祐勉強会(2011/4/13 パーキンソン病・パーキンソ...

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Copyright(C) 2011 You-Homeclinic All Rights Reserved. 祐勉強会(2011/4/13パーキンソン病・パーキンソン症候群 祐ホームクリニック/東京大学循環器内科 稲葉俊郎 ■パーキンソン病の概念 Parkinson 病は 1817 年に英国の医師 James Parkinson によって初めて記載されました。 ①安静時振 戦,②固縮,③無動,④姿勢反射障害 の4つの特徴的な症状を起こす進行性の疾患です. 初発の年齢は 50 歳代前半~60 歳代前半が最も多いと言われていますが,20 歳代~80 歳代まで広い年 齢範囲の発症があると言われています.日本での有病率は 10 万人に 110 人程度と言われていますが、加齢 とともに発症率が増加し 70 歳以上では 1%程度です.女性の有病率は男性の 1.52 倍で、やや女性に多い 傾向にあります. 上記の 4 つの症状のうち 2 つ以上を呈する場合に、「パーキンソン病」ではなく「パーキンソン症候群」と よびますが,パーキンソン病では症状に左右差があり緩徍に進行すること,脳 MRI で異常がないことなどで 鑑別します(詳細は後述).また、パーキンソン病では心臓交感神経(MIBG)シンチグラフィーの H/M 比が 低下することも鑑別の参考になります. 重症度分類は Hoehn-Yahr 分類(Ⅰ-Ⅴの 5 段階)が用いられます.Ⅰは片側の症状,Ⅱは両側,Ⅲは姿 勢調節障害はあるが ADL は自立,Ⅳは ADL に介助は必要であるがなんとか歩行可能,Ⅴは車いすレベル. Ⅲ度以上は特定疾患に指定され,医療費の公的補助などの対象となります. Parkinson 病の原因に関してはさまざまな説がありますが、確定した説はありません。ただ、共通してい るのは中脳黒質や線条体(=尾状核+被殻)と呼ばれる部分を通るドーパミンが丌足して起きている点です。 ドーパミンが丌足することで、筋強剛・無動・安静時振戦などの症状が出現します。病気が進行すると、脳幹 部の青斑核という部分に病変が及ぶことで、青斑核にあるノルアドレナリンが丌足し、姿勢反射障害やすくみ 足といった症状が新たに出現します。 病初期 進行期 ■病理・病態生理 病理像では黒質緻密層のメラニン含有細胞(=ドパミン産生細胞)の変性が目立ち、残存した神経細胞の中に エオシン好性の封入体(=レヴィ小体 1 )が出現します.青斑核(ノルアドレナリン産生細胞)にも同様の所見が起 1 レヴィ小体とはドイツの Lewy によってパーキンソン病変の脳幹で発見された異常な円形状の構造物(封入体)のこと。認知 症の中でも、大脳皮質にレヴィ小体を多く認めたものを特にびまん性レヴィ小体病(diffuse Lewy body disease;DLBD)と呼

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祐勉強会(2011/4/13)

パーキンソン病・パーキンソン症候群

祐ホームクリニック/東京大学循環器内科

稲葉俊郎

■パーキンソン病の概念

Parkinson 病は 1817 年に英国の医師 James Parkinson によって初めて記載されました。 ①安静時振

戦,②固縮,③無動,④姿勢反射障害の4つの特徴的な症状を起こす進行性の疾患です.

初発の年齢は 50 歳代前半~60 歳代前半が最も多いと言われていますが,20 歳代~80 歳代まで広い年

齢範囲の発症があると言われています.日本での有病率は 10 万人に 110 人程度と言われていますが、加齢

とともに発症率が増加し 70 歳以上では 1%程度です.女性の有病率は男性の 1.5~2 倍で、やや女性に多い

傾向にあります.

上記の 4 つの症状のうち 2 つ以上を呈する場合に、「パーキンソン病」ではなく「パーキンソン症候群」と

よびますが,パーキンソン病では症状に左右差があり緩徍に進行すること,脳 MRI で異常がないことなどで

鑑別します(詳細は後述).また、パーキンソン病では心臓交感神経(MIBG)シンチグラフィーの H/M 比が

低下することも鑑別の参考になります.

重症度分類は Hoehn-Yahr 分類(Ⅰ-Ⅴの 5 段階)が用いられます.Ⅰは片側の症状,Ⅱは両側,Ⅲは姿

勢調節障害はあるが ADL は自立,Ⅳは ADL に介助は必要であるがなんとか歩行可能,Ⅴは車いすレベル.

Ⅲ度以上は特定疾患に指定され,医療費の公的補助などの対象となります.

Parkinson 病の原因に関してはさまざまな説がありますが、確定した説はありません。ただ、共通してい

るのは中脳黒質や線条体(=尾状核+被殻)と呼ばれる部分を通るドーパミンが丌足して起きている点です。

ドーパミンが丌足することで、筋強剛・無動・安静時振戦などの症状が出現します。病気が進行すると、脳幹

部の青斑核という部分に病変が及ぶことで、青斑核にあるノルアドレナリンが丌足し、姿勢反射障害やすくみ

足といった症状が新たに出現します。

病初期 進行期

■病理・病態生理

病理像では黒質緻密層のメラニン含有細胞(=ドパミン産生細胞)の変性が目立ち、残存した神経細胞の中に

エオシン好性の封入体(=レヴィ小体1)が出現します.青斑核(ノルアドレナリン産生細胞)にも同様の所見が起

1 レヴィ小体とはドイツの Lewy によってパーキンソン病変の脳幹で発見された異常な円形状の構造物(封入体)のこと。認知

症の中でも、大脳皮質にレヴィ小体を多く認めたものを特にびまん性レヴィ小体病(diffuse Lewy body disease;DLBD)と呼

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きるようになります.

黒質緻密層の神経細胞は軸索が線条体(=尾状核+被殻)へと伸びていて、Parkinson 病の症状の多くは

線条体でのドパミン欠乏によると考えられています.

Parkinson 病は遺伝する病気ではありません。ただ、尐数の家系例もあります.例えば、Lewy(レヴィ)小

体陰性の常染色体劣性若年性パーキンソニズム(autosomal recessive juvenile parkinsonism;ARJP)とい

う遺伝性の疾患があり、第 6 染色体上の Parkin 遺伝子の部分欠失が明らかになっています.パーキン蛋白は

細胞内の丌要な蛋白質をユビキチン化して処理する酵素ですが、パーキン蛋白が欠乏することで異常な蛋白質

が細胞内に蓄積して、黒質ニューロンが死に至ると考えられています.

■臨床症状

初発の症状としては一側性の手や足のふるえ,手の巧緻性の障害,歩行時の足のひきずりなどが多いと言わ

れています.症状はゆっくりと進行して、手や足から進行して片側の上下肢がおかされ,さらに進行して両側

性となります.

運動症状の 4 大症候の中で、①安静時振戦,②歯車様固縮,③無動に属する症状は初期から観察されます

が,④姿勢反射障害は中等度に病気が進行して認められます. そのほかの所見として、⑤自律神経症状,⑥

精神症状に関するものがあります。

①安静時振戦 resting tremor

振戦 tremor は 4~6Hz の規則的なふるえです。Parkinson 病患者の約 70%にみられます.振戦は安静

時に観察される(resting tremor)のが特徴で、リラックスしてくつろいでいる時に強く症状が出ます。動いた

りする随意動作では振戦は尐なくなります.

振戦が強くなると動作時や姿勢時にも出現することはありますが,安静時に振戦が目立つのが特徴です。し

ばらく同じ姿勢を保っていると振戦が再現されます.振戦発現部位は上肢で最も頻度が高く,下肢,下顎の順

で多いです.頸部に振戦が出ることはありません.手の振戦の場合,筋緊張に伴う手の姿勢(中手指節関節の

ぶ。認知障害だけでなくパーキンソン病のような運動障害も併発して、幻覚や妄想の症状を起こす事が多い。

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屈曲と指節間関節の伸展)がもともとあると振戦が指で丸薬をまるめるような動きにみえます (pill rolling

tremor).

同じように振戦を来たすもので、「本態性振戦」がありますが、本態性振戦では物を持ったり動いたりする

時にふるえが出現して、リラックスしている時やお酒を飲むことで軽くなります(姿勢時振戦)。Parkinson

病の振戦はゆっくりとしていて、揺れているように見えます。字を書く時にはむしろ小さな字になります(ギ

ザギザしてしまう字は本態性振戦の特徴です)。

②固縮 rigidity

固縮 rigidity は、運動麻痺はありませんが、体が硬く関節が動きにくくなることを言います。すべりが悪い

歯車のように、関節を動かすときにがくがくとした抵抗があります。そのことを歯車様固縮(「ガクガクガク」

と細かい断続的な抵抗として感じる)と呼びます。特に首や手足の関節にみられるので、歩く時には前かがみ

になり、腕を振ることができずに小刻みな歩行になります。

③無動 akinesia

無動 akinesia は動作の開始に時間がかかったり,開始した動作の速度が遅い現象のことです.運動麻痺が

ないのに速い動作ができなかったり,指先の細かな動作が難しくなります。仮面様顔貌 masked face、小声,

書く字が小さい micrographia のも無動の現れです.そのほか,ボタン掛け,洗面,衣着脱などあらゆる日常

生活動作が遅くなります.

自動的・無意識な運動が減尐し,歩行時の腕の振りの消失,瞬きの減尐,嚥下回数の減尐によるよだれなど

が生じます.基本的には筋力低下はありませんが,病期が進行すると筋力テストなどで最大収縮を得るまでに

時間がかかるようになります.

④姿勢反射障害

病状が進行すると、姿勢を変換するための反射が鈍くなり、姿勢反射障害と呼ばれます。立位では前屈みと

なり、歩幅も小さくなります(小股歩行).歩き出すと途中から歩調が速くなり(festinating gait)、小走りにな

ったり,前方や後方に軽く押されただけで体勢を立て直せずに突進したり倒れてしまいます.歩いている姿勢

からはいかにも前に倒れやすそうに見えますが、実際は前にも後ろにもよく転倒します。いったん歩き始める

とだんだんと加速してしまい、方向転換や歩行の停止が難しくなります。

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また,歩き始めに足底が地面に接着されたようになって第 1 歩が踏み出せず,その場で下肢が細かくふる

えるように見える現象をすくみ足といいます.ただ、このような状況でも足下にまたぐ目印などが提示される

とためらうことなく一歩を踏みだすことができます(=kinesie paradoxale).

Parkinson 病では筋萎縮は生じないのが一般的です.錐体外路性2の反射であるマイアーソン徴候やウェス

トファール現象がしばしば陽性となります.マイアーソン徴候とは眉間を連続的に軽く叩くときにみられる眼

輪筋の収縮のことで,健常者では数回で慣れの現象が生じ出現しなくなりますが,Parkinson 病患者では叩

いている間中、眼輪筋の収縮が続きます. ウェストファール現象は関節を曲げて筋肉の長さを短くしたとき

に、同じ張力を保つようための筋収縮(局所姿勢反射)のことで,足関節部で前脛骨筋の腱の隆起として観察さ

れます。

⑤自律神経症状

迷走神経の中枢が冒されることもしばしばあり、便秘・排尿障害などの排泄機能障害が出現しやすくなりま

す。自律神経症状では便秘が最も頻度が高く (70%)、体表の分泌物が多くなるため、顔が油っぽくなり、目

やにが出やすくなります(脂漏性顔貌).起立性低血圧は抗 Parkinson 病薬で生じたり,病気の進行に伴って

生じることがありますが,病初期から認められることは稀です.起立性低血圧や神経因性膀胱が病初期からみ

られるときには Shy-Drager(シャイ-ドレーガー)症候群3を疑います.

2錐体路と錐体外路は、どちらも脳(大脳皮質運動野)から末梢(顔面,手足,体幹)へ運動の指令を伝える経路のことですが、大まかには随

意運動(意識的に行う運動)を錐体路、不随意運動(無意識で行う運動)を錐体外路と考えてください。

正確には、延髄にある錐体(延髄にある膨らみ)を通る経路を総称して「錐体路」と呼び、それ以外にも運動に関わる神経路が発見されたため、

その経路を「錐体外路」と呼ぶようになりました。錐体路には2種類あり、手,足,体幹などの運動に関係する経路を(皮質から脊髄を通るか

ら)「皮質脊髄路」と呼び、顔面など脳神経に関係する経路を(皮質から延髄を通るから)「皮質延髄路」と呼びます。「皮質脊髄路」は、<大

脳皮質(運動野)→内包→脳幹(中脳+橋+延髄の錐体:ここで左右の錐体路が交差する)→脊髄→末梢神経→手足など>という経路で、ポイ

ントは内包を通ることと延髄で左右が交差することです。「皮質延髄路」は、<大脳皮質(運動野)→内包→脳幹(ここで左右が交差)→末梢

神経(脳神経)→目や耳など>という経路で、ポイントは脳幹で左右が交差することです。上のような錐体路を通らない経路を「錐体外路」と

呼びます。錐体外路は、<大脳皮質(運動野)→大脳基底核や視床,小脳、聴覚・視覚などの感覚器からの情報を取り入れて、フィードバック

を繰り返し→脳幹→延髄下部(左右が交差)→脊髄→手足など>という経路をたどります。 3シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome:SDS)は、自律神経症状を主要症状とする脊髄小脳変性症の中のひとつ。多系統萎縮症(MSA)

のひとつともされてういて、他の MSAで類似の症状を来たすものには、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、線条体黒質変性症(SND)などがある。

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⑥精神症状

体の動きが乏しくなるのと並行するかのように、精神機能も停滞しがちになります。特殊な例を除けば認知

症の症状を来たすことはありませんが、思考が遅くなるため、知的機能が障害されたように見えることがあり

ます。元気がなくなり、意欲や自発性が低下することもあります。約 40%にうつ傾向が,約 20%に知的機

能低下が合併すると言われていますが、知的機能低下が初発症状や中心症状になることはありません.

臨床症状の重症度は Hoehn-Yahr(ホーン-ヤール)重症度分類(Ⅰ-Ⅴの 5 段階)が用いられます.Ⅰ

は片側の症状,Ⅱは両側,Ⅲは姿勢調節障害はあるが ADL は自立,Ⅳは ADL に介助は必要であるがなんと

か歩行可能,Ⅴは車いすレベル.Ⅲ度以上は特定疾患に指定され,医療費の公的補助などの対象となります.

〔Hoehn & Yahrの重症度分類(1967)〕

StageⅠ 一側性障害で体の片側だけの振戦,固縮を示す.軽症例である.

StageⅡ 両側性の障害で,姿勢の変化がかなり明確となり,振戦・固縮,寡動~無動とも両側にあるた

め,日常生活がやや不便である.

StageⅢ 明らかな歩行障害がみられ,方向変換の不安定など立ち直り反射障害がある.日常生活動作

障害もかなり進み,突進現象もはっきりとみられる.

StageⅣ 起立や歩行など日常生活動作の低下が著しく,労働能力は失われる.

StageⅤ 完全な廃疾状態で,介助による車椅子移動または寝たきりとなる.

■検査所見

診断的意味で役に立つ一般的な血液・脳脊髄液検査の異常はありません.

診断的意義が高い検査として、末梢交感神経機能の指標となる心筋 MIBG(metaiodobenzylguanidine)シ

ンチグラフィという検査があり、心臓支配交感神経の機能低下が示唆される所見が得られます.

脳の CT や MRI の画像では特異的な異常はありません.脳の画像診断はむしろ他のパーキンソン症候群(パ

ーキンソニズム)を来たす疾患を除外するために行います。

*パーキンソン症候群(parkinsonian syndrome)

パーキンソン症候群とは、パーキンソン病類似の運動症候(パーキンソニズム)を呈する疾患群の総称を指

します。一次性と二次性があり、パーキンソン病とは異なる変性疾患で(一次性に)パーキンソニズムを呈す

る疾患(例えば,進行性核上性麻痺,線条体黒質変性症,大脳皮質基底核変性症など・・多数)を包括的に指

す場合を一次性パーキンソン症候群。 別の原因疾患によって(二次性に)パーキンソニズムを生じた状態(例

えば,薬剤性,脳血管障害,脳炎後,中毒,正常圧水頭症,脳腫瘍,慢性硬膜下血腫,頭部外傷など・・多数)

を指す場合を二次性パーキンソン症候群として分類することがあります。パーキンソン症候群とパーキンソニ

ズムがほぼ同じ意味で用いられる場合もあります。

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■診断・鑑別診断

診断は特徴的な臨床経過や,その他のパーキンソン症候群を除外することで診断を行います.

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症候性にパーキンソニズムを起こす疾患で臨床的に特に大事なものは薬剤性パーキンソニズムと脳血管障

害性パーキンソニズムがあります.

抗精神病薬にパーキンソニズムを引き起こす薬剤があるので、薬剤の副作用の症状ではないかと疑うのが重

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要です.

○脳血管障害性パーキンソニズム

脳血管障害でパーキンソニズムを起こすものには、MRI で大脳基底核の多発性ラクナ梗塞と大脳白質の広

範な虚血性白質脳症のタイプがあります.両者とも CT や MRI で鑑別可能ですが,Parkinson 病に上記の画

像所見を合併する症例もありますので、判断に苦慮する場合もあります.

脳血管性パーキンソニズムの場合,歩行障害を主とする下半身の症状が中心(lower body parkinsonism)

で,Parkinson 病と比べ筋固縮や無動が目立たず,振戦はないか,あっても丌規則で姿勢時振戦が多いとさ

れています.症状の左右差は目立たず,歩行障害(小股歩行で wide-based)が顕著です.錐体路症候や把握反

射などの前頭葉徴候を伴うことが多いです.MRI にて大脳白質の leukoaraiosis を呈する症例では認知症の

合併例が多いとされています.

○薬剤性パーキンソニズム

薬剤性パーキンソニズムは Parkinson 病と臨床症状で区別することは難しいですが,Parkinson 病と比べ

ると発症と進行が比較的急速で,短期間で高度の無動が生じる点が異なります.症状の左右差や安静時振戦も

顕著でないような症例は薬剤性パーキンソニズムを疑って服薬歴を調べる必要があります.

○多系統委縮症

多系統萎縮症4でパーキンソニズムを主症状とする場合(線条体黒質変性症)もありますが、症状だけから

Parkinson 病と区別することは困難です。 経過年数の割(発病後 1~2 年)に無動が高度な場合や,安静時振

戦がなく,姿勢時に丌規則な振戦やミオクローヌス様の振戦のみられる場合,起立性低血圧,排尿障害がみら

れる症例や L ドーパの効果が十分でない場合には多系統萎縮症を疑います.MRI 画像も診断の助けになりま

すし、MIBG 心筋シンチグラフィが正常である点も Parkinson 病と違います。

○進行性核上性麻痺

進行性核上性麻痺は眼球の上下方向への注視麻痺が重要な鑑別点です。Parkinson 病と比べて早期から転

倒しやすいことが初期の特徴です。

○Shy-Drager 症候群

Shy-Drager 症候群は初期から起立性低血圧,尿失禁などが特徴です.

○汎発性 Lewy(レヴィ)小体病

汎発性レヴィ小体病は,大脳皮質にも広範に Lewy 小体と老人斑が出現する疾患ですが,若年発症する病

型では Parkinson 病と症候上も L ドーパに対する反応からも区別し難い場合があります.ただ、壮年期以後

に発症する汎発性レヴィ小体病では,パーキンソニズムは部分症状で,主症状は変動する高度の認知症,幻覚

などの精神症状がメインとなることから区別されます.

○大脳皮質基底核変性症

大脳皮質基底核変性症は,パーキンソニズム以外に,失行,失認などの巣症状を呈することが特徴です.一

側手のきわだった巧緻動作障害があるときは,この疾患が鑑別にあがります.画像上,大脳皮質および白質の

萎縮に著しい左右差があるのが特徴です.

■経過・予後 4多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)は、神経変性疾患の 1 つです。小脳症状が進行性に悪化するので、脊髄小脳変性症のひとつ

として分類されています。

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L ドーパ治療の導入後,予後は大きく改善されました。 発病後の余命は、発病 15 年程度は一般人口の余

命と変わらないとの報告がありますが、発病 15 年以後は Parkinson 病患者のほうが低下すると言われてい

ます. 症状では固縮,無動が軽く,振戦の目立つ患者のほうが経過がよいと言われています.死因としては

肺炎,悪性腫瘍,脳血管障害などの合併症によるものが多いです.

■治療

[1]薬物療法

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〔治療の基本方針〕

1)レボドパとドパミン脱炭酸酵素阻害薬の配合剤を基本薬とする。ドパミンは血液脳関門を通過しないので,

その前駆物質であるレボドパを投不して脳内のドパミン濃度を上げる.

症状に応じて,COMT 阻害薬のエンタカポン(コムタン®),MAOB 阻害薬のセレギリン(エフピー錠®),

ドパミン受容体作用薬のブロモクリプチン(パーロデル®)など,抗コリン薬のトリヘキシフェニジル,DA

放出促進薬のアマンタジン(シンメトレル®),ドーパミン前駆体のドロキシドパ(ドプス®)・・を併用する.

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2)初期の軽症例は,レボドパ以外のドパミン受容体作用薬(アゴニスト)でコントロールを試みる.麦角系アゴ

ニストでは心臓弁膜症誘発による心丌全の危険があるため,非麦角系アゴニストを第 1 選択とする。副作用

(眠気や突発性睡眠)があれば,心エコーで異常がないことを確認して麦角系アゴニストを使用する.心疾患

がある場合は原則禁忌.ただ,振戦が強く無動が軽い例では,抗コリン薬も第 1 選択薬として使用する.

3)最初から無動が強い例や高齢発症例では,無動を速やかに改善するためレボドパ製剤(配合剤)からはじめる.

4)レボドパ配合剤で効果丌十分な場合や日内動揺(wearing off 現象)が出現した場合にはコムタンを併用す

る.

5)レボドパとドパミン受容体作用薬の併用でも効果丌十分な場合には,シンメトレル,コムタン,エフピー

錠,トレリーフあるいはドプスを併用してみる.

6)薬剤効果の丌十分な激しい振戦には,脳深部電気刺激や視床破壊術が有効な場合がある.

7)レボドパが有効であるが,効果丌安定による激しい日内動揺(wearing off 現象)が出現する場合の off 期の

症状改善には,脳深部電気刺激(視床下核,淡蒼球)や淡蒼球破壊術が適応となる.振戦に対しては視床破壊術

が有効である.

〔各内服薬の特徴〕

■レボドパ(単味剤,およびドパ脱炭酸酵素阻害薬の配合剤)

・レボドパ(単味剤,配合剤とも)は,長期投不中に,上がり下がり(up and down),すり減り(wearing off),

オン・オフ(on off)などの効果丌安定現象が出現しやすい.投不間隐の短縮や 1 回投不量の低減,単剤頻

回投不への変更,他剤併用で調整する.

■ドパミン受容体作用薬(アゴニスト)

・初期軽症で高齢でないパーキンソン病の治療開始時の第 1 選択.レボドパより効果は弱いが,効果が長く

て安定しており,長期投不による日内動揺も出現しない.

・麦角アルカロイド誘導体(ブロモクリプチン,ペルゴリド,カベルゴリン)と非麦角アルカロイド(タリペキソ

ール,プラミペキソール,ロピニロール)がある.ブロモクリプチン,タリペキソール,プラミペキソールは

D2 受容体に選択的に作用するのに対して,ペルゴリドとカベルゴリンは D1 受容体,D2 受容体の両者に作

用する.ロピニロールは D2,D3 受容体選択性.

・副作用:嘔気,食欲低下,眠気,突発睡眠発作(プラミペキソール,ロピニロール),浮腫,胸水,肺線維症,

心臓弁膜症誘発による心丌全(ペルゴリド,カベルゴリン)など.

・拘束型心臓弁膜症:欧米で麦角系アゴニスト(ペルゴリドとカベルゴリン)の重篤な副作用として注目され,

米国では 2007 年に販売中止になった.麦角アルカロイドが心臓弁膜にあるセロトニン 5-HT2B 受容体に

作用して線維化を起こすためと推定されている.日欧では非麦角系アゴニストを第 1 選択薬として使用し,

それで効果が丌十分か突発睡眠などで忍容性に問題がある場合に,麦角系アゴニストを心臓弁膜症がないこと

を確認した上で使用する.

・突発睡眠と眠気:非麦角系アゴニスト(プラミペキソールとロピニロール)において頻度が高い.特に前兆な

く突然睡眠に陥る突発睡眠は,交通事故や外傷の原因になるので服用者には車の運転や危険作業への従事はし

ないように注意する.

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■末梢 COMT 阻害薬(エンタカポン)

末梢カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害することで, L-ドパの代謝分解を遅らせ,高

い血中濃度を維持することで脳内への持続的移行を可能にする。 L-ドパ製剤(配合剤)との併用でのみ効果が

発揮され,その効果は L-ドパの増量効果と基本的には同じである.

■モノアミンオキシダーゼ B 阻害薬

・セレギリンは,ドパミンを分解するモノアミンオキシダーゼ B(MAOB)を阻害するでドパミン量を増加さ

せ,効果を発揮する.

・本剤は,最初は抗うつ薬として開発された.

■抗コリン薬

・レボドパ出現以前にはパーキンソン病(及び症候群)の薬物療法の中心だったが,レボドパとドパミン受容体

作用薬の登場後は,主に併用薬として使用される.

・筋固縮と振戦に対する効果が高いが,無動,寡動に対する効果は劣る.

・パーキンソン病の初期・軽症例や振戦の強い例では第 1 選択薬として使える.症状が進行し,無動が強ま

ればレボドパ製剤を併用する.

・記憶障害や幻覚,せん妄が出現しやすいため高齢者には使用を避ける.

・パーキンソン病以外の種々のパーキンソン症候群には,レボドパより有効なことがある.

・作用機序は大脳基底核線条体のコリン作動ニューロンの抑制によりドパミン系とコリン系のバランスを回復

させる.

・副作用:①抗コリン作用,特に口渇と口の粘り感,尿閉,便秘,②せん妄,幻覚(特に高齢者,認知症を伴

う患者),③記憶障害.

■塩酸アマンタジン

・黒質線条体のドパミン作動ニューロン終末部からのドパミン放出を促進することにより,パーキンソニズム

を改善する.

・通常はレボドパに併用されるが,軽症例には第 1 選択薬としても用いられる.

・副作用として,幻視,妄想,せん妄などの精神症状が出現しやすい.高齢者には使用を避ける.

・脳卒中後の精神症状(意欲低下など)に使用する場合は,幻覚やせん妄の出現頻度が高いので,尐量投不(50

~150mg/日)とする.

■ノルアドレナリン系作用薬

・ドロキシドパはノルアドレナリン前駆体で,体内でアミノ酸脱炭酸酵素によりノルアドレナリンに変換され

る.

・Hoehn & YahrⅢ度以上のパーキンソン病のすくみ足に対して,レボドパの効果が丌十分な場合に,本剤

を併用することでノルアドレナリン系を活性化し,すくみ足を改善する.

・パーキンソン病以外のパーキンソニズム(変性疾患,脳血管性など)の歩行障害に有効なことがある.

・昇圧作用で自律神経障害による起立性低血圧,失神,立ちくらみを改善する.

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・過度の血圧上昇を生じることがあるので,注意しながら尐量から増量する.

■ゾニサミド

・実験的には,MAO-B 活性阻害作用とチロシン水酸化酵素活性化によるドパミン合成促進作用がある。

・レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合に,尐量

(25mg/日)を併用する.

・投不量を増やすと,逆に効果は減弱するので注意する.

<副作用1:wearing-off 現象>レボドパの血中半減期を延長するために COMT 阻害薬のエンタカポン(コ

ムタン)や脳内ドパミンの半減期を延長するために MAOB 阻害薬のエフピーなどを併用する.ジスキネジア

がある場合はエフピーは避ける.

<副作用2:ジスキネジア>ドパミン過剰で出現することが多いので,レボドパ/DCI,DA アゴニストを減

量する.減量でパーキンソン症状が悪化する場合はアマンタジン塩酸塩(シンメトレル)を併用する.

<副作用3:幻覚,妄想などの精神症状,認知症>症状出現直前に投不した薬剤を中止する.さらに抗コリン

薬,シンメトレル,エフピーなどを漸減中止する.精神症状が強い場合は DA アゴニストもできるだけ減量

しレボドパ/DCI を中心とするのが原則だが,パーキンソン症状の悪化によりパニックになり精神症状が悪化

する場合もあるので,パーキンソニズムの悪化を認める場合は早めに向精神薬(セロクエル,抑肝散など)を

併用する.ドネペジル塩酸塩(アリセプト)は記銘力障害のみならず,精神症状も改善することもある.ドー

パミンアゴニストで眠気により認知症様にみえたり,せん妄を誘発する場合もあるので高齢者では特に注意す

る.

*wearing-off 現象

L ドーパの長期治療でさまざまな問題症状が生じます L ドーパの服薬時間と連動する形で生じる日内症状変

動のことを wearing-off 現象と言います。ジスキネジア5などの運動合併症,精神症状(幻覚・妄想など)も起

きます.近年は L ドーパ長期治療に伴う運動合併症(wearing-off 現象やジスキネジアなど)の防止の立場か

ら,ドパミン作動薬を用いた治療の導入や,治療早期からの L ドーパとドパミン作動薬の併用療法を推奨す

る意見が多いです.

5 ジスキネジアとは 抗パーキンソン病薬の服用に伴って起きる不随意運動の総称で、自分の意志に関わりなく身体が動いてし

まう症状のこと。

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[2]外科療法

内科的治療でうまく治療ができない場合の選択肢として外科療法が挙げられます.高度の振戦、高度の日内

症状変動(wearing-off 現象)、重症のジスキネジアなどの場合などに考慮します.

定位脳手術法には,目標部位を電気凝固し破壊する方法と目標部位に刺激電極を刺入し持続的に刺激する

(深部脳刺激)方法があります.

手術目標部位としては視床の腹側中間核(Vim 核)、腹外側核(VL 核)、淡蒼球内節の後腹部,視床下核が挙

げられます. 近年は定位的破壊術よりは深部脳刺激術が推奨されています.深部脳刺激術の手術ターゲット

に関しては,近年,淡蒼球よりは視床下核のほうが主流になっています. 淡蒼球の刺激術では wearing-off

現象の off 期の固縮,振戦の軽減とジスキネジアの軽減が期待される主な効果になりますが,視床下核の刺激

術では,固縮,振戦,無動など L ドーパが奏効する症状すべてに効果があり,L ドーパの用量も減量可能とい

われています.

ただし,どの手術法も対症的治療であり根治的手術ではありません.どの手術法も高度に進行した症例や L

ドーパが奏効しない症状には効果が期待できないので,手術への過剰な期待は禁物です.まず薬剤の調節の余

地がないか十分に検討することを含め,手術適応をよく吟味することが大切です.

川崎医科大学付属 川崎病院 脳外科 HP より

■患者説明のポイント

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・慢性進行性の変性疾患であるが,適切な薬物治療により症状が改善する疾患であることを説明する.

・パーキンソン病で障害される神経系は運動そのものの系(錐体路系)ではなく,運動を調節するあるいはス

ムーズに動かす系(錐体外路系)であるので,意識的に体を動かすのが大事だということを説明する.

・薬物療法とリハビリテーションは治療の両輪であり,できるだけ身体を動かすように促す.

・日常生活を制限する必要はなく,むしろできるだけ積極的に活動するよう促す.

・薬剤は処方どおり服用すること,薬剤の中止や脱水により悪性症候群6が起こりうるので,規則的に服薬す

るよう説明する.薬の服用ができない場合は必ず主治医に相談するように説明する.

・症状の変動がある場合は,どのような変動か,食事や服薬との関連などについて記録して受診時に伝えても

らうよう説明する.

■看護・介護のポイント

・自分のペースであればほとんどのことは自分でできるので手伝いすぎないこと,どうしてもできないことの

み手伝うようにする.

・小声,早口などの構音障害がある場合は,話しかける側もゆっくり大きな声で話しかける.

・症状は,時間により大きく変化したり(wearing-off),平地は歩行困難でも階段は歩きやすいような奇異

性運動(kinesie paradoxale)があること,丌安など心理的要因により変化することがあるのは,患者のわ

がままではなく疾患そのものの特徴であることを理解する.

・服薬の確認,症状の日内変動,精神症状,嚥下の状態などを適宜主治医に報告する.

・リハビリテーションの重要性を理解し,患者にも繰り返し勧める.

■服薬指導のポイント

・麦角系 DA アゴニスト(カバサール,パーロデル,ペルマックス)の副作用である消化器症状は,食後に

尐量から漸増すれば慣れて気にならなくなることが多い.また,「心臓弁膜の病変が確認された患者や既往の

ある患者」には投不禁忌であり,投不前や投不中の患者に対して心エコー検査で確認することになっている.

・非麦角系 DA アゴニスト(ビ・シフロール,レキップ)の副作用で注意が必要なのは眠気である.特に,

眠気を感じないのに食事,会話,運転中などに突然入眠する「突発的睡眠」は,麦角系やレボドパでも報告は

あるが,非麦角系で頻度は高い.服用開始直後に発現するとは限らないので,家族,介護者を含めて留意する

よう常に注意を呼びかけ指導する.

・レボドパまたは DA アゴニストを服用している患者で,社会的に丌利な結果を招くことがわかっているに

もかかわらずギャンブルを続ける病的賭博や性欲亢進など,衝動制御障害が報告されている.家族と協力して

患者の経過を把握し,発現時には減量などを医師と協議する.

●●●●補足1

6悪性症候群(Neuroleptic Malignant Syndrome:NMS)は、向精神薬でのドパミン D2 受容体の遮断で起きる重篤な副作用の

ことで、無動、寡黙、筋固縮、高熱、意識障害などの症状が現れる。筋肉の傷害に伴なって、血液検査ではクレアチニンキナー

ゼ(CK,CPK)の上昇がみられる。速やかにダントロレンナトリウムの内服、注射を行う。

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パーキンソン病の治療には、音楽もいい影響を不える可能性がある。

・大江浩美(柳井病院), 中村鈴枝, 藤岡慶子, 荒尾めぐみ

「パーキンソン病患者における音楽療法 リズム音楽を定期的に取り入れての効果」中国四国地区国立病院機

構・国立療養所看護研究学会誌(1880-6619)6 巻 Page200-202(2011.01)

・服部優子(本町クリニック), 小川尚子, 伊藤有紀, 近藤将人, 谷口法子, 赤尾裕子, 服部達哉

「医療における音楽療法のあり方とその可能性 診療所における音楽療法の取り組み 慢性神経疾患患者の外

来・訪問音楽療法から best practice を考える」

音楽医療研究 3 巻 1 号 Page11-14(2010.11)

●●●●補足2

映画『レナードの朝』(原題:Awakenings)

ロバート・デ・ニーロ (出演), ロビン・ウィリアムス (出演), ペニー・マーシャル (監督) | 形式: DVD

原作:オリバー サックス (晶文社 (1993/7/30)

嗜眠性脳炎によるパーキンソン症候群に、1960 年代に開発されたパーキンソン病向けの新薬 L-ドーパを投

不し、覚醒させたが、耐性により効果が薄れていった状況を記述している映画。

【参考文献】

・「目で見る神経内科学」(医歯薬出版株式会社)

【映画解説より】

1920 年代に流行した嗜眠性脳炎によって、30 年もの間、半昏睡状態のレナードは、意識はあ

っても話すことも身動きもできない。彼に強い関心を抱いた新任ドクターのセイヤーは、レナー

ドに試験的な新薬を投不し、機能回復を試みる。そしてある朝、レナードは奇跡的な“目覚め”

を迎えた…。人間の尊厳と愛と友情を描き、全世界の話題を独占した 2 大名優ロバート・デ・ニ

ーロとロビン・ウィリアムズの初共演も見逃せない。監督に『ビッグ』のペニー・マーシャル。

第 63 回アカデミー賞�作品賞、主演男優賞、脚色賞ノミネート作品。

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・「標準神経内科学」(医学書院)

・「ベッドサイドの神経の診かた」(南山堂)

・「今日の治療指針 2011 年版」(医学書院)

・「今日の診断指針 2011 年版」(医学書院)

・「ハリソン内科学 (原著第 17 版)」(メディカルサイエンスインターナショナル)

・「内科学 第 9 版」(朝倉書店)

・「ハイパー臨床内科」(中山書店)