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痙縮の重症度評価支援システム
秋田大学 大学院理工学研究科
技術部数理・電気電子情報学系
技術職員 齋藤正親
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痙縮とは,脳の錐体路の障害によって生じる症状の一つで,病的に筋緊張が亢進する状態のこと.
症状:
急激な関節の受動運動の際に筋緊張が亢進する.
(1) Young RR: Spasticity: a review. Neurology 44 (Suppl 9): S12-S20, 1994
引っ張る
背景
特徴:「速度依存性」ある関節を他動的に速く動かしたときに抵抗が大きく,ゆっくり動かせば抵抗が小さくなる (1).
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Modified Ashworth Scale (MAS)
急速な高齢化に伴い中枢神経系への障害を持つ患者が増加
痙縮患者も増加する傾向にある.
代表的な上肢痙縮重症度評価手法
• 0 :筋緊張に増加なし
• 1 :屈曲にて可動域終わりに抵抗あり
• 1+ :可動域の1/2以下で抵抗あり
• 2 :筋緊張の増加がほぼ全可動域を通して認められる
• 3 :他動運動は困難である
• 4 :屈曲あるいは伸展ができない
重症度
低
高
6段階評価
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Modified Ashworth Scale (MAS)
急速な高齢化に伴い中枢神経系への障害を持つ患者が増加
痙縮患者も増加する傾向にある.
代表的な上肢痙縮重症度評価手法
• 0 :筋緊張に増加なし
• 1 :屈曲にて可動域終わりに抵抗あり
• 1+ :可動域の1/2以下で抵抗あり
• 2 :筋緊張の増加がほぼ全可動域を通して認められる
• 3 :他動運動は困難である
• 4 :屈曲あるいは伸展ができない
重症度
低
高
6段階評価
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検査担当者の主観的評価および経験への依存特に,軽度の痙縮(MAS評価で1以下)の場合,リハビリテーションの過程における患者の回復度をきめ細かく評価できない.
従来技術とその問題点
力覚センサとジャイロセンサを用いてパーキンソン病患者の筋強剛を評価する技術が公開されている.
• モーションセンサのみを用いる本技術に比べて構成が複雑である.
• 筋強剛と痙縮は症状が異なるため,従来技術をそのまま痙縮の重症度評価に適用可能か不明である.
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目的
• モーションセンサのみの簡易な構成で痙縮重症度を評価する手法の提案
• MAS評価1以下の痙縮重症度の定量的評価手法の考案
磁気式MoCapを用いて角度を定量的かつ高分解能で計測できる肘関節角度計測システムを開発した.
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開発した上肢動作計測システム
G4:磁気式MoCap装置• トランスミッタ1個• レシーバ2個• 無線式• 60Hzで測定• 位置,姿勢情報(6自由度)
を計測
PC:計測用パソコン
*MoCap:モーションキャプチャ 7
レシーバの装着位置
筋肉の伸縮によるズレが発生しにくい箇所に装着する.
肩
手
肘頭
レシーバr1 レシーバr2
3〜5cm3〜5cm
背中から見た右腕
レシーバr1およびレシーバr2の装着位置
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肘関節角度検出手法
痙縮の診断において,腕に分度器を当てて計測する.
肘関節の角度の経時変化がわからない
困難
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肘に分度器をあてずに角度の経時変化を計測できる
を考案した.
「超分度器法」
検査方法検査参加者痙縮患者(軽度) : 5名健常者 : 5名
サンプリング周波数:60Hz 10
Upper Arm
初期姿勢 90°
完全伸展0°
Fore Arm痙縮の検出
範囲
*本検査は秋田大学倫理審査委員会の了承を得て実施した.
肘関節角度の経時変化
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健常者患者
角度の経時変化から痙縮発生を検出するのは困難
痙縮発生角度検出手法の提案
痙縮の発生時,腕に抵抗が発生し,屈曲伸展運動の速度が変化する
角加速度が変化する
速く動かすと大抵抗発生!!
ひっかかった!
速く引っ張る!
角加速度変化に着目し痙縮発生角度を検出する.
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健常者のグラフ
角加速度のピーク
患者のグラフ
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患者と健常者の角加速度の比較
痙縮なし
痙縮発生角度の検出前腕は,初期姿勢90°から0°に伸展運動する.90°以下の角度のみを対象として,腕の伸展運動に着目し,最初の角加速度のピークより痙縮発生角度を検出する.
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患者の検出した痙縮発生角度
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MAS評価と痙縮検出回数の関係
MAS評価「1」:患者B ,D,A:患側,10回中10回痙縮を検出
MAS評価「0~1」:患者E:患側,10回中9回痙縮を検出
MAS評価「0」:患者C:患側,10回中1回痙縮を検出
患者 MAS検出回数
健側・患側 患側
C 0 0/10 1/10
E 0~1 4/10 9/10
A 1 0/10 10/10
B 1 8/10 10/10
D 1 7/10 10/10
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患者の痙縮検出回数
患者 MAS検出回数
健側・患側 患側
C 0 0/10 1/10
E 0~1 4/10 9/10
A 1 0/10 10/10
B 1 8/10 10/10
D 1 7/10 10/10
痙縮重症度評価手法の提案
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患者の痙縮検出回数
痙縮検出回数を尺度とする痙縮重症度定量評価指標
新技術の特徴・従来技術との比較
• モーションセンサのみを用いるため構成が簡易である.
• 医師の経験に依らず定量的かつ高分解能な評価が可能である.
• 筋緊張を動態のみから評価する技術である.
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想定される用途
• 痙縮の重症度評価支援システム
• 経験の浅い医師の痙縮診断に関する教育システム
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実用化に向けた課題
• MAS評価0~1の患者数を増やし,MAS評価0~1を細分化する提案指標の妥当性を検証する.
• 現在,本提案技術による重症度評価結果をAR技術を用いて医師に直感的に提示する手法を研究中である.
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企業への期待
• 本提案技術を用いて,痙縮重症度評価システムを製品化していただける企業を探している.
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :重症度評価支援システム
及びプログラム
• 出願番号 :特願2016-49377• 出願人 :秋田大学
• 発明者 :水戸部一孝,小板橋智幸
齋藤正親,タン トゥン ジェ
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お問い合わせ先
秋田大学産学連携推進機構
リサーチ・アドミニストレーター
特任講師 伊藤 慎一
TEL 018-889-2702
FAX 018-837-5356
e-mail s-ito@crc.akita-u.ac.jp
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