目 次 オリエンテーション オリエンテーション...

6
オリエンテーション 5 オリエンテーション……………………………………………………………………………… 5 第 1 部 保育者に求められるマナーとコミュニケーション・スキル 1章 信頼される保育者の要件 ……………………………………………………… 10 2 マナーの基本 1 ― あいさつ・おじぎ ………………………………………… 15 3 マナーの基本 2 ― 身だしなみ ………………………………………………… 17 4 マナーの基本 3 ― 言葉遣い …………………………………………………… 19 5 マナーの基本 4 ― 電話応対 …………………………………………………… 24 6 マナーの基本 5 ― 来客応対 …………………………………………………… 28 7 マナーの基本 6 ― 訪問 ………………………………………………………… 31 8 マナーの基本 7 ― 文書 ………………………………………………………… 34 9 コミュニケーションの基本 1 ― 聞く ………………………………………… 40 第 10 章 コミュニケーションの基本 2 ― 話す ………………………………………… 44 第 11 章 コミュニケーションの基本 3 ― クレーム対応 ……………………………… 48 第 2 部 ケーススタディ 第 12 章 保護者とのコミュニケーション………………………………………………… 52 第 13 章 保育の場における保育者間の人間関係………………………………………… 61 第 3 部 実習前にこれだけは 第 14 章 実習に当たって…………………………………………………………………… 70 第 15 章 実習生に求められる基本マナー………………………………………………… 74 第 16 章 実習における子どもとのかかわり……………………………………………… 78 第 17 章 福祉施設での実習………………………………………………………………… 82 どのような保育者を目指すのか 皆さんにとって “ よい保育者 ” とはどのような人を指すのでしょうか。 保育者は、子どもたちの成長を見守り、その発達を援助することが大きな役割です。そのために は、子どもとだけではなく、周囲の人々とよい関係を築いていくことが求められます。子どもが好 きだから保育者になりたいという人は大勢いますが、皆さんは一人の社会人として、あらゆる面で 子どもたちのお手本になれるよう振る舞わなくてはならないのです。 ここに、2人の保育者がいます。保育士の鈴木真由美さん、幼稚園教諭の田中真人さんです。 彼らは日々の業務の中で子どもたちに温かく接するだけでなく、同じ施設で働く上司や同僚、子 どもたちの保護者、地域の人々、他の施設の保育者たちと、大人としてしっかりした人間関係を築 いています。 ここでは、2 人がさまざまな場面でどのような振る舞いをしているのか見てみましょう。2 人の 立ち居振る舞い、話し方、考え方は、このテキストを通してぜひ皆さんに身に付けてもらいたいこ とです。 2 人の様子を見て、自分がどのような保育者になりたいのか考えてみてください。 目 次 信頼される保育者のためのコミュニケーション・スキル 【テキスト】 保育士の 鈴木真由美さん 幼稚園教諭の 田中真人さん

Upload: others

Post on 08-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

オリエンテーション

5

オリエンテーション………………………………………………………………………………5

第1部 保育者に求められるマナーとコミュニケーション・スキル

第 1 章 信頼される保育者の要件 ……………………………………………………… 10

第 2 章 マナーの基本1 ― あいさつ・おじぎ ………………………………………… 15

第 3 章 マナーの基本2 ― 身だしなみ ………………………………………………… 17

第 4 章 マナーの基本3 ― 言葉遣い …………………………………………………… 19

第 5 章 マナーの基本4 ― 電話応対 …………………………………………………… 24

第 6 章 マナーの基本5 ― 来客応対 …………………………………………………… 28

第 7 章 マナーの基本6 ― 訪問 ………………………………………………………… 31

第 8 章 マナーの基本7 ― 文書 ………………………………………………………… 34

第 9 章 コミュニケーションの基本1 ― 聞く ………………………………………… 40

第10章 コミュニケーションの基本2 ― 話す ………………………………………… 44

第11章 コミュニケーションの基本3 ― クレーム対応 ……………………………… 48

第2部 ケーススタディ

第12章 保護者とのコミュニケーション ………………………………………………… 52

第13章 保育の場における保育者間の人間関係 ………………………………………… 61

第3部 実習前にこれだけは

第14章 実習に当たって …………………………………………………………………… 70

第15章 実習生に求められる基本マナー ………………………………………………… 74

第16章 実習における子どもとのかかわり ……………………………………………… 78

第17章 福祉施設での実習 ………………………………………………………………… 82

どのような保育者を目指すのか

皆さんにとって “よい保育者 ”とはどのような人を指すのでしょうか。保育者は、子どもたちの成長を見守り、その発達を援助することが大きな役割です。そのためには、子どもとだけではなく、周囲の人々とよい関係を築いていくことが求められます。子どもが好きだから保育者になりたいという人は大勢いますが、皆さんは一人の社会人として、あらゆる面で子どもたちのお手本になれるよう振る舞わなくてはならないのです。ここに、2人の保育者がいます。保育士の鈴木真由美さん、幼稚園教諭の田中真人さんです。彼らは日々の業務の中で子どもたちに温かく接するだけでなく、同じ施設で働く上司や同僚、子どもたちの保護者、地域の人々、他の施設の保育者たちと、大人としてしっかりした人間関係を築いています。ここでは、2人がさまざまな場面でどのような振る舞いをしているのか見てみましょう。2人の立ち居振る舞い、話し方、考え方は、このテキストを通してぜひ皆さんに身に付けてもらいたいことです。2人の様子を見て、自分がどのような保育者になりたいのか考えてみてください。

目 次

信頼される保育者のためのコミュニケーション・スキル【テキスト】

保育士の鈴木真由美さん

幼稚園教諭の田中真人さん

6 17

この章で学ぶこと

場面1■対保護者の振る舞い方1

さまざまな組の保護者がいる退園時間。鈴木さんは、自分のクラスの子どもと保護者だけでなく、皆に対してにこやかにあいさつをしています。

場面2■対保護者の振る舞い方2

田中さんは保護者からの指摘に、真摯な態度で応対します。

1.身だしなみ

身だしなみは、身の回りについて気を配ることであり、服装や髪を整え、言葉や態度をきちんと丁寧にすることです。ここでは、主に服装や髪など外見を整えることで仕事に集中しやすい環境をつくり、周りからの印象をよくするための要件について学びます。服装は心を表すと言われます。社会人としてはTPO(時、場所、場合)に合わせた服装が求められますが、どのような場面でも、清潔感や周囲との調和を心掛けましょう。例えば、保育所・幼稚園への訪問や面接にはスーツを、保育所・幼稚園での日常的な仕事には活動しやすい服を、保育所・幼稚園以外での仕事(講習会など)ではスーツや好感の持てる服を着用します。靴も服装に合わせて選びます。保育所・幼稚園の日常的な仕事に慣れてくると、改まった場や研修にも施設での仕事着で参加してしまうことがあります。場に応じた身だしなみを心掛けましょう。

身だしなみとは、場面に合わせて服装や髪など外見を整えることです。身だしなみを整えることで、

心の準備ができ、相手に与える印象もよくなる効果があります。

身だしなみのポイントは、第一に清潔であること。次に仕事内容に合わせた動きやすい機能的な服装

であること。さらにまわりの雰囲気や園のカラーに合わせて調和がとれていることです。

具体的にどのような身だしなみをしたらよいかを学び考え、実行しましょう。

第3章マナーの基本 2 ― 身だしなみ

「先生、さようなら!」「さようなら!」

「……はい、……はい。申し訳ありません」

訪問や面接のとき

保育所・幼稚園内での仕事のとき

講習会など

18 19

この章で学ぶこと

1.社会人としての話し方、言葉遣い

学生時代とは異なり、保育者としての仕事の場ではさまざまな年齢、立場の人々と話します。そこでは、常に相手を意識した話し方、言葉遣い、会話の内容が求められます。職場での上司や同僚との会話は感じよく、正確に分かりやすく話すことが大切です。また、保護者などと話すときは相づちやうなずきを交えて聞き、相手の心情を汲み取って接するようにしましょう。聞き上手になることは、話し方がうまくなる一歩です。さらに、社会人にふさわしい言葉遣いは、保護者や職場の人々との良好な人間関係を築くうえで大切です。学生時代のようにくだけた話し方や若者言葉は控え、敬語を使った話し方をします。慣れないうちは難しいかもしれませんが、場面に応じて適切な敬語で話すことができれば、社会人として一人前です。特に年齢の近い保護者には友達のようにくだけた口調で話しがちですが、立場をわきまえ、相手を尊重した話し方をしましょう。

仕事の場では、相手に敬意を表した話し方、言葉遣い、会話の内容が求められます。

基本的には、いつも明るくはっきりとした話し方をすることです。また、「マジ?」「ウソッ」といっ

た断片的な物言いをせず、「~です」「~ます」と語尾まできちんと整った話し方を心掛けましょう。

適切な言葉遣いは、人間関係を良好にします。そのため、敬語の仕組みを理解し、きちんと身に付け

ることが大切です。何度も練習して、相手や状況に応じた話し方を身に付けましょう。

第4章マナーの基本 3 ― 言葉遣い

2.身だしなみとおしゃれの違い

身だしなみは、おしゃれとは異なります。身だしなみを整えるのは、仕事を行いやすくするためであり、一緒に仕事を行う周囲の人々へ敬意を払うためでもあります。一方、おしゃれは自分自身が着飾ることです。お祝いのパーティーに招待されたときなどは、時・場所・場面に合わせて個性を演出すればよいでしょう。保育士・幼稚園教諭の身だしなみの基本は、清潔感があり、子どもとともに動きやすい服装です。ヒールの高い靴は緊急時に必要な行動の妨げになり、長い爪やアクセサリーは子どもを傷つけることがあるため不適切です。

●基本ワーク ペアで

2人一組になって、身だしなみの各項目についてチェックすべき点を考え、そのチェックポイントにし

たがって、お互いに身だしなみをチェックしましょう。

《項目》服装、髪型、メイク、爪、アクセサリー、靴 など

若者言葉はNG!

「ヤバい」「ヤバッ」「ウソッ」「マジ?」「おはよっす」「私的には……」「~みたいな」「ありえなくない?」

誤った言葉遣いに注意!

×「~になります」 → ◯「~です」×「~のほう」 → ◯ 不要×「よろしかったでしょうか」 → ◯「よろしいでしょうか」×「食べれない」(ら抜き言葉) → ◯「食べられない」×(目上の人に)「ご苦労さまです」 → ◯「お疲れさまでした」×(謝るとき)「すみません」 → ◯「申し訳ございません」×(命令・指示を受けて)「はい分かりました」 → ◯「はい、承知(いたし)ました」   ◯「はい、かしこまりました」

◯動きやすく、清潔な服装◯下着の色が透けないように◯爪は短く切りそろえる (爪の間の汚れもチェック)◯アクセサリーは控えめに◯髪型は、前髪が目にかからないように

 (長い場合は束ねる)◯メイクはナチュラルでさわやかな印象になるように

◯バッグ、時計、ハンカチ、手帳、筆記用具、財布、携帯電話などは、毎日の仕事に耐えるような機能性の高いものに

×キャミソールやミニスカートなど、肌を露出する服装

×不自然なつけまつげや細すぎる眉

×派手なメイク (ノーメイクも避ける)×カラーコンタクト×ピアスやイヤリングなど、大きなアクセサリー

×ヒールの高いサンダルやミュールなど音のする靴、ブーツ

×強すぎる香水×派手なネイル×派手すぎる、あるいは高級すぎるバッグや時計

 (キャラクターのついたものやスポーツタイプも避ける)

40 41

この章で学ぶこと

第 9章コミュニケーションの基本 1 ― 聞く‖

(2)相づち・うなずき一般に私たちは、相手の話を聞く際に相づちを打ちます。「あなたの話をよく(真剣に)聞いていますよ」というサインです。話す側も、聞く側の相づちやうなずきによって、聞く側が理解してくれているかどうかを確認しています。その結果から判断して、表現を工夫したり、話の軌道修正を図ったりするのです。相づちは相手の話に同意できたときに打つものと思われがちですが、同意表現だけが相づちではありません。同意するしないにかかわらず、相手の話の内容を理解したときも相づちを打ちます。分からないときは「ちょっと待って」「どういうこと?」など、分からないという反応をすることも大切です。心の込もった相づちやうなずきは、話す側に安心感を与えます。自分の話を理解してくれていると感じるからです。相手がどんどん話したくなるように、話の内容によって、大きくうなずいたり、相づちを打ったりしましょう。ただし、相づちの速さや回数、うなずく動作には、気をつけなければならないことがあります。次のような場合には、相手の話を乱したり、ストップさせてしまうため、気をつけましょう。

× あまり頻繁に、回数多くうなずくと、相手はよい印象を抱かない。「自分の話はもう聞きたくないのかもしれない」と感じる

× うなずく動作は、上から下にするもの。これを反対に(下から上に)うなずいた場合には、顎であしらわれた感じがする

また相手が言ったことを繰り返したり(リピート、おうむ返し)、要点を整理して言い換えたりすれば、「あなたの話をちゃんと聞いて理解していますよ」というメッセージが伝わり、相手は話しやすくなります。

第9章

人の話は、聞こうと思っていなくても自然と私たちの耳に入ってきます。しかし、他者と良好な関係

を築くためには、「意識して」積極的に相手の話を聞く姿勢が必要です。

「きく」には、「聞く(hear)」「聴く(listen)」「訊く(ask)」がありますが、特に、意識的、意欲的、

積極的に人の話をきくのは「聴く」であり、心、つまり気持ちを入れて聴くことが大切なのです。

本章では、人の話を聞く際のポイントについて学びます。

コミュニケーションの基本 1 ― 聞く

1.傾聴

人の話を聞く際には、「傾聴」することが大切だといわれます。「傾聴」とはどのような聞き方なのでしょうか。「傾聴」は文字どおり、相手の話に耳を傾けて、よく聞く姿勢を指します。ぼんやりと聞くのではなく、「気持ちを集中して」聞くことです。人は皆、「自分のことを分かってほしい」という思いを抱いています。自分の話を聞いて気持ちを理解してくれる人に心を開くのです。相手が言いたいと思っていることを言えるように、相手が話しやすくなるように聞くことが「傾聴」です。話の聞き方によって会話がどんどん発展する場合と、話がストップしてしまう場合があります。どのような聞き方の場合にそれらは起こるのか、具体的な動作やしぐさを見ていきましょう。

(1)姿勢と表情身体を相手の方に向け、軽く姿勢を正し、身を乗り出すようにしてやや前傾姿勢で聞くと、相手は「自分の話に関心を持ってくれているのだな」と感じます。

× 貧乏揺すりや、頻ひん

繁ぱん

に足を組み替える動作は、落ち着きのなさを表す。相手の話のテンポを崩させる

× 腕組みの姿勢は猜さい

疑ぎ

心しん

を表す。相手に威圧感を与えるまた、軽く微笑むような感じで口角を少し上げ、表情を柔らかく保つと、親しみやすさが伝わります。このような表情で聞くと、相手は安心して話すことができます。視線は相手の額や目元のあたりから喉元にかけて、楕円形を描いた範囲におき、優しく見つめるようにします。視線の高さは相手とできるだけ同じにします。

× 話している相手を見ずに、視線をキョロキョロさせると、聞いていない、落ち着かない印象を与える

× あまり見つめすぎることは、相手に圧迫感や威圧感を与える× 高い位置から話を聞くのは、横柄な感じを与える

さまざまな相づち

はい

すばらしい

すごいですね

やっぱり

なるほど

そうですね

ええ

勉強になります

初めて知りました

それは知りませんでした

そうなんですか私もそう思います

さすがですね

52 53

この章で学ぶこと

第 12章保護者とのコミュニケーション‖

●基本ワーク ひとりで

保護者とコミュニケーションを図る基本について考えます。次の文の(  )に適する語句を下の語群

から選び書き入れてみましょう。

●保護者とのコミュニケーションを支えるもの

①子どもの(       )への願いを保育者と保護者が共有する。

②園の保育に関する(       )を共有する。

③(       )のコミュニケーションを積み重ねることにより、(       )を醸成する。

【語群】  情報  信頼関係  幸福  日常

●保護者とのかかわり方の基本

①親の気持ちや心配な点を(       )、一緒に考えていこうとする。

②子どものよいところを踏まえるとともに、極力(       )な表現を使う。

③個々の子どもの特性という視点を持ち、ほかの子どもと(       )しない。

④特定の人に偏よらずに(       )を保つよう努める。

⑤親しき仲にも(       )ある対応をする。

⑥よく知らないこと、担任個人で判断できないこと、担任個人で判断してはいけないことについては、基本的には

即答を避け、(       )に相談をする。

⑦(       )としての適切な対応ができるように、自己研鑽を積み、保育者に必要な知識をさらに身に付

ける。

⑧個人情報については(       )を守る。

⑨謝罪が必要な場合には、(       )をもっておわびをし、経緯説明や責任回避の言い訳に終始しないよ

うにする。

⑩事前に方針を決められるものは園全体で取り決め、トラブルを回避できるように、あらかじめ(       )

しておく。

【語群】 比較  園長や主任  礼節  守秘義務  専門家 誠意よく聞き   保護者へ周知  公平性  肯定的

第12章

新人の保育者が戸惑うことの一つが、保護者への対応です。心を込めて行っているにもかかわらず、

それを誰もが好意的に受け止めてくれるとは限りません。不平や不満など、結果的に困ったことになる

こともあります。保護者の姿はさまざまです。子どもの健やかな成長のためにも、保護者と向き合うこ

とは避けて通れません。

本章では、保護者にどのような対応をしていけばよいのか、具体的な事例を通して考えます。

保護者とのコミュニケーション

1.保護者とのコミュニケーションの基本

子どもの成長には、彼らを取り巻く環境が大きな影響を与えます。その中心となるのが保護者と保育者です。この両者が温かい関係を築けたとき、子どもは心の安定が図られ、自発的な活動に積極的に取り組むことができます。保育者が保護者とコミュニケーションを図る機会は、送迎時の直接的なものと連絡帳やクラス便りによる文書によるものが一般的です。これ以外にも、保育参観や個人面談をはじめ、個々の相談事例などを通して関係性が築かれていきます。

保育者 保護者

子ども

心の安定子どもにふさわしい生活

共に子どもの幸福を願う情報の共有信頼関係

54 55

第 12章保護者とのコミュニケーション‖

②園長や石田先生の母親への対応で、よかった点はどこでしょうか。

③母親と園とのコミュニケーションが復活した背景には、母親の気持ちにどのような変化があったのでしょうか。

④ハルキくんが園で元気を取り戻したのは、どのようなことが作用したからだと思いますか。

2.具体的事例における保育者の対応

保護者とのかかわりにおいては、うれしいことばかりではなく、苦情への対応やおわびをしなければならないこともあります。対応を誤ることにより、問題が大きくなり、信頼関係が壊れていくこともあります。ここでは、このような事態に陥らないように、保護者や子どもたちの気持ちを汲みながら、信頼関係を維持し向上させていくための方法を考えていきます。

事例1

次のケースを読み、グループで話し合いましょう。

①母親が伏し目がちになり、話もせずに帰ってしまうようになったのは、どのような気持ちからでしょうか。

2歳6か月のハルキくんは外で遊ぶのが大好きな元気のよい子どもです。お母さんと一緒に徒歩で通園して

きます。お母さんはあいさつをして、少しお話をしていかれます。

最近、ハルキくんの着替え袋に汚れたままのものが入っていたことが何度かあったので、「お母さん、お着替

え入れ替えるのを忘れていらっしゃいましたね」と担任の石田利枝先生が声を掛けました。その日から、お母

さんは送迎のときも伏し目がちになり、お話もせずに帰ってしまうようになりました。

石田先生は自分の対応が悪かったのではないかと考えていました。ハルキくんも、最近、少し元気がないよ

うに感じます。そこで園長に相談して、園長と一緒に保護者と面談の機会を設けました。

すると、最近、家庭の中の不和のために心が落ち着かなくて、ハルキくんのためにも悪いと思っていること

を打ち明けられました。園長は、ハルキくんのためにも、お互いに協力してできる限りのことをしていきまし

ょうということ、園はお母さんの理解

者になりたいので無理をせずにいつで

も話しに来てほしいということを伝え

ました。石田先生も、できる限りハル

キくんを抱きしめる時間を持ちたいと

話しました。

お母さんの姿に好不調の波はありま

したが、これ以降、コミュニケーショ

ンをとり続けることができています。

ハルキくんも元の明るさを取り戻して

外で遊ぶのに夢中になっています。