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臨床薬物情報研究室4年 河辺 志帆
・Ms ARが肩に深い傷を負った5歳の息子を連れて薬局を訪れた。
・息子は数日前に近くの広場の木から落ちてその傷を負った。母親は傷口についた土を洗い、消毒した。
・傷口を観察したところその周辺の皮膚に生命力がなく破傷風菌の感染が疑われた。
・そこで医師に診察してもらうことを提案した。
・一家は引っ越しを繰り返しており、そのため息子は破傷風の予防接種を受けていない。
・後日Ms ARが来て、今回は破傷風ではなかったが予防接種を受けさせるつもりであると告げた。
What is tetanus?
骨格筋の不随意収縮(硬直性痙攣)を特徴的な症状とする感染症
【分類】全身性破傷風と局所破傷風
【症状】初期は上半身、特に顔の筋肉に症状(開口障害など)治療しなければ死にいたることも。
【原因】破傷風菌が産生する神経毒テスノスパスミンによる神経伝達物質の放出制御
創傷性破傷風
全身性破傷風と局所破傷風
新生児破傷風
第1期:前駆症状口が開けにくくなり歯がかみ合わされた状態に。これにより食物摂取困難。首が張る、寝汗、歯ぎしり。
第2期開口障害が強くなる。顔面筋の緊張。発語、嚥下障害が起こる。唇は横に広がって少し開き、その間に歯牙を露出する、苦笑いに似た特異的な破傷風顔貌(risus sardonicus)を示す。
第3期頸部硬直、背筋にも緊張、腱反射の亢進。硬直をきたして発作的に硬直性痙攣がみられる。弓そり緊張(opisthotonus)が起こる。
第4期:回復期筋硬直が持続、腱反射亢進は残る。諸症状は次第に回復。
・一般的な病型・全身の骨格筋(随意筋)の不随意性収縮
↑激しい疼痛を伴う
全身性の硬直性痙攣Bellの図より
治療しない場合…
上気道の分泌物増加。
排尿、排便障害、縮瞳、腱反射亢進、発汗など。
数日のうちに呼吸筋の痙性麻痺で死亡する
稀な病型創傷に近い筋の局所の硬直、疼痛を伴う引きつりが起こる。
開口障害がおこることがある。
【原因】不完全な免疫や比較的微量の毒素による
★破傷風における新生児の特徴一腕や下肢は少し屈曲していることがある。腕を一部腹部の上で交差して拳を握り締める。ときどき親指を人差し指と中指の間に突き出している。泣くと息が止まり、同時に顔にしわを寄せる。
泣き方と吸乳困難で母親が気づくことが多い。
【原因】不衛生な出産、生育環境【初期症状】吸乳力↓発症した新生児の60~90%が10日以内に死亡。
★疫学データ2004年 発展途上国において128,000人死亡
(WHO推定)2006年 日本で11年ぶりに患者
バクテリウム属偏性嫌気性グラム陽性桿菌0.5~0.6×3~6μm
・土壌、ヒトを含む哺乳動物の糞便中に広く分布・端在性に芽胞を形成(遊離はまれ。熱、乾燥、酸素、薬剤に抵抗性あり)
・病原因子である毒素(テタノスパスミン)産生
テタノスパスミン強力な神経毒菌体内で産生され、菌の自己融解に伴って菌体外に放出される。中枢神経系シナプスのシナプス前部に作用して、プロテアーゼ活性により抑制性神経から神経伝達物質の放出を阻害。これにより筋収縮を引き起こす。
Clostridium tetani
What are the risk factors for developing tetanus?
組織の壊死ブドウ球菌などとの混合感染
嫌気状態の成立
発芽
栄養型
芽胞
増殖
毒素産生!
日本医師会感染症の診断治療ガイドライン2004より
【診断】・臨床症状・経過から・細菌学的診断感染部位から破傷風菌の分離→分離菌から破傷風毒素検出
+:診断がより確実に-:時間がかかる(最低2,3日)
感度低い【治療】・創傷のデブリードマン・早期に抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)投与また・必要に応じて抗菌薬(ペニシリンなど)・痙攣には抗痙攣剤(ジアゼパムなど)
What is human tetanus immunoglobulin
(anti-tetanus immunoglobulin)?
抗破傷風ヒト免疫グロブリンヒト免疫グロブリン(IgG)の1つ抗破傷風毒素抗体を高水準で含有破傷風毒素に対して免疫のあるヒトの血漿から作る筋肉内注射により投与
【添加物】塩化ナトリウム:等張化剤グリシン:安定剤ナトリウム酢酸塩、少量のナトリウム水酸化物:pH調整剤
一般に十分な耐性がある
How does human tetanus immunoglobulin work?
特異的に破傷風毒素に結合↓
毒素の神経筋の受容体への結合を妨げる
≪これにより毒素を中和する≫
*破傷風感染の疑いがある場合、破傷風と診断された場合に使用
*感染の可能性がある場合はなるべく早く投与する。
↓テタノスパスミン
★DPT3種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)
生後3カ月から12カ月 終了後12から18カ月3から8週間間隔で3回 →1回追加
★DT2種混合トキソイド(ジフテリア、破傷風)
11歳のとき1回
歴史1950年 届け出患者数1,915人、死亡者数 1,558人
(うち過半数は15歳未満の小児)1953年 破傷風トキソイド導入(任意接種)1968年 3種混合ワクチン定期予防接種開始
現在 患者、死亡者数↓患者の多くを占めるのは40歳以上の中高齢者
What additional advice should be given to Ms AR?
抗破傷風ヒト免疫グロブリン・受動免疫・速効性あり・持続性なし
破傷風に対して長期の免疫はない→息子にワクチンを受けさせるべき!
一連の破傷風ワクチンを受ければ、数年間は破傷風かからない
【患者】5歳男児
【来院目的】肩の傷についての相談
【病状】数日たっても傷口が回復しない
【その他】
母親が傷口を洗浄・消毒した
破傷風の予防接種を受けていない
#1破傷風
S
木から落ちて肩に深い傷を負う。傷口を洗浄、消毒。数日後も回復せず。
OA傷口に付着した土から破傷風菌の感染が疑われる。破傷風予防接種を受けていないことからも感染の可能性が考えられる。
P医師に診断してもらうよう勧める。
・竹田美文、本田武司偏「毒素産生菌とその感染症」
医療ギジャーナル社(1998)・国立感染症研究所 感染症情報センタ-IDSC(2009)idsc.nih.go.jp/iasr/30/349/tpc349-j.html・感染症発生動向調査週報 IDWR(2002)idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_15/k02_15.html・ 医薬品検索イーファーマwww.epharma.jp/dirbook/contents/data/prt/636140BA3030.html