[農業列島] 「桃太郎ネクスト」 -...

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28 5 31 11536 3ha 18 ha 6 3ha ha ha 7ha 77 40 27 20 西8000西30 28 15 39 a12 30 27 24 aAうつのみやは、県のほぼ中央に位置する宇 都宮市を中心に、上三川町、下野市の一部(旧南 河内町)の2市1町が管内です。 米・麦を基幹作物として、イチゴ・トマト・ニ ラなどの園芸作物やナシ・リンゴなどの果樹、ブ ランド牛「宇都宮牛」などの多数の特産があり、大 消費地・宇都宮市を抱える恵まれた立地条件を生 かし、都市近郊型農業を行われています。 冬季の晴天が多く日照時間が長い気候が特徴で、 冬季間の野菜栽培が盛んです。その反面、気温は 低く1~2月は最低気温がマイナス6~10℃を記 録する日も多くあります。 [農業列島] 産地ルポ トマト 栃木県  Aうつのみや 地域概況 栃木県 群馬県 埼玉県 東京都 神奈川県 千葉県 茨城県 ・宇都宮市 Aうつのみや Aうつのみや ↑栽培後半の玉伸びが よく、果形もよい「桃 太郎ネクスト」。 Aうつのみやトマト専門部会の篠原弘一さん(左)と Aうつのみや営農部園 芸課主査の柴山将孝さん(右)。篠原さんの「桃太郎ネクスト」ハウスにて。 ~大都市に近い恵まれた立地を生かした都市近郊農業~ 2019 タキイ最前線 秋種特集号 23

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Page 1: [農業列島] 「桃太郎ネクスト」 - TAKII平成り桃太郎系を栽培されている産地です。プ」などです。古くから食味にこだわス桃太郎」 「ハウス桃太郎」

Aうつのみや

トマト専門部会

 JAうつのみやトマト専門部会の設

立は平成28年。これまで各作型ごとに

5つの専門部に分かれていたのが統合

され専門部会となりました。平成31年

現在の部会員数115世帯、総栽培面

積は36・3ha、春作(18‌

ha)、越冬作

(6・3ha)、半促成(3ha)、夏秋(2ha)、

抑制(7ha)と周年にわたってトマト生

産が行われています。

 春作での栽培品種は桃太郎系トマト

が77%、そのうちの約40%が「CF桃

太郎はるか」で、そのほか「CFハウ

ス桃太郎」「ハウス桃太郎」「桃太郎ホー

プ」などです。古くから食味にこだわ

り桃太郎系を栽培されている産地です。

平成27年より試作導入された「桃太郎

ネクスト」は桃太郎系全体の約20%程

度を占めるようになってきました。

 選果は管内西部と東部2カ所にある

選果場で行われ、出荷最盛期は4~6

月、最大で日量8000ケースの出荷

です。周年生産とともに、選果場を周

年稼働できることが同産地の強みです。

出荷先は西部選果場から車で30分圏内

の地元東一宇都宮を中心に京浜(東京

青果、東京シティ、多摩、大宮)など

で、地の利を生かし、地域密着型産地

として生産に力を入れておられます。

後半の小玉、軟化玉を

解消した「桃太郎ネクスト」

 平成28年にトマト専門部会の初代部

会長を務められた生産者篠原弘一さん

に、「桃太郎ネクスト」栽培について話

をお聞きしました。

 篠原さんは、15連棟と5連棟の栽培

総面積39aのハウスで12月末~6月の

出荷に取り組まれています。本作(平

成30年度)の栽培品種は「CF桃太郎

はるか」と「桃太郎ネクスト」で、「ネク

スト」は平成27年より導入。4作目に

あたる本年は24a栽培いただきました。

 これまで「CFはるか」「CFハウス桃

太郎」など栽培されてきた篠原さんは、

長期栽培対策として栽培後半の軟化玉

と小玉の少ない「ネクスト」を導入しま

した。

「『ネクスト』は従来種より玉がかたく、

後半に馬力があって、玉伸びも『CF

はるか』と比べてひと回り違いますね」

  Aうつのみやは、県のほぼ中央に位置する宇都宮市を中心に、上三川町、下野市の一部(旧南河内町)の2市1町が管内です。 米・麦を基幹作物として、イチゴ・トマト・ニラなどの園芸作物やナシ・リンゴなどの果樹、ブランド牛「宇都宮牛」などの多数の特産があり、大消費地・宇都宮市を抱える恵まれた立地条件を生かし、都市近郊型農業を行われています。 冬季の晴天が多く日照時間が長い気候が特徴で、冬季間の野菜栽培が盛んです。その反面、気温は低く1~2月は最低気温がマイナス6~10℃を記録する日も多くあります。

食味にこだわった伝統のトマト産地に

「桃太郎ネクスト」が導入

春作で栽培後半の安定した収穫を実現!

[農業列島]

産地ルポトマト

栃木県  Aうつのみや

地域概況

(編集部)

栃木県

群馬県

埼玉県

東京都

神奈川県 千葉県

茨城県

・ 宇都宮市AうつのみやAうつのみや

↑栽培後半の玉伸びがよく、果形もよい「桃太郎ネクスト」。

↑ Aうつのみやトマト専門部会の篠原弘一さん(左)と Aうつのみや営農部園芸課主査の柴山将孝さん(右)。篠原さんの「桃太郎ネクスト」ハウスにて。

~大都市に近い恵まれた立地を生かした都市近郊農業~

2019 タキイ最前線 秋種特集号 23

Page 2: [農業列島] 「桃太郎ネクスト」 - TAKII平成り桃太郎系を栽培されている産地です。プ」などです。古くから食味にこだわス桃太郎」 「ハウス桃太郎」

 特に5月の玉伸びと乱形果の少なさ

に評価をいただいています。

 課題点としては、厳寒期に低温にな

ると尖り玉が増えることで、「CFはる

か」に比べると1℃程度高めの温度で

管理をしなければなりません。しかし

ながら、

「低温伸長性は『CFはるか』が上回り

ますが、『ネクスト』は後半の玉伸びが

すごくよい。特に昨年の5月ごろはよ

かったと思います。作期を通してずっ

と大きい玉というのは難しいけど、後

半は1段4玉にすればそろったよい玉

ができる。重要なのは温度と樹のバラ

ンスだと思います」と篠原さん。暖房

代が高騰するなか、いかに温度管理を

うまくしてコストがかからないように

するかが課題とされています。

 「ネクスト」で収益を上げるには「早

植えは厳禁」「3段開花までは潅水は少

なめに」「厳寒期の摘葉は、展開葉数が

開花花房の下8枚くらい残るよう強め

に行う」「ト※

ップリーフ摘葉する」など

葉の管理をしっかりすることで、後半

の玉伸びがよくなると栽培の要点にあ

げられています。ただし、摘葉しすぎ

ると、果実が日焼けし小玉が増えるた

め、バランスをとることが重要だと説

明いただきました。

端境期の出荷で

差別化をねらう

 JAうつのみや営農部園芸課の柴山

将孝さんによると、

「本年、春トマトを栽培している生産

者を対象に食味調査を行ったところ、

『CF桃太郎はるか』『CFハウス桃太

郎』『ハウス桃太郎』『桃太郎ネクスト』

の4品種の中で『ネクスト』が一番おい

しいとの評価が出ました」食味に関し

てはこれまでの「桃太郎」系の中でも満

足のいくものと納得されています。

「大産地のJAやつしろさんが『桃太

郎』にこだわるということは、やっぱ

り食味を重視しているってことなんで

すよ」と篠原さん。同地の生産者には、

共選のほかに直売所出荷など個人の販

売ルートをもっている人も多く、食べ

た人の感想を聞く機会の多い生産者ほ

ど「桃太郎」の食味のよさを認めてい

ると味に対する信頼を寄せてください

ました。

 今後、産地としては6月下旬~7月

定植の抑制作の拡大を考えています。

抑制作には現在「CFはるか」「桃太郎

グランデ」「桃太郎ピース」に一部の他社

品種を使われていますが、今年は「ネ

クスト」を加える予定です。

「出荷期をずらして出荷量の少ない時

期に安定出荷することで収益を上げた

い。大産地が出荷する前の時期をねら

いたいですね」と篠原さん。量質とも

に高いものを維持しながら、端境期出

荷に取り組むという戦略で競争力を高

めたいと産地の熱意をのぞかせておら

れました。

↑篠原さんは長期どりをするために定植を10月1日と10月25日ごろの2回にずらして行われている。出荷は12月末~6月まで行う。

↑出荷箱に詰められた「桃太郎ネクスト」。果実のそろい、色つやが美しい。

→「すごく乾きやすい圃場なのでいかに水を切らさず管理するかがポイント」と篠原さん。潅水、温度、草勢など管理の工夫を凝らして高品質のトマト栽培に取り組まれている。

↑ Aうつのみや東部選果場は4つのレーンで選果を行う大規模選果場。7~11月はトマトと並ぶ宇都宮の名産であるナシの選果が行われている。

↑取材当日は本誌「促成トマト栽培のキモ」筆者大竹勝次先生(中央)にもお会いした。井上選果場長(左)、柴山さん(右)とともに。「ネクスト」について、「玉伸び、草勢がよく、玉が大きく育ち色回りもよい。産地にうまく根づけば長く使われる品種になるのでは」と評価いただいた。

※トップリーフ摘葉…果房の裏の葉を摘葉すること

24 2019 タキイ最前線 秋種特集号