韓国の特殊教育の現状と情報化への対応 ·...

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55 1995 1997 1997 1998 2001 1995 NIS E K ISE 2001 2000 2000 2001 た200 44,000 12 23 管轄 129 41 83 たこ 1996 12 15 78 17 1990 102 19,947 2000 129 24,196 1990 3181 2000 3802 1995 31510 2000 26000 又進

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Page 1: 韓国の特殊教育の現状と情報化への対応 · は2001年7月に韓国国立特殊教育院の協力により、韓国の 調査を行った。その結果をもとに特殊教育の現状と情報化

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1.はじめに

「世界の特殊教育」では韓国の特殊教育制度について「韓

国における特殊教育の動向」(柴山1995) 、「韓国における

特殊教育行政組織と関係法規」(柴山1997) 、「特殊教育振

興法」(朴1997) を掲載してきた。

韓国教育部(文部省)は特殊教育に関する法律「特殊教

育振興法」に基づき、わが国の盲 聾 養護学校学習指導

要領にあたる「特殊学校教育課程」を制定、特殊教育の普

及に努めている。現行の特殊教育課程は1998年改訂の「第

7次教育課程」と呼ばれるものである。韓国の特殊教育制

度や教育課程は大枠はわが国のものと類似しているが、細

部では相違点も多い。

朴(2001) は特殊教育振興法に対して「現実を法律が牽

引する先行法的な性格」、「法律の進捗状況の定期的なモニ

タリングが必要」と指摘している。柴山(柴山1995) は韓

国への訪問調査から同国の特殊教育について「特殊教育義

務制の実施に向けた教育機会の拡大、障害の重度化 多様

化に向けた教育、特殊教育制度の多様化、教員養成 研修」

といった課題を指摘している。

独立行政法人国立特殊教育総合研究所(NISE)と韓国国

立特殊教育院(KISE)は研究交流協定をもっている。著者

は2001年7月に韓国国立特殊教育院の協力により、韓国の

調査を行った。その結果をもとに特殊教育の現状と情報化

への対応について紹介したい。

2.韓国の特殊教育の現状

韓国の特殊教育に関する統計資料として「障害者実態調

査結果報告」 と「特殊教育実態調査」 がある。これらの

調査資料も後述の「創造的知識基盤国家」をめざす韓国の

政策にもとづきインターネットを通じて発信され、誰でも

利用できるようになっている。

2000年度障害者実態調査結果報告

「2000年度障害者実態調査結果報告」 は韓国保険社会

研究院の障害者福祉チームが2001年1月に出した200地域

44,000世帯の抽出調査の結果報告書で、韓国の最新の障

害児者の動向を示したものである。この調査はわが国の

厚生労働省が5年に一回実施する「知的障害児(者)基

礎調査(平成12年)」「知的障害児(者)基礎調査(平成

8年)」にあたるものである。

特殊教育実態調査

「特殊教育実態調査書」 は韓国教育部(文部省)が調

査を行う学校基本調査をまとめたものである。わが国の

「特殊教育資料」に相当する統計である。

特殊教育の制度に関する規定と現状

上記の2つの資料と韓国の特殊学校視察を通して、韓

国の特殊教育の現状について記述する。

韓国の地方行政は東京23区にあたるソウル特別市、政令

指定都市にあたる釜山、大邱、仁川、光州、大田、蔚山の

広域市、そして京畿道、江原道、忠清北道、忠清南道、全

羅北道、全羅南道、慶尚北道、慶尚南道、済州道の「道」

が行政の単位となっている。特別 広域市には区が、道に

は一般の市と郡が置かれている。それぞれの教育庁には特

殊教育に関する部局が置かれている。

韓国の学制は6 3 3 4制であり、幼稚園から高等

学校までが「無償教育」と呼ばれ授業料等を徴収しない。

私立学校については定数分の教員の給料、学校備品 校費

等は管轄の教育庁から支給される。学校設備や定数以上の

教員 補助教員の給与等については各校の創意工夫に任さ

れている。特殊教育諸学校は韓国全土で129校ある。設立別

には国立が5校、公立が41校、私立が83校と私立校が多い。

これは韓国の教育史の中で特殊教育は多くの篤志家により

始められたことによっている。(李1996)

障害種別には盲学校12校、聾学校15校、知的障害養護学

校(韓国では「精神遅滞」と呼ばれる)78校、肢体不自由

養護学校17校、情緒障害養護学校(韓国では「発達障害(自

閉)」と呼ばれ知的障害と区別されている)7校がある。(表

1)全ての特別市 広域市 道に全障害種別の学校が設置

されているわけではない。(表2)特殊教育諸学校の総児童

生徒数は 1990 年の 102 校 19,947 名から 2000 年の 129 校

24,196 名まで毎年増加している。(表3)一方特殊学級は

1990年の3181学級から2000年の3802学級まで年々増加して

いる。ただし、学生数は1995年の31510名をピークに減少

し、2000年まで26000名前後を行き来している。(表4)特

殊教育予算の対象学生数は増加している。(表5)

また、又進養護学校ではそれまで就学猶予 免除や施設

入所、訪問教育の対象であった重度重複障害をもつ児童

第五部 国際セミナー・国際調査報告

韓国の特殊教育の現状と情報化への対応

大 杉 成 喜(情報教育研究部)

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表1 障害別・設立別特殊学校及び学生数

障害別

設立別総計

国立 公立 私立

学校数 学生数 学校数 学生数 学校数 学生数 学校数 学生数

視 覚 障 害 1 243 2 215 9 857 12 1,315

聴 覚 障 害 1 271 4 422 10 1,764 15 2,457

精 神 遅 滞 1 385 30 7,095 47 8,237 78 15,717

肢 体 不 自 由 1 111 5 1,056 11 1,862 17 3,029

情 緒 障 害 1 163 171 6 1,344 7 1,678

計 5 1,173 41 8,959 83 14,064 129 24,196

資料:韓国教育部(2000).特殊教育実態調査より. 韓国特殊教院

表2 地域別・障害別特殊学校現況

区分 視覚障害 聴覚障害 精神遅滞 肢体不自由 情緒障害 計

ソウル

釜山

大邱

仁川

光州

大田

蔚山

京畿

江原

忠北

忠南

全北

全南

慶北

慶南

済州

2

1

1

1

1

1

1

2

1

1

4

1

1

1

1

1

1

1

1

1

1

1

15

6

3

3

2

2

1

17

3

2

5

4

5

6

3

1

4

1

2

1

1

1

1

2

2

1

1

2

1

2

1

1

27

9

8

6

5

4

2

21

5

8

5

8

7

7

5

2

計 12 15 78 17 7 129

資料 : 韓国教育部 (2000), 特殊教育実態調査より, 韓国特殊教育院

表3:特殊学級・学生数の推移

年度 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000

学校数 102 102 103 106 106 108 109 114 118 123 129

学級数 1763 1829 1896 1954 2006 2058 2114 2289 2415 2479 2608

学生数 19947 20214 20690 20985 21262 21569 21948 22789 23487 24091 24196

教員数 2746 2824 2992 3169 3272 3422 3556 3876 4106 4244 4316

資料 : 韓国教育部 (2000), 特殊教育実態調査より, 大杉作成

表4:特殊学級・学生数の推移

年度 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000

学級数 3181 3248 3280 3321 3400 3440 3533 3626 3728 3764 3802

学生数 29989 28795 28231 28210 27669 31510 26087 25300 25031 26178 26627

資料 : 韓国教育部 (2000), 特殊教育実態調査より, 大杉作成

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生徒の特殊教育諸学校への通学が始まっている。結果とし

て養護学校の「重度重複化 多様化」が始まってきたと考

えられる。また韓国の特徴として高等学校にも特殊学級が

設置されている。(表6)(表7)なお、日本で言う病弱養

護学校はなく、訪問教育として実施されている。特殊教育

諸学校の規模はわが国が1校あたり平均児童生徒数が88名

であるに対して韓国は187名と大規模校の傾向にあるといえ

る。

韓国の教員定数は学級に対して1名である。訓練等の専

門的な指導については資格を有する治療教諭が行う。(表

8)昨今の児童 生徒の障害の重度重複化 多様化により

教員の負担は増加している。そのため学校独自の創意工夫

で補助教員やボランティアを置くところも少なくない。重

度の障害を持つ児童 生徒の身辺介護は待機している保護

者が行い、教員は教育に関する業務を行うという体制をとっ

ている学校もある。

韓国では盲学校3校、ろう学校1校、知的障害養護学校

19校、肢体不自由養護学校1校、情緒障害養護学校1校が

専攻科を有している。知的障害養護学校専攻科の就学総計

45学級583名は日本の122名と比べて多い。(表9)

3.韓国の「特殊教育ビジョン2020」について

「特殊教育ビジョン2020」 は韓国特殊教育院が作成した

特殊教育改善のための提言である。韓国特殊教育院は「障

害者実態調査結果報告」「特殊教育実態調査」等の実態調査

と海外の特殊教育との比較検討をふまえ、2020年の特殊教

育の在り方として以下の7点を結論づけている。

全ての児童生徒に適切な教育を提供するため、障害の

カテゴリと基準の再規定と特殊教育の実態調査の必要

性。

特殊教育を必要とする児童生徒が希望する場合、いつ、

どこででも一般の児童生徒と共に統合教育を受けるこ

とを保障すること。

障害のある成人の生涯教育体制を構築し、学校卒業以

後もいつ、どこででも必要とする教育を継続して受け

られるように保障すること。

生活の質を向上するのに適合した職業教育の内容を改

善と医療的介入と関連サービスの拡大 提供。

教育課程運営方法の多様化と社会生活への転換を支援

する教授方法を改善。

特殊教育担当教員等の養成体制と現職研修制度の改善

による特殊教育の専門性の強化。

地域社会を中心とした特殊教育支援体制を構築。

韓国特殊教育院は「特殊教育ビジョン2020」の結論は十

分実現可能なものであるとし、その目標達成のための4つ

の提言をしている。

特殊教育関連法律の改正

具体的な年次別発展計画を樹立と毎年の達成度点検

特殊教育に対する優先的な財政支援

特殊教育を必要とする児童生徒の権利に対する認識の

改善

この韓国特殊教育院の「特殊教育ビジョン2020」とは別

に特殊教育のパラダイム研究として韓国大邱大學校では

「Brain Korea21」プロジェクト研究が行われ、最終年の2006

年には新特殊教育振興法と新しい教員養成 現象教育の在

り方についての報告を行う計画である。

韓国ではこれらの提言を踏まえて、特殊教育振興法が改

変され今後の特殊教育施策が進んでいくものと考えられる。

4.韓国の情報化と障害児者への対応

韓国政府は金大中大統領の1999年の年頭演説を受け、同

年3月「知識情報の創出、蓄積、活用能力の先進化により、

2002年までに世界10位圏の情報化先進国に入る」ことを目

標とした「サイバーコリア21-創造的知識基盤国家建設のた

めの情報化ビジョン-」 を策定した。その代表的な項目と

して「超高速通信網の早期完成」「ベンチャー企業の育成」

「情報格差の解消」「教育の情報化」等があげられる。

「情報格差」の解消については「情報格差解消に関する法

律(2001.1.16法律第6356号)」 「同施行令(大統領令17223

号 2001.5.16)」 が制定された。同法は「低所得者 農漁

村地域住民 障害者 高齢者 女性など経済的、地域的、

身体的または社会的条件によって、生活に必要な情報通信

表5 教育部予算対応の特殊教育予算比率及び学生教育費

(単位 : 千ウォン)

年度別教育部

予 算

特殊教育

予 算

全体予算

対応率 (%)

受 恵

学生数

1人当り

教育費

1996

1997

1998

1999

2000

15,565,216,500

18,287,608,665

18,127,837,527

17,456,265,000

19,172,027,020

238,102,827

298,596,440

337,070,063

315,782,768

340,225,173

1.5

1.6

1.9

1.8

1.8

47,947

48,089

48,518

50,269

54,732

4,965

6,209

6,947

6,282

6,216

資料 : 韓国教育部 (2000). 特殊教育年次報告より, 韓国特殊教育院

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表6 2000年特殊学級現況

課程別 設置学校数 学級数 学生数 教師数

幼 稚 園

初 等 学 校

中 学 校

高 等 学 校

53

2,431

652

62

56

2,974

683

89

259

20,969

4,503

896

56

3,008

716

105

計 3,198 3,802 26,627 3,885

資料 : 韓国教育部 (2000a). 特殊教育実態調査より, 韓国特殊教育院

表7 初・中・高等学校特殊教育対象学生数

区分 小学校課程 中学校課程 高等学校課程 合計

特 殊 学 校

特 殊 学 級

一 般 学 級

10,276

20,969

2,691

5,761

4,503

704

6,012

896

484

22,049

26,368

3,879

合計 33,936 10,968 7,392 52,296

資料 : 教育部 (2000a). 特殊教育実態調査より.

表8 特殊教育担当教員現況

区分 校長 教頭 幼稚部 初等部 中等部養護

教諭

治療

教諭合計

視 覚 障 害 学 校

聴 覚 障 害 学 校

精 神 遅 滞 学 校

肢体不自由学校

情 緒 障 害 学 校

特 殊 学 級

12

12

75

15

6

-

8

14

70

13

8

-

16

42

131

21

20

56

76

124

914

186

78

3,008

156

224

1,307

272

118

821

13

15

76

16

6

-

14

28

178

36

16

-

295

459

2,751

559

252

3,885

合計 120 113 286 4,386 2,898 126 272 8,201

資料 : 韓国教育部 (2000). 特殊教育実態調査より, . 韓国特殊教育院

表9 特殊教育諸学校学級・学生数

区分 学校数幼稚部 初等部 中学部 高等部 専攻科 計

学級 学生 学級 学生 学級 学生 学級 学生 学級 学生 学級 学生

視 覚 障 害 12 16 90 70 417 37 278 39 458 7 72 169 1315

聴 覚 障 害 15 52 418 108 816 57 503 59 720 4 0 280 2457

知 的 障 害 78 135 684 796 6838 374 3832 329 3780 45 583 1679 15717

肢 体 不 自 由 17 22 147 165 1336 76 744 67 792 1 10 331 3029

情 緒 障 害 7 18 117 70 869 33 404 26 262 2 26 149 1678

合計 129 243 1456 1209 10276 577 5761 520 6012 59 691 2608 24196

資料 : 韓国教育部 (2000). 特殊教育実態調査より, 大杉作成

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サービスにアクセスしたり利用することが困難な者に対し

て、情報通信網に対する自由なアクセスと情報利用を保障

することによって、生活の質を向上し均等な国民経済の発

展に尽くすこと」を目的とし、「情報格差解消総合計画」を

5年ごとに制定、運営を行うことを定めている。

「教育の情報化」については全学校の高速ネットワーク接

続、教員の「情報リテラシ認証制」を実施し、学校の情報

化に力を注いできた。2001年4月、金大中大統領は「全国

初等中等学校の情報インフラ構築とインターネット接続記

念式」 において目標達成を宣言した。ここで「23万5千余

の教室のコンピュータ普及の完了」、「34万教員全員が個人

用コンピュータを所有」が達成され、教育の情報化の基盤

が完成したとしている。著者は同年7月、ソウル特別市お

よび京畿道安山市の特殊学校(知的障害養護学校 肢体不

自由養護学校 情緒障害養護学校)と特殊学級を有する初

等学校の4校の視察を行ったが、どの学校も光ファイバ等

高速回線によるインターネットを活用していた。公的施設

だけでなく一般家庭にも ADSL 光ファイバ等高速回線を

利用した接続が増えている。国立又進養護学校では学校か

ら訪問教育家庭へのインターネットテレビ放送による授業

発信等が始められていた。

韓国のインターネットでは様々な教材コンテンツを発信

するサイトがある。これを授業に活用することで教育の質

を高めることをめざしている。教育の情報化に関する業務

を行う韓国教育学術情報院 が運営する Edunet(http://www.

edunet4u.net) は学校教育用のポータルサイトとして多く

の情報を発信している。Edunetでは年2回教育用 Web サイ

トの評価を行い、10位までのサイトに「優秀教育用ソフト

ウェア品質認証」を授与している。たとえば今期受賞した

マルチパンパン(http://kid.eoline.co.kr) は幼児 初等教育

用Web サイトであり、知的障害教育に適した教材も多く発

信している。

Web メディアではない特殊教育教材ソフトウェアとして

は「PARADICE-CD」が有名である。「PARADICE-CD」

は PARADICE 福祉財団 が製作した特殊教育ソフトウェア

集で現在まで14巻が刊行されている。内容はマッチング等

からハングルの読み書きまでといったもので、肢体不自由

児が使用するスイッチインタフェースにも対応している。

「PARADICE-CD」は全ての特殊教育現場に無償配布され

ており、インターネット上の様々な Web コンテンツと併せ

て学校現場で活用されている。また、PARADICE福祉財団

は障害児 保護者 教育関係者支援のための「ポータルサ

イト」である isori ネット(http://mall.isori.net) を運用して

いる。

特殊教育に関する様々な公的情報は韓国特殊教育院

(http://www.kise.or.kr) がWeb を通じて発信している。そ

の主な内容は以下の通りである。

特殊教育に関するニュース

特殊教育に関する様々な文書

特殊教育に関する様々な論文

教材コンテンツの発信

特殊教育に関する掲示板

現職教員による様々な実践論文

同院が発行する隔月刊の雑誌「現場特殊教育」の pdf

ファイルによる発信

現職教育「遠隔サイバー研修」の実施

韓国特殊教育院の Web ページも特殊教育に関する「ポー

タルサイト」を目指している。これは前記の「サイバーコ

リア21」の一環であり、私立の isori ネット、国立の韓国特

殊教育院がそれぞれ特殊教育の情報化の浸透に対して役割

を担っていると考えられる。わが国の特殊教育ポータルサ

イトは現時点では確立していない。

5.おわりに

韓国の特殊教育制度の大枠はわが国と類似しているが、

その運用においては様々な相違点が見られた。韓国でも21

世紀を迎え、新たな教育改革への気運が高まっている。

2001年1月わが国では文部科学省初等中等局特殊教育課

の名称が特別支援教育課に改称されるともに、「21世紀の特

殊教育の在り方について」最終報告が出された。その中で

特殊教育の新たな課題と目標が明らかにされ、重点課題の

ひとつである「最新の情報技術(IT)を活用した指導の充

実」については IT 先進国である韓国が大いに参考になりう

る。また、両国が課題とする「ノーマライゼーション」や

「特殊教育関係教職員の専門性向上」についてもそれぞれの

実情に応じた変革が期待され、それらの成果を比較検討す

ることでよりよい方向を見いだすことが可能と考えられる。

引用参考文献

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pp93-95, 1997.

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21)マルチパンパン, http://kid.eoline.co.kr

22)PARADICE 財団, http://paradise.or.kr, http://isori.net

23)韓国特殊教育院, http://www.kise.or.kr

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National Institute of Special Education, Japan

(NISE)and Korea Institute for Special Education

(KISE)have established a collaborative research

agreement. As a part of the collaboration, the author had

an opportunity to investigate state of the art of special

education practices at KISE in July, 2001.KISE has

announced "Special Education Visions for the Year 2020,"

that proposes efforts for the special education

improvement in Korea. This proposal is made up of

KISE's own research activities. Incorporating the work

of "Report on People with Disabilities" and "Report on

Special Education," the proposal is geared toward review,

comparison, analysis of special education practices in

foreign countries.The Korean government has a policy,

entitled " Cyber Korea 21 - Vision for the Creative

Knowledge-Based State Construction." One of the goals

is to promote on becoming information-oriented schools

in the entire country. The policy was successfully

implemented. The information literacy authentication

system, high-speed network connecting the whole

university schools and teachers have established,

therefore, the aim has achieved in April, 2001.KISE is

distributing various public information on the special

education through Web. The Web pages aim at so-called

"portal site" about the special education.Advancement of

IT and it use in all aspects of Korea is fascinating. Its

achievements appear to be as much a product of the

nation's unique commitments. Its efforts surly contribute

to educational achievement in the Japanese context.

State of the Art: Information Technology of the Special Education in Korea

OSUGI Nariki(The Department Educational and Information Technology )

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第1条(目的)

この法律は低所得者 農漁村地域住民 障害者 老齢者

女性など経済的、地域的、身体的または社会的条件によっ

て、生活に必要な情報通信サービスにアクセスしたり利用

することが困難な者に対して、情報通信網に対する自由な

アクセスと情報利用を保障することによって、彼らの生活

の質を向上し均等な国民経済の発展に尽くすことを目的と

する。

第2条(定義)

① この法律で使用する用語の定義は次の通りである。

1.「情報格差」とは経済的 地域的 身体的または社会

的条件によって情報通信網を通した情報通信サービ

スに接近したり利用できる機会における差を言う。

2.「情報通信サービス」とは情報通信網利用促進及び情

報保護等に関する法律第2条第1項第2号に規定に

よる情報通信サービスを言う。

② この法律で使用する用語の定義は第1項で定義するのを

除いては情報化促進基本法が定めるものによる。

第3条(国家及び地方自治体の責務)

国家及び地方自治体は情報化政策の制定 執行において

あらゆる国民が情報通信サービスに自由に接近しこれを利

用できるように必要な施策を講じるべきである。

第4条(情報格差解消総合計画の制定)

① 政府は情報格差の解消のために情報格差解消総合計画

(以下「総合計画」という)を制定すべきである。

② 総合計画は情報通信部長官が関係中央行政機関の部門計

画を総合 調整し5年ごとに制定し、第6条の規定によ

る情報格差解消委員会及び情報化促進基本法第8条の規

定にある情報化推進委員会の審議を経た後これを確定す

る。

③ 総合計画には次の各号の事項が含まれなければならない。

1.総合計画の目標及び基本方向

2.支援対象者選定の基準

3.研究 開発に関する事項

4.情報化教育に関する事項

5.財源の調達及び運用に関する事項

6.国際協力に関する事項

7.その他、情報格差の解消のために必要な事項

④ 第2項の総合計画を制定するために関係中央行政機関の

長は機関別部門計画を制定し、前もって情報通信部長官

に提出すべきである。

第5条 (施行計画の制定)

① 関係中央行政機関の場は総合計画によって毎年情報格差

解消施行計画(以下「施行計画」という)を制定 施行

すべきである。

② 関係中央行政機関の場は毎年当てられて年度の事業計画

推進実績と次年度の施行計画を第6条の規定による情報

格差解消委員会に提出すべきである。

③ 施行計画の制定及び施行に関して必要な事項は大統領令

で定める。

第6条(情報格差解消委員会)

① 情報格差の解消に関する事項を審議するために情報化促

進基本法第8条の規定によって設置された情報化推進委

員会の分科委員会として情報通信部に情報格差解消委員

会(以下「委員会」という)をおく。

② 委員会は次の各号の事項を審議する。

1.総合計画の制定に必要な目標と基本方向の制定に関

する事項

2.総合計画の総合的調整に関する事項

3.情報格差解消のための事業の優先順位調整に関する

事項

4.その他にこの法の目的を達成する上で委員長が必要

と認める事項

情 報 格 差 解 消 に 関 す る 法 律(韓国)

制定 2001.1.16 法律第6356号http : //node3. assembly. go. kr : 5555/law/law/e 3/e305019. htm

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③ 委員会は委員長を含んで25人以内の委員で構成する。

④ 委員長は情報通信部長官であり、委員は関係部署次官と

情報格差の解消と関連した専門知識と経験が豊富な者の

中で委員長が委嘱する者である。

⑤ 委員会の組織 運営などに関して必要な事項は大統領令

で定める。

第7条(障害者 老齢者の情報通信サービス利用保障)

① 国家 地方自治体及びその他公共団体は障害者 老齢者

が便利に情報通信サービスを利用できるように必要な施

策を講すべきである。

② 情報通信サービス提供者はそのサービスを提供するにあ

たって障害者 老齢者のアクセス及び利用便宜増進のた

めに努力すべきである。

③ 障害者老齢者の接近及び利用便宜増進のための情報通信

サービスの種類 指針等に関して必要な事項については

大統領令で定める。

第8条(技術開発の促進等)

① 国家及び地方自治体は障害者 老齢者の情報アクセス及

び利用環境を改善するための関連技術(以下「関連技術」

という)を開発するための施策を講じるべきである。

② 情報通信部長官は情報化促進基本法第18条の規定によっ

て関連技術の開発を支援することができる。

③ 国家または地方自治体は障害者老齢者の情報アクセス及

び利用環境改善のために情報通信機器及びソフトウェア

を開発 生産する事業者と障害者 老齢者 農漁民低所

得者のための情報内容物を提供する事業者に対して各々

財政及び技術的支援できる。

④ 第3項の規定による支援対象者の 選定 支援の方法及

び手順などに関して必要な事項は大統領令で定める。

第9条(情報通信機器の支援)

① 国家または地方自治体は次の各号の1に該当する者に対

して大統領令が定めるところにより有償または無償で情

報通信機器を支援できる。

1.障害者福祉法第2条で規定している障害者

2.国民基礎生活保障法第2条第1号で規定している受

給権者

3.その他経済的 地域的 身体的または社会的制約に

よって情報を利用するのが困難な者として大統領令

で定める者

② 国家または地方自治体は第10条の規定による情報利用施

設を設置 運営する者に対して大統領令で定めるところ

により情報通信機器を有償または無償で支援できる。

第10条(情報利用施設の設置-運営等)

① 国家または地方自治体は情報格差の解消のため必要と認

める場合、次の各号の業務を行なう情報利用施設を設置・

運営できる。

1.情報化教育の実施

2.情報通信サービスを利用できる関連設備の提供

3.情報利用の促進のための広報

4.その外に大統領令が定める業務

② 政府は情報アクセス及び情報利用便宜増進などのためで

必要な場合には次の各号の1に該当する施設を情報利用

施設で指定できる。

1.国家 地方自治体及びその他公共団体の施設

2.第1号の規定による施設外のこととしてその設置

運営の主体から指定申請がある施設

③ 国家または地方自治体は第2項の規定によって指定され

た施設の設置 運営に必要とする費用の全部または一部

を負担できる。

④ 情報利用施設の設置基準, 指定 指定申請及び指定取消

手順, 指定市説に対する監督等に関して必要な事項は大

統領令で定める。

第11条(情報化教育の実施等)

① 国家または地方自治体は情報格差の解消のために必要な

情報化教育計画を制定してこれを施行すべきである。

② 国家または地方自治体は次の各号の1に該当する者に対

する教育費用の全部または一部を負担できる。

1.障害者福祉法第2条の規定による障害者のうち大統

領令で定める者

2.国民基礎生活保障法第2条第1号の規定による受給

権者

3.満60才以上の老齢者

4.女性のうち専業主婦など大統領令で定める者

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5.その他、政府の負担で情報化教育が必要だと大統領

令が定める者

③ 政府は情報化教育及び情報利用施設管理のために兵役法

第2条の規定による公益勤務要員など必要な人材を支援

できる。

④ 第1項の規定による情報化教育の対象及び種類は大統領

令で定める。

第12条(財源の調達)

① 国家または地方自治体は情報格差解消などのためで必要

な財源を確保するように努力すべきである。

② 国家または地方自治体はこの法が定める事業を実施する

ために国家予算 紙方者分団体予算または基金管理基本

法の基金として情報格差解消のために実施する事業派関

連した基金でこれを支援できる。

第13条(業務の委託)

① 国家または地方自治体は第9条から第11条の規定による

事業を大統領令が定める事業と関連した機関または事業

者に委託できる。

② 国家または地方自治体は第9条から第11条の規定による

事業が效率的に施行することができるように定められた

事業を支援する機関を指定できる。この場合、国家また

は地方自治体は予算の範囲内で必要な経費を補助できる。

第14条(租税特例の適用)

国家または地方自治体はこの法律により情報格差の解消

のため、情報通信機器または情報通信サービスを無償で提供

したり情報化教育を無償で実施する者に対し、租税特例制限

法または地方税法が定めるところより租税を減免できる。

第15条(関係機関の協力)

① 情報通信部長官は国家機関、地方自治体、政府外郭研究

機関その他関係機関または団体に対し情報格差の解消の

ために必要な協力を要請できる。

② 第1項の規定によって情報通信部長官の協調要請を受け

た国家機関、地方自治体、政府外郭研究機関その他関係

機関または団体は情報格差の解消が效率的に推進にされ

るように相互協調すべきである。

附 則

①(施行日)この法律は公布後3か月が経過した日から施

行する.

②(情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律第2

条第1項第2号に関した経過措置)第2条第1項第2号

中央情報部普通信網利用促進及び情報保護等に関する法

律第2条第1項第2号は法律第6360号情報通信網利用促

進等に関する法律の改正法律が施行される前日まで情報

通信網利用促進等に関する法律第2条第2号による。

翻訳:大杉成喜 国立特殊教育総合研究所情報教育研究部教育工学研究室 2001.8.24