外来化学療法に必要な 設備と組織...2008/03/06  ·...

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国立がんセンター中央病院 国立がんセンター中央病院 通院治療センター 通院治療センター 医長 医長 田村 田村 研治 研治 外来化学療法に必要な 外来化学療法に必要な 設備と組織 設備と組織

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国立がんセンター中央病院国立がんセンター中央病院通院治療センター通院治療センター 医長医長

田村田村 研治研治

外来化学療法に必要な外来化学療法に必要な設備と組織設備と組織

外来化学療法に必要な体制外来化学療法に必要な体制

環境整備

スタッフの体制(専任有→病床との比率)

委員会の設立

レジメンの承認と登録

オーダリングシステム

注射混合調製と移送

インフォームド・コンセント

有害事象、緊急時の体制

緩和医療との連携

次回診療報酬改訂時の条件

赤字は現在の外来化学療法加算の条件

がん薬物療法専門医

がん治療認定医

がん看護専門看護師

がん化学療法看護認定看護師

がん専門薬剤師

がん薬物療法認定薬剤師

がん薬物療法に関係する専門資格がん薬物療法に関係する専門資格

①① 設備と環境の整備設備と環境の整備

外来化学療法に必要な設備(1)外来化学療法に必要な設備(1)

外来化学療法室の整備①ベッド、リクライニングチェアーの両方。

カーテン、②静かな環境。音楽、ビデオ、DVD、TVなどで

リラックス、ヘッドホーン、③壁には絵画。医療かつらや副作用指導の

パンフレット空調換気システム、アロマ調剤安全キャビネット(センター内もしくは、薬剤部)無菌防御の薬剤師によるミキシング

外来化学療法に必要な設備(2)外来化学療法に必要な設備(2)

機器心電図モニター、バイタルサインモニター、パルスオキシメーター、輸液ポンプ、支柱台、血管確保に用いるもの、管理に必要なPC緊急体制ショックなどに対応(救急カート、酸素など)ベッドをICUに運ぶ際の道が確保されている流し台トイレ治療室内に設置すべし控え室可能であれば当番医師の常駐

抗悪性腫瘍剤の院内取り扱い指針 日本病院薬剤師会

安全キャビネット安全キャビネット

外来化学療法室(近畿大学奈良病院)外来化学療法室(近畿大学奈良病院)

リクライニング・チェア 5床ベット 2床

外来化学療法室外来化学療法室

抗癌剤調整室

点滴ベッド

専用トイレ

受付

待合室

1診2診3診

安全キャビネト流し台

流し台

それぞれのベットの上にテレビモニター

腫瘍内科外来

ロッカー

ロッカl

国立がんセンター中央病院・通院治療センター国立がんセンター中央病院・通院治療センター

通院治療センター通院治療センター((国立がんセンター国立がんセンター))

ベッドタイプベッドタイプ 20床20床チェアタイブチェアタイブ 16床16床計計 36床36床

国立がんセンター中央病院・通院治療センター

W

W

W

W

W W W

W W

待合室2

ナースステーション

診察室

検査室

検査室

カンファレンス室

リネン室

待合室1

カンファレンス室

薬剤運搬機器

化学療法室患者専用トイレ化学療法室患者専用トイレ

②② 医療スタッフの協力医療スタッフの協力委員会の設立委員会の設立

患者

医師薬剤師

臨床心理師

看護師

ソーシャルワーカー

CRC

栄養師

チームオンコロジーチームオンコロジー(患者さんを中心として)(患者さんを中心として)

検査技師

緩和ケアチーム

各診療科各診療科

通院治療通院治療センターセンター

看護部看護部 薬剤部薬剤部

支援施設支援施設(地域医療(地域医療

連携)連携)

緩和チーム緩和チーム(緩和医療)(緩和医療)

チームオンコロジーチームオンコロジー(通院治療センターを支えるもの)(通院治療センターを支えるもの)

各診療科各診療科 外来化療センター委員会外来化療センター委員会

申請

承認 科学的、倫理的、コスト面の妥当性

処方

投与時の副作用チェックの統一化外科

腫瘍内科

消化器内科

産婦人科

血液内科

泌尿器科

放射線科

薬剤部薬剤部

処方監査

レジメンチェック

調剤

調剤監査

病院事務病院事務

オーダリングシステム機器の購入・利益換算ハード・ソフトの充実

外来化学療法センター外来化学療法センター専任医師、主治医、担当医専任看護師・薬剤師

看護部看護部

治療管理、看護

副作用管理、指導

各部門との連携

外来化学療法に必要な組織外来化学療法に必要な組織

ルート確保ルート確保

当番医専門看護師外来化学療法室の専任医療スタッフ

どの形がよいかは、施設の規模、マンパワー外来化学療法室の形態による.

専門職種によるマネージメント専門職種によるマネージメント

看護師(8名)による管理

点滴、処置の介助

患者教育・オリエンテーション

プライマリーナースの導入

精神面、社会面への看護

急性期副作用への対応

注射薬投与の準備注射薬投与の準備(抗がん剤・補助薬剤など(抗がん剤・補助薬剤など))

注射薬と患者さんの同定注射薬と患者さんの同定処方箋と薬剤との確認処方箋と薬剤との確認

がんセンターの外来化学療法はがんセンターの外来化学療法はいかにあるべきか?いかにあるべきか?

治療件数は多い。(1日80-120件)

がん治療に特化した各診療科が存在する。

→「通院治療センター」は、各診療科のDecisionに従い治療を遂行する。(共有スペース)

診療科として機能するべきなのか?

専任となる医師が必要であるのか?

消化器がんG

呼吸器がんG

乳がんG

血液がんG通院治療

センター

看護師

患者

患者 患者

患者

薬剤師

医師

医師

医師

医師

一般的ながんセンターでの一般的ながんセンターでの通院治療センターの位置づけ通院治療センターの位置づけ

国立がんセンター中央病院国立がんセンター中央病院((Center in Center)Center in Center)

消化器がん

呼吸器がん

乳がん

血液がん通院治療

センター

看護師

薬剤師

医師

医師 医師

医師

外来外来診療診療GG

医師

医師

患者

患者

患者

患者

外来化学療法グループの役割外来化学療法グループの役割

診療グループ通院治療センター専任の医師グループ

各診療グループの治療方針に従い、外来化学療法が安全に効率よく行えるようにサポートする。(コーディネーター)

一部の患者さんに関しては、自ら、診療を行い、治療方針を決定する。(乳がん、大腸がん、胃がん、卵巣がん、すい臓がんなど)

外来化学療法グループ外来化学療法グループ

医長

医員

副医長

レジデント

医員

1名

1名

1名

2名

1名

乳腺・腫瘍グループ

乳腺・腫瘍グループ

乳腺・腫瘍グループ

消化器内科グループ

外来化学療法チーム外来化学療法チーム

専任看護師

看護師長 1名

副看護師長 1名 (認定)

専任看護師 10名 (内、認定2名)

医師 専任医師 2名+ レジデント2名

(外来化学療法グループ)

薬剤師

専任(常勤)薬剤師 2名

コア→全体コア→全体

外来化学療法グループ(2)

消化器内科グループ

乳腺・腫瘍グループ

肝・胆。膵グループ

血液内科グループ

通院治療センター看護師

通院治療センター薬剤師

グループ代表者(1)

グループ代表者(1)

グループ代表者(1)

グループ代表者(1)

グループ長

グループ長

グループ長

グループ長

(2)

(11+1)

(2+2)

副看護師長

副薬剤部長

看護師長

薬剤部長

医長

共通メール

通院治療センター管理運営委員会

(1回/月)

外来化学療法グループカンファレンス

(毎日)

外来診療グループ会議(1回/月)

内科連絡会議(1回/月)

DR PH

通院治療センター朝の申し送り(毎日)

NS DR

通院治療センタースタッフ会議(1回/月)

PHDR NS

NSDR

DR

DR PH NSDR

DR PHDR

各診療科代表・事務

③③ 治療内容(レジメン)の治療内容(レジメン)の承認と登録承認と登録

やってはいけないことやってはいけないこと

外来化学療法を行うために、標準的な治療法に比べ治療効果を低めること。(ナンチャッテ外来化学療法)

勝手に投与量を減量すること

勝手に投与間隔をあけること

勝手に投与法を変えること

*エビデンスにもとずいた治療法(Evidence Based Medicine)をしなければならない。

*エビデンスにもとずいていれば減量や投与法を変えてよい。

タキソールの毎週投与法タキソールの毎週投与法

220 mg/m2 220

80 80 80 80 80

1 コース

1 コース

化学療法のレジメン化学療法のレジメン

がん化学療法のレジメンがん化学療法のレジメン施行できるがん化学療法のレジメンは、事前に登録されたも

のに限定する.登録済レジメンは,病院内のオーダリングシステムに組み入れられそこからしか処方できない。

レジメンの新規登録レジメンの新規登録新規レジメンを申請する場合は,「レジメン登録依頼書」を薬剤

部に提出し、通院治療センター委員会の審査・承認を受けたもののみ登録される.その際、その治療法の根拠となる文献または臨床試験のプロトコールを必ず添付する.

レジメン登録レジメン登録

治療レジメン登録依頼書

受付(薬剤部)

審査および承認(通院治療センター委員会)

承認連絡・PC画面登録

レジメンの利用開始

エビデンスに基づいた治療の確立と,リスク低減の面から,登録レジメン以外は使用できない.

レジメン登録新規・変更(申請医師/グループ責任医師の承認)

レジメン小委員会

事務局(副薬剤部長)

薬剤部長

各診療グループ長

薬剤療法部長

院内決裁

レジメン入力担当薬剤師注射薬担当主任医薬品情報管理担当主任

オーダーリングシステム部門

申請医師による確認

レジメンリリース

倫理委員会での承認エビデンスの検証投与量・方法の検証

レジメン登録レジメン登録

④④ オーダリングシステムオーダリングシステムの整備の整備

外来化学療法の流れ外来化学療法の流れ

来院 採血 検査データ

診察ミキシング

(薬剤部)

通院治療センタールート確保

抜針帰宅

指示箋

各段階で確認と記録

オーダーリングシステムオーダーリングシステム

投与日

投与順序

レジメンに特化した投与量

休薬期間

過量投与や蓄積投与量の上限

治療の標準化

レジメンオーダー(富士通)レジメンオーダー(富士通)

レジメンオーダー(富士通)レジメンオーダー(富士通)

過量投与の回避

レジメンオーダー(富士通)レジメンオーダー(富士通)

•レジメンの登録制•過量投与の防止

レジメンオーダー(レジメンオーダー(IBMIBM))

•インターバルチェック

レジメンオーダー(レジメンオーダー(IBMIBM))

⑤⑤ 薬剤師による薬剤師による抗がん剤のミキシング抗がん剤のミキシング

薬局薬局(Pharmacy)(Pharmacy)

Satellite PharmacySatellite Pharmacy(化学療法室の近く)(化学療法室の近く)

Central PharmacyCentral Pharmacy&&

DeliveryDelivery(中央薬局)(中央薬局)

専門薬剤師専門薬剤師 による薬剤調整による薬剤調整

無菌調剤(防御服)無菌調剤(防御服)

事前用意事前用意薬剤調整済み製品導入薬剤調整済み製品導入

中央薬局(薬剤部)からの中央薬局(薬剤部)からの注射薬の搬入注射薬の搬入

注射薬と患者さんの同定注射薬と患者さんの同定

⑥⑥ 患者さんへの説明患者さんへの説明

インフォームドコンセントインフォームドコンセント

インフォームド : 説明Informed コンセント : 同意Consent

Munt Therapy (ムンテラ)とは違う。

インフォームドコンセントの基本事項インフォームドコンセントの基本事項

治療の根拠

治療の内容(レジメンは図示して分かりやすく)

利益について(生存期間の延長、再発率低下、QOL改善)

不利益について(有害事象、治療関連死、コスト、時間制約)

代替え療法

結果の公表やプライバシーについて

同意しない場合に不利益を受けないこと

随時撤回できること

連絡先

スタッフの活用:補足説明スタッフの活用:補足説明

補足説明

看護師

薬剤師

CRC(臨床試験コーディネーター)

カウンセリング・精神科

緩和チーム

相談支援センター

オリエンテーション有害事象・セルフケア指導ポート管理指導

薬剤指導・説明

看護師

薬剤師

患者指導・説明患者指導・説明

FOLFOXもFOLFIRIも・・・FOLFOXもFOLFIRIも・・・

2日に及ぶ点滴時間

外来治療への工夫!ポート挿入ポート挿入

抗がん剤レジメン抗がん剤レジメン//パンフレットパンフレット

ACAC療法(初回)療法(初回)

制吐剤(定期)3日間

制吐剤(屯服)

38度以上の発熱時(屯服)

患者さん向けリーフレット患者さん向けリーフレット

白血球減少に対するセルフケア白血球減少に対するセルフケア

感染予防について外部からの有害物の侵入から体を守る役目を行っている白血球が減少することによって感染による抵抗力が低下する。

感染予防が必要になる白血球数を知るうがい、手洗い、マスクなど発熱時の連絡、予防抗生剤

⑦緊急時の対応・地域連携⑦緊急時の対応・地域連携

副作用の発現時期副作用の発現時期副作用の発現時期

自分でわかる自分でわかる副作用副作用

検査でわかる検査でわかる副作用副作用

経過(週)経過(週)

急性吐き気アレルギー反応

血圧低下・不整脈呼吸困難・便秘

遅延性吐き気食欲低下

だるさ便秘

口内炎,下痢だるさ

手足しびれ耳鳴

脱毛

肝障害腎障害

骨髄抑制白血球減少貧血血小板減少

1 2 3 4

急性期悪心

食欲不振

遅発性食欲不振

口内炎便秘

下痢

発熱性好中球減少好中球減少

貧血感染症

肝機能異常肺臓炎

手のしびれ

脱毛耳鳴り

外来受診日化学療法

自宅での生活

外来受診日化学療法

セルフケア指導

地域医療連携

電話訪問

緊急時体制

外来患者に対する継続支援・外来患者に対する継続支援・緊急体制緊急体制

緊急時の対応は、日中は通院治療センター

夜間は当直医対応

継続支援として、がん化学療法看護認定看護師による帰宅後の電話フォローアップ

(トリアージ機能:治療後一定の時期にセンターから連絡をとる。

相談支援センターとの連携相談支援センターとの連携

外来化学療法を開始する時点で、地域

医療連携病院を探す。

プライマリケア・軽症の有害事象の対応

セルフケア指導の充実と並行して、バック

アップ機能の充実を図る

相談支援センターで、連携病院の抽出

システム化

地域医療連携施設による地域医療連携施設による

外来化学療法中のフォローアップ外来化学療法中のフォローアップ

早期または遅発性の悪心・嘔吐、食欲不振

便秘症、下痢症

合併症(糖尿病、高血圧など)

発熱性好中球減少、血液検査追加、G-CSF

血尿、頭痛、感冒、咽頭炎、

骨密度測定(乳がん:アロマターゼ阻害剤)

緊急時の受診

相談支援センターによる相談支援センターによる

医療施設の抽出医療施設の抽出

初回

医療面接日

2回

医療面接日

3回

医療面接日

化学療法に

関する説明

化学療法に

関する同意

化学療法に

関する説明、

指導

病状説明 治療説明

化学療法施行

通院治療センター

バックアップ病院抽出

相談支援センター

外来主治医による

紹介状の作成

紹介状

1F 3F

2F 診察室

依頼

通院治療センター外来化学療法

ケアマネージャー

在宅医

在宅ケアネットワーク

薬局

PCU/ホスピス

合併症治療

訪問看護ステーション

デイ・ホスピス支持療法

Mobile PCTCommunity PCT

緩和医療チーム

国立がんセンター中央病院

相談支援センタl

連携

地域医療施設各診療グループ

外来

入院化学療法患者・家族

がん医療における地域連携がん医療における地域連携

連携

最近の問題点最近の問題点

1日予約上限の増加(100→120)

開業時間の延長(17:15→19:15)

スタッフ増員

FOLFOX+Bevの外来導入

電子カルテ導入に伴うシステム変更

病床管理システムなど

CBDCA+Paclitaxelの積極的外来移行

外来化学療法グループ

長時間薬剤・新規分子標的薬剤長時間薬剤・新規分子標的薬剤

CBDCA + Paclitaxel, FOLFOX+Bev,

MF, Rituximab を含むレジメン

CDDPを含むレジメン の導入(予定)

CDDP+TS1, CDDP+ADL

Trastuzumab,

Bevacizumab, Bortezomib,

情報の適確な入手。安全性の確保

情報の共有化と効率的な運用情報の共有化と効率的な運用リスクマネージメントリスクマネージメント

電子カルテ導入(6月)

病床管理システム、データベース化

合同カンファレンスを増やす。

多診療科(Cancer Board):毎週:医師中心

医師ー看護師ー薬剤師:外来化学療法グループ

救命救急体制の充実化を図る。

Infusion reaction対応マニュアル化

薬物漏洩対応マニュアル化

教育教育

「外来化学療法医療チーム養成に係る研修」

「腫瘍内科セミナー」など各種セミナーの実施

レジデント

「外来化学療法グループ」専任レジデント

第1号は10月から:2名

短期レジデント制度:ホームページ参照

レジデント制度:ホームページ参照

田村([email protected]

がん化学療法は今後ますます多様化していくと考えられ、患者の生活の質(QOL)を向上・維持させながら、安全性を担保し、治療として意義のある外来化学療法の推進が必要となる。

設備面、チーム医療の推進・専門委員会の設置、レジメンの承認と登録、オーダーリングシステムの確立、薬剤師によるミキシング、患者への説明・セルフケア指導、緊急時の体制・地域連携などが必要である。

本日のまとめ本日のまとめ

マンパワー設備人材

(専門家・リーダー)

医学知識情報

患者さんの声

熱意実行力

発想の転換

外来化学療法の改革には外来化学療法の改革には