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第14回日本褥瘡学学術集ランチョンセミナー1 開催:2012年9月1日(土) 会場:パシフィコ横浜 共催:第14回日本褥瘡学会学術集会/アルケア株式会社 難治性皮膚潰瘍 ~医師と看護師による最新の取り組み~ 本セミナーでは,難治性皮膚潰瘍のケアをよりよく進めるための取り組みについて,医 師,看護師それぞれの立場から講演いただきます。 藤沢市民病院医療支援部地域医療連携室WOC相談室担当の内藤亜由美先生には, 褥瘡を有する患者が治療を受けていた病院から退院し,在宅療養に移行する際,スムー ズに創傷ケアを継続するための要点をお話しいただきます。 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野診療講師の中原剛士先生には,bFGF 製剤 と創傷用シリコーンゲルドレッシング(エスアイエイド )を併用し,より効率的に難治性 皮膚潰瘍の治療を進めるための工夫についてお話しいただきます。 本セミナーが,日ごろ難治性皮膚潰瘍の治療に当たる医療従事者の皆様にとって有 益な情報共有の機会となることを祈念いたします。 退院後も継続して褥瘡ケアを行うための 要点抽出を目的とした 訪問看護師へのインタビュー 褥瘡を保有したまま退院する患者は,退院後の在宅療養に おいても継続して適切な褥瘡ケアを受ける必要があります。そ こで,褥瘡を有する患者が退院する際の看護のポイントを探る べく,神奈川県内の訪問看護ステーション,1事業所に所属する 管理者およびスタッフを対象に45分間の半構造化グループインタ ビューを行いました。実施に当たり,回答者に了承を得てインタ ビューを録音,逐語録を作成,切片化してデータを作成し,デー タの類似性に着目し,カテゴリー化して分析しました。 インタビューの質問は,①褥瘡を持っている方が退院し,訪 問看護が導入されるケースで困っていることはありますか,② 褥瘡はないけれど,褥瘡リスクを保有する方が退院する場合 に必 要なことには,どのようなことがありますか,③ 在 宅 療 養 患者さんの褥瘡ケアでうまくいったと思うのはどのような時ですか, ④うまくいかなかったと思う時はどのような時ですか,の4つでし たが,本講演では①についての分析結果を紹介します。 難治性皮膚潰瘍における看護師の役割 ~ケアを在宅へ継続させるための要点~ 藤沢市民病院 医療支援部地域医療連携室 WOC相談室担当 皮膚・排泄ケア認定看護師 内藤 亜由美 先生 群馬大学大学院 医学系研究科 皮膚科学 教授 石川 治 先生 演題1 演者 司会のことば

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Page 1: 難治性皮膚潰瘍 - alcare.co.jp · たが,本講演では①についての分析結果を紹介します。 難治性皮膚潰瘍における看護師の役割 ... 織や組織の損傷),i(感染または炎症),m(湿潤環境のアンバ

第14回日本褥瘡学会学術集会 ランチョンセミナー1

開催:2012年9月1日(土)会場:パシフィコ横浜

共催:第14回日本褥瘡学会学術集会/アルケア株式会社

難治性皮膚潰瘍~医師と看護師による最新の取り組み~

 本セミナーでは,難治性皮膚潰瘍のケアをよりよく進めるための取り組みについて,医師,看護師それぞれの立場から講演いただきます。 藤沢市民病院医療支援部地域医療連携室WOC相談室担当の内藤亜由美先生には,褥瘡を有する患者が治療を受けていた病院から退院し,在宅療養に移行する際,スムーズに創傷ケアを継続するための要点をお話しいただきます。 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野診療講師の中原剛士先生には,bFGF製剤と創傷用シリコーンゲルドレッシング(エスアイエイドⓇ)を併用し,より効率的に難治性皮膚潰瘍の治療を進めるための工夫についてお話しいただきます。 本セミナーが,日ごろ難治性皮膚潰瘍の治療に当たる医療従事者の皆様にとって有益な情報共有の機会となることを祈念いたします。

退院後も継続して褥瘡ケアを行うための要点抽出を目的とした訪問看護師へのインタビュー

 褥瘡を保有したまま退院する患者は,退院後の在宅療養においても継続して適切な褥瘡ケアを受ける必要があります。そこで,褥瘡を有する患者が退院する際の看護のポイントを探るべく,神奈川県内の訪問看護ステーション,1事業所に所属する管理者およびスタッフを対象に45分間の半構造化グループインタ

ビューを行いました。実施に当たり,回答者に了承を得てインタビューを録音,逐語録を作成,切片化してデータを作成し,データの類似性に着目し,カテゴリー化して分析しました。 インタビューの質問は,①褥瘡を持っている方が退院し,訪問看護が導入されるケースで困っていることはありますか,②褥瘡はないけれど,褥瘡リスクを保有する方が退院する場合に必要なことには,どのようなことがありますか,③在宅療養患者さんの褥瘡ケアでうまくいったと思うのはどのような時ですか,④うまくいかなかったと思う時はどのような時ですか,の4つでしたが,本講演では①についての分析結果を紹介します。

難治性皮膚潰瘍における看護師の役割~ケアを在宅へ継続させるための要点~

藤沢市民病院医療支援部地域医療連携室

WOC相談室担当皮膚・排泄ケア認定看護師

内藤 亜由美 先生

群馬大学大学院 医学系研究科 皮膚科学教授

石川 治 先生

■演題1

演者

司会のことば

ALCARE_JSPU_2012.indd Sec1:1ALCARE_JSPU_2012.indd Sec1:1 14.5.27 10:42:40 AM14.5.27 10:42:40 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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病院に求められる実情への理解生活の場としての在宅ケア

 褥瘡を保有して退院する患者のケアを在宅で継続するための前提として,病院側に「病院と在宅との違い」,「本来,患者のご自宅(在宅)は生活の場であり治療の場ではない」,「生活を考慮した実行可能な退院指導の実施」の3点を理解してもらいたいとの意見が挙がりました。インタビューの回答の中で最も多かった言葉は「生活」でした。しかし在宅医療では,医療者が患者・家族の希望する生活を重視するあまりに褥瘡の悪化を招いた経験もありました。褥瘡治療や再発防止には,発生要因となる生活環境への介入が必須となります。 褥瘡の悪化は敗血症の発症など生命を脅かす危険もあります。患者の望む生活を重視する訪問看護ステーションのスタッフと褥瘡の治療を重視する病院スタッフは,患者の褥瘡の状態および生活環境について互いに情報を共有し,理解を深めることが大切です。

褥瘡ケアにおける在宅へのスムーズな移行に必要な7つの要点 -インタビュー結果より-

 褥瘡ケアを在宅へ移行させるための要点として, 7つがカテゴリー化されました(表)。「不足のないケア用品の準備」としては,入院中に在宅で使用する用品を準備し実際に評価することが重要です。例えば,洗浄用品などは市販品で代用しますが,形状が似ている用品でも,褥瘡の部位により使い勝手が異なるため実際に確認することが必要です。また,ケア中に使用する防水シートはレジャーシートで代用可能なことなど,具体的に提示することが必要です。「在宅で使い勝手のよいケア用品の選択」について,外用薬の容器はボトルタイプのものより,チューブタイプのものが使いやすいとの意見が聞かれました。「訪問診療/外来通院の選択」では,通院による患者・家族の負担が予想される場合には,訪問診療が受けられる準備をしてから退院することが望まれています。「在宅で活用できる退院サマリーの作成」は,退院時の状況だけでなく,発生時からの状況と発生要因を記載することで,在宅でのリスクを考えるうえで役立つとの意見が聞かれました。また,退院調整カンファレンスを活用し,実際の褥瘡処置を観察することで訪問看護ステーションのスタッフによる処置の手順書の作成も可能との意見が聞かれました。「退院前の褥瘡リスクアセスメント」は,その結果に基づきケアマネジャーと連携強化を図ることで,在宅で体圧分散寝具などの選択をする際に役立つという意見も示されています。

在宅医療において活躍が期待される専門の研修を修了した看護師の活動

 次に当院が行っている取り組みを紹介します。当院では,地域医療連携室内にWOC相談室を開設しています。脊髄損傷患者で難治性褥瘡症例の場合などは,退院前同行訪問を実施しており,褥瘡の発生原因をアセスメントしてケア方法を検討し,地域保健医療福祉機関の関連職種と協議するなどして,褥瘡の再発防止に取り組んでいます。 また,褥瘡患者は病院だけの患者ではなく,地域で生活をする患者です。同一地域で受けられる褥瘡ケアの質は担保されなくてはならず,そのためには日ごろから看護師だけでなく地域の関連職種を対象とした教育の場が必要と考えます。そこで藤沢市内の有志で2008年に藤沢褥瘡研究会を設立し,顔の見える連携と,地域全体の褥瘡ケアの質の向上を目指して活動しています。 また,2012年度の診療報酬改定で,皮膚・排泄ケア認定看護師などの褥瘡ケアに関わる専門の研修を受けた看護師が,訪問看護ステーションの看護師と在宅患者を訪問した場合に,在宅患者訪問看護・指導料の算定が認められることになりました。 今後,在宅における褥瘡ケアに対して,こうした制度を活用しながら医師,看護師をはじめ,関連職種とのよりよい連携の在り方を模索し,さらに貢献していきたいと考えています。

難治性皮膚潰瘍~医師と看護師による最新の取り組み~

表 褥瘡を有して退院する患者のケアを在宅へ移行するための要点

●診療材料は入院中に準備

●テープ類などは忘れがちであるため注意が必要

●用意できているか入院中に確認

●準備した物で実際に練習する

●外用薬はチューブタイプを希望

●舌圧子などはできるだけ使用しない

●洗い流しやすい薬剤

●高コストにならない配慮

●入手しやすい物を選択

●在宅ケアのプロの目で退院指導をチェック

●実行可能性のある退院指導

●実際に褥瘡を確認する場の設置

●どこにどうやって通院するのかを確認

●通院の交通費は負担にならないかを確認

●困ったときの相談先

●普段から顔の見える連携

●発生時の状況,発生要因の記載

●写真

●用品の購入先(どこで入手可能か)

●処置の手順書

●リスクアセスメントの結果から ケアマネジャーとの連携を強化

不足のないケア用品の準備

褥瘡を有して退院する患者のケアを在宅へ移行させるための要点 退院時までに必要と考えられる事項

在宅で使い勝手のよいケア用品の選択

退院調整カンファレンスの開催

訪問診療/外来通院の選択

相談できる窓口の設置

在宅で活用できる退院サマリーの作成

退院前の褥瘡リスクアセスメント

(提供:内藤亜由美先生)

ALCARE_JSPU_2012.indd Sec1:2ALCARE_JSPU_2012.indd Sec1:2 14.5.27 10:42:42 AM14.5.27 10:42:42 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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bFGF製剤と創傷用シリコーンゲルドレッシングの併用による皮膚潰瘍治療の工夫 九州大学大学院

医学研究院皮膚科学分野診療講師

中原 剛士 先生

■演題2

難治性皮膚潰瘍治療に対するストラテジー

 皮膚潰瘍病変が慢性化・難治化する背景には,①局所以外の原因で創傷治癒が働かない状況にある,②局所の原因で創傷治癒が働くはずなのにうまく機能していないという2点が挙げられます。 局所以外の原因としては,動脈性・静脈性,神経性,膠原病による血管炎,感染性,腫瘍性,薬剤性などが考えられ,全身的な治療を要します。局所の原因としては,局所の病変自体の問題,不適切な処置が考えられます。 創傷治療においてはwound bed preparation,moist wound healingが重視されています。また,wound bed preparationの実践的指針としては,創傷治癒阻害要因をT(活性のない組織や組織の損傷),I(感染または炎症),M(湿潤環境のアンバランス),E(創辺縁の治癒遷延または下掘れ)の側面から検証し,治療・ケア介入に活用するTIMEコンセプトが重視されています。 創傷治癒過程は炎症期,増殖期,成熟期に分けられます。炎症期の創傷管理の要点は炎症期を早く完了させることにあり,感染対策,壊死組織の除去に努めることが重要で,創の状態に合わせ外用薬や創傷被覆材を用います。 増殖期には,創面の湿潤環境(滲出液を適度に保持した状態)を維持する必要があり,創傷被覆材が非常に効果を発揮します。増殖期から成熟期にかけては,肉芽形成促進効果(線維芽細胞増殖作用,血管新生の促進,局所血流改善,創面保護)のある外用薬や創傷被覆材を選択します。 創傷被覆材や外用薬の選択においては,病態に対して最適と思われる治療であるだけでなく,患者が苦痛に感じる被覆材交換時の痛みの軽減,病態,部位によっては患者自身による交換が可能である点など,患者の視点に立って選択することも重要です。こうした観点から,われわれはbFGF製剤と創傷用シリコーンゲルドレッシングであるエスアイエイドⓇの併用を試みました。

被覆材交換時の痛みの軽減

 bFGF製剤の作用機序は,血管内皮細胞,線維芽細胞のFGF受容体に直接結合した後に血管新生や線維芽細胞の遊走・増殖を促し,肉芽形成,創傷治癒促進に至るというものです。近年,bFGF製剤については治療期間の短縮に加えて瘢痕組織の質の改善効果も指摘されています。 一方,エスアイエイドⓇは3層構造から成り,創傷面に密着した

シリコーンゲルのメッシュ状に無数に開いた孔を滲出液や血液が通過し,吸収層で吸収・保持されるとともに,最外層の基材は通気性がよい,という機能を有しています。また,シリコーン粘着技術により創傷面と周辺皮膚へのダメージが少なく,貼付中のずれが少ないため新生組織への影響も軽減されます(図1)。 bFGF製剤とエスアイエイドⓇを併用する利点としては,①創部を毎日観察でき,②創部に毎日bFGF製剤を使用できる,③交換時の痛みの軽減,④創周囲の皮膚障害の防止,⑤被覆材交換の簡便さや治療期間の短縮,が期待されます。難治性皮膚潰瘍の治療において,bFGF製剤とエスアイエイドⓇとの併用療法は有効かつメリットが大きいことから,今後の治療の選択肢の1つになりうると考えています。

症例提示

 当院においてbFGF製剤とエスアイエイドⓇとの併用が有効であった症例を紹介します。

■症例1 膠原病,糖尿病が基礎疾患にある 外傷性の下腿潰瘍

 患者は,自宅で転倒し右下腿に外傷を受傷しました。受傷後10日目に壊死した表皮が脱落し,広範囲に及ぶ感染を伴った

演者

図1 難治性皮膚潰瘍に対するbFGF製剤と創傷用シリコーンゲルドレッシング併用療法

外用薬 bFGF製剤

bFGF製剤と創傷用シリコーンゲルドレッシング併用療法

作用機序 FGF受容体を刺激して,(1)血管新生作用,(2)肉芽形成促進作用,(3)表皮細胞増殖作用

シリコーン粘着技術で,剝離時の創傷面とその周辺皮膚へのダメージを軽減

被覆材

剝離時のイメージ

エスアイエイドⓇ

特徴

(提供:中原剛士先生)

ALCARE_JSPU_2012.indd Sec1:3ALCARE_JSPU_2012.indd Sec1:3 14.5.27 10:42:43 AM14.5.27 10:42:43 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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難治性皮膚潰瘍~医師と看護師による最新の取り組み~

2013年1月作成

発行:アルケア株式会社編集制作:株式会社メディカルトリビューン

皮膚潰瘍が形成されたため,抗生剤を投与しながら,連日の洗浄と,スルファジアジン銀外用薬で治療しました。受傷後1カ月目に,感染は鎮静化したのですが,潰瘍面積の縮小が得られなかったため,bFGF製剤は連日噴霧とし,創の状態を観察しながらエスアイエイドⓇは数日に1回交換として併用療法を開始しました。併用療法開始直後から創周囲の上皮化が認められ,潰瘍面積も縮小し始めました。併用療法開始5週間後,エスアイエイドⓇは過度の固着がなく,潰瘍周囲の脆弱な皮膚にも障害は認められませんでした。開始11週間後には,処置時に痛みを伴うことなく全潰瘍面が上皮化し,治癒に至りました(図2)。

■症例2 うっ滞性皮膚炎を併発した 下腿潰瘍

 本症例は,下腿潰瘍および潰瘍周囲に強い瘙痒を伴う,うっ滞性皮膚炎を有し,搔破による紅斑やびらんも認められました。ステロイド外用薬によっても症状が改善されなかったことから,bFGF製剤とエスアイエイドⓇの併用療法を開始しました。併用療法開始3日後は微小なびらんも認められましたが,10日後には潰瘍面はわずかに縮小し,潰瘍の状態も良好となり,潰瘍周囲のうっ滞性皮膚炎,びらんもほぼ治癒,瘙痒などの自覚症状も落ち着きました(図3)。本症例においては患者からは,被覆材をエスアイエイドⓇ

に変更したことにより交換時,および貼付中の瘙痒が消失して搔破することがなくなったと,治療法に対しての満足が得られました。

■症例3 生体腎移植後に生じた カルシフィラキシスが疑われた 腹部皮膚潰瘍

 糖尿病性腎機能障害のための生体腎移植術後4カ月目にカルシフィラキシスが疑われる腹部潰瘍を発症し,その後難治化した症例に,bFGF製剤とエスアイエイドⓇの併用療法を行いました。併用療法開始2週間で潰瘍は縮小し始め, 4週間後には痛みはほぼ消失,その後急速に潰瘍面積は縮小し,併用療法開始後6週間で潰瘍周囲皮膚への障害もなく上皮化は完了しました。本症例は患者自身が処置を行ったのですが,適度な密着性と交換の簡便さが喜ばれました(図4)。 これまでの経験より,bFGF製剤とエスアイエイドⓇ

による併用療法は潰瘍治癒目的のみではなく,被覆材交換時の痛みの軽減,交換の簡便さ,潰瘍周囲の合併症の治療,皮膚炎の改善という点からも有用な治療法であり,難治性皮膚潰瘍の治療選択の1つとなりうると考えています。

図2 ■症例1 膠原病,糖尿病が基礎疾患にある外傷性下腿潰瘍

開始後5週間 開始後11週間

開始時(受傷後1カ月) 開始後2週間

(提供:中原剛士先生)

図4 ■症例3 生体腎移植後に生じたカルシフィラキシスが 疑われた腹部皮膚潰瘍

(提供:中原剛士先生)

開始後4週間 開始後6週間

開始時(初診後2カ月) 開始後2週間

図3 ■症例2 うっ滞性皮膚炎を併発した下腿潰瘍

(提供:中原剛士先生)

開始時 3日後 10日後

ALCARE_JSPU_2012.indd 4ALCARE_JSPU_2012.indd 4 14.5.27 10:42:38 AM14.5.27 10:42:38 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック