしても、田園都市線の複々線化を実現する事は出来ない。

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②「混雑区間の乗客を他の交通手段に促せないか」 1つ目の仮説で複々線化といったハード面の改善による混雑緩和は、現状難しいと分かった。

そこで本仮説では、田園都市線の現在の取り組みなどを参考にソフト面の改善による混雑緩和

について検証していく。実施されたソフト面からの田園都市線混雑緩和策を調べてみたところ、

以下のように6つ程あった。

メリット デメリット

バスも!(バス通勤喚起) 三軒茶屋〜渋谷間の混雑緩和

に貢献

渋谷までの利用者しかメリッ

トない

分散乗車喚起 混雑車両・時間帯を利用者に

認識させられる

利用者自身にとって都合の良

い時間帯に乗車するため

早起きキャンペーン 早朝利用者の増加見込み 早朝列車でも混雑

サテライトオフィス 満員列車に乗車せず通勤でき

契約企業の利用者に限る

大井町線急行7両 大井町線利用への喚起 一部の利用者にしか使用され

ない

グッチョイクーポン 様々な割引が得られる 割引のために早起きしない

(東急電鉄 HPより作成)

バスも!(バス通勤喚起)・サテライトオフィス・グッチョイクーポンの3つに焦点を当てた

キャンペーンがあり、それをグッチョイモーニングという。バスも!は田園都市線区間のみへ

の適用だが、後者2つは東横線など他路線も含んだ混雑緩和に向けた対策である。

この対策は「他の交通手段利用」・「オフピーク通勤」・「早朝利用」それぞれへの利用を喚起

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しており、田園都市線混雑対策を実施している事への周知に繋がると考えられる。

「このバスも!」キャンペーンは池尻大橋〜渋谷間を含んだ電車定期券を所有している人を

対象に行っている。実施期間は平日の7時〜9時30分までとなっている。

私も対象区間の定期を所有しているので、このキャンペーンを利用してみる事にした。

溝の口〜四ツ谷間

最寄り駅の溝の口駅を7時45分に乗車し、8時頃三軒茶屋駅に到着。

そこからバスで渋谷駅までの移動である。

1月9日(火)三軒茶屋〜渋谷(バス通勤)

バス 電車

混雑 不快に感じる程

の混雑ではない

身動きが取れず、

大変苦痛

所要時間 15分程度 5分程度

利用してみた感想としては、日頃の朝ラッシュに感じる混雑に巻き込まれないのが一番のメ

リットであった。所要時間は10分程度しか変わらないが、私の場合再度半蔵門に乗車しなけ

ればならず、煩わしさがあった。また当然の事であるが、予定より20分程遅れて四ツ谷に到

着した。事前に渋谷駅・三軒茶屋駅でバス乗車券を発券しなければならないが、21枚発券し

てくれる。どうしても満員電車に乗車したく無い場合など利用し、予備として持っておく事な

どをおすすめする。

このバスも!を利用するメリットのある利用者は、「渋谷あるいは三軒茶屋〜渋谷間に最終目的

地がある人」・「三軒茶屋から田園都市線を利用する人」に限られるだろう。しかし対象者でも

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所要時間が増加する事に懸念がある人は利用する可能性が高い。したがって優れた対策案では

あるが、対象者が限られるため混雑解消の抜本的な対策にはならない。

このサテライトオフィスは、ピーク時間(7時〜9時30分)に田園都市線を利用せず対象

駅近くのサテライトオフィスで仕事を行うという仕組みである。田園都市線沿線では渋谷・二

子玉川・たまプラーザが対象である。大変素晴らしいサービスだと思ったのだが、これを利用

している方を見つける事が出来なかったので、検証を行う事は出来なかった。また2017年

8月31日の段階で70社しか契約企業がない。東京都が時差 BIZキャンペーンとしてオフピ

ーク通勤の導入を促し、働き方改革の一環としてオフピーク通勤は注目を浴びている。そのた

め東急電鉄のサテライトオフィスを利用する会社が増加する可能性は高いので、今後の発展を

祈りたい。

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このグッチョイクーポンとは、平日7時30分までに「東横線・田園都市線渋谷駅」・「大井

町線大井町駅」・「目黒線目黒駅」を7時30分までに到着・通過をするとポイントが付与され

るという仕組みである。これも実際に利用してみた。

手順

東急電鉄のアプリをダウンロードする

グッチョイクーポンの利用アンケート(属性・ 利用動機など)

利用開始となる

7時30分までに渋谷駅に到着していなければクーポンを付与されないため、必然的に混雑

時間を避けられるのは大変有意義であった。しかしスマートフォンの「プッシュ通知」・「位置

情報」・Bluetooth」をオンにしないとポイントが付与されないため、利用するに当たって煩わ

しさを感じる。1回の利用で10ポイント貯まり、そのポイントは1週間毎に有効期限が切れ

る事になっている。10ポイント貯まれば、何かしらと交換できるしくみになっている。私は

ローソンで使える「マチカフェドリンク20円引き」と引き変えた。

利用した感想としては貯まったポイントと交換できる特典がさらに充実しない限り、あまり

利用者は増えないと思った。少しでも節約をしたい大学生・新入社員などは利用する可能性は

高いが、現状ではこのために早起きをする人が増えるとは思えない。もしこのキャンペーンを

続けていくならば、節約志向の高い層に絞った特典を設けるなどするべきである。

[考察]

グッチョイモーニングに含まれた3つの混雑改善策について検証をしてきたが、どれも大幅

な混雑解消の効果はない。しかし一部の利用者にとっては利用効果の高い対策になっているた

め、続けていくべきだと考える。

仮説1・2を通じて現在の田園都市線混雑解消に最も効果がある対応策は、利用者を小田急

線へ移行する事であると考えた。

特に小田急線と田園都市線どちらの路線を利用できる地域に住んでいる人々に利用を促すしか

ない。その地域は横浜市青葉区・世田谷区である。

青葉区は「新百合ケ丘〜たまプラーザ・あざみ野」「たまプラーザ〜柿生・向ケ丘遊園」のバス

が存在する。(東急バスの路線図から調査)

世田谷区は「成城学園前〜二子玉川・用賀」「祖師ケ谷大蔵〜用賀・三軒茶屋」「千歳船橋〜三

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軒茶屋」のバスが存在する。(東急バスの路線図から調査)

現状でも東急バスだけでかなりの小田急線〜田園都市線を結ぶバスがあり、小田急の複々線化

によって小田急の方が利用しやすくなれば、田園都市線から移行する人が増えるだろう。東急

電鉄は小田急に乗客を渡す事になるが、小田急線〜田園都市線を結ぶバスを増発するべきであ

る。さもなければ田園都市線の混雑は増える一方である。

Ⅴ. 結論 結果として田園都市線の大幅な混雑緩和が達成される可能性は低いことが分かった。また

2019年には閉鎖した南町田のクランベリーモールが、高層マンションを併設した商業施設

としてリニューアルする予定がある。こうした新たな商業施設のオープンなど田園都市線ブラ

ンドはさらに向上するため、今後沿線人口は増加していく見込みである。しかし将来的(20

〜30年後)には日本の人口減少・高齢化に伴い、通勤ラッシュ時の会社員の減少が見込める

はずだ。田園都市線の混雑緩和は時間の経過を待つしか術はない。したがって沿線に住む住民

は、朝のライフスタイルに合わせた乗り方を選択して行かなければならないのだ。朝ラッシュ

は大変苦痛であるが、それでも田園都市線は住みやすい路線であると伝えて終わりたい。

[田園都市線展望]

今後10年間…小田急線など他社線へ乗客が流れる事を予測。(大幅に混雑は変わらない)

20〜30年後…人口減少と共に混雑緩和見込み。

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Ⅵ. 終わりに せっかくだから「自分の好きな事に関する卒業論文を書きたい」と進めていましたが、客観

的に考えるのが難しくなりテーマを変更しなければなりませんでした。執筆中から感じていま

したが論理展開・検証などが不十分で、論文と言うには程遠いと思います。仮説を設定し、そ

れを検証する事の難しさを改めて学びました。考えるよりも行動が先の人生を送ってきた私に

とって、ゼミでの2年間の学びは心に響きました。

私はゼミ長として2年間網倉ゼミで活動させて頂きましたが、30人以上の集団をまとめた

経験が無かったので、大変苦労しましたし至らない点が多々ありました。それでも同期・先輩・

後輩達は私を支えてくれて、ここまでやって来る事ができました。本当に感謝しています。

またゼミ20周年記念イベントでは幹事を努めさせて頂き、ゼミの卒業生の方々と深く交流さ

せて頂いたのも印象深いです。最後に網倉教授にはゼミ運営についてのアドバイスや、就職活

動の相談など多岐に渡り大変お世話になりました。2年間ありがとうございました。

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参考文献 斎藤峻彦 「私鉄産業 日本型鉄道経営の展開」 晃洋書房 1993年

関谷次博 「費用負担の経済学 地方公共交通の歴史分析」 学文社 2014年

小田急電鉄 HP http://www.odakyu.jp/

東京都 快適通勤モーブメント 時差 Biz https://jisa-biz.tokyo/

国土交通省 統計情報 http://www.mlit.go.jp/statistics/details/tetsudo_list.html

東急電鉄 HP http://www.tokyu.co.jp/index.html

MAJOR7 第26回住んでみたい街ランキング

https://www.major7.net/contents/trendlabo/research/vol026/

NEW WORK https://www.newwork109.com/