3.今後中小itベンダが 目指すべきビジネスモデルとは?
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3.今後中小ITベンダが目指すべきビジネスモデルとは?
3232
クラウド時代にITベンダが強化すべきサービス
サービスの種類 求められる内容
①ユーザ企業の経営課題を理解して最適な対応策を実現
�ユーザ企業の経営課題を理解した上で、その解決の道筋を描きながら、情報の収集や活用、業務の変革を実現する方法として、クラウドの利活用を提案
②ソフトウェアの機能やデータの活用を支援
�中小ユーザ企業のIT利活用リテラシーの不足を補うため、SaaSでソフトウェアを提供するだけでなく、その活用を支援
③ソフトウェアと合わせて周辺業務全体を提供
�紙媒体の帳票からの入力や印刷など、電子化の制約となりかねないプロセスに対して、ソフトウェアと合わせた処理サービスを提供
④ユーザ企業のリテラシーに合わせたサポートの提供
�安価なクラウドサービスを利用する際に必要となる設定操作を行えない中小ユーザ企業に対し、よりきめ細やかなサポートを提供
�必要に応じて、ユーザ企業を訪問して教育も実施
⑤サービスに関わる透明性の向上
�クラウドベンダから明示的に提供されていない諸条件や追加費用について、ユーザ企業が安心して検討できるよう各種の情報提供を行う
ITベンダが今後強化すべきサービス
ユーザ企業にとってはIT導入は目的でなく手段であり、ITの利活用によって自社の経営課題を解決することこそが目的である。ユーザ企
業のニーズを踏まえ、従来のハードウェアやソフトウェアといったプロダクトを主体として提供するベンダから、ITサービスの利活用による
ユーザ企業の経営課題解決を支援するサービスを提供するITベンダに変わっていくことが必要である。
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中小ITベンダのサービス提供形態
ユーザ企業の既存システム
個別ユーザ企業向けに開発する業務用システム
自社のSaaSアプリケーション
自社で提供するIaaS
自社で提供するPaaS
他社のSaaSアプリケーション
他社のIaaS、PaaS等クラウドサービス
・SaaSサービス等の導入支援・クラウドへの移行支援・複数のサービスの連携
・ユーザ企業の事業に最適なサービスの組み合わせの企画・設計・データ活用コンサルティング・業務代行(BPO)
中小ITベンダ
中小ユーザ企業
ユーザ企業の経営課題の解決に貢献するサービスの提供
ユーザ企業の経営課題の解決に向け、自社提供以外のものも含めた組み合わせでサービスを提供
中小ITベンダが今後提供していくべきサービスの提供形態
3434
中小ITベンダがクラウドを活用して提供するサービス例
中小ITベンダによるクラウドを活用したサービス例
自らクラウドサービスを提供
クラウドサービスの開発
クラウドサービスの活用によるユーザ企業の経営改善
大手ITベンダ向けサービス提供
� SaaSサービスの構築・提供
�クラウド上の個別ユーザ企業向けシステムの受託開発
�大規模クラウドアプリケーションの部分開発�クラウド環境向けツール等の提供�大手クラウドサービスに派生する業務受託(システム保守/運用監視/入出力等BPO業務)/他
� IaaS、PaaSサービスの提供ケース1
ケース2
�クラウド上でユーザ企業が利用するシステムの運用・保守代行
ケース3
ケース4
�地域密着型コンサルティング ケース5
�ユーザ企業へのSaaSサービスの導入支援 ケース6
�複数のSaaS等のサービスあるいはユーザ企業保有システムを組み合わせて最適なシステム構成を実現(インテグレータ)
ケース7
� ITが担う機能の周辺業務を代行(BPOサービス)�クラウドサービスの活用によるユーザ企業の経営改善の実現 ケース8
ケース9
ケース11
� クラウドを用いたBtoCサービスの提供 ケース10BtoCサービス提供
分類 サービス内容 詳述
� ITベンダによるコンソーシアム構築 ケース12コンソーシアム構築
中小ITベンダがクラウドを活用して提供するサービス例として、次表の項目が想定される。具体的なビジネスの場面では、これらの
サービスから複数を組み合わせて提供することが考えられる。
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3535
ケース1: SaaSサービスの構築・提供
市場環境(ニーズ)
• SaaS化することで、世界中のユーザ企業を顧客とすることができる•ユーザ企業にとって付加価値の高いアプリケーションであれば、大幅な事業拡大も可能
概 要•これまで自社で販売していたアプリケーションを、自社もしくは他社のクラウド上に構築することにより、ユーザ企業に対してSaaSとして提供する
事業リスク •グローバル競争にさらされるため、新規参入事業者に優位性を奪われるリスクが大きい
競争優位の要件
•競合サービスに対する性能、価格面、デザイン性などのアイデアにおける優越性の確立が必須
必要な知識・スキル・体制
•これまでパッケージ等による販売のみを行っていたITベンダの場合、SaaS化することで、新たにシステム運用・保守を担当する部署や担当者が必要となる
•顧客が面的に拡大する可能性が生じるため、これまで限られた地域で営業していたITベンダは、サポート体制について検討する必要が生じる(他地域にパートナー企業を育成、等)
このアプローチに適した企業
•一定の需要があるパッケージソフトウェアのITベンダ企業•特に、特定業界向けに有力なパッケージを提供しているITベンダ企業
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ITベンダ事例1:株式会社マインド
オープンソースソフトウェアとして主要部分無償とすることで、短期での幅広い普及を実現
社内向けに開発した人事・給与システムをオープンソースとして公開し、
そのサポート業務を事業の主体に転換
ITバブル崩壊後に需要が払底する中、自社社内システムとして開発に着手していた人事・給与システムの事業化を決断。オープンソースソフトウェアとして公開するとともに、その有償版販売やサポートビジネスに着手。公開したソフトウェアは2万社でダウンロードされるなど、ユーザ企業から高い評価を受けた。
現在は自社及びパートナー企業を通じたMosPの提供を行っており、その利用者へのサポートで実績を上げている。このほか、自社にIT管理者を抱えることのできない中小企業のITサポートビジネスも展開中。
製品ユーザを対象とした、サポートビジネスへの事業の主軸の移行
ソフトウェアベンダ創業・業務系開発受託
・通信・組込系開発への人材派遣
1987年社内向け人事・給与システムの事業化開始・主要部のオープンソース化
2006年サポートビジネスの本格化・導入、カスタマイズサポート・中小企業ITサポート
2009年
(会社概要: 創業1987年 資本金1000万円 本社神奈川県川崎市)
新事業進出
業態転換
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ケース2:自社でのクラウドサービス(IaaS、PaaS)の提供
市場環境(ニーズ)
•高速ネットワークが利用できない、もしくは利用できてもコストが極めて高額となる地域(離島等)•海外のクラウド事業者がどんなに安くても、データを地元以外には置きたくないと考えるユーザ企業にとっては、本サービスの提供ベンダが唯一の選択肢となり得る
概 要 •自らデータセンタを運営し、IaaS、PaaSを提供する
事業リスク •ネットワーク環境が改善されると市場喪失の可能性がある
競争優位の要件
•高速ネットワークが利用できる環境では、大規模クラウド事業者に対する価格競争力は持ち得ないため、ネットワーク環境に制約があることが前提
•ユーザ企業が入居する企業団地・インキュベーションセンター内にデータセンタを構築する場合などでも、優位性を発揮できる可能性がある
•手厚いサポートを差別化手段とする方法もあるが、その場合、他社のクラウドへの導入サポートに徹した方が事業的に有利な可能性もある
•大規模なクラウドサービスが提供していない、中小企業向けのリソースセット提供
必要な知識・スキル・体制
•システムの安定運用に関する経験・ノウハウが有効
このアプローチに適した企業
•ネットワーク環境に恵まれない地域のITベンダ•中小企業へのITサポートですでにコネクションを持っている企業
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ITベンダ事例2:株式会社リンク
12年間の実績を活かし、2008年よりホスティングのクラウド化を展開
12年間の専用ホスティング事業で培った実績をもとに、クラウドサービスの提供に事業を拡大
クラウドの柔軟性を求めるユーザ企業に対する選択肢を増やす
1987年以降、小規模企業ながら専用ホスティングサービスの提供で高い評価を得ていた同社であったが、今後はホスティングのクラウド化が進むものと考え、専用ホスティングサービスのクラウド型新サービス「パワーフレックス」の提供を開始。これまでに培った仮想化技術と運用実績を活用することで、従来のホスティングでは難しかったリソース変更の柔軟性を高めたサービスの提供を実現した。
同社のホスティングサービスは、富山県のコンピュータ製造企業であった(株)エーティワークスと、両社の子会社として設立した(株)ネットフォースの3社で運用。それぞれの得意分野のサポートを担当することにより、中小ITベンダであっても「親切・丁寧なサポート」をセールスポイントとすることを可能にしている。
営業手続・技術・保守の各サポートを3社で分担することで、高い品質のサービスを実現
広告制作会社として創業
1987年
(会社概要: 創業1987年 資本金1000万円 本社東京都港区)
専用サーバ事業の開始12年間の専用型ホスティング事業を通じて、仮想化技術と運用実績を蓄積
1996年クラウド型ホスティングサービスを開始既存のホスティングサービスの新サービスとして、クラウド型ホスティングサービスを開始
2008年新事業進出
クラウド対応
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ケース3:クラウド上の個別ユーザ企業向けシステムの受託開発
市場環境(ニーズ)
• SaaSの普及にあわせ、受託開発市場は縮小が見込まれているが、SaaS化の可能性がない特殊な用途のシステムや、他社との差別化・独自ノウハウに関する機能の構築用途等で、今後も根強い需要が見込まれる
• SaaSをベースにシステムを構築しつつ、自社特有の使い方のための追加開発する可能性もある•海外進出する企業が、既存の自社システムを世界中から使おうとする場合等にも使われる可能性あり
概 要•これまでの受託開発モデルを、クラウド(IaaS、PaaS)をプラットフォームとして行う(既存ビジネスの延長上の展開)
事業リスク
•ユーザ企業の国外移転などによる市場喪失•業界向けの標準的なSaaSサービスがより柔軟になって顧客ニーズを取り込める場合、優位性を失う→ 単にユーザ企業のビジネスをシステム化するだけではなく、SaaSでは実現できないビジネスモデルをユーザ企業に提供する必要がある。
競争優位の要件
•ユーザ企業に対して以下で差別化できれば見込み有り-対象業務に関する知識で圧倒的な優位性をもつ-ユーザ企業と地理的に近いなど、密接なサポートを提供する能力-ユーザ企業のビジネスモデルを発展させる支援能力
必要な知識・スキル・体制
•これまでの開発知識・スキルを活用可能•多様なクラウドサービスの中から目的に適したプラットフォームを選択・提案するために、クラウドサービスの動向に関して常に把握する必要あり
•セキュリティ管理やクラウドによる事業継続性確保に関する知識
このアプローチに適した企業
•ユーザ企業のシステムを元請で受託開発できるITベンダ•特殊な用途のシステムの受託開発で実績を持つITベンダ
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ITベンダ事例3:エクスウェア株式会社
クラウドを対象として新たな付加価値を提供する
クラウド向け高付加価値ソリューションの提供を通じて、短工期・低価格・工程の透明性をアピール
自社開発のWebアプリケーションフレームワーク「X-Framework」をベースとするクラウド受託開発ソリューション「COUGAR」(クーガー)、スマートフォンやタブレットでクラウドのリソースを活用するデスクトップソリューション「MOMONGA」(モモンガ)の提供を通じて、ユーザ企業への積極的なアプローチを実施している。
自社フレームワークの利用、下請構造で開発を行わないこと、クラウド基盤とオープンソースの活用により、短工期・低価格・工程の透明化が可能であることをアピール。受託開発における他社との差別化を行っている。
多重下請を行うITベンダとの差別化をアピール
システムインテグレータとして創業
1995年
(会社概要: 創業1995年 資本金1000万円 本社東京都品川区)
COUGAR発表Webアプリケーションを対象とする受託開発をアピール
MOMONGA発表クラウド活用を前提としたソリューション提案
2006/2009年新サービス開始
クラウド・モバイル対応
スマートフォン、スマートパッド、クラウドを活用するビジネスソリューションを事業化
2010年
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ケース4:クラウド上でユーザ企業が利用するシステムの運用・保守代行
市場環境(ニーズ)
• PCの運用・保守と比べると故障等のトラブルが減るためニーズは小さくなるものの、自ら設定等を行うことができないユーザ企業からの一定の需要が期待できる
•逆に、クラウド化することで、社内にIT管理者を置かなくなる企業が増えると見込まれることから、こうした企業からの委託需要は増大すると考えられる
概 要 •ユーザ企業が契約しているクラウドサービスの運用・保守管理を代行して行う
事業リスク•保守サービスそのものは遠隔からでも対応可能なため、地元であることが優位となるとは限らず、低価格でサービスを提供する大規模業者に市場を奪われる可能性がある
競争優位の要件
•ユーザ企業との親密な関係が要件となる•印刷・デリバリー等の代行(アウトソーシング)までセットで提供することで、地理的条件によっては優位性も確保できる可能性がある
必要な知識・スキル・体制
•主要なクラウドサービス(SaaS等)についての知識• PCやサーバのトラブル対応のノウハウも活用可能
このアプローチに適した企業
• PCの保守サービスで実績を有するITベンダ
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ITベンダ事例4:株式会社ハートビーツ
クラウドサービスの普及と共に需要が増す、「監視・管理代行」サービスを展開して成長
データセンタ事業から、MSP(Management Service Provider)業務主体に転換
データセンタとして創業後、海外クラウドサービスの進展のもとで、そうしたサービス(IaaS)を利用するユーザ企業向けの監視や導入支援サービス事業を展開して成長。現在はMSP業務(監視・管理等代行サービス提供業務)を主体とする事業を展開。
同社は、政府での情報公開の取り組みや行政機関の電子会議システムで用いられたサーバの構築も担当している。一般的な工程と比較してきわめて短期間で実現したことで評価が高い。
公的機関からも評価される高い技術力とスピード
データセンタとして創業(個人事業)
2003年管理代行サービス開始・監視サービス開始
・サーバ管理代行サービス開始
2005年MSPサービス強化・監視エスカレーションサービス開始・負荷テストサービス開始
2006年
(会社概要: 創業2003年 資本金1600万円 本社東京都新宿区 従業員数28名)
新事業進出
事業展開
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4343
ケース5:地域密着型コンサルティング
市場環境(ニーズ)
•システムの導入と異なり、クラウド事業者は中小企業向けの営業活動は原則として行わないため、ユーザ企業における需要は大きいと見込まれる
•ただし、小規模企業ではコンサルティングに費用を払う習慣のない場合も多く、クラウド移行によるコスト削減効果あるいは売上拡大効果が見えないと事業として成立しない恐れがある
概 要•地元のユーザ企業を対象に、クラウドと社内システムの使い分けに関するアドバイス、クラウドへの移行支援など、ユーザ企業におけるIT利活用に関する各種のコンサルティングを行う
事業リスク•単なる相談先として利用され、事業として成立しない可能性がある•一方、「相談先」としての関係を築くことをきっかけに製品販売に繋げているケースもある
競争優位の要件
•外部からの参入の可能性が小さいことから、地元のユーザ企業にリーチすることができ、一定の信頼が得られれば、優位性の確保は可能
必要な知識・スキル・体制
• ITコーディネータに準ずる知識、スキルが必要•データの分析・活用によるビジネスの推進に際しては、ユーザ企業の経営、事業分野に精通することが必要•地域における業界横断的なアプローチで顧客を広げられるような企画提案力
このアプローチに適した企業
•大手のITベンダの拠点がない、小都市のITベンダ
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ITベンダ事例5:システムニーズ株式会社
従業員9名の企業ながら、業界と密接な連携を行うことで国内最多シェアを15年以上維持
大手が参入できない特定のニッチ市場において、地元ユーザ企業のIT活用を高度化
1993年に灯油配送管理システム「ザ・灯油」を発売し、以後15年以上にわたって業界内で最多のシェアを維持。その間、ハンディターミナルやOSのバージョンアップに対応するなど、きめ細やかな改良を通じてユーザ企業のニーズに応え続けた。
定評のある「ザ・灯油」の機能を2009年にそのままASP化。ASPサービスの運用は同社自ら実施している。インターネット上での情報共有が容易となったことで、パッケージが有する戦略情報の収集機能で集められたデータの一層の活用が期待されている。
クラウド化の動向を踏まえ、WebベースのASPサービスを提供開始
ソフトウェアベンダとして創業
1991年パッケージ製品販売開始「ザ・灯油」販売
1993年クラウド対応の製品化「Webザ・灯油」発売自社でのASPサービス開始
2009年
(会社概要: 創業1991年 資本金1000万円 本社北海道札幌市 従業員数9名)
新製品開発
クラウド対応
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ケース6:ユーザ企業へのSaaSサービスの導入支援
市場環境(ニーズ)
•これまで自社でのPCやサーバ管理ができないことを理由にIT化が遅れていたユーザ企業を顧客とすることができるため、そうしたユーザ企業の多い地域では新たな市場開拓が可能となる
•これまで自社でのPCやサーバ上でシステムを構築・運用していた企業が、クラウドに乗り換えるときの移行需要が発生する可能性がある(SaaS提供者は移行支援をしないことが多いと見込まれる)
概 要•ユーザ企業が財務会計などのSaaSサービスの利用を考えたり、事業継続性の面からクラウドサービスへの移行を検討する際に、その選定から導入、保守までのトータルサポートを行う
事業リスク•事業実施に際してITの知識はそれほど必要ではないため、ITベンダ以外の業種からの参入の可能性がある•ユーザ企業と親密関係にあるほど価格設定が難しく、採算上有利な事業とならない可能性がある
競争優位の要件
•顧客にIT系の知識は期待できない可能性が高いため、顧客がITベンダを評価するポイントとしてはサポートの品質の高さとコストとのバランスが中心となる。
•ユーザ企業との密接な関係、業務知識の豊富さが顧客から評価されるポイントとなる可能性も高い
必要な知識・スキル・体制
•初心者向けユーザサポートのスキルが活用可能•システム移行(汎用機からオープン、WindowsやUnixからLinux 等)の実績、経験が活用できるかも
•旧システムから新(クラウド)への移行は業務フローも変わることになるため、業務最適化やEAのスキルが有効になるケースもあると考えられる
このアプローチに適した企業
•ユーザサポートの実績が豊富で、地域での評価の高い企業
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ITベンダ事例6:株式会社ジープロシューマーズ
地域との連携関係を活かし、中小企業のIT活用、運営の支援ビジネスを開始
中小企業向けIT活用支援サービスの一環として、クラウド移行を支援する新サービスを2010年にスタート
長年の地元での事業を通じて、地域の中小企業との関係が深いことを活かし、2010年に中小企業向けIT活用支援サービス「i活」を開始。IT導入・運用支援、セキュリティレベル診断アシスト、出張パソコン教室等のメニューを用意し、ユーザ企業におけるIT活用の支援サービスとして事業化した。
ユーザ企業において現在利用されているシステムのクラウド移行を支援。財務会計等のアプリケーション、自社オリジナルのアプリケーションの双方に対応する。
ユーザ企業の既存システムのクラウド移行を支援
ソフトウェアベンダとして創業勤怠管理システム、生産管理システム等を開発販売
1985年財務会計ソフトウェアのカスタマイズ業務開始大手パッケージベンダの製品のカスタマイズサービスに着手
2000年
(会社概要: 創業1985年 資本金1,000万円 本社静岡県富士市)
クラウド移行支援サービスを開始中小企業向けIT活用サービスの一環
2010年新事業進出
新事業進出
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ケース7:
市場環境(ニーズ)
•ユーザ企業が必要とする機能を提供するために、PaaSやIaaS上に自社で構築したのでは高コストが見込まれる場合、比較的近い機能をもったSaaSと自社システムを組み合わせて機能を実現することが合理的となるケースは多いと考えられる
•営業支援、POSデータ管理、財務管理等、SaaS同士を連携させるシステムのニーズは、クラウドサービスの普及とともに今後増加することが見込まれる。ただしSaaS事業者が自社によるサービス囲い込みとして必要な機能を自社内で完結できるように提供していく可能性も高い
概 要
•異なるクラウドサービス、またはユーザ企業が保有するシステムを組み合わせて、ユーザ企業が必要とする最適なシステム構成を実現する
•クラウドを構成要素に含むシステムインテグレーションに相当
事業リスク• SaaS事業者がサービスの内容やインタフェースを変更した場合、システムが動作しなくなる恐れがあるため、あらかじめユーザ企業にその旨の了解を得ておくことが欠かせない
競争優位の要件
•大規模・複雑なシステム構成となる場合は、大手システムインテグレータが実績やノウハウの面で有利となる• SaaSとユーザ企業保有システムを組み合わせる場合は、特定の専門的な用途などで、その分野に特化した中小ITベンダが優位を発揮できるケースもあると考えられる
必要な知識・スキル・体制
•複数のシステム間の連携を安定的に実現させるためには、仕様だけではわからない様々なノウハウが必要となることが多く、同種の業務に関する豊富な経験が欠かせない
•ユーザ企業の課題に応じて最適な組み合わせを選択することが必要な場合は、候補となるSaaS等について十分な知識を保有する必要があることから、各ケースの中でも最も高い(クラウドサービス活用に関する)スキルを必要とするものといえる
このアプローチに適した企業
•規模的には中小企業であっても、これまでに豊富なシステムインテグレーションの経験を有するITベンダ•特定の分野に特化した専門性を有し、ユーザ企業と密接なつながりを有するITベンダ
複数のSaaS等のサービスあるいはユーザ企業保有システムを組み合わせて最適なシステム構成を実現(インテグレータ)
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ITベンダ事例7:株式会社ブリスコラ
国内唯一のクラウドコンピューティング専門の事業企画会社として創業
クラウドコンピューティング専門の事業企画会社として、2010年に創業
複数のクラウドサービス間のデータ連携を行うサービスを2011年6月より提供開始
企業向けのクラウドに関する事業戦略、企画支援などのコンサルティングを行うとともに、クラウドの活用支援のためのサービス提供、インプリメンテーションのサービスを提供している。
2011年6月に、世界の主要なクラウドサービス、オンプレミスサービスの相互間のデータ連携を行うサービス「Concord」を開始。サービスはオープンソースを用いたSaaS型で提供されている。本サービスは中堅・中小企業を主たるターゲットとし、今後クラウド事業者等との提携を通じた普及が計画されている。
多くの既存クラウドサービスに対応するグローバルクラウド連携サービスを提供
クラウド専門の事業企画会社として創業
2010年グローバルクラウド連携サービス開始SaaS型サービスとして提供
2011年
(会社概要: 創業2010年 資本金3,060万円 本社東京都港区)
新サービス開始
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ケース8:クラウドサービスの活用によるユーザ企業の経営改善の実現
市場環境(ニーズ)
•ユーザ企業において自社システムを用いて行われている処理が非効率であったり、過大な情報システムが導入されている場合も多いと見込まれることから、クラウドサービスの活用を提案することでこれを改善し、ユーザ企業の業績を向上させることは事業として成立し得ると考えられる
事業リスク•クラウドが普及していくにつれて、市場は確実に縮小していく見込み•普及までの過渡的なビジネスとの割り切りも必要
競争優位の要件
•ユーザ企業に改善提案を行うために、情報システムに関する専門的知識は必ずしも必要ではない•よって経営コンサルタントなどがこうしたサービスを提供する場合と比較して、ITベンダが有利とはいえない•一方でクラウドサービスの導入や既存システムの移行と組み合わせて実施する場合は、ITベンダが実施することで効率化でき、コスト面も有利となる
必要な知識・スキル・体制
• ITコーディネータに準ずる知識、スキルを有することが望ましい•中小企業診断士に求められる知識も有効•代表的なクラウドサービスの導入経験・実績が必要•経営改善の効果を見積もるために、企業経営に関する知識が必要
このアプローチに適した企業
•小都市に立地するITベンダ•経営コンサルタント的なスキルを有する社員を有していたり、経営コンサルタントとの協働が可能なITベンダ
概 要•ユーザ企業の経営改善の手段として、どのようなクラウドサービスを活用すべきかのアドバイスを行う•ケース5やケース6との組み合わせで実施されることも多いと予想される
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ITベンダ事例8:日本クラウドコンピューティング株式会社
中小企業向けにクラウドコンピューティングの活用支援を行うことを目的に創業
中小企業向けにクラウドコンピューティングの活用支援を行うことに特化して、事業展開を実施
中小企業へのクラウドコンピューティングの導入に関する支援に特化する形で、コンサルティング、導入支援・開発、顧問・研修サービスを提供している。
独立系の事業者であることを活かし、顧客の経営改善の観点からのコンサルティングを行う。通常のITベンダ、システムインテグレータが事業開始時のコンサルティングの費用を明確にしない場合が多い中で、単発のコンサルティングの費用を企業規模別に明示している点が特徴的である。
自社製品・サービスをもたないことによる顧客志向のコンサルティングを実施
(会社概要: 創業2010年 本社東京都港区)
サービス名 内容 月額費用目安(税別)
IT経営顧問サービスクラウドコンピューティングを中心としたIT経営を、経営者の右腕として支援
60万円より
クラウドビジネス顧問サービスクラウドビジネスを展開する企業・部門向けのノウハウ提供や提携先支援等
130万円より
ITシステムサポートサービス新規システム検討のための情報収集から検討、導入、運用サポート等
19万円より
出典:日本クラウドコンピューティング株式会社WEBサイトより抜粋
提供されるコンサルティングサービスの例
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ケース9:ITが担う機能の周辺業務を代行(BPOサービス)
市場環境(ニーズ)
•零細企業、ベンチャー企業等で事業が拡大していく際に、自社で行う代わりに他社にアウトソースすることが選択される可能性がある
•伝統的な中小企業において、何らかの理由でこれまで自社で担当していた営業や財務管理等を自社で行えなくなった場合に、外部に委託することも考えられる
•ただし、これまでの一般的な中小企業の場合は外部委託を極力抑制し、内製化することに重点を置きがちであるため、中小ユーザ企業を対象とする市場は必ずしも大きいとはいえない
概 要•中小企業の業務のアウトソース先として、中小企業に代わってクラウドサービスを活用しながら効率的に実施する
事業リスク •大手代行サービス事業者が中小企業向けサービスを本格化すると、市場を失うリスクがある
競争優位の要件
•地方の同じ地域内の零細企業同士などの関係で、相手方企業の業務をITベンダが担当するなどの状況であれば、先方に発注意思があれば他社との競合もなく受注に至ることも想定される
•逆に一定規模以上の企業の場合は、大手の代行サービス事業者との競合となる。この場合、事業規模でコスト競争力が決まるため、中小ITベンダには不利な環境となる場合が多いと考えられる
必要な知識・スキル・体制
•企業経営や会計等の知識があることが望ましい•利用可能なSaaSサービスのうち、代表的なものについての機能や費用について精通していることが望ましい•業務代行の観点から、つねに顧客からの要望に応えるための対応窓口の体制を確保することが必要
このアプローチに適した企業
•かつて情報処理サービスを事業としていたなど、サービスとしてのデータ処理ビジネスの実績を有する企業•自社の業務処理用にPaaSやIaaS上にシステムを構築して使用しており、他社からの業務も受託することでコストメリットのある企業
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ケース10:クラウドを用いたBtoCサービスの提供
市場環境(ニーズ)
•携帯電話、スマートフォンの普及を通じて、クラウドを通じたアプリケーションやサービスの市場が拡大している
概 要 •需要の増減に柔軟に対応できるクラウドの特性を活かし、新たに個人向けのサービスを提供する
事業リスク •ユーザ数が拡大した場合、中小ITベンダで対応できるサポート範囲を超える可能性がある
競争優位の要件
•個人ユーザに対して付加価値の高いサービスが提供できれば、ITベンダの規模にかかわらず事業の拡大が可能
必要な知識・スキル・体制
•アプリケーション、サービスの構築に関しては、これまでのシステム構築のスキル・ノウハウが適用可能•今後はPC向けよりもスマートフォン向けの開発技術が必要になると思われる•個人向けサポートには、法人向けとは異なるノウハウが必要
このアプローチに適した企業
•個人へのサポートを行うことが可能であれば、企業の特徴は問わない
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ITベンダ事例9:ソフトイーサ株式会社
IPA事業成果の事業化を目的として創業された大学発ベンチャー
大学発ベンチャー企業ながら、発足時よりBtoC向けを含めたソフトウェア販売を実施
2010年に一部製品をオープンソース化
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の未踏ソフトウェア創造事業(当時)の未踏ユース部門で採択されたVPNソフトウェア「SoftEther 1.0」の商用化を目指して創業。販売当初は法人向け製品「SoftEtherCA」のみを有償とし、個人向けは無償配布とした。
2005年に発売された製品「PacketiX VPN」より、法人向け、個人向けを含めて有償化。現在は個人であっても、法人向けと同様のサービスを利用することが可能である。2010年には大学との共同研究として、製品版をベースにしたオープンソース版を公開し、個人を含めたユーザの選択肢を増やしている。
個人向けにも法人向けと同様のサービスを提供
大学発ベンチャーとして創業
2004年
オープンソース版製品のソースコード公開SaaS型サービスとして提供
2010年
(会社概要: 創業2004年 資本金4,430万円 本社茨城県つくば市 従業員数10名)
個人向け有償販売の開始
「PacketiX VPN」販売
2005年
事業化オープンソース化
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ケース11:大手ITベンダ向けサービスの提供
市場環境(ニーズ)
•大手ITベンダがクラウドを活用するようになっても、自社内にシステムを直接構築、運用できる人材は限られると想定されることから、当面の間、クラウドサービスの設定や運用を下請先ITベンダに発注する機会は少なくないものと見込まれる
•ただし、全体の市場や予算は非クラウド環境の場合と比較して小さくなるため、競合が激しくなったり、採算に合わない状況になる可能性もある
•クラウドを活用するためのツール等、新たに市場価値を有する製品やサービスを投入することで、新事業とすることも可能である
概 要 •これまでの大手ITベンダ向け下請開発を、クラウド環境を対象に行う
事業リスク•元請ITベンダから価値を評価されない限り、これまでより採算性が悪化すると予想されるため、不況時等の事業継続が困難となるおそれがある
競争優位の要件
•自社の開発環境等は差別化手段にはならず、クラウドサービスへの精通度や実績等が重要となるものと考えられる
必要な知識・スキル・体制
•クラウドサービスごとの特性や、高い性能を発揮させるためのノウハウを習得する必要がある•上記以外については、これまでの知見・経験やスキルが活かせる場合が多い
このアプローチに適した企業
•大手ITベンダの下請先として、代替不能と評価されているITベンダ•クラウド環境においても、設定や運用に高度な専門性を要する分野のITベンダ
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ケース12:ソフトウェア事業者によるコンソーシアムの設立
市場環境(ニーズ)
•クラウド化に伴い、充実した開発環境や体制を有しない企業でもユーザ企業の要望に応えることが可能な機会が増加
概 要•中小ITベンダによるコンソーシアムを結成し、ユーザ企業の多様なニーズに対して、各参加企業の得意分野を持ち寄ることで応え、総合的な受注増につなげる
事業リスク •コンソーシアム参加のメリットが一部企業に偏ると、コンソーシアムへの求心力が失われる
競争優位の要件
•コンソーシアムを通じてユーザ企業に対する付加価値(技術力、営業力、サポート力等)を提供できること
必要な知識・スキル・体制
•コンソーシアムの幹事企業にはコンソーシアム運用のためのマネジメント能力が求められる
このアプローチに適した企業
•得意な分野や実績を有するが、単独で事業展開を行う営業力をもたない企業
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ITベンダ事例10:株式会社みんなのクラウド
中小ソフト開発会社のクラウド事業立ち上げを支援する
中小ITベンダが、技術や人材資源の「共同拠出方式」で構築するクラウドモデルを提案
大手ITベンダのクラウド基盤を利用するのではなく、単独で事業化する機会を生み出すことが狙い
中小ソフト開発会社が生き残るためには、自らクラウド事業を立ち上げることが必要だとの訴えに賛同した中小ITベンダが共同で「株式会社みんなのクラウド」を設立。大手のクラウド基盤を利用してアプリケーションを売るばかりでなく、中小ITベンダが自らクラウド基盤をもつことで各社の存在価値を高めることを目指している。
共同拠出によって調達したサーバ機器、基本ソフトウウェア・ライセンス、人的資源などを用いて構築したクラウド基盤「みんなのクラウド」のIaaS、PaaSを用いて各社がビジネスを行う。第三者向けのサービス提供も可能であるため、自らクラウド・サービス・コンテンツを持たない中小規模事業者でも、クラウド・サービス再販事業者となることができる。
参加者拠出資源を利用して構築され運用されるクラウド基盤上でサービスを展開
(会社概要: 創業2010年 資本金100万円 本社東京都新宿区)
(株)みんなのクラウド
IaaS,PaaS提供共同利用提供
協賛者(パートナー)
協賛者(パートナー)
株主会社
株主会社
サーバ貸出 クラウドプラットフォーム運営
サーバ等
サーバ利用契約斡旋
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4.クラウド時代に向けた
ITベンダの競争力強化の方法
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クラウド時代のIT利活用プロセス
従来のプロセスクラウド時代の
プロセス概要
経営戦略策定IT戦略策定
(戦略策定)� 経営戦略やIT戦略の策定は場合によっては省略され、必要なサービスの明確化および選定からプロセスを開始する。
IT資源調達 サービス選定� 求めるサービスを明確化し、多様なサービスの中から最適なサービスを選ぶ。
IT導入 (サービス適用)� 必要に応じてサービスに合わせて業務を変更したり、サービスを最適化するためのパラメータの設定などを行う。
ITサービス活用サービス活用・評価
� 選定したサービスを活用し、評価する。評価の結果、選定したサービスが最適ではないと考えられる場合は、新たなサービスの選定を開始する。
クラウドサービスの普及により、まずサービスを試用してみて自社のニーズに合わなければ停止・変更するなどといったきわめて柔軟な
IT利活用が可能になる。これにより、従来、経営戦略策定から段階を踏んで実施することを理想形としていたIT利活用のプロセスが、以
下のように変化する可能性がある。クラウド時代においては、IT利活用のプロセスが柔軟になり、大幅に短縮化すると考えられる。
クラウド時代のIT利活用プロセスイメージ
(注) カッコ書きのフェーズは省略される可能性があるもの
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クラウドビジネスに必要な能力
クラウドをビジネスにするためにはITベンダが新たな能力を備える必要がある
自社システムの開発
もしくは主流パッケージの導入が前提
負担の重い初期開発・導入コスト
稼働後まで分からないIT化の成果
経営戦略策定からのプロセスに沿った
長期を要する開発・導入
多数の標準化されたサービスの中から自社にあったものを選択 (「作る」から「選ぶ」へ)
導入コストの低下
サービス試用の一般化
利用開始までの期間短縮
知識獲得力
サービス説明能力
サービス選定能力
サービスコーディネート能力
短期実行能力
柔軟対応力
従来(オンプレミスの時代)
クラウド時代
信頼感
クラウド時代に特に求められる能力
提案力
課題発見能力
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クラウドビジネスに必要な能力
中小ITベンダがユーザ企業のクラウド活用を支援するために必要となる能力等を以下に列挙する。これまでのようなユーザ企業の希望を
聞き取って実現する能力だけでなく、最新の動向を把握した上で、ユーザ企業に最適解を提案し、納得してもらうための能力が求められる。
①課題発見能力
概要�ユーザ企業の現状やIT利活用の水準を理解し、的確に把握できる能力
�ユーザ企業の現状から、隠された課題やニーズを発見できる能力
求められる場面等
� ユーザ企業のクラウド活用支援にあたっては、支援の前提として「現在どのような課題が存在するのか」を的確に把握することが求められる。
� まずは、現場を見たり、話を聞いたりすることで、支援するユーザ企業のIT利活用の現状を短期間で的確に把握することが必要。スピードが重視されるクラウド活用においては、この課題の発見にもスピード感が重要である。
� ユーザ企業自身が語る「目に見える課題」は、常に「本当に重要な課題」であるとは限らない。慎重に話を聞き、その内容を分析しながら、潜在的な「真の課題」や「真のニーズ」を見いだすことが求められる。
� 発見された真の課題について、ITの利活用で解決すべき事項とそうでない事項とを切り分け、IT化に関する課題を明らかにしておく必要がある。
習得方法� 課題の発見においては、経験を積むことがきわめて重要。ユーザ企業の支援経験を重ねることで、隠された課題を的確に把握する力が養われる。
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6161
クラウドビジネスに必要な能力
②提案力
概要� ユーザ企業にとって最適となるソリューションを作成する能力
� ユーザ企業が理解できる言葉でソリューションを説明し、相手に自らの意図を理解してもらう能力
求められる場面等
� ユーザ企業が企画競争(コンペティション)の形で調達する場合は、提案を行うことが必須となる。
� 上記以外でも、ユーザ企業が相談してきた内容をもとに、実施すべき内容を整理し、ユーザ企業に提示することはほとんどの業務において行われる。
� このほか、トラブル発生時の方針検討など、業務の開始時以外でも必要となる場面は多い。
� ユーザ企業の本業ビジネスをIT利活用により高次化できることを見せることが必要
習得方法
� 相手に受け入れてもらえる提案を行うためには、何よりも「相手を知る」ことが重要。顧客の置かれている立場や抱えている課題等について、情報収集を怠らないことが提案力の向上には必須である。
� 実践として提案の経験を積むことが重要であるが、単純に場数を踏めばよいというものではない。提案の機会毎に実現すべき目標を設定し、事後にそれが達成できたかどうかを反省して不足点について学習するなど、絶えず改善のための工夫を重ねることが望ましい。
� 提案力向上のために習得すべきスキルとしては、プレゼンテーション力だけでなく、コミュニケーション力が重要である。
6262
クラウドビジネスに必要な能力
③知識獲得力
概要
�必要に応じて必要なタイミングで新たなクラウドサービスに関する知識を短期間で獲得できる能力
�状況に応じて、必要な知識を持った人材をアレンジしたり、そのような人材にアクセスできる能力も含む(=知識調達力)
求められる場面等
� 今後も数多く登場することが予想されるクラウドサービスに関する知識は膨大であり、一人の個人がすべての知識を網羅することは容易ではない。よって、クラウド活用の際には、予め膨大な知識を獲得しておくというよりも、必要な場面で必要なクラウドサービスに関する知識を短期間で習得できる力が重要となる。
� また、このような「知識獲得力」の発展系として、必要な知識を持った人材をアレンジする力が求められることもある。自ら習得することが難しい知識やノウハウに関しては、それを“人材ごと”調達する力も必要である。
� なお、知識獲得力の前提として、既存のクラウドサービスやSLAに関する基礎知識やクラウド導入事例に対する知識などは予め有しておく必要がある。これらの基礎知識が、付加的な最新知識を効率的に習得するための基盤となる。
習得方法
� 「知識獲得力」の確立のためには、上述のとおり、一定水準の基礎知識を予め習得しておくことが必要。基盤としての基礎知識を有していれば、最新動向や応用知識を効率的に習得することが可能となる。
� 必要に応じて他の専門家と連携できる関係を日頃から築いておくことも重要。
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6363
クラウドビジネスに必要な能力
④サービス説明能力
概要
�専任のIT担当者やIT部門を持たない中小ユーザ企業の関係者に対して、ITサービスの内容や多様なサービスの違いなどを分かりやすく説明できる能力
�クラウドを導入するメリット(費用対効果)を中小ユーザ企業に分かりやすく伝えられる能力
求められる場面等
� 中小ユーザ企業にITサービスの導入を図る際には、そのITサービスの内容を十分に理解した上で、当該ITサービスによって何が可能になり、何が便利になるのかを、中小ユーザ企業に分かりやすく説明する力が求められる。
� 特に、今後はクラウドサービスをはじめ、多様なサービスの中から自社向けのサービスを選択する場面が増えることが予想されるため、ITベンダにはユーザ企業がサービスを選択する際のポイントや基準を提示する役割が期待されている。
� また、ユーザ企業には分かりにくいSLAをユーザ企業に代わって適切に評価し、それをユーザ企業に伝えることができる能力も高く期待されている。
習得方法
� 予め多様なサービスの違いについて熟知しておくことが必要。また、可能であれば、比較対象となるサービスを実際に試用しておき、ユーザ企業に対して自身の経験に基づいた助言を行えることが望ましい。
� 従来と同様に、サービスを実現する仕組みについても理解した上で、ユーザ企業の目線に立ち、平易な分かりやすい言葉で(技術的な専門用語を用いずに)ユーザ企業に対してサービス内容を説明する能力が必要である。
6464
クラウドビジネスに必要な能力
⑤サービス選定能力
概要�中小ユーザ企業の課題やニーズにあったITサービスの要件を明確化できる能力
�既存のITサービスの中から中小ユーザ企業の課題やニーズにあったITサービスを比較し、素早く選定することができる能力
求められる場面等
� 前頁に示したような中小ユーザ企業に対してITサービスを説明できる力とともに、支援先の中小ユーザ企業に適したITサービスを選定する力も重要である。
� 多様なサービスを比較吟味し、支援先の中小ユーザ企業に適したITサービスを選定する際には、選定時に考慮すべきポイントを熟知しておくことが望ましい。
� ITサービスの選定にあたっては、既存のサービスを比較し、最適なものを選択する方法のほかにも、支援先の中小ユーザ企業が必要とするITサービスの要件を明確化し、要件を適切に満たすITサービスを選定する方法もある。
習得方法
� 前提として、中小ユーザ企業の課題やニーズを的確に把握する前掲の「課題発見能力」が求められる。
� また、同じく前掲の「知識獲得力」を駆使し、多様なサービスを予め理解しておくことも必要である。
� 「サービス選定能力」の向上のためには、サービス導入事例とその効果に関する豊富な知識を獲得しておくとともに、それらを実際の支援において活用し、その効果を実感を持って体得しておくことが期待される。
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クラウドビジネスに必要な能力
⑥サービスコーディネート能力
概要�既存のITサービスを組み合わたり、調整するなどして、全体として中小ユーザ企業の課題やニーズにあったサービスを適用できる能力
求められる場面等
� 前掲の「サービス選定能力」の応用・発展系ともいえる能力。
� 多様なサービスが登場するこれからの時代には、中小ユーザ企業がITサービスを単独ではなく、複数組み合わせて利用するケースが増えると予想される。
� そのような状況の中では、複数のサービスを選定した上で、その総合的な効果を最適化することができる力が求められる。
� また、特定の分野・領域にとどまらず、中小ユーザ企業がニーズを有する複数の分野において最適なITサービスをコーディネートできる幅広い対応力も意味している。
習得方法
� 特定分野・領域のITサービスだけではなく、幅広いITサービスを視野に入れて、その機能や効果を把握しておくことが重要である。また、複数のITサービス間の機能の重複や技術面での相性等についても十分な知識が求められる。
� 前提として、中小ユーザ企業の課題やニーズを的確に把握するための「課題発見能力」のほか、幅広い分野に対応するために、前掲の「知識獲得力」をより一層強化することも必要である。
� さらに、複数のITサービス間の技術・性能面での相性等については、経験を経なければ分からないことも多いため、経験を通じて学ぶことも重要である。また、経験を補うものとして、導入事例等を把握しておくことも重要である。
6666
クラウドビジネスに必要な能力
⑦短期実行能力
概要
�素早いIT利活用の実現のために、中小ユーザ企業に対する説明や合意形成を短期間で実施し、最適なITサービスの「導入」を短期間で実現できる能力
�ITサービスの試用・調整・変更などを迅速に実行することで、ITサービスの「最適化」を短期間で実現できる能力
求められる場面等
� クラウドサービスが普及すると、ITサービスを従来以上に手軽に利用することが可能になる。よって、情報システムの自社開発を行う従来と比べて、ITサービスの利用開始までの期間は大幅に短縮される可能性が高い。
� 競合他社の多くが上記のような状況に置かれた場合、中小ユーザ企業が、優れたIT利活用によって競争力を高めるためには、他社よりも一段と素早いIT利活用が求められる。
� それを実現するためには、ITサービスに関する合意形成から選定・導入などの一連のプロセスを、可能な限り迅速に進める必要があり、「短期実行能力」とはこれを実現するための総合的な力を指している。
習得方法
� 「短期実行能力」の基盤となるのは、優れたIT利活用や素早いIT導入の必要性に対する強い認識である。IT利活用のスピードは、今や中小ユーザ企業にとっても、競争力を高めるための大きな要因になっている。この点についてITベンダが十分に認識するとともに、中小ユーザ企業の理解も深めることが、短期実行能力を発揮するための前提となる。
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クラウドビジネスに必要な能力
⑧柔軟対応力
概要�IT利活用のプロセスを必要に応じて柔軟に実行できる能力
�標準サポートの範囲外で中小ユーザ企業の悩みに答え、適切なサポートを柔軟に提供できる能力
求められる場面等
� ITサービスに多様化とともに、中小ユーザ企業にとっての選択肢も多様化し、中小ユーザ企業のIT利活用はこれまで以上に多様な形態となり得る可能性が高い。
� ITベンダには、このような中小ユーザ企業の実態の多様化に合わせて柔軟な形でIT利活用支援を実施できることが望まれる。
� クラウドサービスは標準的なサービスの形で提供されることが多いが、中小ユーザ企業がサービスを利用する際は、定型的なサポート以上の支援が求められることもある。
� このような場合における柔軟なサポートは、ITベンダにとっての差別化領域ともなり得る。中小ユーザ企業に密着した形で柔軟なサービスを提供することができれば、中小ユーザ企業の多様なニーズを幅広くつかむことができる。
習得方法
� 「柔軟対応力」を発揮する前提として、ITベンダ自身が中小ユーザ企業に対する柔軟なサービス提供を志向する必要がある。
� 中小ユーザ企業のさまざまな要望に対応するために、幅広い能力が求められる。そのような意味では、「柔軟対応力」は、ここまでに示した能力を総合した比較的高度な能力であるといえる。
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クラウドビジネスに必要な能力
⑨信頼感
概要�中小ユーザ企業が支援者を選ぶ際の最終的な決め手となる資質
�中小ユーザ企業の経営者や従業員が、「この人の言うことなら聞いてもよい」と思えるような雰囲気・人柄
求められる場面等
� 「信頼感」とは「この会社/人であればできる」という相手の実績や能力に対する信頼の高さである。中小ユーザ企業に対する支援を進める上では、最も重要な資質であると考えられる。
� 高い能力を備えているITベンダや個人であっても、「信頼感」が欠如している場合は、中小ユーザ企業との関係構築は難しい可能性が高い。特に、中小ユーザ企業との長期間の関係を構築する場合は、必要不可欠な資質であるといえる。
� 不特定多数のユーザを対象とする製品・サービスの場合、「信頼感」は「ブランド」とも読み替えられる。「ブランド」の構築も、競争力を確立するためには、きわめて重要な課題である。
習得方法
� 「信頼感」の根底には「実績」と「顧客志向」があると考えられる。
� 「実績」は一朝一夕で築くことが難しいものであるため、着実な努力が求められる。実績に基づく「自信」や「ブランド」が、「信頼感」の基礎となる。
� また、「信頼感」を醸成するためには「顧客志向」も重要である。支援相手である中小ユーザ企業の便益を第一に考える姿勢も「信頼感」の前提となる重要な要素であると考えられる。
![Page 20: 3.今後中小ITベンダが 目指すべきビジネスモデルとは?](https://reader034.vdocuments.pub/reader034/viewer/2022042513/58a2d4451a28ab2f358b6bd6/html5/thumbnails/20.jpg)
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新たなサービスの提供に際して必要な能力の比較
新たなサービスの種類
各ケースについての能力の必要性
①課題発見能力
②提案力
③知識獲得力
④サービス
説明能力
⑤サービス
選定能力
⑥サービスコー
ディネート能力
⑦短期実行能力
⑧柔軟対応力
⑨信頼感
ケース1:SaaSサービスの構築提供 ○ ◎ ◎ ○ ○ △ ○ ◎
ケース2:自社でのクラウド提供 ○ ◎ ◎ ○ ○ △ ○ ◎
ケース3:クラウド上の受託開発 ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ◎
ケース4:クラウドの運用・保守代行 ○ ○ ○ ○ ○ ◎
ケース5:地域密着型コンサル ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ◎ ◎
ケース6:SaaS導入支援 ○ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ◎
ケース7:最適システム構成実現 ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎
ケース8:ユーザ企業の経営改善 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎
ケース9:IT関連の周辺業務代行 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎
ケース10:BtoCサービス提供 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ◎
ケース11:大手ITベンダ向けサービス ○ ○ ○ ○ ○ ◎
ケース12:コンソーシアム設立 ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎
3章で示した中小ITベンダの新たなサービスとして示した5種類について、上述した能力等の必要性の有無を整理したものを以下に示す。
記号凡例:◎=特に必要な能力、○=必要な能力、△=場合により必要となる能力
新たなサービスの提供に際して必要となる能力