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1 実務に直結! 「 所得税・消費税申告書の作成ポイント 」 日税フォーラム 会計事務所 3 年生以下の職員の皆さん向け 業務に必要不可欠な知識を確実に習得するための研修 2015 年 12 月 9 日 アクタス税理士法人 税理士 藤田益浩

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実務に直結!

「 所得税・消費税申告書の作成ポイント 」

日税フォーラム

会計事務所 3 年生以下の職員の皆さん向け

業務に必要不可欠な知識を確実に習得するための研修

2015 年 12 月 9 日

アクタス税理士法人

税理士 藤田益浩

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目 次

Ⅰ.所得税篇 確定申告の基礎を理解する

1.確定申告とは何か

2.確定申告をしなければならない人

3.確定申告の方法を確認する

4.確定申告の流れを確認する

5.申告書の種類を確認しておこう

6.所得税の計算の流れを理解する

7.所得税の計算の流れを申告書で確認する

8.所得の税率について確認する

9. 所得の種類 と 所得の計算方法を知る

10. 所得控除を確認する

Ⅱ.実践編 確定申告書のつながりを理解する

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Ⅰ.学習篇 確定申告の基礎を理解する

1.確定申告とは何か

■確定申告とは何か

確定申告とは、個人が毎年 1 月 1 日から 12 月 31 日までの 1 年間に得た

所得と税額を自分で計算し、翌年 2 月 16 日から 3 月 15 日までの間に所轄

の税務署に申告書を提出し、納税を行うことです。

サラリーマンの場合、所得税は毎月会社が給与から源泉徴収によって天

引きして納付し、さらに年末調整で 1 年間の精算をするので、通常は確定

申告の必要はありません。しかし、サラリーマンでも確定申告をしなけれ

ばいけない人や、確定申告をすれば税金が戻ってくる人がいます。

2.確定申告をしなければならない人

■確定申告をしなければならない人

次にあげる人たちは、確定申告をする必要があります。

① 1 年間の給与収入が 2,000 万円を超えている人

② 2 カ所以上の会社から給与をもらっている人

③ 副業などを行っていて、主たる給与収入と退職所得収入以外の所得の

合計が 20 万円を超えている人

④ 事業所得や不動産所得などがある個人事業者で納付税額のある人

⑤ 同族会社の役員などで、その会社から給与の他に貸付金の利子や、家

賃などの支払を受けている人

⑥ 給与から所得税が源泉徴収されていない人

⑦ 土地、建物、ゴルフ会員権などを売却した人

⑧ 給与と年金をもらっている人

⑨ 保険などの満期金を受け取った人 など

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■年金受給者で確定申告をしなければならない人

年金受給者で次にあげる人たちは、確定申告をする必要があります。

① 400 万円超の公的年金をもらっている人

② 公的年金に加えて、年金以外の所得が 20 万円を超える人

■確定しなければ損をする人

次にあげる人たちは、確定申告をすると税金が戻る可能性があります。

① 医療費をたくさん払った(1 年間で 10 万円超)

② ローンを組んでマイホームを購入した人

③ 国や地方公共団体に寄付をした人

④ サラリーマンで年末調整後に子供が生まれた人

⑤ 自然災害や火災で住宅に被害を受けた人

■税金のかからない所得

税金のかからない収入や所得もあります。

① 遺族年金、遺族恩給、障害年金

② 国民健康保険等の療養費

③ 損害賠償金、慰謝料

④ 宝くじ、サッカーの当選金

⑤ 雇用保険の失業給付、生活保護の給付

⑥ 財形住宅貯蓄等の元本合計 550 万円までの利息

⑦ その他

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参考:「図解いちばん簡単!確定申告」 アクタス税理士法人 編著

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3.確定申告の方法を確認する

■申告するためには様々な方法がある

① 自分で申告書を手書きする

昔は申告書の作成は手書きでした。そのやり方が慣れているという方

も多いです。

② インターネットを使って申告書を作成する

国税庁のHPにアクセスすると、確定申告特集のコーナーがあります。

申告書作成のソフトで計算し、印刷して提出します。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/jouto305.htm

③ インターネットを使って申告書を作成し電子申告する

いわゆる「e-Tax(イータックス)」という方法で電子申告や納税を行

う方法です。あらかじめ、利用者識別番号の取得やICカードリーダ

ライタの購入が必要です。

④ 税理士に依頼する

確定申告書の作成から申告までの手続き全般を税理士に依頼する方法です。

申告は電子申告の方法によることも可能です。税理士報酬が余分にかかる

ことになります。

■確定申告の提出方法

申告書の提出の方法を以下のようにまとめてみました。

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4.確定申告の流れを確認する

(平成 28 年は 2 月 15 日から 3 月 15 日 )

参考:「図解いちばん簡単!確定申告」 アクタス税理士法人 編著

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5.申告書の種類を確認しておこう

■申告書は大きく分けて 2 種類ある

確定申告を行う場合、申告する内容によって、使用する申告書が異なり

ます。どの種類の申告書を使えばよいのか、確認しておきましょう。

まず、申告書は 2 つあります。「確定申告書A」と「確定申告書B」です。

さらにそれぞれの申告書は、「第一表」と「第二表」から構成されています。

「第一表」が表面で、「第二表」が裏面であると思っていただいていいでし

ょう。

① 確定申告書A(第一表、第二表)

申告する所得が、給与所得、雑所得、配当所得、一時所得だけがある場

合で、予定納税額のない人が使用します。

② 確定申告書B(第一表、第二表)

不動産所得や事業所得などがある人は、確定申告書Aではなく、確定申

告書Bを使用します。確定申告書Bは、すべての申告所得に対応をして

いますので、確定申告書Aのかわりに使うこともできます。

■申告する内容によって申告書等が増える

確定申告書A及びBに加えて、申告の内容に応じて書類が多くなります。

① 申告書第三表(分離課税用)

土地や建物等の譲渡所得がある人、申告分離課税の株式等の譲渡所得が

ある人、山林所得や退職所得がある人が使用します。この申告書を使用

する人は、確定申告書Bをあわせて使用します。

② 申告書第四表(損失申告用)

平成 27 年中の所得金額が赤字である人など一定の損失がある場合に使

用します。

③ その他にも申告内容に応じて計算書類の添付が必要になる場合があり

ます。例)医療費の明細書、譲渡所得の内訳書等

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【参考】申告書使用区分

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●確定申告書B

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6.所得税の計算の流れを理解する

所得税の計算について

(1)所得税の計算の流れ

所得税の計算をステップごとに追うと次のようになります。

ステップ1 所得金額の計算

所得を 10 種類に区分し、それぞれの所得区分における所得金額を計算する。

所得金額は、基本、収入金額から必要経費などを差引く形で計算される。

ステップ2 損益通算

赤字の所得があれば、黒字の所得と通算をする(これを「損益通算」とい

う)。損益通算できる赤字は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得

から生じた赤字に限られている。

ステップ3 総所得金額等の計算

所得を合算し課税する「総合課税」の所得と、それぞれの所得ごとに計算

する「分離課税」の所得を区分する。分離課税の所得は、土地建物等の譲

渡による所得や株式等の譲渡による所得、退職所得、山林所得が分離課税

されるものとなる。

ステップ4 所得控除額の計算

配偶者控除や扶養控除、医療費控除などの個人的事情を配慮した所得から

控除する「所得控除額」を計算する。所得控除は全部で14種類ある。

ステップ5 課税総所得金額等の計算

ステップ3で求めた総所得金額等からステップ4で求めた所得控除額を差

引きし、税率を乗ずる前の課税される所得金額を計算する。

ステップ6 所得税の計算

ステップ 5 で求めた課税所得金額に対して税率をかけて所得税額を求める。

ステップ7 復興特別所得税の計算

ステップ 6 で求めた所得税額より税額控除を差引き、その残額に 2.1%を

乗じて復興特別所得税額を求める。

ステップ 8 納付税額の計算

所得税額と復興特別所得税額を合計し、そこから予定納税額(中間納税額)、

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源泉徴収税額を控除し、実際に納付する税額を求める。マイナスになる場

合は、税金の還付となる。

■ポイントは「所得」と「控除」

確定申告は、1 年間に得た所得と税額を自分で計算し、納税または還

付を受けるために行います。申告書作成の大まかな流れは、次のように

なります。

1. 「収入金額」を把握する

2. 「所得金額」を計算する

3. 「所得控除額」を計算する

4. 「税額を計算」

① 「課税所得金額」を計算する(2.-3.)

② 「所得税額」を計算する(①×税率)

③ 「税額控除」を計算する

④ 「納付または還付税額」を計算する (②-③)

○所得計算の流れのイメージ

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■収入と所得とは異なる

所得税の計算の第一歩は「収入金額」の把握です。後ほどお話しする所

得の種類ごとに収入金額を把握します。その「収入金額」から「必要経費」

などを差し引いたものが「所得金額」となります。所得税の確定申告では、

この収入金額と所得金額とが異なるということを理解することが重要です。

★【収入と所得の関係】 ⇒ 収入金額 - 必要経費 = 所得金額

サラリーマンなどの給与所得者の場合、通常必要経費に相当するものが

認められていませんが、その代わりに「給与所得控除」があります。「給与

支払金額」から必要経費に相当する「給与所得控除額」を差し引いたのが

「給与所得」となります。

不動産などを貸している場合には家賃が入ってきますがこれをすべて合

わせたものが収入金額です。一方で不動産を維持管理するためには、修繕

費や固定資産税などがかかりますが、これが必要経費となります。家賃な

どの収入金額から必要経費を差し引いたものが不動産所得となります。

■所得控除はもれなく計上しよう

「所得金額」から差し引くのが「所得控除」です。

「所得控除」は 14 種類が設けられています。適用できる所得控除がたく

さんあれば所得金額から多くの金額を差し引くことができます。

所得控除を差し引いた「課税所得金額」に税率をかけて「所得税額」を

計算することとなりますので、所得控除は多ければ多いほど税金も安くな

ります。所得控除の漏れがないようにすることが大切です。

■最後に所得税額を計算する

「課税所得金額」が算出されたら、その課税所得金額に税率を掛けて「所

得税額」を求めます。「所得税額」から「税額控除」を差し引いて、納付す

る税金又は還付される税金が計算されます。

「税額控除」とは、名前のとおり税額から一定額を差し引くことができ

るものです。たとえば、住宅ローン控除や配当控除などがこれにあたりま

す。さらに、給与や年金の支払い時に天引きされた「源泉徴収税額」があ

れば、これも差し引いて納める税金を計算することになります。

以上が、所得税額の計算までの大まかな手順です。それでは次に、この

流れを確定申告書で確認してみましょう。これをしっかり頭に入れていた

だければ、確定申告のことがさらによく理解できるようになります。

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7.所得税の計算の流れを申告書で確認する

■確定申告書Bで計算の流れを確認する

【第一表】

1 収入金額等 収入を計算!

・事業であれば売上

・給与であれば、給与

支払額

・年金であれば、年金

支払金額

3 所得控除

所得控除額を計算!

医療費控除、保険料

控除、基礎控除など

14 の所得控除を計

算する

4 税金の計算

納税額までを計算!

・課税所得金額

・所得税額

・税額控除

・源泉徴収税額

・納める税額

を段階的に計算する

1

3

4

2

2

2 所得金額

所得金額を計算!

収入金額から必要

経費などを差し引

いた利益部分であ

る所得金額を計算

し記入する

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【第二表】

5

6

7

6 雑所得

雑所得や配当所得

などに関する詳細を

記入する箇所。

保険会社からの年

金や株式の配当金の

詳細を支払調書を見

ながら記入する。

7 所得控除

所得控除の詳細を

記入する箇所

人に関する控除に

ついては氏名、続柄、

生年月日などの記載

が必要になる。

5 所得の内訳

所得のうち、源泉徴

収されているものを

記載する箇所。

源泉徴収票や支払

調書を見ながら記入

する。

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8.所得の税率について確認する

■所得税は超過累進税率で課税される

所得税は、所得金額が多くなればなるほど高い税率が課せられる「超過

累進税率」よる課税方式が採用されています。

所得税を計算するときは、下に示す所得税の速算表が使われます。実際

は、所得の段階ごとに課される税率が異なります。

(平成 27 年分以降)

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額

195 万円以下 5% 0 円

195 万円を超え 330 万円以下 10% 97,500 円

330 万円を超え 695 万円以下 20% 427,500 円

695 万円を超え 900 万円以下 23% 636,000 円

900 万円を超え 1,800 万円以下 33% 1,536,000 円

1,800 万円を超え 4.000 万円以下 40% 2,796,000 円

4,000 万円超 45% 4,796,000 円

※平成 25 年から 25 年間にわたって東日本大震災の復興のための復興特別

所得税が課されています。所得税を計算した後の税金の額に 2.1%で課さ

れます。

■超過累進税率を勘違いしている人が多い

超過累進税率は、所得が一定額以上になった場合には、その超過金額に

対してのみ、より高い税率を適用して計算します。所得の段階が変わると、

すべての所得に対してその高い税率を課せられると思っている人が多いで

す。単純累進税率とは異なりますので注意してください。

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9.所得の種類 と 所得の計算方法を知る

■所得税は 10 の所得ごとに所得金額を計算する

所得税の計算は、所得の種類ごとに所得金額まで計算するのが特徴です。

その所得の種類は 10 種類あります。これらは、収入の発生の態様に応じて

定められています。

したがって、所得税計算の最初に行う「所得金額の計算」については、

10 種類の計算方法があることになります。

まずは、自分が得られた収入が何の所得に該当するかを知って、税金の

計算方法を確認することが大切です。

複数の収入を得ている人は、所得の種類ごとに計算をする必要がありま

す。

所得の種類 内容 計算方法

利子所得 公社債、預貯金の利子など 収入金額 = 所得金額

配当所得 株式や出資の配当金など 収入金額 - 株式等の取得に要した負債の利子

事業所得農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得

総収入金額 - 必要経費

不動産所得土地や建物などを貸して生ずる所得

総収入金額 - 必要経費

給与所得勤務先から受ける給料、賞与などの所得

収入金額 - 給与所得控除額

退職所得職により勤務先から受ける退職手当などによる所得

(収入金額 - 退職所得控除額)×1/2

山林所得山林を伐採して譲渡したりすることによる所得

総収入金額 - 必要経費 - 特別控除             (最高50万円)

譲渡所得土地、建物などの資産を譲渡することによって生ずる所得、

総収入金額-(取得費+譲渡費用)- 特別控除 ※長期譲渡所得は、損益通算後に2分の1を乗じる

一時所得営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のもの

総収入金額 - 支出に要した金額 - 特別控除                 (最高50万円) ※損益通算後に2分の1を乗じる

雑所得上記の所得のいずれにも該当しない所得。年金など

【公的年金  】収入金額 - 公的年金控除額【公的年金以外】収入金額 - 必要経費

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10.所得控除を確認する

■全部で 14 の所得控除がある

所得金額から差し引くことができるのが所得控除ですが、これは全部で

14種類あります。その種類としては、大きくは「物的控除」と「人的控

除」の 2 つにされます。

ほとんどの物的控除は、控除が受けられる証明を「添付書類」として申

告書と一緒に提出することになります。控除として認められる支出があっ

た場合は、その領収書などは大切に保管しておいてください。

なお、「配偶者控除」や「扶養控除」、「基礎控除」などの人的控除に関し

ては、添付書類は必要ありません。

○所得控除の一覧表

種 類 内 容 等 計 算 式 添 付 書 類

雑 損 控 除 災 害 や空 き巣 被 害 にあっ

た場 合 に受 けられる控 除

①と②で多 い方の金 額

①差 引 損 失 額 -総 所 得 金 額 ×10%

②災 害 関 連 支 出 額 -5 万 円

災 害 関 連 支 出 の

領 収 書

資 産 の 損 失 額 を

計 算 した書 類

医 療 費 控 除 1 年 間 に支 払 った医 療 費

が 10 万 円 を超 えた場 合 に

受 けられる控 除 。薬 局 など

で 購 入 し た 風 邪 薬 代 な ど

も含 まれる。

①と②で多 い方 の金 額 (上 限 200 万

円)

①支 払 った医 療 費 -10 万 円

②支 払 った医 療 費 -総 所 得 金 額 ×

5%

医 療 費 の 明 細

書 、領 収 書

社 会 保 険 料

控 除

国 民 健 康 保 険 料 、健 康 保

険 料 、国 民 年 金 保 険 料 、

厚 生 年 金 保 険 料 など 1 年

間 に支 払 った 金 額 。 生 計

を 一 に す る 親 族 の 分 も 控

除 が可 。

支 払 った保 険 料 の全 額 国 民 年 金 保 険 料

の控 除 証 明 書

サ ラ リ ー マ ン の 場

合 は源 泉 徴 収 票

小 規 模 企 業

共 済 等

掛 金 控 除

小 規 模 企 業 共 済 契 約 など

に 支 払 っ た 掛 金 な ど が 該

支 払 った掛 金 の全 額 掛 金 の証 明 書

生 命 保 険 料

控 除

生 命 保 険 や 生 命 共 済 に

支 払 った保 険 料 。個 人 年

金 保 険 料 や 介 護 医 療 保

険 料 なども該 当 。新 契 約 と

旧 契 約 で計 算 が異 なる

生 命 保 険 料 /個 人 年 金 保 険 料 /介 護

医 療 保 険 の金 額 に応 じて計 算 。

それぞれの区 分 は 4 万 円 が限 度 。

合 計 12 万 円 が限 度 。

保 険 料 控 除 証 明

サ ラ リ ー マ ン の 場

合 は源 泉 徴 収 票

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地 震 保 険 料

控 除

地 震 保 険 と し て 支 払 っ た

保 険 料 。

支 払 った全 額 (最 高 5 万 円) 保 険 料 控 除 証 明

サ ラ リ ー マ ン の 場

合 は源 泉 徴 収 票

寄 付 金 控 除 国 や地 方 公 共 団 体 、認 定

NPO法 人 などへ寄 付 をし

た場 合 。政 治 献 金 も該 当

する。

①と②で少ない方 の金 額

①寄 付した金 額 -2,000 円

②その年 の総 所 得 金 額 の 40%相 当

寄 付 金 の受 領 書

障 害 者 控 除 申 告 者 本 人 が障 害 者 と認

定 されている場 合 。あるい

はその家 族 が障 害 者 の認

定 を受 けている場 合

27 万 円

(特 別 障 害 者 に該 当 する場 合 は 40 万

円)

なし

寡 婦 、 寡 夫

控 除

夫 や妻 と離 婚 、あるいは死

別した場 合

27 万 円

(特 別 な条 件 を満 たしていると 35 万

円)

なし

勤 労 学 生 控

申 告 者 本 人 が 「 勤 労 学

生」の場 合

27 万 円 学 校 などが発 行 す

る(在 学)証 明 書

配 偶 者 控 除 申 告 者 本 人 に配 偶 者 (年

間 の合 計 所 得 金 額 が 38

万 円 以 下 ) が い る 場 合 に

該 当

38 万 円 なし

配 偶 者 特 別

控 除

申 告 者 本 人 の 合 計 所 得

金 額 が 1,000 万 円 以 下

で、配 偶 者 の合 計 所 得 金

額が 38 万 円 超 76 万 円 未

満 である場 合 に該 当

最 高 で 38 万 円

(配 偶 者 の合 計 所 得 金 額 に応 じて低

減)

なし

扶 養 控 除 扶 養 親 族 がいる場 合 に控

除 される。扶 養 親 族 とは、

申 告 者 本 人 と生 計 を一 に

す る 配 偶 者 以 外 の 親 族

で、年 間 の合 計 所 得 金 額

が 38 万 円 以 下 の人 。

特 定 扶 養 親 族 (19 歳~22 歳)63 万 円

老 人 扶 養 親 族 (70 歳 以 上) 48 万 円

同 上 で同 居 の場 合 58 万 円

上 記 以 外 の一 般 の扶 養 親 族 38 万 円

なし

基 礎 控 除 すべての人 が該 当 する。 38 万 円 なし

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■所得控除のポイント解説

(1) 医療費控除

本人や本人と生計を一にする家族のために支払った医療費が、年間 10 万

円か、もしくは所得の金額の 5%以上ある時は、その超えた金額を控除で

きます。

◆医療費控除の仕組み

◆医療費となるものならないもの

対象となるもの 対象とならないもの

・病院に支払った治療代

・薬局で治療の薬代

・治療のための鍼灸(有資格)

・通院の電車バス代

・入院の部屋代、食事代

・治療としての歯列矯正

・出産費用(出産育児一時金は除く)

・予防接種費用、人間ドック費用

・健康ドリンク、ビタミン剤

・疲労回復のためのマッサージ

・通院のガソリン代

・医師などの謝礼

・美容のための歯列矯正

・美容整形費用

◆医療費控除のポイント

・生計を一にする家族の医療費を支払った場合も含まれる。

・1年間で10万円(※)未満の場合には切り捨てとなる。

※所得が 200 万円未満の人は所得の 5%

・医療費の対象となるものならないものがあるので注意する。

・原則として、「治療のため」「医師の指示」によるものは対象である。

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(2)社会保険料控除

◆社会保険料控除の仕組み

◆社会保険料控除のポイント

・生計を一にする家族の社会保険料を支払った場合も含まれる。

・国民年金、国民年金基金の控除は、証明書を提出する必要がある。

(3)生命保険料控除

◆生命保険料控除額(合計で 12 万円が限度)

一般生命保険料控除 最高 4 万円(旧契約のみで最高 5 万円)

個人年金保険料控除 最高 4 万円(旧契約のみで最高 5 万円)

介護医療保険料控除 最高 4 万円

◆平成 24 年 1 月 1 日以後の契約

年間の払込保険料 控除額

20,000 円以下 払込保険料の全額

20,000 円超 40,000 円以下 払込保険料×1/2+10,000 円

40,000 円超 80,000 円以下 払込保険料×1/4+20,000 円

80,000 円超 40,000 円

◆平成 23 年 12 月 31 日までの契約

年間の払込保険料 控除額

25,000 円以下 払込保険料の全額

25,000 円超 50,000 円以下 払込保険料×1/2+12,500 円

50,000 円超 100,000 円以下 払込保険料×1/4+25,000 円

100,000 円超 50,000 円

◆生命保険料控除のポイント

・生命保険料控除には、保険会社から送付される「証明書」が必要。

・契約の年度によって控除額が異なる。

・新契約分は 8万円以上の保険料を支払っても控除額は各 4万円が限度。

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(4)地震保険料控除

損害保険料控除がなくなり、最高 5 万円の地震保険料控除に代わりまし

た。旧長期損害保険料は、経過的に最高 1 万 5 千円の控除が受けられます。

両方の保険料があるときには、合計 5 万円が控除額の上限です。

◆地震保険料の控除額

年間の払込保険料 控除額

50,000 円以下 払込保険料の全額

50,000 円超 50,000 円

◆長期損害保険料の控除額

年間の払込保険料 控除額

10,000 円以下 払込保険料の全額

10,000 円超 20,000 円 払込保険料×1/2+5,000 円

20,000 円超 15,000 円

※長期損害保険料とは、平成 18 年 12 月 31 日までに締結した契約期間 10 年以上のも

ので、満期返戻金があるものをいいます。

(6)配偶者控除・扶養控除・基礎控除

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Ⅱ.実践編 確定申告書のつながりを理解する

個人の確定申告書は、法人税の申告書と異なり、種類がさまざまあって、

数値がどのようにつながって、いくのかわかりにくい側面があります。

ここでは、具体的な例示を使いながら、申告書のつながりを理解していき

ます。

<例題>

如月 凪子(31 歳)デザイナー

平成 27 年の確定申告

1.

給与収入 2,000,000 円 (源泉徴収税額 150,000 円)

給与所得控除後の給与所得の金額 1,220,000 円

2.

事業所得(アパレル)(青色申告帳簿つけている)

収入金額 5,000,000 円

必要経費 7,500,000 円 → 損失 2,500,000 円

3.

上場株式の売却

NGS ホールディングス

売却収入 5,000,000 円

購入金額 3,500,000 円 → 所得 1,500,000 円

4.

賃貸住宅の売却(8 年所有)

売却収入 10,000,000 円

売却時の取得費

8,000,000 円 → 所得 2,000,000 円

(不動産の平成 27 年は空室のまま売却)

5.

個人的情報

専業主婦の母(55 歳)と二人暮らし

国民年金 240,000 円

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損益通算の方法

総所得金額を、利子、配当、不動産、事業、給与、雑所得の「経常グル

-プ」と譲渡、一時所得の「臨時グループ」との2グループに区分し、次

の手順に従って損益通算を行います。

①「経常グループ」の不動産・事業の赤字は「経常グループ」の所得

のうちから控除

②「臨時グループ」の譲渡所得の損失はまず一時所得から控除

譲渡・一時内で内部通算後、特別控除 50 万を差引、「経常グループ」

との損益通算に向かい、その後 1/2

③ ①の適用後も「経常グループ」に損失がある場合、②の適用後の「譲

渡・一時所得グループ」から控除

分離短期 ⇒ 総合短期 ⇒ 分離長期 ⇒ 総合長期

④ ②の適用後も「譲渡・一時所得グループ」に損失がある場合、①の

適用後の「経常グループ」から控除

①から④の適用後も損失がある場合は 山林⇒退職の順で控除

山林所得の損失は①、④適用後の

経常所得(分離課税に係るもの→その他)⇒譲渡所得(分短→総長)

⇒一時所得の順で控除

以上の順序に従って「損益通算」を行っても、なお損失の金額が生じると

きは、その金額を「純損失の金額」と言います。

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【参考】e-Tax を利用して所得税の確定申告書を提出する場合の「源泉徴

収票」や「医療費の領収書」などの第三者作成書類の添付省略について

平成 20 年 1 月 4 日以後に、平成 19 年分以後の所得税の確定申告書の提

出を e-Tax を利用して行う場合、次に掲げる第三者作成書類については、

その記載内容を入力して送信することにより、これらの書類の税務署への

提出又は提示を省略することができます。

なお、入力内容を確認するため、必要があるときは、原則として法定申

告期限から 5 年間、税務署等からこれらの書類の提示又は提出を求められ

ることがあります。この求めに応じなかった場合は、これらの書類につい

ては、確定申告書に添付又は提示がなかったものとして取り扱われます。

(対象となる第三者作成書類)

・給与所得者の特定支出の控除の特例に係る支出の証明書

・個人の外国税額控除に係る証明書

・雑損控除の証明書

・医療費の領収書

・社会保険料控除の証明書

・小規模企業共済等掛金控除の証明書

・生命保険料控除の証明書

・地震保険料控除の証明書

・寄附金控除の証明書

・勤労学生控除の証明書

・給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票

・オープン型の証券投資信託の収益の分配の支払通知書、配当等とみな

される金額の支払通知書、上場株式配当等の支払通知書

・住宅借入金等特別控除に係る借入金年末残高証明書(適用 2 年目以降

のもの)

・特定口座年間取引報告書

・政党等寄附金特別控除の証明書

・認定 NPO 法人寄附金特別控除の証明書

・公益社団法人等寄附金特別控除の証明書

・特定震災指定寄附金特別控除の証明書

http://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/kakutei/tempu01.htm

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目 次

Ⅰ.消費税篇

1.消費税計算の大枠を確認する

2.実際の申告書の記載について理解する

3.原則課税の例題より申告書の記載の理解を深める

4.簡易課税の場合の申告書の記載

5.決算手順として押さえておくべき論点

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Ⅰ.消費税編

1.消費税計算の大枠を確認する

「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引くのが消費税計算の

基本的な考え方です。

!ポイント!

1.消費税法の原則は、「税込金額」をベースに計算を進めることが前提にな

っている。

2.国税分の差引計算を行った後、その差引税額に地方税分になるように率

を乗じる

(5%)

1%分 = 4%×25%

(8%)

1.7%分= 6.3%×17/63

●原則課税の最も基本的なパターン(仕入消費税が全額控除)

(1)預かった消費税を計算する

①売上金額の集計 1,080,000 円(税込)

②税抜き金額に 1,080,000 円 ÷ 1.08 = 1,000,000 円

③国税税率 6.3%を 1,000,000 円 × 6.3% = 63,000 円

(2)支払った消費税を計算する

①仕入金額の集計 864,000 円(税込)

②国税税率 6.3%の計算 864,000 円 × 6.3/108 = 50,400 円

(3)差引して国税部分を計算

63,000 円 – 50,400 円 = 12,600 円

(4)地方消費税を計算

計算した国税に 17/63 を乗じて 1.7%分の消費税を求める。

12,600 円 × 17/63 = 3,400 円

(5)納付消費税を計算

税額の合計をする

12,600 円 + 3,400 円 = 16,000 円

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【参考】原則課税の計算について

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●仕入消費税が全額控除できないパターン

(1)預かった消費税を計算する

①売上金額の集計 1,080,000 円(税込)

②税抜き金額に 1,080,000 円 ÷ 1.08 = 1,000,000 円

③国税税率 6.3%を 1,000,000 円 × 6.3% = 63,000 円

(2)支払った消費税を計算する

課税売上割合 80%

仕入金額の集計 864,000 円(税込)

課のみ :324,000 円

非のみ :108,000 円

共通 :432,000 円 合計 864,000 円

①個別対応方式

課のみ:324,000 円 × 6.3/108 =18,900 円

共通 :432,000 円 × 6.3/108 × 80%=20,160 円

合計 39,060 円

②一括比例配分方式

864,000 × 6.3/108 × 80%= 40,320 円

③有利不利判定(控除が大きい金額)

個別:39,060 円 < 一括:40,320 円

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●税抜き経理方式を採用している場合の原則的な計算方法

~ 原則は、税込ベースで計算をすること ~

(1)預かった消費税を計算する

①売上金額の集計 1,000,000 円(税抜)

②仮受消費税の集計 80,000 円 → 合算 1,080,000 円

③改めて税抜金額に 1,080,000 円 ÷ 1.08 = 1,000,000 円

④国税税率 6.3%を 1,000,000 円 × 6.3% = 63,000 円

【参考】税込経理と税抜経理の会計処理

※ 会計上の処理として、望ましいのは税抜経理方式になります。

消費税は、預り金性格と考える会計においては、損益科目に消費税が

含まれているのはおかしいためです。

税 込 に 戻 し

ます

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2.実際の申告書の記載について理解する

消費税申告書の様式

申告書のつながりのイメージ(混在期間の申告書をベースに)

1.システム等の消費税集計表

2.付表2-2

(ポイント)

課税売上割合をここで計算する

税率区分ごとの控除対象仕入税額を計算する

5%と8%が混在する課税期間 8%のみの課税期間

1 消費税申告書(第27-(1)号様式) 消費税申告書(第27-(1)号様式)

2付表1旧・新税率別、消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表

-

3付表2-2課税売上割合・控除対象仕入税額の計算表(経過措置対象課税期間用)

付表2課税売上割合・控除対象仕入税額の計算表

5% 8% 合計

税抜金額

消費税額

税込金額

税抜金額

消費税額

税込金額

仕入 課税仕入

消費税集計表

売上

課税売上

免税売上

非課税売上

対象外売上

付表2-2

課税売上割合

控除対象仕入税額

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3.付表1

(ポイント)

税率区分ごとの納税額を円単位まで計算し、合計する

4.消費税申告書

(ポイント)

付表1で求めた合計額を転記する

その際、税額については、100円未満を切り捨てて表示する

付表1

税率5% 税率8%

課税標準に対する消費税(預かり消費税)

控除対象仕入税額(支払った消費税)

納付税額地方消費税額

付表2-2

課税売上割合

控除対象仕入税額

消費税申告書

合計

課税標準に対する消費税(預かり消費税)

控除対象仕入税額(支払った消費税)

納付税額地方消費税額

付表1

税率5% 税率8%

課税標準に対する消費税(預かり消費税)

控除対象仕入税額(支払った消費税)

納付税額地方消費税額

合計額を転記

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付表2-2

←←←←

売上の集計

→→→→

←←←←

→→→→→→

→→

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34

付表1

付表2-

2より

消費税申告書へ

34 34

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消費税申告書

税額計算のため 100 円未

満切り捨てされる

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3.原則課税の例題より申告書の記載の理解を深める

㈱会計事務所3年生

課税期間:平成 26 年1月1日~平成 26 年 12 月 31 日

個別対応方式を採用

■課税売上割合

分子:税抜課税売上 500,000 + 免税売上 100,000=600,000

分母:分子の金額 + 非課税売上 150,000 =750,000

→ 課税売上割合 80%

㈱会計事務所3年生  (単位:円)

5% 8% 合計 帳簿消費税額

税抜金額 200,000 300,000 500,000 仮受消費税

消費税額 10,000 24,000 34,000 33,900

税込金額 210,000 324,000 534,000

100,000

150,000

50,000

税抜金額 100,000 62,500 162,500 仮払消費税

消費税額 5,000 5,000 10,000 9,700

税込金額 105,000 67,500 172,500

税抜金額 70,000 40,000 110,000

消費税額 3,500 3,200 6,700

税込金額 73,500 43,200 116,700

税抜金額 5,000 7,500 12,500

消費税額 250 600 850

税込金額 5,250 8,100 13,350

税抜金額 25,000 15,000 40,000

消費税額 1,250 1,200 2,450

税込金額 26,250 16,200 42,450

課のみ

非のみ

共通

売上

仕入

対象外売上

消費税集計表

免税売上

非課税売上

(内訳)

課税売上

課税仕入

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■仕入税額控除

(個別対応方式)

<5%分>

課のみ : 73,500 × 4/105 = 2,800

非のみ : 控除なし

共通 : 26,250 × 4/105 × 80%= 800

控除計: 2,800 + 800 =3,600

<8%分>

課のみ : 43,200 × 6.3/108 = 2,520

非のみ : 控除なし

共通 : 16,200 × 6.3/108 × 80%= 756

控除計: 2,520 + 756 = 3,276

<5%+8%合計>

3,600 + 3,276 = 6,876 円

申告書に記載した時の記入については、「別紙 消費税申告書」で確認しま

す。

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4.簡易課税の場合の申告書の記載

簡易課税は、課税売上の集計からのみ消費税額を計算する方法です。

簡易課税の場合の申告書は、原則課税と異なり、付表4から順に計算し、

付表5-(2)を申告書に記載するような方法となる。

5%と8%が混在する課税期間 8%のみの課税期間

1 消費税申告書(第27-(2)号様式) 消費税申告書(第27-(2)号様式)

2付表4旧・新税率別、消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表

-

3付表5-(2)控除対象仕入税額の計算表(経過措置対象課税期間用)

付表5控除対象仕入税額の計算表

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5.決算手順として押さえておくべき論点

(1)決算整理における消費税

1年間の取引を勘定科目ごとに整理・集計をして消費税等の処理に誤り

がないか確認し、消費税の納税額を計算します。仮受消費税と仮払消費税

の差額として、当期の決算における納税額を未払消費税等として計上しま

す。

消費税の精算仕訳において、仮受消費税と仮払消費税の差額と正しい消

費税計算を行った後の未払消費税等の金額に相違が発生することがありま

す。この差分は、租税公課や雑損失、雑収入などで計上することになりま

す。

①借方差額である「租税公課(雑損失)」が発生するケース

☑簡易課税と原則課税で、簡易課税が不利になったケース

☑課税売上割合が 95%未満で、仮払消費税の全額が控除できないケース

☑課税売上高が 5 億円超のため、95%ルールの適用除外により仮払消費

税の全額が控除できないケース

②貸方差額である「雑収入」が発生するケース

☑簡易課税と原則課税で、簡易課税が有利なケース

消費税の精算仕訳における租税公課や雑収入は、法人税の計算において

は、損金算入、益金算入されます。したがって、消費税の精算仕訳が入ら

なければ、本来の法人税の計算はスタートすることができなくなります。

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(2)応用:決算書を先に固めてしまった場合の修正について

本来の決算の手順としては、消費税の計算、消費税の精算仕訳、法人税

の計算、未払法人税の計上となります。

しかし、大きな会社では、経理部の方で決算を進めることがあり、決算

数値を固めるのを優先させて、正確な消費税の計算を行わずに、仮受消費

税と仮払消費税の差額を消し込んで、未払消費税を計上することがありま

す。

このようなケースでは、先に決算書を固めてしまい、会計と税務におけ

る修正項目が生じた時には、法人税の別表調整で処理することが多くなり

ます。

法人税項目ではありますが、消費税部分について、どのような修正が行

われるか確認します。

Ex.決算書上、消費税は仮受消費税と仮払消費税の残高を消し込み、差額を

未払消費税等として表示している。その後の、税務申告の確認をしたとこ

ろ、消費税において次の修正が必要になった。

なお、決算書はもう変更することはできない。

修正点:対象外売上が課税処理されていた 108,000 円

→ 本来の仕訳

課税売上 100,000 / 対象外売上 108,000

仮受消費税 8,000

→ この仕訳を会計上いれることはできない

→ 税務仕訳

課税売上 100,000 / 対象外売上 108,000

仮受消費税 8,000

租税公課 8,000 / 仮受消費税 8,000

↑この処理を別表調整として行う

別表4 減算(留保) 消費税差額 8,000

別表5(1)

項目 ① ② ③ ④

消費税差額 △ 8,000 △ 8,000