「治験・臨床試験」について考える

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「治験・臨床試験」について考える 15/02/26 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

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Health & Medicine


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Page 1: 「治験・臨床試験」について考える

「治験・臨床試験」について考える

15/02/26 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

Page 2: 「治験・臨床試験」について考える

トラスツズマブ(ハーセプチン®)の効果

数十万人/年の乳がん患者の命を救う!!

化学療法+トラスツズマブ

化学療法単独

スレイモン医師ら. New Engle J Med 344: 783, 2001

Page 3: 「治験・臨床試験」について考える

新薬開発までの遠い道のり

出典:米国会計検査院レポート“New  Drug  Development”November  2006

10,000 新規化合物 1薬剤

承認 250 薬剤 5 薬剤

化合物の発見 細胞実験 動物実験

臨床試験 審査

第一相試験 20-100名の患者

第三相試験 1000-5000名の患者

第三相試験 100-500名の患者

1/10,000の確率  全行程15年

Page 4: 「治験・臨床試験」について考える

なぜ臨床試験・臨床研究が必要か?

Ø  患者さんのために、最善・最高の医療を提供したい

Ø  がん診療にも限界がある

Ø  臨床試験・臨床研究の必要性

Page 5: 「治験・臨床試験」について考える

最善の治療とは何か?

¢ 最善・最良の治療 =標準治療

¢ 最新治療 ≠ 最善・最良の治療

l 最新治療とは実験的・研究的治療のこと

研究的治療 臨床試験(治験) 標準治療

Page 6: 「治験・臨床試験」について考える

臨床試験とは?

•  医学の進歩には必要であるが、倫理的、科学的に妥当であることが大切 (ヘルシンキ宣言、世界医師会2007年)

治験:薬の承認のための臨床試験

•  患者に不必要な治療を承認

•  患者に必要な治療を非承認

薬害

ドラッグラグ

Page 7: 「治験・臨床試験」について考える

臨床試験のリスクとベネフィット

n  ベネフィット n  最新の治療が受けられる n  専門治療機関での治療が受けられる

n  リスク n  効果がない無駄な治療を受ける可能性 n  有害な副作用

Page 8: 「治験・臨床試験」について考える

ランダム化比較試験 (RCT)の結果による 乳癌手術療法の進歩

拡大乳房切除術 乳房単純全摘術 1970s

1980s

1990s

2000s

乳房単純全摘術 乳房温存術

乳房温存術+ センチネルリンパ節生検

VS

VS

VS 乳房温存術+ 腋窩リンパ節

乳房温存術+ センチネルリンパ節生検

Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

Page 9: 「治験・臨床試験」について考える

ランダム化比較試験 (RCT)の結果による 乳がん術後化学療法の進歩

無治療 CMF療法 C: エンドキサン M: メソトレキセート F: 5-FU

CMF療法 AC療法 A: アドリアマイシン C: エンドキサン

AC療法 AC療法 PTX x 4

AC療法 PTX x 4

AC療法 Weekly PTX x 12

AC療法 Weekly PTX x 12

1970s

1980s

1990s

2000s

PTX: パクリタキセル

Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

Page 10: 「治験・臨床試験」について考える

ローア

プ調査

データ解析

第Ⅲ相臨床試験:ランダム化比較試験(RCT)

新治療群

標準治療(対照群・プラセボ)  (標準治療がない場合は無治療)

患者さん 数百~数千名

NEJM 2001

Page 11: 「治験・臨床試験」について考える

データの信頼度(高い順)

A 最も信頼できる

多数の患者さんが参加し、よく計画された臨床試験の結果からのデータ

B まあまあ信頼できる 少数の患者さんから得られたデータ

C あまり信頼できない

体験談、偉い先生の経験に基づくデータ、細胞・動物実験のデータ

Page 12: 「治験・臨床試験」について考える

ランダム化比較試験(トップ10ヶ国) 1995年-1999年

0 100 200 300 400 500 600 700

410 316 310

244 237 226 196 192 106

1846

~ ~

J Epidemiol, 2002,11,46-47

Page 13: 「治験・臨床試験」について考える

臨床研究論文数、日本は25位 日経メディカル 2012.3.7

Page 14: 「治験・臨床試験」について考える

15/02/26 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

Page 15: 「治験・臨床試験」について考える
Page 16: 「治験・臨床試験」について考える

• 製薬会社と医師との癒着(多額な研究費の見返り)

• データねつ造され、販売促進として使われた

ディオバン事件の問題点

Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

なぜ、このような不正がチェックできなかったのか?

臨床試験の制度はどうなっているのか?

再発を防止するために何が必要なのか?

Page 17: 「治験・臨床試験」について考える

臨床試験の倫理と科学

試験に参加した患者の安全と利益

信頼できるデータ正しい結論

将来の患者の安全と利益

倫理性 科学性

科学的に妥当なプロトコール

臨床試験

Page 18: 「治験・臨床試験」について考える

臨床研究と倫理 ~国際的ガイドライン~

• ニュールンベルグ綱領 1947 •  ニュールンベルグ裁判:ナチスの人体実験への反省

•  ヒトを対象とする研究は自発的な同意が不可欠

• ヘルシンキ宣言 1964 •  世界医師会により採択された倫理指針

• CIOMSガイドライン 1993 •  Council of International Organization of Medical Sciences  (国際医科学評議会) ISBN 92 9036 056 9

•  ICHガイドライン 1991 •  Quality-品質、Safety-安全性、Efficacy-有効性:臨床試験

•  E6:ICH-GCP:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令

Page 19: 「治験・臨床試験」について考える

ヘルシンキ宣言

1.  患者・被験者利益の尊重

2.  本人の自発的・自由意思による参加

3.  インフォームド・コンセント取得

4.  倫理審査委員会の存在

5.  科学的に妥当な医学研究であること

1964 世界医師会により採択された倫理指針

Page 20: 「治験・臨床試験」について考える

ディオバン臨床試験はヘルシンキ宣言に従っているか?

1.  患者・被験者利益の尊重 NO 製薬企業の利益?医師の利益?

2.  本人の自発的・自由意思による参加 YES

3.  インフォームド・コンセント取得 YES

4.  倫理審査委員会の存在 YESだがなぜチェックできなかったか?

5.  科学的に妥当な医学研究であること NO

「臨床評価」vol.26 : 409-417,1999.

Page 21: 「治験・臨床試験」について考える

GCP (Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施に関する基準)とは?

1996年 ICH(国際ハーモナイゼーション会議)-GCPの最終合意:日・米・欧合同での臨床試験の基準の制定

1997年 薬事法に基づくGCP省令施行:日本では、医薬品の製造承認に関わる「治験」にのみ適用とした

2003年 GCP省令改正:医師主導治験について:医師も治験を行えるようになった

2012年 GCP省令改正:GCPガイダンス発出

Page 22: 「治験・臨床試験」について考える

臨床研究

なぜ日本で臨床試験不正事件が起きたのか?

15/02/26 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

臨床試験

治験 医師主導

企業主導

薬事法・GCPで規制:未承認薬を対象

臨床試験倫理指針で規制: 承認済みの薬を対象

日本の臨床研究・臨床試験はGCP準拠でなく、法律で規制されていない!

Page 23: 「治験・臨床試験」について考える

治験 医師主導臨床試験

規制 薬事法(GCP) 臨床研究倫理指針

政府への届出 必須 必須でない

インフォームドコンセント 文書 文書

審査 治験審査委員会 倫理審査委員会

補償 必須 必要

監査・モニタリング・査察 必須 記載なし

重篤有害事象報告 施設長 PMDA

厚生労働省医薬局

施設長 厚生労働省医政局

治験 vs. 医師主導臨床試験

15/02/26 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

罰則規定なし

Page 24: 「治験・臨床試験」について考える

• 監査: Ø  データの信頼性を確保するため、第三者が臨床試験が適切に行な

われたかどうか事後に調査すること Ø  カルテの直接閲覧、データベースなどの調査 Ø  品質保証

• モニタリング: Ø  臨床試験が適切に行なわれているかどうか、臨床試験中に行なわ

れる調査 Ø  データセンターによる中央モニタリング、施設モニタリング Ø  品質管理

監査・モニタリングとは?

15/02/26 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

Page 25: 「治験・臨床試験」について考える

1.  承認された薬剤

2.  多数の競合品の存在

3.  医師への、不釣合いな多額な見返り:奨学寄付金

4.  製薬企業の営業部門からのスポンサーシップ

5.  試験デザインがPoor (RCTでない、盲検でない、プラセボがない)

6.  データ管理がずさん

Seeding Trial(販売促進試験)の見抜き方

FDA; N. Engl. J. Med. 331 (20): 1350–53.

Page 26: 「治験・臨床試験」について考える

1.  承認された薬剤:YES

2.  多数の競合品の存在:YES(ARB)

3.  多額な奨学寄付金:YES

4.  製薬企業の営業部門からのスポンサーシップ:YES

5.  試験デザインがPoor :YES(PROBE法)

6.  データ管理がずさん:YES(GCPでない、データセンターがない、製

薬企業社員による解析)

ディオバン臨床試験は販促試験か?

FDA; N. Engl. J. Med. 331 (20): 1350–53.

Page 27: 「治験・臨床試験」について考える

日本では治験以外の臨床試験は法律で規制がなされていない

日本の臨床試験の問題点

いい加減な臨床試験・未承認薬・未承認治

療法も規制なく患者に投与できる!!

Page 28: 「治験・臨床試験」について考える

保険の効かない高額な詐欺的治療に気を付けましょう!

日本ではこのような研究(臨床試験)・治療とも言えない

レベルの治療が規制されていないのです!!

このようなものを野放しにしておいてよいのでしょうか?

Page 29: 「治験・臨床試験」について考える

これらの治療法は、倫理的・科学的に許されることでしょうか?

Page 30: 「治験・臨床試験」について考える

氾濫するがん情報!!

Page 31: 「治験・臨床試験」について考える

臨床試験に入るのにはお金がかかりますか?

n  治験の場合は、無償提供が原則

n  市販薬を使う臨床試験の場合は、保険適応範囲内

n  保険が効かず高額になる例外は、一部の「先進医療

」や米国などから個人輸入をする場合のみ

 

Page 32: 「治験・臨床試験」について考える

「がん患者を食い物にするインチキ治療」を見分けるコツ

1. ○○免疫クリニック、最新○○免疫療法

2. ○○%の患者に効果

3. 体験談が載せられている

4. 保険が効かない高額医療

5. 奇跡の○○治療、末期がんからの生還

→2つ以上当てはまるとインチキは確実!!

Page 33: 「治験・臨床試験」について考える

我が国で臨床試験をすすめていくために

患者としてできることは?

n  「ニセ最新治療・臨床試験もどき」に騙されないようにしましょう

n  すべての臨床試験が適切に行なわれるような法整備が必要(治験以外もGCP規準へ、未承認薬の届け出制度)

Page 34: 「治験・臨床試験」について考える

臨床試験を法規制へするようパブコメしましょう

Page 35: 「治験・臨床試験」について考える

厚生労働省 PMDA

患者参加の臨床試験へ

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