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鋳造欠陥を事前に防ぐ、各工程の管理項目および管理特性 ―鋳造技術の基本―
小 林 良 紀 小林技術士事務所 技術士
1.はじめに
現場からのデータは必ずばらつきがあり、このばらつきを経済的に極小にして最適の品質を造り込むのが技術者・技能者の役目である。 不良現象の観察には 3 現主義や 5 ゲン主義に徹するべきである。5ゲン主義とは「現場で現実に現物を良く観察し、それが原理原則に沿っているか」を仕事の中に生かしていく手法である。特に若い技術者はこの原理原則(自然科学)について議論に議論を重ね不良の解決や新しい発見に結びつけて欲しい。問題意識と基本の徹底が肝要である。
鋳造技術者として具備すべき条件として次の事柄が挙げられる。① Discussion Partner を持つこと。良き議論ができる。②報告書を書くこと、本を良く読むこと。頭の中の思考を言葉に変え、相手に伝えることが大切。③物事を思考するとき時間軸を長く取れ。今なすべき事がよく見えてくる。実行することの優先順位が観える。④視座・視覚を変え、異業種の人と良く会話し、世間の動き、世界の動きを察知すること。
「鋳物造り」は知識・経験・知力が必要で、バランスの取れた総合力の発揮が必須である。更に製造工程で押さえ込む要因が多々あるが、技術基準として表 1に示す 5項目を良く理解し現場で実践された
い。「品質は工程で造り込む」と言われるが高品質の鋳物を安定的に造りこむには鋳造方案技術・冶金技術・安定的な造型技術の 3要素 9)が必須で、必ず数値、数字で管理水準を示すことが肝要である。
2.鋳鉄鋳物造りの基本技術(鋳物つくりのコツ)
1. 迅速加熱・高温溶解(1520℃以上が望ましい)・・・・・・・・冶金溶解技術(図 1、2、3)*2. 溶湯は静かに速く(T=C W を目安に。T:鋳込み時間 秒 C:係数 W:鋳込み重量Kg)・・・・・・鋳造方案技術3. 生型砂の混練度は江戸前寿司(C/B:35 ~ 45%)・・・・・・・・・・・造型鋳型技術自硬性鋳型砂は強熱減量で(フランは< 2.0%、アルカリフェノールは 1.0%。)・・・・・造型鋳型技術
4. 接種は確実に・・・・・・・・・・・・・冶金・溶解技術(図 4)*5. 鋳型、中子からのガス抜きは確実に・・・鋳造方案技術
√
表 1 鋳鉄鋳物造りの基本技術(鋳鉄鋳物造りのコツ)(*次頁参照)
「鋳物造り」は毎日毎日が不具合現象や不良対策との戦いである。鋳造技術者は問題点や課題の解決には常にプラス指向(思考)が必要である。特に、不具合・不良現象の原因を追求するには、まずQCの 7つ道具を駆使し次いで SQC手法を多いに活用すべきである。本稿では、鋳造欠陥を事前に防ぐための各工程の管理項目および管理特性について述べる。
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b.溶解炉の違い ① 図 2のグラフは、LF,HF及びキュポラ溶湯の
N含有量に及ぼす鋼屑の配合率の影響を表している。
② キュポラ溶湯はHL溶湯と異なる現象を表している。
図 1 溶融鋳鉄中の溶解酸素濃度 8)
図 2 溶湯の N含有量に及ぼす鋼屑配合率の影響 8)
c.溶湯の品質保証 ① 図 3では、鋳鉄溶湯の酸化程度(良い湯の程度)
が良く解る。 ② 炉前の品質保証の証として必ず実践する(化学
成分だけでは判らないことが観察できる)。
図 3 チル試験片の破面と黒鉛組織 8)
*「覚えておきたい溶解技術の原理原則」8)
a.高温溶解 ① 図 1に示す如く約1400℃以下では SiO2 が生成
され、それ以上の温度ではCOが生成される。 ② 約1400℃はスプーンで溶湯を汲み、表面に酸化
皮膜が張る温度である。 ③ 鋳鉄溶湯の酸化、還元状態を表現するときに活
用される。
④A型黒鉛部
元湯
③D型黒鉛部
②モットル部
①チル部
接種直後 接種後6分
温度,K
温度,℃
O,ppm
20181614121086420
1300 1400 1500 1600
1600 1700 1800
C=3.3%Si=1.8%
Si+2O=SiO2(s)
C+O=CO(g)
鋼配合率,%
N,ppm
806040200
120
100
80
60
40
20
キュポラ溶湯
低周波炉溶湯
図 4 片状黒鉛鋳鉄の引張強さと C当量(CE 値)の関係 8)
d.接種は確実に ① 図 4は片状黒鉛鋳鉄の引張り強さとC当量の関
係を表した図である。 ② 接種効果が著しいことが良く解る。
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(1)品質管理の基本的考え 鋳造品の品質保証に当ってはそれぞれの品質要求に適切に対応するため、製造条件や製造工程のばらつきを十分に考慮し品質管理を徹底して実施することが必要である。品質保証体制の確立こそが品質管理の真髄であると言える。 品質管理とは全ての仕事の質を管理することである。すなわち、品質管理はデミングサイクルを廻しながら実践して 1人ひとりの意識革命をはかり、企業全体の体質を改革する有効な手段であり、道具である。日本で進めている攻めの品質管理は表 2に示すような考え方から思想革命、意識改革と言われる。 課題解決や問題解決は図 5に示す重点指向がキーポイントである。物造りの工程からデータを集め、層別してばらつきに注目し、パレート図をつくり重点攻撃をする。すなわち、パレートの原則とは重点指向の課題解決の手段、道具である。一方、工程のばらつきや不良現象の真の原因は何か、特性要因図
図 5 効率よく進める QC的問題解決法
を活用して要因を探り出すことが肝要になってくる。 管理の原則は先手の管理であり、プロセス管理と言われている。品質は工程というプロセスで造り込むという考え方が大切である。結果をチェックするだけなら検査だけしていれば良いと言える。この
3.鋳物造りの攻めの品質管理
表 2 攻めの品質管理の基本的考え(思想革命・意識改革)
1. 全員参加の品質管理・改善活動 ・・・各階層各人の役割を明確にする2. 品質第一主義 ・・・技術・品質で社会に貢献する3. マーケットインに徹する(顧客本位) ・・・生産者本位ではなくお客様本位4. 事実・データで物を言う ・・・3現主義、5ゲン主義によるデータ解析5. 次工程はお客様 ・・・不具合品不良品は絶対に次の工程に流さない
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先手の管理は源流管理とも呼ばれ、結果で工程をチェックすることが重要となる。管理の三原則とはこの先手の管理を含めて、重点管理(パレートの原則)それに異常管理の三管理を示す。
(2)鋳造品の品質保証とは 鋳造品の品質保証項目は次の 5点である。それぞれの項目について種々の道具、手法を用いて検査し、図面通りに鋳造品ができているか出来映えを確認し、合否を総合的に判断する。 一方ではこの検査結果を統計処理して源流の生産工程にフィードバックする。品質は工程で造り込むと言う品質管理・品質保証の考えを習得するべきである。品質の工程能力を向上させるための積極的な全社活動が必要である。ここで品質保証の基本的考えを列挙すれば表 4に示す 5項目の通りである。 品質管理・品質保証を全社的に実施するには各工程・各作業ごと品質基準や管理点、それに標準類が必要である。品質は工程で造り込むことが基本であるから先手の管理、攻めの管理として欠くことのできない管理表が QC工程図である。 QC工程図は製造に関する基本的なもので、工場の鋳造品や実態に適合したあるべき姿であることが必要である。内容的には、
1.製造工程の流れ 2.製造工程の内容 ・・・ 3.品質管理基準
が明示されていることが大切である。フォーマットは自事業所に最も適合したものが肝要である。管理
特性が鋳物造りのノウハウである。管理の三原則を貫き、管理特性は数値で押えることである。また、誰が、何時、何を、どのようにを明確にする。 管理項目・管理値・管理水準などが鋳物つくりのノウハウである。管理の三原則(先手の管理・重点管理・異常管理)を貫き、管理特性は数値で押さえることである。また誰が、何時、何をどのように等(誰何時新聞または誰何時表と呼ばれている)を明確にする。
(3)QCの7つ道具と簡単な統計的手法 問題と原因の関係を分析・整理する方法・道具・手法としてQCの 7つ道具がある。 品質管理・不良低減という問題を難しく考える人がいる。確かに高度な手法を知り、それを応用するに越したことはないが、ここに述べる簡単なQCの7 つ道具でたいていの問題は解決する。図 6にそのQCの 7つ道具10)を示す。 QCの 7 つ道具は問題・課題のステップやストーリーの見える化を図る。ヒストグラムからは平均値± 3σを活用した工程能力や工程能力指数による考察が重要である。特性要因図からは真の原因追求、パレート図から撲滅させなければならない鋳造欠陥の優先順位が判断できる。
①層別、②特性要因図、③ヒストグラム、④パレート図、⑤散布図、⑥グラフ、⑦チェックシート
統計的手法で品質データを解析・考察する場合、次の事項が心構えとして大切である。日常現場で取られている多くのデータは「管理用」「解析・改善用」
5W1H、管理項目、管理点
表 3 鋳造品の品質保証項目とチェック項目及び検査方法
品質保証すべき項目 チェック項目と検査方法材 質 チル深さ C含有量 Si 含有量 機械的性質 超音波音速 打音 超音波減衰内部欠陥(無し) ひけ巣 割れ 掬われ 砂喰い ノロ喰い 超音波探傷 放射線透過検査外観鋳傷(無し) 湯じわ 湯境 ガスホール 焼着き 砂噛み 目視 虫眼鏡 顕微鏡 浸透探傷 磁粉探傷寸 法 長さ 径 面R 角度 平面度 ノギス パス ハイゲージ マイクロメータ化学成分 C含有量 S含有量 Mg含有量 P含有量分析(発光分光分析装置・蛍光X線装置)CEメータ
表 4 品質保証システムの基本的な考え 5項目
1.後工程の品質要求を明確にして保証する(品質仕様の把握)
2.品質の良さ、悪さを計る目安を把握して攻める(判断基準を持て)
3.標準化とその順守が保証の基本(決め事は守れ)
4.工程能力を知らずして保証はできない(データで物を言え、改善)
5.品質が所定の水準に有ることを保証する(出来映えの確認と保証)
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そして「検査用」に活用されるためである。データのばらつきは偶然によるもの、見逃すことのできない原因や異常な原因によるものである。正規分布において平均値± 3σのこの 3σは品質管理上の重要な判断へ活用される値である。 1. 現場で得るデータはすべてばらつきをもって
いる。 2. 平均値とばらつきの両方を考えなければなら
ない。 3. 製品 1 個 1 個ではなく工程全体としての(集
団としての品質)問題としてとらえる。
(4) 鋳造欠陥の撲滅へ結びつく 「問題・課題解決手法」 問題・不具合現象に直面した場合必要なのはデータの層別である。伝聞ではなく、現場・現実・現場の 3現主義に基づいて事実を集めて層別することである。討議の場でしばしば感じるのは、問題を提起する人も問題を解決する人も事実をあまり把握しておらず、データがないことである。情報の多くは伝聞でありフィーリングであり先入観であることが多い。予見を排除して事実を的確にありのままに把握することが何より重要である。誤った判断は避けなければならない。
図 6 QCの七つ道具
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表 7 各階層別の役割― Plan Do See(Check and Action)
各階層別の役割 人質(じんしつ)特性
1.経営者は売上げ・利益確保のため「方針」 「命令」 「監査」 ビジョンを持つこと
2.管理者は最適計画立案のため「計画」 「手段」 「管理」 公的判断ができる
3.監督者は作業への取組のため「割付」 「指導」 「援助」 やる気があること
4.作業者は作業の完全実施のため「理解」 「守る」 「改善」
決められたことを守る
問題・不具合が発生した場合、その問題や不具合を表 5に示すように表面化し全員参加で解決するこ
表 5 問題点・課題解決の手法と QC7つ道具―PDCAの管理サイクル―
問題点摘出のステップ QCの 7つ道具の手法1.重点課題(問題点)の決定 問題を掴む、テーマを決める2.現状を把握、目標の設定 パレート図、グラフ、チェックシート3.活動計画の作成 実施事項を決める 日程役割を決める4.現状(要因)を解析 ヒストグラム、グラフ、チェックシート5.対策の絞込み、実施 特性要因図、層別、チェックシート6.効果の確認 散布図、ヒストグラム7.歯止め、標準化と管理の定着 層別8.残された問題 再度再度計画を立て解決を目指す
とが肝要である。青い鳥を探すのではなく自力や自社力で解決するのが望ましい。
4.現場力活用による不良現象の観察
(1)リーダと現場力とは(伝える力の大切さ) 工場各部署のリーダは如何に上手に鋳造技術技能を正しく伝承させるかが非常に大切になってきている。難しいことを解り易く解説・説明し理解してもらうことが肝要である。 ここで言う現場力とは作業者が如何に「決められたことを守る」かである。すなわち作業者として一番大切なことは表 6に示す「決めたことを守る」一言につきる。作業者も与えられた作業の品質責任・コスト責任・納期責任を有する。 基準や指示から外れているかどうかを調べるためには、作業の良し悪しを判断する何かの目安が必要である。この目安を管理特性という。この目安として、数字・数値・限度見本で鋳造品の品質、作業の能率、歩留まり、生産量などでも良い。部課長は売上高、原価、原単位、ムダ、手直し品、不良品、スクラップ量などを採用すべきである。
鋳造関係の現場力は経験・記憶力・集中力・日常化(ルーテング)に裏付けされ、鋳物造りの技能力の向上、決め事の順守、意思の伝達、売上げ利益への貢献、更には職場の活性化、仕事の仕組み造り、標準化、人材育成に活用される。現場監督者はこれら現場力を結集させ、品質の向上、方針の達成や改善・改革の推進にやる気を出すべきである。
(2) 各階層における役割分担と現場力の醸成 決められた基準や標準を守ることは最も重要な現場の任務である。現場の監督者は常に強い改善意欲をもち、作業者を指導して行かなければならない。事なかれ主義、現状維持は良いという考えを持ってはいけない。現場で現場力を醸成するには不良対策を実施することである。従来からの経験や勘、熟練者などの活用、技術者との協力などいろいろな手段や手法などを活用することが巧い対策を立てて効果を上げるためのコツである(表 7)。
表 6 現場力とマネジメント;良品質鋳物を安く、タイムリーに生産する力
段階 実際に行われること1.基準を決める 1.目的を決める QCDなどを決める
2.目的を達成する方法を決める
2.基準通りの作業を行う 1.作業の標準を教育訓練する2.作業を実施させる3.定められた方法で計測を行う
3. 作業状況およびその結果を調べる
1.基準通りの作業チェック2.測定値が基準通りかチェック3.管理特性値が基準にあっているか
4. 調べた結果に基づいて処置をとる
1.不具合は修正2. 異常あれば原因をしらべ、その 原因を取り除く
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5.鋳造不良の予防活動
(1)不良の予防(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)
不良の予防にはいくつかの手法がある。故障モードと影響解析(FMEA)もその一つである。事前に故障モードを予測してその影響を評価し、事前に対策処置するものである。これに対して、事前に望ましくない事象を想定し、これを解析して改善する手法に「FTA」がある。故障が生じた後、生じた故障に関して追求解析して改善する手法として用いられる。これらを図 7および図 8に示す。
(3) 3現主義、5ゲン主義による鋳造不具合現象の観察
鋳造品の欠陥原因、不具合現象を数えあげればきりがないほど多い。それらの要因を列挙するつもりはないが、基本的手法を身につけて貰いたい。実際に不良が発生した時点で「現場で現実に現物を良く観る」習慣をまず身につけ、「原理・原則」に照らし合わせ、科学的に要因・原因そして問題点を追求してゆく姿勢が大切である。 この原因追求の仕方、取り組み方を列挙すれば表8のとおりである。
鋳造品の欠陥をよく観察すれば、直接的あるいは間接的に欠陥に対して最もかかわりあいの多いのが鋳物砂である。鋳物砂に起因する欠陥の大部分は、実は使用している鋳物砂の性質を十分に認識していないことによると思われる。鋳物砂の性質に逆らったための不良・不具合が大部分ではないかと思われる。鋳物砂の性質に順応した鋳造方案の作成、造型および鋳込み作業を行わない限り、不良の完全な解決はない。いかに早く鋳物砂の性質を飲み込むかが不良解決の近道である。
表 8 鋳造不良・不具合現象の観察と解決手順
真の原因追求手順 実際に実行すること1.不良、不具合現象の観察 ・現物を現場で現実に観る
・湯口、湯口棒、堰など鋳込み方案を観る・模型の上型・下型を観察する。見切り部Rも観る・湯口比を測定する。鋳込み時間を調べる・鋳込み温度を記録から調べる
2.要因・原因の追求ここに90%の労力を費やせ
・特性要因図を活用する・ブレンストーミングで関係者全員を参加させる・問題を表面化し解決する
3.要因・原因の絞り込み ・要因・原因の中から影響度の大きいもの 2~ 3を取り上げる・絞り込んだ要因・原因を検証する・絞り込んだ要因・原因を数値で表す
4.対策に立案・実行 ・誰何時表(誰何時新聞)を作成する・どのような方策を打つか明確にするにする・効果、結果および進捗が書き込めるようにする
5.対策結果の確認 ・各項目毎の効果結果の確認をする・数値数字で表す 写真を活用する・○×△での表現も可・目標達成時は何故達成できたかを検証する
6.歯止め・標準化 ・一口標準を作成する・製造標準を制改訂する・新人教育をする
図 7 FMEAと FTA 4)
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6.結言
① 鋳物造りは鋳造技術の総合力、溶解・調砂・中子・造型・鋳仕上げ・検査など固有の技術技能を良く理解し、消化し実践し自分の物にすること。
② 各鋳物造りの工場には、個性がある。歴史的背景や置かれた環境条件が異る。よって、ここで得た知識を鵜呑みに終わることなく十分に議論・検討して、導入実施すること。品質は工程で造り込めが基本。
③ 蟹は甲羅に似せて穴を掘ると言う。自社にあったやり方、システムにこれを変性しないと消化不良となる。
④ 不良現象の真の原因追求には 3現主義や 5ゲン主義で真の原因を追い求めることが必要である。問題点・課題解決手法を活用すること。不良現象には是正処置、歯止めが必須である。
⑤ 不良低減・撲滅活動にはQCの 7つ道具を活用して、事実データで物を言うことが肝要。一つ一つ不良を解決し、工程の技術・品質レベルを
上げる。品質管理・不良低減に近道はない。 ⑥ 標準化とは「当たり前のことを当たり前にやる」
こと。これが品質管理である。
参考文献1 ) 日科技連QCグループ編:初等品質管理テキスト,19932 ) 渡辺,小林ら:鋳鋼の生産技術(素形材センター)19963 ) 井川,千田ら:鋳鉄の生産技術(素形材センター)19984 ) 日本規格協会:実践現場の管理と改善講座,19945 ) 日本カタン工業会:引け巣の少ない安定操業条件に関する調査・研究,2004
6 ) 小林:素形材実践講座テキスト「新しい品質管理」,20047 ) 小林:素形材技術セミナーテキスト「鋳鉄の鋳造欠陥現象における真の原因追求とその対策」,2008,2009,2010,2011
8 ) 中江:鋳造工学「産業図書」,19959 ) 松島:KANAMORI Inc. 鋳造勉強会テキスト,2011. 10. 28
10) 今里:QC七つ道具がよ~くわかる本,㈱秀和システム,2007. 7. 21
図 8 FMEAと FTA 4)
(2) 環境整備や5S、ほうれん草は鋳造品生産活動の基本
5S は生産活動の基本であり、全ての管理の基本でもある。2S・5S を実施することは次に述べる沢山の効果をもたらす。工場において整理・整頓の 2S 特化やいわゆる 5S が強調される 1.企業のセールス活動に役立つ 2.現場改善の起点となる 3.求人活動・定着に役立つ 4.全ての管理の基礎となる 5.企業経営への全員参加になる 6.3ム(ムダ ムラ ムリ)を見つけやすくする
7.やればできるという信念を体得させる環境未整備は一切の悪さを隠してしまうからである。「品質管理において、整理・整頓されていない落ちこぼれは不良の巣である」と言われる。この 5Sによって、品質向上、不良低減が大いに期待できる。
(3)歯止め、是正処置による標準化 生産活動における是正処置や不良低減の重要なキーポイントは次の 3S である。 1. Standardization(標準化)・・・標準を定め、 それを活用する。 2. Simplification(単純化) ・・・・仕様の統一、 製品の統一 3. Specialization(専門化) ・・・・生産活動の集中
標準化はいろいろな多面的な意味での標準化である。単純化はまさに、Simple is Best で簡単明瞭である。どのような物でもあれ複雑精緻なものは問題である。管理方法・管理機構も同様である。専門化は得意部門に集約・集中するということである。標準化・単純化・専門化は相互に関係を持ちながら、鋳造工場の不良低減活動の基本として進めるべきである。 標準化の狙いは 5Mの安定化、更にその結果得られるであろう工程の安定化・不良の低減である。是正処理は必ず記録をとり、同じ問題を繰り返さないことが大切である。
管理設計製造材料方法機械人活動内容特徴
モード予測的改善活動(事前)
想定予測される故障モードに対して影響を評価し,原因を追及し,設計的・製造的に対応処置する.
望ましくない事象の原因を追及し,人,機械,方法,材料,管理面に,設計的・製造的に対応処置する.
FMEA 事象モードを予測する
事象対応的改善活動(事前)(事後)
FTA
過去の故障事例
望ましくない事象(故障)を
原因を追及して
これを排除する
さらに水平展開する
解析し
結果・影響を予測し
これに対策処置する
原因を考え
原因-結果系 的
結果-原因系 的
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