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図 1 (A) 体幹部の神経管の断面図。背腹軸に沿って、少なくとも 13 種類の前駆細胞領域に分けられる。 (B) 底板領域と p3 前駆領域が抗体染色で分離できる。 (C,D) Shh を時期特異的に強制発現したときの表現型。早い時期に Shh を強制発現すると神経管のほぼすべての細胞が底板細胞( floor plate; 赤色)に変化した (C) が、後期に強制発現すると p3 神経前駆細胞(水色)に分化した (D) 。このことは、神経前駆細胞が同じShh に対して時間依存的に異なる反応を示したことを意味する。
図 2 ソニック・ヘッジホッグ( Shh )のシグナルが、繊毛を介して核へと伝達される様子。
図 3 Prominin-1 (Prom1) の遺伝子欠損マウスの、視神経における表現型。 (A,B) 外節と呼ばれる領域が崩壊し、 (C,D) ロドプシンの細胞内の局在異常が認められた。
研究・教育の 概要
多 様 な 神 経 細 胞 の 産 生 と 、 そ の 機 能 維 持 の 分 子 メ カ ニ ズ
ム
中 枢 神 経 系 に は 多 様 な 神 経 細 胞 や そ の 前 駆 細 胞 が 存 在 し
そ の 多 く が 発 生 過 程 に お い て 産 生 さ れ 、 正 確 に 配 置 さ れ ま
す 。 私 た ち の 研 究 室 は こ の 分 子 機 構 を 解 明 す る こ と を 主 要
な 目 標 に し て い ま す 。 神 経 細 胞 の 分 化 と 配 置 は 、 細 胞 外 部
か ら の 誘 導 因 子 ( 分 泌 因 子 ) と 、 そ れ に 対 す る 前 駆 細 胞 の
多 様 な 反 応 に よ り 達 成 さ れ ま す 。 本 研 究 室 で は 、 こ の 誘 導
因 子 と 細 胞 の 反 応 性 の 関 係 、 ま た 誘 導 因 子 に よ っ て 制 御 さ
れ る 2 次 シ グ ナ ル に つ い て 、 ニ ワ ト リ や マ ウ ス 胚 を モ デ ル
と し て 用 い て 分 子 レ ベ ル で 明 ら か に し ま す 。 ま た 、 い っ た
ん 産 生 さ れ た 神 経 細 胞 の 機 能 を 維 持 す る メ カ ニ ズ ム を 知 る
こ と も 重 要 で す 。 私 た ち は 、 発 生 学 研 究 か ら 得 ら れ た 新 規
の 細 胞 生 物 学 的 原 則 を 応 用 し 、 現 在 治 療 法 が 確 立 さ れ て い
な い 難 病 に 対 し て そ の 原 理 を 解 明 す る こ と を 目 指 し ま す 。
主 な 研 究 テ ー マ
1 ) 神経管のパターン形成における神経前駆細胞の性質の変遷に関する研究
脊 椎 動 物 の 体 幹 部 に は 脊 髄 の 原 基 で あ る 神 経 管 が 存 在 し 、
感 覚 神 経 、 運 動 神 経 や そ れ ら を つ な ぐ 介 在 神 経 な ど 多 様 な
神 経 細 胞 が 整 然 と 配 置 ( パ タ ー ン 化 ) さ れ て い ま す 。 こ の
パ タ ー ン 形 成 に は 、 モ ル フ ォ ゲ ン と 呼 ば れ る 分 泌 因 子 ( シ
グ ナ ル 因 子 ) が 関 わ っ て お り 、 濃 度 依 存 的 に 細 胞 の 運 命 を
決 定 す る こ と が 知 ら れ て い ま す 。 一 方 で 、 シ グ ナ ル 分 子 の
受 け 手 で あ る 神 経 前 駆 細 胞 の 性 質 も 時 々 刻 々 と 変 化 し 、 同
じ シ グ ナ ル に 対 し て も 異 な る 反 応 を 示 し ま す 。 こ の 反 応 様
式 は 、 「 コ ン ピ テ ン ス 」 と 呼 ば れ 、古典発 生 生 物 学上の大
き な仮説の 1 つ と な っ て い ま す 。 私 た ち は 、 こ の モ ル フ ォ
ゲ ン と コ ン ピ テ ン ス の 関 係 を詳細 に 知 る こ と に よ り 、 ど の
ように し て比較的 少数の シ グ ナ ル 分 子 か ら 多 く の 細 胞 が 産
出さ れ る の か の 分 子 メ カ ニ ズ ム を 知 る こ と を 目 標 に し て い
ま す 。
2 ) ソ ニ ッ ク ・ ヘ ッ ジ ホ ッ グ ( Sonic Hedgehog; Shh )の細胞内シグナル伝達に関する研究
腹側神 経 管 の パ タ ー ン 形 成 を 制 御 し て い る Shh は 、 (ⅰ)
細 胞 に シ グ ナ ル が 導入さ れ る と き に 、 細 胞 表 面 に出現 す る
繊 毛 を 介 し て行わ れ 、 ま た (ⅱ) タ ー ゲ ッ ト 遺 伝 子 の 発 現
が開始さ れ る ま で に か か る 時 間 が 、他の シ グ ナ ル 分 子 に比
べ て非常 に長い な ど 、ユニ ー ク な シ グ ナ ル 伝 達 様 式 を 持 ち
ま す 。 そ こ で 、 Shh の 細 胞 内 シ グ ナ ル に 関 わ る タ ン パ ク 質
を 同 定 す る ほ か 、単分 子 レ ベ ル で Shhシ グ ナ ル に 関 わ る 因 子 を追跡す る こ と
に よ り 、 そ の挙動 を詳細 に調べ ま す 。
さ ら に そ の シ グ ナ ル 伝 達 の ス ピ ー ド と
パ タ ー ン 形 成 の 関 係 を 明 ら か に し ま す 。
3) 神経細胞の機能維持に関する研究
い っ た ん 産出さ れ た 神 経 細 胞 の 機 能
を 維 持 す る こ と も 重 要 で す 。 た とえば 、
あ る膜タ ン パ ク 質 を コ ー ド す る 遺 伝 子
に 変 異 が起こ る こ と に よ り 、 遺 伝 性 の
眼科疾患を は じ め と す る 多 く の 病態が
引き起こ さ れ る こ と が 明 ら か に な っ て
い ま す が 、 そ の メ カ ニ ズ ム は 現 在 の と
ころ不明 な ま ま で す 。 私 た ち は 、 モ デ
ル 動 物 や 細 胞 生 物 学 的 解析を 用 い て こ
の 原 因 を突き止め 、 細 胞 の 機 能 維 持 や 、
疾病 に 対 す る 治 療 法 や予防法 を提案す
る こ と を 目 指 し て い ま す 。
主 な 発 表 論 文 ・ 著 作
[1] Luehders et al., Development, 142, 3351-3361, 2015
[2] Hori et al., Molecular Biology of the Cell, 26, 2005-2019, 2015
[3] Dellett et al., Investigative
Ophthalmology and Visual Science, 56, 164-176, 2015
[4] Sasai et al., PLOS Biology, 12, e1001907, 2014
[5] Hori et al., EMBO Reports, 15, 175-184, 2014
[6] Sasai et al., WIREs Dev Biol, 1, 753-772, 2012
[7] Dessaud et al., PLOS Biology, 8, e1000382, 2010
[8] Ribes et al., Genes and Development,
24, 1186-1200, 2010
発生医科学
バイオサイエンス研究科
准教授 :笹井 紀明 :[email protected]助教 :西(堀)晶子 :[email protected]
http: //bsw3.naist. jp/sasai/