chemotherapy インフルエンザ菌の抗生物質感...

8
VOL. 26 NO. 2 CHEMOTHERAPY 167 イン フル エ ンザ 菌 の抗 生 物 質 感 受 性(PC耐 性 菌 の 出 現) と血 清 型 別 お よび 保 存 法 と輸 送 松 本 慶 蔵 ・渡辺貴和雄 ・宇 塚 良 夫 鈴木 寛・野口行雄・永 長 崎大学熱帯医学研究 所臨床部門(内科) (昭和52年9月8日 受 付) 肺 炎球 菌,緑 膿 菌 と共 に イ ン フ ル エ ン ザ 菌(Haemo- philus infuenzae)は 呼吸器感染症の最 も重要な起炎菌 で あ る こ とは私 共 の 喀 痰 定 量 培 養 の成 績1)から明 らか で あ る が,他 の報 告2)もこれ と一 致 し て い る。 さ らに 欧 米 における細菌性髄膜炎の起炎菌として重要なインフルエ ンザ 菌type bが 近年ABPCに 耐性化3)して注 目 され て お り,現 時 点 で種 々 の抗 生 物 質 に 対 す る感 受 性 を 明 ら か に して お くこ とは,実 際 の臨 床 上 重 要 で あ り,そ 上,欧 米 分 離 のABPC耐 性 の本 質 が プ ラス ミッ ド で あ ることからも本邦における耐性菌の出現には充分な監視 が必要であろ う。 これまでに本菌の血清型別については 私 共 も報 告4)し て 来 た が,疫 学 的 に も重 要 な意 味 を もつ 。 そ こで この 度,私 共 は イ ン フル エ ンザ 菌 の うち呼 吸 器 疾 患 由 来 で か つ 病 原 性 の明 確 な もの に 限 定 し,多 種 類 の 抗 生 物 質 の感 受 性 を 検 討 し,英 国 か ら供 与 を うけ たABPC 耐 性 菌 と対比 し,血 清 型 別 も検 討 した 。 そ の結 果,い つかの興味ある知見を得たので報告する。 また,本菌の研究が一般化しないのは,本 菌の保存の 方 法 や 輸 送 の方 法 に つ い て の知 見 が不 充 分 な た め と考 え られるので私共が通常行なっている保存方法につき紹介 し,輸 送 培 地 に つ い て も検 討 した の で報 告 す る。 1. イ ン フル エ ンザ 菌 長崎大学熱研内科および東北大学第一内科において呼 吸器感染症の喀痰の細菌定量培養法により ≧107/mlに 分離された病原性の明白なインフルエンザ菌80~83株 (1872.9~1976.4)。 2. イ ン フルエンザ菌の薬剤感受性測定における接種 菌 量 の影 響 MIC測定 に お け る 接 種 菌 量 を106/mlと108/mlの 両者1エ ー ゼ と した 場 合 の 比 較 をABPC,SBPC, CBPC 3剤 に つ きFIMES変法 培 地(BHIA)〔 以 下"BHIA"を 省 略〕 を基 礎 培 地 と し て検 討 した 。(以下 接 種 菌 量106, 108/mlな ど1エ ー ゼ接 種 はす べ て 単 に106/ml接 種, 108/ml接 種 と表 現 し,"1エ ー ゼ"を 省 略 す る 。) 3. イ ンフルエンザ菌の抗生物質感受性測定用培地の 検討 本 菌106/ml菌 接 種 の 条 件 下 に,ABPC,SBPC,T- 1220 (Piperacillin), EM, CLDM, CP, CFT, GMの8薬 剤 に つ い てFILDES変 法培地 〔基礎培地はBrain heart infusion agar (BHIA), MULLER HINTON Agar(MHA) の2種 〕,血液 寒 天 培 地(基 礎 培 地 をBHIAと し兎 の 血 液 を5%に 加 え た も の),チ ョ コ レー ト寒 天 培 地(BHIA を 約90°に した も の に,兎 血 液 を5%に なる よ うに 加 え て 作 った も の)の4培 地 を用 い た 時 のMICの 成 績 と 判定に及ぼす因子を比較した。 4. 病 原 イ ン フル エ ンザ 菌 の薬 剤 感 受 性 分 布 ABPC, AMPC, CBPC, SBPC, Ticarcillin, T-1220, Apalcillin, MFXPC, CET, CEZ, CEX, CFT, CP, TP, DOTC, MXNO, EM,CLDM, GM,NAの 計20種 抗菌物 質 に対 す る感受性 をFILDES変法培 地 に100/ml 菌 を 接 種 し18時 間 後 に判 定 す るMICに て測定 した。 5. ABPC鮒性 菌6株 とABPC感 受 性 菌 のABPC, CBPCに対 する感受性 の比較 英 国 ビー チ ャ ム研 究 所 か ら供 与 さ れ たABPC耐 性の イ ン フ ル エ ンザ 菌type b 5株 とパ ラ イ ン フル エ ンザ 菌 1株 の計6株 と私 共 の 分 離 したABPC感 受 性 菌2株 つ い て培 養 原 液,10倍,100倍,1,000倍,10,000倍 希 釈 菌 液(1エ ーゼ)接 種 に よ るABPC, CBPCのMIC を測定比較した。 6. PC系 抗生物質に耐性化したインフルエンザ 菌の 薬剤感受性 最近慢性呼吸器感染症(慢 性気管支炎,気 管支拡張症 各1例)の 喀 痰 か ら ≧107/mlに 分 離 したH51-120, H51-122(こ の2菌 株は同一症例で時期が充分に離れた 感染期 か ら分離 した もの),お よびH52-129の3菌株 はPC系 薬 剤 に 感 受 性 デ ィス ク上 耐 性 の 事 実 が 認 め られ た の で,5の 事項 に 記 載 した 方 法 でABPCのMICの 変 動 を 検 討 し,さ ら に こ の3株 につ き保 存 に よ る薬 剤 感 受 性 の変 化 につ い て も検 討 した 。 7. 血 清 型 別

Upload: doannhan

Post on 18-Mar-2019

217 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

VOL. 26 NO. 2 CHEMOTHERAPY 167

インフルエンザ菌の抗生物質感受性(PC耐 性菌の出現)

と血清型別および保存法 と輸送

松 本 慶 蔵 ・渡辺貴和雄 ・宇 塚 良 夫

鈴 木 寛 ・野 口 行 雄 ・永 武 毅

長崎大学熱帯医学研究所臨床部門(内 科)

(昭和52年9月8日 受付)

緒 言

肺 炎球菌,緑 膿菌 と共に インフルエ ンザ 菌(Haemo-

philus infuenzae)は 呼 吸器感染症 の最 も重 要な起炎菌

である ことは私共 の喀痰定量培養 の成績1)か ら明 らかで

あるが,他 の報告2)も これ と一致 している。 さ らに欧米

におけ る細菌性髄膜 炎の起炎菌 として重 要な インフルエ

ンザ菌type bが 近年ABPCに 耐 性化3)して注 目 され

てお り,現 時点 で種 々の抗 生物質に対す る感受性 を明 ら

かに してお くことは,実 際 の臨 床上重要 で あ り,そ の

上,欧 米分離 のABPC耐 性 の本質 が プラス ミッ ドで あ

ることか らも本邦 における耐性菌 の出現には充分 な監 視

が必要であろ う。 これ までに本菌 の血清型別に ついては

私 共 も報告4)して来た が,疫 学 的に も重要 な意味 を もつ。

そ こで この度,私 共 はイ ンフルエ ンザ菌 の うち呼 吸器疾

患 由来でかつ病原性 の明確 な ものに限定 し,多 種 類の抗

生物質 の感 受性を検討 し,英 国か ら供与 を うけたABPC

耐性菌 と対比 し,血 清型別 も検 討 した。 その結 果,い く

つかの興味 ある知見を得た ので報 告す る。

また,本 菌 の研究が一般化 しない のは,本 菌 の保存の

方法や輸送 の方 法について の知見 が不 充分 なため と考え

られ るので私共 が通常 行なって いる保 存方法に つき紹介

し,輸 送培地 について も検 討 した ので報 告す る。

方 法

1. イ ンフルエ ンザ菌

長 崎大学熱研内科お よび東北 大学 第 一内科 において呼

吸器感染症の喀痰の細菌定量培 養法に よ り ≧107/mlに

分離 された病原性の明 白なインフルエ ンザ菌80~83株

(1872.9~1976.4)。

2. イン フルエ ンザ菌の薬剤感受 性測定 におけ る接種

菌量の影 響

MIC測 定 における接種 菌 量 を106/mlと108/mlの

両者1エ ーゼ とした場合の比較をABPC, SBPC, CBPC

3剤 につ きFIMES変 法培地(BHIA)〔 以下"BHIA"を

省 略〕 を基 礎培地 として検討 した。(以 下接 種菌量106,

108/mlな ど1エ ーゼ接種 はすべ て 単 に106/ml接 種,

108/ml接 種 と表現 し,"1エ ーゼ"を 省略する。)

3. イ ンフル エンザ 菌の抗生物質感 受性測定用培地 の

検討

本菌106/ml菌 接 種の条件下 に,ABPC,SBPC,T-

1220 (Piperacillin), EM, CLDM, CP, CFT, GMの8薬

剤 についてFILDES変 法培地 〔基 礎培 地はBrain heart

infusion agar (BHIA), MULLER HINTON Agar(MHA)

の2種 〕,血 液寒天培地(基 礎培地 をBHIAと し兎の血

液を5%に 加えた もの),チ ョコ レー ト寒天培地(BHIA

を約90° に した ものに,兎 血 液を5%に なる よ うに 加

えて作 った もの)の4培 地 を用 いた時 のMICの 成 績 と

判定 に及ぼす 因子を比較 した。

4. 病原 イン フルエ ンザ菌 の薬 剤感受性分布

ABPC, AMPC, CBPC, SBPC, Ticarcillin, T-1220,

Apalcillin, MFXPC, CET, CEZ, CEX, CFT, CP, TP,

DOTC, MXNO, EM, CLDM, GM, NAの 計20種 の

抗菌物 質 に対 す る感受性 をFILDES変 法培 地 に100/ml

菌を接種 し18時 間後 に判定 するMICに て測定 した。

5. ABPC鮒 性菌6株 とABPC感 受 性菌のABPC,

CBPCに 対 する感受性 の比較

英 国 ビーチ ャム研究所か ら供与されたABPC耐 性 の

インフルエ ンザ菌type b 5株 とパ ラインフルエ ンザ 菌

1株 の計6株 と私共の分離 したABPC感 受 性菌2株 に

つい て培養 原液,10倍,100倍,1,000倍,10,000倍

希釈菌液(1エ ーゼ)接 種 によるABPC, CBPCのMIC

を測定比較 した。

6. PC系 抗生物質に耐性化 した イン フルエ ンザ 菌の

薬剤 感受性

最 近慢性呼吸器感染症(慢 性気 管支炎,気 管支拡 張症

各1例)の 喀痰か ら ≧107/mlに 分 離 したH51-120,

H51-122(こ の2菌 株は同一症 例で時期が充分 に離 れた

感染期 か ら分離 した もの),お よびH52-129の3菌 株

はPC系 薬剤に感受性デ ィス ク上 耐性の事実が認 められ

た ので,5の 事項 に記載 した方 法 でABPCのMICの

変動を検討 し,さ らにこの3株 につ き保 存に よる薬剤感

受性 の変化 につい ても検 討 した。

7. 血清型別

Page 2: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

168 CHEMOTHERAPY MAR. 1978

家兎抗 イン ブルェ ンザ菌莢膜血 清(a~fま での6型,

Difco)を 用いガ ラス盤上の凝集 に よ り血清 型 別 を 行な

い,東 北大第一1内科にお ける分離45菌 株(1972.9~1975.

1)と 長崎大 熱研内科に おけ る分 離39菌 株(1975.2~

1976.4)の 血 清型別を比較 した。

8. 保 存方法 と輸送 に関す る検討

保 存方法につい ては 私共 の保存法を紹 介す る。

輸送培 地は5%馬 血液加TSA高 層培地,馬 血 液 を

用い たチ ョコ レー ト寒 天高層培地,FILDES変 法高層 培

地 の3種 を用い,そ れ にご新鮮 培養菌を穿刺 し,連 日穿刺

部位 か ら細菌が 回収 しうるか否かを1週 間に亘 り比較 し

た。

さ らに5%馬 血液加BHIA高 層培 地 とFILDES変 法

高 層培 地の2種 を用い新鮮 菌の高層培地穿 刺法に よる菌

生 存をH52-168の 菌 株 につ き室温4℃ の両 条 件下 に

比較 した。 この実験 系で血液培地 の基 礎培地をTSAか

らBHIAに 変更 した理 由はFILDES変 法培 地の 基礎培

地 がBHIAで あ ることか ら比較を よ り厳密 に した い と

考 えた故 である。

成 績

1. インフルエ ンザ菌の薬剤 感受性測定に おける接 種

菌 量 の検討

Table 1に その成績を示す。(+)は"Beta"(β と略)

現 象 と私共 の教室で呼称 してい る表現 で,塗 布 した細菌

が パラパラ とコロニーを作 り,か つ コロニー表面 も乾燥

し,対 照 群 と比 し明 らか な コロニー性状 の差が認 め られ

る ものを指 す。 このコロニーを継 代 しよ うとして も継代

出来ない。108/ml菌 接種 と106/ml菌 接種 ではABPC,

SBPCで 明 らか な差 が この場合み られた が,CBPCで は

ほ ぼ同 じであ った。108/ml菌 接種 と106/ml菌 接 種では

前 者に β現象が おこるこ と,お よびそ の繰 り返 し実験の

成 績で或 る程度 のふれ がみ られるのに対 し,後 者 では明

らかに一定 したMIC値 を うることとコロニー上 で β現

象 がみ られ ない点 か ら,以 後通常の抗菌物質感 受性測定

は106/ml菌 接種 とす るこ とに した。

2. イ ンフルエ ンザ 菌の抗生物質感受性測定用培地 の

検討 成績

27~30株 の本菌 につ いて得た成績をFig.1,2,3に

ま とめて示す。 図か ら明 らかな よ うに各抗生物質 につい

て分布の中心は各培 地であ ま り異な らない が,成 績 のバ

ラツキが少 ない のはFILDES変 法培地 でかつBHIAを 基

礎培地 とした場 合であ った。私共 の考案 したFILDES変

法 培地は血液培 地,チ ョコ レー ト培地 に比較 し,FILDES

培地 の原法 と異 な り透明であ りコロニーの存在 が明 らか

に解 り易い。 なお前記1の 実験 もFILDES変 法培地(基

礎培 地はBHIA)を 用 いた。

3. 病 原 インフルエ ンザ菌 の薬剤感受 性分 布の先の結

Table 1 Inoculum size and MIC of H. influenzae (Agar streak method)

Fig.1 The influence of culture medium on the MIC

values against H. influenzae (27 strains)

Page 3: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

VOL. 26 NO. 2 CHEMOTHERAPY 169

Fig.2 The influence of culture medium on the MIC

values against H. influenzae (30 strains)

Fig.3 The influence of culture medium on the MIC

values against H. influenzae (30 strains)

Table 2 Distribution of MICs against Hemophilus infiuenzae (μg/ml)

Page 4: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

170 CHEMOTHERAPY MAR. 1978

果 に基 ず き106/ml菌 接種 を条件 として本 菌の薬剤感受

性 を測定 した。Table 2に 一括 して示す。 また集積率 を

もFig.4に 示 した。

(1) PC系 薬剤 に対す る感受 性

本菌が最 も高い感受性を示 した薬剤はT-1220で 中心

は0.05μg/mlで0.1μg/ml以 下のMICを 示 した も

のは91%に 達 し,低 感受性の ものでも0.39Ptg/miで あ

った。MFIPCを 除 く他のPC系 薬剤 に対す る感受性は

ほぼ同様で,分 布 の中心は0.2~0.78μg/mlに 存在 し耐

性菌を認め なか った。ただ し経 口剤 として比 較 す る と

AMPCへ の感受性はABPCの それ にやや劣 り,注 射剤

ではSBPCの 場合 がやや劣 る。 これ らに比較 しMFIPC

に は感受性分布 の中心 が12.5~25μg/mlに 存在 し明ら

か に感 受性が低い。

(2) Cephalosporin系 薬剤に対す る感受性

CET, CEZ, CFT, CEXの4 Cephalosporin剤 を比

較す る とCEXへ の感受性 の分布 中 心 は12.5~50μg/

ml, CETの それは0.78~3。13μg/mlで あ るが,感 受

性 の幅 は0.39~12.5μg/mlと 大 きい。CEZへ の 感 受

性の分布 中心 は12.5~25μg/ml, CFTへ のそれ は3.13

~12.5μg/mlで あ り,感 受 性 の 高 さ はCET, CFT,

CEZ, CEXの 順に なるがPC剤 に比較 し著 明に低い。

(3) CP, TP, DOTC, MINOに 対 する感受性

CPとTPへ の感 受性はCPの 場合0.2~0.78μg/ml

に,TPで は0.39~1.56μg/mlに 分布す る点 か らCP

への感受性が やや高い。DOTC,MINOへ の感受性は前

2者 よ り幅広 く分布 す るが そ の 中 心 は0.39~1.56μg/

mlで あ る。ただ し,3.13~12.5μg/mlの 菌株 も約10

%に 認め られ る。

(4) EM, CLDM, GM, NAに 対 す る感受性

EMへ の感受性は0.78~6.25μg/ml内 に分 布 しその

中心は3.13μg/ml(56%)で あ るが,6.25μg/mlの も

のも12%を 占め る。CLDMで は その中心はEMと 異

な らないが分布 の幅 は大 きく,最 低感 受 性 は50μg/ml

であ った。GM,NAに 対す る感受性は1.56~3.13μg/

mlに そ の中心 があ り,GMの 場 合すべて ここにお さま

る。

4. 英国 由来 のABPC耐 性菌 と感 受性菌の比較

Table3に 耐性菌6株 の接種菌 量に よるABPC, CBPC

に対 す る感受性成績 をま とめて示 した。す なわち原液接

種 では400~1,800μg/mlで あったが,接 種 菌量を下げ

るに したがいMIC値 は低下 した。 この傾 向はABPCと

CBPCと 同様 であ るが,こ の菌ではCBPCの 接種菌 量

に よるMICの 低下 はABPCよ り著 しか った。

さらに充分 にFILDES変 法液体培 地にて増殖 させた耐

性菌 と感受性菌 を10倍 段 階 希 釈 し,こ れ を0.05~

3,200μg/mlま でのABPC含 有培 地 に 接 種 しMICを

測定 した成績 をFig.5に 示 した。 この図か ら明 らかな よ

うにABPC耐 性菌 は接種菌量が少 ない場合1.56~3.13

μg/mlのMICの ものが菌量が107/mlを こえる と急速

にMIC値 は上昇 し,最 高値1,600~3,200μg/mlに 達 し

た。 これに比較 し感受性菌の場合,低 接種 菌量で0.10

μg/ml,高 接 種菌量で1.56~3.13μg/mlの 上 昇に止 っ

た。

5. 最 近分離 したABPC耐 性菌の検 討

1976年11月 中 ・下旬,1977年5月 下旬に慢性気管

Table3 MIC of ABPC (Ampiciliin resistant strains)

MIC of CBPC (Ampicillin resistant strains)

Page 5: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

VOL. 26 NO. 2 CHEMOTHERAPY 171

支炎1症 例か ら2回(H51-120,H51-122),気 管支拡

張症か ら1回(H52-129)喀 痰 か ら病 原菌 として分離 し

た インフルエ ンザ菌3株 が,感 受 性 デ ィス ク にABPC

耐性を示 した ところか らABPC, SBPC, Ticarcillin,

Apalcillinの4PC剤 に106/ml菌 を接種 してMICに

て感受性を測定 した。そ の結果 はTable4の とお りであ

った。すなわち各4剤 に対 しいずれ も低 感受性を示 し,

こ とにH 51-122株 で著 しか った。 成績1に 対 比 して耐

性菌 と判 定 した。そ こで前記の英国 由来菌 と対 比す るた

めABPCの 原液 と各希釈系別 の検 討を行 なった と こ ろ

原液接 種で もFig.6に 示す よ うに6.25μg/mlで あ り英

国 由来のABPC耐 性菌 と本質 的に異 な るこ とが知 られ

た。 さ らに この3菌 種 について前記実験か ら3週 後 に

ABPC, SBPC, Ticarcillin, Apalcillinの4種 抗 生 剤

を対象 に接種 菌量に よるMIC変 動 を追求 し た 成 績 は

Table 4に 示 す よ うに106/ml接 種下で既に感受 性を高

めて お り,か つ高菌量接種 に よ っ て もMIC値 は2~4

倍 に上昇す るに止 った。

6. インフルエンザ菌の血清型別

東北大学第一 内科 において分離 した本菌45株 と長 崎

大学熱研 内科 において分離 した本菌株39株 につい て血

清型別を検討 した成績では東北大学 第一内科時代 の菌株

の血 清型 内訳 はtyp a 7, type b 2, type a ,b, c ,d, f

の5型 に凝集す る株1株,non typable 35株 で あ り,

長 崎大学熱研 内科 におけ るものは,type a 2, type b・c

3, non typable 34株 であ った。呼吸 器以外の臓器感染

症 の主要な病原菌 はtype bで あ るが,呼 吸器感染症で

はnon typableの ものが東北大学,長 崎大学 と もに多

く全体84株 中の82%を 占め る。type bは 当科 におい

ては見 出されていない。 また時に上記の よ うに,い くつ

か の血 清型に同時に凝集す る菌株が時にみ られ る。本質

的 に両施設 の差がない もの と推 定 され る。

なお前記5の 項に示 した 私共 の分離 したPC系 抗生物

質耐 性菌はH51-120とH51-122はtype a, b, c, f

でH52-129はtype a, b, cの 多凝集であ った。

7. イ ンフルエ ンザ菌 の保存法

私 共が東 北大学第一 内科,長 崎 大学 熱研 内科に おい て

行 なってい る本菌の保存法 は次 の とお りであ る。

1) FILDES変 法平板培地に37℃,18時 間培養す る。

2) 生 育 した培地上 のコロニーを白金 耳でか き集め,

FILDES変 法 ブイ ヨン培 地に浮遊 させ る(こ の時,白 金

耳 のループ内の細菌を試験管の壁にて よ くこ す り落 と

す。菌塊 のま までの凍結 は さけ る)。浮遊菌液 の 程 度 は

文字をすか してみても全 く文字 が見えない ほ どの濁 りの

程 度 とす る。

3) 菌浮遊液は培養す るこ とな く-20℃ に凍結す る。

4) 使用 に際 しては凍結菌浮遊 液を37℃18時 間培養

(解凍 と増殖をかね る)後FILDES変 法培地 に 接 種 して

継代す る。

(註) 保存用 の試験 管のキ ャ ップは ゴ ム栓 を選 び,保

存中 の乾燥 を防 ぐ,継 代 は3カ 月毎に行 な う。

この方法 で私共は イン フルエ ンザ菌 を保存 し て い る

が,本 菌は培養条件に よって死滅す ることが時 々ある。

Fig.5 Correlation between inoculum size and

MIC value against H. influenzae

Fig.6 Correlation between inoculum size and

MIC value against H. influenzae

Table 4 MIC of penicillins against Haemophilus

inliuenzae

-Influence of storage in freezer (-20℃)

for 20 days-

Page 6: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

172 CHEMOTHERAPY MAR. 1978

しか し注 意深 く上法 を行 なえば100%継 代は可 能 で あ

る。

8. イ ンフルエ ンザ 菌の輸送培地 と3週 間保存法

イン フルエ ンザ菌 は死 滅 し易 く,血 液 平板培地で は2

日以 内に,FILDES変 法平板培 地では3日 以 内に 死 滅す

る。 したが って本菌 の輸送 と短時 日保 存のため私共 の分

離 した4菌 株 につ き検 討 した。そ の結果,上 記 の高 層穿

刺 では3培 地 ともにす べて1週 間生 存する こ と を 確 認

し,1週 程度 の輸送 には充分有用 である ことを確認 した。

次に上記 の方法 に よって,さ らに室温 と4℃ につ き ど

の くらい生存す るかについてH52-168の 菌株 を対 象に

各2本 の試験管 にて3週 間検討 し,次 の結果 を得 た。

1) 室温 の場合:11日 目まで血 液,FILDES変 法培地

とも良 く生存 したがFILDES変 法培 地のほ うが先 に保存

不 良 とな り,14目 以後再回収率 は低 率 とな った。血 液培

地 では この時 までは良好であ った。

2) 4℃ の場 合:室 温 と同様 に11日 まで は両者 とも

良 く生存 してい るが,12日 以後前者同様FILDES変 法培

地 で次第 に生 存は不良 とな り,16日 目に ほぼ死 滅 した。

血 液寒天培地 では同期良好 であった。

以上 の成績 か ら輸送 にも保 存に も高層培地 穿刺法がす

ぐれ てい る こと,室 温,4℃ の条件下 では共 に血 液寒天

培地高 層穿刺のほ うがFILDES変 法培地高層 穿刺 よ り菌

の3週 間保 存にはす ぐれ ている ことが確認 された。

考 察

イン フルエ ンザ菌が呼 吸器感染症 の病 原菌 として最 も

重要 であ ることは私共 の年 次的呼吸器感染 症の病原分析

か ら明 らかで1),1976年 の成 績6)でも全体 の28.2%に 達

し,緑 膿菌の13.0%,肺 炎球 菌の20.6%に まさる。私

共 は これ まで インフルエ ンザ菌につ き基 礎的に も臨床的

に も幾 つかの報告4,7)を行 ないその重要 性 を 指 摘 して来

た 。しか るに最近新 しいPC系 広領域 抗生物質,Cephalo-

sporin C系 広領域抗生物 質が次 々に開発 され,従 来 の

常 識 と異な る本菌 に高 い抗菌力を もつCephalosporin C

系抗生物質(Cefamandol)も 報告8)されてお り,後 者 の

Cephalosporin Cに つい ては現在本邦 におけ る 研 究 が

進 め られ てい るが,前 者につい ては多 くの研 究 が な さ

れ,著 明な抗菌力の増強 もみ とめ られてい る。私共 はこ

れ らの新 しい薬物 も加えて従来 の抗生 物質に対す る感受

性 も検討 し,現 時点で の抗菌物質 に対す る主要 な呼吸器

病原菌 の もつ感受性 につい ての正 しい把握 を行 な うこと

とした。 この意味 におい て肺炎球 菌につい て は 既 に 報

告9)し てい る。 この度 はイン フルエ ンザ菌 について検討

す る こととし,こ の際対 象 とす るイ ンフルエンザ菌はす

べ て呼吸器 由来 の病 原菌に限定 した。 この研究 をすすめ

るに当 りインフルエンザ菌がX,V両 因子 を必要 とする

ことと,接 種菌 量に よる判定が極 めて混乱する ことの 自

らの経験をふ まえて私共の これ までの研究成果 も加えて

発表す るこ ととした。

す なわ ち106/ml菌 接種 と108/ml菌 接種には大 きな

差があ り従来 の化学療法学会標準 法で判 定す ると108/ml

接種 では高 度耐性菌5)と 判定 され,臨 床上の知見 と著 し

く背馳す る。 そ こで私共は ここ5~6年 来一貫 して106/

ml菌 接種 を原則 としてい る。

20種 の抗 菌物質に対す る本 菌の感受性 の成績は 従 来

の抗生物質 に対 しては感受 性の変貌はな く,依 然PC系

薬剤 に高 くCephalesporin系 薬剤 には低い。PC系 抗生

物質 にあ ってはT-1220(Piperacillin)に 対す る感受性

は著 明に高 くABPCを 凌 駕 し て い る。Ticarcillin,

Apalcillinに はABPCに 対す る感 受 性 と等 しい。T-

1220もApalcillinも 緑膿菌 に対す る抗菌 力がCBPC,

SBPCよ りも著 し く高 くなってい ると共に本菌へ の抗菌

力 がす ぐれてい るこ と,お よび肺炎球菌に対す る抗菌力

は両剤共にPCG, ABPCに ほぼ等 しい点は注 目に値す

る。DMPPCが 本剤 に抗 菌力が低い こ とは既 に報告 した

が,MFIPCで も抗菌 力が同様に低値 であ った。CET,

CEZ, CEX, CFT4剤 の本菌 に対 す る抗菌力はCETを

のぞいて低 く,と くにCEXが 低いが,慢 性呼吸器感染

症の場合CEX投 与 に よって本菌が選択増殖 され る機 作

が ここに求め られ 臨床的事実4)と 一致す る。CETの 場

合,上 記3剤 より抗 菌力は高いが,そ の幅 は広 くPC系

に比 しては 劣る。 今後開発 され るCephalosporin剤 は

別 として現時点 で用い られて い るCephalosporin剤 の

抗菌域上 の弱点 といえ よ う。CP, TPに 耐 性菌はな く,

DOTC,MINOに も同様であ った。EM, CLDM共 に

PC系 薬 物に比 し著 し く抗菌 力が低 く,CP, TPよ りも

低 い。ABPC耐 性 イン フルエ ンザ 菌にCPが 欧 米にお

い て第1選 択剤 とな ってい る理 由が私共の成 績か らも首

肯 され ると共 に,EM,CLDM共 に本 菌感 染症への選択

治療 剤に な り得 ない理 由も明らか であ り,臨 床上の成績

と一致す る。 以上の成績は,1974年WILLIAMS10)に よ

って報告 され た本菌 の抗生物 質感受性 と同様,私 共 も既

に報告11)した よ うにST合 剤 に対す る感受性が高い こと

がWILLIAMSの 報告の特徴 であ り,新Cephalosporin

の1剤 た るCefamandolの 感 受 性 が0.12~0.5μg/ml

の よ うに高い ところに ある との報告 も注 目され る。

近年欧 米で注 目され るABPC耐 性菌の メカ ニズムが,

接種菌 量の増大 と共に感受 性が急低 下す ることか らプラ

ス ミッ ドに よるものである とされ,私 共の追試 もこれ と

一致 した。 しか し,私 共 が最 近慢性呼吸器感染症か ら分

離 したABPC,CBPC,Ticarcillin, Apalcillin耐 性菌

3株 は接種菌量に よる感受 性の変動が極めて少 な く,英

Page 7: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

VOL. 26 NO. 2 CHEMOTHERAPY 173

国由来耐性菌 と本質的に異 なるこ とが確 認 された。最近

本邦のい くつか の施設 か ら報 告 されたABPC耐 性菌 に

ついての詳報が な く私共の成績 と対比 出来ない ので即断

は出来ないが,英 国 由来株 と異 なる もので私共 の菌株 と

同様の ものであ ろ うと推測 され る。 しか も保存に よつて

耐性脱失が認め られた点 も英 国由来 耐性菌 との本質的差

異 とい える。 しか し私共 の対 象菌 株が呼吸器 由来 のもの

と限定 してい るので本邦 における髄膜炎 由来 のtype b

の抗生物質感受性につい ては,今 後充分な監視が必要 で

あ ろ う。

血 液型別につい ての年次的,地 域的比較 では著 明な差

がみ られず,HOLDAWAY 12)の報 告 とも異な らなか つた。

以前4)type dを 比較的多 く検 出 し た が,今 日type d

を検出出来 なか つた こ とは,抗 血 清がDifco社 製 で同一

であ って も抗原交叉 の面 で検討 の必要があ るもの と考 え

てい る。

インフルエ ンザ菌が極め て重要 な細菌であ るに拘 らず

研 究対象 とされ るこ とが少 なか つた理 由の1つ に,保 存

法 と輸送法の知見が一般化 しなか つた ことに よるもの と

推測 され,私 共は本菌 の重要 性を気管支局所採痰法 に よ

り痛感 して以来既に約15年 の歳 月を経 た。 この間 に本

菌 の分離培地 に考案 し,さ らに保 存法 と輸送方法 につい

て も検討を重ね て今 日の方 法を確立 した。凍結乾燥 に よ

る本菌保存はす ぐれ ている方法であ ること も 既 に 示 し

た5)が,こ れ以外 のこの度に示 した私共 の保存法 が最 も

良い方法か否か は近年 の諸外国 の報告 もみ あた らず,本

邦か らも発表 されてい ないので,明 確 ではない。 しか し

注意深 く行 なえば3カ 月毎 の継代で本 菌の全株の継代 も

困難では な く,室 温 でも血 液寒天高層穿刺 で約3週 間 の

保存にた える菌株が あるこ とも確 め られた点 は大 きな進

歩 とい えよ う。 また最近抗生物 質の臨床効果 に関す る二

重盲検試験に おい て起炎菌 の単一施設で の検 討 が 望 ま

れ,起 炎菌 の輸送方法 も重要 な課 題 とな ってい る。 私共

の これ に関す る検討 はその意味で も役立つ もの と思われ

る。

結 論

1. インフルエンザ 菌に関する抗菌物質 のMIC測 定

におけ る106/ml菌1エ ーゼ接種の成績は108/ml菌1

エーゼ接種 の成績に比 し判定が容易でかつ臨床効果 と一

致す る。

2. イン フルエ ンザ菌に関す るMIC測 定培地 を比較

検討 した が,FILDES変 法培地が血液寒天 培地,チ ョコ

レー ト寒 天培 地 よ り安定性透 明度の点 です ぐれ ていた。

3. 呼吸器 感染症 由来 の病原性 の明確 なイン フルエ ン

ザ 菌80-83株 の20抗 生 物質に対す る感受性をMICに

て測定 し,次 の結果を得た。

感受性 の高い順 に抗生物 質 を 並 べ る と,T-1220>

ABPC≧AMPC, CBPC, Ticarciliin, Apalcillin , SBPC

>CP≧TP≒DOTC, MINO≒GM≒NA≧EM>CET>

CLDM≒CFT≧CEZ≒CEX≒MFIPCと なる。すなわ ち,

1) PC系 薬物は被検抗生物 質中 インフルエンザ 菌 に

抗菌力はMFIPCを 除 き高 く,MIC分 布 は1μg/ml以

下に90%以 上 分布す るが,T-1220だ け0.1μg/ml以

下に90%分 布 し,次 いでABPCが これ につ ぐ。 他 は

ほぼ同様 であ りこの菌群では耐性菌 はみ られなか った。

2) CP,TPはPC系 抗生物質 に次 ぎ感受 性 が 高 く

0.2~1.56μg/mlのMICに 分布す る。

3) DOTC,MNCの 感受性はほ ぼ 等 し くMIC分 布

の中心 は0.39~1.56μg/mlに み られ る。

4) GM,NAの 感受 性 は1.56~3.13μg/mlに そ の

中心があ り幅狭 くまとまってい る。

5) EM,CLDMの 感受性 の大半の 幅 は 前 者で1.56

~6.25μg/ml,後 者で1.56~25μg/mlで あ った。

6) Cephalosporin3剤 の感受 性分布はCET>CFT

>CEZ≒CEXで あ るが共に感受 性は低い。

4. 英国 由来 のABPC耐 性菌6株 は接種 菌量 の増 加

に よ り感受性 の急 低下がみ られた。最 近私共が分離 した

PC系 薬剤 中等度耐性菌3株 には このよ うな現 象が み ら

れず,か つ継代 に よ り耐性脱失 の傾 向がみ とめ られた。

5. 東北大学 第一内科45株,長 崎大学 熱研 内科39株

の血清型 別では共にnon typabieが 最 も多 く,と くに

注 目すべ き差 はなか った。

6. 私 共の インフルエ ンザ菌 継代保存法を示 した。

7. イ ンフルエ ンザ菌 は血液 寒天高層穿刺 にて室温,

4℃ 共に3週 以上生存す る ことを示 し,そ の点FILDES

変 法培地高層穿刺法 よりす ぐれていた。短期 輸 送 培 地

(7日 間)に は血液寒天,チ ョコレー ト寒天,FILDES変

法 各培地高層穿刺 で各 々充分 である ことを示 した。

文 献

1) 松本慶 蔵,玉 置公俊,宇 塚良夫:起 炎病 原体 ――

近年 におけ るその変遷を中心 として――。 臨床成

人病6 : 1457~1963, 1976

2) 羽 田 囘:呼 吸器感 染症 の起炎菌決定 におけ る喀

痰 洗滌 培養法に関す る研究補遺。 感 染 症 学 雑 誌

49 : 187~223, 1975

3) MEDEIROS, A .A. & T. F. O' BRIEN : Ampicillin -resistant Haemophilus influenzae type b pos-

sessing a TEM-type β-lactamase but little

permeability barrier to ampicillin. Lancet 1 :

716~719, 1975

4) 松本慶蔵:イ ンフルエ ンザ菌性慢性呼吸器感 染症

の基礎 的臨床的研究。 感 染 症 学 雑 誌48 : 117~

125, 1974

5) 荒井澄夫,松 本慶蔵,横 山紘一,西 岡きよ,中 村

隆:イ ンフルエンザ菌の臨床細菌学――抗生物質

Page 8: CHEMOTHERAPY インフルエンザ菌の抗生物質感 …fa.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/26/2/26_167.pdf地がBHIAで あることから比較をより厳密にしたいと 考えた故である。成

174 CHEMOTHERAPY MAR. 1978

感 受 性 試 験 とSpheroplast化 ― ― 。Chemotherapy

19 : 199~203, 1971

6) 松 本 慶 蔵,宇 塚 良夫,永 武 毅:喀 痰 内細 菌 叢 定

量 培 養 法―― ≧107/mlの 意 義 。 日 胸 会 誌(投 稿

中)

7) 松 本 慶 蔵,荒 井 澄 夫,横 山 紘 一,西 岡 き よ,中 村

隆:慢 性 呼 吸 器 感 染 症 に お け る起 炎 菌 の 動態 と細

胞 学 的 知 見 及 び 喀 痰 中抗 生 物 質 の動 態 新 知 見(付,

気 道 感 染 図)。 日本 胸 部臨 床30 : 17~25, 1971

8) YOURASSOEUSKY ,E. ;E. SCHOUTENS & M. P.

VANDERLINDEN : Antibacterial activity of

eight cephalosporins against Haemophilus

influenzae and Streptococcus pneumoniae.

Antimicr. Agents & Chemoth. 2 : 55~59,

1976

9) 松 本 慶 蔵,渡 辺 貴 和 雄,鈴 木 寛,宇 塚 良 夫,岩 崎

温 子:病 原 性 の明 確 な肺 炎 球 菌 の 抗 生 物 質 感 受 性

と血 清 型 別 。Chemotherapy 25 (10) : 2988~2992,

1977

10) WILLIAMS, J. D. & J. ANDREWS : Sensitivity of

Haemophilus infuenzae to antibiotics. Brit.

Med. J. 1 : 134~137, 1974

11) 松 本 慶 蔵,西 岡 き よ,横 山紘 一,荒 井 澄 夫,中 村

隆:Sulfamethoxazole-Trimethoprim合 剤 に 関

す る基 礎 的 臨 床 的 研 究―― イ ン フ ル エ ン ザ 菌in

vitro実 験 の新 し い 試 み ― ― 。Chemotherapy 21

(2) : 254~259, 1973

12) HOLDAWAY, M. D. & D. C. JURK : Capsulated

Haemophilus infuenzae and respiratory-tract

disease. Lancet 1 : 358~360, 1970

SENSITIVITY OF HAEMOPHILUS INFLUENZAE

TO ANTIBIOTICS, SEROTYPE, THE METHOD

OF STORAGE AND TRANSPORT

KEIZO MATSUMOTO, KIWAO WATANABE, YOSHIO UZUKA,

HIROSHI SUZUKI, YUKIO NOGUCHI and TSUYOSHI NAGATAKE

Department of Internal Medicine, Institute for Tropical Medicine, Nagasaki University

MICs against respiratory pathogenic H. influenzae were measured by the agar plate dilution method. The inoculum size 106/ml was easier to evaluate the growth of the organisms than in the case of the inoculum size 108/ml. The treatment in accordance with the results obtained by the former method was reasonable from the clinical standpoint.

Regarding the stability and transparency of the medium plate in the measurement of MICs against H. influenzae, the modified FILDES agar plate was superior to blood agar plate and chocolate agar

plate. MIC values of 20 antibiotics against 80 to 83 strains of respiratory pathogenic H. influenzae were measured. The comparison of the MIC value against H. influenzae was as follows : Piperacillin<Ampicillin≦Amoxycillin, Carbenicillin, Ticarcillin, Apalcillin, Sulbenicillin<Chloramphenicol≦

Thiamphenicol≒Doxycycline, Minocycline≒Gentamicin≒Nalidixic acid≦Erythromycin<Cephalothin<

Clindamycin≒Cefatrizine≦Cefazolin≒Cephalexin≒Flucloxacillin.

Six strains of H. influenzae from England resistant to Ampicillin showed rapid increase of MIC values by the increase of inoculum size. On the other hand, recently isolated 3 strains moderately resistant to Ampicillin did not show such a phenomenon, but they revealed a decrease of MIC value by the repetition of generation.

Most of 84 strains were defined to be nontypable in serotype.H. influenzae could survive for more than 3 weeks either at room temperature or at 4℃ in the deep

blood agar.