小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会...

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139Ⅰ.問  題 小学生と中学生が組織的にスポーツ活動を行う場と して,スポーツ少年団(以後,スポ少と表記)と学校 運動部(以後、運動部と表記)があげられる.現在, スポ少では 86 万5千人の小学生以上の子ども 19) が, また,中学校運動部では全国中学生の約 65%にあたる 234 万人の生徒 7) がスポーツ活動に取り組んでいる. このような場でスポーツに取り組むことの意義に は,体力や運動能力の発達だけでなく,社会性の成長 や促進が含まれることが指摘されている 5)16) .このこ とは,スポーツ活動に取り組む児童生徒の社会性に関 する自己評価が,スポーツ活動を行わない児童生徒よ りも高い 8)12)13) ことなどからも示唆される.しかし, 現実には,競技志向の強いクラブ活動に取り組む児童 は感情的で自己中心的な側面がみられる 18) ことや,他 者への思いやりに欠ける行動をとる 10) ことなども報告 〈論文〉 小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果と その日常生活への般化の実態 Analysis on the psychosocial effects of sports activities and their generalization to the daily lives of pupils and junior high school students 佐々木 万 丈 1) 西 田   保 2) 北 村 勝 朗 3) 磯 貝 浩 久 4) 渋 倉 崇 行 5) Banjou SASAKI, Tamotsu NISHIDA, Katsurou KITAMURA, Hirohisa ISOGAI, Takayuki SHIBUKURA Abstract The purpose of this study was to classify the psychosocial skills improved by sports activities in junior sports clubs and in junior high school athletic clubs and to reveal the process of the generalization of those skills to the life skills in pupils and junior high school students. The students(N=173, ages 11-14),their parents(N=169)and coaches(N=17)were asked to complete the question- naires about what psychosocial skills were acquired through sports activities in junior sports clubs and junior high school athletic clubs, what enabled the students to develop the psychosocial skills in their club activities, whether the skills were practically useful in their daily lives or not, how the generalized skills benefited them in daily situa- tions other than sports activities, and what advanced and affected the generalization of psychosocial skills. The type of psychosocial skills and the factors which enhanced the generalization of those skills were analyzed using the KJ method. The following results were obtained: 1)The students, their parents, and coaches commonly recognized that the psychosocial skills gained from sports activities were effective in developing the good relationship with others, doing things patiently, and solving various problems. 2)It was pointed out by the most participants in this research that those skills were actually useful in their daily lifes. 3)It was suggested that the generalized psychosocial skills contributed to the improvement of the students’ quality of life. 4)The factors which promoted the generalization of the psychosocial skills were as follows: making practical use of them in everyday situations, getting some successful experiences and positive emotions resulting from using the skills, having some significant role-models who can use the skills effectively, and recognizing the value of the psychosocial skills. Keywords: psychosocial skills, life skills, open-ended qustionnaires 1 )日本女子体育大学(教授) 2 )名古屋大学総合保健体育科学センター(教授) 3 )東北大学大学院教育情報学研究部(教授) 4)九州工業大学情報工学研究院(准教授) 5)新潟県立大学人間生活学部(講師)

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Ⅰ.問  題

 小学生と中学生が組織的にスポーツ活動を行う場として,スポーツ少年団(以後,スポ少と表記)と学校運動部(以後、運動部と表記)があげられる.現在,スポ少では 86 万5千人の小学生以上の子ども 19)が,

また,中学校運動部では全国中学生の約 65%にあたる234 万人の生徒 7)がスポーツ活動に取り組んでいる. このような場でスポーツに取り組むことの意義には,体力や運動能力の発達だけでなく,社会性の成長や促進が含まれることが指摘されている 5)16).このことは,スポーツ活動に取り組む児童生徒の社会性に関する自己評価が,スポーツ活動を行わない児童生徒よりも高い 8)12)13)ことなどからも示唆される.しかし,現実には,競技志向の強いクラブ活動に取り組む児童は感情的で自己中心的な側面がみられる 18)ことや,他者への思いやりに欠ける行動をとる 10)ことなども報告

〈論文〉

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

Analysis on the psychosocial effects of sports activities and their generalization to the daily lives of pupils and junior high school students

佐々木 万 丈 1)  西 田   保 2)  北 村 勝 朗 3) 磯 貝 浩 久 4)  渋 倉 崇 行 5)

Banjou SASAKI, Tamotsu NISHIDA, Katsurou KITAMURA, Hirohisa ISOGAI, Takayuki SHIBUKURA

AbstractThe purpose of this study was to classify the psychosocial skills improved by sports activities in junior sports clubs

and in junior high school athletic clubs and to reveal the process of the generalization of those skills to the life skills in pupils and junior high school students.

The students(N=173, ages 11-14),their parents(N=169)and coaches(N=17)were asked to complete the question-naires about what psychosocial skills were acquired through sports activities in junior sports clubs and junior high school athletic clubs, what enabled the students to develop the psychosocial skills in their club activities, whether the skills were practically useful in their daily lives or not, how the generalized skills benefited them in daily situa-tions other than sports activities, and what advanced and affected the generalization of psychosocial skills. The type of psychosocial skills and the factors which enhanced the generalization of those skills were analyzed using the KJ method. The following results were obtained: 1)The students, their parents, and coaches commonly recognized that the psychosocial skills gained from sports activities were effective in developing the good relationship with others, doing things patiently, and solving various problems. 2)It was pointed out by the most participants in this research that those skills were actually useful in their daily lifes. 3)It was suggested that the generalized psychosocial skills contributed to the improvement of the students’ quality of life. 4)The factors which promoted the generalization of the psychosocial skills were as follows: making practical use of them in everyday situations, getting some successful experiences and positive emotions resulting from using the skills, having some significant role-models who can use the skills effectively, and recognizing the value of the psychosocial skills.

Keywords: psychosocial skills, life skills, open-ended qustionnaires

1 )日本女子体育大学(教授)2 )名古屋大学総合保健体育科学センター(教授)3 )東北大学大学院教育情報学研究部(教授)4)九州工業大学情報工学研究院(准教授)5)新潟県立大学人間生活学部(講師)

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

されている.このような現実を踏まえると,スポーツ活動による社会性の成長や促進はどのような過程を経るのか,またその過程に含まれたり影響を与えたりする要因は何かなどが明らかにされる必要がある. 心理学には,このような過程を考えるときの理論的枠組みの一つに「般化」がある.般化とは「ある刺激に条件づけられた反応が,他の類似の刺激に対しても生じること」9)であり,子どもの社会性の成長に当てはめれば,「部活動を通じて元気にあいさつすることを身に付けた子どもが,日常生活でも地域の人々と自然にあいさつができるようになった」などの例が考えられる.近年では,このようなスポーツ活動に関わる心理社会的な能力の般化に関連する問題が,心理社会的スキルやライフスキルをキーワードに検討されてきている.例えば,高校生対象の研究 15)では,運動部活動参加者は一般生徒と比較してライフスキル得点が高く,その得点が高い生徒は部活動場面における競技状況に関わる心理社会的スキルの得点も高いことが示された.さらに,競技場面の心理社会的スキルの高さには,指導者による対人スキルの価値に関する指導が影響していることも指摘された.また,大学生が大学体育授業中にスポーツを実施することで経験する自己開示や他者協力,さらにはできないことができるようになったなどの挑戦や達成の経験と,日常生活場面のライフスキルとの関係性を検討した研究 14)では,自己開示経験は男女共にライフスキルとしての「他者と相談できる」ことや「リーダーシップをとる」ことなどに弱いながらも肯定的に影響することが示された.これらの知見をふまえると,スポーツ活動中の様々な経験に含まれる心理社会的なスキルの経験は,類似の内容を持つライフスキルの獲得に結びつく可能性があると指摘できるように思われる. しかし,これまでに行われた研究では,スポーツ活動中の経験内容とそこで実践される心理社会的なスキルの内容が明確に区別されておらず,スポーツ活動中の心理社会的なスキルの実態については明らかにされていない.また,スポーツ活動における心理社会的なスキルが,日常生活場面のライフスキルに般化しているのかどうかについても,その因果的関係や媒介要因などについての実証的検討は行われていない.今後は,両者の関係性をさらに明確にするために,第1にスポーツ活動における心理社会的なスキルの構成概念を明らかにする必要がある.第2に,その心理社会的なスキルはスポーツ活動場面においてどのように形成

されるのか.すなわち,スポーツ活動における様々な経験はスポーツ活動場面の心理社会的なスキルの形成にどのように関係しているのかが明らかにされなければならない.そして,スポーツ活動場面の心理社会的なスキルの実践は日常生活場面の心理社会的なスキル

(ライフスキル)の形成にどのように関係しているのか.すなわち第3として,心理社会的なスキルの般化は起きているのか,起きているとすればそれはどのような過程をたどるのかが検討されなければならないと考えられる. 本研究では,以上の考察に基づき,スポーツ活動を通じて身に付く心理社会的なスキルとその般化の実態を検討する.具体的には,スポーツ活動によりできるようになった心理社会的なスキルには何があげられるのか(スポーツ活動による心理社会的効果).そのスキルはどのようにして身に付いたのか(効果の促進要因).それが身に付くときにはどのようなことが関係していたのか(効果の影響要因).その効果は日常生活でも役立っているのか(般化の実態).どのように役立っているのか(般化による効果).なぜ役立つようになったのか(般化の促進要因).そして,それが役立つようになることにはどのようなことが関係していたのか(般化の影響要因)を明らかにする(1).データは,自由記述調査によって収集する. 調査対象には,スポーツ活動と心理社会的なスキルの般化に関して,これまでに検討が行われていないスポ少の小学生と運動部に所属する中学生を取り上げる.また,親や指導者の立場から,スポーツ活動を通じて子どもに心理社会的なスキルが身に付いているかどうか,またその般化はみられるのかを明らかにするため,保護者と指導者にも調査を行う.   文部科学省は学校教育に関わる子どもたちの現状として,身に付いた基礎的知識・技能を実生活に活用する力に課題があるとし,その解決のための理念として

「生きる力」の育成 6)をあげている.また,その内容には,各教科の知識・技能だけでなく,「問題に積極的に対応し解決する力」や「自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心」7)などの心理社会的な能力が含まれている.高校生や大学生を対象とする先行研究 12)13)14)15)において,スポーツ活動が日常生活場面の心理社会的なスキルの向上につながる可能性があることが指摘されていることからすれば,小中学生にも同様のことが期待される.本研究による知見は,子どもにとってのスポーツ活動の意

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

義を般化の視点から考えるための,また,スポーツ活動の重要性を示すための基礎的な資料になると考えられる.

Ⅱ.方  法

1.調査時期および調査対象者

 調査は,2010 年8月下旬から9月上旬にかけて実施された. 調査対象者として協力が得られた小中学生,保護

者,指導者は表1の通りである.小学生(62 名)は全員がスポ少に,中学生(111 名)は全員が所属中学校の運動部活動に所属していた.小学生の年齢平均は10.78 ± 0.77 歳,中学生は 12.99 ± 0.69 歳であった.また,保護者は調査対象となった小中学生の親であり,指導者は,スポ少に関しては協力が得られたコーチであり,中学校に関しては調査対象となった中学生が所属している運動部活動の顧問教諭であった. 調査対象者全員に対して,研究の目的,方法,およびデータと分析結果の取り扱いなどを文書により詳細に説明し,回答への承諾を得た.

表1 調査対象者および人数

区分 児童生徒

男子 女子 性別不明

保 護 者

男子 女子 性別不明

指 導 者

男子 女子 性別不明

小学校

中学校

39

61

19

50

4

0

9

14

51

89

4

2

1

7

0

4

0

5

注:分析では性別による比較等は行わないことから,性別に関する応答のなかった調査対象者の記述も含めることにした.また,スポ少への登録は「小学生以上」が可能であるが,本研究では自由記述の際の文章作成能力などを考慮し高学年(5,6年生)の児童を調査対象にした.さらに,中学校に関しては本研究調査の実施が3年生の部活動引退後の時期であったため,部活動に継続して取り組んでいる1,2年生を対象とすることにした.なお,学年構成は小学校が5年生 39 名 ,6年生 20 名,学年未回答3名,中学校が1年生 60 名,2年生 51 名であった.小学生の学年未回答の記述も分析データとして用いた.

2.調査内容

 フェイスシートの一部(性別,年齢など)を,小中学生用と保護者・指導者用とで区別した以外はすべて共通の質問項目とした(教示文(2)は対象者に応じて変更).内容は以下の通りである.①スポーツ活動の心理社会的効果,②効果の促進要因,③効果の影響要因,④般化の有無,⑤般化場面,⑥般化による効果

(般化効果),⑦般化の促進要因,および⑧般化の影響要因.

3.分析方法

 収集された記述データは,まず,スポーツ活動の心理社会的効果(質問①)に関する記述に基づき KJ法 4)を用いて分類された.次に,分類された記述がどのような心理社会的効果を表しているのかを検討し,効果を説明するカテゴリー名を与えた.さらに,効果に分類された記述と対応する効果の促進要因と影響要因(質問②および③),般化の有無と般化

場面(質問④,質問⑤),般化の促進要因と影響要因(質問⑤から質問⑧)のそれぞれの内容が整理された.分類・整理は,本論筆者とスポーツ心理学を専攻する大学院生2名の合議に基づき行われた.

Ⅲ.結  果

1.調査対象者の属性

 小中学生の調査時点におけるそのスポーツ種目の活動継続期間は平均して 2.25 年であった.また,活動種目は全体で 15 種目であった.内訳は陸上競技や水泳などの個人種目が全体の 54.4%,バスケットボールやサッカーなどの集団種目が 43.8%であった(回答なし 1.8%).さらに,活動場所に関しては,学校の部活動が 52.1%,学校とは別の団体(スポ少,私設スポーツクラブ,市町村などの公的スポーツ競技団体など)が 42.9%,任意の団体が定期的に開催するスポーツ教室などが5%であった.以上により,本研究において調査対象となった小中学生は,全体としてはさまざま

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

スポーツ活動に取り組んでおり,また,スポ少と運動部の所属数がほぼ同数であることが認められた.

2.自由記述の分類

 全調査対象者から得られた記述総数は 2214(3)であった.内訳は,スポーツ活動の心理社会的効果に関する記述が 391,以下,効果促進要因が 368,効果影響要因が 351,般化場面が 326,般化効果が 290,般化促進要因が 260,般化影響要因が 228 であった. 表2から表6には,調査対象者ごとに記述内容とカテゴリー名をまとめた.

1)スポーツ活動による心理社会的な効果 小学生では,記述数の多い順に「社会性・協調性」

「忍耐力」「自主性・自発性」「礼儀・あいさつ」および「目標設定・計画性」と解釈できる5つのカテゴリーに分類された.一方,中学生では小学生と同一と考えられる5つのカテゴリーに加え,「努力」「向上心」「聴く態度」「主張」と解釈できるカテゴリーが作られた.  次に,保護者では,小中学生の保護者のいずれにおいても,子どもと同様に「忍耐力」「社会性・協調性」

「礼儀・あいさつ」および「目標設定・計画性」と解釈できるカテゴリーが生成された.また,これらの他に,小学生の保護者では「自主性・自発性」が,また,中学生の保護者では「思いやり」「努力」「時間管理」「競争心」「観察力・洞察力」と解釈できるカテゴリーが作られた.  最後に,指導者では「社会性・協調性」「礼儀・規律・規範」「達成行動・努力」と解釈できる3つのカテゴリーが考えられた.

2)効果の促進要因および影響要因 各調査対象者において,心理社会的な効果が身に付くことを促したり,身に付くことに影響を与えたりする要因をそれぞれ分類・整理した.しかし,一部の回答には各要因の内容が同じであったり,両者に共通に当てはめることができたりする回答(例:小学生「忍耐力」の促進要因「コーチの励ましや指導」,影響要因「監督,コーチ,仲間からの声がけ」)がみられた.このことから,調査対象者がこれらを区別して認識できていないことが考えられた.そこで,促進要因と影響要因の双方を含む形で全体をまとめることにした.その結果,収集された記述内容は,「毎日の練習」「仲

間(先輩・後輩)の存在」「仲間との励まし合い」「先生,指導者,コーチの指導」および「チーム内外での人間交流(試合,競争,会話,コミュニケーション)」に集約できると考えられた.

3)般化の有無および般化場面 般化の有無を尋ねた質問④に対する回答は,図1の通りであった.小学生が全体の中ではやや低い割合(約 63%)であったが,中学生,保護者,指導者に関しては7割から8割(指導者は全員)がスポーツ活動で身に付いた心理社会的なスキルは日常生活でも役立っていると回答した.また,それはどのような場面で役立っているのかを尋ねた結果,ほぼ共通に,学校における普段の生活や勉強への取り組み,仲間との付き合い,家庭や地域の人々との付き合い,テスト勉強,兄弟姉妹に対する態度,電話の応対や目上の人との会話の仕方などであった.

100100指導者(n=17)

7575 12.512.5 12.512.5小・保護者(n=64)

78.478.4 17.117.1 4.54.5中学生(n=111)

62.962.9 14.514.5 22.622.6小学生(n=62)

はい

8080 12.412.4 7.67.6中・保護者(n=105)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

図1 般化の有無

00

いいえ 不明

4)般化による効果 スポーツ活動による心理社会的効果が,日常ではどのように役立っているのかをたずねた結果,各カテゴリーで調査対象者に共通してみられたのは,第1に

「社会性・協調性」が身に付いたことで心穏やかな生活を送ることができるようになったこと,あるいは,生き生きとした生活態度がみられるようになったことなどであった.第2は,小中学生自身が「忍耐力」の獲得に関わって集中力や計画力が身についたことを指摘している点であった. その他にも,小中学生共通に「礼儀・あいさつ」が身に付いたことと「対人関係の良好な変化」および「仲間との信頼関係の深化」との関連が,また中学生では「目標設定・計画性」の獲得による「生活のゆとり」との関連などが指摘された.

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

5)般化の促進および影響要因 心理社会的な効果の般化促進要因と般化影響要因についても,効果の促進および影響要因の場合と同様に,双方に共通の内容と思われる回答が一部にみられた.しかし,般化の促進および影響要因については,比較的に明確な分類が可能であると考えられたため,それぞれについてまとめることにした. まず,各効果の般化促進要因は,内容がほぼ共通していた.これらをまとめると,第1は身に付いたスキルの「大切さを理解した」という指摘であった.例えば,小中学生は共に「礼儀・あいさつ」において,礼儀の大切さが理解できたことをあげていた.また,中学生は「社会性・協調性」においてコミュニケーションの大切さを、「目標設定・計画性」では生活にリズムを持たせることの大切さを理解したと指摘していた.さらに,指導者においては指摘された3つの効果すべてにおいて,その般化促進要因の中に,集団生活や日常生活を送る上での「重要性や必要性を子どもが自覚した」ことをあげていた.  第2は,各スキルが日常生活場面の問題解決につながったという成功経験であった.例えば,小学生は「社会性・協調性」において,喧嘩の仲裁がうまくいったり,意見をうまくまとめられたりしたということをあげていた.また,中学生の保護者は「忍耐力・

根気」において努力が良い結果に結びついた経験を指摘し,さらに,「目標設定・計画性」において目標達成の経験をあげていた.  第3は,肯定的な感情の指摘であった.具体的には「やり遂げたときのうれしさ」(小学生:忍耐力),

「遂行達成の喜び」と「悩みの低減」(小学生:自主性・自発性),「達成したときの充実感」(中学生:忍耐力),「限界に挑戦することの楽しさ」(中学生:努力),「心が通じた時の快感」(小学生保護者:礼儀・あいさつ)などであった.  以上の他,「社会性・協調性」では「リーダーへの昇格」(小学生),「周囲からの自分に対する声がけの増加」(中学生),「仲間からの信頼」(小学生保護者)などがそれぞれ指摘されていた. 次に,般化影響要因をみると,般化促進要因と同様に,複数の心理社会的効果に共通する内容が認められた.それは,「周り(仲間,指導者,他チーム)がやっていたので自分も同じようにやってみた」という意味の記述による「監督や仲間の行動」,「仲間の行動」あるいは,「他チームの行動」であった.この他,それぞれのスキル実践に関わる達成や成功の経験,スキルを実践し導かれた結果をほめられたこと,さらにはそのスキルを適切に使えるように自分自身が強い意志を持つようになったことなども指摘されていた.

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態表2 スポーツ活動による心理社会的効果のカテゴリーとその般化に関わる要因:小学生に対する自由記述調査のまとめ

般化

に関

わる

要因

カテ

ゴリ

ー効

果促

進要

因効

果影

響要

因般

化場

面般

化に

よる

効果

般化

促進

要因

般化

影響

要因

社会性・協調性(18)

記述

例)

周り

に合

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る行

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友人

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の増

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仲間

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ーダ

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うま

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いう

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よう

にな

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いと

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習を

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重ね

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遊び

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喧嘩

の経

忍耐力(11)

記述

例)

最後

まで

あき

らめ

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こと

・コ

ーチ

の励

まし

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毎日

の練

習・

試合

で負

けて

いて

も 

最後

まで

声を

出し

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めな

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気持

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仲間

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・運

動だ

けと

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れた

くな

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持ち

・仲

間の

支え

・周

囲と

の喜

びの

共感

自主性・自発性(10)

記述

例)

自分

で準

備す

ると

いう

こと

が身

に付

いた

・ク

ラブ

内の

約束

事・

毎日

の練

習,

試合

・試

合に

出た

い気

持ち

・良

い結

果に

結び

つけ

る 

とい

う意

志・

周り

から

の厳

しい

指導

・仲

間と

の助

け合

い,

 励

まし

合い

・時

間に

対す

る厳

しさ

・作

戦を

立て

ると

いう

経験

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間と

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仲間

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けた

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い 

気持

ち・

チー

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一員

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ての

 自

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志決

定場

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日常

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場面

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向上

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向上

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・遂

行達

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喜び

・成

功経

験・

悩み

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仲間

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じ行

動 

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ぶ・

喜び

を分

かち

 合

いた

いと

いう

気持

礼儀・あいさつ(7)

記述

例)

挨拶

がで

きる

よう

にな

った

・コ

ーチ

から

の指

導・

先輩

から

の指

導・

練習

での

日常

的な

実践

・厳

しい

練習

・仲

間と

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値観

の共

有・

仲間

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共通

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ーム

プレ

・他

者と

の物

の授

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場面

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上の

人と

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対場

面・

仲間

との

付き

合い

・礼

節を

踏ま

えた

行動

の 

定着

・対

人関

係の

良好

な変

・礼

節の

大切

さの

理解

・目

上の

人と

 接

する

機会

の多

・仲

間の

行動

に学

ぶ・

他チ

ーム

の行

動に

学ぶ

・実

践に

伴う

快感

目標設定・計画性(3)

記述

例)

目標

を立

てて

取り

組む

よう

にな

った

・上

達し

たい

とい

う気

持ち

・計

画を

立て

て練

習に

 取

り組

むと

いう

経験

・毎

日の

練習

・仲

間の

励ま

し・

監督

やコ

ーチ

の励

まし

・ラ

イバ

ルの

存在

・他

者を

励ま

す場

面・

勉強

・ア

ドバ

イス

の具

体的

実行

・予

定通

りの

勉強

達成

・仲

間の

励ま

しの

存在

・良

い結

果・

仲間

の行

動に

学ぶ

・努

力が

報わ

れた

経験

注:

「効

果の

カテ

ゴリ

ー」

の括

弧内

の数

字は

,そ

のカ

テゴ

リー

を構

成す

る記

述数

であ

る.

また

,効

果促

進要

因か

ら般

化影

響要

因の

各欄

の記

述は

,調

査対

象者

が効

果の

説明

に対

応し

て記

した

内容

をま

とめ

たも

ので

ある

Page 7: 小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会 …ir.jwcpe.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/660/1/nichijo...小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

−145−

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態表3 スポーツ活動による心理社会的効果のカテゴリーとその般化に関わる要因:中学生に対する自由記述調査のまとめ

般化

に関

わる

要因

カテ

ゴリ

ー効

果促

進要

因効

果影

響要

因般

化場

面般

化に

よる

効果

般化

促進

要因

般化

影響

要因

社会性・協調性(27)

記述

例)

自分

だけ

でな

く他

人の

こと

も考

えら

れる

よう

にな

った

・毎

日の

練習

・部

長と

して

の役

割遂

行・

仲間

との

励ま

し合

い・

声の

掛け

合い

・仲

間と

の信

頼関

・普

段の

授業

や学

校生

活・

学校

やク

ラス

での

行事

・勉

強の

教え

合い

・他

者と

の会

話や

友人

の増

加・

他者

に配

慮し

た行

動の

増加

・仲

間と

の人

間関

係の

深ま

・コ

ミュ

ニケ

ーシ

ョン

 の

重要

性の

理解

・役

に立

つこ

との

経験

・仲

間と

共通

の強

い達

成感

・仲

間の

行動

に学

ぶ・

仲間

の思

いや

りの

深さ

忍耐力(22)

記述

例)

やる

前か

らあ

きら

める

こと

が少

なく

なっ

・毎

日の

厳し

い練

習・

目標

やノ

ルマ

のあ

る 

毎日

の練

習・

自分

への

厳し

さや

向上

心・

多く

の試

合経

・先

生や

コー

チの

指導

・自

分の

感情

のコ

ント

ロー

ル・

仲間

との

支え

合い

・仲

間と

の競

い合

い・

家族

や仲

間の

存在

・普

段の

勉強

やテ

スト

勉強

・体

育の

授業

・辛

くて

も投

げ出

さな

くな

った

・最

後ま

で踏

ん張

るよ

うに

なっ

た・

集中

力や

計画

力が

つい

・自

分に

負け

ない

気持

ち・

達成

した

とき

の充

実感

・ノ

ルマ

への

取り

組み

・毎

日の

積み

重ね

・仲

間の

姿や

行動

に学

ぶ・

結果

に結

びつ

いた

経験

・仲

間の

あき

らめ

ない

姿

礼儀・あいさつ(17)

記述

例)

年上

の人

への

言葉

遣い

や態

度を

学ん

・部

活動

での

習慣

・先

生や

先輩

の指

導・

仲間

同士

の声

がけ

・他

校生

との

交流

・先

輩と

同様

にし

なけ

れば

 な

らな

いと

いう

気持

・目

上の

人と

の応

対場

面・

初対

面の

人へ

の応

対場

面・

先生

の話

を聞

く場

・あ

いさ

つや

敬語

の習

得・

きち

んと

した

挨拶

やお

礼・

目上

の人

に対

する

言葉

遣い

・仲

間と

の信

頼関

係の

深化

・先

輩や

先生

との

 会

話の

積み

重ね

・礼

儀の

大切

さの

理解

・仲

間の

行動

に学

ぶ・

周り

の仲

間の

成長

・ほ

めら

れた

こと

目標設定・計画性(11)

記述

例)

計画

を立

てて

取り

組む

力が

身に

つい

・毎

日の

計画

に基

づく

練習

・毎

日の

地道

な取

り組

み・

自分

の心

の強

さ・

先生

や仲

間と

の励

まし

合い

・仲

間と

の共

通経

・一

人で

何か

に取

り組

む場

面・

日々

の勉

強や

テス

ト勉

強・

休み

の日

の過

ごし

・規

則正

しい

生活

リズ

ム・

学校

生活

の積

極性

の向

上・

時間

に対

する

意識

の向

上・

生活

のゆ

とり

・生

活リ

ズム

の大

切さ

の理

解・

効率

の良

さの

発見

・勉

強の

楽し

さの

発見

・仲

間の

行動

に学

ぶ・

先生

の言

努力(7)

記述

例)

本気

にな

って

努力

する

こと

・目

標を

持っ

た毎

日の

練習

・多

くの

試合

経験

・向

上心

・仲

間と

の競

争・

周り

との

実力

差・

仲間

との

助け

合い

・テ

スト

勉強

・毎

日の

生活

・勉

強に

対す

る積

極さ

の 

向上

・集

中力

の向

・限

界に

挑戦

する

こと

の 

楽し

さの

認知

・努

力の

結果

への

反映

・努

力し

た人

の成

果に

学ぶ

・仲

間の

行動

に学

自主性・自発性(4)

記述

例)

進ん

で荷

物を

運ぶ

・先

生や

先輩

から

の指

導・

限ら

れた

時間

内の

行動

・お

互い

の声

がけ

・体

育以

外の

授業

・家

での

生活

・授

業で

挙手

の回

数が

増え

た・

部屋

の片

付け

が早

くな

った

・ま

ず実

践し

たこ

と・

恥ず

かし

さの

消失

・仲

間の

行動

に学

聴く態度(4)

記述

例)

素直

に聴

くよ

うに

なっ

・毎

日の

行動

・先

輩や

先生

の心

を読

もう

とす

る気

・チ

ーム

の団

体行

動・

周り

の人

との

関わ

り・

体育

以外

の授

業・

周り

の人

との

会話

・先

生と

の会

話が

スム

ーズ

に進

む・

聞き

逃し

がな

くな

った

・部

活の

時も

授業

の時

も先

生の

話を

聴く

こと

は同

じこ

とだ

と気

づい

・仲

間の

行動

に学

んだ

主張(4)

記述

例)

注意

する

・練

習中

の声

だし

・先

輩の

姿を

見て

・仲

間と

の意

見の

交換

・先

輩・

後輩

の関

係・

学校

の授

業・

仲間

に対

する

積極

的主

張・

先生

や仲

間と

の関

係の

深化

・自

分の

問題

行動

への

 気

づき

・仲

間の

行動

に学

んだ

・先

生と

の信

頼関

向上心(3)

記述

例)

上を

目指

す気

持ち

・毎

日の

練習

・練

習の

継続

・他

校と

の実

力差

の認

識・

仲間

との

共通

の目

・ふ

だん

の勉

強・

自分

に対

する

厳し

い態

度・

こつ

こつ

取り

組む

態度

・自

分に

負け

ない

頑張

り・

先輩

の存

在・

仲間

の同

じ行

動・

努力

が報

われ

た経

注:「

効果

のカ

テゴ

リー

」の

括弧

内の

数字

は,

その

カテ

ゴリ

ーを

構成

する

記述

数で

ある

.ま

た,

効果

促進

要因

から

般化

影響

要因

の各

欄の

記述

は,

調査

対象

者が

効果

の説

明に

対応

して

記し

た内

容を

まと

めた

もの

であ

る.

なお

,効

果に

は,

他に

「自

省的

態度

」と

「時

間管

理」

と考

えら

れる

記述

が指

摘さ

れた

が,

いず

れも

1記

述で

あっ

たた

めカ

テゴ

リー

化は

しな

かっ

た.

Page 8: 小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会 …ir.jwcpe.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/660/1/nichijo...小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

−146−

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態表4 スポーツ活動による心理社会的効果のカテゴリーとその般化に関わる要因:小学生保護者に対する自由記述調査のまとめ

般化

に関

わる

要因

カテ

ゴリ

ー効

果促

進要

因効

果影

響要

因般

化場

面般

化に

よる

効果

般化

促進

要因

般化

影響

要因

忍耐力・継続力(31)

記述

例)

あき

らめ

ず最

後ま

で取

り組

む気

持ち

・毎

日の

厳し

い練

習・

やり

遂げ

たと

きの

喜び

・周

りの

子ど

もの

影響

・指

導者

の力

・試

合中

のつ

らい

経験

・ゲ

ーム

の楽

しさ

の発

見・

監督

,仲

間,

親の

励ま

し・

仲間

や下

級生

の存

在・

仲間

との

競争

と強

い向

上心

・仲

間の

頑張

る姿

・ク

ラブ

の進

級シ

ステ

ム・

ゼロ

から

のレ

ギュ

ラー

獲得

・苦

手な

分野

の勉

強・

苦手

なこ

とへ

の取

り組

み (

勉強

,家

の手

伝い

・集

中力

の向

上・

自分

で考

え計

画す

る力

の向

上・

挑戦

する

心の

成長

・納

得す

るま

で取

り組

む姿

勢・

問題

解決

のた

めに

様々

な方

法を

考え

工夫

する

・や

り遂

げた

後の

喜び

の実

感・

嫌な

こと

に対

する

気持

ちの

切り

替え

が早

くな

った

・努

力が

達成

につ

なが

るこ

とを

学ん

・家

族や

周囲

から

の賞

賛・

失敗

に負

けな

い前

向き

さ・

仲間

の姿

から

の刺

激・

目標

とす

る人

物の

存在

・達

成に

向け

た方

法の

選択

能力

の向

上・

自信

がつ

いた

こと

社会性・協調性(22)

記述

例)

様々

な人

の中

で相

手の

気持

ちを

考え

なが

ら行

動す

るこ

・試

合後

の振

り返

り・

自分

の苦

手な

部分

を支

える

仲間

の存

在・

仲間

との

話し

合い

・チ

ーム

内の

集団

活動

・他

チー

ムと

の交

流・

同じ

目標

の仲

間の

存在

・仲

間と

の励

まし

合い

・仲

間と

の意

見交

換・

監督

やコ

ーチ

の助

言・

親や

兄弟

姉妹

から

の 

アド

バイ

・兄

弟関

係・

普段

の友

だち

関係

・近

所の

人に

対す

る挨

拶・

普段

の会

話の

仕方

・自

己中

心な

行動

の減

少・

小さ

な子

ども

の面

倒見

の良

さの

向上

・他

者の

意見

を踏

まえ

た上

での

主張

性の

向上

・会

話の

上達

・生

き生

きと

した

生活

態度

・様

々な

タイ

プの

人と

の 

接触

によ

る自

分自

身の

 理

解の

深化

・仲

間か

らの

信頼

・チ

ーム

ワー

クに

よる

達成

感の

経験

・仲

間の

影響

・仲

間の

自分

に対

する

期待

の自

覚・

仲間

や先

輩の

姿か

らの

刺激

・チ

ーム

内の

自分

の役

割の

自覚

礼儀・あいさつ(8)

記述

例)

礼儀

や感

謝の

気持

・毎

回の

練習

での

習慣

・上

級生

の行

動か

らの

学び

・周

りの

仲間

の模

倣・

集団

生活

・先

輩や

仲間

との

人間

関係

・コ

ーチ

によ

る指

導・

様々

な大

人と

接す

る場

面・

きち

んと

した

挨拶

やお

礼・

自発

的に

行う

気持

ち・

身近

な人

や他

者か

らの

 良

い評

価や

賞賛

・心

が通

じた

とき

の快

・ほ

めら

れる

こと

の増

加・

大人

から

の注

意・

ほめ

られ

るこ

とに

よる

 向

上心

の強

目標設定・計画性(8)

記述

例)

目標

達成

のた

めに

はど

うす

れば

いい

かを

考え

るよ

うに

なっ

・練

習や

試合

経験

・目

標を

達成

でき

ず 

悔し

い思

いを

した

経験

・勝

ちた

い,

向上

した

い 

とい

う気

持ち

の芽

生え

・監

督の

指導

・仲

間と

の励

まし

合い

・本

人の

気持

ちの

変化

・コ

ーチ

との

相性

・ク

ラブ

の進

級シ

ステ

ム・

仲間

との

切磋

琢磨

・趣

味や

好き

なこ

とへ

の 

取り

組み

・勉

強や

不得

意な

こと

への

 取

り組

・途

中で

あき

らめ

るこ

との

減少

・自

主性

や積

極性

の向

上・

自分

で決

めた

こと

への

責任

感・

地道

・親

の言

うこ

とに

耳を

傾け

る態

度の

形成

・努

力の

大切

さの

気づ

き・

練習

しな

けれ

ば結

果が

 得

られ

ない

こと

の自

覚・

でき

たと

きの

喜び

体験

・目

標が

達成

でき

たと

きの

 周

りか

らの

賞賛

・や

れば

でき

るこ

との

自覚

・活

躍で

きる

場の

増加

・自

分に

でき

るこ

との

増加

自主性・自発性(2)

記述

例)

休日

の練

習や

試合

日は

自分

で朝

食を

作る

よう

にな

った

・自

立性

をモ

ット

ーに

する

チー

ムの

雰囲

気・

自分

自身

を律

する

こと

がス

ポー

ツで

の達

成に

つな

がる

こと

を悟

った

・指

導者

の声

がけ

・闘

争心

・生

活習

慣・

規則

正し

い生

活の

心が

け・

独立

心の

芽生

え・

忘れ

物,

遅刻

の減

・時

間の

使い

方の

理解

・仲

間の

同じ

行動

・コ

ンデ

ィシ

ョン

作り

の成

注:「

効果

のカ

テゴ

リー

」の

括弧

内の

数字

は,

その

カテ

ゴリ

ーを

構成

する

記述

数で

ある

.ま

た,

効果

促進

要因

から

般化

影響

要因

の各

欄の

記述

は,

調査

対象

者が

効果

の説

明に

対応

して

記し

た内

容を

まと

めた

もの

であ

る.

なお

,効

果に

は,

他に

「役

割を

果た

す義

務感

」,「

自信

」お

よび

「慎

重さ

」の

文言

を含

む記

述が

指摘

され

たが

,い

ずれ

も1

記述

であ

った

ため

カテ

ゴリ

ー化

はし

なか

った

Page 9: 小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会 …ir.jwcpe.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/660/1/nichijo...小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

−147−

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態表5 スポーツ活動による心理社会的効果のカテゴリーとその般化に関わる要因:中学生保護者に対する自由記述調査のまとめ

般化

に関

わる

要因

カテ

ゴリ

ー効

果促

進要

因効

果影

響要

因般

化場

面般

化に

よる

効果

般化

促進

要因

般化

影響

要因

忍耐力・根気(29)

例)

最後

まで

あき

らめ

ずに

やり

抜く

・毎

日の

練習

の積

み重

ね・

先輩

たち

の姿

の影

響・

仲間

との

励ま

し合

・良

いラ

イバ

ル,

目標

とす

る仲

間の

存在

・自

分も

でき

ると

いう

自信

と向

上心

・目

標を

持つ

こと

・指

導者

のア

ドバ

イス

・自

分の

感情

のコ

ント

ロー

ル・

チー

ム全

体の

信頼

関係

・普

段の

生活

・苦

手な

教科

の勉

強・

家の

手伝

・勉

強へ

の日

常的

な取

り組

み・

集中

力の

向上

・物

事へ

の自

発的

取り

組み

・部

活と

塾の

両立

・時

間の

有効

な使

い方

の定

・努

力が

良い

結果

に結

び 

つい

た経

験・

計画

力の

向上

・良

い結

果に

対す

る賞

賛・

最後

まで

取り

組む

姿勢

・自

信の

形成

・あ

きら

めな

いこ

との

大切

さの

経験

によ

る認

識・

向上

心の

芽生

社会性・協調性(27)

例)

後輩

の面

倒を

みた

り,

先輩

の意

見を

聞く

など

して

,人

間関

係を

うま

く築

く力

・毎

日の

練習

・先

生や

先輩

によ

る指

導・

先輩

たち

の姿

を見

習う

・仲

間と

一緒

の努

力・

日々

の仲

間と

の団

体行

・仲

間と

の励

まし

合い

・仲

間と

の話

し合

い・

監督

やコ

ーチ

の指

導や

助言

・学

級の

人間

関係

・普

段の

友だ

ち関

係・

近所

の人

との

挨拶

・友

人に

対す

る思

いや

り・

相手

の立

場を

考え

た行

動・

主張

性の

向上

・時

間を

守る

こと

・友

だち

の増

加・

集団

全体

に対

して

目配

せを

する

力の

形成

・集

団内

の自

分の

立場

の理

解や

自覚

・集

団が

まと

まる

こと

で目

標達

成が

現実

にな

るこ

との

経験

とそ

れに

よる

自信

の形

成・

先生

から

の肯

定的

評価

礼儀・あいさつ(17)

例)

あい

さつ

がき

ちん

とで

きる

よう

にな

った

・毎

回の

練習

での

習慣

・先

輩た

ちの

姿か

らの

学び

・他

チー

ムの

多く

の選

手や

指導

者,

保護

者と

の交

・監

督や

先輩

の指

導・

仲間

との

信頼

関係

・先

輩と

の上

下関

・生

活全

般の

人間

関係

・近

所の

人や

遠方

の親

戚な

どへ

の応

対場

面・

電話

応対

・自

分の

判断

で適

切に

挨拶

・適

切な

敬語

の使

用・

時間

を守

る態

度の

形成

・近

所の

人か

らの

賞賛

・気

配り

がで

きる

とい

う 

仲間

から

の評

・先

生や

先輩

から

の賞

賛・

自立

心の

芽生

え・

いろ

いろ

な場

所で

の挨

拶の

大切

さの

経験

目標設定・計画性(15)

例)

目標

を決

めて

計画

を立

てて

取り

組む

・日

々の

練習

の積

み重

ね・

本人

の向

上心

・先

生の

指導

・仲

間と

の励

まし

合い

・先

輩の

取り

組み

姿勢

・勉

強の

仕方

・生

活の

リズ

ム・

結果

にこ

だわ

る厳

しさ

の醸

成・

勉強

や生

活面

での

効率

的な

時間

設定

・成

績の

向上

・目

標の

達成

経験

・周

囲か

らの

取り

組み

に対

する

肯定

的評

価・

自分

にで

きる

こと

の自

思いやり(6)

例)

仲間

への

思い

やり

・同

じ目

標を

もつ

仲間

との

厳し

い毎

日の

練習

・仲

間同

士の

励ま

し合

い・

日常

生活

の友

だち

付き

合い

・兄

弟姉

妹と

の関

わり

方・

相手

の立

場へ

の理

解,

配慮

・自

分の

こと

は自

分で

しよ

うと

する

態度

の形

成・

人の

気づ

かな

いこ

とへ

の配

・仲

間の

大切

さの

自覚

・生

活に

余裕

が出

てき

たこ

とに

よる

視野

の拡

大・

仲間

関係

の深

・先

生の

指導

・先

生,

先輩

,家

庭で

の肯

定的

評価

努力(6)

例)

努力

する

こと

・日

々の

練習

・試

合に

勝ち

たい

気持

ち・

先生

や仲

間の

励ま

しと

支え

・実

力向

上に

伴う

自信

の形

成・

物事

への

取り

組み

全般

・成

績へ

のこ

だわ

り・

あき

らめ

ない

態度

・努

力の

結果

への

反映

・自

信や

責任

感の

芽生

え・

自分

に適

した

目標

の設

定・

周囲

の支

えに

よる

自信

時間管理(4)

例)

時間

を有

効に

使う

こと

・日

々の

練習

・時

間通

りに

取り

組む

こと

の継

・先

生や

先輩

の声

がけ

・本

人の

性格

・時

間が

足り

ない

こと

の経

・勉

強,

趣味

,休

憩の

けじ

め・

時間

の有

効利

用・

規則

正し

い生

活・

家事

手伝

いへ

の積

極的

参加

・や

れば

でき

ると

いう

自覚

・時

間内

の目

標達

成経

験・

友人

の取

り組

みの

影響

競争心(4)

例)

友だ

ちに

負け

ない

とい

う気

持ち

・日

々の

練習

・仲

間に

負け

た経

験・

先生

や先

輩の

励ま

し・

勉強

・集

中力

の向

上・

良い

成果

を上

げよ

うと

 す

る態

度・

良い

意味

での

仲間

関係

観察力・洞察力(3)

例)

自分

の周

りに

も目

を向

けて

考え

られ

るよ

うに

なっ

・毎

日の

練習

・仲

間と

の信

頼関

係・

先生

の指

導方

針・

普段

のク

ラス

活動

・家

事手

伝い

・困

って

いる

仲間

への

声が

け・

自発

的な

家事

手伝

い・

周り

に対

する

思い

やり

・先

輩や

先生

の声

がけ

・先

生や

親に

よる

賞賛

・人

との

関わ

り方

に関

する

自信

注:

「効

果の

カテ

ゴリ

ー」

の括

弧内

の数

字は

,そ

のカ

テゴ

リー

を構

成す

る記

述数

であ

る.

また

,効

果促

進要

因か

ら般

化影

響要

因の

各欄

の記

述は

,調

査対

象者

が効

果の

説明

に対

応し

て記

した

内容

をま

とめ

たも

ので

ある

Page 10: 小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会 …ir.jwcpe.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/660/1/nichijo...小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

−148−

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態表6 スポーツ活動による心理社会的効果のカテゴリーとその般化に関わる要因:指導者に対する自由記述調査のまとめ

般化

に関

わる

要因

カテ

ゴリ

ー効

果促

進要

因効

果影

響要

因般

化場

面般

化に

よる

効果

般化

促進

要因

般化

影響

要因

社会性・協調性(5)

例)

自分

のこ

とだ

けで

なく

仲間

や周

りの

こと

を考

えら

れる

・指

導者

の声

がけ

・毎

日の

練習

・仲

間と

の共

通の

目標

での

力を

合わ

せた

取り

組み

・つ

らい

練習

の中

での

励ま

し合

・指

導者

の強

い指

導力

・チ

ーム

内の

規範

意識

・指

導者

の適

切な

助言

・仲

間と

一緒

の成

功体

験や

失敗

体験

・人

と協

力す

る全

ての

場面

・学

級で

の生

活,

授業

,行

事・

家庭

での

生活

・良

い人

間関

係の

下で

の心

穏や

かな

生活

・仲

間同

士の

支え

合い

・他

者尊

重の

気持

ち・

自発

的協

・自

分自

身の

生活

の向

上・

一人

の力

の限

界に

対す

る気

づき

・集

団活

動に

おけ

る協

力の

重要

性の

自覚

・協

力に

より

得ら

れる

達成

・指

導者

の日

頃の

声が

け・

思い

やり

,支

え合

いの

 心

の形

成・

結果

に対

する

充実

礼儀・規律・規範(5)

例)

礼儀

作法

・毎

回の

習慣

・集

団生

活や

チー

ムワ

ーク

・競

技場

面や

様々

な場

面の

人間

関係

・指

導者

の声

がけ

・仲

間と

共に

行動

する

こと

・普

段の

生活

場面

・時

間や

約束

を守

る態

度の

形成

•他

者に

対す

る思

いや

り・

他者

に迷

惑を

かけ

ない

よう

にす

る態

・集

団生

活上

の必

要事

項で

ある

こと

の自

覚・

仲間

と一

緒の

達成

感・

周囲

から

の肯

定的

評価

・相

手の

こと

を思

いや

る心

のゆ

とり

・感

謝の

気持

ち・

日常

的な

取り

組み

・年

上の

人を

尊敬

する

達成行動・努力(5)

例)

日々

努力

して

目標

に向

かお

うと

する

・日

々の

計画

的な

練習

・毎

日の

継続

的な

練習

・チ

ーム

目標

の恒

常的

な意

識・

試合

後の

反省

・指

導者

の指

導方

針・

目標

とす

るチ

ーム

や選

手の

身近

での

存在

・学

校行

事な

どの

クラ

スが

 団

結す

る場

面・

各種

テス

トへ

の取

り組

み・

学習

全般

・他

者の

意見

を共

感的

に受

け止

める

態度

・物

事に

対す

る意

欲的

態度

・集

団の

中で

の自

分の

役割

自覚

・苦

難を

乗り

越え

る意

志・

時間

管理

の習

慣化

・自

分の

存在

感の

自覚

・人

生に

おけ

る必

要性

の自

覚・

目標

達成

に必

要な

こと

の自

・成

績向

上の

実体

験・

クラ

スや

集団

での

成就

感や

達成

感・

周り

から

の承

認や

賞賛

注:

「効

果の

カテ

ゴリ

ー」

の括

弧内

の数

字は

,そ

のカ

テゴ

リー

を構

成す

る記

述数

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る.

また

,効

果促

進要

因か

ら般

化影

響要

因の

各欄

の記

述は

,調

査対

象者

が効

果の

説明

に対

応し

て記

した

内容

をま

とめ

たも

ので

ある

.な

お,

効果

には

,他

に「

周囲

の状

況に

気づ

く力

」,「

自主

性」

およ

び「

耐え

る力

」の

文言

を含

む記

述が

指摘

され

たが

,い

ずれ

も1

記述

であ

った

ため

カテ

ゴリ

ー化

はし

なか

った

Page 11: 小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会 …ir.jwcpe.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/660/1/nichijo...小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

−149−

小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

Ⅳ.考  察

1.スポーツ活動による心理社会的な効果とその促進および影響要因

 本調査により,調査対象者全体から抽出されたスポーツ活動の効果に関するカテゴリーをまとめると次の通りである.「社会性・協調性」(全体の記述数:99),「忍耐力」(94),「礼儀・あいさつ」(55),「目標設定・計画性」(37),「努力」(18),「自主性・自発性」

(17),「思いやり」(6),「時間管理」(5),「主張」(4),「聴く態度」(4),「競争心」(4),「観察力・洞察力」(4),「向上心」(3),「自省的態度」(1). 「社会性・協調性」「忍耐力」「礼儀・あいさつ」「目標設定・計画性」は,全ての調査対象者が指摘していた.したがって,これらはスポーツ活動によって身につく心理社会的なスキルとして,子どもから大人まで共通に認識されていると考えられる.また,それ以外に関しても,調査対象者によって内容は異なるが,一般的にスポーツをすることで身につくと経験的に指摘される態度や心理社会的なスキルが指摘されているといえる. このような中で,小学生よりも中学生において,また小学生の保護者よりも中学生の保護者において指摘されたスキルの内容が多岐に及んでいる.小学生と中学生の違いについていえば,発達的な変化としてとらえられる自己認識の広がり 3)が,中学生自身が捉える心理社会的効果の増加に関係しているのではないかと考えられる.また,小中保護者の回答の違いは,そのような発達的変化の違いが現実に捉えられている結果であると思われる.また,記述数としては少なかったが,中学生において「聴く態度」と「主張」がカテゴリー化された.相川 1)は,「聴くスキル」と「主張スキル」は人間関係の基本スキルであると説明している.これらがスポーツ活動の効果として中学生自身によって指摘されたことは,子どもの心理社会的発達におけるスポーツ活動の重要性を説明する上で注目できる. 次に,スポーツ活動による心理社会的効果が身に付くことを促したり,身に付く際に影響を与えたりする要因としてあげられた内容は,全体を通して各効果にほぼ共通しており,「活動の継続」と「周囲(仲間・指導者・先輩・家族)との相互作用(活動に関する共通理解・支え合い・競争・指導・励ましなど)」にほ

ぼ集約できると考えられる.このことからすれば,スポーツ活動の効果を高めるためには,活動(練習)そのものが継続して取り組める内容であることと,それをさらに充実させる条件として,活動に関わる人々との様々な社会的経験が豊かに準備されることが重要といえる.

2.般化の実態

 スポーツ活動における心理社会的なスキルが日常生活でも役立っているとする回答は,小学生がやや少なかった.しかし,全体的にみれば7割から8割が役立っているという認識を持っていた.したがって,小学生や中学生がスポ少や運動部の活動で身に付けた心理社会的なスキルは,日常生活に般化しているとみてよいと考えられる.また,その範囲は,学校での勉強,行事への参加,友だちとの遊び方,家庭での生活の仕方,友人や教師,家族や地域の人々との付き合い方など広範囲に及んでいるといえる. さらに,そのことがどのように役に立っているのかという点では,心理社会的なスキルが活用できるようになったことで,他者との相互作用が肯定的に変化したことや生活の改善につながったことが指摘されている.これらはいわば,子どもの「quality of life」

(QOL:生活の質)が向上したことを意味している.スポーツ活動によって身に付く心理社会的なスキルの般化がもたらす2次的効果を示す記述データとして注目できる.

3.般化の促進および影響要因

 スポーツ活動場面の心理社会的なスキルが日常生活場面に般化する場合,その促進要因として指摘された内容は大きく3つにまとめられるといえる.第1は

「身についたスキルの大切さの理解」,第2は「日常生活場面でのスキルの実践による成功経験」,第3が

「肯定的感情の経験」である.これらは,それぞれが独立して作用するのではなく,相互に関連しながら般化を促すと考えられる.すなわち,スポーツ活動以外の生活場面でスキルを実践することにより「何らかの成果や効果」(成功経験)が得られれば,日常生活でもそれを用いることの重要性や必要性が理解されることになる.また,その成功経験には喜びや満足感,あるいは充実感などの肯定的な感情が伴っていると考え

表6 スポーツ活動による心理社会的効果のカテゴリーとその般化に関わる要因:指導者に対する自由記述調査のまとめ

般化

に関

わる

要因

カテ

ゴリ

ー効

果促

進要

因効

果影

響要

因般

化場

面般

化に

よる

効果

般化

促進

要因

般化

影響

要因

社会性・協調性(5)

例)

自分

のこ

とだ

けで

なく

仲間

や周

りの

こと

を考

えら

れる

・指

導者

の声

がけ

・毎

日の

練習

・仲

間と

の共

通の

目標

での

力を

合わ

せた

取り

組み

・つ

らい

練習

の中

での

励ま

し合

・指

導者

の強

い指

導力

・チ

ーム

内の

規範

意識

・指

導者

の適

切な

助言

・仲

間と

一緒

の成

功体

験や

失敗

体験

・人

と協

力す

る全

ての

場面

・学

級で

の生

活,

授業

,行

事・

家庭

での

生活

・良

い人

間関

係の

下で

の心

穏や

かな

生活

・仲

間同

士の

支え

合い

・他

者尊

重の

気持

ち・

自発

的協

・自

分自

身の

生活

の向

上・

一人

の力

の限

界に

対す

る気

づき

・集

団活

動に

おけ

る協

力の

重要

性の

自覚

・協

力に

より

得ら

れる

達成

・指

導者

の日

頃の

声が

け・

思い

やり

,支

え合

いの

 心

の形

成・

結果

に対

する

充実

礼儀・規律・規範(5)

例)

礼儀

作法

・毎

回の

習慣

・集

団生

活や

チー

ムワ

ーク

・競

技場

面や

様々

な場

面の

人間

関係

・指

導者

の声

がけ

・仲

間と

共に

行動

する

こと

・普

段の

生活

場面

・時

間や

約束

を守

る態

度の

形成

•他

者に

対す

る思

いや

り・

他者

に迷

惑を

かけ

ない

よう

にす

る態

・集

団生

活上

の必

要事

項で

ある

こと

の自

覚・

仲間

と一

緒の

達成

感・

周囲

から

の肯

定的

評価

・相

手の

こと

を思

いや

る心

のゆ

とり

・感

謝の

気持

ち・

日常

的な

取り

組み

・年

上の

人を

尊敬

する

達成行動・努力(5)

例)

日々

努力

して

目標

に向

かお

うと

する

・日

々の

計画

的な

練習

・毎

日の

継続

的な

練習

・チ

ーム

目標

の恒

常的

な意

識・

試合

後の

反省

・指

導者

の指

導方

針・

目標

とす

るチ

ーム

や選

手の

身近

での

存在

・学

校行

事な

どの

クラ

スが

 団

結す

る場

面・

各種

テス

トへ

の取

り組

み・

学習

全般

・他

者の

意見

を共

感的

に受

け止

める

態度

・物

事に

対す

る意

欲的

態度

・集

団の

中で

の自

分の

役割

自覚

・苦

難を

乗り

越え

る意

志・

時間

管理

の習

慣化

・自

分の

存在

感の

自覚

・人

生に

おけ

る必

要性

の自

覚・

目標

達成

に必

要な

こと

の自

・成

績向

上の

実体

験・

クラ

スや

集団

での

成就

感や

達成

感・

周り

から

の承

認や

賞賛

注:

「効

果の

カテ

ゴリ

ー」

の括

弧内

の数

字は

,そ

のカ

テゴ

リー

を構

成す

る記

述数

であ

る.

また

,効

果促

進要

因か

ら般

化影

響要

因の

各欄

の記

述は

,調

査対

象者

が効

果の

説明

に対

応し

て記

した

内容

をま

とめ

たも

ので

ある

.な

お,

効果

には

,他

に「

周囲

の状

況に

気づ

く力

」,「

自主

性」

およ

び「

耐え

る力

」の

文言

を含

む記

述が

指摘

され

たが

,い

ずれ

も1

記述

であ

った

ため

カテ

ゴリ

ー化

はし

なか

った

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

られ,その肯定的な感情が強化子の一つとなり以後もそのスキルを用いるようになると考えられる.また,肯定的な感情と同様に般化を促す要因には,周囲からの賞賛や他者からの肯定的な評価,あるいは仲間や指導者から信頼を得ているという実感をあげることができるようである. 次に,般化に影響した要因として指摘された内容が,自分の周りにいる仲間,先輩,指導者,さらには他のチームなどの「行動をみて学んだ」というものであった.これは,モデリング 2)に基づく般化が生じていることを示しているといえる.モデリングは,人によって影響される程度が異なるとされ,その影響因子には「モデルの特性」や「観察者の属性」2)があげられる.すなわち,モデルが魅力的であったり権威的であったりすれば,それは観察者にとっては成功につながる示範行動としての機能的価値あるいは情報的価値を有することになり,観察者に対して類似した行動を喚起させやすくなる 2)と考えられている.この点,スポ少や運動部の指導者は子どもにとっては権威的なモデルであり,また,価値を有すると思われる行動を実践する仲間は魅力的なモデルであるといえる.また,同時に指導者や仲間は属性を同じくする同士であり,この点は同じ種目で活動する者としては他チームの選手も観察の対象として含まれる場合があると考えられる.したがって,指導者や仲間などの行動が,子どもの心理社会的なスキルの般化に影響を及ぼすことは十分に考えられる. 以上,般化の促進および影響要因を併せて考えると,スポーツ活動によって身に付いた心理社会的なスキルの般化においては,次の5点が重要であると考えられる.第1はスポーツと異なる場面でもそのスキルが実践されること(実地の体験),第2はその実践後に良い結果が得られること(達成・成功経験),第3はその結果に対して周囲が肯定的な評価を行いスキルを用いたことに対する成功感や充実感などの快感情が体験されること,第4は周囲(仲間,指導者,親)がそのスキル実践の良き示範者となること,そして第5が,これらの過程を経る中で,心理社会的なスキルの価値が子どもたち自身において理解されることである.これらの要因は,スポーツ活動によって身に付く心理社会的なスキルを,いわゆる「生きる力」6)として子どもたちに定着させ発展させるためのプログラムなどを考える際には重要な意味を持つ条件になると考えられる.

4.本研究の限界と今後の検討課題

 本研究の調査対象者は,スポ少に所属する小学校2校の5,6年生と運動部に所属する中学校1校の1,2年生,およびその保護者と運動部顧問などであった.収集された記述データからは,スポーツ活動の効果や般化についての有用な知見が得られたと考えられる.しかし,研究目的が実態把握であった点からすると,調査対象者が限定的であった.子どものスポーツ活動環境は,その地域の教育行政 17)や,親の関わり方などでも異なる 11)と考えられる.したがって,スポーツ活動の効果とその般化の実態をより正確に把握するためには,これらの環境的要因も考慮に入れた検討が必要になると思われる. また,以上の視点に立てば,地域のスポーツプログラムとして行われるスポ少と学校教育の一環として行われる運動部活動の違いについても考慮し,それぞれの活動の効果と般化の特徴や違いについて分析される必要がある. 次に,本研究で実施された調査は自由記述方式の質問紙調査であった.このような調査では,調査対象者の文章表現力などが回答に影響する場合がある.特に,スポーツ活動の効果の般化に関する記述では深い洞察が必要であったと思われる.また,効果および般化の促進並びに影響要因については,その回答内容からは調査対象者が各要因を十分に区別できていないことが示唆された.今後,般化の過程やそれに関わる要因を正確に把握するためには,半構造化面接によるインタビュー調査などの実施も必要と考えられる. 最後に,本研究において指摘された般化の促進要因や影響要因が,実際にそのような機能を持つのかどうか,また,それが多くの子どもの共通の要因といえるのかが検証される必要がある.今後は本研究により得られた知見を整理し,スポーツ活動によって身に付いた心理社会的なスキルの般化モデルを考案するなどし,それに基づくプログラムやシステムを実施することによって,実践的かつ実証的な知見を提出することが課題といえる.

Ⅴ.ま と め

 本研究の目的は,スポ少や運動部でスポーツに取り組む子どもたちの,スポーツ活動で身に付いた心理社会的なスキルの日常生活に対する般化について,その

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

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小学生および中学生のスポーツ活動による心理社会的効果とその日常生活への般化の実態

実態を明らかにすることであった.スポ少や運動部に所属する小中学生とその保護者並びに指導者の合計 383 名に対して,自由記述調査が実施された.収集された記述データは分類・整理され,スポーツ活動によって身に付く心理社会的なスキルにはどのようなものがあるのか,それはどのようにして身につくのか,日常生活には般化しているのか,それはどのように役立っているのか,般化は何によって促進され,またどのようなことの影響を受けているのかなどが検討された. 分析の結果,スポーツ活動を通じては,他者との関係性を良好にするためのスキルや苦しいことにも我慢強く取り組むためのスキル,また問題や課題を計画的に遂行するためのスキルなどが身につくと考えられており,これらは子ども,保護者,指導者間でほぼ共通に認識されていることが示唆された.また,これらのスキルが身につくことには,スポーツ活動中の周囲の人々との支え合いや競争などの様々な社会的経験と,それを含む継続的な活動が関連していると考えられた.さらに,身についた心理社会的なスキルは日常生活でも役立っているとする考えが全体のほぼ7割以上を占め,また,そのことによって子どもたちの QOLが向上するという2次的な効果が生まれていることも示唆された.そして,このような般化を促したり,般化に影響を与えたりする要因としては,①日常生活場面での実践,②実践による成功経験,③実践後の快感情,④良き示範者の存在,および⑤スキルの価値の理解が考えられた.最後に,本研究に関わる今後の検討課題が示された.

注(1) 本研究では,スポーツ活動場面で心理社会的なスキル

が身に付く場合や,それが日常生活のスキルとして用いられるようになる場合に,そのことに関係した経験や体験(例:厳しい練習,努力が良い結果に結びついた)を促進要因,また,内外の要因としてその経験や体験に関連していた事柄(例:ベストタイムを更新したいという強い思い,良い結果に対する賞賛)を影響要因としてとらえることにした.

(2) 小中学生の教示文は以下の通りである.①スポーツ活動の効果:スポーツ活動を行ってきて,身に付いたこと,学んだことは何ですか(技術,体力,健康は含めない).②効果促進要因:それはどのように身に付きましたか.③効果影響要因:それにはどのようなことが関係していましたか.④般化の有無:それはふだんの生活で役に立っていま

すか.⑤般化場面:役立っているのはふだんのどのような場面ですか.⑥般化効果:具体的にどのように役立っているのかを教えて下さい.⑦般化促進要因:なぜ役立つようになりましたか.⑧般化影響要因:それにはどのようなことが関係していましたか.

(3) 各要因別に記述文に含まれる内容を1件1ラベルとして抽出した場合のラベル延べ数.ただし、1記述中に複数の内容が含まれる場合は,それぞれを1ラベルとして計数した.

謝辞 調査を実施するにあたり,ご協力を頂いた方々に心より感謝申し上げます.また,本研究は,科学研究費補助金・基盤研究(B)(No.22300207,研究代表者:西田 保)の助成を受けて行われました.ここに記して謝意を表します.

参考文献1) 相川充(2000)人づきあいの技術,p. 22-23,サイエン

ス社,東京.2) A・バンデュラ:原野広太郎監訳(1979)社会的学習理

論,p. 98-104,金子書房,東京.3) 柏木惠子(1983)子どもの「自己」の発達,p. 45-48,

東京大学出版会,東京.4)川喜田二郎(1967)発想法,Pp. 220,中央公論社,東京.5) 文部科学省(2000)スポーツ振興基本計画, http://www.mext.go.jp/a_menu/sport/plan/06031014 /001.

htm, (参照日2011年6月18日).6) 文部科学省(2008)生きる力, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/

pamphlet /20080328/01-16.pdf,(参照日2011年6月14日)7) 文部科学省(2010)平成21年度 文部科学白書, http ://www.mext .go . jp/b_menu/hakusho/html/

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9)中島義明,安藤清志,子安増生ほか(1999)般化:心理学辞典,p. 702,有斐閣,東京.

10)永井洋一(2004)スポーツは「良い子」をそだてるか,p. 160-171,日本放送出版協会,東京.

11)永井洋一(2007)少年スポーツ ダメな指導者 バカな親,Pp. 197,合同出版,東京.

12)作野史朗(1971)社会性発達に関する体育管理学的研究,日本体育学会学会号22:512.

13)作野史朗(1972)社会的発達に関する体育管理学的研究(その2),日本体育学会学会号23:479.14)島本好平,石井源信(2007)体育の授業におけるスポー

ツ経験が大学生のライフスキルに与える影響,スポーツ心理学研究34:1-11.

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15)上野耕平,中込四郎(1998)運動部活動への参加による生徒のライフスキル獲得に関する研究,体育学研究43:33-42.

16)内海和雄(1998)部活動改革,p. 36-37,不昧堂出版,東京.

17)内海和雄(1998)部活動改革,p. 108-128,不昧堂出版,東京.

18)米川直樹,鶴原清志,藤田匡肖(1994)児童のスポーツ

活動が心理的側面に及ぼす影響について,三重大学教育学部研究紀要45:69-86.

19)財団法人日本体育協会日本スポーツ少年団(2011)ガイドブックスポーツ少年団とは,http://www.japan-sports.or.jp/club/,(参照日2011年6月18日).

平成24年 9 月12日受付平成24年12月19日受理