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質とコストから考える わが国の外来診療 2015109大阪府済生会吹田病院 関本美穂 1

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質とコストから考える わが国の外来診療

2015年10月9日

大阪府済生会吹田病院 関本美穂

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日本の医療は外来偏重

• 1.3億の人口に約10万の診療所、病院でも一般外来診療

• 診療所は、薬剤の処方・生化学検査・MRI検査・CT検査などを提供

• 医療費全体に外来医療費が占める割合は32%(OECD平均は29%)

• 61%の医師が病院に勤務しているが、病院医師の業務に外来診療が占める割合が高い

“Although Japanese health care is often thought of hospital centric, Japan spends more on ambulatory care than most OECD countries.” (OECD Reviews of Health Care Quality: Japan 2015)

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外来診療の範囲

• 初期診療(救急を含む)

• 慢性疾患のケア

• 特殊外来診療 – 専門外来診療 – 血液透析 – 化学療法・放射線治療 – リハビリテーション – 日帰り手術 – 特殊検査 – セカンド・オピニオン, etc…

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代表的な慢性疾患

• 高血圧(患者数約4,300万人)

• 糖尿病(患者数約950万人)

• 高脂血症(男性 10.3%,女性 16.8%,平成25年)

• 心不全

• 慢性閉塞性肺疾患 (COPD・気管支喘息)

• 悪性腫瘍

生活習慣病

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慢性疾患の外来診療の実態 生活習慣病のケアを例として

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生活習慣病の診療の分析 • 協会けんぽ(加入者数 約35,000,000人)のレセプト・データ分析 – 高血圧:2,082,738 人 – 糖尿病: 815,801 人 – 入院歴のある患者、在宅医療・血液透析を受けている患者を除外

• 解析項目 – 受診間隔 – 外来医療費 – 降圧剤の処方パターン – 患者リスクと受診間隔・外来医療費の関係 – 受診間隔と疾患コントロールの関係

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0102030405060708090

二次医療圏毎の受診間隔の分布 高血圧

糖尿病 0

102030405060708090

0

10

20

30

40

50

60

70

0

10

20

30

40

50

60

70

診療所

診療所

病院

病院 井伊 & 関本. フィナンシャル・レビュー, 2015, 123: 6. 7

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地域による受診間隔のばらつき

高血圧 糖尿病

診療所 診療所

病院 病院

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二次医療圏毎の外来医療費の分布

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

0

50000

100000

150000

0

50000

100000

150000

高血圧

糖尿病

診療所

診療所

病院

病院 井伊 & 関本. フィナンシャル・レビュー, 2015, 123: 6. 9

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地域による外来医療費のばらつき

高血圧 糖尿病

診療所 診療所

病院 病院

2013年4月から7月の外来医療費の合計(千円) 10

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二次医療圏毎の降圧剤処方率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0%

10%

20%

30%

40%

0%

10%

20%

30%

40%

アンギオテンシン変換酵素阻害薬 (ARB)

カルシウム拮抗薬

診療所

診療所

病院

病院 井伊 & 関本. フィナンシャル・レビュー, 2015, 123: 6. 11

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患者リスク(年齢・性別)と受診間隔

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55

20-29歳

30-39歳

40-49歳

50-59歳

60-69歳

70歳-

診療所

女性

男性

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55

20-29歳

30-39歳

40-49歳

50-59歳

60-69歳

70歳-

病院

女性

男性

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55

20-29歳

30-39歳

40-49歳

50-59歳

60-69歳

70歳-

診療所

女性

男性

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55

20-29歳

30-39歳

40-49歳

50-59歳

60-69歳

70歳-

病院

女性

男性

高血圧

糖尿病

井伊 & 関本. フィナンシャル・レビュー, 2015, 123: 6. 12

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0 10 20 30 40 50 60

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処方日数

診療所

病院

0 50,000 100,000 150,000

1

2+

外来医療費

診療所

病院

0 10 20 30 40 50 60

0

1

2+

処方日数

診療所

病院

0 50,000 100,000 150,000

0

1

2+

外来医療費

診療所

病院

患者リスク(合併症数)と受診間隔 高血圧

糖尿病 処方日数

処方日数 外来医療費

外来医療費

2+

1

0

2+

1

0

2+ 1

2+ 1

井伊 & 関本. フィナンシャル・レビュー, 2015, 123: 6. 13

合併症数

合併症数

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解析から分かったこと • 診療所の医師密度の増加は、受診間隔の短

縮と関連

• 病院の医師密度は、受診間隔と関連しない

• 血圧や血糖コントロールは、受診間隔と関連しない

• 受診間隔の短縮は、医療費増加と関連。それとは別に、医師密度が1/1,000増えると、患者1人あたりの医療費3,000~4,000円(4カ月あたり)増加。

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生活習慣病のケアに見る プライマリ・ケアの問題点

• 受診頻度が高い – 他に問題がない生活習慣病の受診頻度は、他の先進国では3か月に1度が一般的

– 6カ月に1度でも、問題ないという研究結果も複数

• 受診頻度にバラツキがある(地域間、病院/診療所間) – 受診頻度は患者リスクと関係ない – 診療所の医師密度と関連

• 医療費は医師密度と強く関連(医師誘発需要?)

• 費用対効果の考えの欠如 – 高価なARBが他の安価な他の降圧剤よりも優れるというエビデンスはない

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なぜ、このようなことが起こるのか?

医療機関の便益の最大化

フリーアクセス

出来高支払い

費用対効果の欠如

情報の非対称

成果の評価する仕組みの欠如

患者の争奪 高額医療機器の装備

高額な医薬品の選択

医師誘発需要

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重大な問題は・・・

• 費用に効果・アウトプットが見合わないこと – 出来高払い(診療のボリューム重視、成果は問われない、ケアの統合を阻害)

– 保険診療の給付範囲(効果のエビデンスが乏しい診療行為や薬剤に、保険点数がつけられている)

– 情報の非対称(患者には医療の質を評価する知識がない、医師誘発需要)

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米国の医療費の約30%はムダな支出

• 医療費の無駄遣い – 頻回受診、頻回な病院の利用、画像検査・処置の過剰利用など

• 最も利用が少ない地域をベンチマークにして、節減可能な医療サービス量を推定すると – 病院の利用:23-28%、プライマリ・ケアの利用:12-

16%、専門医の利用:37-44%、メディケア医療費:18-20%節減可能 Pierre L, et al. The Healthcare Imperative: Lowering Costs and Improving Outcomes ; 2010.

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是正のために何が必要か?

– 医師以外の医療者によるケアの拡大

– ケアの統合

– 予防医療(ただし、費用対効果を慎重に考慮)

– 診療報酬制度の改革

– 保険者機能の利用

– エビデンスに基づいた診療

– 医療の透明性の確保

Pierre L, et al. The Healthcare Imperative: Lowering Costs and Improving Outcomes ; 2010.

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医師以外の医療者によるケアの拡大

• 診療所におけるNurse practitioner (NP)やPhysician assistant (PA)の診療能力を、医師の診療能力と比較した21論文のレビュー。 NPやPAの診療能力は、医師と比較して遜色ない。(Sox HC Jr. Ann Intern Med 1979)

• プライマリ・ケアにおけるNPや助産師の診療を、医師の診療と比較した論文のメタ分析。 診療評価に33指標を使用。両者の診療能力はほぼ同等。患者満足度では、NPの方が優れる場合も。助産師は医師よりも鎮痛剤の使用が少ない。 (Brown SA, et al. Nurs Res 1995)

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医師以外の医療者によるケアの拡大 (2)

• プライマリ・ケアの初診において、NPと医師の

診療を比較したランダム化比較試験、あるいは質の高い観察研究のレビュー

• NPによる診療は医師による診療と比較して – 満足度が高い – 診察時間が長い – 患者の健康状態・処方・紹介・再受診に差はない

Horrocks, S, et al. BMJ, 2002,

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Chronic care modelの効果のエビデンス (Bodenheimer T, et al. JAMA 2002)

• プライマリ・ケアにおいて慢性疾患のケアを改善

• 上記4つの全てを実施した5研究すべてで、患者アウトカムは改善 – ただし、一部でも効果あり – 自己管理支援の20研究のうち、19研究で効果が実証

自己管理の支援 意思決定支援 教材、医師向けミーティング

医療提供システムのデザイン

ケース・マネジャーの利用 多職種チーム 計画的な糖尿病フォローアップ外来

臨床情報システム リマインダー 医師の診療成績のフィードバック

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• 医療費や医療利用(入院・外来受診・救急受診)を減少させるという研究と、減少させないという研究の双方がある

• 日本では、 Chronic care modelは恐らく患者アウトカムを改善するが、コスト削減につながるかどうかは不明 – 米国の最上級の病院(人頭払いで包括的なケアを提供)では、心不全患者に看護師による疾病管理プログラムにより入院率が大幅に減少、その結果入院医療費も減少

– 最下級の病院(メディケアのDRGで償還)では、同様のプログラムを実施して入院が減少したが、入院収益が減少したため、プログラムを中止

Chronic care modelはコストを節減するか? (Bodenheimer T, et al. JAMA 2002)

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Chronic care modelはコストを節減するか?

疾患 (著者) 介入 結果

うっ血性心不全 (Rich, et al. 1995)

看護師による退院後の患者教育

再入院56%減少 医療費$460/90d減少

うっ血性心不全 (Stewart, et al. 1999)

看護師による退院後の患者教育

52%/18Mの入院医療費の削減

うっ血性心不全 (Oddone, et al. 1999)

患者教育・看護師によるフォロー・アクセス強化

再入院率は変わらず、外来診察回数は増加

うっ血性心不全 (Riegel, et al. 1999)

多職種による疾病管理プログラム

医療費削減効果なし

(Bodenheimer T, et al. JAMA 2002)

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Chronic care modelはコストを節減するか?

疾患 介入 結果

気管支喘息 患者教育 看護師によるフォロー ケース・マネジメント フォローアップ外来 内科的治療の強化 多職種による疾病管理

医療費削減/医療利用の減少効果:(+)8研究, (-)5研究

疾患の重症度が結果に影響する

糖尿病 自己管理サポート 患者教育 計画的な糖尿病外来 電話相談 医師へのフィードバック

医療費削減/医療利用の減少効果:(+)7研究, (-)2研究

(Bodenheimer T, et al. JAMA 2002)

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支払制度を考える プライマリ・ケアと病院外来診療

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支払制度の効果に関するEvidence • 支払制度がプライマリ・ケア医の診療行動に及ぼす影響

を検討した研究は多いが、そのほとんどに方法論的な問題があり、エビデンスとするに足る研究は少ない

• Cochrane review – 検索で5,499の論文が同定されたが、質の高い論文は4論文

のみ – 主な支払制度は「給与」・「人頭払い」・「出来高」の3つ – それぞれの支払制度に一長一短 – ほとんどの国で、複数の支払い制度を組み合わせている – 出来高払いは診療のボリュームを増やすが、病院や専門医

への紹介を減少させ、ケアの継続性に優れる – 人頭払いの医療費は、他の支払い制度と比較して、必ずしも

安くない Gosden, Toby, et al. The Cochrane Library (2000). 27

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制度 特徴

給与 • Prospective payment

人頭払い

• Prospective payment • コストを抑制する作用? • 登録患者を増やすインセンティブが働くため、

労働量増加や診療時間の短縮が起こりやすい • 予防医療に対するインセンティブ • Cream skimming

出来高 • 収入を増やすために、サービスを増やすインセ

ンティブが働く • 事務コストが高い

プライマリ・ケアの支払制度

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プライマリ・ケアに対する支払制度 どのような制度が望ましいか?

• 「出来高払い」から「包括払い」へ – 「包括払い」にすることで、質とコストを両立させるための

幅広い裁量権を医療者に与えることができる – 医師以外の医療者によるケアの拡大

• ケアの統合を促進するような支払制度 – 初期診療/急性期/慢性期/在宅医療 – プライマリ・ケア/専門医療

• 包括払い(人頭払い)だけでは、過少医療や医療者の

士気の低下、cream skimmingを招く恐れがある

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無駄な医療を減らすための方策 • Cost-effectiveness analysis (CEA)による評価

– 個々の診療行為に、 CEAに基づいた評価を下すのは困難

• 個々の診療行為に値をつけるのではなく、疾患のエピソード、あるいは個々の患者ケアを包括的に評価する – 医療者の裁量の拡大・医療資源の利用にflexibility – インセンティブ⇒診療のボリュームではなく、医療の成果を評価するような支払制度 (Pay for performance)

• 患者分類を利用して、価格とパフォーマンスの透明化(可視化) – 専門的な外来診療・病院の外来診療に適する

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包括支払の問題点 • 包括の範囲を決めるのが難しい

– プライマリ・ケア/専門診療/入院診療 – 「ケアの失敗」をどのように考えるか?

• 包括的なケアの提供組織 – Solo practiceが包括的ケアを提供するのは困 – 現在の提供体制を大幅に変更する必要)

• フリーアクセスをどうするか? – ケアに対する責任の所在を明確にする必要

• 医療の透明性の確保 – 包括支払は、過少医療を招きやすい – 診療パフォーマンスのモニタリングと公表

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外来診療の診断群分類と包括支払

• 病院の外来診療に対する支払システム Ambulatory Patient Group (APG)

• 米国のHealth Care Financing Administration (HCFA)が1990年に開発 – 病院外来のfacility cost(医師の技術料を除くコス

ト、施設利用料・医療用品・手術用品など)に対するprospective payment(包括支払)

– メディケアによる外来診療の償還に利用

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Ambulatory Patient Group (APG) 重要な処置・

治療

内科診察のインディケーター

補助的な検査・処置

エラー 検査・処置の種類

補助的検査・処置のAPG

主要な徴候・症状・所見

(SSF)

受診の理由

内科的受診のAPG

SSF APG

処置・治療の種類

処置・治療のAPG

Averill, R., et al. (1999). Ambulatory Care Services and the Prospective Payment System, 75.

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医療の透明性の確保

• 診療パフォーマンスの評価とその公表 – 質のモニタリング・改善 – 診療の標準化 – 医療の質を診療報酬に反映

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まとめ • 日本の医療は外来偏重、しかしコストに見合う成果が得られていない

• 非効率的な医療の是正策として、 – 医師以外の医療者によるケアの拡大 – ケアの統合 – 診療報酬制度の改革 – 医療の透明性の確保

• 「包括支払制度」は、医療者の裁量を拡大することで、効率的な医療資源の利用を促進する。ただし、 – 医療の透明性確保 – 診療のボリュームではなく、医療の成果を評価するような支払制度 (Pay for performance)

が不可欠である。

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