軽量耐熱複合材cmc技術開発 (産学連携)の概要について€¦ ·...
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平成24年11月29日
第1回 航空機関連分野技術に関する 施策・事業評価検討会
資料5-8-4
軽量耐熱複合材CMC技術開発
(産学連携)の概要について
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目 次
1.プロジェクトの概要
2.目的・政策的位置付け
3.目標
4.成果、目標の達成度
5.事業化、波及効果
6.研究開発マネジメント・体制等
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1.プロジェクトの概要
概 要
実施期間
予算総額
実 施 者
プロジェクト
リーダー
軽量耐熱材料であるCMC(Ceramic Matrix Composites )を航空エンジンへ適用するためには、設計の課題として「損傷許容評価」、製造の課題として「高速加工技術」、「CVI(Chemical Vapor Infiltraiton)プロセス最適化」、修理の課題として「コーティング技術」を解決する必要がある。各々の課題に対して高度な知見を有する大学・研究機関とIHIが共同研究を行い、国内の技術力を結集することでCMCの実用化を加速する。
平成23年度~平成27年度(5年間)
これまでの合計2.4億円(委託) (平成23年度:1.1億円 平成24年度:1.3億円)
株式会社IHI
東北大学、東京大学、東京理科大学、金沢大学、九州大学
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
株式会社IHI 航空宇宙事業本部 技術開発センター
エンジン技術部 今成 邦之(部長)
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エンジン要素技術
複合材適用による低・高温部重量低減/オープンローター等新たな推進システムの実現 等
2.プロジェクトの目的・政策的位置付け <政策的な位置付け>
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3.目標
耐熱性に優れ、金属材料よりも軽量な部材として開発が期待されているセラミック複合材(CMC)の実用化を加速し、その普及拡大による低炭素・省エネルギー社会の実現に寄与するため、CMCの実用化にとって課題となっている基盤技術を開発することを目的とする。
要素技術(課題) 目標・指標 妥当性・設定理由・
根拠等
(1)CMC損傷許容
評価技術
CMCの損傷パラメータを選定し、CMC中に発生した損傷や寿命との関係を把握する。損傷の発生、進展を予測する手法を設定し、設計ツールを開発する。また、その実証実験を行う。運用時の検査基準を決める手法も設定する。
CMCは損傷を許容することが必須であり、全く新しい設計手法の確立、データの取得、試験での実証が必要。
(2)CMC高速加工技術 CMCを高温にした領域を加工する技術を確立し、従来に比べて5倍以上の生産性向上を目指す。また、従来の研削加工と同程度の加工精度を維持する。
CMCは難加工材であり、量産時の処理量を考えると現在の5倍以上の速度が必要。
(3)CVIプロセス最適化 a) CVIによる反応条件の最適化
CVIの含浸効率を従来比で50%以上改善する。副生成物を半減する方法を確立する。
b) CVIシミュレーション技術開発
CVIによるマトリクス形成量を予測でき、工業的なサイズのCVI反応器設計を可能とするシミュレーション手法を確立する。
量産時のCVI処理量を考えると左記の目標値が必要。また、シミュレーションにより、量産サイズで炉を設計できる必要がある。
(4)コーティング技術 CMCの損傷(マトリクス割れ)に対し、修理可能なコーティングを確立する。また、課題となるサンドエロージョン(砂による削れ)に対し、加速評価の手法を提案するとともに、熱サイクル、環境曝露評価方法を提案する。
CMCは新材料であり、修理方法も確立しておくことが実用化に向けて必要。
3.目標(全体スケジュール)
H23~24年度で基礎技術に目処を得て、H25~27年度で技術の適用を行なう。
平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度①
CMC損傷許容評価技術
②
CMC高速加工技術
③
CVIプロセス最適化
④
コーティング技術
レーザー援用加工
実験装置の構築
試験片加工特性評価
材料強度への影響評価加工条件最適化
実験炉構築 CVI反応実験CVI反応条件最適化
副生成物処理手法確立
シミュレーションモデル構築 シミュレーションモデル改善シミュレーション
モデル精度検証
スクリーニング試験 コーティング改良コーティング選定
施工方法開発
シミュレーション
モデル構築
試験実施
シミュレーションモデル改善コーティング評価
損傷パラメータ候補の選定
設計ツールの開発
実証試験
損傷パラメータの検討
運用時検査基準
の選定
基礎技術に目処 技術の応用・適用を可能
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4.成果、目標の達成度
要素技術 目標・指標 成 果
(中間)
達成度
(中間)
(1)CMC損傷許容
評価技術
CMCの損傷パラメータを選定して、損傷や寿命との関係を把握する。設計ツールを開発する。また、その実証実験を行う。運用時の検査基準を決める手法も設定する。
(中間) 損傷パラメータ候補を選定する。損傷の発生、進展を予測可能な解析手法の適用に目処を得る。
弾性率の低下、永久ひずみの増分、き裂密度を損傷パラメータとして選定した。
損傷による剛性低下を考慮した解析手法を検討・実施し、損傷の発生、進展を予測可能な解析手法に目処得た。
達成
(2)CMC高速
加工技術
CMCを高温にした領域を加工する技術を確立し、従来に比べて5倍以上の向上を目指す。また、従来の研削加工と同程度の加工精度を維持する。
(中間)
レーザー援用加工の実験装置を構築する。工具の検討、加工条件選定に必要な基礎データの取得を行う。
2種類のレーザーを選定し、レーザー援用加工の実験装置を構築した。
超鋼エンドミルを用い、耐熱性や耐摩耗性を考慮した加工条件や、刃先修理方法に関するデータを取得した。
達成
(3)CVIプロセス
最適化
a) CVIによる反応条件の最適化
CVIの含浸効率を従来比で50%以上改善する。また、副生成物を半減する方法を確立する。
b) CVIシミュレーション技術開発
CVIによるマトリクス形成量を予測でき、工業的なサイズのCVI反応器設計を可能とするシミュレーション手法を確立する。
(中間)
a)CVI実験炉を構築し、MTS※ガスの反応実験を行う。
b)CVIシミュレーションが実施可能な目処を得る。
a)プロセス条件を変更できるCVI実験炉を設計、構築した。CVI反応実験を行い、MTS原料ガスについて、温度・圧力・添加ガスが製膜速度に与える影響を調べた。
b)必要な定数を仮定し、簡易条件での反応速度と原料ガスの流れを考慮したCVIシミュレーションを行い、実施可能な目処を得た。
達成
(4)コーティング
技術
CMCの損傷に対し、修理可能なコーティングを確立する。また、課題となるサンドエロージョンに対し、加速評価の手法を提案するとともに、熱サイクル、環境曝露評価方法を提案する。
(中間)
コーティングの候補を3種類程度に絞る。
高温曝露試験、熱サイクル試験結果によりアルミナ、シリカ、耐熱ガラスを用いた3種類の候補を選定した。
達成
※MTS ・・・メチルトリクロロシラン
4.主な成果①(損傷許容評価、高速加工)
(1)CMC損傷許容評価技術 (2)CMC高速加工技術
45 °
Dynamometer
CMC
Laser head
XY
Z
End mill
0
20
40
60
80
100
120
Cutt
ing f
orc
e N
Ft Ft Fz Fz(MAX)(MAX) (MIN)(MIN) Removal vomume
Non-laser assist
Laser assist
20
10
30
40
50
60
0
Rem
oval
volu
me
m
m3
εm:最大歪
εp:永久ひずみ 構築した
レーザー援用
加工装置の概要
レーザー援用により切削抵抗の大幅低減を確認
疲労荷重負荷時の損傷パラメータの変化
(永久歪みの増分の場合) 荷重負荷時のその場観察による破壊メカニズムの解明
疲労での剛性低下による
応力集中部の応力低減を表現
荷重負荷レベル(上)と
疲労での剛性低下(下)
剛性低下を
解析ツールに
組み込み
半導体レーザー(左)と計測したビーム形状(右)
荷重方向
損傷なし 1サイクル
1000サイクル
荷重方向
荷重方向
4.主な成果②(CVIプロセス最適化、コーティング) (3)CVIプロセス最適化 (4)コーティング技術
MTSSpecies 1
Species 2
逐次反応
η1000 : 0.0013
η1100 : 0.0045
η1000 : 0.20
η1100 : 0.54
Si(100) substrate
3C-SiC(111) layer(βSiC, Cubic)
Ea2=35 kcal/molEa1=44 kcal/mol
気相組成 ~0.99 気相組成 ~0.01
……
併発反応
MTS Species 1 Species 2
MTS ⇒ SiC
MTS SiC
マクロスケール解析から
マクロスケール解析とミクロスケール解析から
構築したCVI実験炉
仮定した常数により、SiCのCVIシュミレー
ションを実施。
CVI含浸の粗(青)密(赤)が炉の位置を考慮して表現できた。
反応は2種以上の製膜種によると判明
添加ガスにより、
蒸着速度(左)の
向上と均質性(右)の両立可能である
ことを確認
化学的安定性と熱伸び差を考慮して候補を設定
450℃~1100℃、
100サイクル試験後外観
成分中液相と固相の割合を調整して製造性を改善。熱サイクルでも剥離しない候補を3種選定
試作時に見られた割れ
改善
サンドエロージョンのシミュレーションモデルを作成。
簡易な平板につき解析を実施。
衝突圧力 衝突速度ベクトル
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5. 事業化、波及効果
<事業化>
静翼
実機開発/型式承認
2012
(H24) FY2010
(H22)
2014
(H26)
2016
(H28)
2019
(H31)
市場投入
静翼研究
(H20FY~H24FY)
実機開発
フェーズ
研究開発
フェーズ
<本研究>
産学連携による
先端 ・基盤技術開発
(H23FY~H27FYを予定)
エンジン試験
次世代エンジン
技術実証設備 量産設備
設備導入
●国際共同開発
●エンジン全体での最適化
●複雑形状製造技術
●エンジン試験実証
●量産プロセス実証
●工程フリーズ
●量産設備へのフィードバック
実用化への課題洗い出し
実用化の基盤技術確立
設備設計へのインプット 技術確立へのフィードバック
量産化確立
●量産処理量実証
●品質安定化
●低コスト化
●設計技術確立(損傷許容)
●製造技術確立(CVI、高速加工)
●修理技術確立(コーティング)
試験規格化データベース
取得
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<波及効果>
我が国産業の競争力強化等への貢献 航空産業では、ボーイング787などの炭素繊維複合材の利用拡大において、日本の航空機メーカの競争力強化に貢献しており、現在自動車業界等へ展開されつつある。
同様に複合材としてCMCがそれに続く日本競争力強化に繋がることが期待される。また、技術波及が可能な輸送(自動車、鉄道、ロケット等)、エネルギー機器(ガスタービン、工業炉等)の分野において、耐熱性の高いCMCを活用することによる日本の競争力強化が見込まれる。
CMCはレアアース等代替材料(しかも、原料は国内で大量に採取可能) 素材、製造、修理までオール国産(日本が優位に)
エンジンはレアアース等が大部分を占める
軽量高性能ブレーキディスク
(自動車、航空機、鉄道 ; SGL H.P.)
スラスタノズル
(衛星・探査機)
耐熱外壁
(再突入機 ;JAXA H.P.)
技術波及
5. 事業化、波及効果
セラミックス繊維 ・東北大学が開発
・国内メーカーが製造を独占
界面コーティング ・(株)IHIが差別化技術
セラミックス含浸 ・(株)IHIが差別化技術
繊維織り ・日本各地の特色のある織物技術を
各部に組み合わせて活用
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6.研究開発マネジメント・体制等
設計の課題 製造の課題 修理の課題
日本の英知を結集
航空機用エンジンの国内最大手であり、CMC開発において実績のある株式会社IHIが研究開発全体を統
括・管理し、CMC素材の提供と評価の仕様・条件提示を行った。
また、各課題の解決にあたっては高度な知見を有する5つの大学(東京大学、東北大学、金沢大学、九州
大学、東京理科大学)、および1つの研究機関(宇宙航空研究開発機構)との共同研究を実施した。