航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析...

117
保交計第69号 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュ ア ル 平成21年7月30日

Upload: others

Post on 21-May-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

保交計第69号

航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル

平成21年7月30日

海 上 保 安 庁

Page 2: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

総 目 次

第 1 編 新規事業採択時評価、再評価、事後評価共通編 ............................... 1-1

第1部 総説 ...........................................................................1-1

第1章 航路標識整備事業の評価の意義 ............................................ 1-1

第2章 評価の基本的考え方 ...................................................... 1-2

第2部 費用対効果分析............................................................. 1-5

第1章 費用対効果分析の基本的考え方 ............................................ 1-5

第2章 需要の推計 ............................................................. 1-13

第3章 便益の計測 ............................................................. 1-16

第4章 費用の算定 ............................................................. 1-60

第5章 残存価値の計測 ......................................................... 1-63

第6章 費用便益分析 ........................................................... 1-64

第7章 定量的に把握する効果の計測 ............................................. 1-69

第8章 感度分析 ............................................................... 1-74

第9章 分析結果の取りまとめ並びにデータ及び分析結果等の公開、蓄積.............. 1-76

第 2 編 事後評価手法 ............................................................. 2-1

第1章 事後評価の目的 ......................................................... 2-1

第2章 事後評価の基本的考え方 ................................................ 2-3

第3章 評価の基礎要因の比較 ................................................... 2-6

第4章 費用対効果分析結果の評価 .............................................. 2-10

第5章 必要な改善措置の検討 .................................................. 2-29

第6章 実績データの蓄積 ...................................................... 2-30

第7章 評価結果の取りまとめ並びにデータ及び分析結果等の公開、蓄積............. 2-31

Page 3: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

第 1 編 新規事業採択時評価、再評価、事後評価共通編 ................................ 1-1

第1部 総説 ...................................................................... 1-1

第1章 航路標識整備事業の評価の意義 ............................................ 1-1

第2章 評価の基本的考え方 ...................................................... 1-2

2-1 評価にあたっての基本事項 .............................................. 1-2

2-2 評価の体系 ............................................................ 1-2

2-3 本マニュアルの適用範囲と評価結果の活用 ................................ 1-4

第2部 費用対効果分析 ............................................................ 1-5

第1章 費用対効果分析の基本的考え方 ............................................ 1-5

1-1 分析の手順 ............................................................ 1-5

1-2 費用対効果分析の対象事業 .............................................. 1-7

1-3 効果項目の体系 ........................................................ 1-8

第2章 需要の推計 ............................................................. 1-13

2-1 基本的考え方 ......................................................... 1-13

2-2 需要推計方法の概要 ................................................... 1-13

第3章 便益の計測 ............................................................. 1-16

3-1 基本的考え方 ......................................................... 1-16

3-2 安全便益の計測 ....................................................... 1-18

3-3 輸送便益の計測 ....................................................... 1-40

第4章 費用の算定 ............................................................. 1-60

4-1 費用項目の抽出 ....................................................... 1-60

4-2 費用の算定 ........................................................... 1-62

第5章 残存価値の計測 ......................................................... 1-63

第6章 費用便益分析 ........................................................... 1-64

6-1 基本的考え方 ......................................................... 1-64

6-2 費用便益分析の実施 ................................................... 1-66

第7章 定量的に把握する効果の計測 ............................................. 1-69

7-1 基本的考え方 ......................................................... 1-69

7-2 操船者の心理的負担の軽減効果の計測 ................................... 1-69

7-3 CVMによる操船者の心理的負担の軽減効果の計測........................ 1-72

第8章 感度分析 ............................................................... 1-74

8-1 基本的考え方 ......................................................... 1-74

8-2 感度分析の実施 ....................................................... 1-75

第9章 分析結果の取りまとめ並びにデータ及び分析結果等の公開・蓄積.............. 1-76

9-1 分析結果の整理 ....................................................... 1-76

9-2 費用対効果分析の総括表 ............................................... 1-78

9-3 データ及び分析結果等の公開、蓄積 ..................................... 1-80

Page 4: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-1

第 1 編 新規事業採択時評価、再評価、事後評価共通編

第1部 総説

第1章 航路標識整備事業の評価の意義

航路標識整備事業評価の意義は、航路標識整備事業の果たす役割を常に念頭におきながら、航路

標識整備事業実施の意思決定を行うための重要かつ客観的な材料を提供することである。 また、事業実施の意思決定プロセスにおける透明性を向上し、国民へのアカウンタビリティを果

たす。 さらに、このような取り組みを通じて、評価の体系、指標等を明らかにすることにより、事業の

多様な効果、影響が整理され、真に必要な航路標識整備事業のより効率的な実施を目指していくと

いう航路標識整備事業に携わる者の共通認識が明確になることが期待できる。

Page 5: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-2

総合的・体系的評価 費用対効果分析

地元等との調整状況

国際的動向

地域開発戦略との整合等

・需要動向分析・費用便益分析(貨幣換算による定量的評価)

・定量的評価(物理量等数値データに基づく評価)

・定性的評価

総合的・体系的評価段階 費用対効果分析段階

第2章 評価の基本的考え方

2.

2-1 評価にあたっての基本事項

航路標識整備事業の評価に際し、次のことを常に心がけなければならない。 ①評価に用いた手法およびデータ並びに評価結果は積極的に公表しアカウンタビリティの向上に資

する。 ②事業評価は、現在の科学的知見を駆使して行うものであるが科学的知見には限界があること、お

よび、現世代の価値観に基づくものであり、次世代の価値観を反映したものではないことを認識

し、評価手法の精度や信頼性に留意する。 ③評価に必要な知識、技術の蓄積と向上を図る。

2-2 評価の体系

航路標識整備の事業評価は、事業の効率性、地元等との調整状況、国際的動向などの観点から、

総合的・体系的に行われるものである。その枠組みを図 2-1に示す。 本マニュアルは、航路標識整備の総合的・体系的評価のうち費用対効果分析を対象とするもので

ある。

図 2-1 航路標識事業の総合的・体系的評価の枠組み

Page 6: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-3

1)費用対効果分析

社会経済的効率性の観点からみて、航路標識整備事業の実施の妥当性を分析するものである。評

価は下記4点に分類される。

(1)需要動向分析

航路標識整備事業の需要動向分析では、事業対象海域等における航路標識整備の必要性を確認す

るとともに、将来の通航船舶の種類や船型および交通量の変動の有無を検討する。また船舶におけ

る受信機等航法用装置の搭載状況等を把握、評価する。 (2)費用便益分析

事業の主たる目的に対応し、貨幣換算して表示することが可能な効果を、重複計上のない範囲で

計測する。なお、貨幣換算が困難であるものについても、可能な限り貨幣換算するものとする。こ

の計測された効果と費用との比較により社会経済的効率性を分析する。

(3)定量的評価

直接的には貨幣価値換算が困難なものについて、物理量等数値データに基づいて効果を計測、評

価する。

(4)定性的評価

直接的には定量化が困難なものについて、発現が見込まれる効果を定性的に記述し、評価する。 2)地元等との調整状況

費用対効果分析による社会経済的効率性では評価できない項目であり、地元漁民や港湾管理者の

ニーズ等を把握、評価する。 3)国際的動向

諸外国における航路標識のシステム導入状況および国際的標準との整合性等について把握、評価

する。 4)地域開発戦略との整合性等

既設航路標識の配置状況や定期旅客船の就航の状況等を踏まえ、地域間での公平性の確保などの

観点から評価する。

Page 7: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-4

2-3 本マニュアルの適用範囲と評価結果の活用

1)本マニュアルの適用範囲

(1)評価の対象

本マニュアルを適用する評価対象の事業範囲は、意思決定の対象となる事業の単位とする。ただ

し、複数の事業により、一体的に機能が発揮される事業の場合等は、評価対象の事業範囲を合理的

に設定する。 (2)実施時期

評価の実施時期は、事業の実施に係る意思決定の段階を原則とする。代表的な実施時期は、事業

の実施前の予算化等の段階(新規事業採択時)、事業実施中の事業の継続または中止を決定する段階

(再評価時)とする。さらに、事業完了後一定期間を経過した段階(事後評価時)においても実施

する。 本マニュアルは、事業の実施前の予算化等の段階である新規事業採択時等における事業評価を対

象としてとりまとめたものである。 2)評価結果の活用

評価の結果から得られる様々な知見、また、事業の遅延等の要因分析の結果等については、今後

の事業評価の手法や事業のより適切な計画立案、実施に活用し、必要に応じて施策や制度にも反映

させる。 また、得られた知見や分析結果等の蓄積に努めるとともに、その公開など国民とのコミュニケー

ションにより、評価手法のさらなる改善に努めていく。

Page 8: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-5

第2部 費用対効果分析

第1章 費用対効果分析の基本的考え方

1.

1-1 分析の手順

本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

分析を行う。費用対効果分析は、図 1-1に示す手順に従って実施する。

【解説】 ・ 費用便益分析は、社会経済的効率性という観点からみた効果について貨幣価値換算を行い、創設

費や維持費を含め、事業に必要なすべての経費とを比較し、事業の効率性の評価を行うものであ

る。 ・ 一方、当該航路標識の整備により発生するすべての効果を列挙、特定するとともに、その効果を

可能な限り貨幣価値換算し便益として計測する。そして費用と便益を比較することで事業の有効

性を評価する。 ・ 比較は事業を行う場合(with 時)と行わない場合(without 時)にて行う。

事 業 を 行 う 場 合: (with 時)

(例)創設等の費用が必要となるが、当該海域では海難事故が減少する。ま

た船舶運航の効率が向上する。

事業を行わない場合: (without 時)

(例)創設等の費用は必要としないが、これまでと同じ水準の海難事故が発

生し続ける。また船舶運航の効率もこれまでどおりである。

・ この 2 つのケースを貨幣価値で比較するために、創設費等の事業に必要な費用と、未然に防げる

海難事故損失額および船舶運航効率の向上による運航経費節減額を便益として計測し、実質価格

に統一した費用および便益の年度別のフローを作成するとともに、異なる年度の費用や便益を、

基準とする年における価値(現在価値)に換算し、計算期間中にわたり合計する。 ・ そして、現在価値化された費用と便益を比較し、対象事業に対する投資の効率性を評価するとと

もに、感度分析を実施する。 ・ 本マニュアルで便益として貨幣換算していない効果については別途定量的・定性的に記述する。

そしてこれらを総括表にとりまとめる。

Page 9: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-6

、対象事業の内容 特性

便益項目の抽出

需要動向分析

対象事業の年度別便益の計測 対象事業の年度別費用の計測

費用便益分析・感度分析の実施

便益および費用の年度別発生表の作成

計算期間中における異なる年度の便益と費用を現在価値に換算

定量的・定性的に把握する効果の計測

費用対効果分析結果の取りまとめ

図 1-1 本マニュアルにおける費用対効果分析の手順

Page 10: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-7

・光波標識

・電波標識

・船舶通航信号所

・海上交通情報機構

沿岸標識

障害標識

港湾標識

DGPS局

マイクロ波標識(レーダービーコン)

マイクロ波標識(レーマークビーコン)

1-2 費用対効果分析の対象事業

費用対効果分析は、図1-2に示す航路標識整備事業の新規事業採択時、再評価時および事後

評価時に実施する。

図 1-2 費用対効果分析の対象事業

Page 11: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-8

1-3 効果項目の体系

1)航路標識の整備により発生する効果

航路標識の整備により、海上交通の安全性が向上するとともに、国際的な要請への対応が可能と

なる。 また運航時間が短縮されて船舶運航経費が節減され、効率性が向上するとともに、海上交通の信

頼性が向上しモーダルシフトが促進される可能性がある。 さらに海洋開発の促進や航路標識関連の商品、技術が開発、普及していくといった産業振興の効

果、また景観形成等地域の魅力を向上させる効果も考えられる。 これらの直接の効果と波及の効果について整理すると、図 1-3のとおりとなる。

2)事業による差異

図 1-3に示す効果は、航路標識全体について概括的に整理したものであり、効果の内容は航路

標識の種類により異なることが考えられる。例えば、安全性の向上のうち、海難事故減少効果は、

すべての航路標識において出現するものである。一方、海難事故発生後の二次災害を最小限にとど

める効果については、海難事故後の船舶動静が面的に把握でき、また船舶に対して必要な情報提供

ができる船舶通航信号所や海上交通情報機構において顕著である。 さらに航路標識には、その新技術が、海洋開発を促進させたり、他の分野に移転応用され、新商

品が開発・販売される効果もある。 したがって航路標識の特性を踏まえ、効果を網羅的に列挙する必要がある。 代表的な効果(例)を表 1-1に示す

Page 12: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-9

図 1-3 航路標識の整備の効果フロー(概要)

Page 13: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-10

表 1-1 航路標識の代表的な効果(例)

光波標識 電波標識 対象事業

効 果

沿 岸 標 識

障 害 標 識

港 湾 標 識

D G P S 局

マ イ ク ロ 波 標 識

船 舶 通 航 信 号 所

海 上 交 通 情 報 機 構

海難事故減少効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

海難発生後の二次災害を最小限にとどめる効果 ○ ○

安全性の向上 操船者の心理的負担の軽減効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

国際的要請

への対応

国際標準の採用により外航船の運航におけるリスクが減少する効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

船舶運航経費の節減効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

貨物等の時間費用が節減される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

漁場までの到達時間や労働時間が短縮され、漁業の生産性が向上する効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

効率性の向上

作業箇所までの到達時間などの海上作業の時間短縮効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

信頼性の

向上

海上貨物輸送へのモーダルシフトが促進され、物流コストが削減される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

環境の

保全

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進されCO2、NOX排出量が削減される効果

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 産

業振興

航路標識関連製品が生産されたり、開発された新技術が他の分野に移転、応用される効果 ○

景観形成効果 ○ ○ 地域の魅力

向上

集客効果 ○ ○

Page 14: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-11

3)効果の帰着構成

社会経済的視点からみた場合、当該事業の効果計測を行う際には、二重に計測することを避ける

必要がある。また効果の内容を明確にし、便益として定量的に把握するためには、帰属する主体を

明らかにし、主体の特性も考慮して定式化を図る必要がある。 このため航路標識整備により発生する効果と費用について、関係主体への帰属状況を示す便益帰

着構成表を作成すると、表 1-2の航路標識整備に関する便益帰着構成表(標準例)のようになる。 本表を用いると、すべての効果項目について、関係する主体ごとにプラス(効果の増大、費用の

減少)、マイナス(効果の減少、費用の増大)を検討し、右端の計の欄に示す主体間の合計を確認す

ることができる。

Page 15: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-12

表 1-2 航路標識整備に関する便益帰着構成表(標準例)

注)上記網掛け箇所が本マニュアルで便益計測手法を示した効果項目である。

注)合計欄の±0はサービスや財の提供者の収入と購入者の支出が相殺されることにより便益が0となることを示している。

Page 16: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-13

第2章 需要の推計

2.

2-1 基本的考え方

推計する需要は、事業対象海域を通航すると想定される船種・船型別の年間通航船舶隻数とす

る。

【解説】 ・ 通航船舶隻数は、社会経済情勢、港湾整備動向等が主な変動要因であり、航路標識整備事業が通

航船舶隻数の増減に対して直接的に影響を及ぼすことは少ないと考えられる。このため需要動向

分析においては、社会経済情勢、港湾整備動向等を考慮した通航船舶隻数を推計する。 ・ ただし、航路標識整備事業により、他海域の運航ルート(迂回ルート)から事業対象海域の運航

ルートへの変更が生じる等の航路標識整備事業が直接的に通航船舶隻数の増減に影響する場合

には、前述の経済情勢等を考慮した上で、航路標識整備事業を実施する場合(with 時)と航路標

識整備事業を実施しない場合(without 時)の両ケースの需要を推計する。 ・ また、年間通航船舶隻数の推計に併せて、船舶の電波航法システム受信機搭載状況等も必要に応

じて推計する。 ・ なお、船種・船型別の区分が困難な場合は、一般船舶と漁船といったように簡便な分類としてま

とめてもよい。 2-2 需要推計方法の概要

需要推計は当該事業の目標年を設定した上で、目標年における船種・船型別の年間通航船舶隻

数を推計する。船種・船型別の年間通航船舶隻数の推計にあたっては、事業対象海域を通航する

船舶流動に係わる背後圏の社会経済動向、通航船舶の船種・船型の変化等を踏まえ、最新の情報

を用いて可能な限り精緻に推計する。

【解説】 ・ 船種・船型別の年間通航船舶隻数は、社会経済動向、船舶流動に係わる OD 貨物量、港湾整備の

動向、通航船舶の船種・船型の変化等によって変化する。このため、厳密に分析するのであれば

計算期間中の各年毎に船種・船型別の年間通航船舶隻数を推計するべきであるが、年間通航船舶

隻数推計のベースとなる将来貨物量等が各年毎に推計されているケースが殆ど無いこと、また推

計に要する労力等を考慮し、簡便法として目標年における船種・船型別の年間通航船舶隻数を推

計し、計算期間中は一定としてもよい。 ・ 目標年の設定にあたっては、推計対象とする船舶流動に係わる OD 貨物量、港湾整備の動向、通

航船舶の船種、船型の変化等を踏まえ、今後、通航船舶の船種・船型、通航隻数が大幅に変動し

ないと想定される年を設定する。 ・ ただし、需要動向分析には、外部の社会経済動向等の変動に伴う需要の増減といった不確実なも

のを含んでいる。このような不確実なものを含むことへの対応として、通航船舶の船種・船型の

変化および通航隻数の増減等に対してある変動を仮定し、それらが対象事業の費用対効果分析結

果に及ぼす影響を把握するために感度分析を実施する。なお、感度分析については後述の第8章

に記載する。

Page 17: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-14

現時点

着工年

目標年

計算期間終了年

(計算期間開始年)

供用開始年

年間通航船舶隻数

目標年の通航船舶隻数

事業全体が完成するまでの事業実施期間と耐用年数を考慮した供用期間により設定する。

With時

航路標識整備事業による需要増加

目標年

通航船舶隻数

Without時航路標識整備事業の有無に関係無く推移する需要増減

+ 航路標識整備事業の有無に関係無く推移する需要増減

航路標識整備事業による需要増加

、この数値は with時と。without時で同数となる

供用開始年度

図 2-1 年間通航船舶隻数推移の設定例

図 2-2 年間通航船舶隻数の捉え方イメージ

Page 18: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-15

・ なお、目標年における船種・船型別の年間通航船舶隻数の推計にあたっては、表 2-1に示す

資料を活用することにより、通航船舶の実態、さらには港湾等への入港船舶隻数の将来推計値等

の参考データを収集することができる。

表 2-1 年間通航船舶隻数の推計に係わる参考データとして活用できる資料

区分 データ名 出所 通航船舶隻数 通航船舶実態調査 海上保安庁

港湾統計年報 国土交通省港湾局、港湾管理者 一般船舶 港湾計画資料(将来値) 港湾管理者 漁業センサス 農林水産省大臣官房

入出港船舶隻数

漁船 漁港計画資料(将来値) 漁港管理者

Page 19: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-16

第3章 便益の計測

3.

3-1 基本的考え方

航路標識整備事業による効果を貨幣価値換算したものが便益である。航路標識整備事業は、個々

の対象事業の特性によって、便益の発生構造が異なるため、表 3-1に示すように、対象事業の

果たす役割、実施目的を考慮した上で、計測する便益を選定する。 また、航路標識整備事業による効果のうち貨幣価値換算できるものは、漏れなく、二重計上の

ないように計測する。 本マニュアルでは、航路標識整備事業の効果のうち、現時点で貨幣価値換算が可能である「海

難事故の減少」(以下「安全便益」という。)、「運航能率の増進に伴う運航時間短縮、運航経費節

減」(以下「輸送便益」という。)を便益として計測する。

【解説】 <安全便益> ・ 航路標識整備事業を実施することにより、事業対象海域における船舶交通の安全性の向上が期待

できる。 ・ その期待される海難事故減少隻数は、過去の統計から海難事故の生起確率、海難事故発生原因と

通航船舶隻数等との関係を明らかにすることにより把握することが可能である。 ・ また、海難事故船舶1隻あたりの経済的損失を統計的に見いだし、これを用いて海難事故減少の

効果を貨幣価値換算し、期待損失回避額として計測することが可能である。 ・ 本マニュアルでは、海難事故減少の効果を貨幣価値換算したものを安全便益と称す。

<輸送便益> ・ 航路標識整備事業を実施することにより、事業対象海域を通航する船舶の運航時間、運航経費が

節減される。 ・ この節減効果は、個々の通航船舶の運航時間短縮量、運航経費節減額を計測し、さらに事業対象

海域を通航する船舶隻数の推計により、一定の換算係数を用いて、貨幣価値換算することとして

いる。言い換えれば、通航船舶の運航余剰の増分を推定する消費者余剰分析により便益を計測す

ることになる。 ・ 本マニュアルでは、運航能率の増進に伴う効果を貨幣価値換算したものを輸送便益と称す。

Page 20: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-17

表 3-1 計測対象とする便益

対象事業 各事業の主たる目的 計測対象とする便益

■安全便益 ・標識設置に伴う船位適正化による衝突海難事故、

乗揚海難事故の減少。

1.沿岸標識 船舶に陸地、主要変針点又は船位を確認する際の目標を示すための標識。

■輸送便益 ・陸地初認、船位、変針点を適切なタイミングで確認

できることによる運航時間短縮・運航経費節減。

■安全便益 ・障害物の明示による乗揚海難事故の減少。 ・事業対象海域における船舶交通の整流化による衝

突海難事故の減少。

2.障害標識 船舶に浅瀬、岩礁等の障害物の存在を示すための標識。

■輸送便益 ・障害物の明示により的確な離隔距離を確保すること

による運航時間短縮・運航経費節減。

■安全便益 ・港口、航路等を明示することによる衝突海難事故の

減少、乗揚海難事故の減少。

光波標識

3.港湾標識 船舶に港湾、港口、航路等の存在を示すための標識。

■輸送便益 ・港口、航路等を明示することによる運航時間短縮・

運航経費節減。

■安全便益 ・測位精度改善に伴う障害物に対する船位適正化に

よる乗揚海難事故の減少。

4.DGPS 局 DGPS 受信機によって GPS により測定した位置の誤差補正値およびGPS衛星の異常情報を提供し、船舶が高精度な測位を可能とするための標識

■輸送便益 ・測位精度改善に伴う船位適正化による運航時間短

縮・運航経費節減。

■安全便益 ・測位精度改善に伴う障害物、他船に対する船位適

正化による衝突海難事故、乗揚海難事故の減少。

5.マイクロ波標識 (レーダービーコン)

船舶のレーダー映像面上に送信局の位置を輝線符号の始点で表すように、船舶のレーダーから発射された電波に対応して電波(マイクロ波)を発射し、陸地、主要変針点又は船位を確認する際の目標を示すための標識。

■輸送便益 ・測位精度改善に伴う船位適正化による運航時間短

縮・運航経費節減。

■安全便益 ・測位精度改善に伴う障害物、他船に対する船位適

正化による衝突海難事故、乗揚海難事故の減少。

電波標識

6.マイクロ波標識 (レーマークビーコン)

船舶のレーダー映像面上に送信局の方位を輝線で表すように電波(マイクロ波)を発射し、陸地、主要変針点又は船位を確認する際の目標を示すための標識。

■輸送便益 ・陸地初認、船位、変針点を適切なタイミングで確認

できることによる運航時間短縮・運航経費節減。

■安全便益 ・輻輳海域等での適切な情報提供による安全性向上

に伴う衝突海難事故、乗揚海難事故の減少。

7.船舶通航信号所 航行船舶のふくそうする港、海域でレーダー、テレビカメラ等により港内、特定の航路およびその付近水域の船舶交通の安全に必要な情報を収集し、提供する標識。

■輸送便益 ・輻輳海域等での船舶の動向等の情報提供による運

航能率向上に伴う運航時間短縮・運航経費節減。

■安全便益 ・管制業務により輻輳海域における適切な情報提供

による安全性向上に伴う衝突海難事故、乗揚海難事故の減少。

その他

8.海上交通情報機構 特に船舶のふくそうする海域で船舶の安全運航に必要な情報提供と航行管制を一元的に行い船舶交通の安全性と効率性の向上を図る施設。

■輸送便益 ・管制実施により輻輳海域での船舶の動向等の情報

提供による運航能率向上に伴う運航時間短縮・運航経費節減。

Page 21: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-18

目標年の年間通航船舶隻数

海難事故生起確率

with時の年間海難事故隻数 without時の年間海難事故隻数

事業実施に伴う海難事故減少率

航路標識整備事業による海難事故減少隻数

航路標識整備事業による損失回避額

需要動向分析

3-2 安全便益の計測

1)基本的考え方

安全便益の計測は、図 3-1に示すように with 時と without 時における年間海難事故隻数を

算出し、海難事故に係わる様々な損失のうち、貨幣価値換算が可能である物的損害(船体、積み

荷)、人的損失、海難事故処理などに伴う損害といった直接的な損害を対象として計測する。

【解説】 ・ 海難事故は多くの原因が複雑に関連しあって偶発的に発生するものである。このため、航路標識

を整備すれば常に船舶交通の安全性向上による効果が発現すると断定できるものではなく、航路

標識の整備に際して、整備後の海難事故隻数をある水準に抑えるという計画的な効果が必ずしも

保証できるものではない。 ・ しかし、航路標識の整備により障害物の存在を明確にする、船舶交通の整流化を図るといった航

行環境の改善を図ることにより、総体として海難事故が減少するものと期待できる。 ・ このため、本マニュアルにおいては、航路標識整備と海難事故の発生メカニズムとの関係を整理

した上で、過去の統計に基づきその効果を把握することとした。 ・ 海難事故減少による期待損失回避額は、海難事故に伴う直接的な損失として位置づけられる「船

舶損傷に伴う損失額、船舶修繕期間中の損失額、人的損失額、積み荷損失額、海難事故船舶処理

に伴う損失額、流出油による海洋環境汚染に伴う損失額」をそれぞれ計算して合計する。 ・ また、直接的な損失以外に、船舶運航主体(船社、操船者)が船舶運航に際し安心感を得られる

という便益も存在する。本マニュアルでは、第7章において「安心感を得られるという便益」に

ついて、CVM法による分析手法について記載する。

図 3-1 安全便益計測フロー

Page 22: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-19

需要動向分析

with時の年間通航船舶隻数 without時の年間通航船舶隻数

海難事故生起確率

with時の年間海難事故隻数 without時の年間海難事故隻数

事業実施に伴う海難事故減少率

航路標識整備事業による海難事故減少隻数

航路標識整備事業による損失回避額

(補足) ・ 需要動向分析において、航路標識整備事業を実施する場合(with 時)と航路標識整備事業を実施

しない場合(without 時)の両ケースの需要を推計した場合、with 時の海難事故隻数は with 時

の通航船舶隻数に生起確率および航路標識整備による海難事故減少率を乗じて算出する。また、

without 時の海難事故隻数は、without 時の通航船舶隻数に生起確率を乗じて算出する。 ・ 特に、航路標識整備によって通航船舶隻数が増加すると、海難事故減少率を乗じても海難事故隻

数は増加する場合がある。航路標識整備事業によって、通航船舶隻数が増加するという現象が生

じるのは、他の海域の運航ルートから事業対象海域の運航ルートへの転換(航路標識が未整備の

ため船舶運航事業者は他海域の運航ルートに迂回していた)等による運航能率の向上という便益

を利用者が選択した結果であり、航路標識整備事業が船舶運航の効率性向上という目的に合致し

たものである。 ・ したがって、通航船舶隻数の増加によって、with 時の海難事故隻数が増加した場合は、安全便益

としてはマイナス評価となる場合があるが、輸送便益としてはプラス評価であると考えられ、こ

のような安全便益と輸送便益を総合的に勘案して航路標識整備事業の評価を行うものとする。 ・ なお、他海域の運航ルートから事業対象海域の運航ルートへの転換が生じたケースにおいては、

図 3-3に示すように、事業対象海域における海難事故に加えて、他海域における海難事故を

考慮して、with 時と without 時の海難事故隻数を推計し、両者の差をもって海難事故減少隻数

を算出することも可能とする。

図 3-2 with 時と without 時の年間通航船舶隻数が異なる場合の安全便益計測フロー

Page 23: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-20

他海域運航ルート利用船舶

事業対象海域運航ルート利用船舶

海難事故A

海難事故B

他海域運航ルート利用船舶

海難事故AA

海難事故BB

事業対象海域運航ルート利用船舶

運航ルート転換

航路標識

対象とする海難事故

対象とする海難事故

対象事業海域Bの海難事故

Without時の海難事故

=他海域の

A海難事故

+事業対象海域の海難事故BB

With時の海難事故

=他海域の

海難事故AA

通航船舶隻数の減少を考慮した海難事故

通航船舶隻数、の増加 航路

標識整備事業による事故減少効果を考慮した海難事故

( + )With時の海難事故の捉え方 他海域での海難事故 事業対象海域での海難事故

( + )Without時の海難事故の捉え方 他海域での海難事故 事業対象海域での海難事故

:航路標識整備事業による海難事故減少効果 他海域での海難事故まで含めた総合的な検討イメージ

図 3-3 他海域からの利用ルート転換船舶が存在する場合の海難事故の捉え方イメージ(例)

Page 24: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-21

2)海難事故減少隻数の推計

(1)海難事故生起確率の算出

海難事故生起確率は、需要動向分析において対象とした事業対象海域の年間通航船舶隻数(実

績値)と、効果計測の対象とする海難事故隻数(実績値)の比率とし、下記の計算式を用いて算

出する。

効果計測の対象とする海難事故隻数(A) 海難事故生起確率(AP)= 事業対象海域における年間通航船舶隻数(D)

【解説】 ・ 海難事故は偶発的に発生するものであり、各年の海難事故隻数に変動が生じているケースがある。

このため、海難事故生起確率は、需要動向分析において対象とした事業海域での5年間程度の海

難事故隻数を抽出し、その海難事故生起確率を用いて算出する。 ・ 効果計測の対象とする海難事故隻数は、事業対象海域において発生した海難事故のうち、事業の

実施により減少すると期待される海難事故隻数とする。なお、対象事業毎に減少すると期待され

る海難事故原因を表 3-2に示す。 ・ 航路標識整備事業の実施等により通航船舶隻数に変化が生じた場合、海難事故生起確率も変化す

る可能性がある。しかし、将来の海難事故生起確率の推計は、技術的に困難であることから、上

記の式により算出される海難事故生起確率を適用する。

Page 25: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-22

表 3-2 事業の実施により減少すると期待される海難事故

対象事業 事故

種類 海難原因 事業実施による海難事故減少の効果発現メカニズム

1.沿岸標識

衝突

乗揚

船位不確認

航路標識誤認

自船の位置を的確に確認できることにより、船位不確

認、航路標識誤認を原因とする衝突・乗揚海難事故が

減少する。

2.障害標識

衝突

乗揚

船位不確認

航路標識誤認

水路調査不十分

■事業対象海域における船舶交通の整流化が図れ、

通航船舶間の針路交差の解消により、船位不確認

を原因とする衝突海難事故が減少する。

■障害物を明示することで、船位不確認、水路調査不

十分を原因とする当該障害物への乗揚海難事故が

解消される。

3.港湾標識

衝突

乗揚

船位不確認

航路標識誤認

水路調査不十分

港内航路への針路を明示することで、船位不確認、航

路標識誤認、水路調査不十分を原因とする防波堤等

への衝突・乗揚海難事故が減少する。

4.DGPS 局

乗揚 船位不確認

航路標識誤認

測位精度の向上により、DGPS 搭載船が遭遇した船

位不確認、航路標識誤認を原因とする障害物への乗

揚海難事故が減少する。

5.マイクロ波標識

(レーダービーコン)

6.マイクロ波標識

(レーマークビーコン)

衝突

乗揚

船位不確認

航路標識誤認

水路調査不十分

測位精度の向上により、レーダー搭載船が遭遇した船

位不確認、航路標識誤認、水路調査不十分を原因と

する衝突・乗揚海難事故が減少する。

7.船舶通航信号所

8.海上交通情報機構

衝突

乗揚

船位不確認

見張り不十分

航路標識誤認

コンパス誤差不確認

気象・海象不注意

居眠り運航

航法違反

水路図誌不備

水路調査不十分

操船不適切

他船の過失

避難時期不適切

錨地不適

■情報提供、管制業務の実施に伴い事業対象海域に

おける船舶交通の整流化が図れ、通航船舶間の針

路交差の解消により、船位不確認、見張り不十分等

を原因とする衝突海難事故が減少する。

■情報提供、管制業務の実施に伴い事業対象海域に

おける障害物等との相対的な船位の適正化により、

船位不確認を原因とする乗揚海難事故が減少す

る。

Page 26: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-23

(2)事業実施に伴う海難事故減少率の算出

事業の実施に伴う海難事故減少率(AR)は、他海域で実施された類似事業の海難事故減少率(実

績値)を適用する。 なお、類似事業の海難減少率は、下記計算式を用いて算出する。

事業実施前の海難難事故生起確率(AP1)-事業実施後の海難事故生起確率(AP2) 海難事故減少率(AR)=

事業実施前の海難事故生起確率(AP1) ただし、

事業実施前の効果計測対象海難事故隻数 事業実施前の海難難事故生起確率(AP1)= 事業実施前の事業対象海域の年間通航船舶隻数

事業実施後の効果計測対象海難事故隻数

事業実施後の海難難事故生起確率(AP2)= 事業実施後の事業対象海域の年間通航船舶隻数

【解説】 ・ 海難事故は多くの要因が複雑に関連しあって偶発的に発生するものである。航路標識整備事業の

実施により、海難事故の発生原因の一部(船位不確認等)が解消されるが、海難事故の全てを解

消することは困難であることから海難事故減少率を適用する。 ・ 事業実施前後の海難事故生起確率は、過去の類似事業の実施前後5年間程度の海難事故隻数およ

び当該事業対象海域の年間通航船舶隻数より算出した生起確率の各年平均値を適用する。 ・ 効果計測対象海難事故は、表 3-2に示した事業実施により解消されると期待できる海難事故を

適用する。 ・ 将来の海難事故減少率の推計は、技術的に困難であることから、現状の海難事故減少率を適用す

る。 ・ また、データ制約等により類似事業における海難事故減少率を個別に推計することが困難な場合

は、表 3-3に示す全国の平均的な海難事故減少率を適用する。 ・ なお、本マニュアルでは、(1)で示したように海難事故生起確率を事業対象海域の通航船舶隻数、

海難事故隻数から算出している。ここで全国の平均的な海難事故減少率を適用する場合、事業対

象海域の海難事故生起確率が、全国の平均的な生起確率と同レベルであることを統計的な検定手

法を用いて確認しておく必要がある。 ・ ただし、現時点においては全国の生起確率に関するデータ蓄積が不十分であることから、確認す

ることが困難である。このため、事後評価の実施に伴うデータ蓄積が進んだ時点以降において確

認を行うものとして扱う。

Page 27: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-24

表 3-3 対象事業毎の海難事故減少率(全国平均)

対象事業 海難事故減少率

1.沿岸標識 -

2.障害標識 84.52%

3.港湾標識 60.75%

4.DGPS 局 9.02%

5.マイクロ波標識(レーダービーコン) 51.76%

6.マイクロ波標識(レーマークビーコン) -

7.船舶通航信号所 14.82%

8.海上交通情報機構 14.82%

資料)既存標識の事業対象海域における海難事故隻数の動向より設定。

Page 28: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-25

(3)海難事故減少隻数の算出

with 時および without 時における海難事故隻数を算出し、両者の差を海難事故減少隻数として

算出する。 事業実施による海難事故減少隻数(ADR) =without 時の海難事故隻数(AO)-with 時の海難事故隻数(AW)

ただし、

with 時の海難事故隻数(AW) =事業対象海域における年間通航船舶隻数(D)×海難事故生起確率(AP)×(1-海難事故減少率(AR))

without 時の海難事故隻数(AO) =事業対象海域における年間通航船舶隻数(D)×海難事故生起確率(AP)

【解説】 ・ 需要動向分析の結果、with 時と without 時の船種・船型別の年間通航船舶隻数が異なる場合には、

with 時の海難事故隻数は、with 時の年間通航船舶隻数に海難事故生起確率、海難事故減少率を

適用して算出する。また without 時の海難事故隻数は、without 時の年間通航船舶隻数に海難事

故生起確率を適用して算出する。

Page 29: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-26

船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数

船種・船型別通航船舶隻数比率 損傷程度別海難事故隻数比率

航路標識整備事業による損失回避額

各種損失額算出原単位

損失回避額の算定

需要動向分析

目標年の年間通航船舶隻数

海難事故生起確率

without時の年間海難事故隻数

事業実施に伴う海難事故減少率

航路標識整備事業による海難事故減少隻数

航路標識整備事業による損失回避額

with時の年間海難事故隻数

3)航路標識整備事業による損失回避額の計測

(1)基本的考え方

2)で推計した航路標識整備事業を実施した場合に減少すると想定される海難事故隻数を、船

種、船型、損傷程度別に換算し、海難事故に係わる様々な損失のうち、貨幣価値換算が可能であ

る物的損失(船体、積み荷)、人的損失、海難事故処理などに伴う損失といった直接的な損害を対

象として計測する。

【解説】 ・ 海難事故に伴う損失回避額は、海難事故に遭遇する船舶の船種、船型や損傷程度によって異なる

ことから、本マニュアルでは船種、船型および損傷程度別に年間海難事故減少隻数を算出する。

図 3-4 損失回避額算定フロー

Page 30: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-27

(2)船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数の算出

船種・船型・損傷程度別海難事故隻数は、2)で算出した事業実施に伴う海難事故減少隻数(ADR)

に、需要動向分析で推計した年間通航船舶隻数での船種・船型別隻数比率(DWP)、対象事業事業

対象海域において事業実施前に発生した海難事故の損傷程度別隻数比率(ALP)を適用して、船種・

船型・損傷程度別海難事故減少隻数(ALDR)を算出する。 船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(ALDR) =海難事故減少隻数(ADR)×船種・船型別隻数比率(DWP)×損傷程度別隻数比率(ALP)

ただし、

事業対象海域の船種・船型別年間通航船舶隻数(推計値)

船種・船型別隻数比率(DWP)= 事業対象海域の年間通航船舶隻数(D)(推計値)

事業対象海域で発生した損傷程度別海難事故隻数(実績値)損傷程度別隻数比率(ALP)=

事業対象海域で発生した海難事故隻数(実績値)

【解説】 ・ 船種・船型別隻数比率は、需要動向分析で推計した事業対象海域の年間通航船舶隻数における船

種・船型比率を適用する。 ・ 損傷程度別隻数比率は、事業対象海域において事業実施前 5 年間程度の期間に発生した海難事故

の損傷程度別隻数比率の各年平均値を適用する。なお、海難事故の損傷程度区分は表 3-4に

示す区分を標準とする。

表 3-4 海難事故の損傷程度区分

損傷程度区分 損傷の内容

全損 本来の用途に使用できなくなった状態 (修復が不可能な状態の損傷)

重大損傷 船体破損が中~大規模な状態 (修復は可能であるが、自力航行は不可能な状態の損傷)

軽微損傷 船体破損が小規模な状態 (修復が可能であり、自力航行も可能な状態の損傷)

損傷無し 船体の損傷を伴わない状態 注)損傷程度区分は、海難調査票の船体区分を前提とする。なお、重大損傷は海難調査票の「大破」、「中破」の

両者を適用しており、軽微損傷は海難調査票の「小破」を適用している。

Page 31: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-28

(3)損失回避額の算出

海難事故減少に伴う期待損失回避額は、海難事故に伴う直接的な損失として位置づけられる船舶

損傷に伴う損失額、船舶修繕期間中の損失額、人的損失額、積み荷損失額、海難事故船舶処理に伴

う損失額、流出油による海洋環境汚染に伴う損失額をそれぞれ計算して合計する。

海難事故減少に伴う期待損失回避額(SB) =SB1+SB2+SB3+SB4+SB5+SB6

ここで、

SB1 :船舶損傷に伴う損失額

SB2 :船舶修繕期間中の損失額

SB3 :人的損失額

SB4 :積み荷損失額

SB5 :海難事故船舶処理に伴う損失額

SB6 :流出油による海洋環境汚染に伴う損失額

①船舶損傷に伴う損失額の計算

船舶損傷に伴う損失額(SB1)は、海難事故により生じた船体の損傷箇所等を修繕するために

必要となる費用であり、下記の式を用いて計算する。

∑∑∑1i j k

kijijk SAP×SC×ALDR SB )(=

ここで、 SB1 :船舶損傷に伴う損失額(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損

傷程度 k 別の海難事故減少隻数) SCij :船種・船型別新造船価(円/隻:船種 i・船型 j 別の 1 隻あたり新造船価)

SAPk :海難事故損傷程度別船体損傷率 i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【解説】 ・ 船舶損傷に伴う損失額は、船体の損傷箇所等を修繕する費用とする。 ・ 修繕する費用は、海難事故の発生形態、船体の損傷箇所等により全て異なり、それらを個々に計

算することは難しい。このため、簡便法として、修繕に要する費用原単位を海難事故船舶と同じ

船種・船型の船舶を新造する場合と同じと仮定し、海難事故損傷程度別に設定する船体損傷率と

を用いて、損傷程度を考慮した修繕費用を計算する。

Page 32: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-29

船型区分 船種区分

以上 未満 一般貨物船 自動車専用船 コンテナ船LPG船LNG船

タンカーフェリー旅客船

一般船舶

100GT 60 - - - 100 - 70

100GT 500GT 250 - - - 280 740 470

500GT 1,000GT 590 710 - - 440 1,700 1,100

1,000GT 3,000GT 960 810 - 840 760 2,900 1,800

3,000GT 10,000GT 1,800 1,500 1,600 1,800 1,900 4,500 1,900

10,000GT 20,000GT 2,000 2,700 2,500 1,900 3,400 10,300 3,200

20,000GT 50,000GT 2,800 4,500 5,200 5,100 4,600 - 4,900

50,000GT 100,000GT 4,100 - 8,200 10,900 13,400 - 7,800

100,000GT 150,000GT - - - 18,200 24,000 - 24,000

150,000GT 200,000GT - - - - 33,600 - 33,600

漁船 20GT未満 30 百万円/隻

20GT以上100GT未満 270 百万円/隻

100GT以上500GT未満 530 百万円/隻

500GT以上 2,200 百万円/隻

13 百万円/隻プレジャーボート 

船種・船型区分  新造船価格

(参考)

表 3-5 漁船・プレジャーボートの新造船価(SCij)

資料)漁船の新造船価格は、造船造機統計(国土交通省;平成10年1月~平成14年12月)の一般的な建造

単価により設定(各年のGTあたり建造価格を平成15年度価格に換算して算出)。 資料)プレジャーボートの新造船価格は、メーカーおよび販売店資料により1隻当たりの平均価格を設定

(平成15年度価格)。

表 3-6 一般船舶の船種・船型別の新造船価(SCij)

(単位:百万円/隻)

資料)造船造機統計(国土交通省;平成10年1月~平成14年12月)の一般的な建造単価により設定(各年

のGTあたり建造価格を平成15年度価格に換算して算出)。

表 3-7 海難事故損傷程度別船体損傷率(SAPk)

損傷程度区分 船体損傷率

全損 1.0

重大損傷 0.7

軽微損傷 0.2

損傷無し 0.0

資料)海難調査票の船体損傷程度区分より設定。なお、重大損傷は「大破」と「中破」の損傷程度区分の

平均値を適用した。

Page 33: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-30

②船舶修繕期間中の損失額の計算

船舶修繕期間中の損失額(SB2)は、一般船舶の損失額(SB21)と漁船・プレジャーボートの損

失額(SB22)の合計額とし、下記の式を用いて計算する。 SB2=SB21+SB22 ここで、 SB2 :船舶修繕期間中の損失額(円/年) SB21 :一般船舶の修繕期間中の損失額(円/年) SB22 :漁船・プレジャーボートの修繕期間中の損失額(円/年)

【一般船舶の船舶修繕期間中の損失額】 一般船舶の船舶修繕期間中の損失額(SB21)は、海難事故により発生した船体の損傷箇所等を修

繕する期間中、海難事故船舶と同じ船種・船型の船舶を別途チャーターした場合に必要となる費用

(チャーター料)であり、下記の式を用いて計算する。

∑∑∑i j k

ijikijk21 SDC×ST×ALDR SB )(=

ここで、 SB21 :一般船舶の船舶修繕期間中の損失額(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損傷

程度 k 別の海難事故減少隻数) STik :船種・損傷程度別修繕期間(日/隻:船種 i・損傷程度 k 別の海難事故船舶の

修繕期間) SDCij :船種・船型別チャーター料(円/日:船種 i・船型 j 別の海難事故船舶と同

じ船種・船型の船舶を 1 日チャーターした場合に必要となる費用) i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【漁船・プレジャーボートの船舶修繕期間中の損失額】 漁船、プレジャーボートの船舶修繕期間中の損失額(SB22)は、海難事故により発生した船体の

損傷箇所等を修繕する期間中の操業停止等による損失額(休業損失)であり、下記の式を用いて計

算する。

∑∑∑i j k

ijikijk22 SDC×ST×ALDR SB )(=

ここで、 SB22 :漁船・プレジャーボートの船舶修繕期間中の損失額(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損傷

程度 k 別の海難事故減少隻数) STik :船種・損傷程度別修繕期間(日/隻:船種 i・損傷程度 k 別の海難事故船舶の

修繕期間) SDCij :船種・船型別休業損失額(円/日:船種 i・船型 j 別の海難事故船舶の 1 日

あたりの休業損失額) i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【解説】 ・ 船舶修繕期間中の損失額は、海難事故により発生した船体の損傷箇所等を修繕する期間中、海難

事故船舶と同じ船種・船型の船舶をチャーター等する際に必要な費用を計算する。 ・ 船体損傷箇所を修繕する期間は、海難事故船舶の船種、船型、損傷程度により全て異なり、全て

Page 34: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-31

の海難事故船舶について修繕期間を個別に設定することは難しい。このため、簡便法として、船

種・損傷程度別の修繕期間を設定して損失額を計算する。 ・ 修繕期間中に発生する費用は、当該期間中における船社の対応方法で異なる。本マニュアルでは、

一般船舶は海難事故船舶と同じ船種・船型の船舶を別途チャーターした場合に必要となるチャー

ター料(燃料費、船員費を除く)を修繕期間中の損失額として計算する。 ・ また、漁船・プレジャーボートは、修繕期間中の操業は停止されると想定し休業損失額を修繕期

間中の損失額として計算する。

(参考)

表 3-8 船種・損傷程度別修繕期間(STik)

海難事故損

傷程度区分 船種区分 修繕期間

漁船 6 ヶ月(180 日)/隻

プレジャーボート 1 ヶ月(30 日)/隻

一般貨物船、自動車専用船、コンテナ船、タンカ

ー、フェリー、旅客船 12 ヶ月(365 日)/隻

全損 一般

船舶 LPG船、LNG船 18 ヶ月(545 日)/隻

漁船、プレジャーボート 1 ヶ月(30 日)/隻

一般貨物船、自動車専用船、コンテナ船、タンカ

ー、フェリー、旅客船 8 月(240 日)/隻重大損傷 一般

船舶 LPG船、LNG船 12 ヶ月(365 日)/隻

漁船、プレジャーボート 2 週間(14 日)/隻

一般貨物船、自動車専用船、コンテナ船、タンカ

ー、フェリー、旅客船 2 ヶ月(60 日)/隻軽微損傷 一般

船舶 LPG船、LNG船 3 ヶ月(90 日)/隻

注)下記の前提条件のもとで、造船関係者へのヒアリングにより設定。

注)需要動向分析で、「一般船舶と漁船」に区分した場合において、「一般船舶」の船種・損傷程度別修繕

期間は、上記の「一般貨物船、自動車専用船、コンテナ船、タンカー、フェリー、旅客船」を適用す

る。

全 損:同一船を再度建造するケースを前提とする。 重大損傷:機関部が損傷したケースを前提とする。 軽微損傷:機関部への損傷以外のケースを前提とする。

Page 35: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-32

船型区分 船種区分

以上 未満 一般貨物船 自動車専用船 コンテナ船LPG船LNG船

タンカーフェリー旅客船

一般船舶

100GT 12.0 - - - 18.0 - 12.9

100GT 500GT 15.0 - - - 24.0 18.0 17.1

500GT 1,000GT 18.0 60.0 - - 30.0 36.0 27.0

1,000GT 3,000GT 24.0 78.0 - 36.0 42.0 72.0 46.7

3,000GT 10,000GT 30.0 102.0 36.0 90.0 60.0 102.0 42.1

10,000GT 20,000GT 42.0 138.0 48.0 138.0 108.0 204.0 63.2

20,000GT 50,000GT 54.0 180.0 60.0 180.0 120.0 - 60.6

50,000GT 100,000GT 81.0 - 114.0 300.0 120.0 - 110.4

100,000GT 150,000GT - - - 330.0 150.0 - 150.0

150,000GT 200,000GT - - - - 240.0 - 240.0

休業損失額

漁船 20トン以下 28,500 円/隻・日

21~100トン 38,000 円/隻・日

101~500トン 104,500 円/隻・日

500トン以上 161,500 円/隻・日

プレジャーボート 50,000 円/隻・日

船種・船型区分

表 3-9 一般船舶の船種・船型別チャーター料

(単位:万円/隻・日)

資料)船社のヒアリングにより把握した用船費(燃料費、船員費、船舶費を含む)から、燃料費と船員費

を除いたものとして設定(平成15年度価格)。

注)表中の右端に記載した「一般船舶」とは、各船種・船型の用船費用に対して、東京港に入港する船舶

(平成14年度東京港港勢)の船種別総トン数で加重平均したものであり、船種別の隻数の把握が困難

な場合に適用する。

表 3-10 漁船・プレジャーボートの休業損失額

資料)漁船の休業損失額は、平成13年度漁業経営調査報告書(農林水産省統計情報部;平成15年 5月)、

第10次漁業センサス(農林水産省統計情報部;平成13年 3月)より設定(平成15年度価格に換算)。

資料)プレジャーボートの休業損失額は事業者ヒアリングにより設定(平成15年度価格)。

Page 36: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-33

③人的損失額の計算

人的損失額(SB3)は、海難事故による死亡者の人的損失額(SB31)と負傷者の人的損失額(SB32)

の合計額とし、下記の式を用いて計算する。 SB3=SB31+SB32 ここで、 SB3 :人的損失額(円/年) SB31 :死亡者の逸失利益・医療費・慰謝料(円/年) SB32 :負傷者の医療費・慰謝料(円/年)

【死亡者の人的損失額】 死亡者の人的損失額(SB31)は、下記の式を用いて計算する。

∑∑∑i j k

kijk31 DHV×SDH×ALDR SB )(=

ここで、 SB31 :人的損失額(死亡者)(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損傷

程度 k 別の海難事故減少隻数) SDHk:損傷程度別 1 隻あたりの死亡者数(人/隻:損傷程度 k 別の海難事故船舶 1

隻あたりの死亡者数) DHV :死亡者 1 人あたりの人的損失額(円/人)

i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【負傷者の人的損失額】 負傷者の人的損失額(SB32)は、下記の式を用いて計算する。

∑∑∑i j k

kijk32 KHV×SKH×ALDR SB )(=

ここで、 SB32 :人的損失額(負傷者)(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損傷

程度 k 別の海難事故減少隻数) SKHk:損傷程度別 1 隻あたりの負傷者数(人/隻:損傷程度 k 別の海難事故船舶 1

隻あたりの負傷者数) KHV :負傷者1人あたりの人的損失額(円/人)

i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【解説】 ・ 海難事故による海難事故船舶 1 隻あたりの死亡者数および負傷者数は、海難事故船舶の船種、船

型等の損傷程度によって全て異なり、全ての海難事故船舶について死亡者数および負傷者数を個

別に設定することは難しい。このため、簡便法として、船種・損傷程度別の海難事故船舶1隻あ

たりの死亡者および負傷者数を設定して人的損失額を算出する。 ・ 死亡者の人的損失額は、「逸失利益」、「医療費」、「精神的損害(慰謝料)」を計上する。なお、一

般船舶の場合において、逸失利益は、船員、乗客で異なるが、データ制約(死亡者のデータにお

いて船員、乗客の区分がない)のために、船員と乗客に区分して人的損失額を算出するのは困難

である。 ・ 過去 10 年間の海難事故では貨物船の海難が 92%、また貨物船の海難事故での日本籍船の比率が

Page 37: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-34

67%を占める。このような状況を踏まえて、本マニュアルにおいては、簡便法として、日本人船

員の年間収入額を用いて、ライプニッツ方式により算出した死亡者 1 人あたりの逸失利益を適用

する。 ・ 負傷者の人的損失額は、「医療費」および「精神的損害(慰謝料)」を計上する。 (参考)

表 3-11 損傷程度別 1隻あたりの死亡者数

船種区分 損傷程度区分1隻あたり死亡者数

(人/隻)

全損 0.764 一般船舶

重大損傷 0.006

全損 0.204 漁船・プレジャーボート

重大損傷 0.070

資料)海難調査票(1992年~2001年の過去10年データ)より設定。

表 3-12 損傷程度別 1隻あたりの負傷者数

船種区分 損傷程度区分 1隻あたりの負傷者数

(人/隻)

一般船舶 全損 0.284

重大損傷 0.239

軽微損傷 0.109

損傷無し 0.025

漁船・プレジャーボート 全損 0.355

重大損傷 0.332

軽微損傷 0.283

損傷無し 0.158

資料)海難調査票(1992年~2001年の過去10年データ)より設定。

表 3-13 死亡者・負傷者1人あたりの人的損失額

(単位:百万円/人)

死亡者・負傷者区分 船種区分 逸失利益 医療費 慰謝料 合計

死亡者 一般船舶 66.101 1.367 14.210 81.678

漁船 58.758 1.367 14.210 74.335

プレジャーボート 37.014 1.367 14.210 52.591

負傷者 一般船舶

漁船 1.186 (医療費+慰謝料)

プレジャーボート

資料)一般船舶、漁船に係る死亡者の逸失利益は平成14年船員労働統計(国土交通省)の平均年齢、平均

年収をもとに、ライプニッツ法により算出(平成15年度価格に換算)。

資料)死亡者の「医療費、慰謝料」、負傷者の人的損失額は、「交通事故による経済的損失に関する調査研

究報告書」(平成14年 6月、内閣府政策統括官(総合企画調整担当))より設定。プレジャーボート

に係る死亡者の逸失利益については、現在のところ死亡者に関する十分なデータが得られていない

ため、代替的な手法として、同報告書の性年齢別業種別平均賃金にライプニッツ法を適用して死亡

者1人当たりの平均値を算出(いずれも平成 15 年度価格に換算)。なお、この値は実際のプレジャ

ーボートに係る死亡者の逸失利益と比べて、過大な値ではないと考えられる。

Page 38: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-35

船型区分 船種区分

以上 未満 一般貨物船 自動車専用船 コンテナ船LPG船LNG船

タンカー 一般船舶

100GT 7.0 - - - 2.3 6.3

100GT 500GT 7.0 - - - 2.3 6.3

500GT 1,000GT 2.4 165.2 - - 2.3 3.1

1,000GT 3,000GT 14.7 165.2 - 2.9 2.3 13.6

3,000GT 10,000GT 14.7 165.2 19.2 2.9 2.3 18.5

10,000GT 20,000GT 14.7 165.2 19.2 2.9 2.3 18.5

20,000GT 50,000GT 14.7 165.2 19.2 2.9 2.3 18.5

50,000GT 100,000GT 14.7 165.2 19.2 2.9 2.3 18.4

100,000GT 150,000GT - - - 2.9 2.3 2.3

150,000GT 200,000GT - - - - 2.3 2.3

④積み荷損失額の計算

積み荷損失額(SB4)は、海難事故船舶が輸送していた積み荷が被害を被った場合に発生する損

失額であり、下記の式を用いて計算する。

∑∑∑i j k

kijijijijk4 CAR×SCR×SCW×SCV×ALDR SB )(=

ここで、 SB4 :積み荷損失額(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損傷

程度 k 別の海難事故減少隻数) SCVij :船種・船型別積載貨物トン単価(円/トン:船種 i・船型 j 別の船舶の積載

貨物トン単価) SCWij:船種・船型別重量トン数(トン/隻:船種 i・船型 j 別の 1 隻あたりの重量

トン数) SCRij :船種・船型別貨物積載率(船種 i・船型 j 別の 1 隻あたりの貨物積載率) CARk :損傷程度別積み荷損傷率

i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【解説】 ・ 積み荷損失額は、旅客船、フェリーを除く一般船舶のみを対象として計算する。 ・ 積み荷損失額は、海難事故船舶の船種、船型、損傷程度、輸送貨物品目等によって全て異なり、

全ての海難事故船舶について積み荷の損失を個別に設定することは難しい。このため、簡便法と

して海難事故船舶が輸送する貨物の価額に損傷程度別積み荷損傷率を乗じて積み荷損失額を計

算する。

(参考)

表 3-14 船種・船型別積載貨物トン単価(SCVij) (単位:万円/トン)

資料)一般貨物船 1,000GT 未満は「港湾投資の評価に関するガイドライン」より設定(平成 9 年度価格を

平成 15 年度価格に換算)。自動車専用船、LPG船・LNG船、タンカー、一般貨物船 1,000GT 以

上は「外国貿易概況2002」より設定(平成15年度価格)。

注)需要動向分析において「一般船舶」の区分で隻数推計した場合、右端「一般船舶」原単位を適用する。

Page 39: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-36

船型区分 船種区分

以上 未満 一般貨物船 自動車専用船 コンテナ船LPG船LNG船

タンカー 一般船舶

100GT 90 - - - 90 90

100GT 500GT 560 - - - 550 559

500GT 1,000GT 1,400 1,000 - - 1,500 1,413

1,000GT 3,000GT 3,700 2,500 - 2,400 3,700 3,694

3,000GT 10,000GT 12,000 8,000 7,400 7,800 11,800 8,005

10,000GT 20,000GT 28,000 19,000 17,000 18,000 27,000 18,437

20,000GT 50,000GT 66,500 43,000 40,000 42,000 63,300 43,444

50,000GT 100,000GT 140,000 - 85,000 90,000 136,000 92,201

100,000GT 150,000GT - - - 150,000 226,000 226,000

150,000GT 200,000GT - - - - 316,000 316,000

表 3-15 船種・船型別の重量トン数(SCWij)

(単位:重量トン数/隻)

注)船種・船型別の重量トン数は、各船種毎に総トン数と重量トン数の換算係数を用い、各船型区分の中

間値の総トン数に換算係数を乗じて設定。

注)需要動向分析において「一般船舶」の区分で隻数推計した場合、右端「一般船舶」原単位を適用する。

資料)総トン数と重量トン数の換算係数:「港湾の施設の技術上の基準・同解説 1999 改訂版(上巻)」(社

団法人日本港湾協会、平成11年 4月)。

表 3-16 船種・船型別貨物積載率(SCRij)

船種・船型区分 積載率

一般貨物船 100GT 未満 0.44

100GT 以上 500GT 未満 0.44

500GT以上 1,000GT 未満 0.44

1,000GT 以上 0.5

自動車専用船 0.5

コンテナ船 0.8

LPG船、LNG 船 0.5

タンカー 0.5

一般船舶 0.5

注)貨物積載率は、一般的な貨物輸送状況をもとに想定。コンテナ船以外は往航・復航で片側のみ貨物積

載するとして設定。

注)需要動向分析において「一般船舶」の区分で隻数推計した場合、 下段「一般船舶」原単位を適用す

る。

資料)一般貨物船の1,000GT未満は「港湾投資の評価に関するガイドライン」より設定。

表 3-17 損傷程度別積み荷損傷率(CARk)

損傷程度区分 積み荷損傷率

全損 1.0

重大損傷 0.6

軽微損傷 0.2

損傷無し 0.0

資料)海難調査票の積み荷損傷程度区分より設定。

Page 40: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-37

⑤海難事故船舶処理に伴う損失額の計算

海難事故船舶処理に伴う損失額(SB5)は、自力航行不可能になった海難事故船舶の撤去および

救助に必要となる費用であり、下記の式を用いて計算する。

∑∑∑i j k

kijk5 SS×ALDR SB )(=

ここで、 SB5 :海難事故船舶処理に伴う損失額(円/年) ALDRijk :船種・船型・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・船型 j・損傷

程度 k 別の海難事故減少隻数) SSk :損傷程度別海難事故船処理費用(円/隻:損傷程度 k 別の海難事故船舶の

処理費用) i :船種区分 j :船型区分 k :海難事故損傷程度区分

【解説】 ・ 海難事故船舶処理に伴う損失額は、自力航行が不可能となることを想定した海難事故損傷程度区

分における「全損」と「重大損傷」の海難事故船舶を計算の対象とする。 ・ 海難事故船舶処理に伴う費用は、海難事故の発生場所、船体損傷箇所、海難事故船舶の船種・船

型等によって全て異なり、全ての海難事故船舶について海難事故船舶処理に伴う損失を個別に設

定することは難しい。このため、簡便法として作業船使用料、作業人件費、救助報酬費の合計額

である損傷程度別海難事故船舶処理費用を用いて計算する。

(参考)

表 3-18 損傷程度別海難事故船舶処理費用(SSk)

損傷程度区分 海難事故船舶処理費用

全損 46 百万円/隻

重大損傷 70 百万円/隻

資料)サルベージ会社ヒアリングより、一般的な事故船処理に要する作業船使用料、作業人件費、救助報

酬費等をもとに設定(平成15年度価格)。

注)重大損傷の場合は、船体の救助報償費が含まれているため、全損時よりも処理費用単価は大きくなっ

ている。

Page 41: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-38

⑥流出油による海洋環境汚染に伴う損失額の計算

流出油による海洋環境汚染に伴う損失額(SB6)は、海難事故船舶からの流出油による海洋環境

汚染への対応として必要となる油除去費、油濁防除費、漁業補償費、損害賠償費の合計額とし、下

記の式を用いて計算する。

∑∑i k

sik SOC×SOT×ALDRSB )(=6

ここで、 SB6 :流出油による海洋環境汚染に伴う損失額(円/年) ALDRik :船種・損傷程度別海難事故減少隻数(隻/年:船種 i・損傷程度 k 別の海

難事故減少隻数) SOTS :海難事故船舶 1 隻あたりの流出油量(キロリットル/隻:S=1(タンカー)、

S=2(タンカー以外の船舶)) SOC :流出油量1キロリットルあたりの損失額(円/キロリットル)

i :船種区分(タンカー、タンカー以外の船舶の 2 つの区分) k :海難事故損傷程度区分(全損、重大損傷のみ)

【解説】 ・ 流出油による海洋環境汚染に伴う損失額は、船体の損傷が生じる海難事故損傷程度区分である「全

損」と「重大損傷」の海難事故船舶を計算の対象とする。 ・ 流出油による海洋環境汚染に伴う損失額は、海難事故船舶の種類、海難事故の発生場所、流出油

の品種および流出量、流出油の浮遊状況等によって全て異なり、全ての海難事故船舶について流

出油による海洋環境汚染に伴う損失を個別に設定することは難しい。このため、簡便法として、

タンカーとタンカー以外の船舶に区分して、これらの船種区分毎に設定する海難事故船舶 1 隻あ

たりの流出油量に単位流出油量あたりの損失額を乗じて流出油による海洋環境汚染に伴う損失

額を計算する。 ・ 流出油は燃料油と積み荷としての油の両者を考慮したものである。なお、タンカーの場合は、「④

積み荷損失額」では積み荷のみの流出量を算出しているが、ここではタンカー以外の船舶の流出

油(燃料油)との整合性をとるため、別途流出油量を設定している。

(参考)

表 3-19 海難事故船舶1隻あたりの流出油量(SOT1、SOT2)

船種区分 海難事故船舶1隻あたり流出量

(キロリットル/隻)

タンカー 1.53

その他一般船舶 0.29

漁船、プレジャーボート 0.14

資料)海難調査票(1992年~2001年の過去10年データ)より設定。

Page 42: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-39

表 3-20 単位流出油量あたり損失額(SOC)

流出油1キロリットル当たり損害額 2.6 百万円/キロリットル

注)日本国領海内で発生した油流出を伴う海難事故隻数1隻毎に単位流出油量あたりの補償額(油除去費、

油濁防除費、漁業補償費、損害賠償費の合計値)を算出し、それらの平均値を求めて設定(各事故の

損失額(発生年度)について、平成15年度価格に換算して算出)。

資料)「国際油濁補償基金データ」(annual report 2001)より設定。

Page 43: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-40

需要動向分析

目標年の年間通航船舶隻数

航路標識整備事業による海上輸送コスト削減額

with時の通航船舶の海上輸送コスト

without時の通航船舶の海上輸送コスト

with時の、航海速力 航海距離

without時の、航海速力 航海距離

3-3 輸送便益の計測

1)基本的考え方

輸送便益の計測は、図 3-5に示すように with 時と without 時における船舶の通航ルート、

年間通航船舶隻数、通航船舶の船種・船型に沿った海上輸送コストを計算し、その差額を輸送便

益として計測する。

【解説】 ・ 航路標識整備事業を実施する場合と実施しない場合の通航船舶の輸送費用を計算し、その差を計

算する。

図 3-5 輸送便益計測フロー

・ 本マニュアルでは海上輸送コストを、「対象船舶の1時間あたりのチャーター料(燃料費、船舶費、

船員費等)より求める輸送費用」と、「対象船舶の輸送する貨物の時間価値を考慮した輸送時間

費用」の合計値で求める。

航路標識整備事業による海上輸送コスト削減額(TB)

=without 時の海上輸送コスト(TCO)-with時の海上輸送コスト(TCW)

ここで、

海上輸送コスト=輸送費用+輸送時間費用

Page 44: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-41

目標年の通航船舶隻数

=with時隻数 without時隻数

with時コスト

without時コスト

通航船舶隻数

海上輸送コスト

輸送便益

( )航路標識整備事業による輸送便益の計測方法 上記網掛け長方形の面積の計算と同じ

 航路標識整備事業による輸送便益= ( )    目標年の通航船舶隻数× without時コストーwith時コスト

図 3-6 with 時と without 時の年間通航船舶隻数が同じ場合の輸送便益の捉え方

Page 45: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-42

。※結局はwith時とwithout時の隻数が同じでも上記の考え方で計測しているものである

without時隻数 with時隻数

with時コスト

without時コスト

通航船舶隻数

海上輸送コスト

輸送便益

航路標識整備事業による輸送便益の計測方法( ) ※上記網掛け台形の面積の計算と同じ

航路標識整備事業による輸送便益=( + ) 2 ( )   without時隻数 with時隻数 ÷ × without時コストーwith時コスト

(補足) ・ 需要動向分析において航路標識整備事業を実施する場合(with 時)と航路標識整備事業を実施し

ない場合(without 時)の両ケースの需要を推計した場合においても、with 時と without 時の海

上輸送コストの差額を輸送便益として算出する。 ・ この場合、航路標識整備によって with 時の年間通航船舶隻数が増加する場合、単純に with 時と

without 時の海上輸送コスト差額を算出すると、輸送便益としてはマイナス評価となる。 ・ したがって、ここでは以下に示す方式によって輸送便益を算出する。

図 3-7 with 時と without 時の年間通航船舶隻数が異なる場合の輸送便益の捉え方

Page 46: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-43

2)通航所要時間の計算

需要動向分析において事業対象海域を通航する船舶を対象として、with 時と without 時の航海

距離、航海速力を設定し、通航船舶1隻あたりの通航所要時間を算出する。 【解説】 ・ with 時と without 時における航海距離、航海速力は、事業対象海域を通航する船舶の操船者等に

対するヒアリング等を実施して設定する。 ・ 個別に設定することが困難な場合は、表 3-21、表 3-22に示す全国の平均的な航海速力

を適用する。

(参考)

表 3-21 航海速力の設定(一般船舶および21トン以上の漁船等)

速力区分 船型区分

出力 20 トン以下 21~100 トン 101~500 トン 501~1,000 トン 1,001 トン以上

最大速力 100% 6.9 ノット 8.2 ノット 10.5 ノット 11.6 ノット 14.3 ノット

巡航速力 70% 4.8 ノット 5.7 ノット 7.4 ノット 8.1 ノット 10.0 ノット

危険回避等転舵時の速力

45% 3.1 ノット 3.7 ノット 4.7 ノット 5.2 ノット 6.4 ノット

(備考)

船舶の大きさ(20 トン)を採用

船舶の大きさ(50 トンと 100トン)の平均を採用

船舶の大きさ(200トン・500トン)の平均を採用

船舶の大きさ(1,000 トン)を採用

船舶の大きさ(3,000 トン・10,000 トン)の平均を採用

資料)「海上交通工学」、海文堂、1.2.1船の大きさ(P12)表 1.2および「航海便覧」、海文堂、14.2速力と

速力制御(P645)より船舶の速力を設定。

表 3-22 航海速力の設定(20トン以下の小型漁船等)

速力区分 出力 航海速力

最大速力 100% 19.0 ノット

巡航速力 70% 13.3 ノット

危険回避等転舵時の速力 36% 6.8 ノット

資料)漁船の操船者ヒアリング結果に基づき設定。

Page 47: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-44

船型区分 船種区分

以上 未満 一般貨物船 自動車専用船 コンテナ船LPG船LNG船

タンカーフェリー旅客船

一般船舶

100GT 0.8 - - - 1.3 - 0.9

100GT 500GT 1.0 - - - 1.7 1.3 1.2

500GT 1,000GT 1.3 4.2 - - 2.1 2.5 1.9

1,000GT 3,000GT 1.7 5.4 - 2.5 2.9 5.0 3.3

3,000GT 10,000GT 2.1 7.1 2.5 6.3 4.2 7.1 2.9

10,000GT 20,000GT 2.9 9.6 3.3 9.6 7.5 14.2 4.4

20,000GT 50,000GT 3.8 12.5 4.2 12.5 8.3 - 4.2

50,000GT 100,000GT 5.6 - 7.9 20.8 8.3 - 7.6

100,000GT 150,000GT - - - 22.9 10.4 - 10.4

150,000GT 200,000GT - - - - 16.7 - 16.7

3)海上輸送コストの計算

with 時と without 時の船種・船型別の通航船舶 1 隻あたりの通航所要時間を用いて、それぞれの

輸送費用および輸送時間費用を計算し、両者の差額を輸送便益として求める。 (1)輸送費用の計算

with 時と without 時のそれぞれについて輸送時間に応じた輸送費用(ST)を下記の式を用いて

計算する。

ST=i j

(VTij×SDij×tij)

ここで、 ST :輸送費用(円/年) VTij :船種・船型別通航所要時間(時/隻) SDij :船種・船型別単位時間あたりの輸送費用(円/隻・時)

tij :目標年の船種・船型別の年間通航船舶隻数(隻/年) i :船種区分 j :船型区分

【解説】 ・ 船種・船型別の通航所要時間は、with 時と without 時の航海距離と航海速力より算出したものを

適用する。 ・ 船種・船型別の単位時間あたり輸送費用は、対象船舶の船種、船型に応じて、操船者等に対する

ヒアリング等を実施して設定する。 ・ 個別に設定することが困難な場合は、表 3-23に示す全国の平均的な輸送費用を適用する。

(参考)

表 3-23 船種・船型別単位時間あたりの輸送費用(一般船舶)

(単位:万円/隻・時)

資料)船社ヒアリングで把握した1日あたりの用船費用(燃料費、船員費、船舶費を含む)を1日 24時間

で割り戻して設定(平成15年度価格)。

注)表中の右端に記載した「一般船舶」とは、各船種・船型別の用船費用に対して、東京港に入港する船

舶(平成14年度東京港港勢)の船種別総トン数で加重平均して設定。

注)RORO船、内航コンテナ船は一般貨物船を適用する。

Page 48: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-45

表 3-24 船種・船型別単位時間あたりの輸送費用(漁船・プレジャーボート)

船型区分 時間あたり輸送費用

20 トン以下 3,800 円/時

21~100 トン 7,200 円/時

101~500 トン 18,300 円/時

501 トン以上 39,400 円/時

注)輸送費用は、燃料費、船員費、船舶費を含む(平成15年度価格)。

資料)平成 13 年度漁業経営調査報告書(農林水産省統計情報部;平成 15 年 5 月)、第 10 次漁業センサス

(農林水産省統計情報部;平成 13 年 3 月)、造船造機統計(国土交通省;平成 10 年 1 月~平成 14

年 12月)、建設物価(燃料費)(財団法人建設物価調査会;平成15年 12月号)より設定(各費用は

平成15年度価格に換算)。

Page 49: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-46

(2)輸送時間費用の計算

外貿のコンテナ貨物と内貿のユニットロード貨物(フェリー、RORO船および内航コンテナ船)

を対象とし、with 時と without 時のそれぞれについて通航所要時間に、貨物の時間費用原単位を

乗じ、輸送時間費用(CT)を計算する。

a.外貿コンテナ貨物に係わる輸送時間費用 通航所要時間に外貿コンテナ貨物の時間費用原単位と貨物量(1 隻あたりのコンテナ積載量×コ

ンテナ船の年間通航船舶隻数)を乗じて、輸送時間費用を計算する。

CTc=j(VTj×CTVc×CSj×tj)

ここで、 CTc :外貿コンテナ貨物の輸送時間費用(円/年) VTj :船型 j 別の外航コンテナ船の通航所要時間(時/隻) CTVc:外貿コンテナ貨物の時間費用原単位(円/TEU・時) CSj :1 隻あたりのコンテナ積載量(TEU/隻)

tj :船型 j 別の外航コンテナ船の年間通航船舶隻数(隻/年) j :船型区分

b.内貿ユニットロード貨物に係わる輸送時間費用 通航所要時間に内貿ユニットロード貨物の時間費用と貨物量(1隻あたりの輸送貨物量×年間通

航船舶隻数)を乗じて、輸送時間費用を計算する。

CTu=i j

(VTij×CTVuk×CSuk)

ここで、 CTu :内貿ユニットロード貨物の輸送時間費用(円/年) VTij :船種i・船型 j 別の船舶の通航所要時間(時/隻)

CTVuk:内貿ユニットロード貨物品目 k 別の時間費用原単位(円/フレー

トトン・時) CSuk :内貿ユニットロード貨物品目 k 別の年間貨物量(フレートトン/年)

i :船種区分 j :船型区分

【解説】 ・ 一般に外貿コンテナ貨物、内貿ユニットロード貨物(フェリー、RORO船、内航コンテナ船で

輸送される貨物)以外の貨物は時間価値が低いため、輸送時間の短縮に伴う貨物の輸送時間費用

の算出の対象外とする。 ・ 外貿コンテナ貨物の時間費用、コンテナ船1隻あたりの積載コンテナ個数、内貿ユニットロード

貨物の時間費用等を個別に設定することが困難な場合は、表 3-25~表 3-31に示す全国

の平均的な時間費用等を適用する。 ・ なお、事業対象海域を通航する船舶が寄港する港湾が特定化できる場合、外貿コンテナ貨物、内

貿ユニットロード貨物の年間貨物量は当該港湾の港湾管理者による港湾統計で把握可能であり、

時間短縮量、単位時間あたりの時間費用、年間貨物量より輸送時間費用を算出できる。

Page 50: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-47

船型区分

以上 未満

100GT 500GT 64 0.5 32

500GT 1,000GT 147 0.5 74

1,000GT 3,000GT 175 0.5 88

3,000GT 10,000GT 892 0.5 446

10,000GT 1,671 0.5 836

積載可能貨物量(メトリックトン/隻)

積載率1隻あたり輸送貨物量(メトリックトン/隻)

(参考)

表 3-25 外貿コンテナ貨物の時間費用

輸出コンテナ: 2,700 円/TEU・時

輸入コンテナ: 1,400 円/TEU・時

資料)港湾投資の評価に関するガイドラインより抜粋。

表 3-26 コンテナ船 1隻あたりの積載コンテナ個数算出式

Y=(0.068X-15.129)×積載率(0.8)

ここで、 X=船型(総トン数/隻)

Y=コンテナ積載個数(TEU/隻)

資料)港湾投資の評価に関するガイドラインより抜粋。

表 3-27 外貿コンテナ1TEU あたりの輸送貨物量

外貿コンテナ 1TEU 当たりの輸送貨物量=15 フレートントン/TEU

資料)内国貿易としてのコンテナ輸送個数と貨物量は、「平成13年港湾統計(年報)、国土交通省総合政策局

情報管理部」より抽出。

表 3-28 内貿ユニットロード貨物の時間費用

(単位:円/フレートトン・時間)

船種区分

RORO船 フェリー 品目区分

内航コンテナ船

農水産品・雑工業品 284.0 38.3

鉱産品等 101.0 13.6

化学・金属工業品等 109.0 14.7

機械工業品等 106.0 14.3

平均 110.5 14.9

注)品目区分の「平均」は、各品目の年間移出入量を用いて、加重平均して設定。

資料)港湾投資の評価に関するガイドラインより抜粋。

表 3-29 フェリー、RORO船1隻あたりの積載可能貨物量

注)積載可能貨物量は、2003年5月現在において就航しているフェリー航路に配船されているフェリーの積

載可能トラック台数(10トン車)より算出。

注)積載率は本マニュアルに示した表3-16(一般船舶を適用)より設定。

資料)2003 年 5 月現在において就航しているフェリーは、「フェリー旅客船ガイド 2003 年春季号」(国土交

通省海事局国内旅客課監修、社団法人日本旅客船協会発行;2003年 5月)より抽出。

Page 51: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-48

船型区分以上 未満

100GT 500GT 888 0.5 444500GT 1,000GT 888 0.5 444

1,000GT 3,000GT 960 0.5 4803,000GT 10,000GT 1,640 0.5 820

10,000GT 1,671 0.5 836

積載可能貨物量(フレートトン/隻)

積載率1隻あたり輸送貨物量

(フレートトン/隻)

表 3-30 内航コンテナ船1隻あたりの積載可能貨物量

注)積載可能貨物量は、2003年現在において就航している内航定期コンテナ航路に配船されている内航コン

テナ船の積載可能コンテナ本数と1コンテナあたり輸送貨物量(8フレートトン/TEU:内国貿易として

のコンテナ輸送個数と内国貿易貨物量(フレートトン、荷姿:コンテナ)より算出)

注)積載率は本マニュアルに示した表3-16(一般船舶を適用)より設定。

資料)内国貿易としてのコンテナ輸送個数と貨物量は、「平成13年港湾統計(年報)、国土交通省総合政策局

情報管理部」より抽出。

資料)2003年現在において就航している内航コンテナ船は「2003年版海上定期便ガイド」(海上定期便の会、

内航ジャーナル㈱)より抽出。

表 3-31 フレートトン(FT)とメトリックトン(MT)の換算係数

貨物の種類 MT/FT

フェリー貨物以外 0.919

フェリー貨物 0.124 注)フェリー貨物以外とはコンテナ船、RORO船を示す。

資料)港湾投資の評価に関するガイドラインより抜粋。

Page 52: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-49

(3)各対象事業における航海距離および通航所要時間短縮量の算定

各対象事業の特性を踏まえて、with 時と without 時の航海距離、航海速力を適切に設定し、航海

距離短縮量、通航所要時間短縮量を定量的に把握する。

【解説】 ・ 分析実施者は、各事業の特性を踏まえて、対象とする船舶流動に係わる操船者等へのヒアリング

を実施し、with 時と without 時の航海距離、航海速力を適切に設定する必要がある。 ・ 個別に航路標識整備事業に伴う通航所要時間短縮量を設定することが困難な場合は、過去の類似

事業に関しての操船者ヒアリングを踏まえて設定した全国の平均的な航海距離短縮量、または通

航所要時間短縮量を適用する。 ・ なお、現時点において航海距離短縮量等に関するデータ蓄積が不十分であることから、全国の平

均的な航行距離短縮量等の精度を確認することは困難である。このため、事後評価の実施に伴う

データ蓄積が進んだ時点以降において確認を行うものとして扱う。

表 3-32 航路標識整備事業に伴う航海距離短縮量または通航所要時間短縮量

対象事業 航海距離短縮量 備考 1.沿岸標識 0.27 km 2.障害標識 ■一般船舶

20 トン以下:761m 21~100 トン:748m 101~500 トン:697m 501 トン以上:615m

■漁船 20 トン以下:747m

・一般船舶の 501 トン以上については 501~1,000 トンの平均値を示す。

・漁船の 21 トン以上については、一般船舶の値を使用する。

3.港湾標識 ■一般船舶 対象船舶の航海速力を適用して、航海距離短縮量を算出する。

■漁船・プレジャーボート 611m

・港湾標識有無のアプローチ操船の仕方は操船者ヒアリングを通じて実態ベースで把握したものである。

4.マイクロ波標識 (レーマークビーコン)

0.27 km ・沿岸標識と同じ。

5.船舶通航信号所 ・全国統一的に航海距離短縮量または通航所要時間短縮量を設定することは困難である。

・船舶通航信号所の設置前と設置後の航路管制および船舶通航計画を作成し、その時間差を算出する。

6.海上交通情報機構 ・全国統一的に航海距離短縮量または通航所要時間短縮量を設定することは困難である。

・海上交通情報機構の設置前と設置後の航路管制および船舶通航計画を作成し、その時間差を算出する。

Page 53: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-50

①沿岸標識

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。

イ.通航ルート短縮距離

沿岸を通航する船舶は、通常レーダーにより陸岸を確認しながら自船のおおよその位置を把握し、

通航針路および変針点の設定を行っている。 沖合から陸岸に近づく船舶は、自らのレーダーにより陸岸が確認できた時点、すなわち沖合約 22

㎞の位置で針路の変更を行うこととなる。 これらに対し沿岸標識が設置されることにより、沖合約 40 ㎞の位置で、目標地点の方位が確認

できることから、この時点で針路の変更が可能となる。このため、変針点の差による距離短縮が可

能となり、運航時間が短縮されることになる。 平均的な地形と船舶の通航ルートを図 3-8のように設定して算出すると、短縮距離=0.27 ㎞

となる。

標識

標識有効範囲

22.0

5.5

40

C

BB'

A'A

19.79

13.91

3.7

33.43

57.5

°

57.5°

〔考え方〕

標識の有効範囲:40 ㎞ 船舶のレーダーで陸岸線の確認できる距離:22 ㎞

( ) 22h+H×4.12R == 1 H:陸岸の高さ(5mとする) h:船舶のレーダー空中線海抜高(10mとする)

標識設置による通航ルート短縮 1.設置前の通航ルート:A→B にて陸岸確認→B'にて変針→C=13.91+19.79=33.70 ㎞ 2.設置後の通航ルート:A にて信号確認→A'にて変針→C=33.43 ㎞ 3.短縮距離:(A'→B'→C)-(A'→C)=33.70-33.43=0.27 ㎞

図 3-8 通航ルート

1 「改訂電波標識」、財団法人日本航路標識協会(上巻 P114)

Page 54: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-51

ウ.通航船舶の航海速力

通航船舶の航海速力は、事業対象海域を通航する船舶の操船者等に対するヒアリング等を実施し

て設定する。 個別に把握することが困難な場合は、表 3-21、表 3-22に示した全国の平均的な航海速

力を適用する。

エ.海上輸送コスト削減額の算出

通航ルート短縮距離および航海速力より算出した1隻あたりの通航所要時間短縮量に対して、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時間費用等を適用して海上輸送コスト削減額を算出

する。

②障害標識

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。

イ.通航ルート短縮距離

離岸距離と変針点および危険物に対する離隔距離については、海域の広狭によって異なるが、他

船を避航し、機関、舵の故障に際しても危険に陥らぬ程度の距離を見込み、一般船舶の内海航路で

は 0.5 マイル~1 マイルとされている。2 また、20 トン以下の小型漁船については、漁船操船者によると 0.4 マイルの離隔距離を確保して

通航している。 一方、障害標識がある場合は、離隔距離 6L(20 トン以下の小型漁船等は、漁船操船者へのヒア

リングにより実態把握を行った結果より 0.43 マイル)が必要となる。これにより図 3-9、図 3-10に示す通航ルートとなり、短縮距離は表 3-33、表 3-34のとおりとなる。

表 3-33 通航ルート短縮距離(一般船舶および21トン以上の漁船等)

船型(総トン) 船の長さ(L) 通航ルート短縮距離

20 トン以下 14.4 ㍍ 761 ㍍

21~100 トン 22.9 ㍍ 748 ㍍

101~500 トン 43.2 ㍍ 697 ㍍

501 トン以上※ 64.0 ㍍ 615 ㍍

注)501トン以上については501~1,000トンの平均値を示す。

資料)「海上交通工学」、藤井弥平より設定。

表 3-34 通航ルート短縮距離(20トン以下の小型漁船等)

船型(総トン) 通航ルート短縮量

20 トン以下の小型漁船等 747 ㍍

資料)漁船の操船者ヒアリング結果に基づき設定。

2 「新訂航海ハンドブック」、成山堂書店(P36)

Page 55: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-52

0.4マイル(740m) 0.4マイル(740m)5m

0.8マイル(1,480m)+5m=1,485m

0.43マイル(796m)

0.68マイル(1,259m)b

a

図 3-9 障害標識整備による通航ルート短縮量(一般船舶および21トン以上の漁船等の場合)

a:標識あり ( ) ( ) 22.59672.5740 22 ×+ mm++mm〔

b:標識なし ( ) ( ) 22.51,2592.5740 22 ×++ mm+mm〔 通航ルート短縮距離=b-a

障害物は5m四方とする。

資料)漁船の操船者へのヒアリング結果に基づき設定。

図 3-10 障害標識整備による通航ルート短縮量(20トン以下の小型漁船等の場合)

0.5マイル(926m) 0.5マイル(926m)5m

1マイル(1,852m)+5m=1,857m

6L

0.5マイル(926m)a

b

a:標識あり ( ) ( ) 22.56L2.5926 22 ×+ m++mm〔

b:標識なし ( ) ( ) 22.59262.5926 22 ×+ mm++mm〔 通航ルート短縮距離=b-a

障害物は5m四方とする。

Page 56: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-53

ウ.通航船舶の航海速力

通航船舶の航海速力は、事業対象海域を通航する船舶の操船者等に対するヒアリング等を実施し

て設定する。 個別に把握することが困難な場合は、表 3-21、表 3-22に示した全国の平均的な航海速

力を適用する。

エ.海上輸送コスト削減額の算出

通航ルート短縮距離および航海速力より算出した1隻あたりの通航所要時間短縮量に対して、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時間費用等を適用して海上輸送コスト削減額を算出

する。

③港湾標識

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。

イ.スタンバイ速力移行地点の距離格差

航海中の船舶が港湾に近づくと、航海速力からスタンバイ速力に移る。アプローチ操船において

は、港湾標識を目標として、船位を確認し、港湾水路の情況を十分に把握し、外力の影響も考慮し

ながら、特に低速航行のため風潮の影響を受けやすいことから、細心の注意のもと入港している。 一方、港湾標識が整備されていない場合、入港船舶は様々なランドマーク等を活用して、船位を

確認し、速力を落としてアプローチ操船を行っている。しかしながら、船位確認に時間を要するこ

とから、港湾標識が整備されている場合と比べ、スタンバイ速力への移行は沖合で行われている。 このような状況を踏まえ、港湾標識の有無によるスタンバイ速力への移行地点の距離差を船舶の

操船者等に対してヒアリングした結果、一般船舶および 21 トン以上の漁船等は図 3-11に示す

とおり 2 マイル、また 20 トン以下の小型漁船は図 3-12に示すとおり 0.33 マイルであった。

ウ.通航船舶の航海速力

通航船舶の航海速力は、事業対象海域を通航する船舶の操船者等に対するヒアリング等を実施し

て設定する。 個別に把握することが困難な場合は、表 3-21、表 3-22に示した全国の平均的な航海速

力を適用する。

エ.海上輸送コスト削減額の算出

スタンバイ速力移行地点の距離格差および航海速力より算出した1隻あたりの通航所要時間短縮

量に、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時間費用等を適用して海上輸送コスト削

減額を算出する。

Page 57: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-54

6,8ノットで0.62マイルを航行

港湾標識整備有無の距離格差(0.33マイル)

港湾標識整備時の減速地点

13.3ノットで0.33マイルを航行

6.8ノットで0.29マイルを航行

港湾標識未整備時の減速地点

スタンバイ速力で5マイルを航行

港湾標識整備有無のスタンバイ速力移行時点の距離格差(2マイル)

港湾標識整備時の減速地点

巡航速力で2マイルを航行

スタンバイ速力で3マイルを航行

港湾標識未整備時の減速地点

資料)一般船舶の操船者ヒアリング結果に基づき設定。

図 3-11 港湾標識整備有無による減速地点の距離格差(一般船舶および21トン以上の漁船等)

資料)漁船の操船者ヒアリング結果に基づき設定。

図 3-12 港湾標識整備有無による減速地点の距離格差(20トン以下の小型漁船等)

Page 58: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-55

④DGPS 局

DGPS 局設置による輸送便益は全国一律で算出する。

ア.年間通航船舶隻数

全国の動力漁船総隻数と漁船 1 隻あたりの年間出漁日数より、年間の漁船通航隻数を算出する。

なお、動力漁船 1 隻あたりの年間出漁日数は、平成 10 年漁業センサスより 161 日/年と設定する。 さらに、DGPS 受信機を装備する漁船の割合を用いて、便益が発生する漁船を特定する。

イ.位置修正時間短縮

DGPS 測位により漁場における漁船の測位精度が向上し、運航効率の向上が図られ、これにより

便益が生じる。 従来の GPS 使用時においては、魚礁等の位置に漁具を投入する際に、GPS 測位による約 15m誤

差の位置から減速し、魚探装置を併用して正確な位置まで操船を行っていた。 DGPS 使用時においては 1m以下の精度(図 3-13)で測位が可能となるため、位置修正に係

る時間が短縮される。 <動力漁船の速力> ・漁場での位置修正等に係る速力を平均 1.2 ノットとして位置修正等に係る速力の場合

1.2 ノット×1,852m/時=37m/分 ・動力漁船(10 トン)の航海中の平均速力 13.3 ノットの場合

13.3 ノット×1,852m/時=410.5m/分 <操船時間> ・GPS 使用時の位置修正操船時間:TA1

TA1=距離/速力=67.0m/1.2 ノット=1.8 分 ・DGPS 使用時の操船時間:TA2

TA2=距離/速力=14.0m/13.3 ノット+4.4m/1.2 ノット=0.03 分+0.1 分=0.13 分 <運航時間短縮> ・1 回位置修正あたりの時間短縮:TDA

TDA=TA1-TA2=1.8-0.13=1.67 分 ・1 日あたりの時間短縮:TSD

漁場での1日あたりの操業時間を 6 時間とし、2 時間ごとに位置修正すると、3 回の操船が

必要であり、運航時間短縮:TSD は TSD=TDA×3回=1.67 分×3=5.01 分=0.084 時間

となる。

ウ.海上輸送コスト削減額の算出

位置修正短縮時間に表 3-24に示した輸送費用を乗じて海上輸送コスト削減額を算出する。

Page 59: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-56

26.0

26.0

14.0

15.0 1.0

1.7

1.7

GPSの誤差範囲

DGPSの誤差範囲

ポイント

13.3ノットで通航する区間

1.2ノットで通航する区間

(単位:m)

区分 時間計

GPS使用 0㍍ 0分 67.0㍍ 1.8分 1.8分

DGPS使用 14.0㍍ 0.03分 4.4㍍ 0.1分 0.13分

差 1.67分

13.3ノット区間 1.2ノット区間

図 3-13 DGPS の利用時の時間短縮

Page 60: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-57

レー

ダー

搭載

船の

航跡

(例)

減速

区間

常速

区間

レー

ダー

未搭

載船

の航

跡(例

常速

区間

減速

区間

2マイル 3マイル

5マイル

標識(レーダービーコン)

目視による視認範囲

レーダービーコンの有効範囲

他の標識

⑤マイクロ波標識(レーダービーコン)

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。さらに、レーダー

を装備する船舶の割合を用いて、便益が発生する船舶を特定する。 イ.視界不良時と比較しての短縮時間

一般に視界不良時においては、危険を避けるため、通常の速力から 20~25%減速する必要がある

と言われている3。これを踏まえ視界不良時において、レーダービーコンが設置されていないときは、

目標とする標識が目視できるようになる距離(2 マイル)までは、速力を 20%減じて通航し、同標

識を確認した後は、通常の速力で通航することとなる。 また、当該標識にレーダービーコンを設置することにより、有効範囲となる 5 マイル先から、同

標識を確認することが可能となり、速力を減ずることなく通航できる(図 3-14)。 このため、目標標識が確認できる距離差 3 マイル分の時間短縮が可能であると考えられ、一般船

舶の平均トン数を 101~500 トンと想定し巡航速力を 7.4 ノットとした場合、その短縮時間は次式

で示される。 TD1=(3 マイル/5.9(=7.4 ノット×80%))-(3 マイル/7.4 ノット)=0.103 時間 また、漁船の平均トン数を 20 トン以下と想定し、巡航速力を 13.3 ノットとした場合の短縮時間

は次式で示される。 TD2=(3 マイル/10.6 ノット(=13.3 ノット×80%))-(3 マイル/13.3 ノット)=0.057 時間

図 3-14 運航モデル

3「新訂航海ハンドブック」(P253)および船長経験者ヒアリングにより設定。

Page 61: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-58

ウ.視界不良日の割合

当該海域における視程が 2 マイル以下になる日数の割合を算出する。

エ.海上輸送コスト削減額の算出

視界不良時と比較した短縮時間に対して、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時

間費用等を適用して海上輸送コスト削減額を算出する。 ⑥マイクロ波標識(レーマークビーコン)

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。さらに、レーダー

を装備する船舶の割合を用いて、便益が発生する船舶を特定する。

イ.通航ルート短縮距離

①沿岸標識に同じ

ウ.通航船舶の航海速力

通航船舶の航海速力は、事業対象海域を通航する船舶の操船者等に対するヒアリング等を実施し

て設定する。 個別に把握することが困難な場合は、表 3-21、表 3-22に示した全国の平均的な航海速

力を適用する。

エ.海上輸送コスト削減額の算出

通航ルート短縮距離および航海速力より算出した1隻あたりの通航所要時間短縮量に対して、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時間費用等を適用して海上輸送コスト削減額を算出

する。 ⑦船舶通航信号所

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。 なお、便益が発生する船舶としては、管制対象船舶を対象とする。

イ.短縮時間

船舶通航信号所の設置前と設置後の航路管制および船舶通航計画を作成し、その時間差を算出す

る。

ウ.海上輸送コスト削減額の算出

上記イの短縮時間に、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時間費用等を適用して海

上輸送コスト削減額を算出する。

Page 62: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-59

⑧海上交通情報機構

ア.年間通航船舶隻数

需要動向分析において得られた事業対象海域を通航する船舶隻数を適用する。 なお、便益が発生する船舶としては、管制対象船舶を対象とする。

イ.短縮時間

海上交通情報機構の設置前と設置後の航路管制および船舶通航計画を作成し、その時間差を算出

する。

ウ.海上輸送コスト削減額の算出

上記イ)の短縮時間に、表 3-23~表 3-31に示した輸送費用、輸送時間費用等を適用して

海上輸送コスト削減額を算出する。

Page 63: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-60

第4章 費用の算定

4.

4-1 費用項目の抽出

計上する費用は、創設費、維持費とし、事業計画の年度別費用を用いる。

【解説】 ・ 一般に費用便益分析では、事業に係る費用は全て計上する。

(1)創設費

創設費については、表 4-1に示す費目についてその必要額を計上する。

表 4-1 創設費

(1) 調査・設計(地質、道路・敷地、電波伝搬、立木、局舎、鉄塔等) (2) 用地測量 (3) 用地購入 (4) 補償 (5) 土木工事(道路、敷地等) (6) 建築工事(局舎・灯塔建設、電気・機械設備整備、 外溝工作物整備等) (7) 鉄塔製造・建上げ工事 (8) 電力引込み工事 (9) 各種機器製造・購入

(10) 各種機器据付工事 (11) 負担金

(2)維持費

維持費については、表 4-2に示す費目についてその必要額を計上する。 なお、費用計測の入力データとするため、維持運営費と更新費に分けて計上する。

表 4-2 維持費

①物品費(備品費、消耗品費) ②光熱水費(電力、水道、ガス燃料、庁舎維持)③巡回点検費(人件費) ④修繕費(建物、設備、機器) ⑤土地建物借料

維持運営費

機器更新費 更新費 ①物品費(備品費、消耗品費)

航路標識を維持するために必要な備品費、消耗品費の実績データを計上する。 ②光熱水費(電力、水道、ガス燃料、庁舎維持)

航路標識を維持するために必要な電力、水道、ガス燃料、庁舎維持の実績データを計上する。

Page 64: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-61

③巡回点検費(人件費)

航路標識の運用および機能維持は国の職員により直接行われているが、標識毎にその形態は異な

っており、しかも職員は航路標識の運用および機能維持に専従しているわけではなく、一般行政事

務(対外行政を含む)と併せ業務を行っている。 沿岸標識、障害標識、マイクロ波標識については、充分な機能を発揮するためには、定期的な保

守点検(巡回点検)を必ず実施する必要がある。また DGPS 局、船舶通航信号所、海上交通情報機

構はこれに加え運用要員(通常当直体制で行う)を必要とする。 以上を踏まえ、航路標識については、明確に区分できる定期的な保守点検および運用に携わる職

員の人件費をコストに含めることとする。

<運営および維持管理に係る直接的な人件費> 当該航路標識の機能を保持するために必要な維持もしくは運用を直接的に行うために必要な要員

の人件費

ア.沿岸標識等巡回点検の方法により管理を行う標識

a.標識機能を保持する為の巡回点検時間に相応する要員の直接経費 b.標識機能を保持する為の巡回点検に相応する車両、船舶、交通費等の間接経費(両経費とも算

出が困難な場合は、外部に委託した場合を想定した経費を計上する。)

イ.海上交通情報機構等定期的な保守点検に加え直接運用の方法により管理を行う標識等

管制、情報提供等の機能を保持する為の海上交通情報機構の職員に係る直接経費 直接経費-俸給、諸手当 <参考>

間接費- 車両(車両本体、検査料、維持経費、燃料費) 船舶(船舶本体、検査料、維持経費、燃料費) 賃料(フェリー代、用車等) 通行料(高速道路利用料金等) 交通費(旅費、電車、バス代等)

④修繕費(建物、設備、機器)

航路標識を維持するため建物、設備、機器の修繕に必要な実績データを計上する。 ⑤土地建物借料

土地建物借料を計上する。 ⑥機器更新費

機器、設備については、計算期間中に更新が発生する。 機器更新費については各々の物理的な耐用年数にもとづいて計上する。

Page 65: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-62

4-2 費用の算定

費用は、事業の特性を踏まえ、抽出した費用項目全てについて、適切な手法に基づいて算定す

る。 また、費用に計上されない事業費が存在する場合は、その理由などを明示する。

【解説】 ・ 事業の特性を踏まえ、可能な限り、評価の対象期間に発生するものを計上するとともに、その発

生する時期を明確にする。 ・ 評価の対象期間に費用として発生することが想定されるが、別の事業として取り扱われている場

合や、事前の想定が困難な場合など、費用便益分析の費用として計上しない場合は、その理由を

明らかにする。 (補足1:費用等の計上時期) ・ 費用便益分析における費用等の計上時期は表 4-3に示すとおりとする。

表 4-3 費用便益分析における計上時期

費目 計上時期

創設費 発生年度の費用に計上

維持運営費 毎年の費用に計上 維持費

更新費 発生年度の費用に計上

施設・機器の残存価値 計算期末に便益に計上

土地の残存価値 購入時の土地代を計算期末に便益に計上

(補足2:税の扱い) ・ 費用便益分析では、事業の実施によって失われる財やサービスの価格を費用とする。このため、

創設費等の費用をそのまま用いるのではなく、費用が国民経済的に見ると単なる移転である税金

を控除する。 ・ 費用から控除すべき税金は、消費税のみでよいと理論的に定まっている訳ではない。本マニュア

ルにおいては、他事業の事例、計算の簡便性を考慮し、各種費用から消費税4を控除した値を用い

る。

4消費税率は、~1989 年 3 月 31 日:0%、1989 年 4 月 1 日~1997 年 3 月 31 日:3%、1997 年 4 月 1 日~:5%。

Page 66: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-63

第5章 残存価値の計測

残存価値を計上する場合は、理論的な考え方に則り、評価期間以降に発生する純便益を算定し、

これを便益として計上する。 具体的には、計算期間末で残存価値を評価すべき資産としては、物理的な耐用年数に満たない

施設、機器および土地である。

【解説】 ・ 施設および機器の償却資産については、企業会計の減価償却の概念を援用し、定額法により算定

する。

D=S×(1.0-0.9×LU/LC) ただし、

D:残存価値 S:設置時の価格 LC:物理的な耐用年数 LU:使用年数

・ 土地等の非償却資産については、一般的に評価期間末の価値の想定が困難であるため、取得時の

価格に基づき残存価値を算定する。 ・ 物理的な耐用年数は表 5-1に示す期間を適用する。なお、供用期間は 50 年とする。

表 5-1 物理的な耐用年数

区 分 耐用年数

主機器 10~15 年

灯塔(FRP 造) 30 年

灯塔(鉄造) 40 年

灯塔、局舎(RC 造) 50 年

Page 67: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-64

1-tn

1=tt

n

=t

1-tt

)i+/(1C

i)+/(1B

∑ 

 

 

  1

0

n

1=t1-t

0

tt

i

0)i+(1

CB

となる

=- 

 

∑n

1=t1-t tt

i1CB 

  )+(

- 

第6章 費用便益分析

6.

6-1 基本的考え方

事業の投資効率性を様々な視点から判断できる環境を整え、事業評価結果の透明性を高めるた

め、費用便益分析では「純現在価値、費用便益比、経済的内部収益率」の3指標を用いて、事業

の投資効率性を評価する。

【解説】 <評価指標の種類> ・ 費用便益分析の評価指標としては様々なものが考えられるが、一般的に、費用便益比(CBR : Cost

Benefit Ratio、「B/C」と表記されることが多い)、純現在価値(NPV : Net Present Value )、経済的内部収益率(EIRR : Economic Internal Rate of Return)が用いられる。

(1)費用便益比(CBR:Cost Benefit Ratio)

費用便益比は以下の式によって算出する。費用便益比は、費用に対する便益の相対的な大きさを

比で表すものであり、この数値が1より大きいときには、社会経済的に見て効率的な事業と評価す

ることができる。また、費用便益比は社会的割引率の影響を受ける。

ただし、n:評価期間、Bt:t年次の便益、Ct:t年次の費用、i:社会的割引率

(2)純現在価値(NPV:Net Present Value)

純現在価値は、便益から費用を差し引いたものであり、この数値が正であるときには、社会経済

的に見て効率的な事業と評価することができる。また、純現在価値は社会的割引率の影響を受ける。

ただし、n:評価期間、Bt:t年次の便益、Ct:t年次の費用、i:社会的割引率

(3)経済的内部収益率(EIRR:Economic Internal Rate of Return)

経済的内部収益率は、「投資した資本を計算期間内に生じる便益で逐次返済する場合に返済率が

どの程度までなら計算期間末において収支が見合うか」を考えたときの収支が見合う限度の利率の

ことである。この数値が、設定している社会的割引率よりも大きいときには、社会経済的に見て効

率的な事業(投資費用の回収率が良い事業)と見なすことができる。 なお、経済的内部収益率は、社会的割引率の影響を受けない。

ただし、n:評価期間、Bt:t年次の便益、Ct:t年次の費用、i:社会的割引率

Page 68: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-65

<費用便益分析結果の取り扱い> ・ 事業評価は、事業の投資効率性や波及的影響、実施環境といった多様な視点から総合的に行うべ

きものである。 ・ その中で、ある事業がその投資に見合った成果を得られるものであるかどうかを確認することが

重要であることから、事業評価にあたっては費用便益分析を行い、事業の投資効率性を評価し、

その結果を事業採択時の判断材料の一つとして活用する。

Page 69: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-66

6-2 費用便益分析の実施

1)社会的割引率の設定

社会的割引率は4%とする。

【解説】 ・ 社会的割引率の設定については、理論的には、①資本機会費用により設定する方法と②社会的時

間選好により設定する方法が考えられるが、実務的には、②の考え方に基づき社会的割引率を設

定することは困難である。 ・ そこで、現在、①の考え方に基づき、市場利子率を参考に社会的割引率が設定されている。具体

的には、国債等の実質利回りを参考値として、社会的割引率を 4%に設定している。 2)評価の対象期間等の設定

評価の対象期間は、耐用年数等を考慮して定める。また、現在価値化の基準時点は、評価を実

施する年度とする。

【解説】 <評価の対象期間の設定の考え方> ・ 費用便益分析の評価の対象期間は、対象となる事業の事業実施期間に耐用年数等を考慮した供用

期間とする。 ・ 物理的な耐用年数は表5-1に示す期間を適用する。なお、供用期間は 50 年とする。 <現在価値化の基準時点の考え方> ・ 現在価値化の基準時点は、理解の容易さを考慮し、評価を実施する年度とする。したがって、新

規事業採択時評価における費用便益分析においては事業を採択する年度となる。 ・ このとき、費用、便益算定の原単位等は、物価上昇分を除去するため、現在価値化の基準年度の

実質価格に変換する。 <実質価格への統一> ・ 便益、費用については、デフレータを用いて、費用を実質価格に統一する必要がある。 ・ 便益については、実際には、多くの場合、評価を実施する年度の価格として計測していることが

多いため、実質価格に統一されていると考えられるが、過去の損害額等のデータを用いるときは、

デフレータを用いて評価を実施する年度の価格に統一する。 ・ 費用については、将来に関しては、評価を実施する年度の価格を用いていると考えられるため、

過去に支払われた費用についてのみ、支払時期と評価時点の間のデフレータを使って、算定時点

価格に統一する。

※実質価格と名目価格:実質価格は価格算定時点での価格、名目価格は発現時点での価格

Page 70: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-67

便益額 現在価値 便益額 現在価値

- - - - - -

整備期間 1年目

2年目

・・・・・

供用開始年度 1年目 △△△ △△△ △△△ △△△ - △△△

2年目 △△△ △△△ △△△ △△△ - △△△

3年目 △△△ △△△ △△△ △△△ - △△△

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ - ・・・・・

50年目 △△△ △△△ △△△ △△△ △△△ △△△

合  計 △△△ △△△ △△△ △△△ △△△便益の

総現在価値

便益の現在価値

残存価値年 度 (t)

基準年度=0

安全便益 B 1t 輸送便益 B 2t

3)費用便益分析の実施

費用、便益を発生年に計上し、かつ供用最終年の便益には、残存価値を合わせて計上し、費用

便益分析を実施する。

(1)便益の現在価値への変換

標識の整備期間および供用期間中の年度別便益より、社会的割引率を用いて基準年度における現

在価値を算出する。 当該事業の全体の便益の現在価値は、便益ごとの現在価値を合計することによって算出される。

次式で算出された便益ごとの現在の価値および残存価値を合計し、事業全体の便益の総現在価値

(B*)として、この値を費用便益分析に用いる。

項目kの便益の現在価値:Bk= t=1

n

1+i t

Bkt

ここで、Bk :k便益の現在価値(円) k :便益種類 n :標識の整備期間および供用期間(年) t :基準年度を 0 とする年度(年) Bkt :基準年度からt年目のk便益(円) i :社会的割引率(=4%)

表 6-1 便益の現在価値の算定表

注)便益は当該事業で関連する項目のみを計上する。

Page 71: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-68

創設費 C 1t 更新費 C 2t 維持運営費 C 3n

費 用 現在価値 費 用 現在価値 費 用 現在価値

整備期間 1年目 △△△ △△△ △△△

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

t年目 △△△ △△△ △△△

供用開始年度 1年目 - - - - △△△ △△△ △△△

2年目 - - - - △△△ △△△ △△△

3年目 - - △△△ △△△ △△△ △△△ △△△

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

50年目 - - - - △△△ △△△ △△△

合  計 創設費計 △△△ 更新費計 △△△維持

運営費計△△△

費用の総現在価値

年 度 (t)費用の

現在価値

基準年度=0

(2)費用の現在価値への変換

標識の整備期間および供用期間中の年度別費用より、社会的割引率を用いて基準年度における現

在価値を算出する。 当該事業全体の費用の現在価値は、費目ごとの現在価値を合計することにより算出される。次式

で算出された費目ごとの現在価値を合計し、当該事業全体の費用の総現在価値(C*)として、この

値を費用便益分析に用いる。

項目ℓの費用の現在価値:Cℓ= t=1

n

1+i t

Cçt

ここで、Cℓ :ℓ費用の現在価値(円)

ℓ :費目 n :標識の整備期間および供用期間(年) t :基準年度を 0 とする年度(年) Cℓt :基準年度からt年目のℓ費用(円) i:社会的割引率(=4%)

表 6-2 費用の現在価値の算定表

(3)費用便益分析の各評価指標の算出

以上の計算結果を用いて3つの評価指標について、それぞれ算出する。 ①費用便益比 CBR=B/C ②純現在価値 NPV=B-C ③経済的内部収益率 EIRR=純現在価値 NPV=0 となる利率 i

Page 72: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-69

第7章 定量的に把握する効果の計測

7.

7-1 基本的考え方

事業の効果は、可能な限り貨幣換算することにより定量的に把握することとするが、現時点に

おいて技術的・実務的観点から計測が難しいものについては、定量的又は定性的に記述した上で

分析する。 例えば操船者の心理的負担の軽減効果については、CVM(仮想的市場評価法)を用いて効果を

貨幣換算することが考えられるが、現時点では CVM を適用した研究実績・成果が少ないため、評

価手法の確立、評価値の精度向上がなされるまでの間は、操船者の心理的負担の軽減効果は便益

として計上せず、定量的又は定性的に把握する効果の一つとして整理する。 7-2 操船者の心理的負担の軽減効果の計測

1)計測の重要性

航路標識整備事業において、操船者の心理的負担の軽減効果を計測することは、安全性の向上

効果を適切に把握する上で重要である。

【解説】 ・ 航路標識がない場合、操船者は、入出港時等において慎重に操船しなければならず、心理的な負

担が発生する。一方、航路標識がある場合は、防波堤や浅瀬の視認性が向上し、運航経費が節減

できるとともに、心理的な負担を感じることなく操船が可能となる。この心理的負担の差が、「操

船者の心理的負担の軽減効果」となる。 ・ なお、例えば道路等は一般の利用者が多く、without 時(安全に係る施設等が整備されていない

場合)には交通事故の多発という形で問題が顕在化すると考えられるが、航路標識の場合、利用

者は一定の資格を有する専門家、ないし熟練者が多く、without 時には、海難事故の多発という

形で問題が顕在化するというより、操船時の緊張感、すなわち心理的負担という形で問題が発生

することが多いと考えられる。 ・ そのため、航路標識整備事業においては、安全性の向上効果を「海難事故の減少効果」だけでな

く、「操船者の心理的負担の軽減効果」と併せて把握することが重要である。 2)計測対象とする施設の分類

「防波堤灯台」と「航路を示す灯浮標、導灯、指向灯など」については、可能な限り操船者の

心理的負担の軽減効果を計測する。

【解説】 ・ 操船者が心理的負担を感じるケースとしては、「入港時に防波堤の視認性が低い場合」、「浅瀬等

の位置が不明で航路が分かりづらい場合」が考えられる。 ・ 従って、「防波堤灯台」と「航路を示す灯浮標、導灯、指向灯など」については、可能な限り操船

者の心理的負担の軽減効果を計測する。

Page 73: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-70

表 7-1 操船者の心理的負担の軽減効果の発現構造

設備 効果発現構造 A.防波堤灯台 ・ 防波堤の視認性が向上することにより、(例え衝突事故等はなくても)安

心して運航できるため、操船者の心理的負担の軽減が期待される。 B.航路を示す灯浮

標、導灯、指向灯な

・ 浅瀬等の存在の視認性が向上することにより、(例え乗揚事故等はなく

ても)安心して運航できるため、操船者の心理的負担の軽減が期待され

る。 3)計測方法

操船者の心理的負担の軽減効果は、CVM により計測する。 ただし、航路標識整備事業は、事業費が数百万円程度のものが多く、事業ごとに CVM を実施し

て、操船者の心理的負担の軽減効果を計測することは効率的ではない。 そのため、長期的には、マニュアルにおいて航路標識整備事業をいくつかのパターンに分類し、

パターンごとに心理的負担軽減効果の便益原単位を用意する、といった検討が必要である。

【解説】 ・ 操船者が心理的負担の軽減効果は、「非市場財(市場において取引価格が形成されていない財)的

効果」であることから、基本的に CVM(仮想的市場評価法)を用いて計測する。 ・ CVM においては、アンケートを用いて、以下のように事業を実施した場合(with 時)と事業を

実施しない場合(without 時)の状況を回答者に提示し、事業を整備することに対する支払意思

額を尋ねることにより効果を計測する。

表 7-2 心理的負担軽減効果計測のwith-without 設定

設定 内容 with 航路標識があることにより、運航経費が節減できるとともに、心理的な負担を感じるこ

となく航行ができる。 without 航路標識がないため、減速等が必要であり、同時に海難を起こすかもしれないという心

理的な負担を感じる。 ・ なお、CVM はアンケート調査を伴うため、ある程度の調査費用(規模にもよるが、概ね百万~

数百万円程度)および調査期間(数ヶ月~半年程度)を要する。一方、航路標識整備事業は事業

費が数百万円程度のものが多いため、事業ごとに CVM を実施して、操船者の心理的負担の軽減

効果を計測することは効率的ではない。 ・ そのため、長期的には、以下に示すように、航路標識整備事業および船種をいくつかのパターン

に分類し、パターンごとに心理的負担軽減効果の便益原単位を用意し、参考値としてマニュアル

に提示する、といったことについての検討が必要である。

Page 74: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-71

表 7-3 航路標識整備事業の心理的負担軽減効果の原単位設定表の分類(案)

船種 対象事業

一般船舶 漁船 沿岸標識 障害標識

光波標識

港湾標識 DGPS 局 マイクロ波標識 (レーダービーコン)

電波標識

マイクロ波標識 (レーマークビーコン)

船舶通航信号所 海上交通情報機構

Page 75: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-72

7-3 CVMによる操船者の心理的負担の軽減効果の計測

航路標識の操船者に対して、心理的負担の軽減効果に対する支払意思額を尋ねることにより、

操船者 1 人 1 回あたりの軽減効果原単位を把握する。 この原単位に年間通航船舶隻数を乗じることにより、年間の効果を計測する。

1)操船者1人 1回あたりの効果原単位の把握

以下のような仮想的市場を航路標識の利用が想定される操船者に提示し、心理的負担の軽減効果

に対する支払意思額を尋ねる。 回収数については、少なくとも 100 件程度の回答が得られることが望ましいが、困難な場合はそ

れより少なくてもよい。 また、効果原単位は、船種・船型によって異なると考えられるため、可能な限り船種・船型別に

把握する。

【問】○○防波堤灯台の整備効果を金額におきかえて評価するために、ここでは仮に航路標識を利

用する船舶からの利用料によって、標識の整備・維持管理を行う仕組みがあったとしたら、という

状況を想定して下さい。(これはあくまでも事業の効果を評価するための仮定であり、実際にこのよ

うな仕組みがとられるわけではありません。)

さて、下に示す 2 つの状況をご覧下さい。その下の①から⑥で【整備後】の利用料の額を示しま

すので、それぞれについて、下に示す【整備前】の状況と【整備後】の状況のうち、望ましいと思

う方の番号を○で囲んでください。なお、利用料の分だけあなたの収入が減ることを十分念頭にお

いてお考えください。

なお、どちらの場合も、入港にかかる時間や運航経費は全く同じであると考えてください。

【整備前】航路標識がない場合(現状) 【整備後】航路標識が整備される場合

・防波堤の所在が遠くからはわかりにくいた

め、特に夜間などは入港時に慎重な操船が

必要で、心理的な負担(ストレス)が生じ

ます(現在の状況)。

・防波堤灯台利用料は必要ありません。

・防波堤の所在が遠くからでもわかりやすい

ため、夜間などでも入港時の操船にあたっ

ての心理的な負担(ストレス)が軽減され

ます。

・入港時に防波堤灯台利用料が必要です。

①【整備後】の利用料が 50 円/回の場合 1)整備前がよい 2)整備後がよい 3)わからない ②【整備後】の利用料が 100 円/回の場合 1)整備前がよい 2)整備後がよい 3)わからない ③【整備後】の利用料が 200 円/回の場合 1)整備前がよい 2)整備後がよい 3)わからない ④【整備後】の利用料が 500 円/回の場合 1)整備前がよい 2)整備後がよい 3)わからない ⑤【整備後】の利用料が 1,000 円/回の場合 1)整備前がよい 2)整備後がよい 3)わからない ⑥【整備後】の利用料が 2,000 円/回の場合 1)整備前がよい 2)整備後がよい 3)わからない

注)①~⑥における利用料の提示額は事前調査等を実施して適切に設定する必要がある。

Page 76: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-73

2)効果の計測

上記で得られた効果原単位を用いて、以下の式により年間の操船者の心理的負担の軽減効果を計

測する。 <算定式>

操船者の心理的負担の軽減効果(年額)=p1n1+p2n2

ただし、

p1:一般船舶一隻あたりの支払意思額(円/年) p2:漁船一隻あたりの支払意思額(円/年)

n1:一般船舶の年間通航船舶隻数(隻) n2:漁船の年間通航船舶隻数(隻)

Page 77: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-74

第8章 感度分析

8.

8-1 基本的考え方

事業の適切な執行管理や国民へのアカウンタビリティを果たすとともに、事業評価の精度や信

頼性の向上を図るため、将来の不確実性を考慮した事業評価を実施する。 このため、費用便益分析結果に大きな影響を及ぼす要因について感度分析を実施し、その要因

が変化した場合の費用便益分析結果への影響の大きさ等を把握し、費用便益分析の結果を幅を持

って示す。

【解説】 <感度分析とは> ・ 感度分析とは、費用便益分析に用いられる変数の不確実さの幅に応じて、費用便益分析の評価指

標の算定値の変化を観察するものである。 <感度分析の目的> ・ 感度分析を実施し、主要な影響要因が変化した場合の費用便益分析結果への影響の度合いを把握

することで、事前に事業をとりまく不確実性を的確に認識し、継続的な確認による適切な事業の

執行管理や効率性低下等への対応策の実施などを適時的確に講じることにより、事業の効率性の

維持向上を図る。 ・ 感度分析を実施し、費用便益分析の結果を幅を持って示すことにより、国民へのアカウンタビリ

ティの向上を図る。 ・ 費用便益分析における感度分析の結果と、再評価、事後評価の結果による実現した状況とを比較・

分析することにより、費用便益分析や感度分析の手法や数値を見直すなど、その精度や信頼性の

向上を図る。

Page 78: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-75

8-2 感度分析の実施

費用便益分析と併せて、要因別感度分析を実施する。また、要因別感度分析や再評価・事後評

価の実施結果等の蓄積を踏まえ、順次、新規事業採択時評価、再評価において、上位ケース・下

位ケース分析を実施するように努める。 感度分析の結果は、影響要因とその変動幅を費用便益分析の結果と併せて公表する。

【解説】 <感度分析の手法> ・ 感度分析には、要因別感度分析、上位ケース・下位ケース分析、モンテカルロ感度分析があるが、

本マニュアルでは要因別感度分析を実施する。 ・ 要因別感度分析において適用する影響要因を以下に示す。

①社会的割引率(基本の 4%に対し 6%で実施、等) ②建設期間(5 年以上の建設期間を要する事業等では、前提としている建設期間を 2 年延長、

あるいは 20%延長、等) ③需要、創設費(前提とした需要量、計測結果の±10%、等)

表 8-1 感度分析の手法

分析手法区分 分析手法の概要 アウトプット

要因別感度分析 分析で設定した前提条件や仮定のうち、

一つだけを変動させた場合の分析結果へ

の影響を把握する手法

一つの前提条件・仮定が変動した

ときの費用便益分析の各指標値の

変動範囲を示す。

上位ケース・下位ケー

ス分析

分析で設定した前提条件や仮定のうち、

主要なもの全てを変動させた場合に、分析

結果が良好になる場合(上位ケースシナリオ)

や悪化する場合(下位ケースシナリオ)を設定

し、分析結果の幅を把握する手法

主要な全ての前提条件・仮定が変

動したときの費用便益分析の各指

標値の変動範囲を示す。

モンテカルロ感度分析 分析で設定した前提条件や仮定の主要な

もの全ての変数に確率分布を与え、モンテカ

ルロシミュレーションによって、分析結果の確率

分布を把握する手法

主要な全ての前提条件・仮定が変

動したときの費用便益分析の各指

標値の確率分布を示す。

<感度分析結果の取り扱い> ・ 事業の採択や継続の可否の意思決定にあたり、感度分析の結果も判断材料の一つとして扱う。 ・ 再評価時において費用便益分析結果が変動幅を超えた場合、または、事業実施中において事業を

取り巻く環境の変化等により変動幅を超える予兆が見出された場合は、変動幅の適正さについて

検証するとともに、その変動の要因について分析する。必要に応じて、事業の見直し等を検討す

る。

Page 79: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-76

第9章 分析結果の取りまとめ並びにデータ及び分析結果等の公開、蓄積

9.

9-1 分析結果の整理

対象事業の費用便益分析結果について、前提条件(供用年度、建設期間、費用)、分析結果(便

益計測結果、費用計測結果、評価指標値、感度分析結果)を総括する形で以下のように整理する。

1)とりまとめの表例

事業名 ○○整備事業

(1)前提条件 ①供用年度 年度 ②建設期間 年 ③創設費 百万円 ④更新費 百万円

⑤維持運営費 百万円/年 (2)費用便益分析結果

安全便益 百万円 輸送便益 百万円 残存価値 百万円

⑥総便益(現在価値)

便益計 百万円 創設費 百万円 更新費 百万円 維持運営費 百万円

⑦総費用(現在価値)

費用計 百万円 費用便益比 純現在価値 百万円

⑧評価指標

経済的内部収益率 %

2)費用便益分析結果の付属基礎資料(例)

(1)便益算出データ

年間通航船舶隻数 設置前 (隻) 船舶総トン数 設置前 (総トン数) 標識設置前の海難事故隻数 隻/年 短縮時間 時間 通航ルート短縮距離 マイル 1 時間あたり運航経費 円

Page 80: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-77

ケース 費用便益比 純現在価値 経済的内部収益率

①需要動向 + 10 % 百万円

②需要動向 - 10 % 百万円

③社会的割引率 6 % 百万円

④建設期間2年延長(※) - - 百万円 -

⑤創設費 + 10 % 百万円

⑥創設費 - 10 % 百万円

※)5年以上の建設期間を要する事業

事業概要 費用便益分析結果

事業名 △△港○○標識 基準年 2003 CBR ○.○○ EIRR ○.○% NPV

新規事業採択時評価

割引前 割引後(現在価値) 割引率 4.0%

(割引前) (割引後)

2004 H16 □□□ □□□ ○○○ 2004 16 1.04 □□□ □□□ ○○○

2005 H17 □□□ □□□ ○○○ 2005 17 1.08 □□□ □□□ ○○○

2006 H18 □□□ □□□ ○○○ 2006 18 1.12 □□□ □□□ ○○○

2007 H19 □□□ □□□ ○○○ 2007 19 1.17 □□□ □□□ ○○○

1 2009 H20 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2008 20 1.22 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

2 2010 H21 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2009 21 1.27 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

・・・ ○○○ ・・・ ○○○

・・・ ○○○ ・・・ ○○○

18 2026 H37 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2025 37 2.37 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

19 2027 H38 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2026 38 2.46 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

20 2028 H39 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ □□□ ○○○ 2027 39 2.56 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ □□□ ○○○

21 2029 H40 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2028 40 2.67 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

22 2030 H41 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2029 41 2.77 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

・・・ ○○○ ・・・ ○○○

・・・ ○○○ ・・・ ○○○

47 2055 H66 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2054 66 7.39 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

48 2056 H67 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2055 67 7.69 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

49 2057 H68 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2056 68 7.99 △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

50 2058 H69 △△△ △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○ 2054 69 8.31 △△△ △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ ○○○

△△△ △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ □□□ □□□ ○○○ △△△ △△△ △△△ △△△ □□□ □□□ □□□ □□□ ○○○

評価の区分

○○○百万円

安全便益

便益-費用費用

創設費 更新費維持

運営費輸送便益

合計

社会的割引率

便益-費用費用

年次 年度 輸送便益

単位:百万円

合計

合計

便益

合計年次 年度 残存

価値安全便益

単位:百万円

便益

合計 創設費 合計残存価値

更新費維持

運営費

(2)年度別便益および費用等

注)便益は当該事業で関連する項目のみを計上する。

(3)感度分析結果

Page 81: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-78

9-2 費用対効果分析の総括表

費用対効果分析の総括表を表 9-1に示す要領で作成する。 ①費用便益分析結果とともに、費用便益分析では十分説明できない事業の意義を明らかにするた

めに、現時点において技術的・実務的に貨幣換算が難しい事業効果についても定量的・定性的

に記述した上で分析する。なお、その記述に際しては、事業効果の重複を許すものとする。 ②記述については各々の効果について所見を示すとともに、当該事業の特徴的な効果について◎

を付す。

表 9-1 総括表(例)

1.事業名 ○○灯台整備事業

2.事業目的

船舶のふくそうする○○海域の北西部に位置する箇所に○○灯台を設置

し、もって事業対象海域における船舶交通の安全な通航を確保するととも

に、運航能率の向上を図るものである。

3.年間通航船舶隻数等(現況)

①当該海域通航隻数 通航隻数 隻

②当該海域港湾利用状況

通航隻数

隻、 合計総トン数 トン

4.費用便益分析

社会的割引率 %

現在価値化基準年度 平成 年

費用便益比

純現在価値 百万円

評価

指標

経済的内部収益率 %

5.感度分析

費用便益比

純現在価値 百万円 需要動向(±10%)

経済的内部収益率 %

費用便益比

純現在価値 百万円 社会的割引率6%

経済的内部収益率 %

費用便益比

純現在価値 百万円 建設期間2年延長

経済的内部収益率 %

費用便益比

純現在価値 百万円

創設費(±10%)

経済的内部収益率 %

Page 82: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-79

表 9-1 総括表(例)(2)

6.定量的評価データおよび定性的評価

(1)安全性の向上

①海難事故の減少 事業対象海域での乗揚げ海難事故が約×割減少する。 ◎

②二次災害の減少 ・事業対象海域を通航する年間×××隻の安全な通航が確保される。

・海難発生の初期対応が迅速に処理されることから、海上炎上等の巨

大災害が防止される。

③操船者等への負担の軽減 操船者等の心理的な負担が軽減される。 ◎

(2)国際的要請への対応 国際標準の航路標識を採用することにより、わが国の沿岸を通航する

外国船が安全に通航できる。

(3)効率性の向上

①時間費用の節減 ・事業対象海域では、一般船舶が年間×××隻、漁船が年間××隻通

航しており、当該標識設置により1隻あたり約××分、年間×××

時間の短縮が図られる。

・船舶通航時間の短縮により、工場等での貨物の在庫が削減される可

能性がある。

②海上作業の効率化 航路標識の設置により、海上構造物の位置決めが正確かつ容易にな

り、年間××件に及ぶ海上作業の時間、費用の一部が削減される。

(4)信頼性の向上

物流コストの削減 海上貨物輸送が増加し、A品目では荷主の物流コストが××%削減さ

れる可能性がある。

(5)環境の保全

CO2、NOX排出量の削減 海上交通の信頼性が高まり、モーダルシフトが促進され、CO2、NOxの

排出量が削減される可能性がある。

(6)産業振興

①海洋開発 新しい航路標識の設置により、小型船の安全性も高まり、プレジャー

ボートの販売の増加が見込まれる。

②新製品開発 新しい航路標識対応の製品が販売されたり、新技術が航路標識以外の

分野に応用され新商品が販売される。

(7)地域の魅力向上

①景観形成 航路標識の設置により、良好な景観が形成される。

②集客効果 航路標識の設置により、年間×××××人の観光客が入り、当該地域

で年間××××万円の消費が見込まれる。

Page 83: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

1-80

9-3 データ及び分析結果等の公開、蓄積

事業評価にあたっては、費用便益分析の算定に係る条件設定やデータ等に関する情報を分か

りやすい形で公表するものとする。 感度分析や、費用便益分析の精度の向上や手法の高度化を図るとともに、事業評価の信頼性

をより一層向上させるために、社会経済データや事後評価などの事業評価結果、あるいは経験

的な知見等の収集・蓄積・分析を行い、適宜、見直しを図る。 これらのデータや知見等のデータベース化を漸次図っていく。

1)データ等公開の必要性

・ 費用対効果分析の信頼性及び透明性を向上させるため、便益の算定に際して需要予測を行う場合、

需要予測の手法、入力するデータの時点・作成主体を公表する等、費用便益分析の算定に係る条

件設定やデータ等に関する情報を分かりやすい形で公表する。

2)データ等蓄積の必要性

・ 感度分析における影響要因の設定や変動幅の設定、影響要因間の関係分析などを適切に実施する

ためには、社会経済データや事後評価などの事業評価結果、あるいは経験的な知見等を収集・蓄

積・分析し、適宜、見直しを図っていくこととする。 ・ また、費用便益分析の精度の向上や手法の高度化を図るとともに、事業評価の信頼性をより一層

向上させる上でも、このようなデータや知見等の収集・蓄積・分析及びこれらのデータベース化

を漸次図っていくこととする。

Page 84: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

第 2 編 事後評価手法 ........................................................... 2-1

第1章 事後評価の目的 ......................................................... 2-1

1-1 事後評価手法の位置付け ............................................... 2-1

1-2 事後評価手法の構成 ................................................... 2-1

1-3 事後評価の目的 ....................................................... 2-2

第2章 事後評価の基本的考え方 ................................................. 2-3

2-1 事後評価の概要 ....................................................... 2-3

2-2 事後評価手法の適用範囲と評価の基本的条件 ............................. 2-5

第3章 評価の基礎要因の比較 ................................................... 2-6

3-1 費用および建設期間 ................................................... 2-6

3-2 利用状況 ............................................................. 2-8

3-3 社会経済情勢の変化 ................................................... 2-9

第4章 費用対効果分析結果の評価 .............................................. 2-10

4-1 基本的考え方 ........................................................ 2-10

4-2 安全性の向上 ........................................................ 2-13

4-3 国際的要請への対応 .................................................. 2-19

4-4 効率性の向上 ........................................................ 2-20

4-5 信頼性の向上 ........................................................ 2-21

4-6 環境の保全 .......................................................... 2-22

4-7 産業振興 ............................................................ 2-23

4-8 地域の魅力向上 ...................................................... 2-26

4-9 その他の効果 ........................................................ 2-28

4-10 事業実施による環境の変化 .......................................... 2-28

第5章 必要な改善措置の検討 .................................................. 2-29

5-1 必要な改善措置 ...................................................... 2-29

5-2 今後の事後評価の必要性 .............................................. 2-29

第6章 実績データの蓄積 ...................................................... 2-30

6-1 安全便益に係る実績データ ............................................ 2-30

6-2 輸送便益に係る実績データ ............................................ 2-30

第7章 評価結果の取りまとめ並びにデータ及び分析結果等の公開、蓄積............. 2-31

7-1 評価結果の取りまとめ ................................................ 2-31

7-2 データ及び分析結果等の公開、蓄積 .................................... 2-31

Page 85: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-1

第 2 編 事後評価手法

第1章 事後評価の目的

1.

1-1 事後評価手法の位置付け

国土交通省では、公共事業の効率性およびその実施過程の透明性の一層の向上を図るため、平成

15年度からは全ての公共事業において、事業完了後に事後評価を実施することを決定している。 事後評価は、事業完了後の事業の効果、環境への影響等の確認を行い、必要に応じて、適切な改

善措置を検討するとともに、事後評価の結果を同種事業の計画・調査のあり方や事業評価手法の見

直し等に反映することを企図するものである。 本事後評価手法は、これを受け、航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアルに対して、事後

評価手法の特記として、まとめたものである。

1-2 事後評価手法の構成

本事後評価手法は、航路標識整備事業の事後評価の基本的考え方、適用範囲、実施方法について、

図 1-1に示す通りとりまとめている。

第1章 事後評価の目的

第2章 事後評価の基本的考え方

第3章 評価の基礎要因の比較

第4章 費用対効果分析結果の評価

第5章 必要な改善措置の検討

第6章 実績データの蓄積

第7章 評価結果のとりまとめ

図 1-1 本事後評価手法の構成

Page 86: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-2

1-3 事後評価の目的

本事後評価手法では、「国土交通省所管公共事業の事後評価実施要領」(以下「実施要領」という。)

を踏まえ、航路標識整備事業における事後評価の目的を下記の 3 点とする。

①事業完了後に、事業完了前に想定した効果がどの程度発揮されているかを確認する。 ②必要に応じて事業に関する適切な改善措置を検討する。 ③事業評価手法に反映させるため、事業の効果等に係るデータを蓄積する。

【解説】 ・ 航路標識整備事業の主な効果として、乗揚の回避等による海難事故の減少、適切な航路の明示に

よる運航経費の節減等が挙げられる。 ・ 事後評価においては、これらの事業完了前に想定した効果が適切に発揮されているかを確認する

ことが求められる。 ・ その上で、事業完了前に想定した効果が発揮されていないと判断された場合は、その要因を分析・

把握するとともに、必要に応じて事業に関する適切な改善措置を検討する必要がある。 ・ また、事後評価によって得られた海難事故減少効果や運航経費節減効果については、今後の新規

事業採択時評価および再評価(以下「事業完了前評価」という。)に適切に反映していくことも

求められる。 ・ 以上より、上記の 3 点を事後評価の目的とする。 ・ なお、冒頭の「本事後評価手法の位置付け」にも示したように、本事後評価手法については、上

記を目的とするとともに、ひいてはその結果を同種事業の計画・調査のあり方や事業評価手法の

見直し等に反映することを企図している。

Page 87: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-3

第2章 事後評価の基本的考え方

2.

2-1 事後評価の概要

1)評価のフロー

事後評価のフローは以下の通りである。

新規事業採択時評価(又は再評価)結果

事業実施前後のデータ取得

事業完了後における効果の発現状況の把握

事業実施前に想定していなかった効果の把握

(適切に効果が発揮されていない効果等について)事業の

適切な改善措置の検討

評価結果の取りまとめ

事業実施による効果の把握

実績データの蓄積

図 2-1 事後評価のフロー

Page 88: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-4

2)評価の基本的考え方

「実施要領」には、事後評価を行う際の視点として以下のとおり示されている。これを踏まえ、

事後評価の基本的考え方は、次のとおりとする。 ①費用対効果分析の算定基礎となった要因(費用、標識の利用状況、事業期間等)の変化 ②事業の効果の発現状況 ③事業実施による環境の変化 ④社会経済情勢の変化 ⑤今後の事後評価の必要性 ⑥改善措置の必要性 ⑦同種事業の計画・調査のあり方や事業評価手法の見直しの必要性

(1)費用対効果分析の算定基礎となった要因の変化の確認

事業完了前に想定した効果の発現状況を確認する際に、事業完了前評価の段階と事後評価の段階

で、費用や事業期間、施設の利用状況、社会経済情勢等に変化がある場合は、それを適切に考慮す

る必要がある。 そのため、事後評価にあたっては、これらの評価の基礎要因の変化について確認する。

(2)事業実施による効果の発現状況の確認

事後評価の目的の 1 つは、事業完了前に想定した効果がどの程度発揮されているかどうかを確認

することである。そのため、事業完了前評価において想定した効果項目について、個別に発現状況

を確認する。 その際、事業完了前評価において定量的に評価した効果については、事後評価においても可能な

限り定量的に評価する。また、事業完了前評価において定性的に評価した効果で事後評価で定量的

に把握できたものは定量的に評価を行い、定量的な把握が困難な場合であっても定性的に評価を行

う。 (3)不確実性を伴う事象に係る効果の取扱い

海難事故減少効果のように、不確実性を伴う効果については、事業完了後の海難事故発生隻数デ

ータからは、効果の発現状況を適切に把握することが困難な場合も予想される。 また、事業の効果は、事業実施前の状況における潜在的な危険性を低下させることが目的であり、

顕在化した海難事故隻数の変化を直接評価の対象とすることは、必ずしも適切ではない(例えば、

事業完了後の海難事故発生隻数が、事業完了前と変化していないことをもって、ただちに事業の効

果がないと判断することはできない)。 そのため、期待された海難事故減少効果が得られているか否かについては、統計的に検証する方

法も活用する。

Page 89: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-5

2-2 事後評価手法の適用範囲と評価の基本的条件

1)適用対象事業

本事後評価手法の適用対象事業は、事業完了後 5 年以内の全ての事業とする。

2)評価する事業の単位

事後評価を実施する際の事業の単位は、新規事業採択時評価、再評価を実施する単位を基本とす

る。ただし、他の標識との相互の関連性等により、複数の標識が一体となって事業の効果を発現す

るような場合には、それらをまとめて一つの事業単位として事後評価を行うことができるものとす

る。

3)計算期間

計算期間は、「建設期間+供用期間(50 年)」とする。 4)現在価値化の基準年

貨幣換算の実質化、ならびに社会的割引による現在価値化の基準年は、評価を実施する年度とす

る。

5)社会的割引率

社会的割引率は、4%とする。

Page 90: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-6

第3章 評価の基礎要因の比較

3.

3-1 費用および建設期間

1)事業完了前評価における設定の確認

事業完了前評価において設定した事業費、ならびに事業期間を確認する。なお、新規事業採択時

評価と再評価を両方行っている場合は、 終的な再評価時点のデータを用いる。 また、事業費については、事業完了前評価の実施時期を基準年として算定されているため、これ

を事後評価実施時期に実質化する必要がある。 価格の実質化には、内閣府経済社会総合研究所の「国民経済計算」に記載の GDP デフレータを

用いる。

2)実績値の把握

(1)事業費

建設期間中の事業費は、実績値により把握する。 なお、消費税は事業費から除く。また、実績値は名目値であるため、物価変動の影響を取り除く

ため、基準年に実質化する。 (2)建設期間

建設期間は、実績値により把握する。 (3)維持費

①事後評価実施時点までの維持費

事業完了後に発生する維持費のうち、事後評価実施時点までのものについては、実績値により把

握する。 なお、消費税は除く。

②事後評価実施時点以降の維持費

事後評価実施時点以降に発生が予想される維持費については、基本的に事業完了前評価と同様に

設定する。 ただし、事後評価実施時点以降の維持費が、事業完了後から事後評価実施時点までの実績値等か

らみて、事業完了前評価と異なると考えられる場合は、異なる理由を明記した上で、事業完了前評

価とは異なる値を設定してもよい。 なお、事後評価実施時点以降の維持費については、基準年の価格により算定する。

(4)総費用の算定

上記の費用を基準年において合計する。その際、過去の費用については実質化を行う。また、全

ての年度の費用は、社会的割引率を用いて基準年の価値に換算する。

Page 91: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-7

3)事業実施前後の比較および乖離の要因分析

上記の結果をもとに、事業完了前および事後における費用、ならびに建設期間を比較し、その乖

離の有無や乖離の要因について検討する。

Page 92: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-8

3-2 利用状況

1)事業完了前評価における設定の確認

事業完了前評価において設定した需要(事業対象海域を通航する年間船舶隻数)を確認する。な

お、新規事業採択時評価と再評価を両方行っている場合は、 終的な再評価時点のデータを用いる。 なお、年間通航船舶隻数は事業完了前評価において設定した事業対象海域の船種・船型別年間通

航船舶隻数を使用する。

2)実績値の把握

事業完了後の事業対象海域の年間通航船舶隻数は実績値により把握する。 年間通航船舶隻数は、事業完了前評価と同様に船種・船型別に把握する。ただし、困難な場合は

簡便な分類としてもよい。

3)事業前後の比較および乖離の要因分析

上記の結果をもとに、事業完了前・事後における事業対象海域の船種・船型別の年間通航船舶隻

数を比較し、その乖離の有無や乖離の要因について検討する。

Page 93: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-9

3-3 社会経済情勢の変化

事業完了前評価実施時点と事後評価実施時点において、以下のような社会経済情勢に変化が見ら

れる場合は、それを明示する。 1)背後地域の企業、人口等の変化

航路標識が整備される港湾の背後地域の企業や人口に、船種・船型別の年間通航船舶隻数への影

響が無視できないような変化があった場合は、それを明記する。 2)災害等の発生

船種・船型別の年間通航船舶隻数への影響が無視できない災害(地震、台風、津波、火災等)や

事故(海難事故、発電所事故等)があった場合は、それを明記する。 3)関連する事業の変化

航路標識が整備される港湾整備やその背後地域における道路整備、市街地整備等の事業に、船種・

船型別の年間通航船舶隻数への影響が無視できない変化(計画の中止、事業の遅延等)があった場

合は、それを明記する。 4)その他の社会経済情勢の変化

産業政策や漁業政策等、船種・船型別の年間通航船舶隻数への影響が無視できない社会経済情勢

の変化があった場合は、それを明記する。

Page 94: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-10

第4章 費用対効果分析結果の評価

4.

4-1 基本的考え方

事業完了前評価における費用対効果分析結果については、以下の流れで事後評価を行う。

1)事業完了前評価において想定した効果の確認

表 4-1に示す航路標識整備事業の代表的な効果(例)を踏まえ、事業完了前評価における費用

対効果分析で想定した効果項目別に、その内容を確認する。なお、表 4-1に示す効果以外の効果

を事業完了前評価において想定した場合は、それも確認する。

表 4-1 航路標識整備事業の代表的な効果(例)

光波標識 電波標識 対象事業

効果

沿岸標識

障害標識

港湾標識

DGPS局

マイクロ波標識

船舶通航信号所

海上交通情報機構

海難事故減少効果(安全便益) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

海難発生後の二次災害を 小限にとどめる効果 ○ ○

安全性の向上 操船者の心理的負担の軽減効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

国際的要請

への対応

国際標準の採用により外航船の運航におけるリスク

が減少する効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

船舶運航経費の節減効果(輸送便益) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

貨物等の時間費用が節減される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

漁場までの到達時間や労働時間が短縮され、漁業の

生産性が向上する効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

効率性の向上 作業箇所までの到達時間などの海上作業の時間短縮

効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

信頼性

の向上

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進さ

れ、物流コストが削減される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

環境の

保全

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進さ

れ CO2、NOx 排出量が削減される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○産業振興

航路標識関連製品が生産されたり、開発された新技

術が他の分野に移転、応用される効果 ○

景観形成効果 ○ ○ 地域の

魅力向上 集客効果 ○ ○

Page 95: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-11

2)効果発現状況の比較評価

表 4-1に示す各効果項目別に、事業完了前評価において想定した効果と事後評価によって得ら

れた効果を比較評価する。比較評価方法の概要を表 4-2に示す。 なお、事業完了前評価において想定していなかった効果であっても、適宜、事後評価において効

果の有無を確認してもよい。 効果項目別の比較評価方法は、次節以降に示す。

表 4-2 各効果の比較評価方法の概要

効果 評価方法 海難事故減少効果(安全便益)

・ 新規事業採択時評価、又は再評価の際に想定した効果の内容を把握

・ 事業実施前(概ね5年程度)から評価時点における海難事故隻数(または海難事故発生率)の推移を提示

・ 海難事故減少効果を貨幣換算 海難事故発生後の二次災害を小限にとどめる効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 事業実施前(概ね5年程度)から評価時点における海難事故

発生後の二次災害の状況を提示 ・ なお、事後評価の対象期間(事業完了後から評価時点)にお

いて海難事故が発生しなかった場合は評価対象外

安全性の向上

操船者の心理的負担の軽減 ・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 上記の効果が得られているかどうかを、操船者に対するヒア

リングやアンケートにより把握

国際的要請

への対応

国際標準の採用により外航船の運航におけるリスクが減少する効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 国際標準が採用され、外航船の運航に問題が生じていないこ

とを確認

船舶運航経費の節減効果(輸送便益)

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 事業実施前と実施後の当該船舶の通航形態(経路、速度)の

変化を提示(図示が望ましい。) ・ 通航形態(経路、速度)の変化による効果を算定 効

率性の向上

貨物等の時間費用が節減される効果 漁場までの到達時間や労働時間が短縮され、漁業の生産性が向上する効果 作業箇所までの到達時間などの海上作業の時間短縮効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 上記の効果が得られているかどうかを、操船者に対するヒア

リングやアンケートにより把握

信頼性の向上

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進される効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 海上交通以外の代替交通機関からのモーダルシフトが実現

しているかを確認。 ・ なお、評価時点で効果が明らかでない場合は、必要に応じて

船社に対するヒアリング等を行い、想定した効果に対する期待等を把握

環境の

保全

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進されCO2、NOx 排出量が削減される効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を把握 ・ 上記のモーダルシフトが促進される効果を踏まえて、CO2、

NOx 排出量が見込まれるかを確認。

Page 96: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-12

表 4-2 各効果の比較評価方法の概要(続き)

効果 評価方法 プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を再掲。 ・ 事業対象海域におけるプレジャーボート利用隻数の変化を

確認 ・ 事業対象海域における海洋開発が促進されているかどうか

を確認 ・ なお、評価時点で効果が明らかでない場合は、必要に応じ

て業者に対するヒアリング等を行い、想定した効果に対する期待等を把握

産業振興 航路標識関連製品が生産され

たり、開発された新技術が他の分野に移転、応用される効果

・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を再掲。 ・ 航路標識関連製品の生産等の有無を確認 ・ 新技術の移転、応用の実績等の有無を確認 ・ なお、評価時点で効果が明らかでない場合は、必要に応じ

て業者に対するヒアリング等を行い、想定した効果に対する期待等を把握

景観形成効果 ・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を再掲。 ・ 事業実施前と実施後の事業箇所(ないし、必要に応じてそ

の周辺部)の景観を写真により提示 ・ 想定した効果が得られたかどうかを定性的に記述

地域の魅力向上

集客効果 ・ 事業完了前評価の際に想定した効果の内容を再掲。 ・ 事業実施前と実施後の事業箇所の集客施設等における入込

客数の変化を提示。 ・ なお、評価時点で効果が明らかでない場合は、必要に応じ

て業者に対するヒアリング等を行い、想定した効果に対する期待等を把握

Page 97: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-13

4-2 安全性の向上

1)安全便益

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した安全便益の評価結果を明示する。 なお、安全便益を損失額ベースでのみ把握している場合は、事業実施前の平均年間海難事故隻数

に、事業実施による海難事故減少率を乗じること等により、可能な限り海難事故の減少効果を隻数

ベースに換算する。 ただし、それが困難な場合は、年間の海難事故の期待損失回避額により効果を確認する。

(2)事業実施前後の海難事故隻数の把握

航路標識事業が対象とする海難事故原因について、事業実施前から事後評価実施時点までの年間

発生隻数を把握する。 事業実施前の海難事故隻数は少なくとも事業完了年度から 4 年前までのデータを取得する。さら

に、事業完了前後それぞれについて、平均年間海難事故隻数を算出する。 これらの結果を表 4-3の通り整理し、事業実施前後の海難事故隻数の変化を明示する。 なお、事業実施前後で通航隻数に大きな変化があり、海難事故隻数によって海難事故減少効果を

把握することが適切でない場合は、年間海難事故発生率を把握する※。

表 4-3 年間海難事故隻数の整理

年度 n-4 n-3 n-2 n-1 n 注 1) n+1 n+2 n+3 n+4

年間海難事故隻数

年間通航隻数

年間海難事故発生率注 2)

平均年間海難事故隻数 -

注1)n:事業完了年度(なお、事後評価はn+5年度に実施されると想定) 注2)年間海難事故発生率は、事業実施前後で通航隻数に大きな変化がある場合等に「年間海難事故隻数 / 年

間通航隻数」により算定

※ 海難事故発生率の変化による海難事故減少効果の把握は、海難事故は概ね通航船舶隻数に比例して発生すると

いう考え方のもとに成り立っている。しかし、その考え方が成り立たないような通航船舶隻数の変化がある場合

(例えば事業実施後、通航船舶隻数が大きく減少し、通航船舶の輻輳が大きく改善されたために海難事故が減少

している場合)等については、事故原因別に海難事故隻数を把握すること等によって、航路標識の整備により安

全性が向上しているかを確認する必要がある。

Page 98: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-14

(3)海難事故減少効果の有無の確認

上記のデータをもとに、以下の手順により、事業実施前後で海難事故隻数が減少したかどうかを

分析する。 具体的には、Welch の検定を用いて、以下の方法により、事業実施前後における平均海難事故件

数が統計的に有意に減少したと言えるかどうかを検定する。 なお、事業実施前後で通航隻数に大きな変化があり、海難事故隻数によって海難事故減少効果を

把握することが適切でない場合は、年間海難事故発生率をもとに同様の検定を行う。 ①検定統計量の算出

以下の式から検定統計量 T を求める。

2

22

1

21

21

Ns

Ns

xxT

+

−=

ただし、 1

11

1

1

N

xx

N

ii∑

== 、2

12

2

2

N

xx

N

ii∑

==

)1(

)(

11

1

2

11

211

21

1 1

−=

∑ ∑= =

NN

xxNs

N

i

N

iii

、)1(

)(

22

1

2

12

222

22

2 2

−=

∑ ∑= =

NN

xxNs

N

i

N

iii

ix1 :事業完了前の 1~ 1N 年次における海難事故隻数 ix2 :事業完了後の 1~ 2N 年次における海難事故隻数 ②自由度の算出

以下の式から、自由度 m を求める。

)1()1( 22

2

42

12

1

41

2

2

22

1

21

−+

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+

NNs

NNs

Ns

Ns

m≒

③平均値の差の検定

有意水準α (例えば 0.05)に対して、 )(αmtT > ならば、海難事故が減少したと判断する。 ただし、 )(αmt は、自由度 m、有意水準α における t 分布のパーセント点を示す。

Page 99: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-15

(4)想定した海難事故減少率の発揮の有無の確認

さらに、期待された海難事故減少率による海難事故減少隻数の発揮があると言えるかどうかを分

析する。この場合も、Welch の検定を用いて、以下の方法により、事業実施前に想定した海難事故

減少率( r )が発揮されているかどうかを検定する。 なお、事業実施前後で通航隻数に大きな変化があり、海難事故隻数によって海難事故減少効果を

把握することが適切でない場合は、年間海難事故発生率をもとに同様の検定を行う。 ①検定統計量および自由度の算出

以下の式から検定統計量 'T 、および自由度 m を求める。

2

22

1

21

21

'

''

Ns

Ns

xxT

+

−=

)1()1('

'

22

2

42

12

1

41

2

2

22

1

21

−+

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+

NNs

NNs

Ns

Ns

m≒

ただし、 1

11

1

1

''

N

xx

N

ii∑

== 、2

12

2

2

N

xx

N

ii∑

==

)1(

)'(''

11

1

2

11

211

21

1 1

−=

∑ ∑= =

NN

xxNs

N

i

N

iii

、)1(

)(

22

1

2

12

222

22

2 2

−=

∑ ∑= =

NN

xxNs

N

i

N

iii

ix 1' :事業完了前の 1~ 1N 年次において海難事故減少率が発揮された場合に発生すると

予想される海難事故隻数( ixr 1)1( −= ) ②平均値の差の検定

有意水準α (例えば 0.05)に対して、 )(' αmtT −< ならば、海難事故が想定した減少率を発揮し

なかったとは言えないと判断する。ただし、 )(αmt は、自由度 m、有意水準α における t 分布のパ

ーセント点を示す。

Page 100: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-16

(5)効果の貨幣換算

上記の(3)および(4)の検定の結果に応じて、以下の通り効果の貨幣換算値を算定する。

表 4-4 検定の結果に基づく効果の貨幣換算の方法

(3)の検定結果 (4)の検定結果 評価結果 効果の貨幣換算の方法

)(αmtT > )(' αmtT −<

海難事故は減少しており、事

業完了前に想定した減少率が

発揮されていないとは判断さ

れない。

事業完了前評価と同様の便益

を計上する。

)(αmtT > )(' αmtT −≥

海難事故は減少しているが、

事業完了前に想定した減少率

どおりに減少しているとは言

えない。

便益は計上しない。 ただし、統計的に一定の海難事

故減少率が発揮されていること

が示された場合は、その確率を

もとに求めた便益を計上しても

よい。

)(αmtT ≤ - 海難事故が減少しているとは

言えない。 便益は計上しない。

Page 101: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-17

2)海難事故発生後の二次災害を最小限にとどめる効果

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、海難事故発生後の二次災害を 小限にとどめる効果の評価結

果を明示する。 (2)事業実施前後の海難事故発生後の二次災害の発生状況の把握

事業完了前評価において海難事故発生後の二次災害を 小限にとどめる効果を想定した場合は、

事業実施前(少なくとも事業完了年次から 4 年前まで)に発生した、海難事故発生後の二次災害の

実績を調査し、表 4-5のような形で明示する。

表 4-5 海難事故発生後の二次災害の実績の整理の例

発生日 (主な)海難事故 二次災害の実績(事故処理の状況等) 事

○年○月○日 ○年○月○日

・ ・ ・

乗揚海難事故(○○)

乗揚海難事故(○○)

・ ・ ・

なし 貨物船(○t)の海上炎上 ・ ・ ・

○年○月○日 ○年○月○日

・ ・ ・

乗揚海難事故(○○)

乗揚海難事故(○○)

・ ・ ・

なし なし(適切な初期対応により二次災害を未然に防止)

・ ・ ・

注)( )内には、必要に応じて海難事故の概要、海難事故発生時の事故処理の状況等を記入する。 (3)効果の有無の確認

上記の実績をもとに、事業完了前後で海難事故発生後の二次災害を 小限にとどめる効果が発揮

されたかどうかを分析する。 なお、事後評価の対象期間(事業完了時点から評価時点までの間)に海難事故が発生しなかった

場合は、評価は行わなくてもよい。ただし、操船者や管理者へのヒアリングなどにより、航路標識

整備事業が二次災害の抑制に貢献していることを定性的に把握できる場合は、その内容を示す。

Page 102: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-18

3)操船者の心理的負担の軽減

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、操船者の心理的負担の軽減効果の評価結果を明示する。 (2)効果の有無の確認

事業完了前評価において操船者の心理的負担の軽減効果を想定した場合は、可能な限り以下のよ

うな方法により、効果の有無を確認する。 ①操船者ヒアリング等

操船者に対してヒアリング、またはアンケートを行い、事業実施前後で、操船時の心理的負担が

変化したかどうかを確認する。 ②CVM

CVM(Contingent Valuation Method:仮想的市場評価法)により、事業の実施による操船者の

心理的負担の軽減効果を、支払意思額として把握することにより、効果を貨幣換算する。 ③その他

上記のような方法が困難な場合であっても、例えば、写真等を用いて、入港時あるいは出港時に

おける操船者からの海域の見え方が、航路標識整備事業の実施前後でどのように変化したかを明示

することにより、心理的負担の軽減が図られていることを間接的に示すといった方法などにより、

可能な限り効果の有無を確認する。

Page 103: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-19

4-3 国際的要請への対応

1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、国際的要請への対応に係る効果の評価結果を明示する。

2)効果の有無の確認

事業完了前評価において国際的要請への対応に係る効果を想定した場合は、可能な限り外航船の

運航に問題が生じていないこと(外航船の海難事故の有無等)を確認する。

Page 104: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-20

4-4 効率性の向上

1)輸送便益

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した輸送便益の評価結果を明示する。 なお、その際には、便益額だけでなく、効果計測に用いた各項目の数値を明示する。

(2)事業実施前後の船舶運航経路の把握

事業実施前後において、船舶運航経路(経路、航海速力)がどのように変化したかを、可能な限

り操船者へのヒアリング等により把握する。 また、結果は可能な限り平面図に図示する。

(3)船舶運航経費節減効果の有無の確認

上記の運航経路の変化をもとに、事業実施前後での船舶運航経費の節減効果を便益として計測す

る。 便益計測に当たっての各種原単位については、基本的には事業完了前評価で適用した値と同じ値

を使ってよい。ただし、実績データにより更新が可能な場合は、実績データに基づく値を用いる。 2)その他の効果

下記に示すその他の効率性の向上効果については、以下の手順により評価を行う。 ・ 旅客や貨物の輸送費用が節減される効果 ・ 漁場までの到達時間や労働時間が短縮され、漁業の生産性が向上する効果 ・ 作業箇所までの到達時間などの海上作業の時間短縮効果

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した効率性の向上効果の評価結果を明示する。 (2)効果の有無の確認

事業完了前評価において上記の効率性の向上効果を想定した場合は、可能な限り操船者に対して

ヒアリング、またはアンケートを行うことなどにより、事業実施前後で、効率性が変化したかどう

かを確認する。 また、効果が明確に把握できない場合についても、可能な限り効率性の向上に対する操船者の期

待感を把握すること等により、効果の有無を確認する。

Page 105: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-21

4-5 信頼性の向上

1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進される効果

の評価結果を明示する。

2)効果の有無の確認

事業完了前評価において海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進される効果を想定した

場合は、可能な限り船種・船型別の通航船舶隻数の変化を経年的に見ることにより、海上交通以外

の代替機関からのモーダルシフトが実現しているかどうかを確認する。 その際、通航船舶隻数が必ずしも増加していなくても、船種・船型の変化によって、モーダルシ

フトが促進される効果がある場合も考えられる点に留意する。 また、効果が明確に把握できない場合であっても、可能な限り船社や荷主企業に対するヒアリン

グ等を行い、想定した効果に対する期待感を把握すること等により、効果の有無を確認する。

Page 106: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-22

4-6 環境の保全

1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進され CO2、

NOx 排出量が削減される効果の評価結果を明示する。

2)効果の有無の確認

事業完了前評価において海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進され CO2、NOx 排出

量が削減される効果を想定した場合は、可能な限り船種・船型別の通航船舶隻数の変化を経年的に

見ることにより、海上交通以外の代替機関からのモーダルシフトが実現しているかどうかを確認し、

CO2、NOx 排出量の削減が見込まれることを確認する。 その際、通航船舶隻数が必ずしも増加していなくても、船種・船型の変化によって、モーダルシ

フトが促進される効果がある場合も考えられる点に留意する。

Page 107: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-23

4-7 産業振興

1)プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果の評価結

果を明示する。 (2)事業実施前後のプレジャーボート利用者数等の把握

事業完了前評価においてプレジャーボート利用等が促進される効果を想定した場合は、可能な限

り表 4-6に示すような形で事業実施前から事後評価実施時点までのプレジャーボート利用者数

等を把握し、事業実施前後の変化を明示する。

表 4-6 年間プレジャーボート利用者数等の整理

年度 n-4 n-3 n-2 n-1 n n+1 n+2 n+3 n+4 プレジャーボート等

利用者数

平均年間利用者数 -

プレジャーボート 販売額

平均年間販売額 -

注)n:事業完了年度(なお、事後評価はn+5年度に実施されると想定)

Page 108: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-24

(3)海洋開発等の計画・実施状況の把握

事業完了前評価において海洋開発等が促進される効果を想定した場合は、可能な限り事業実施前

から事後評価実施時点までの海洋開発等の計画・実施状況を調査し、表 4-7のような形で明示す

る。

表 4-7 海洋開発等の計画・実施状況の整理の例

名称 位置 内容 事

○○水産基盤整備事業 ・ ・ ・ ・

○○港内 ・ ・ ・ ・

○○○○(計画) ・ ・ ・ ・

○○整備事業 ・ ・ ・ ・

○○沖 ・ ・ ・ ・

○○○○(○年着工、○年完了予定) ・ ・ ・ ・

(4)効果の有無の確認

事業完了前評価において、プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果を想定した場合は、

上記の結果をもとに、効果の有無を確認する。 なお、効果が明確に把握できない場合であっても、可能な限り海上レクリエーション事業者や海

洋開発事業者に対するヒアリング等を行い、想定した効果に対する期待感を把握すること等により、

効果の有無を確認する。

Page 109: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-25

2)航路標識関連製品が生産されたり、開発された新技術が他の分野に移転、応用される効果

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、航路標識関連製品が生産されたり、開発された新技術が他の

分野に移転、応用される効果の評価結果を明示する。 (2)航路標識関連製品の生産等の有無の確認

事業実施にあたって生産された航路標識関連製品等があれば、それを明記する。 (3)新技術の移転、応用の実績等の有無の確認

事業実施にあたって新たな技術が開発され、それが他の分野に移転、応用された実績があれば、

それを明記する。 (4)効果の有無の確認

事業完了前評価において航路標識関連製品が生産されたり、開発された新技術が他の分野に移転、

応用される効果を想定した場合は、上記の結果をもとに、効果の有無を確認する。

Page 110: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-26

4-8 地域の魅力向上

1)景観形成効果

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、景観形成効果の評価結果を明示する。 (2)事業実施前後の景観の変化の把握

事業完了前評価において景観形成効果を想定した場合は、可能な限り事業実施前後の事業箇所(な

いし、必要に応じてその周辺部)の景観を写真により提示する。 なお、事業実施前の状況を示す適切な写真がない場合は、事業実施後の写真のみを提示し、事業

実施前の状況を説明する。 (3)効果の有無の確認

事業完了前評価において景観形成効果を想定した場合は、上記の写真等をもとに、景観の変化に

ついて記述し、効果の有無を確認する。 また、写真を活用して、灯台等への来訪者に対して、景観の変化に対する満足度を質問するアン

ケートを実施すること等により、効果の有無を確認してもよい。

Page 111: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-27

2)集客効果

(1)事業完了前評価における効果の確認

事業完了前評価において想定した、集客効果の評価結果を明示する。 (2)事業実施前後の灯台等への来訪者の把握

事業完了前評価において集客効果を想定した場合は、可能な限り表 4-8に示すような形で事業

実施前から事後評価実施時点までの灯台等への来訪者、または事業箇所に存在する集客施設等の入

込客数等を把握し、事業実施前後の変化を明示する。

表 4-8 年間来訪者数等の整理

年度 n-4 n-3 n-2 n-1 n n+1 n+2 n+3 n+4

灯台等への来訪者数

平均年間来訪者数 -

注)n:事業完了年度(なお、事後評価はn+5年度に実施されると想定) (3)効果の有無の確認

事業完了前評価において集客効果を想定した場合は、上記の結果をもとに、効果の有無を確認す

る。 なお、効果が明確に把握できない場合であっても、可能な限り集客施設管理者に対するヒアリン

グ等を行い、想定した効果に対する期待感を把握すること等により、効果の有無を確認する。

Page 112: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-28

4-9 その他の効果

その他に事業完了前評価において取り上げた効果がある場合は、その評価結果を明記するととも

に、事業完了後から事後評価時点までの間における効果の発現状況を確認する。 また、事業完了後に新たに認められた効果がある場合は、その発現状況を提示してもよい。

4-10 事業実施による環境の変化

事業実施により、海洋環境等に何らかの影響がある場合は、それを明記する。

Page 113: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-29

第5章 必要な改善措置の検討

5.

5-1 必要な改善措置

第4章において実施した各効果の発現状況の確認結果を踏まえ、効果の発現が事業完了前の想定

通りでなかった場合の要因を整理し、改善措置を検討する。 5-2 今後の事後評価の必要性

短期的に効果が明示的でない場合について、再度、事後評価を実施することを記述する。 第4章において実施した各効果の発現状況の確認結果を踏まえ、事業完了から十分な時間が経過

していない等の理由により、効果が明確に把握できず、効果が発揮されない理由も明らかでない場

合は、一定期間経過後に、事後評価を再び行い、効果の有無を確認する。

Page 114: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-30

第6章 実績データの蓄積

今後の事業完了前評価のため、以下のデータを整理し、実績データとして事後評価のとりまとめ

表に示す。 6.

6-1 安全便益に係る実績データ

1)対象となる海難事故内容

航路標識事業が対象とする海難事故原因を明記する。

2)事業実施前後の平均年間海難事故隻数

4-2で算出した、事業実施前後の平均年間海難事故隻数を明記する。

3)平均海難事故減少率の算出

上記をもとに、事業実施による平均海難事故減少率を算出する。

6-2 輸送便益に係る実績データ

1)対象となる船種・船型

運航経費算出の対象とする船種・船型を明記する。

2)事業実施前後の1隻あたりの運航経費

4-4で算出した、一定区間における事業実施前後の 1 隻あたりの運航経費を明記する。

3)運航経費節減額の算出

上記をもとに、事業実施による 1 隻あたりの運航経費節減額を算出する。

Page 115: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-31

第7章 評価結果の取りまとめ並びにデータ及び分析結果等の公開、蓄積

7-1 評価結果の取りまとめ

以上を踏まえ、事後評価結果を以下の「表7-1事後評価結果のとりまとめ表」のとおり取り

まとめる。 7-2 データ及び分析結果等の公開、蓄積

1)データ等公開の必要性

・事後評価の信頼性及び透明性を向上させるため、便益の算定に際して需要予測を行う場合、需

要予測の手法、入力するデータの時点・作成主体を公表する等、費用便益分析の算定に係る条

件設定やデータ等に関する情報を分かりやすい形で公表する。 2)データ等蓄積の必要性

・事後評価における影響要因の設定や変動幅の設定、影響要因間の関係分析などを適切に実施す

るためには、社会経済データや事後評価結果、あるいは経験的な知見等を収集・蓄積・分析し、

適宜、見直しを図っていくこととする。 ・また、費用便益分析の精度の向上や手法の高度化を図るとともに、事業評価の信頼性をより一

層向上させる上でも、このようなデータや知見等の収集・蓄積・分析およびこれらのデータベ

ース化を漸次図っていくこととする。

Page 116: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

2-32

表 7-1 事後評価結果のとりまとめ表

事業名 供用開始年度 年度 事後評価実施年度 年度

事業の目的・概要

新規事業採択時評価 又は再評価結果

事後における 効果の発現状況

項目 実施年度: 年 便益

(百万円) 便益 (百万円)

評価結果・乖離の要因

海難事故減少効果

海難発生後の二次災害を小限にとどめる効果

安全性 の向上

操船者の心理的負担の軽減

国際的要請への対応

国際標準の採用により外航船の運航におけるリスクが減少する効果

船舶運航経費の節減効果 効率性

の向上 その他の効果

信頼性 の向上

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進される効果

環境の保全

海上交通の信頼性が向上しモーダルシフトが促進されCO2、NOx 排出量が削減される効果

プレジャーボート利用や海洋開発が促進される効果

産業振興 航路標識関連製品が生産されたり、開発された新技術が他の分野に移転、応用される効果

景観形成効果 地域の

魅力向上 集客効果

効果の発現状況

その他の効果 便益(太枠内の合計)

費用

事業期間

費用便益比

純現在価値

費用便益分析

経済的内部収益率

項目 結 果

利用状況 年間通航船舶隻数

評価の基礎要

因の変化

社会経済情勢の変化

背後地域の企業、人口等の変化 災害等の発生 関連する事業の変化 等

事業実施による環境の変化

必要な改善措置

今後の事後評価の必要性

【実績データ】

安全便益 対象となる海難事故内容 事業実施前 平均年間海難事故隻数 事業実施後平均年間海難事故隻数 平均海難事故減少率

輸送便益 対象となる船種・船型 事業実施前 1 隻あたりの運航経費

事業実施後 1 隻あたりの運航経費

1 隻あたりの 運航経費節減額

Page 117: 航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル · 第2部 費用対効果分析 第1章 費用対効果分析の基本的考え方 1. 1-1 分析の手順 本マニュアルにおける航路標識整備事業の費用対効果分析は、費用便益分析を用いて定量的な

附 則

1 本マニュアルは、平成21年7月30日から施行する。 2 本マニュアルの施行に伴い、「航路標識整備事業の費用対効果分析マニュアル(平成16年1

月23日保交計第308号)」は、廃止する。