コミュニケーション・メディアによって形成される多層的ネットワークの研究...

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コミュニケーション・メディアによって形成される多層的ネットワークの研究

──高校の学級の事例に着目して――東京大学大学院人文社会系研究科修士 1 年 前嶋 直樹第 88 回日本社会学会大会@早稲田大学戸山キャンパス

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研究の視座―ネットワークの多層性 Haythornthwaite(2001)遠隔学習のクラスの内部で, Web 上の学習用掲示板,チャット, E メール,対面的コミュニケーションのそれぞれによって形成されるネットワークの形態が比較されている.

コミュニケーション・メディアが形成するネットワークをそれぞれ相互に独立した層と捉え,比較するという発想.

Media C

Media B

Media A

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本研究の趣旨

本研究の趣旨

対面的コミュニケーションが支配的な相互作用な形式となっている高校という社会的空間において,対面的コミュニケーションによって形成されるネットワークと, E メール・ IM によって形成されるネットワーク,および SNS によって形成されるネットワークを,セグリゲーションという観点から比較する.

学校内セグリゲーション

セグリゲーション segregation… 「社会的空間の中で,相互作用に課される全ての制約―それが物理的な空間に関わっていようといなくとも―はセグリゲーションの形態である.」 (Freeman 1978: 413)

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二者間の「つながりやすさ」が,属性によってどれほど規定されているかに注目.

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先行研究

学校という社会的空間において,性別,学年,エスニシティ,社会階層 , 課外活動等によって,生徒同士の相互作用が境界付けられていることはよく知られている. (Shrum et al. 1988; Moody 2001; Goodreau et al. 2009; Currarini 2010)

通常のセグリゲーション研究では,現実での相互作用によって紐帯が定義される.あるいは,相互作用の形式を区別しない.だが,多様なコミュニケーション・メディアの普及によって,生徒間の相互作用の手段は,教室での会話などの現実での相互作用に限らず, CMC にまで拡大しているはず.

研究課題

セグリゲーションを駆動する原理であるホモフィリーや焦点が,各メディアが形成するネットワークで,どのように発動しているか.そこに差異は存在するのかを検討する.

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ホモフィリーと焦点

ホモフィリー homophily… 「類似した人びとの間の接触は,似ていない人びとの間の接触よりも,高確率で発生するという原理」(McPherson et al. 2001: 416) 焦点 focus, foci… 「その周りで共同的な活動が組織されるような社会的,心理学的,法的,物理的な構成体 entity 」 (Feld 1981: 1016)

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用いるデータの概要

対象 長野県の A 高校の第2学年

調査日 2013 年 12 月 12 日

N(回答拒否や現実での

孤立点を除く)35

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質問内容(一部)

性別…ホモフィリーの効果を測るための変数 所属部活…焦点の効果を測るための変数 文系 / 理系の別…焦点の効果を測るための変数 対面的コミュニケーションを通じた社会関係  質問文:「よく喋ったり、ごはんを一緒に食べたりする人」

メール・ IM (インスタントメッセンジャー)を通じた社会関係  質問文:「 E メールや、 LINE 等の IM でメッセージをやりとりする人」

SNS を通じた社会関係  質問文:「よく、 SNS やブログで、コメントをつけたり、リプライを送ったりする人」 9

記述統計

男性 女性

クラス1 18 17

文系 理系

クラス1 17 18

弓道 硬式テニス

ソフトテニス 吹奏楽 サッカー軟式野球 野球 生物

4 4 3 3 3 2 2 2

所属部活の分布(所属数2以上のみ)

性別の分布

文理の分布

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ネットワーク(色分けは性別)

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ネットワーク(色分けは文理)

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ネットワーク(色分けは部活)

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視覚的情報から言えること

• 全てのネットワークにおいて,強力な性別のセグリゲーションが起きていることが視覚的に確認できる.

• 文理については,性別による擬似的な関連の可能性がある.

• 部活については,グループ数が多すぎて視覚的に焦点の効果がどれほど働いているかを読み取ることは困難.

①構造的効果等の他の要因を統制した上で,②「個々の紐帯が発生する確率」にホモフィリーや焦点が どの程度寄与するか.

指数ランダムグラフモデル (ERGM)

⇔  logit( 

観測されたネットワークが観測される確率を従属変数,ネットワークが含む構造や,ダイアド(二者関係)を構成するノードの属性などを独立変数とした統計モデル.→グローバルな構造を生み出すローカルなパターンの特定. (Robins et al. 2007)

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指数ランダムグラフモデル (ERGM)

⇔  logit( 

正規化定数 係数 ネットワーク統計量(network statistics)

change statisticsij以外の全ての紐帯

観測されたネットワーク

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分析に使用するモデル

logit (𝑃 (𝑌 𝑖𝑗=1∨𝑛 actors ,𝑌 𝑖𝑗𝑐 )=¿

分析に使用するモデル

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logit (𝑃 (𝑌 𝑖𝑗=1∨𝑛 actors ,𝑌 𝑖𝑗𝑐 )=¿

エッジ数の変化量(常に1)

ノードが両方とも男性の時1,それ以外は0.

ノードが両方とも女性の時1,それ以外は0

ノードが両方とも同じ部活の時1,それ以外は0.ノードが両方とも文理において一致していたら1,それ以外は0.

エッジを共有するパートナー (ESP) の数の分布から導かれる値の変化量(詳しい説明は略)

結果(配布資料の表 1 )

• ホモフィリーの効果は,対面>メール・ IM (> SNS ).

• 対面では男性の方がホモフィリーの効果が高いが,メール・IM では女性のほうが高い.

• 焦点の効果は,対面よりもメール・ IM で高いが,文理の効果は部活に比べて僅か.

• ESP(≒友達の友達が友達になりやすい傾向 ) の効果は,メール・ IM よりも SNS で高い(ただし α の値が違うため比較困難).

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結果(配布資料の表 1 )

現実のネットワークと比較して,性別に関するホモフィリーの係数が,和ネットワーク ( 全ての層のネットワークのノードとエッジの和集合 ) で低くなっている.何故このようなことが起きるのか?

あるコミュニケーション・メディアの層にしか出現しない紐帯に注目.

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あるコミュニケーション・メディアに特有の紐帯

あるコミュニケーション・メディアに特有の紐帯 (Media-Specific Ties, MST)

SNS のネットワークにおける MST

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で囲まれた紐帯=この層に特有の紐帯

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MST について(配布資料の表 2 )

• 全てのネットワーク・属性において, MST がそれ以外の紐帯よりも,異質な者同士をつなげる傾向にあることが分かる.

• しかしながら,こうした紐帯の形成メカニズムは不明.

MST のインプリケーション

• 異質な者同士をつながる紐帯として有名なのは「弱い紐帯」(Granovetter 1973) だが,紐帯の強度だけでなく,ある紐帯がどのメディアによって形成されているかに注目する必要性がある.

• 現実の相互作用だけを見ていると,性別に関するホモフィリーの傾向を過大評価することになってしまう.

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まとめ

• どのコミュニケーション・メディアで形成されるネットワークにおいても,様々な次元でのセグリゲーションが発生しているが,ホモフィリーや焦点の効果,構造的効果はそれぞれ異なる.

• あるコミュニケーション・メディアに特有の紐帯にはヘテロフィリーの傾向がある.

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参考文献①

Currarini, S., Jackson, M. O., & Pin, P. (2010). Identifying the roles of race-based choice and chance in high school friendship network formation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 107(11), 4857-4861.Feld, S. L. (1981). The focused organization of social ties. American journal of sociology, 1015-1035.Freeman, L. C. (1978). Segregation in social networks. Sociological Methods & Research, 6(4), 411-429.Goodreau, S. M., Kitts, J. A., & Morris, M. (2009). Birds of a feather, or friend of a friend? using exponential random graph models to investigate adolescent social networks*. Demography, 46(1), 103-125. Granovetter, M. S. (1973). The strength of weak ties. American journal of sociology, 1360-1380.

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参考文献②

Harris, J. K. (2013). An introduction to exponential random graph modeling (Vol. 173). Sage Publications.Haythornthwaite, C. (2001). Exploring multiplexity: Social network structures in a computer-supported distance learning class. The information society, 17(3), 211-226.McPherson, M., Smith-Lovin, L., & Cook, J. M. (2001). Birds of a feather: Homophily in social networks. Annual review of sociology, 415-444.Moody, J. (2001). Race, school integration, and friendship segregation in america1. American journal of Sociology, 107(3), 679-716.Robins, G., Pattison, P., Kalish, Y., & Lusher, D. (2007). An introduction to exponential random graph (p*) models for social networks. Social networks, 29(2), 173-191.Shrum, W., Cheek Jr, N. H., & MacD, S. (1988). Friendship in school: Gender and racial homophily. Sociology of Education, 227-239.