国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 忽那 賢志 氏 ·...

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1 講演Ⅰ 「蚊が媒介する感染症について」 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 忽那 賢志 氏

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    講演Ⅰ 「蚊が媒介する感染症について」

    国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院

    忽那 賢志 氏

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    2016/6/14 感染症を媒介する蚊対策講習会

    蚊が媒介する感染症について国立国際医療研究センター 国際感染症センター 忽那賢志

    蚊の種類 イエカ Culex ヤブカ Aedes ハマダラカ Anopheles

    疾患 日本脳炎ウエストナイル熱

    デング熱チクングニア熱

    ジカウイルス感染症

    マラリアフィラリア症

    活動時期 夕方~夜間 日中 夕方~夜間

    屋内/屋外 屋内または屋外 主に屋外 主に屋外

    活動場所 農村部 都市部 都市部と農村部

    蚊の種類と代表的な感染症

    Jong Travel and Tropical Medicine Manual, 4th ed.を参考に作成

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    日本脳炎とは

    ✤ その名の通り、日本をはじめとしたアジアで流行している蚊媒介性感染症

    ✤ ほとんどの人は感染しても発症しないが、感染者のうち1%弱の人は脳炎症状を呈する。脳炎になると死亡率・後遺症が残る確率が高い

    ✤ 現在、日本ではワクチン接種により発症者は低く抑えられている

    日本における日本脳炎患者報告数

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    1946 1951 1956 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001

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    報告症例数

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    2002

    1954-1966; 勧奨接種 1976~平常時臨時接種 1989; 北京株導入 1967-1975; 特別対策

    1989; 北京株導入

    日本脳炎患者報告数の変化

    ⽇日本脳炎患者数は1950年年代には⼩小児を中⼼心に年年間数千⼈人の発⽣生があったと考えられている。1965年年には千⼈人以下になったが、1966年年は2,000⼈人を超え、患者は55歳以上の⾼高年年齢にピークがみられた。1967年年〜~76年年に特別対策として⼩小児のみならず⾼高齢者を含む成⼈人に積極的にワクチン接種が⾏行行われ、患者は急速に減少、1980年年代は年年間数⼗十⼈人の報告となった。 1990年年に⼀一時50名を超える患者が報告されたものの、その後急速に減少し1992年年以降降昨年年まで毎年年10名以下の報告に留留まっている。

    多屋ら.わが国の日本脳炎に関する疫学情報.第7回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会

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    日本における日本脳炎患者報告数

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    1946 1951 1956 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001

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    1982 1987 1992 1997 2002

    1954-1966; 勧奨接種 1976~平常時臨時接種 1989; 北京株導入 1967-1975; 特別対策

    1989; 北京株導入

    日本脳炎患者報告数の変化

    ⽇日本脳炎患者数は1950年年代には⼩小児を中⼼心に年年間数千⼈人の発⽣生があったと考えられている。1965年年には千⼈人以下になったが、1966年年は2,000⼈人を超え、患者は55歳以上の⾼高年年齢にピークがみられた。1967年年〜~76年年に特別対策として⼩小児のみならず⾼高齢者を含む成⼈人に積極的にワクチン接種が⾏行行われ、患者は急速に減少、1980年年代は年年間数⼗十⼈人の報告となった。 1990年年に⼀一時50名を超える患者が報告されたものの、その後急速に減少し1992年年以降降昨年年まで毎年年10名以下の報告に留留まっている。

    多屋ら.わが国の日本脳炎に関する疫学情報.第7回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会

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    19494946 1951 1956 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001

    日本脳炎ワクチンの普及により日本脳炎の発症者は低く抑えられている

    ↓蚊による感染症に対する意識が希薄

    日本脳炎は「昔の感染症」ではない!

    http://www.sankei.com/region/news/150912/rgn1509120051-n1.html

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    蚊の種類 イエカ Culex ヤブカ Aedes ハマダラカ Anopheles

    疾患 日本脳炎ウエストナイル熱

    デング熱チクングニア熱

    ジカウイルス感染症

    マラリアフィラリア症

    活動時期 夕方~夜間 日中 夕方~夜間

    屋内/屋外 屋内または屋外 主に屋外 主に屋外

    活動場所 農村部 都市部 都市部と農村部

    蚊の種類と代表的な感染症

    Jong Travel and Tropical Medicine Manual, 4th ed.を参考に作成

    訪日外国人旅行者数および
日本人海外旅行者数の推移

    観光庁. 統計情報より(http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/in_out.html)

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    1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012発生動向調査年別報告数一覧:http://www.niid.go.jp/niid/ja/all-surveillance/2085-idwr/ydata/4405-report-ja2012.html

    日本でのデング熱報告数

    健 感 発 0 8 2 7 第 1 号

    平成 26 年8月 27 日

    都 道 府 県

    各 保健所設置市 衛生主管部(局)長 殿

    特 別 区

    厚生労働省健康局結核感染症課長

    ( 公 印 省 略 )

    デング熱の国内感染症例について(第一報)

    日頃から感染症対策への御協力を賜り厚くお礼申し上げます。

    今般、さいたま市内の医療機関から、さいたま市衛生主管部局を通じ、海外渡航

    歴がないにもかかわらず、デング熱(四類感染症)の感染が疑われる患者(別添1)

    について情報提供があったことから、国立感染症研究所において確認検査を実施し

    たところ、デング熱の患者であることが確認されました。

    患者には海外渡航歴がないことから、国内でデング熱に感染したと考えられます。

    現在、さいたま市は、厚生労働省及び関係自治体と協力して、疫学調査(患者の周

    辺者等における症例探索等)を実施しているところです。

    つきましては、本事例(デング熱の国内感染事例)について、貴管内の医療機関

    等の関係者へ情報提供するとともに、海外渡航歴がない場合であっても、平成26年

    度厚生労働科学研究(※)が取りまとめたデング熱診療マニュアル案(別添2)等

    を参考の上、デング熱が疑われる症例については、検査の実施を検討するよう注意

    喚起をお願いします。また、デング熱の国内感染が疑われる事例については、速や

    かに保健所への情報提供を行っていただくよう協力要請をお願いします。

    なお、本年1月、日本国内でデング熱に感染した可能性のあるドイツ人患者が報

    告されたことを受け、平成26年1月10日付け健感発0110第1号及び平成26年1月28

    日付け事務連絡を発出したところです。また、当該事例を踏まえ、平成25年度厚生

    労働科学研究(※※)において、デング熱の国内感染事例が発生した場合の対応・

    対策(感染地の特定や他の感染者の探索、媒介蚊対策等)について手引き案が取り

    まとめられましたので、業務の参考として配布いたします(別添3)。

    ※「国内侵入・流行が危惧される昆虫媒介性ウイルス感染症に対する総合的対策の確立

    に関する研究」(研究代表者:国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦室長)

    ※※「我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に対する総合的対策の確立

    に関する研究」(研究代表者:国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦室長)

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    デング熱が日本で流行した背景

    ✤ 蚊による感染症に対する日本人の意識が希薄であった

    ✤ 旅行者の増加にともない輸入デング熱症例も増加傾向にあった

    海外で感染し、日本でデング熱を発症したヒト

    媒介蚊(ヒトスジシマカ)デング熱発症者を吸血することによりデングウイルスを獲得し、他のヒトを刺すことによりデングウイルスを感染させる

    海外渡航歴はなく代々木公園でいた人

    デングウイルス デングウイルス

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    国内の発生状況

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    報告数�人�

    発 症 日

    デング熱の国内感染症例の発生状況(平成26年8月27日~9月22日公表:発症日別)

    9月 8月

    (発症日不明の4名を除く138名)

    感染推定地• 代々木公園周辺(122名)• 新宿中央公園(9名)• 代々木公園周辺または新宿中央公園(1名)• 神宮外苑または外濠公園(1名)• 千葉県千葉市(1名)• 外濠公園または都立青山公園(1名)• 東京都台東区(1名)• 外濠公園(1名)• 不明(5名)

    厚生労働省HPより

    デング熱の症状

    ✤ 熱、頭痛、節々の痛み、筋肉痛などがみられることが多い

    ✤ 熱は5~7日くらい続くことが多い

    ✤ 鼻水、咳、ノドの痛みなど「かぜ」や「インフルエンザ」のときにみられる気道症状はみられないことが多い。ときどき下痢が現れることがある

    ✤ 熱が下がってくる頃に発疹がでる

    ✤ ときに出血症状(鼻血、吐血、下血、皮下出血など)が現れることがある

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    デング熱の検査所見

    ✤ 白血球(ウイルスから身を守る免疫機能を果たす)と血小板(血液を固める機能を持つ)が減るのが特徴

    ✤ 白血球や血小板の低下は医師がデング熱を疑うきっかけになる

    デング熱の治療

    ✤ デングウイルスに効く薬はまだない

    ✤ 大半が自然に治る病気であるが、ごく稀に重症化することがあるためデング熱に罹ったら病院で正しく診断をしてもらい適切に経過観察を受けるべきである

    ✤ 発熱が1週間ほど続き、脱水になりやすいため適宜点滴治療を行う

    ✤ 出血症状がひどい場合には輸血を行うこともある

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    どんなときにデング熱を疑う?

    ✤ デング熱が流行している地域で蚊に刺されて3~7日後に、鼻水、咳やノドの痛みなどの気道症状を伴わない発熱が現れたとき

    ✤ 蚊に刺された覚えがなくても、流行地域に行った後や周囲でデング熱が流行っている状態で同様の症状があればデング熱の可能性を考える

    ✤ 高い熱が続いていて、下がってきた頃に発疹が出てきたとき

    蚊の種類 イエカ Culex ヤブカ Aedes ハマダラカ Anopheles

    疾患 日本脳炎ウエストナイル熱

    デング熱チクングニア熱

    ジカウイルス感染症

    マラリアフィラリア症

    活動時期 夕方~夜間 日中 夕方~夜間

    屋内/屋外 屋内または屋外 主に屋外 主に屋外

    活動場所 農村部 都市部 都市部と農村部

    蚊の種類と代表的な感染症

    Jong Travel and Tropical Medicine Manual, 4th ed.を参考に作成

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    ジカウイルス

    ✤ デングウイルスや
日本脳炎ウイルスと同じ
フラビウイルス科に属する

    ✤ ウガンダ・エンテベ近郊の
ジカの森のアカゲザルから1947年に分離されたことに由来

    ✤ 血清型は1つのみ

    Viruses 2015, 7(1), 219-238

    ジカ熱の広がり ~2005

    ✤ ジカウイルスはアフリカ大陸、アジア大陸などで見つかっている

    ✤ 実際のジカ熱症例はこれまでにウガンダ、ナイジェリア、カンボジア、マレーシア、インドネシアからの報告があった

    Correspondence

    Submissions should be made via our electronic submission system at http://ees.elsevier.com/thelancet/

    www.thelancet.com Vol 386 July 18, 2015 243

    Zika virus: following the path of dengue and chikungunya?

    On May 7, 2015, the Pan AmericanHealth Organization issued an alertabout potential Zika virus (ZIKV)transmission in northeast Brazil.1 Thishas now been confirmed with widespread of the disease, underscoringthe potential for ZIKV to spread

    globally, similar to dengue (DENV)and chikungunya (CHIKV) viruses.

    ZIKV is an emerging arthropod-borne virus (arbovirus) that was firstisolated from a Rhesus monkey inUganda, in 1947. This arbovirus isrelated to DENV and they have similarepidemiology and transmission cyclein urban environments. Until recently,only sporadic human ZIKV infectionswere reported. In 2007, ZIKV emergedoutside of Asia and Africa for the first

    time and caused an epidemic onYap Island in the Federated States ofMicronesia,2 which was followed bya large epidemic in French Polynesiain 2013–14.3 Subsequently, ZIKV spread to several countries in Oceania(figure).4

    The clinical presentation of ZIKVinfection is not specific (mild fever,rash, arthralgia, and conjunctivitis)and can be confused with otherdiseases, especially dengue and

    Figure: Distribution of Zika and chikungunya viruses before 2005 and their expansion worldwide and in Oceania between 2005 and 2015Isl=island. Circles represent the occurrence of an outbreak. Data are from Weaver and colleagues (2015),5 Cao-Lormeau and colleagues (2014),3 Nhan and Musso (2015)6, and Musso and colleagues (2014).7 Data for Vanuatu are from ProMED (http://promedmail.org), and data for New Caledonia are from The Network of Sentinel Physicians in New Caledonia (http://www.gouv.nc/portal/page/portal/dass/librairie/fichiers/29228252.PDF). Other data are available from the European Centre for Disease Prevention and Control (http://ecdc.europa.eu/en/publications/_layouts/forms/Publication_DispForm.aspx?List=4f55ad51-4aed-4d32-b960-af70113dbb90&ID=1309).

    Up to 2005 Emergence 2005–15

    Up to 2005

    Oceania

    2005–15

    Northern Mariana IslHawaii

    Marshall IslGuam

    Federated States of Micronesia

    Palau

    Solomon Isl

    Fiji Isl

    New Caledonia

    Norfolk Isl

    Tonga Cook Isl

    Pitcairn Isl Easter Isl

    TokelauTuvalu

    KiribatiNauru

    American Samoa

    Niue

    SamoaWallis and FutunaVanuatu French Polynesia

    Key:Zika virusChikungunya virus

    Australia

    Papua New Guinea

    Lancet. 2015 Jul 18;386(9990):243-4.