高専間教育素材共有 ... -...

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金寺 石川工業高等専門学校 電子情報工学科 概要 全国高専が協力し e ラーニング教材を集約し共同利用するために開発 された高専間教育素材共有システムを紹介する。また、高専 IT 教育コンソ ーシアムの各種教材の収集状況についても紹介する。 1.はじめに 各高専において開発された教材は、多くの手間 と時間をかけて作成されたにもかかわらず、利用 できる学生が限られている。そこで、全国の高専 の優れた教材やノウハウを共有することにより、 高専全体の教育レベルの更なる改善が期待でき る。 高専 IT 教育コンソーシアムでの議論を通じ、 ・即座にユーザ登録、教育素材登録、閲覧可能 ・著作権情報を明示可能 ・高専間で教育素材を共有可能 といった要件を満たすシステムの開発が必要で あるとの合意が得られた。以上の要件を満たすシ ステムがなかったため、2005年に「高専間教育素 材共有システム」 [1] を開発した。 2.高専間教育素材共有システム 2.1 システムへのアクセス 高専 IT 教育コンソーシアムのホームページ [2] より高専間教育素材共有システム [3] にアクセスできる。 起動画面を図1に示す。画面上部はメニューとな っており、「ログイン」「ログアウト」「教材登 録」「ヘルプ」「分野別」「著者別」「検索」「New Contents」の各メニューが表示される。また、左 下の画面にはお知らせが、右下の画面にはヘルプ がそれぞれ表示される。「分野別」メニューを選 択すると、図2のように教材情報が分野別にディ レクトリ表示される。 2.2 教材の検索 メニューの「検索」ボタンをクリックすると、 図3のような教材検索画面が表示される。ここで は、キーワードや教材の種類による教材検索を行 うことができる。キーワードは「,」やスペース で区切って複数指定することができる。検索条件 では「すべてのキーワードを含む」と「いずれか のキーワードを含む」のいずれかを選択する。指 定したキーワードを用いて検索する対象として 「キーワード」「教材名」「教材の説明」「著者 名」「内容」をトグルスイッチで指定することが できる。教材の種類では、「資料」「ビデオ」「試 験問題」「WebClass」「その他」などを選択できる。 「検索」ボタンを押すと、入力したキーワード が検索対象に含まれ、指定した教材の種類に合致 する教材名リストが表示される(図4)。 また、メニューの「New Contents」ボタンを押 図1 高専間教育素材共有システム 図2 教材情報の分野別ディレクトリ表示画面 高専間教育素材共有システムの運用

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金寺 登

石川工業高等専門学校 電子情報工学科 概要 全国高専が協力し e ラーニング教材を集約し共同利用するために開発

された高専間教育素材共有システムを紹介する。また、高専 IT 教育コンソ

ーシアムの各種教材の収集状況についても紹介する。

1.はじめに

各高専において開発された教材は、多くの手間

と時間をかけて作成されたにもかかわらず、利用

できる学生が限られている。そこで、全国の高専

の優れた教材やノウハウを共有することにより、

高専全体の教育レベルの更なる改善が期待でき

る。

高専 IT教育コンソーシアムでの議論を通じ、

・即座にユーザ登録、教育素材登録、閲覧可能

・著作権情報を明示可能

・高専間で教育素材を共有可能

といった要件を満たすシステムの開発が必要で

あるとの合意が得られた。以上の要件を満たすシ

ステムがなかったため、2005年に「高専間教育素

材共有システム」[1]を開発した。

2.高専間教育素材共有システム

2.1 システムへのアクセス

高専 IT 教育コンソーシアムのホームページ[2]

より高専間教育素材共有システム[3]にアクセスできる。

起動画面を図1に示す。画面上部はメニューとな

っており、「ログイン」「ログアウト」「教材登

録」「ヘルプ」「分野別」「著者別」「検索」「New

Contents」の各メニューが表示される。また、左

下の画面にはお知らせが、右下の画面にはヘルプ

がそれぞれ表示される。「分野別」メニューを選

択すると、図2のように教材情報が分野別にディ

レクトリ表示される。

2.2 教材の検索

メニューの「検索」ボタンをクリックすると、

図3のような教材検索画面が表示される。ここで

は、キーワードや教材の種類による教材検索を行

うことができる。キーワードは「,」やスペース

で区切って複数指定することができる。検索条件

では「すべてのキーワードを含む」と「いずれか

のキーワードを含む」のいずれかを選択する。指

定したキーワードを用いて検索する対象として

「キーワード」「教材名」「教材の説明」「著者

名」「内容」をトグルスイッチで指定することが

できる。教材の種類では、「資料」「ビデオ」「試

験問題」「WebClass」「その他」などを選択できる。

「検索」ボタンを押すと、入力したキーワード

が検索対象に含まれ、指定した教材の種類に合致

する教材名リストが表示される(図4)。

また、メニューの「New Contents」ボタンを押

図1 高専間教育素材共有システム

図2 教材情報の分野別ディレクトリ表示画面

高専間教育素材共有システムの運用

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すと、図5のように、新規登録、新規更新コンテ

ンツを表示することができる。

2.3 教材の登録

メニューの「教材登録」ボタンをクリックする

と図6の教材登録画面が表示される。まず教材の

分野を指定するが、適切な分野名が一覧にない場

合には、図6画面右側に分野名を入力し、「分野

名追加ボタン」を押すと、分野名を追加できる。

分野名を選択し、「次へ」ボタンをクリックする

と、図7のような教材登録画面に切り替わる。こ

こで、科目名、教材の種類、閲覧許可、再利用許

可を選択し、教材名、教材の説明、キーワードを

入力し、「次へ」ボタンをクリックすると、図8

のように登録する教材ファイル名を入力する画

面が表示される。教材ファイル名を直接入力する

か、「参照」ボタンでファイルの選択を行う。教

材ファイル名を指定後、「はい」ボタンをクリッ

クすると、教材ファイルがデータベースに自動的

に登録され、教材の登録が完了する。

図3 教材の検索画面例

図4 教材の検索結果例

図5 新規登録、新規更新コンテンツ表示例

図6 教材登録画面1

図7 教材登録画面2

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2.4 システムの管理

システムは、基本的にメンテナンスフリーを目

指して設計されている。システム管理には、以下

のように最低限の管理メニューを準備した。

ユーザ管理

ユーザ追加

ユーザ削除

パスワード強制変更

分野名・科目名の修正、削除

分野名削除

分野名修正

科目名削除

科目名修正

統計情報

ダウンロード数

・コンテンツ別

・著者別

・高専別

・分野別

・月別

・月別(累計)

登録数

・分野別

・著者別

・高専別

・月別

更新状況

指定した期間のダウンロード数を、コンテンツ

別、著者別、高専別に把握できる管理機能がある。

図9は、平成 21 年度におけるコンテンツ別ダウ

ンロード数である。

2.5 教育素材の登録状況

教育素材登録状況を図10に示す。2010年7月

における登録件数は 307 件であった。2005 年 11

月~12 月に登録件数が大幅に増加した。これは、

高専 IT 教育コンソーシアムからのコンテンツ登

録依頼によるものと思われる。

平成 18 年度(2006 年度)末に、高専間教育素

材共有システムと国立高専教育財データベース

(平成 17 年度)の統合を行った。これにより、

一元的に検索・閲覧できるようになった。 登録された教育素材の内、一般に公開されてい

る 95 件は、独立行政法人メディア教育開発セン

ターの能力開発学習ゲートウェイ(NIME-glad)[4]からも平成 18 年7月末よりリンクされている。

教育素材の月別ダウンロード状況を図11に

示す。平成 21 年度の一年間のダウンロード総数

は,993 件(月平均 83 件)であった。ダウンロード

図8 教材登録画面3

図9 コンテンツ別ダウンロード数

図10 教育素材登録状況(月別累積登録件数)

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件数が多いことから、教育素材共有のニーズがあ

ると推測される。また、高専別の登録件数に偏り

があることから、全国高専には未登録の教育素材

が多いと予想される。これらより、今後も教育素

材共有を推進する必要がある。

3.各種教材

高専 IT 教育コンソーシアムが協力して開発さ

れたコンテンツを以下に示す。*印のコンテンツ

は、高専間教育素材共有システムに登録されてい

るので、各校の WebClassサーバ[5]にそのまま導入

可能である。これにより、学外ネットワークトラ

フィックが軽減され、より円滑な授業運営が可能

となる。

(1) ソフトウェア開発におけるプロジェクト管理とプレ

ゼンテーション

http://pub.maruzen.co.jp/videosoft/houso/

search/1272449.html

(2) 理工系学生のための必須英単語 3300 https://cocet.code.ouj.ac.jp/

(3) e-Learning 創造性教育コース

http://kosen-e.jp

プロジェクト管理手法入門コース*

プレゼンテーション入門コース*

紙飛行機の製作コース*

つないで計ってみよう電気抵抗コース*

ハンダ付けからのものづくり教育コース

電子デバイス応用入門コース

集積回路(IC)設計入門コース*

インターネット遠隔制御技術入門コース

LEGO を用いた自律型ロボット製作コース*

宇宙電波工学入門コース

Web アプリケーション入門コース*

PC-UNIX サーバ構築入門コース

(4) 数学・物理 e ラーニング教材*

数学 http://math.kosen-it.jp/

数学(携帯用) http://math.kosen-it.jp/mq/

物理 http://physics.kosen-it.jp/

(5) 化学 e-Learning 教材 http://wclass01.anan-nct.ac.jp/

(6) e-Learning による Java プログラミング問題集 http://e-class.center.yuge.ac.jp/

(7) 高専 Moodle プロジェクト

http://moodle.kosen-it.jp/

(8) iPod-touch プロジェクト

http://ipod-touch.kosen-it.jp/

(9) 電子情報分野の演習問題集*

また、WebClassに出題分野を指定し問題を抽出

できる機能を追加して頂いた(図12)。これに

より、出題分野を狭く指定すれば、講義ごとの小

テストや 課題に利用可能であり、出題分野を中

程度に指定すれば、定期試験等に利用可能となる。

4.まとめ

高専間教育素材共有システム及び高専 IT 教育

コンソーシアムの各種教材の収集状況を報告し

た。高専間教育素材共有システムに登録された教

育素材やノウハウを共有することにより、高専全

体の教育レベルがさらに改善されることを期待

したい。

5.参考文献 [1] 金寺 登, 山田 悟, 石田 博明, 飯田 忠夫:「教育素

材共有システムの開発」, 論文集「高専教育」, 第

29号, pp.665-670 (2006)

[2] 高専 IT教育コンソーシアム

http://kosen-it.jp/

[3] 高専間教育素材共有システム

http://ctm.kosen-it.jp/

[4] http://nime-glad.code.u-air.ac.jp/

[5] http://www.webclass.jp/

図11 ダウンロード状況(月別累積件数)

図12 課題の自動生成