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アジアにおけるデジタルテクノロジー の急激な成長 アジアのビジネスリーダーからの提言

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Page 1: Cognizant - The New Process Genome: Recoding …析・レポーティングプロセス(45%)」と続く。 • 重要な役割を担う「チーフデジタルオフィサー(CDO)

アジアにおけるデジタルテクノロジーの急激な成長アジアのビジネスリーダーからの提言

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2 KEEP CHALLENGING 2015年12月

日本語版によせて一般に日本企業は、アジアを遅れた地域と見なしがちだ。特にITの新しい分野において、アジアは欧米や日本に比べてずっと遅れていると考える場合が多い。それが、現実のアジアの状況とは大きく異なっていることをこの報告書は明確に示している。むしろ、アジアは今や率先してデジタル・テクノロジーを採用し、積極的にその成果を獲得しようとしている。多くの日本企業は、足元のアジアをまず自社のグローバル展開の中心に置いている。そのアジアで、現在デジタル・テクノロジーを巡って、どんな新しい動きが発生しているのかをぜひこの報告書を通じて理解していただきたい。

Page 3: Cognizant - The New Process Genome: Recoding …析・レポーティングプロセス(45%)」と続く。 • 重要な役割を担う「チーフデジタルオフィサー(CDO)

はじめに急激な成長を続けるアジアは、いまや、デジタルイノベーションの世界的な中心になろうとしている。驚くことに全世界のインターネットユーザー28億人の半数をアジアが占めており、すでに世界最大のeコマース市場となっていることをご存知だろうか。そして、モバイルインターネット、IoT(モノのインターネット)、クラウド、3Dプリンティング、ロボット工学といった分野の最新テクノロジーは、東南アジアで30%、インドで20~30%、中国では22%のGDP増加をもたらすと考えられている1。

この10年間で、経済における欧米からアジアへのパワーシフトは急速に進み、あらゆる産業分野で、アジアが重要な成長エンジンとなっている。世界経済の専門家でも、これほどまでに急激な成長を予測できていただろうか。現在、ビジネスモデルやバリューチェーンおよびエコシステムの刷新を促進しているのは“デジタルコンシューマー”だが、アジアではその傾向がさらに顕著だ。ビジネス概念を覆す新しいテクノロジーの波がアジアへ激しく押し寄せているのだ。

この変革に伴い、新規投資、組織の構造と変革、社内スキル、そして企業の責任や役割といった分野に予期せぬ課題が生じている。アジアの優れた企業は、これらの課題を早急に解決してチャンスへと転換させることだろう。また今回の調査によって「アジア太平洋地域の企業幹部の経験に学ぶこと」、

「デジタル化がもたらす巨大なビジネスチャンスを自ら体感すること」がいかに重要であるかが明らかになった。さらには、アジアにおけるイノベーション活動、ビジネス戦略、成功シナリオの取り込みという課題も見えてきた。

この報告書は、2015年5月から7月までの間に、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、香港、インドネシア、マレーシア、シンガポールの300人以上の経営幹部および技術部門の責任者を対象にコグニザントが実施した調査に基づいて作成した(調査方法の詳細は18ページの付録を参照)。デジタル化は企業に新しい価値をもたらしているが、アジア太平洋地域では先進諸国よりもその傾向が強く、この報告書でもその点に注目した。企業の経営陣は「ビジネスの未来はアジアにある」という認識を、いっそう強くすることだろう。

成長するアジア:加速するデジタル化 3

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4 KEEP CHALLENGING 2015年12月

「経済におけるアジアへのパワーシフトにより、私達の世界的な競争力が高まった。いまは、大きな魚が小さな魚を食べるのではない。速い魚が遅い魚を食べるのだ」(メディア&エンターテイメント企業CEO / マレーシア)

注目すべき調査結果今回の調査によって、以下のような重要な動向と事実が明らかになった。

• 急激にデジタル化するアジア太平洋地域。37%の企業が、すでにデジタルへ転換。そして60%の企業が、今後12ヶ月から24ヶ月以内のデジタル化プロジェクトを推進している。

• デジタル化の重要な目標。企業がデジタルへ移行する理由のトップ3は次のとおり。1. 新しい製品やサービスの改善(63%)2. 収益の拡大(60%)3. 売上、新規顧客獲得、マーケティング、カスタマーリレーションの改善(58%)

• 大幅な売上増加とコスト削減を実現。調査対象となった企業は、デジタル化によって収益を7.6%伸ばしている。さらに、2017年までに収益を13%以上伸ばすと予想されている。

• アジア進出には、デジタル化が急務。しかし、いまだに世界のいくつかの地域では「デジタル化は今度の四半期に取り組めばいい」と考えられているようだ。アジアでは、「高まる顧客からの期待(65%)」、「競争の激化(57%)」、「社員からの要求(55%)」などにより、早急なデジタル化を迫られている。そして、正しくデジタル化された組織ほど、市場の変化にしっかりと対応していると言える。

• 成長の足かせになる、これまでのビジネスプロセス。企業に混乱や脅威をもたらすのは競合他社でも顧客でもない。それは従来のビジネスプロセスもしくはプロセス統合の失敗である。デジタル化により最も革新されたプロセスは、1位が「セールス・マーケティング・カスタマーサービスプロセス(62%)」、2位が「新製品・サービス開発プロセス(60%)」、以下に「戦略設計・実施プロセス(46%)」、「財務プラニング・トラッキング・分析・レポーティングプロセス(45%)」と続く。

• 重要な役割を担う「チーフデジタルオフィサー(CDO)」。デジタル化を推進することは、成長へのアジェンダを作成することに他ならない。いま、チーフデジタルオフィサーの役割がますます重要性を増している。実際、調査した企業の70%では、2~3年以内にチーフデジタルオフィサーの役職を設けると計画されている。

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成長するアジア:加速するデジタル化 5

• デジタルへ投資する意義。デジタルテクノロジーへの投資は、イノベーションを促進する。いまビジネスリーダー達は、以下の目的で技術への投資を行っている。

>デジタル基盤の構築。SMAC(ソーシャル / モバイル / アナリティクス / クラウド)と呼ばれるIT分野への投資は今後も加速し、ほぼ倍増すると見られている。

>デジタルイノベーションの実現。最新テクノロジー(ロボット / ドローン / ウェアラブル / センサーなど)へ投資することは、有望銘柄へ投資することに例えられる。ただし、長期的に見てどの銘柄に最も高い配当を期待できるかは判断すべきポイントである。

デジタルの未来をつくるのはアジア

「デジタルは、アジアにおけるイノベーションと成長に重要な役割を果たす。また同時に、ビジネスの成長を牽引しながら、資源と資本の最適配分を実現するだろう」(自動車メーカーCFO / インドネシア)

2020年までに、全世界の支出増加分の約60%を新興国が占めると予測されている2。アジアでデジタルが語られるとき、それは“急激な成長”について語られているのと同じだ。事実、アジア太平洋地域の多くの企業は「デジタル化は短期的にも長期的にも極めて重要な成功要因である」という認識を強めている。技術系の起業家は、デジタルプラットフォームを活かし、すでに10億ドル規模の財産を築いており、従来型のビジネスモデルや産業に脅威を与えている3。驚くことに世界のインターネット関連企業トップ15社の内4社(アリババ、テンセント、バイドゥ、JD.com)が中国企業で、資産価値を合算すると5,420億ドルにものぼる4。ベンチャーキャピタリストやプライベートエクイティファームは、新しい投資先を探しており、インドのフリップカートのようなeコマース企業に巨額の資金をつぎ込んでいる5。

今回の調査で経営陣の64%が、アジア太平洋地域のビジネス成長を「強気またはかなり強気」と答えた。中国経済の減速が懸念される一方で、アジアの力強い成長はこれからも続くと考えている。急変するアジア市場への対応を迫られる中で、デジタルへの期待の高まりを実感しているからだ。彼らはデジタル化がアジア太平洋地域諸国の抱える懸念をすべて解消するとともに、各国のグローバル展開にも貢献すると確信している。

また、多くの調査対象者が「デジタル化には大きな可能性がある」こと、そして「デジタル化が従来のビジネスの脅威となっている」ことを認識していた。危機感を持っている経営者達は「near-death(臨死)」という言葉が、現実的に自分達のビジネスが直面している危機だととらえている。例えば、シンガポールテレコムが15億9,000万USドルを投じてデジタル収益を柱とする新部門を開設したのもその表れである6。

デジタル化の定義 どのような市場においても、初期段階には「デジタル化」の言葉をめぐってさまざまな意見や解釈、そして主張によって定義づけに混乱が生じる。「何が本当にどう必要なのか?」といった具体的な理解は、言葉の普及後しばらくたってからしかわからない。

調査対象となった経営陣の64%が、アジア太平洋地域のビジネス成長を「強気またはかなり強気」と答えた。

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6 KEEP CHALLENGING 2015年12月

26%

33%

貴社におけるデジタル化の現状についてお答えください。

37%

4%

今後2年以内に本格的にデジタル化を進める予定である。

2015年に本格的にデジタル化を進める予定である(2015年5-7月の調査時点)。

現在本格的にデジタル化を進めている。

デジタル化の必要性を感じていない。

デジタル化という言葉の定義は、世界各地で異なる。そのさまざまな定義を今回の調査対象者とともに検証した。また、「デジタル化」という言葉を聞いて最初に何を思い浮かべるかを質問した結果、「進化」、「破壊的」、「顧客」、「参加型民主主義」といった回答を得た。この結果や分析家の見解に基づき、コグニザントはデジタル化の定義を次のように提示する。

「デジタル化とは単なる技術ではなく、テクノロジー、データサイエンス、デバイス、デザインおよびビジネス戦略をつなげるイノベーションである。そしてデジタル化は、物理的な世界とデジタル世界をつなげることで、機動性、収益、原価の改善を実現する。その変化の中心にあるのは、顧客、デバイス、組織またはビジネスプロセスである」

今回の調査は、デジタル化が国籍や産業分野を問わず、アジア太平洋地域の経営幹部が取り組むべき最重要課題であることを明らかにした。デジタル化に取り組んでいない企業はわずか4%のみという調査結果からも、いままさに大きな変化が起こっていることがわかる(図1参照)。

図1:急激にデジタル化するアジア太平洋地域

回答者数:314出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

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成長するアジア:加速するデジタル化 7

大幅な売上増加とコスト削減を実現デジタル化は“オンラインの消費者”のニーズに応えるための鍵となる。現在の“オンラインの消費者”の数は、アジア全人口の3分の1だが、2020年までには半数に達する見込みだ7。調査対象となったビジネスリーダー達はこの事実を考慮して、新製品やサービスの開発、売上増加、組織全体の運営効率化を図り、ビジネスモデルの再構築を進めている(図2参照)。こうした効率化により、経営資源を社内業務からデジタル化による成長機会に集中させることができる。調査対象の企業では、デジタル化を推進した結果として、売上はすでに7.6%増加しており、2017年までには2倍以上の伸び率になると期待している(8ページ 図3参照)。これは、調査対象314名の回答だけでもなんと201億USドルの収益効果となる。

どの業界もデジタル化の脅威を免れることはできない。規制の厳しい金融サービスでさえ、運営体制の見直しを迫られている。例えば、銀行収益の20%から25%を占める決済代行サービスも、大きな 転 換 期 を迎えている。アリペイ(中国)やPaytm(インド)など、Mintを超えた新規参入デジタル企業が、従来型の企業に脅威を与えているのだ。従来型の企業も、進歩的な企業も、業界の再編と自らの将来のためにデジタルの活用を模索している。200年近い歴史を持つ郵便事業会社シンガポールポストも、そのような企業の1つだ。シンガポールポストは、アジア太平洋地域でeコマースにおける物流とコミュニケーションのリーディングカンパニーとなり、最終的にはグローバル進出を目指している8。デジタル化は、将来の収益強化を最短ルートで実現するもので、「提

図2:デジタル化の重要な目標は、売上増加とコスト削減

回答者数:314(複数回答可)出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

販売/顧客獲得/マーケティング/カスタマーリレーションの改善$

$$

63%� 新製品/サービス開発の改善

一人ひとりのニーズに合わせた顧客体験の提供

戦略の策定および実行の改善

業務の改善

従業員の連携と権限強化

財務プラニング、トラッキング、分析、レポーティングの改善

売上に大きく影響する取り組みについて。「同意する」と回答した人の割合

コストに大きく影響する取り組みについて。「同意する」と回答した人の割合

58%�

50%�

62%�

55%�

52%�

51%�

調査対象の企業では、デジタル化を推進した結果として、売上はすでに7.6%増加しており、2017年までには倍以上の伸び率になると期待されている。

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供されてよかった」的なものや「あれば便利」的な位置づけのものではない。従来の考え方に囚われず、常に現状に疑いを持ちつつこれまでのビジネスの基本原則を見直すことがリーダ

ーに求められている。

「どうして銀行には店舗が必要なのか?」、「行員がバーチャルに完全移行した場合どうなるのか?」そのような問いかけを繰り返すことが、デジタル専業銀行Atom9のコンセプトを生んだ。

回答者の61%が、デジタル化のためだけに割り当てる予算はないと答えている。また、デジタル化のためにどのくらいの予算が理想なのかわからないという回答もあった。コグニザントの試算では、初期段階でデジタル化に割り当てるべき予算は、企業の年間収益の少なくとも2%である(IT予算とは別)。また、成果、ビジョン、戦略、リスク選好度に応じて毎年増やしていくのが望ましい。もちろん、その支出を、売上増加やコスト削減といった明確な成果へと確実につなげることが重要だ。

顧客や市場からの期待は高まる一方だ。経営幹部レベルの回答者達は、その期待に応えなくてはいけないという厳しいプレッシャーを社内外で感じているという。急速に変化する市場、技術力、競争力および顧客の動向に対応しながら、より慎重に事業を展開していくことがリーダーに求められている(図5参照)。

図3、4:デジタル化による売上への影響

8 KEEP CHALLENGING 2015年12月

回答者数:314出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

銀行、金融サービス、保険

エネルギー、公益事業

ヘルスケア

製造 小売 輸送、ロジスティクス

14.1%

7.8%

14.6%

8.4%

12.9%

7.8%

13%

8%

13.1%

7.4%

13%

6.2%

14.3%

8%�

12.5%

7.5%

業界別予想売上伸び率

13.5%

2017年

予想平均売上伸び率

2015年

現在2017年

7.6% 通信 メディア、エンターテイメント、

レジャー

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成長するアジア:加速するデジタル化 9

デジタル化を推進する顧客ニーズ

「いまビジネスが堅調でも、4、5年の間に状況は変化するだろう。私達が成長を続けていくためには、デジタル化に投資して新しいデジタル経済への移行を進め、将来に備えることが必要だ」 (大手プライベートバンクCMO/シンガポール)

ビジネスリーダーは、常に将来に向けた準備を進めなければならない。特に、デジタル化はリーダーが達成すべき任務であり、その理由は顧客ニーズだ。

• 高まるデジタルユーザーからの要求。アジア太平洋地域諸国では、無料Wi-Fiが普及している。もはやその有無をわざわざ確認したり、カフェで探したりする必要はない。インドはインターネット普及率が低いにも関わらず、Facebookのユーザー数においては、やがてアメリカを上回ると予測される。また、インドネシアはTwitterの世界最大のユーザー基盤であり、ユーザー数は最も速いペースで増えつづけている。デジタルユーザーは、新しいタイプのサービスに対しての要求が厳しく、必要な時にいつでもサービスを受けられることを求めている。こういった顧客達に対して、マイナスとなるようなデジタル体験をさせることだけは避けたい10。コグニザントが2014年に実施した調査では、デジタルユーザー向けのサービスを強化した結果、合計7,660億USドル

(92兆円:1USドル=120円換算)の経済効果があったと複数の企業が回答している11。この結果からも、デジタルにおいても顧客ニーズに応えることが収益につながることは明らかだ。

図5:企業の成長を妨げる内部要因と外部要因 以下の要因が貴社の今後の成長を妨げると思いますか?

市場の変化や新規開発に迅速な対応ができない

テクノロジーの変化スピードについていけない

顧客、製品、企業および従業員に関するデータの収集、理解、活用ができない

破壊的イノベーションを持つ新興企業との競争激化

既存のパートナーやサプライヤーに後れを取るリスク

他業種企業が持つ競争力

変化の激しいビジネス環境に対応するために必要なスキル

獲得と維持ができない

ハイブリッド社会における自社のパフォーマンスや顧客の

モニタリングができない

61%

55%

64% 61%

57%63%

63%

62%

内部要因

外部要因

回答者:314(複数回答可)出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

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10 KEEP CHALLENGING 2015年12月

• 競争相手の変化。業界の垣根を超えた競争が激化しているといわれるが、そもそもデジタル化により業界の垣根はより低く、あるいは無くなってきている。革新的技術を持つ新興企業や、伝統的なバリューチェーンを捨て、顧客に直接サービスを提供し始めるパートナーやサプライヤーが登場し、経営者はいたるところで新しいライバル達に直面している。以下、新しいタイプの脅威と言える昨今の事例を紹介する。

>2014年、オーストラリアの第三者決済代行事業者であるMintは、多くの銀行を抑え、オーストラリアで最も革新的な企業50社の上位にランクインした12。

>シャオミは、ハードウェアではなくアプリやサービスを収益化することで、わずか4年で世界3位のスマートフォンメーカーになった。

>加速する小売業者の金融業界進出。ColesやWoolworths(小売業)、MyerやDavid Jones(百貨店)はオーストラリアでクレジットカードを発行している。 Colesは、GEキャピタルと提携した個人向けローンも提供している13。

• データは資産である前にその保管や維持にコストが掛かるという意味で負債である。データが多すぎることや洞察が不十分であるため、多くの企業がデジタル情報の消化不良状態に陥っている。デジタル化によって力を得た消費者は、仕事上または個人生活の場において取引や交流を行い、そこに彼らのデジタル情報、またはコグニザントが「Code Halo™

14」と呼んでいるデジタルの世界における足跡を残していく。こういったデータを収集、分析、活用して、顧客足跡のモニタリングを行い、サービスを提供していくことが必要なのは言うまでもない。

競争優位を維持するためには、このデータが顧客との関わりにおける重要な鍵であると理解しておくことが必要だ。例えば、オーストラリアの大手鉱山会社リオティントの「Mine

of the Future」戦略は、急増するデータ量をリアルタイムで処理し、その後の意思決定

するための手段として、買収による人材獲得を検討していた。人材を獲得するにあたっては、まず業界の内外に現れる新たな種類の脅威について論理的な考察をするべきだとコグニザントは考えている。

回答者:314(複数回答可)出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

社内トレーニング デジタル技術にフォーカスした買収

第三者コンサルタントの雇用

デジタルスキルを持った人材を同じ業界内から採用

デジタルスキルを持った人材を他の業界内から採用

社内の人事異動

45% 44%38% 38%

30% 30%

図6:スキルに関連する課題の解決方法プロセスにつなげることを可能にしている15。

• 激化する次世代人材の争奪戦。デジタル化への移行は、それをリードするスキルを持った人材を採用し、継続的にそのような人材を雇用していくことが大きな要となる。今回の調査によると、各社は他業界からデジタルスキルを持つ 人 材を採用すると同時に、社内トレーニングや再トレーニングを実施している(図6)。その結果、デジタルスキルを特定の部門に孤立させることなく全社内で共有し、効率的に活用することが可能になる。

興 味 深いことに、回 答 者の44%が人材不足を早期解消

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成長するアジア:加速するデジタル化 11

新しい製品やソリューションが早いサイクルで生れてくるデジタルの世界では、短期的に製品やソリューションを得るのではなく、重要となるのは人材だということを忘れてはいけない。

プロセスのデジタル化が収益の増加をもたらすデジタル化の傾向が強まる今日、新しい市場環境に対応するために、プロセスのデジタル化に多額の投資が求められている(図7参照)。この現象は、ビジネスプロセスのデジタル化から始まっている(調査対象者の45%がすでに着手済みと回答)。デジタル化は組織の混乱や企業文化の分裂を引き起こすと42%の回答者が考える一方で、彼らは「デジタルファースト」の方針が成功に導くと信じている。

デジタル化に向け経営陣が今集中すべき課題:

•「デジタルファースト」のアプローチで顧客体験の向上と効率化を。回答者の過半数が「ビジネスプロセス統合などの課題を解決できない限り、すべてのチャネルで一貫した顧客体験を提供することは難しい」と答えている。特に、複雑な商品やサービスを購入する際、顧客が求めるのは一貫してシームレスな経験だ。しかし、顧客を購入へ導くことは容易ではない。例えば、ヘルスケア業界におけるデジタル化は、人々をより健康にすること、より幸せにすることを目的としているが、実際はウェルネスサービスを単に複雑にしているに過ぎない。調査対象者は、顧客対面型のサービスをデジタル化し製品やサービスのポートフォリオを改善することが、自社の売上増加に大きく貢献すると確信している(12ページ図8参照)。また、デジタル資産(新しいモバイルプラットフォームやソーシャルプラットフォーム)の導入プロセスを改良することで、サービスの提供体制を刷新し、顧客獲得までの各ステージや顧客維持における効率を大幅に向上することができる。

• コスト削減と効率性改善への継続的な取り組み。顧客体験を重視したビジネスプロセスはもちろんのこと、社内業務プロセスの改善も大幅な収益増加へとつながっている。コグニザントの試算では、社内の業務プロセスのデジタル化により運営コストを1%削減させ、その削減分を顧客獲得や維持費用として利用することで、実質2%の売上増加を実現できる。多くの企業が、ERP(業務管理システム)の導入といった、単なるタスクの自動化に頼らない効率化を目指している。

例えば、香港の通信会社では、人事にセルフサービス機能を持たせることで、人事部の社員が戦略的な業務に集中して取り組める環境を作り出した。また、インドの大手塗料メーカーでは、顧客体験、業務プロセス、ビジネスモデルといった主要課題領域におけるデジタル化に取り組んだ。顧客対応プロセスを一元管理できるようにした結果、顧客や小売業者との関係を強化し、成長を持続させながら業務効率を高めることに成功している16。

50%

30%

20%

社内プロセスと業務のデジタル化

顧客対応アプリケーションのアップグレード

新製品の開発

43%40%

45%

図7:プロセスのデジタル化に必要な施策トップ3

回答者数:314(複数回答可)出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

顧客体験を重視したビジネスプロセスはもちろんのこと、社内業務プロセスの改善も大幅な収益増加へとつながっている。

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12 KEEP CHALLENGING 2015年12月

業務管理

製造、サプライチェーン、サービス提供

財務プラニング、トラッキング、

分析、レポーティング

戦略設計・実施

新製品・サービス開発

セールス/マーケティング/カスタマーサービス34%

41%

45%

46%

60%

62%

コストへの影響が大きい

売上への影響が大きい

51%の企業が、ビジネスプロセス統合に関する課題を解決できない限り、すべてのチャネルで一貫した顧客体験を提供することは難しいと考えている。

51%

リーダーシップも、アナログからデジタルへ。時代の変化に合わせてパラダイムシフトが求められている。

「リーダーには、将来の事業ビジョンを立て、それを実現するスキルが求められる。テクノロジーとイノベーションへの投資は、事業ビジョンを実現するための投資でなくてはならない。そうでなければ、それは単なる無駄遣いに過ぎない。」(製造業CIO / インド)

企業の幹部にソーシャルメディアへの参加を促すためには、企業の中心に“デジタル思考”を根付かせることが必要だ。しかし、ご自身のデジタル化を積極的に進めていただきたい企業幹部の多くは、LinkedInへの登録もされておらず、またTwitterアカウントもお持ちでないと答えている(13ページ図9参照)。彼らはツイートの管理より戦略的タスクが大切と考えている。コグニザントでは、このような姿勢を表す言葉として、“lack of time syndrome(多忙症候群)”と称している。“デジタルコンシューマー”の心理を理解しデジタルの価値を最大に引き出すためには、デジタル世界に個人として参加することが重要である。リーダーがネット上に自分の存在を確立できないなら、自分の職務およびビジネスの将来に影響する。もちろんリーダーがデジタルのエキスパートになる必要はない。求められるのは、従来の習慣やパラダイムから離れてデジタルを活用したアイデアを構想すること、そしてデジタルファースト企業としてリーダーシップを発揮することだ。

回答者数:314出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

図8:デジタル化がビジネスサービスにもたらす影響

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成長するアジア:加速するデジタル化 13

シンガポールのDBS銀行は、独自の方法で将来のデジタル人材育成に取り組んでいる。その取り組みの一環としてDBS MegaHackathonでは、事業課題や社会的課題の解決に向け、関連新興企業との協業による新しいアプリやプロセス、組織パターンの開発を社員に奨励している。この試みは多くの幹部行員の意識変化を生み、2016年の終わりには、DBS全行員にデジタル思考が定着するであろうと期待されている17。

重要な役割を担う「CDO:チーフデジタルオフィサー」従来の常識枠を超えた新しい発想を生み出すために、デジタルリーダーの役割を明確にすることが必要である。一般的に、CIO、CTOまたはCMOが専任で事業変革に取り組むことは少ないが、兼任体制で事業変革を推進・実行していくのはむずかしい。現実的には、リーダーを新たに採用し、事業変革を任せるべきだろう。

今回の調査対象となった企業の70%が、チーフデジタルオフィサーまたはデジタル部門長の役職をすでに設置している、もしくは設置する予定だと回答している。CDOの人数は明らかに増えているが、CDOの責任の重さ、デジタルビジネスへの移行に際しCDOが担う役割の重さは想像以上に大きい(14ページ図11参照)。今後もデジタルイベントの現場で指揮を執るのはCMO、CIOまたはCTOであっても、会社全体のデジタル化を指揮していくのはCDOである。

CDOがリーダーとして取り組むべき課題は、ステークホルダーとの協業、分裂・孤立化した組織の活性化、企業文化の変革、デジタルオフィスの設置、従業員のインセンティブと報酬および成長計画の見直し、デジタル化の加速がもたらす数々の問題への対応など、枚挙にいとまがない(15ページ図12参照)。

回答者数:314出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

図9:ネット上に自分の場所を持たないビジネスリーダー

LinkedInに登録していない

リーダー

Twitterのアカウントを持っていないリーダー40%

70%

デジタルコンシューマーの心理を理解しデジタル価値を最大に引き出すためには、自分自身がデジタル世界に一個人として参加することが重要となる。

注:CIO (ChiefInformationOfficer)CTO(ChiefTechnicalOfficer)CMO(ChiefMarketingOfficer)

Page 14: Cognizant - The New Process Genome: Recoding …析・レポーティングプロセス(45%)」と続く。 • 重要な役割を担う「チーフデジタルオフィサー(CDO)

回答者数:199出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

図10:デジタル戦略を先導するCIOとCTO

11%89%

28%72%

38%62%

45%55%

以下にあげるエグゼクティブは、貴社のデジタル化戦略策定と実施にどの程度関わっていますか?

CIO/CTO

CEO

CMO

CFO

とても深くかかわっている全くかかわっていない、一部かかわっている

貴社では、デジタル化戦略を先導する上級役員が就任しましたか?

デジタル化戦略を先導するリーダーの役職:

31%23%

16%

25%6%

はい

まもなく就任する

2、3年以内に就任予定

就任予定なしわからないチーフデジタルオフィサー

CIO/CTOCMO

チーフイノベーションオフィサー

その他

60%13%8%6%13%

注:小数点以下切り捨て回答者数:314出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

デジタル化へ投資する意義次 と々登場する新しいデジタルテクノロジーが新たな投資分野を生み出している。そして現在、ビジネスリーダー達は主に2つの目的達成に向け、これらのテクノロジーに投資している(16ページ図13参照)。

• SMAC(Social、Mobil ity、Analytics、Cloud)テクノロジーで経済効果を高める。アジア太平洋地域のモバイルデータトラフィックは、2016年の終わりまでに、全世界の40%を占めると予測されている。これは、デジタル化において、いかにモバイルの役割が重要かを物語っている18。企業と顧客との関わりを考えた場合、戦略の中心を担うのがモバイル機能である。例えば、イギリスに本拠を置きスーパー、コンビニなどを国際的に展開しているTescoは、ソウルの地下フォームをバーチャルスペースにし、商品のQRコードをスマホで読み取らせることで、オンラインショップを可能にし、売上をわずか3ヶ月で130%増加させた19。

• さまざまなテクノロジーの中からダイヤの原石を探す。コグニザントの調査によると、デジタル化の推進力となるSMAC以外の最新テクノロジー(3Dプリンティング、IoT、ロボットなど)に多くの予算を費やす企業が増えている。デジタルテクノロジーの可能性がさらに広がる中、最新センサーや最先端チップなど数多くの技術

14 KEEP CHALLENGING 2015年12月

図11:チーフデジタルオフィサーの起用

従来の常識枠を超えた新しい発想を生み出すために、デジタルリーダーの役割を明確にすることが必要となる。

SMAC(Social、Mobility、Analytics、Cloud)

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成長するアジア:加速するデジタル化 15

分野のリサーチを行い、中長期的な視野に基づいた確実な投資判断をしていくことが企業の必須課題だからだ。現実になるかどうかという問題ではなく、いつ現実になるのか、誰が運用をするのか、そして個人のプライバシー問題はどうなるのかということが重要だ。あるテクノロジーが主流になりつつある時、早い段階でそのテクノロジーに精通しておくことが、スムーズなインフラ整備を進めるための鍵となる。

デジタル化で変わっていく社会とビジネス企業はそれぞれ独自の方法でデジタル化を進めているが、基本的な方法はすでにデジタル化に成功した企業から学び、それを応用することだ。回答者の40%近くが答えているように、デジタル化はテクノロジーに束縛されて進展していくものではない。企業は、まずデジタル化の複雑な要素を簡素化し、自社のビジネスに最適なテクノロジーの選択と導入を行うべきだ。ビジネスにおける未来の不確実性は、チャンスでもある。デジタル化の課題に取り組む企業の幹部は、未来に対応するための手段を講じていく必要がある。

デジタル化のプラニングと管理

デジタル化に関連する新製品、新サー

ビスの開発

目に見える成果を出すこと

社内の合意形成

デジタル投資により企業目標を達成

すること

顧客体験を向上し事業目標を達成

すること

76%

64%

60%60%

58%

50%

課題デジタルの専門的知識とスキルの欠如、部門間の連携の欠如

課題ビジョンの欠如、

コミュニケーション不足、変化を嫌う企業風土、

緊迫感の欠如

課題予算不足、人材不足、不明確な役割と責任

課題デジタル化による成果測定が曖昧

課題常に変化する

顧客行動のトラッキング

課題組織構造、社内スキル、パートナーシップの欠如

役割役割

役割

役割

役割

役割

図12:CDOの役割と課題

回答者数:199(複数回答可)出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

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16 KEEP CHALLENGING 2015年12月

• グローバルな統合戦略でイノベーションと成長を持続させる。アジア太平洋地域の新興テクノロジー企業の多くは、レガシーシステムやその地域特有の商習慣といったものを持たないままに立ち上がっている。そのため、革新的な新しいプロセスへの迅速な対応が可能であり、自分達のハードルを毎回上げて新しい挑戦に立ち向かっている。また、自分達の国や地域にこだわらず、「デジタルで平等な世界」で、欧米での成功を足がかりに、先進諸国の企業が持つホームテリトリーに次々と進出していくという特徴をもつ。

グローバル企業は、新興市場は低品質で、低コスト製品の供給先として利用するといったこれまでの考えを改め、そこでは、今までのさまざまな制約をブレークスルーする技術が存在するという思考転換を行う。グローバル企業の本社は、この点を踏まえて各地域でのビジネス展開を推し進めることが必要になる。

• 会社全体のデジタル・リテラシーを向上させる。これまでに描かれてきたリーダー像にさよならを告げ、新しいリーダーを登場させる。そのリーダーは、組織に対する満足度を向上させ、変革への抵抗意識を和らげつつ、迅速に変革を推進することができるような人材である。企業の上級幹部に求められるのは、目の前にある問題解決に指示を送るのではなく、自らがデジタル・リテラシーを持ち合わせ、その知識から適切な解決策を提示できる。事業の中心にデジタルを構築するという一つの目標に向けて全社が確実に動き出すときに、リーダーがデジタル化のビジョン

図13:デジタル基盤の確立と革新のためのテクノロジー調査対象者は、主に以下のテクノロジーを利用してデジタル化を進めている。

回答者数:314(複数回答可)出典:CognizantCenterfortheFutureofWork

顧客向けモバイルアプリ

高度な解析・分析

顧客エンゲージメント強化のための

ソーシャルメディア 従業員・パートナー向けモバイルアプリ

プライベートクラウド

ビッグデータ

パブリッククラウド

現在 2017年

0 10 20 30 40 50 60 70%

IoT

ハイパフォーマンスコンピューティング

テレマティクス

ウェアラブル

ゲーミフィケーション

ロボット、ドローン

0 10 20 30 40 50 60 70%

デジタル基盤の確立 デジタル革新

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成長するアジア:加速するデジタル化 17

を明確に伝えられないと納得を得られないからだ。まず第一歩は、役員、CEOを含めた社内組織で、デジタルリーダーとして評価できるような人材を探し、現状を把握し、その結果に基づいて次の行動へ移していくプロセスが必要である。

• 「デュアルマンデート(Dual Mandate: 2つの異なる命題)」への対応。どのような組織であれ、コスト削減や業務の効率化など、その組織の足元を固める方向でのアプローチ「Run Better」と企業の成長と適応力を向上し、新たなサービスを生み出す革新性を実現するためのアプローチ「Run Difference」が必要となる。この2つの命題「デュアルマンデート」への取り組みが企業にとって重要である。

• 戦略の要はデータ。データはビジネスにとっての「聖杯」である。デジタル力の高い顧客には、データの収集、分析や活用を効率的に対応できることが条件となる。インド第2位の商用車メーカーであるアショック・レイランドは、会社全体にビジネスインテリジェンスの普及を徹底させ、データ主導型企業としての文化を築いた。変化し続ける市場環境に対して迅速な対応を実践するためには、素早い意思決定が必要である20。

• 革新的な新興企業はベストパートナー。破壊的な新興企業はベストパートナーである。彼らの存在を尊重しよう。伝統的な企業のリーダーは、あらゆる業界の新規参入者を観察しながら、アイデアを発想し、特定の分野における新たなビジネス手法を学んでいくべきである。観察した結果がすぐに利益につながるわけではない。しかし、デジタル化推進とそのための資金調達にはある種の創造性が必要だということを理解し、技術革新を進めていくことが非常に重要だ。その過程で企業が時間をかけて形成する関係やコネクションは想像以上に大きな価値を生むだろうという見解は、多くのエグゼクティブの回答者に高く評価されても、そのその考えを十分に取り込み、さらに実行に移したケースはまだ多くはない。

アジアが牽引する未来に向けて今後10年の間にビジネスは、デジタル化への過程で生まれ、その革新的なアイデアの発信源はアジアになるだろうと世界中のリーダー達が注目している。変化に敏感な人々は、巨額の利益を生むこの新たなデジタル化の波を無視できないことに気づいている。新しいデジタル世界における勝者達は、製品に対するイノベーション、顧客エンゲージメント、組織構造、戦略やビジネスモデルに対するあらゆる因習を覆していくだろう。リーダーに求められるのは、「必要に応じた対応」や「臨機応変な調達」といった一般的な「戦術」アプローチではなく、戦略的なデジタルビジョンに基づいて大規模な組織変革を積極的に行える人物である。新しい時代の幕開けは、ビジネスとテクノロジーが統合したものである。今のビジネス感覚を持つリーダー達は、事業価値の本質を見直すことができ、テクノロジー、ビジネスそしてグローバル経済に対して自分達のビジョンを持って変革する必要性を感じている。アジア太平洋地域のリーダー達は、デジタルの今後の展望を世界に示していくと同時に、ますます高まるデジタルへの期待に大胆かつ繊細に対応していかなければならない。

製品イノベーション、顧客エンゲージメント、組織構造、戦略、ビジネスモデルに対するあらゆる因習的な考え方が、この新しいデジタル世界における勝利者達によって覆されていくだろう。

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18 KEEP CHALLENGING 2015年12月

付録 1: 調査の手法

調査対象者についてコグニザントは、決定権を持つ314名の企業幹部と技術部門の責任者を対象に、2015年5月から7月まで調査を行った。回答者の業種は、銀行、保険、金融サービス、ヘルスケア、製造、輸送/ロジスティクス、メディア、エンターテイメント、通信、小売と広範囲にわたる。回答者の大半は、インド、中国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、インドネシア、香港などの企業運営責任者とその直属社員が占め、企業の利益率はさまざまである。なお、本調査で名前を挙げた企業は、当社の顧客企業以外も含まれている。

0 5 10 15 20%

製造 (消費財含む)

銀行、金融サービス、保険

小売 (卸売を除く)

輸送/ロジスティクス

ヘルスケア

エネルギー、公益事業

メディア、エンターテイメント、娯楽

通信

0

10

20

30

40

50

5,000から9,999名

10,000から14,999名

15,000名以上

2,000から4,999名

18%

50%

17% 15%

サンプル配布

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成長するアジア:加速するデジタル化 19

付録 2: 定義本調査では、調査対象企業の収益効果は201億USドルに達すると仮定したが、その仮定条件は下記のとおり。

• 本調査対象企業の加重平均利益率。> グローバル企業のアジア収益を考慮。

• 被調査者が回答した平均売上伸び率。平均売上伸び率には、売上純増率とコスト削減率が含まれる。

注:CodeHalo™isatrademarkofCognizantTechnologySolutions

脚注1 Naomi Canton, ”Disruptive Technologies Expected to Bring Massive Economic Boost to Asia,” Asia

House, Jan. 30, 2015, http://asiahouse.org/disruptive-technologies-expected-bring-massive-economic-boost-asia/.

2 “The Next Billion Consumers,” Schibsted Media Group, http://schibstedfuturereport.com/trend-report-the-next-billion-consumers/.

3 Yue Wang, “Asia To Be The Center Of The Second Gilded Age For Billionaires,” Forbes, May 26, 2015, http://www.forbes.com/sites/ywang/2015/05/26/asia-to-be-the-center-of-the-second-gilded-age-for-billionaires/.

4 Andrew Sheng, “Great Technology Transformation Comes to Asia,” Asia News Network, July 7, 2015, http://www.asianewsnet.net/Great-technology-transformation-comes-to-Asia-77690.html.

5 “More Amazons & Flipkarts in the offing? Many billion dollar e-commerce babies expected soon,” The Economic Times, Dec. 31, 2014, http://articles.economictimes.indiatimes.com/2014-12-31/news/57558167_1_e-commerce-market-kunal-bahl-internet-user-base.

6 Michael Sainsbury, “SingTel’s digital future takes shape,” Nikkei Asian Review, May 8, 2014, http://asia.nikkei.com/magazine/20140508-Asia-s-pull/Business/Singtels-digital-future-takes-shape.

7 “UNITED NATIONS E-GOVERNMENT SURVEY 2014,” United Nations, 2014, http://unpan3.un.org/egovkb/Portals/egovkb/Documents/un/2014-Survey/E-Gov_Complete_Survey-2014.pdf.

8 Bernard Leong, “The Executive Series: Start Your Company’s Digital Transformation with Three Key Strategy Principles,” SP eCommerce, http://www.specommerce.com/executive-series/digital-strategy-transformation/.

9 Atom Bank Web site, https://www.atombank.co.uk/.

10 “Commonwealth Bank Experiencing System Problems,” News.Com.Au, April 15, 2014, http://www.news.com.au/finance/business/commonwealth-bank-experiencing-system-problems/story-fnkjidjt-1226884936206.

11 “Putting the Experience in Digital Customer Experience,” Cognizant Technology Solutions, November 2014, http://www.cognizant.com/InsightsWhitepapers/putting-the-experience-in-digital-customer-experience-codex1180.pdf.

12 “50 Most Innovative Companies 2014,” BRW, http://www.brw.com.au/lists/50-most-innovative-companies/2014/.

13 Evan Schwarten, “Coles partners with GE Capital to enter the banking game,” Courier Mail, July 15, 2014, http://www.couriermail.com.au/business/coles-partners-with-ge-capital-to-enter-the-banking-game/story-fnihsps3-1226989312668.

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20 KEEP CHALLENGING 2015年12月

14 “Recoding the Customer Experience,” Cognizant Technology Solutions, http://www.cognizant.com/latest-thinking/code-halos.

15 “Mine of the Future,” RioTinto, http://www.riotinto.com/ironore/mine-of-the-future-9603.aspx.

16 Meenakshi Mehta, “How Asian Paints Digitally Transformed its Business,” Digiperform, April 2015, http://www.digiperform.com/asian-paints-digitally-transformed-business/.

17 “How DBS Develops Future-Ready Digital Leaders,” Journal of Office Workers, June 17, 2015, http://journalofofficeworkers.com/how-dbs-develops-future-ready-digital-leaders/.

18 Lim Yung-Hui, “40% of Global Mobile Data Traffic from Asia by 2016,” Forbes, Feb. 15, 2012, http://www.forbes.com/sites/limyunghui/2012/02/15/40-of-global-mobile-data-traffic-from-asia-by-2016-report/.

19 “Tesco Builds Virtual Shops for Korean Commuters,” The Telegraph, June 27, 2011, http://www.telegraph.co.uk/technology/mobile-phones/8601147/Tesco-builds-virtual-shops-for-Korean-commuters.html.

20 “How Ashok Leyland Built a Data-Driven Culture by Democratizing Business Intelligence Usage,” Dataquest, http://www.dqindia.com/how-ashok-leyland-built-a-data-driven-culture-by-democratizing-business-intelligence-usage/.

著者紹介(Manish Bahl)マニッシュ・バルコグニザントのCenter for the Future of Work in Asia-Pacificをリードするシニアディレクター。優れた洞察力を持ち、講演者としても人気が高いマニーは、その見識にあふれた助言とリサーチ手法により、数多くのフォーチュン500企業をサポートしてきた。現在は、コグニザントのCenter for the Future of Workで、アジアの新しいビジネス傾向と技術動向に対応した独自のリサーチと分析を行い、多くの先進的リーダーとともにビジネスの未来を模索している。インドのフォレスター・リサーチ社の副社長とカントリーマネージャーも務める。

メールアドレス: [email protected]

LinkedIn: https://in.linkedin.com/in/manishbahl

Twitter: @mbahl.

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22 KEEP CHALLENGING 2015年12月

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成長するアジア:加速するデジタル化 23

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コグニザントジャパン株式会社(本社)〒102-0084

東京都千代田区二番町3-4麹町御幸ビル2階

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WorldHeadquarters500FrankW.BurrBlvd.Teaneck,NJ07666USAPhone:+12018010233Fax:+12018010243

TollFree:+18889373277Email:[email protected]

コグニザント会社概要コグニザント(NASDAQ:CTSH)は、情報技術(IT)、コンサルティング、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)のサービスプロバイダとして業界を牽引し、より確かなビジネスを構築できるよう世界各国のクライアント企業をサポートしています。米国ニュージャージー州ティーネックに本社を置き、常に『フューチャー・オブ・ワーク』を探究し、これを体現する顧客満足度へのこだわり、技術革新、業界/ビジネスプロセスへの精通、グローバル感覚豊かで協力的なスタッフなど、さまざまな要素を融合させることで、より良いサービス提供を目指しています。

2015年12月末現在、各国100拠点を超えるグローバルセンターには221,700名の社員が在籍しています。対外的な評価として、当社はナスダック100指数ならびS&P500指数の構成銘柄にも組み入れられています。また、フォーブス誌「世界の優良企業2000社」やフォーチュン誌「世界上位500社」にランクイン、「最速成長の技術系企業25社」 および「好業績をあげた技術系企業」にも選出されています。詳細な会社情報については、www.cognizant.comをご参照ください。また、Twitter:@Cognizantでも情報を公開しています。

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