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- - 19 子どもの自己学習力を育てるための 生活科の指導と評価に関する研究 ルーブリック評価を取り入れた学習過程の工夫を通して 長期研修員 内田 厚子 研究の概要 本研究は,小学校2学年の生活科において,問題解決的な学習過程にルーブリック評価を取り入れ ることによって 子どもの自己学習力を育成することをねらいとした指導と評価に関する研究である 具体的には,ルーブリックをもとに子どもが自己目標をもち,目標に向かって活動し振り返る中で自 己評価能力を高めるとともに,子どもの学習状況を把握し個に応じた指導の充実を目指したものであ る。 キーワード 自己学習力 生活科 ルーブリック評価 自己目標 自己評価能力 個に応じた指導 町探険 1 主題設定の理由 (1)子どもたちを取り巻く状況から 高度情報化 核家族化 少子・高齢化などの進展は 急激な社会変化をもたらし いじめや不登校 学級崩壊,犯罪の低年齢化など,様々な現象を生み出している。 このような状況の中,児童生徒に「生きる力」をはぐくむことを目指し,自ら学び自ら考えること を重視した学習指導要領が 平成14年度に全面実施となった 児童生徒の学力の現状については ,「 際数学・理科教育調査(国際教育到達度評価学会( )調査 (平成11年 生徒の学習到 IEA OECD )」 ), 達度調査( ) (平成12年 「学校教育に関する意識調査(文部科学省 (平成15年)等の結果か PISA ), )」 ら,国際的にみて成績は上位にあるものの,学習意欲が必ずしも高くないこと,学校の授業以外の勉 強時間が少ないことなどの傾向が指摘されている。また,学力に関連して自然体験・生活体験など子 どもの学びを支える体験が不足し,人や物とかかわる力が低下していることも明らかになっている。 私自身の経験からも,文字や数字の読み書きを習得して入学してくる子どもが多いのに対して,友 達とかかわったり,自分から問題を解決しようとする力が弱いと感じることが多い。 「生きる力」をはぐくむためには,これからの学校教育において,具体的な知識や技能はもちろん のこと,学ぶ意欲とともに,自ら課題を見つけ,自ら学び自ら考え,よりよく問題を解決する資質や 能力の育成を目指した指導が必要であると考えられる。 (2)学習指導要領から 教育課程審議会の答申(平成10年7月)における生活科の改善の基本方針は,次のように示されて いる。 ①児童が身近な人や社会,自然と直接かかわる活動や体験を一層重視する。 ②直接かかわる活動や体験の中で生まれる知的な気付きを大切にする指導が行われるようにする。 ③各学校において,地域の環境や児童の実態に応じて創意工夫を生かした教育活動や,重点的・弾力 的な指導が一層活発に展開できるようにする。

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子どもの自己学習力を育てるための

生活科の指導と評価に関する研究

- -ルーブリック評価を取り入れた学習過程の工夫を通して

長期研修員 内田 厚子

研究の概要本研究は,小学校2学年の生活科において,問題解決的な学習過程にルーブリック評価を取り入れ

, 。ることによって 子どもの自己学習力を育成することをねらいとした指導と評価に関する研究である

具体的には,ルーブリックをもとに子どもが自己目標をもち,目標に向かって活動し振り返る中で自

己評価能力を高めるとともに,子どもの学習状況を把握し個に応じた指導の充実を目指したものであ

る。

キーワード自己学習力 生活科 ルーブリック評価 自己目標 自己評価能力 個に応じた指導 町探険

1 主題設定の理由(1)子どもたちを取り巻く状況から

, , , , ,高度情報化 核家族化 少子・高齢化などの進展は 急激な社会変化をもたらし いじめや不登校

学級崩壊,犯罪の低年齢化など,様々な現象を生み出している。

このような状況の中,児童生徒に「生きる力」をはぐくむことを目指し,自ら学び自ら考えること

を重視した学習指導要領が 平成14年度に全面実施となった 児童生徒の学力の現状については 国, 。 ,「

際数学・理科教育調査(国際教育到達度評価学会( )調査 (平成11年 「 生徒の学習到IEA OECD)」 ),

達度調査( ) (平成12年 「学校教育に関する意識調査(文部科学省 (平成15年)等の結果かPISA 」 ), )」

ら,国際的にみて成績は上位にあるものの,学習意欲が必ずしも高くないこと,学校の授業以外の勉

強時間が少ないことなどの傾向が指摘されている。また,学力に関連して自然体験・生活体験など子

どもの学びを支える体験が不足し,人や物とかかわる力が低下していることも明らかになっている。

私自身の経験からも,文字や数字の読み書きを習得して入学してくる子どもが多いのに対して,友

達とかかわったり,自分から問題を解決しようとする力が弱いと感じることが多い。

「生きる力」をはぐくむためには,これからの学校教育において,具体的な知識や技能はもちろん

のこと,学ぶ意欲とともに,自ら課題を見つけ,自ら学び自ら考え,よりよく問題を解決する資質や

能力の育成を目指した指導が必要であると考えられる。

(2)学習指導要領から教育課程審議会の答申(平成10年7月)における生活科の改善の基本方針は,次のように示されて

いる。

①児童が身近な人や社会,自然と直接かかわる活動や体験を一層重視する。

②直接かかわる活動や体験の中で生まれる知的な気付きを大切にする指導が行われるようにする。

③各学校において,地域の環境や児童の実態に応じて創意工夫を生かした教育活動や,重点的・弾力

的な指導が一層活発に展開できるようにする。

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新教育課程における生活科では,基礎的・基本的な内容が一人一人の子どもに確実に身に付くよう

にするとともに,子どもたちの主体的・創造的な学びが発展していくように創意工夫することが求め

られているのである。そのためには,子ども一人一人が自らの思いや願いの実現を目指して活動する

中に,自ら学び自ら考え,よりよく問題を解決する学習指導を重視すること,また,子どもが自己目

標を設定した上で,学習の振り返りと目標の再設定を行う形成的評価に一層力を入れる必要があると

考えられる。そうすることで,生活科の究極的な目標である「自立への基礎を養う 」ことを目指し。

たいと考える。

(3)生活科の授業実践から

今までの生活科の授業実践において,子どもたちが自然や人と触れ合い,生き生きと活動し,達成

感を味わうような単元構成の工夫を心がけてきた。しかし,子どもたちが活動を楽しむ姿に目を奪わ

れ,その時間の中で育てたい力を養うための評価方法が不十分であったと思える。自分自身の生活科

での実践を振り返り,以下のような課題をもった。

①子どもたちが学びを振り返るため,また,教師自身が子どもたちの気付きを見取るために自己評価

を行ってきたが 「楽しかった 「がんばった 」など単にその時間の活動を反省するだけにとど, 。」 。

まり,次への目標や課題へとつながるような自己評価ではなかった。

②評価規準を作成したが,単元の目標の明確化,つまり,どのような力を育てたいか,どこまで子ど

もを高めたいかの設定が不十分であったため,指導に生かせる評価規準とならなかった。

これらの課題を解決するためには,子どもたちに課題に対する目標を明確にもたせ,問題をよりよ

く解決していく力を育成するような学習過程の工夫と指導が必要であると考える。また,子どもが自

らの学習状況に気付いて自分を見つめ直すきっかけとなり,その後の学習や発達を促すような工夫を

することが重要だと考える。これらの考えから,学習目標や評価規準をさらに具体化しためやすとし

て,わかりやすい記述で,分析的,段階的に示したルーブリックを作成し,活用することで,学習指

導と評価の工夫・改善を図りたいと考える。

(4)個に応じた指導の充実から

平成15年10月,中央教育審議会から「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善

方策について」の答申が出され,個に応じた指導の一層の充実が求められることとなった。一人一人

の思いや願いに応じて活動を展開する生活科においては 「個に応じた指導の充実」がきわめて重要,

な課題である。個に応じた指導を行うには,子ども一人一人の学習状況を適切に把握し,その状況に

あった指導や支援が行われることが必要となる。また,子ども自身が自らの課題やつまずき,あるい

は到達状況を把握していることが大切である。

本研究においては,子どもが主体的に活動する問題解決的な活動を重視した学習過程の中にルーブ

リック評価を取り入れる。また,一人一人が自己目標を設定し,自らの学びを振り返る活動を取り入

れることで個々の成果や取り組むべき課題を把握し,個に応じた指導の充実を図りたいと考える。

2 研究のねらい

小学校生活科において,子どもの自己学習力を育成するために,ルーブリック評価を取り入れた指

導モデルを作成し,学校現場での実践に役立てる。

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3 研究の基本的な考え方

(1)自己学習力について

①生活科における自己学習力

国立教育政策研究所の高浦勝義氏は 「生きる力を育てる上から,教師の支援を得ながら,児童生,

徒が問題解決力,すなわち,自分で学習目標を決め→そのための計画を立て→友達と協力しながら自

己追究し,その問題解決の過程で絶えず自己の活動の過程及び成果を学習目標に照らして評価し→や

がて解決に至るという自己学習力が大切である 」と述べている。このことから,これからの学校教。

育において,子どもたちに自己学習力を育成することは,生きる力の育成という観点からも重要であ

るということが言える。

上越教育大学の木村吉彦氏は 「自己学習力こそ,生活科において身に付けることが望まれる学力,

である 」と提案し 「 具体的な活動や体験=問題場面の解決活動』を通して生活自立者としての基。 ,『

礎を養う生活科において 『子どもの問題場面の解決能力=自己学習力』の発達を促すことが重要で,

ある 」と生活科における自己学習力の重要性について述べている。また,生活科で育てたい力につ。

いて,福岡教育大学の寺尾慎一氏が 「自ら進んで考え,判断し,行動できる力 「表現する力 「追, 」 」

究する力 「自分を振り返る力」などをあげていることから,主体的な学習を重視する生活科におい」

て自己学習力を育成することは,大変重要であると考えることができる。

本研究においては,これらの考えを取り入れ,生活科における自己学習力を「具体的な活動や体験

を通す中で,子どもが自ら問題に気付き,自ら学び自ら考え,よりよく問題を解決しようとする力」

と定義付ける。そして,次の4つの力を「自己学習力を支える力」と位置付け,生活科において自己

学習力を身に付けた子どもの育成を図りたいと考える。

(表1) 自己学習力を支える力

身の回りの人々,自然,社会に興味・関心をもち,自分の思いや願いに基づ課題を発見する力

いて,課題を発見する力 「これなんだろう 「やってみよう 」など。。 。」 。

, 。 ,追究する力 対象と繰り返しかかわり こだわりをもって活動する力 自分が努力すれば

あるいは自分でよく考えてみれば解決が得られそうだという見通し,実行す

る力 「どんなふうにやろうか 「こんなふうにやるとできそうだ 」など。。 。」 。

自分の思いや願いを大切にして取り組んだ活動を振り返り,絵や文,劇やペ表現する力

ープサートなど自分なりの方法でまとめ,表現する力 「こんなことをはっ。

けんしたよ 「こんなことがわかったよ 」など。。」 。

活動や体験を振り返り,自分の学習の成果や課題を感じ取って次の学習へつ自分を振り返る力

。「 。」「 , 。」なげる力 こんなことができたよ つぎは こんなことをがんばりたい

など。

②自己学習力の育成と自己評価能力について

早稲田大学の安彦忠彦氏は 「学ぶ力を自己学習力の意味でとらえると,自己評価活動がその育成,

の上で必要不可欠なものだ 」と主張している。さらに 「自己学習力には,自分で目標を決める力。 ,

が必要であり,それには自分で現在の力を正確に評価する力,すなわち自己評価能力が身に付いてい

。」 。 , , ,なければならない とも述べている また 大阪教育大学の松本勝信氏は 新しい自己評価として

「今までの授業の終わりに行っていた『今日の授業は楽しかったですか 『がんばりましたか 』と。』 。

いう受動的な評価に対して,生活科あるいは総合的な学習の時間においては,自分はこの授業でここ

までがんばりたいと目標を決める,実際に活動をして取り組みを振り返る,その振り返りから新しい

目標を立てるという能動的自己評価が大切である 」と述べている。。

以上のような考え方から,自己学習力の育成には,自ら目標を立て,自らの学びを振り返り,新た

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な目標を設定する自己評価能力の育成が重要であると考えられる。

本研究においては,子どもが自ら問題を解決していく学習過程において,ルーブリックをもとに自

己目標を設定し,活動を振り返り,新たな目標を設定するという自己評価を繰り返し行うことにより

自己評価能力を高め,自己学習力の育成を図りたいと考える。

(2)ルーブリックについて

①ルーブリックとは

「ルーブリックとは,学習指導(学習活動)の結果,どの程度の成果があがったかを評価するため

の評価指標を意味している。形式としては質の善し悪しを示す数段階の尺度( )と,それぞれのscale段階における典型的な状態( )を説明する記述からなる (平成15年度山梨県総合教育セperformance 。」

ンター研究紀要 。ルーブリックは,各段階における子どもの状態をより具体的に表記し誰がみても)

判定が一致するようにすること,教員と児童生徒が共有すること,作成に児童生徒も何らかの形でか

かわることを特徴としてもつ「具体的な評価規準表」であると見なすことができる。

ルーブリックを作成し活用する利点として,主観や印象で評価されがちな態度や技能がより客観的

に評価できるようになるとともに,児童生徒が自己の到達目標を客観的に把握し,明確な目標をもっ

て学習活動に取り組むことができるという点があげられる。また,形成的な評価にルーブリックを活

用することにより学習意欲が高まり,自己学習力の育成につながると考える。

②本研究とルーブリック

子どもたちが生活科の学習において,自己学習力を育成することの重要性は前述した通りである。

しかし,低学年の段階で,初めから自己学習力を身に付けることは困難である。高浦氏は,プケット

らの提唱する「足場づくり」の考え方をもとに 「最初のうちは教師が主導し,徐々にその関与の度,

合いを減らし,やがて児童生徒が一人で科学的な問題解決及び評価を営むように配慮することが大切

である 」と述べている。。

この点に注目して,本研究では,図1で示したように,まず,第1ステップとして,目標の段階を

示したルーブリックを子どもが意識して学習活動及び評価活動を展開する段階を設ける。次に,第2

ステップとして,教員と子どもが共有したルーブリックの中から自己目標を選択し,その実現に向け

た学習活動を展開し,その成果及び課題を振り返り,新たな目標をもつ。さらに,第3ステップとし

て,子どもと教員が話し合いで作成したルーブリックをもとに,自己目標を設定する。自己目標を意

識しながら課題を追究し,どの程度実現できたかを振り返り,次への目標をもつ。このような3つの

ステップを踏むことで,低学年におけるルーブリックを活用した自己学習力の育成を図りたい。

図1)3つのステップ(

第1ステップ 第2ステップ 第3ステップ

自己評価する場合 「よくで 教員と子どもが共有したル 教員と子どもが話し合いで作,

きた 「できた 「もうひとい ーブリックの中から,自分 成したルーブリックをもとに,子 」 」

き」のそれぞれに関するルー の活動目標を選択する。目 自己目標を設定する。自己目ど

ブリックをあらかじめ理解 的意識をもって学習に臨み 標を意識しながら課題を追究も ,

し,意識しながら活動して, どの程度実現できたかを振 し,どの程度実現できたかを

自己評価をする。 り返り 次への目標をもつ 振り返り,次への目標をもつ。, 。

教師の意図が伝わるようなコメント,対話や問いかけ,肯定的評価員

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(3)学習過程について学習過程については,高浦氏の考えをもとに,子どもの主体的な学習を促すために,自ら問題を発

見し,自分なりに考え追究することで問題を解決していけるような学習過程をあてはめる。その学習

過程は 「つかむ 「見通す 「追究する 「まとめる」の4つの段階とする。また,生活科の「対象, 」 」 」

と繰り返しかかわる」という特性を生かして,わかったことをまとめ,発表した中から,また新たな

課題をつかむという学習過程の繰り返しを図りたいと考える。

(表2)問題解決的な学習過程

つかむ 対象(身の回りの人々・自然及び社会)との出合い。

対象に興味・関心をもち,自分なりの思いや願いに基づいて課題を決める。見通す 自分でよく考えてみれば何らかの解決が図れそうだという見通しをもつ。

活動方法,手順,活動に必要な道具や材料を考える。

追究する 対象と繰り返しかかわり,こだわりをもって夢中で活動に取り組む。自分なりの方法で,実際に解決を図る。

まとめる 活動を振り返り,発見したことやわかったことをまとめ,気付きを深める。

絵や文,劇やペープサートなど自分なりの方法で発表する。

各段階でルーブリック評価を取り入れ,子どもと教員が評価基準を共有して学習を進めていく。教

員の指導のもと,子ども自身が自己目標を設定し,自己評価し,次への目標を設定するような学習活

動と形成的評価を展開することによって本研究の主題に迫りたいと考える。

4 研究の目標

小学校2学年の生活科において [1]の学習過程に [2]のルーブリック評価を取り入れるこ, ,

とにより [3]のような自己学習力の育成を図る指導モデルを作成する。,

[2]ルーブリック評価[1]学習過程

(つかむⅠ~見通すⅠ)つかむ 第1ステップルーブリックをあらかじめ理解し,対象との出合い意識しながら活動して,自己評価す対象に興味・関心をもち課題を発見する。る。見通す

( )活動方法,手順,活動に必要な道具や材料を 第2ステップ 追究するⅠ~まとめるⅠ

教員と子どもが共有したルーブリッ考える。クの中から,自分の活動目標を選択追究するし,振り返り,次の目標をもつ。対象と繰り返しかかわり,こだわりをもって

(つかむⅡ~まとめるⅡ)夢中で活動する 自分なりの方法で解決する。 。 第3ステップ教員と子どもが話し合いで作成したまとめるルーブリックをもとに,自己目標を活動を振り返り,発見したことやわかったこ

, , 。とを自分なりの表現方法でまとめ 発表する, 。 設定し 振り返り 次の目標をもつ

[3]生活科における自己学習力

<自己学習力を支える力>・・対象に興味・関心をもち,自分なりの思い自己学習力 ①課題を発見する力や願いに基づいて課題を発見する力。

対象と繰り返しかかわり,こだわりをもっ具体的な活動や体験 ②追究する力・・・・て活動する力。解決を得るための見通しやを通す中で,自ら問実行力。題に気付き自ら学び自分の思いや願いを大切にして取り組んだ自ら考え,よりよく ③表現する力・・・・・活動を振り返り自分なりの表現方法でまと問題を解決する力め発表する力。

活動や体験を振り返り自分の学習の成果や④自分を振り返る力・・課題を感じ取って,次の学習へとつなげる

力。

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5 研究の方法と内容

(1)研究の方法

①開発の方法

開発の目標に基づいて指導モデルの作成を行い,教育工学的研究法により,試行,評価,改善を行

って目標を達成する。

②指導モデル作成の手順について

ア 目標の検討 イ 情報収集・教材研究

ウ モデルの形態と指導時数の検討 エ 指導計画案の作成

オ 指導細案の作成 カ 指導資料・評価資料の作成

③第一次,第二次評価

教育工学的研究法による各評価段階において (表3)に示した評価項目の観点に基づき,3段階,

評価(A:現状でよい・B:改善の余地あり・C:全面改善)で評価し,すべてがA評価になるよう

に開発する。第一次評価は作成者が,第二次評価は作成者と研究協力員により行う。

(表3) 指導モデルの評価項目

評価項目 評 価 の 観 点

目 標 単元目標,本時の目標が子どもの発達段階を考慮したものか。

生活科の目標が達成できるものであるか。

指導計画 本時の指導内容が,子どもの自己学習力を育てるために有効であるか。

学習過程は適切であるか。

子どもが見通しをもって追究できる内容であったか。

学習活動及び 教師の指導・支援のあり方が明確であったか。

指導法 教師の指導・支援は,子どもの学習意欲を高めるために有効であったか。

子どもの主体的な活動を促すような,指示・発問をしているか。

ルーブリックは,教師と学習者が共有するものになっているか。

ルーブリックは,子どもにも用語を理解できるものになっているか。

評 価 ルーブリック評価は,現場で加除修正することにより,実際の評価に使えるも

のになっているか。

ルーブリック評価を用いる箇所は適切であるか。

ルーブリック評価は自己学習力を育てるために有効であるか。

資 料 学習カードは単元の目標を達成するために有効な内容であるか。

パワーアップカードは,子どもにとって活用しやすいものであったか。

④第三次評価

ア 評価の方法

第三次評価は,指導モデルを試行し (表3)の評価項目とエの検証資料に基づいて実施す,

る。

イ 試行対象学級 塩山市立松里小学校 第2学年 1学級30名

ウ 試行の期間 平成16年10月上旬~11月中旬 全20時間 事前・事後各1時間 計22時間

エ 検証資料

(ア)事前に収集する資料 ・イメージマップ ・自己学習力にかかわるアンケート

(イ)授業で収集する資料 ・イメージマップ ・パワーアップカード ・児童の作品

・授業観察記録

・自己学習力にかかわるアンケート ・学びの足あと

(ウ)事後に収集する資料 ・保護者の感想 ・パワーアップカードに関する事後調査

(2)研究の内容①単元名 「それいけ わくわく たんけんたい!」

②単元の目標

町探険を通して,自分たちの生活は,地域の様々な人や場所,自然とかかわっていることがわかる

とともに,それらに親しみをもち適切な接し方を身に付け,見つけたことや気付いたことを自分なり

の方法で表現し,友達に紹介することができる。

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③内容のまとまりごとの評価規準ア 生活への関心・意欲・ 態度 イ 活動や体験についての思考・表現 ウ 身近な環境についての気付き

地域の人々や様々な場所に親しみをもって 地域の人々や様々な場所と適切にかかわる 自分たちの生活は,地域の人々や様々

かかわり,自分の生活を広げようとしてい ことや 安全に生活することについて考え な場所とかかわりをもっていることが, ,

る。 〔内容3〕 それを表現することができる 内容3 わかっている。 〔内容3〕。〔 〕

身近な自然を観察したり,季節や地域の行 季節の変化や季節に応じて,自分たちの生 季節の変化や季節によって生活の様子

事にかかわる活動をしようとしたりしてい 活を工夫したり楽しくしたりできる。 が変わることに気付いている。

る。 〔内容5〕 内容5 〔内容5〕〔 〕

④単元の評価規準ア 生活への関心・意欲・ 態度 イ 活動や体験についての思考・表現 ウ 身近な環境についての気付き

町の人々や様々な場所,自然などに関心を 町の人々に接したり,自然とかかわったり 町の様々な場所や自然,人々の様子と

もち,進んで探険し,新たなものを発見し するとともに,見つけたことや気付いたこ 自分たちの生活のかかわりに気付き,

たり多くの人々とかかわりをもったりする とを自分なりの方法でまとめ,紹介するこ 愛着のある場所や人が増えたことがわ

ことができる。 とができる。 かる。

学習活動における具体的な評価規準⑤十分満足できる おおむね満足できる Bに到達させるための支援A B

①身近な自然や町の様子に関心をもち ①身近な自然や町の様子に関心をもち,秋 ①春や夏とは違う自然の様子に目が向

自分から進んで秋を探している。 を探している。 くよう言葉がけをする。

②どこへ探険に行きたいか自分の思い ②どこへ探険に行きたいのか自分の思いや ②友達の話を聞く中で,自分の探険し関

や願いをもち,意欲的に探険の計画を 願いをもち,探険の準備をしている。 たい場所が決められるように促す。心

立てたり準備をしたりしている。・

③安全に常に注意し,目的や約束を意 ③安全に気を付け,約束を守って友達と仲 ③町探険のめあてや約束を振り返ら意

識しながら協力して町探険をしようと 良く町探険をしようとしている。 せ,安全について自分で考えるように欲

している。 促す。・

④あいさつをしたり,自分から話しか ④あいさつをしたり,話しかけられたこと ④あいさつをしたり,返事ができたり態

けたりして,地域の人と積極的にかか に返事をしたりして,地域の人とかかわろ するように支援する。度

わろうとしている。 うとしている。

①町探険に行きたい場所を理由をつけ ①町探険に行きたい場所を決めることがで ①友達の行きたい場所を参考に,自分

て決めることができる。 きる。 の行きたい場所が決められるように助

言する。思

②自分の考えを述べながら行き先や持 ②友達と話し合いながら,町探険の計画を ②計画を立てる話し合いや準備のため考

ち物を考えたり,探険の約束を考えた 立てたり,持ち物の準備をしたりすること の活動に参加するように,具体的な指・りして見通しをもった準備ができる。 ができる。 示を与える。表

③探険して発見したことを,自分なり ③探険して発見したことを,自分で考えた ③友達の作品や演技を見せたり,表現現

に考えた方法で,わかりやすく表現す 方法で表現することができる。 の方法を提示したりし,表現方法が考

ることができる。 えつくよう支援する。

①町にみられる植物や生き物や,暮ら ①町にみられる植物や生き物や,暮らしの ①友達の表現したものを見せて,どん

しの変化に細かく気付くことができる 変化に気付くことができる。 なことに気付いたか振り返らせる。。

②町にはたくさんの楽しい所や不思議 ②町には楽しい所や不思議なもの,いろい ②自分のかかわった人々や場所を思い気

なもの,いろいろな人々が生活し,そ ろな人々が生活することに気付くことがで 出させ,町には楽しいところや不思議付

の様子に気付くことができる。 きる。 なものがあることに気付かせる。き

③自分たちの生活は,地域の人々や様 ③自分たちの生活は,地域の人々や様々な ③探険カードをみて,町にはいろいろ

々な場所とかかわっていることがわか 場所とかかわっていることがわかる。 な場所があり,いろいろな人がいたこ

り,愛着のある場所が増えたことに気 とに気付かせる。

付いている。

⑥単元の指導評価計画

ア 評価の観点の表記方法 評価欄の<>は3観点(観点別評価)

<関> 生活への関心・意欲・態度 <思> 活動や体験についての思考・表現

<気> 身近な環境についての気付き

イ 育てたい力の視点についての表記方法

【課題を発見する力】 発見 【追究する力】 追究 【表現する力】 表現

( ) ( )【自分を振り返る力】 自己 本研究の手だて 学習カード 学 パワーアップカード パ

学習活動と内容 教師の指導・支援 評価の観点と方法過程 時間

, ,1 ①春の探険を想起する。 ・春の探険を想起した後 秋の探険に向け

②本時の学習活動を確認する。 松里地区に広く目を向けるように興味・

里の”すごい”をさぐれ!] 関心を喚起させる。つ [まつ③パワーアップカードを見て,今日の目標 ・パワーアップカードを提示し,ルーブリ

を意識する。 ックを意識させる。か④3年生から,2年生の時の探険の話を聞 ・3年生から昨年の探険の様子を実際に聞 自分たちの住んでいる地域

き もっと知りたいことなどを質問する くことで,探険への意欲をもつ。もっと や探険に興味をもとうとしむ , 。

⑤屋上に上がって,松里の様子を眺める。 知りたいことを質問するように促す。 ている。<関>①(学1)

⑥探険に行きたいと思った所を書く。 ・自分が意識した目標を想起させ,それに 活動を振り返ることができⅠ⑦パワーアップカードで振り返る。 照らして振り返るようにさせる。 る (パ1) 自己。

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⑧次の時間までに,松里のおすすめの場所 ・次時までに,家の人から松里地区の友達

, 。や人,ものを調べてくる。 に紹介したい場所などを聞き 発表する

①本時の学習活動を確認する ・聞いたこと,調べたことをもとに探険に どこへ探険に行きたいのか1[ に行きたい場所を決めよう] 行きたい場所を決めることを伝える。 自分の思いや願いをもつ。たんけん

②パワーアップカードを見て,今日の目標 ・パワーアップカードを提示し,今日の目 <関>②(観察 (学2))

を意識する。 標とルーブリックを意識させる。 町探険に行きたい場所を決

③松里地区のおすすめの場所や人,ものを ・松里地区には自分たちの知らないおすす めることができる。<思>

発表し合う。 めの場所がたくさんあることを知る。 ①(学3)

④町探険に行きたい所を決める ・探険したいところが同じ子ども同士でグ 発見

⑤探険隊のグループを作る。 ループを組むようにする。

⑥パワーアップカードで振り返る。 ・自分が意識した目標を想起させ,それに 活動を振り返ることができ

照らして振り返るようにさせる。 る (パ2) 自己。

本時の学習活動を確認する。 ・冒険ではないこと,いい探険にするため 友達と話し合いながら町探1 ①

たんけんの作せん会ぎをひらこう!] に作戦を立てることを伝える。 検の計画を立てたり,持ち[②パワーアップカードを見て,今日の目標 ・パワーアップカードを提示し,今日の目 物の準備をしたりすること

。 ( )を意識する。 標とルーブリックを意識させる。 ができる <思>② 観察

③探険隊ごとに探険の作戦会議を開く。 ・隊長を中心に,探険に必要なことを出し 学3 パ3 追究( )( )

・持ち物 ・約束 合いながら相談していくように促す。

・係 ・準備するもの

④パワーアップカードで振り返る。 ・自分が意識した目標を想起させ,それに見対してして活動を振り返らせる。

⑤友だちのよかったところを見つけて付箋 ・相互評価をすることで友だちのいところ

に書いて渡す。 自分のいいところに気付かせる。通①本時の学習活動を確認する。 ・探険に向けて,今日話し合うことは何か 友達と話し合いながら町探1たんけんの作戦会議・パートⅡ] を明確にする。 検の計画を立てたり,持ち「

②パワーアップカードを見て今日の目標を ・パワーアップカードを提示し,今日の目 物の準備をしたりすることす。 ( )意識する。 標とルーブリックを意識させる。 ができる <思>② 観察

③探険隊ごとに作戦会議を開く。 ・前時の反省を生かし,いい探険にするた (学3) 追究

・道順と時間 ・危険な場所 めに,自分の考えを言ったり人の意見もⅠ・町の人への接し方 取り入れたりするよう,探険隊ごとに支

④話し合ったことを発表する。 援する。

・春の探険を想起しながら,マップをもと

, 。にコース 時間などを考えるように促す

・安全についても確認する。

⑤パワーアップカードで振り返る。 ・自分が意識したルーブリックを考えなが 活動を振り返ることができ

ら活動を振り返る。 る (パ4) 自己。

①本時の学習活動を確認する。3町たんけんにレッツ・ゴー!] 安全に気をつけ,約束を守[

②パワーアップカードをもとに,自分の ・パワーアップカードをもとに,自分の目 って友だちと仲良く町探険追目標を選択する。 標を選択させる。 しようとしている。<関>

③町探険に出発する。 ・出発する前に,帰校の時間や前時に決め ③(観察)

・見つけたこと,わかったこと,聞い た約束について再度確認する。 あいさつをしたり 話しか究 ,たことなどをカードに記録する。 ・探険している子どもの様子を観察したり けられたことに返事をした,

安全の確保をしたりするため, ・ や保 りして,地域の人とかかわT T護者サポーターが各グループに1名ずつ ろうとしている。<関>④す付いていく。 (観察)

・町の人々とあいさつをしたり,わからな 町には楽しい所や不思議な

いことを教えてもらったりすることで, もの,いろいろな人が存在る町の人と子どもたちが親しみ,かかわっ することに気付く。<気>

ていくようにする。 ③ 学4 学5 追究( )( )

Ⅰ④パワーアップカードで振り返り,次への ・自分が意識したルーブリックを考えなが 活動を振り返ることができ

目標を立てる。 ら活動を振り返り 次の目標をもたせる る (パ5) 自己, 。 。

①本時の学習活動を確認する。 ・探険してわかったこと,見つけたことを2見つけたことをじょうほうこうかん] 知らせたいという思いを生かす。ま [

②パワーアップカードの中から,自分の目 ・パワーアップカードをもとに,自分の目

標を設定する。 標を選択させる。

③探険して気が付いたこと感じたことなど ・探険で発見したこと,感動したことを絵 探険して発見したことを自とを自分なりの方法でまとめる。 や文,ペープサート,紙芝居など自分な 分で考えた方法で,表現す

。 )④まとめたことを発表し合い,もっと知り りの方法でまとめるように助言する。 ることができる <思>③

たいこと聞きたいことは質問する。 ・友達の発表を聞いて,もっと知りたいこ 追究めとや聞きたいことを質問し合うことで次

の探険への必要性に気付かせるようにす

。 , 。る る 発表後 学習カードは掲示しておく

・友達の発表のよかったところを見つけて

伝えるようにする。

Ⅰ・自分の活動を振り返る。評価が低かった

子どもには原因について,十分満足だっ 活動を振り返ることができ

⑤パワーアップカードで振り返り,次への た子どもにはよりよくするためにはどう る (パ6 (パ7)。 )

目標を立てる。 すればいいかについて対話し支援する。 自己

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- -27

①本時の学習活動を確認する。 ・1回目の探険や友達の発表を想起させ, 友達と話し合いながら探険3[パワーアップ大作戦!2回目の探険に もっと見たい聞きたい,行ってみたいと の計画を立てたり,持ち物

行く計画を立てよう ] いう子どもの思いを引き出す。 の準備をしたりすることがつ 。

②パワーアップカードの中から,自分の目 ・パワーアップカードをもとに,自分の目 できる。<思>②(学6)か標を選択する。 標を選択させ,意識しがら活動するよう (学7) 追究む

③1回目の探険をもとに,2回目の探険に に助言する。Ⅱ行く計画を立てよう。 ・さらに知りたいことや,やってみたいこ・・探険に行きたい場所を決める。 となど目的意識をはっきりさせる。見・探険隊を作る。 ・持ち物・約束・係など1回目の探険での通・作戦会議を開く。 経験を生かすようにさせる。す

④パワーアップカードで振り返り次への目 ・自分の活動を振り返る。評価が低かったⅡ標を立てる。 子どもには原因について,十分満足だっ

た子どもにはよりよくするためにはどう 活動を振り返ることができ

すればいいかについて対話し支援する。 る (パ8) 自己。

①本時の学習課題を確認する。 ・出発する前に,帰校の時間や前時に決め3[ めざせ町はかせ!2回目のたんけんに た約束について再度確認する。

]追 レッツ・ゴー!

②パワーアップカードの中から自分の目標 ・パワーアップカードをもとに,自分の目 安全に気をつけ,約束を守

を設定する。 標を選択させ活動目標を明確にする。 って友だちと仲良く町探険

③町探険に出発する。 ・探険している子どもの様子を観察したり しようとしている。<関>究 ,

④見つけたこと,聞いたこと,わかったこ 安全の確保をしたりするため, ・ や保 ③(観察)T Tとなどをカードに記録する。 護者サポーターが各グループに1名ずつ あいさつをしたり 話しか,

付いていく。 けられたことに返事をしたす・1回目の探険で気付かなかったものを発 りして,地域の人とかかわ

見したり,人や場所とのかかわりをさら ろうとしている。<関>④

に深めたりするに促す。 (観察)る・探険から帰ってきた子どもたちの新鮮な 町には楽しい所や不思議な

感動や驚きを聞き取るようにする。 もの,いろいろな人が存在

することに気付く。<気>Ⅱ③(学8) 追究

⑤パワーアップカードで振り返る。 ・自分の活動を振り返り,次の目標を立て 活動を振り返ることができ

るように支援する。カードに励ましの言 る (パ10) 自己。

葉をコメントする。

①本時の目標を確認する。 ・探険して見つけたこと1年生に伝えたい3たんけんで見つけたことをまとめよう という思いを大切にする。 探険して発見したことを自[ 。]

②パワーアップカードをもとに自分の目標 ・パワーアップカードをもとに,自分の目 分で考えた方法で,表現す

を設定する。 標を設定させ,活動目標を明確にする。 ることができる。<思>③

③発見したことなどを友達にわかりやすく ・絵や文で表すほかに,クイズや劇,紙芝 (観察)(学9) 表現

伝えるための,準備や練習をする。 居など,どんな発表の仕方があるか意見

を出し合うようにさせる。

・何を見つけたのか,調べたことは何か,

そして,自分はどのように思ったのかを

整理して発表できるようにする。ま・友達のまとめ方のよいところ,発表の練

習で上手だったところを見つけたり,自

分のよいところに気付いたりするようにと支援する。

④パワーアップカードをもとに振り返る。 ・評価が低かった子どもには原因について 活動を振り返ることができ,

十分満足だった子どもにはよりよくする る (パ11) 自己め 。

ための方法について対話し,支援する。

①本時の学習活動を確認する。 ・1年生や友達,先生など聞いている人に2わくわくたんけんはっぴょう会] わかるように発表することを確認する。る [

②パワーアップカードをもとに自分の目標 ・自分が設定した目標を頭に入れて,発表

を設定する。 するように促す。

③1年生や友達にわかりやすく発表できる ・自分たちで運営するように支援する。 探険して発見したことを自Ⅱようにする。 ・探険隊ごとに発表し,探険隊の中で伝え 分で選んだ方法でみんなに

たい内容ごとに好きな発表方法で発表し わかりやすく発表すること

。 ( )てよいことを確認する。 ができる <関>⑤ 観察

・聞いている人は,友達の気付きのよかっ 表現

たところ,発表の仕方のよかったところ

に注意して聞くように促す。

・1つの探険隊の発表が終わるごとに,質 自分たちの生活は,地域の

問や感想,よかったところを言い合う時 人々や様々な場所とかかわ

間を設ける。 っていることがわかる。

④感想を発表し合う。 ・がんばっていたところ,工夫したところ <気>③ (学10)

を認め,ほめるようにする。 活動を振り返ることができ

⑤パワーアップカードをもとに振り返る。 ・自分の発表を振り返り,次への目標を立 る (パ12) 自己。

てるように支援する。

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- -28

6 研究の結果と考察

(1)指導モデルの評価と改善

①第一次,第二次評価と改善点

評価項目の観点に基づき,第一次評価は作成者が行い,第二次評価は研究協力員により行った。そ

こでの主な改善点は,次のとおりである。

ア 指導計画にかかわる改善点

・直接的な体験を重視し,対象と繰り返しかかわることを意図しているので,繰り返しがわかる

形で構成した方がよいという指摘を受け,学習過程Ⅰ・Ⅱという構成に改善した。

イ 学習活動及び指導法にかかわる改善点

・自己評価という視点に重きが置かれているが,教師による見取りや肯定的な評価,支援などを

合わせて形成的な評価を行うという視点が必要であるという指摘を受け,学習指導案の中に努

力を要する児童への支援,十分満足している児童への手だてなど個に応じた教師の支援を明記

した。

ウ 評価にかかわる改善点

・ルーブリックに活動の具体的な用語が多く子どもの活動が規制されてしまうのではないか。ま

た,生活科の特性である子どもたちのそれぞれのこだわりを生かせるようなダイナミックなも

のであった方がよいという指摘を受け,自己目標を設定する場面を増やすよう改善した。

・ ルーブリックは教員と児童生徒が共有する 「ルーブリックの作成に児童生徒も何らかの形「 。」

でかかわる 」という特徴から,最終的には子どもにキーワードを与え,ルーブリックを話し。

合って決めていくような形が望ましいという意見が出され,単元の後半部分では,ルーブリッ

クの2の段階(おおむね満足できる)の部分を提示し,1の段階(努力を要する)と3の段階

(十分満足できる)のルーブリックは,作成に子どもがかかわる形に改善した。

エ 資料にかかわる改善点

・目標と自己評価を記入するカードについて 「ルーブリックカード」ではなく,子どもが親し,

みやすい名称にした方がよいという指摘を受け 「パワーアップカード」に変更した。,

②第三次評価と改善点

第三次評価は研究協力校において指導モデルの試行を行い,協力員の観察を通して評価を行った。

評価の結果,出された問題点について検討し,修正・改善を図った。

ア 評価にかかわる改善点

・学習過程Ⅰの第3時(探険の作戦会議)において,学習内容とルーブリックの内容にずれがあ

るのではないかという指摘を受け 「いい探険にするために友達と計画を立てる 」ということ, 。

に焦点をあてたルーブリックに修正・改善した。

, 「 。」・児童のつまずきに対する教師の支援はされていたが 研究目標に迫る 自己学習力を育成する

ための教師の支援が明確でないという指摘を受け,自己学習力を育成する支援の言葉がけ例を

作成し,明確にした。

・前半の発表会において,発表する側のルーブリックのみだったが,聞く側のルーブリックが必

要ではないかという指摘を受け,後半の発表会では,一人一人が聞くめあてを決めるよう指導

した。

イ 資料にかかわる改善点

・パワーアップカードについて,ルーブリックを子どもに人気のあるキャラクター(モンスター

ボール)の中に書き入れたことは,子どもの興味や関心を喚起させるために有効であったと評

価された。しかし,反省を顔のイラストで描き表す欄は,時間がかかってしまうという指摘が

あり,顔の輪郭をあらかじめ描いておいて,すぐに表情を描き込めるものに改善した。

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- -29

(2)研究目標の達成状況

本研究の目標である「自己学習力の育成を図るために,学習過程にルーブリック評価を取り入れた

指導モデルを作成する 」について,①ルーブリック評価の有効性,②自己学習力の高まりについて。

の2点から,パワーアップカード,研究協力員による授業観察,保護者・地域の方からの感想,事前

・事後アンケート,学びの足あとを用いて検証した。

①ルーブリック評価の有効性

ア パワーアップカードの活用から

パワーアップカードは,学習過程ごとに,ルーブリックをもとにした自己目標の設定とその振り返

り及び感想,次の目標設定のための自己評価カードとして,授業の始めと終わりに記入させた。

全体を通してみると,学習が進むにつれ目標設定

の数値の平均と自己評価の数値の平均が上がってき

ていることがわかる(図2 。どの学習過程におい)

ても,最初に設定した自己目標よりも自己評価結果

が高いことから,目標に向かって十分活動し,自分

の成果としてとらえることができたからだと考えら

れる。探険の2回目の目標と反省の数値が高いのは,

1回目の探険終了後,子どもから「モンスターボールの4が作れたよ 」という発言がでたのをきっ。

かけに,ルーブリックの4の段階を全員で作成し,共有した結果,子どもが高い意欲をもって活動し

十分な成就感を味わったためだと思われる。自己目標の設定状況(表4)からは,ルーブリックをも

とに自分が取り組むべき方向性を明確にしながら活動を行ったことや,自己評価からの教師の見取り

による支援を行ったことで,主体的に活動しようとする姿がうかがえた。このことからも,ルーブリ

ックを活用した形成的評価の有効性が認められた。

(表4)子どもの設定した自己目標の事例

K さ ん A さ ん

探険したこ 目 2 たんけんして見つけた ? はてな 目 3 聞いている人にわかるように,字や絵の「 ( )」

とをまとめ 標 や「!(びっくり 」を聞いている人 標 大きさをくふうしてまとめる。)

る。 にわかるようにまとめる。

(第16時) 反 2 ふしぎな実を見つけたことを絵と文に 反 3 大きな紙に,わかったことを大きな字や

省 まとめられた。つぎははっぴょうをく 省 絵でかいて,わかりやすくまとめられた

ふうしたい。 よ。

わくわく探 目 2 「?」や「!」やちがうマークを聞い 目 3 「?」や「!」やちがうマークを,くふ

険発表会 標 ている人にわかるようにはっぴょうす 標 うしてして,大きい声で,ぼうでさしな

(第20時) ることができる。 がら,はっぴょうすることができる。

, 。反 3 はずかしがらないで大きな声でできた。 反 4 れんしゅうの時より 大きな声でできた

省 ふしぎな実の大きな写真を見せて,く 省 ぼうでさしながら,1年生にわかるよう

ふうしてはっぴょうできた。 に心をこめてはっぴょうできたよ。

, ( ), 「 。」また 振り返りの記述内容をみてみると 表5 単元の始めの段階では 作戦会議が楽しかった

「頑張った 」など,抽象的なものや単に授業の様子をとらえたものが多かったが,単元が進むにつ。

「 。」「 。」れて いい探険にするために自分の考えを言い合えた 前より自分の意見が言えるようになった

「自分たちで話し合ってどんどん計画を立てられた 「目標を目指して頑張った 」など,学習のね。」 。

らいや自己目標に対して振り返ったり,自己の変容に気付いたりする具体的な内容の記述が多く見ら

れる結果となった。このことからも,パワーアップカードを活用することによって,子どもが活動に

1

2

3

4

探険

のへ

の意

探険

場所

の決

作戦

会議

Ⅰ・①

作戦

会議

Ⅰ・②

町探

険1回

まとめ

る・Ⅰ

情報

交換

・Ⅰ

作戦

会議

・Ⅱ

町探

険2回

まとめ

る・Ⅱ

探険

発表

目標 反省

1回目 2回目

(図2)パワーアップカードによる意識の変容

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見通しをもち,追究していこうとする力や,自分を振り返る力がついてきたと考えられる。

(表5 「パワーアップカードの振り返り」から抜粋)

Yさん 第2時 行く場しょがきめられてよかった。

4時 作せんかいぎは,とても楽しかった。

7時 ?や!が,もくひょうにしただけ見つかってよかった。目や口や手も使っていっぱいさがせた。

。 。10時 みんなにわかりやすいようにふき出しを使ってまとめた くふうしたことを大きな声ではっぴょうできた

12時 自分から考えを言ったり,お友だちの考えを入れたりしていい計画が立てられた。

15時 たんけんで?や!やちがうマークがいっぱいさがせた。もくひょうがとてもよくできた。

20時 もくひょうを頭に入れてがんばった。1年生にわかるようにはっぴょうできたし 「すごい 」って言われ, 。

てうれしかった。

Aさん 第2時 たんけん場しょをきめて楽しかった。早く行きたい。

4時 たいちょうだから,話をまとめるのにつかれた。

7時 もくひょうにしたより,?や!がいっぱい見つけられてうれしかった。

10時 自分でとったしゃしんをみんなにわかるように,大きい紙にはってはっぴょうできた。つぎはもっと大き

い声で発表したい。

12時 前よりいっぱい自分の考えが出せた。何をきめればいいかよくわかったから早くきめられた。

15時 サンマートのれいとうこの中でスーパー!を見つけてうれしかった。モンスターボールの4までいけた。

20時 1回目の時より大きい声で心をこめてはっぴょうできた。1年生にもわかるように紙をうごかして見せた

のが自分でもよかったと思う。

Mさん 第2時 行きたい場しょがきめられてよかった。

4時 あんまりいけんを言えなかった。

7時 !がいっぱい見つけられた。考えた時間通りに行けた。大せいこう!

10時 くふうしてできたところと,できなかったところが,ちょっとびみょうだった。

12時 きょうは,いつもよりいけんが言えた。早くきめられるようになった。

15時 自分の力で?や!やほかのマークを見つけることができた。

20時 すごい! ぼくは,はじめてこんなにうまくはっぴょうできたよ!本ものを見せたり,げきをしたりした

ら1年生がよろこんでくれてうれしかった。もくひょうどおりはっぴょうできたよ!

以上のことから,パワーアップカードをもとに児童が自己目標を設定し,その目標をもとに振り返

って自分をほめたり励ましたりして,次への意欲をもつようなルーブリック評価は,自己学習力を育

成するために有効であったと考えられる。一方,教師は一人一人の成果や課題が把握でき,見取りと

ずれがあった場合は対話や肯定的なコメントによって認めたり励ましたり,適切な支援をしたりする

ことができ,個に応じた指導の充実に役立った。

(図3)事後アンケートイ パワーアップカードの事後アンケートから

パワーアップカードについて 「使いやすかったか 「自分, 。」

の目標が立てられるようになったか 「自分のめあてを考えな。」

。」「 。」がら活動したか 自分の決めた目標が反省しやすかったか

,「 。」の4つの視点から事後調査を行ったところ 使いやすかった

83% 「めあてを考えながら活動していた 」87% 「自分の目標, 。 ,

%が立てられるようになった 90% 反省がしやすかった 83。」 ,「 。」

という結果が得られた 「どちらかというと,はい 」という項。 。

目も合わせると,3項目全てにおいて肯定的な答えが100%とい

。 。う結果となった 具体的な記述は以下に示すようなものである

*複数回答(表6)パワーアップカードに対する感想

・パワーアップカードには,モンスターボールの中にパワーアップしていくもくひょうが書いてあったので,自

。 。分のもくひょうがきめやすかった はんせいもモンスターボールを見ながらすればいいからつかいやすかった

(10人)

・パワーアップカードは,もくひょうがわかりやすかった。自分でもくひょうを立てていくのが楽しかった。

もくひょうをえらんだり,ゲットしたモンスターボールに色をぬったりするのがおもしろかった (8人)。

・もくひょうをさいしょにきめたから,それをあたまに入れてがんばった (11人)。

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

使

はい どちらかというとはいどちらかというといいえ いいえ

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・先生も自分ももくひょうがわかって,自分のもくひょうでやれば,何をがんばればいいかとか,つぎは何をが

んばろうということがわかってよかった (5人)。

, , , , 。( )・1 2 3のモンスターボールを見て 自分のもくひょうをきめたから それをめざしてがんばった 11人

・もくひょうを考えて書くのがめんどくさかった (1人)。

・ニコちゃんマークで心の中を書いていくのがすごくおもしろかった。しんぱいなこととか,がんばったことを

書くと先生がおへんじにいろいろ書いてくれるので,次もがんばろうという気持ちになった (1人)。

・はんせいをふき出しに書くと何をがんばったかよくわかったし,先生がおへんじを書いてくれるので,それを

見ると,がんばったことがもっとよくわかった (1人)。

, , ,上記の子どもの感想からも ルーブリックを共有したことのよさや ルーブリックを示したことで

自己目標が立てやすく,この時間に何をすればいいかを具体的に把握し活動していたことがうかがえ

る。また,活動を振り返る時の基準にもなっていたので,自分がどこまで頑張ったか,次はどんなと

ころを頑張ればいいかを把握できていたと考えられる。以上のような結果から,ルーブリックが子ど

もにとって有効に機能していたと考えられる。

ウ 研究協力員から

ルーブリックの作り方,自己目標,活動中の様子,自己評価の変容など,成果や課題について研究

協力員で意見交換を行った結果,ルーブリック評価の有効性が検証された。

(ア)ルーブリックの作り方及び提示の仕方

・ルーブリックの提示方法は,子どもたちの活動に対する意欲をかき立てていたと思う。特に,

パワーアップ という言葉やモンスターボールに目標が隠されていた点が興味・関心を引き出

すのに効果があった。

・ただ活動のみで終わってしまうという批判を受けがちな生活科にとって,個々の児童に,何の

, ,ためにこの活動をするのかはっきりさせるルーブリックは 具体的に示す文章表現は難しいが

活動に対する目的意識を明らかにし,自己評価するために必要である。

(イ)自己目標

・子どもたちがルーブリックの作成にかかわり,練り合うことが積極的にできていた。

・スモールステップを踏み,パワーアップカードの活用を重ねるうちに,子どもたちもカード

に慣れ,親しみ,自己目標がスムースに 立てられるようになっていった。低学年でも段階の

差を感じて目標を立てられることがわかった。

(ウ)活動中の様子

・今回の学習では自己目標を子どもにもたせ,活動し,振り返らせたわけだが,今までの町探険

と比較すると,漫然と活動して楽しかったという活動ではなく,自分は何をするために町探険

をするのか子ども自身がしっかりわかって活動していた。どの学習過程においても,子どもた

ちが自己目標をしっかりもって取り組んでいた。

・探険発表会において,自己目標があることで,子どもたちが目標を意識し,自信をもって生き

生きと活動していた。発表方法も多様で,目が輝いていた。

(エ)自己評価

・ルーブリックをもとにキーワードから全体の目標を練り合い共有化することで,子どもたちが

本時の目標をしっかり理解し,自己目標が立てやすかったのだと思う。自己目標に対して自己

評価することが習慣化すれば,子どもたちの自己評価能力も身についてくる。

・今までは自己評価と教師の見取りにずれが見られる子どももあったが,自己目標と目標の達成

度を評価するための指標がはっきりしているため,子どもの評価がある程度きちんとして,今

までと比べて甘い自己評価をすることが少なく,教師の見取りとほぼ同じ自己評価ができるよ

うになったことは大きな成果だった。

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エ 保護者・地域の方の感想から

探険に付き添ってくださった保護者サポーターや探険先の地域の方から感想をもらった。表7に示

すような,子どもたちが自ら考え自ら行動する姿が見取れる感想が多く寄せられた。

(表7)保護者・地域の方々からの感想

◎保護者サポーターから

・一人一人が自分の目標をしっかりもって行動しており,言葉に出す出さないの違いはありますが,誰々も行く

から私もといったような人の後について歩く子がいなかったことに感心しました。

・自分の目標がきちんと決めてあったので,どの子も「なぜだろう? 「どうして?」などの疑問や関心が自然」

にわきあがり,場面場面に応じて自分の頭で考えた質問や行動がしっかりできていると思いました。

・自分で決めた目標に向かってあんなにワクワクして,目を輝かせて楽しそうに自分たちの力で活動している

姿を見て感動しました。このような機会を他の教科やいろいろな場面で作ってもらえると,家庭でも共通の話

題ができ,ありがたいなと思いました。

・常に目標を意識して「?や!を探すんだ 」と言っていました。見つけた?や!は,相談してデジカメで撮っ。

, 。たりカードに記録したり バスの時間をいつも気にかけるなど自分たちで行動しようという姿が見られました

◎地域の方から

あいさつもよくでき,話したことをメモしたり,インタビューの仕方もしっかりしていて感心しました。最・

後に,自分たちで考えたありがとうカードをお礼とともに渡してもらって感激しました。

探険が終わって店から帰るときに 「家の人を連れてまた来たいです 」といった子がいましたが,数日後,・ , 。

。 。本当にお父さんを連れてお団子を買いに来てくれて感動しました こんなことは初めてでうれしかったです

「一人一人が自分の目標をもって 「自分の決めた目標に向かって」という記述からも,子どもた」

ちが自分で設定した目標に向かい,主体的に活動していた様子がうかがえ,学習過程にルーブリック

評価を取り入れることは,自己学習力の育成に有効であると考えられる。

②自己学習力の高まりについて

(図4)自己学習力を支える力の変容ア 事前・事後アンケートから

指導モデルの試行を行い,研究目標である生活科にお

。ける自己学習力を支える力が育ったかどうかを検証した

自己学習力を支える力である「課題を発見する力 「追」

究する力 「表現する力 「自分を振り返る力」の4つの」 」

力を教研式自己教育力指導検査(SET)をもとに作成し

た事前と事後のアンケート結果(図4)でそれぞれ比較

。 , ,した その結果 4つの力全ての平均点が増加しており

事前と事後の平均の間に,有意水準1%以下で有意差があることが確認された。

特に 「追究する力」と「自分を振り返る力」の伸びが顕著であった 「追究する力」では 「生活, 。 ,

科で学習したことを家でやってみたことがある 」の項。

目の伸びが著しかった。これは,目標を明確にして学習

に臨むことで探険の学習が終わっても追究したくなるよ

うな意欲の継続がみられたこと,すなわち 「生活科」,

の「生活化」が図られたと考えられる。次に 「生活科,

の時間に,工夫してよくしようとすることがある 」の。

項目に大きな伸びがみられた。これはルーブリックの言

葉の中に「工夫してまとめる 「工夫して発表する 」。」 。

3.2

3.0

2.62.8

3.6

3.6

3.43.6

2

3

4課題を発見する力

追究する力

表現する力

自分を振り返る力

事前

事後

2.6

2.83.0

2.6

1.9

3.3

3.5

3.7

3.3

3.0

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

事前 事後

事前 2.6 2.8 3.0 2.6 1.9

事後 3.3 3.5 3.7 3.3 3.0

不思議なことがあると

自分から進んで調べ

る。

育て方を本や

図鑑で調べる。

工夫してよく

しようとする。

人からだめだと

言われるとやめてしま

う。

学習したことを

家でやってみる。

(図5)追究する力の変容

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- -33

という言葉があり,自己目標の実現を目指して意欲的に活

動したことが考えられる。

「自分を振り返る力」では 「自分の思いどおりにで,

きているか確かめる 「うまくできないことを見つけて。」

自分で直すようにしている 」の項目に大きな伸びがみ。

られた。これは,ルーブリックをもとに自己目標を設定

, ,する活動を取り入れたことで 目指す目標が明確になり

それに向けた努力がしやすくなったことや,どこまで頑

張れたのか,次はどんなことを頑張ればいいのかを認識

, 。し 次の活動に生かすことができたからであると考える

イ 研究協力員による授業観察記録から

研究協力員による2回の授業観察を行い,児童観察を行った。研究会や協力員の回答から 「自己,

目標を明確にもって活動することで,子どもの主体的な行動が大きく変容したことに驚いた 「生。」

活科の学習の中にルーブリック評価を取り入れることで,自己学習力を身に付けることができるとい

うことが実感できた 「子どもたちがスムースに自己目標を立てていた。自己目標に対する自己評。」

価が習慣化すれば子どもたちの自己評価能力も身に付いてくるのだと感心した 「子どもたちが十。」

分に体験をし,自らの力で調べ発表した中に,3年生からの理科や社会科につながるような内容がみ

られ,自己学習力の育ちを感じた 「自己学習力を自立の基礎と同義にとるならば,問題解決能力。」

に他ならないと思う。活動全体を通して,子どもたちに十分その力が醸成されていると思った 」等。

の意見が出され,子どもの自己学習力の育成の高まりを確認することができた。

自己学習力の表れに伴うつぶやきや行動をより具体的にチェックするために児童観察チェックシー

トを作成し,児童観察を行った。個々の児童についても以下のような変容が確かめられた。

(表8)研究協力員による子どもの変容の様子

1回目の探険の作戦会議の時は,促されるとうなずいたり,決まったことを書き取るような消極的な様子だった。Sさん

目標をもって探険したことで,進んで?や!を探したり,探険先でお店の人に親切にされてうれしかった気持ちを

ハートマークで表すなど主体的な行動が見られた。自分と人とのかかわりを1年生の前で堂々と発表した。

1回目の探険場所を決定する時,友達のを見て決めていた。作戦会議の時はわずかではあるが自分の意見を言う程Rさん

度。目標に向かって努力しようとする姿は常に見られ,1回目の探険終了後,ルーブリックの4を作ろうと提案し

た。2回目の探険発表会の折りは,全体の目標を決める時,積極的に挙手したり,自己目標をさっと決めることが

できた。発表会では,大きくて立体的なペープサートを用いて自分の発見したことを伝えることができた。

作戦会議の時,マップの前で話し合っていたがあまり話し合いには参加できない。2回目の探険の時,目標意識をMさん

もってでかけたため帰ってきてからも見つけてきた不思議を自分から進んで調べ解決していた。発表会では,1年

生にわかりやすいようにと自分で調べたアメリカセンダングサを実際にとってきて見せ,遊んだ様子を簡単な劇に

表すなどの工夫を取り入れた。豊かな表現力が感じられた。

1回目の作戦会議の時,隊長としてみんなの意見をまとめようとしたがうまくいかず,教師の支援を必要とした。Aさん

2回目の作戦会議の時は,自分からマップをもらいにきたり,みんなの意見を採り上げるなど意欲的な活動が見ら

れその後も主体的な行動が多く見られた。発表会の最後の時 「目標をいつも頭にいれて頑張っていました。自分,

の力でできるようになってうれしかった 」という感想が出された。自分の成長や変容への気付きがみられた。。

1回目の作戦会議の時,自分の考えを言ったり,話し合いを進めようという態度が見られた。目標をもって探険にKさん

臨んだ結果,探険終了後「ルーブリックの4が作れるよ 」と発言。みんなに賞賛され自信をもつ。今まで人の先。

頭にたつことに消極的であったが,2回目の探険は進んで班長を引き受け,みんなの意見をとり入れながら計画を

立てた。発表会の前の全体のルーブリックを話し合うとき積極的に挙手をした。発表も目標に沿って,1年生にわ

かりやすく絵やデジカメの写真を用いて堂々と発表することができた。

2.7

2.92.8

2.9

2.8

3.63.7

3.63.6

3.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

事前 事後

事前 2.7 2.9 2.8 2.9 2.8

事後 3.6 3.7 3.6 3.6 3.5

自分の思い通りにできたか確かめ

る。

うまくできないところは、自分で直す。

失敗した時がんばりが足りなかったと

思う。

見つけたことをよく思い出してカードに

書く。

カードに書いた絵や文を見直しする。

(図6)自分を振り返る力の変容

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ウ 学びの足あとから

振り返る力の変容を見るために「町探険」という言葉を

キーワードに,探険前,1回目の探険後,2回目の探険後

にイメージマップを作成し,単元終了後「学びの足あと」

として学習の振り返りの記述をした。学習が進むにつれ,

自然や社会,人々にかかわる言葉や学習過程にかかわって

の言葉が数多く表出されるようになった(図7)。このこと

, , ,から 2回の探険を通して 自分が発見した課題を追究し

表現しようとする力が培われたことがうかがえる。

「学びの足あと」には,自己の変容や成長を感じ取った記述が多く見られた(表9 。)

(表9)学びの足あとの記述から

・パワーアップカードで目標を決めて,目標を頭に入れて頑張ったから,探険でいろいろなことがよくわかった

し,いろいろできるようになったんだと思う。自分たちでやり方を考えたり覚えたりしようとしたから足あと

が増えたんだと思った。松里のお店やお寺,人などをいろいろ知ってよかった。

・探険に行く前と2回目の探険に行ったあとでは,見つけたことややったことがたくさん増えていてびっくりし

た。インタビューもたくさんして知りたいことがわかってよかった。パワーアップカードで目標を決めたり,

反省したりして,自分の頑張ったことがよくわかったし,よく頑張ったと思う。

・探険前と探険のあとでは見つけた物が全然違う。最初は先生に教えてもらってやってたけど,自分の力でいろ

いろできるようになったと思う。

・パワーアップカードを使って目標を立てたから,すごく頑張れた。探険前より自分たちで持ち物や係を相談し

たり,マップを見て場所を調べながら探険することができるようになった。知ってることも増えた。

パワーアップカードや自己目標に触れて書いた記述が72%,自分の力で頑張った・できるようにな

った・自信がついたなどの記述が86%見られたことは,子ども自身が自己目標を意識して活動をした

, 。という強い意識の表れであるとともに 自分を振り返る力が備わってきたことの表れであると考える

以上,①と②の考察により,生活科「町探険」の学習過程にルーブリック評価を取り入れた本指導

モデルは,子どもの自己学習力を育てるために有効であったと考える。

(3)本指導モデルの活用の仕方と留意点①単元のルーブリックを作成する。

本指導モデルは,第2学年の町探険を教材化し単元のルーブリックを作成したが,評価規準をもと

に,地域や子どもの実態を考慮して活用していただきたい。その場合,誰が評価しても判断がほぼ一

致するような具体的な基準にすること,ルーブリックの作成に子どもも参画し,子どもの立場に立っ

たわかりやすい基準にすること,子どもと教員が共有することに注意していただきたい。また,単元

の始めに作成したルーブリックはそのままの形で最後まで使われるような固定的なものではなく,形

成的評価に活用されることにより繰り返し修正されていくことが大切であると考える。

②指導計画を工夫する。

本モデルは20時間の時数だが,余裕をもって取り組むには25時間程度の時数を確保するとよいと考

える。なぜなら探険を2度,3度と行い,対象と繰り返しかかわることで気付きやかかわり方の深ま

りが得られると考えるからである。また,地域の実態を十分に把握し,それに基づいて指導計画を作

成することも大切である。生活科マップ,生活科暦も改めて見直すことが必要である。今回,子ども

の探険したい場所に応じるために保護者に協力を依頼し,安全確保を図った。校内の職員,保護者や

地域の人々,公共施設や関係機関の人々などについてどのように協力してもらえるかを把握し,その

力を生かしていくことが大切である。

8.1

12.8

25.1

0

5

10

15

20

25

30

探険前 1回目の探険後 2回目の探険後

(図7)イメージマップの語彙数の変化

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7 研究のまとめと今後の課題

本研究では,小学校生活科において,問題解決的な学習過程にルーブリック評価を取り入れること

により,子どもの自己学習力を育成することを目標として取り組んできた。成果としては,①活動や

体験が中心で,単に活動するだけにとどまっていると言われがちな生活科において,評価基準を教員

と子どもが共有することで,つけたい力がお互いに明確になった。②小学校低学年であっても,形成

的評価にルーブリックを活用することで,子どもが活動に対しての明確な自己目標を設定でき,主体

的な活動が促された。また,子どもの側からルーブリックの4の段階を考え出すなど,ルーブリック

の作成に子どもも意欲的にかかわった。③ルーブリック評価を取り入れたことで,自己評価能力の高

まりが見られ,自己学習力の育成が図られたことがあげられる。

しかし,現場での実践を考えると,子ども自身の思いや願い,こだわりを大切にする生活科に教師

の設定した基準を示すことで,子どもの活動がせばめられることはないか,また,学習内容にあった

ルーブリックの作成や作成にかかる時間,自己目標の設定や振り返りにかかる時間の確保はどうする

か,などの課題が残されている。

研究の結びに,自ら学び自ら考える力,すなわち自己学習力の育成を図ることは,生きる力をはぐ

くむ上で不可欠なものであり,そのための具体的な指導と評価の工夫・改善が図られなくてはならな

い。子どもたちの主体的な学びを追究し,個に応じた指導と評価を行うためには,ルーブリック評価

が大変有効であることを本研究により実感した。本指導モデルを学校や地域の実態にあわせて修正,

改善を加え,子どもの自己学習力を育成する多様な生活科の実践に活用されることを願っている。本

研究を手がかりに,今後は,様々な教科・領域の中で,さらなるルーブリック評価の有効性を見いだ

し,子どもの自己学習力の育成に一層取り組んでいきたいと考えている。

参考文献

・小学校学習指導要領解説生活編 文部科学省

・小学校生活科・総合的な学習

嶋野道弘 編著 東洋館出版

・オープンエンド化による生活科授業の創造

片上宗二 編著 明治図書

・生活科の授業づくりと評価

高浦勝義・佐々井利夫 著 黎明書房

・生活科の新生をもとめて

木村吉彦 著 日本文教出版

・ポートフォリオ評価を活用した指導の改善,

自己学習力の向上及び外部への説明責任に向

けた評価の工夫 国立教育政策研究所

・生活科の授業と評価

田中 力・寺崎千秋 著 教育出版

・授業研究21 2002 2月

・小学校学習指導要領の展開生活科編

嶋野道弘 編著 明治図書

・ルーブリックを生かした形成的評価とその活

用に関する研究

山梨県総合教育センター 平成15年度研究

紀要

研究協力校

塩山市立松里小学校 校長 柳沢 正信

研究協力員

饗場 まゆみ 石田小学校教諭

岡 ひさ江 大藤小学校教諭

桐原 ひかる 八代小学校教諭

嶌本 弥生 松里小学校教諭

山本 摂 石和北小学校教諭

研究指導者

雨宮 貴 教育指導部研修主事

内田 淳 研究開発部研修主事

岡 輝彦 特別支援教育部研修主事

平成16年度 山梨県総合教育センター

長期研修員研究報告書

執 筆 者 長期研修員 内田 厚子

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