1385

淋 菌 の栄養 要 求型(Auxotype)お よび血 清 型

(Serotype)に 関 す る検 討

札幌医科大学泌尿器科(主 任:熊 本悦明教授)

西 村 昌宏 熊 本 悦 明 広 瀬 崇興

酒 井 茂 塚 本 泰 司

札幌STD研 究会

東京総合臨床検査センター

出 口 浩 一

(平成2年4月9日 受付)

(平成2年4月27日 受理)

Key words : Neisseria gonorrhoeae, auxotype, serotype, sensitivity to AMPC

要 旨

1980年 か ら1989年 まで に札 幌 で分離 された淋 菌592株 を対 象 にそ の栄 養要 求型 を検 討 し,ま た一 部 の淋

菌で は血 清型 も検 討 し,あ わ せ て栄養 要求 型 とAmoxicillinに 対 す る感受 性 の関係 も解 析 し以下 の結 果

を得 た.

1. 栄養要 求型 は東 南 ア ジア地域 で の分布 に類 似 して いた.

2. 栄 養要 求型 の年 代別 の検 討 ではproto, Pro-の 頻度 が 減少 し,AHU-の 頻度 が増 加 して いた.

3. 血 清型 の検 討 では検 討 し得た 淋菌 はす べ てWII/III型 で あ りWI型 は認め られ な か った.

4. 栄 養要 求型 とAMPCに 対す る感 受性 の 関係 ではAHU-株 はAMPCに 対 してproto, Pro-よ りも

高 い感 受性 を示 していた.

はじめに

淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感 染症は古来よ

り病原体が明 らかな性感染症(Sexually trans-

mitted diseases; STD)の ひとつ として知 られ,

公衆衛生学的,臨 床的に問題 となってきた.本 邦

においては最近患者数が減少あるいは横這い傾向

にあるが1),統 計上に表れない隠れた る患者数を

考慮す るとSTDの 中で重要 な位置を占めている

事に変わ りはない.

細菌感染症について流行を疫学的に検討す るた

めには,細 菌学的な手法により細菌の生物学的に

普遍的な形質をmarkerと して用い,感 染経路や

流行の特徴などを明 らかにしていく必要がある.

そ こで我々は淋菌の普遍的な形質である血 清型

(Serotype)と 栄養要求型(Auxotype)に ついて,

札幌で分離 された淋菌を対象に検討し,疫 学的な

意義について考察 した.

1. 対象および方法

(1) 対象分離株

1980年 から1989年 までに札幌において分離 され

た淋菌592株 を検討の対象 とした.淋菌を分離 した

症例はすべてSTDで あ り,男子尿道炎,女 子子宮

頚管炎 として,Table1に 示 したメンバーで構成

される札幌STD研 究会の医療機関を受診 した者

である.

症例 より採取 した尿道および子宮頚管分泌物な

どの臨床検体は塗抹 グラム染色標本にてグラム陰

性双球菌の存在を確認した.ま た同時に1988年 ま

別刷請求先: (〒060)札 幌市中央区南1条 西16丁 目

札幌医科大学泌尿器科 西村 昌宏

平成2年11月20日

1386 西村 昌宏 他

Table 1 Sapporo Clinical Research Group

for STD

Department of Urology, Sapporo Medical College

(Director : Prof. Yoshiaki Kumamoto)

Sapporo Urology Clinic (Chief : Dr. Tsutomu Gohro)

The Inoke Clinic (Chief : Dr. Takeo Inoke)

The Sanjukai Hospital (Chief : Dr. Hitoshi Tanda)

The Tabata Clinic (Chief : Dr. Shigeo Tabata)

The Henmi Clinic (Chief : Dr. Izumi Henmi)

The Kohsei Urology Clinic (Chief : Dr. Humihiko

Kamito)

The Ikegaki Clinic (Chief : Dr. Shunji Ikegaki)

The Yoshio Clinic (Chief : Dr. Hiroshi Yoshio)

The Department of Urology, Self-Defense Force

Sapporo Hospital (Chief Dr. Jiroh Tatsuki)

ではTransgrow培 地(Difco),そ れ以後は淋菌用

輸送兼保存培地(コ スモバイオ)に 塗布 した後,

札幌第一臨床検査センターにて菌の分離培養を行

い,生 化学的性状から淋菌の同定を行った.さ ら

にそれ らの淋菌株を活性炭入 りゼラチンディスク

半流動保存用培地に浮遊 させ,-70℃ にて凍結 し

た後,東 京総合臨床検査センターに送付 し以下の

検 討 に供 した.

(2) 栄 養 要 求 型(Auxotype)の 検 討

1973年 に 報 告 さ れ たCatlinの 方 法2)に 準 じて 栄

養 要 求 型 の 検 討 を 行 った.す な わ ち 保 存 淋 菌 を

Thayer-Martin培 地(ニ ッス イ)に て37℃,24～42

時 間 ロ ウ ソ ク 培 養 し た 後,Catlinの NEDA

(defined agar medium for Neisseria)お よ び こ

れ か らproline, arginine, hypoxanthine, uracil

の4種 類 の ア ミノ酸 を 除 い た培 地 に接 種 し,さ ら

に37℃,42時 間 ロ ウ ソク培 養 し栄 養 要 求 型 を 判 定

した.

(3) 血 清型(Serotype)の 検 討

今 回 栄 養 要 求 型 を 検 討 した 淋 菌 株 の 内,132株 に

つ い て 凝 集 法 に よ りWI型 とWII/III型 の2つ の

型 に 分 類 し得 た.方 法 はPhadebact Monoclonal

GC Test 50TM(フ ァル マ シ ア)に よ り血 清 型 を 判

定 した.

(4) 抗 菌 薬 感 受 性 の 検 討

栄 養 要 求 型 を 検 討 した592株 中,315株 につ い て

Amoxicillin (以 下AMPC)に 対 す る抗 菌 薬 感 受 性

を 測 定 した.MIC測 定 方 法 は,日 本 化 学 療 法 学 会

Fig. 1 Auxotypes of Neisseria gonorrhoeae isolated in Sapporo (1984-1989)

PPNG

non-PPNG

(Sapporo Medical College & Deguchi, 1990)

感染症学雑誌 第64巻 第11号

淋菌の栄養要求型 および血清型に関す る検討 1387

標 準 法3)に よ る寒 天 平 板 希 釈 法 に よ り最 小 発 育 阻

止 濃 度(以 下MIC)の 測 定 を 行 った.MICの 測 定

は 接 種 菌 量106CFU/mlに て 行 い,使 用 培 地 は

Thayer-Martin培 地 を 用 い,37℃,24～42時 間 ロ

ウ ソク培 養 に て 行 った.

2. 結 果

(1) 栄 養 要 求 型 (Auxotype) (Fig.1)

今 回 検 討 した 淋 菌 の栄 養 要 求 型 を ベ ニ シ リンを

分 解 す るpenicillinase producing Neisseria

gonorrhoeae (以 下PPNG)と 分 解 しな い non-PP-

NGに 分 け て1980～1985年, 1986～ 1987年,

1988～1989年 の 各 年 代 別 に 比 較 し た 結 果 を Fig.

1に 示 した.

PPNGで は1980～1987年 ま でcystineま た は

cysteineの み を 要 求 す るprototrophic型 (以 下

proto)が 約60%,さ らに そ れ ら に加 えprolineも

要 求 す る型(以 下Pro-)が 約40%で あ り,こ の2

つ の型 で ほ ぼ100%を 占 め た .ま た1988～ 1989年 は

PPNGが2株 と少 な い が い ず れ もprotoで あ っ

た.

一 方non-PPNGで はprotoが1980～1985年 に

は41.9%を 占 め て い た が,1986～1987年 で は

27.0%と 減 少 し,1988～1989年 で は13.3%と さ ら

に減 少 し て い た.ま たPro-は,1980～1987年 で は

約45%を 占 め て い た が1988～1989年 で は30.0%と

減 少 して いた.し か し,arginine, hypoxanthin,

uracilを 要 求 す る型(以 下AHU-)は1980～ 1985

年 で は9.9%で あ っ た が,1986～1987年 で は

23.0%,さ らに1988～1989年 で は43.3%と 増 加 し,

proto, Pro-よ りも高 い 頻 度 を 占め て い た.

(2) 血 清 型 (Serotype)

今 回検 討 可 能 で あ っ た132株 の 血 清 型 は す べ て

WII/III型 で あ り, WI型 は 認 め られ な か っ た.

(3) 栄 養 要 求 型 とAMPCに 対 す る感 受 性 の 関

Fig. 2 Auxotype and sensitivity (MIC) distribution to Amoxicillin (106CFU/m1)

平成2年11月20日

1388 西村 昌宏 他

係(Fig.2)

栄 養 要 求 型 とAMPCに 対 す る感 受 性 の 両 者 を

検 討 し得 た 淋 菌315株 のAMPCに 対 す る MICと

栄 養 要 求 型 と の 関 係 をFig.2に 示 した. non-PP-

NGは す べ て0.39μg/ml以 下 に 分 布 し, PPNGは

す べ て0.78μg/ml以 上 に 分 布 した.MICを 同 時

に測 定 したPPNG129株 中127株(98.4%)の 栄 養

要 求 型 はprotoま た はPro-の い ず れ か で あ り,

AHU-は1984～1985年 に分 離 され た2株 (1.6%)

の み で あ った.こ の2株 のMIC値 は3.13μg/ ml

と12.5μg/mlを 示 し,他 のAHU― 株30株(non-

PPNG)は す べ て0.10μg/ml以 下 のMIC分 布 を

示 した.全 体 と してAHU-株 はAMPCに 対 して

proto, Pro-よ りも高 い 感 受 性 を 示 して い た.

3. 考 察

感 染 症 の 流 行 を疫 学 的 に検 討 す る事 は 感 染 の実

態 を把 握 し,適 切 な 予 防 対 策 を た て る上 で 重 要 で

あ る が,そ の 場 合 起 炎 菌 の普 遍 的 で あ る細 菌 学 的

Table 2 Auxotype distribution of Neisseria gonorrhoeae isolated from various countries

感染症学雑誌 第64巻 第11号

淋菌の栄養要求型および血清型に関する検討 1389

な 型 を 決 定 し,そ れ が 疫 学 的 検 討 のmarkerと し

て 用 い られ る.淋 菌 の細 菌 学 的 な型 と して は これ

ま で 栄 養 要 求 型(Auxotype),抗 菌 薬 感 受 性

(Antibiogram),血 清 型(Serotype)な どが 検 討

さ れ て きた が,1973年 のCatlinの 報 告2)以 来 淋 菌

の細 菌 学 的 な型 別 と して 栄 養 要 求 型 が比 較 的 広 く

用 い られ て い る.ま た 最 近 は 栄 養 要 求 型 と血 清 型

を 組 み合 わ せ て さ らに 詳 細 な 分 類 が 試 み られ て い

る.我 々 は 札 幌 で 分 離 され た 淋 菌 に つ い て栄 養 要

求 型 を 中心 に 検 討 を行 い,ま た そ れ ら の一 部 の 菌

で は 血 清 型 も 検 討 し,あ わ せ て 栄 養 要 求 型 と

AMPCに 対 す る感 受 性 の 関 係 も解 析 した.

(1) 栄 養 要 求 型(auxotype)に 関 す る検 討

淋 菌 の栄 養 要 求 型 は そ の 発 育 に必 要 とす る ア ミ

ノ酸 の 要 求 パ タ ー ン に よ り菌 を 分 類 す る も の で あ

る.cystineま た はcysteinの み を 要 求 す る も の を

prototrophic (proto)ま た はwildと,こ の 他 に

prolinを 要 求 す る もの をPrrと, arginineを 要 求

す る も の をArg-と,arginine, hypoxanthin,

uracilを 要 求 す る も の をAHU-な ど と表 現 し,

Catlinは 臨 床 分 離 淋 菌 は22の 型 に 分 類 さ れ る 事

を 報 告2)し て い る.ま た こ れ ら の栄 養 要 求 型 分 布

は 分 離 地 域 や 分 離 時 期 に よ りそ れ ぞ れ 特 徴 が あ る

事 か ら,疫 学 的 検 討 に用 い るの に有 用 で あ る と さ

れ て い る.Table2に 我 々 の 検 討 を 含 め て 諸 外

国4)～18)にお け る栄 養 要 求 型 の 分 布 を 示 した が,

proto, Pro-は 本 邦 お よび 台 湾,フ ィ リピ ン,ホ ン

コ ン,シ ン ガ ポ ール4)5)な どの ア ジ ア地 域 に広 く分

布 し て い る.ま たAHU-は 全 身 性 淋 菌 感 染 症

(Disseminated Gonococcal Infection; DGI)や

無 症 候 性 感 染 か ら高 頻 度 に 分 離 され4),ア メ リカ

の シ ア トル や カ ナ ダ6)で は1970年 代 に 高 頻 度 で

あ った と報 告 され て い る.我 々 の 札 幌 に お け る検

討 で は 近 年AHU-の 頻 度 が 確 実 に 増 加 し て き て

お り本 邦 で は 未 だDGIの 報 告 は 少 な い が,今 後 そ

れ ら の動 向 に 興 味 が持 た れ る と ころ で あ る.ま た

AHU-は 元 来PPNGが 少 な く,ペ ニ シ リン 感 受

性 が 高 い4)19)とされ て い るが,AHU-の 増 加 は最 近

のPPNGの 減 少 傾 向 を 反 映 し て い る と言 え る か

も しれ な い.

(2) 血 清 型(serotype)に 関 す る検 討

Fig. 3 Serotype of Neisseria gonorrhoeae

Neiserria gonorrhoeae

Micro- IF (Wang 1977)

Co-agglutination (Sandstrom 1980)

POMP serotyping (Buchanan 1981)

Protein I peptide mapping (Sandstrom 1982)

Anti-peotein I monoclonal antibodies (Tam 1982)

Protein I serovars (Knapp 1984)

淋 菌 の外 膜 蛋 白 は3種 類(ProteinI, Protein

II, Protein III)あ る20)が,そ の うち ProteinIの

抗 原 性 の 違 い に よ る血 清 型 の 分 類 が1970年 代 後 半

か ら行 わ れ て きた(Fig.3).1977年 にWangら 21)

が蛍 光 抗 体 法 に よ りA,B,Cの3つ の血 清 型 に大

別 した.そ の後1980年 にSandstromら22)が 手 技 の

簡 単 な凝 集 法 に よ ってA,B,Cの そ れ ぞ れ に対 応

す る3つ の 血 清 型 に 分 類 さ れ る事 を 示 し,そ れ ぞ

れWI, WII, WIII型 と した.ま たBuchananら 23)

はELISA (enzymelinked immunosorbent

assay)に よ り1～9型 の9つ の 型 に 分 類 し,1

～3型 はWI型 に ,4～8型 はWII型 に,9型 は

WIII型 に対 応 す る事 を 示 した.さ らに1982年 に は

Sandostr6mら24)がpeptide mappingに よ り,

Protein IがProtein IAとProtein IB (以 下Pr

IA, PrIB)の2つ に 分 か れ,WI型 はPrIAに

WII型 お よ びWIII型 はPrIBに 対 応 す る と し

た.現 在 で は,Knappら25)に よ る モ ノ ク ロナ ー ル

抗 体 を 用 い た 検 討 で そ れ らが さ ら に細 か く分 け ら

れ,PrIAは1～18型 に,Pr IBは1～28型 に分

類 さ れ て い る.最 近 まで に報 告 され て い る血 清 型

の検 討 結 果 の 多 くはWI, WII, WIII型 の3つ の型

平成2年11月20日

1390 西村 昌宏 他

別,ま た はPrIA, PrIBの2つ の型 別 に よ る分

類 の報 告 が 多 い.そ れ ら本 邦 お よ び諸 外 国 で の 血

清 型 の 分 布 状 況 を ま と め て Table

35)～7) 9) 12) ～14) 16) 18) 26) ～29)に示 し た.本 邦 の 中 で も淋 菌

の血 清 型 分 布 に は 地 域 差 が 認 め られ,札 幌 で 分 離

さ れ た 株 に はWI型 は 認 め られ な い が,東 京 の 小

島 ら26)の検 討 で はWI型 が12%認 め られ て い る.

な お 今 回 我 々 が 用 い たPhadebact Monoclonal

GCTest50TMに て,小 島 よ り供 与 を 受 けたWI株

を 検 討 した と こ ろ,抗WI血 清 に て 明 ら か に 凝 集

を 認 め た.従 っ て本 キ ッ トの信 頼 性 に関 して は問

題 が な い もの と考 え られ た.一 方 諸 外 国 で は ア メ

リカ,カ ナ ダ5)6)でWI型 が 多 く,ヨ ー ロ ッパ9)28)で

WII型 が,東 南 ア ジ ァ5)でWII, WIII型 が 多 く認

め られ て お り,本 邦 の 血 清 型 分 布 は東 南 ア ジ ア で

の分 布 に 類 似 して い る.ま た1985年 に は ア メ リカ

の シ ア トル でWII, WIII型 の 比 率 が 増 加 し

(84.7%)7),東 南 ア ジ ア に 類 似 した 報 告 も認 め ら

Table 3 Serotype distribution of Neisseria gonorrhoeae isolated from various

countries

[Japan]

感染症学雑誌 第64巻 第11号

淋菌の栄養要求型および血清型に関する検討 1391

れる.

以上のように血清型を検討する事で検討地域や

時期の特徴がある程度把握でき,さ らに栄養要求

型 と血清型を組み合わせることで淋菌は100種 以

上の型に分類できる.こ の事は,現 在のように海

外 との交流が盛んになって きている状況を考 える

と,淋 菌の感染源や伝染経路を知 る上で疫学上非

常に有用な情報を与 えて くれ るもの と考え られ

る.

(3) 栄養要求型 とAMPCに 対す る感受性の関

係

今 回,315株 の淋 菌 に つ い て栄 養要 求 型 と

AMPCに 対する感受性の両者を検討 し得た.栄 養

要求型がprotoで あった153株 の中で,PPNGで

あった株は78株(51.0%),ま た栄養要求型が Pro-

であった130株 の中で,PPNGで あった株 は49株

(37.7%)と,こ の2つ の栄養要求型ではPPNG

の頻度が高かった.ま たこの2つ の栄養要求型で

はAMPCのMIC値 が0.0125～100μg/ml以 上 と

幅広 く分布 していた.こ れに対して栄養要求型が

AHU-で あった32株 の中で,PPNGで あった株は

わずかに2株(6.2%)で あり,こ れ らを除いた30

株 のnon-PPNGのMIC値 は す べ て 0.10μg/ml

以下に分布していた.栄 養要求型がAHU-の 淋菌

は,PPNGが 少な く,ペ ニシ リンに対 して良好な

感受性を有 している事は,欧 米において従来 より

報告4)19)されてきたが,今 回の我々の検討でも同様

な成績であった.

以上 より,淋 菌の栄養要求型および血清型に関

する検討成績を中心に,そ れ らの疫学的な意義に

ついて考察 した.淋 菌感染症に対する治療 として

は,PPNGに 対しても有効な抗菌薬が臨床使用 さ

れ,そ れ らのsingle dose therapyに おいて も非常

に良好な成績30)31)が得 られている.し かし淋菌に

対する有効なワクチンなどは未だ開発 されておら

ず,淋 菌を根絶させる事は現段階では不可能 と考

えられる.従 ってこれ らの疫学的なmarkerを 用

いて淋菌感染症の流行を充分把握 して行 くことが

必要であると考 えられた.

稿を終えるにあたり,多 くの検体を提供していただいた

札幌STD研 究会の諸先生方,お よび菌の分類,同定,保存

に御協力いただいた札幌第一臨床検査 センターに深甚なる

謝意を表 します.

文 献

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平成2年11月20日

1392 西村 昌宏 他

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丹 田 均, 吉 尾 弘, 森 満, 出 口浩 一: 淋 菌

感 染症 の疫 学 的 治療 学 的検 討 ―Cefetamet pivox-

ilを 用 いた 検 討 ―. 泌 尿紀 要, 投 稿 中, 1990.

感染症学雑誌 第64巻 第11号

淋菌の栄養要求型および血清型に関する検討 1393

Study on Auxotype and Serotype of Neisseria gonorrhoeae

Masahiro NISHIMURA, Yoshiaki KUMAMOTO, Takaoki HIROSE, Shigeru SAKAI & Taiji TSUKAMOTO

Department of Urology, Sapporo Medical College (Director: Prof. Y. KUMAMOTO) Sapporo Clinical Research Group for STD

Kouichi DEGUCHI Laboratory Section, Tokyo Clinical Research Center (Director: K. DEGUCHI)

The auxotypes of 592 strains of Neisseria gonorrhoeae isolated in Sapporo between 1980 and 1989 were investigated. The serotypes of some of these strains were also studied, and the relation between the auxotype and the sensitivity to Amoxicillin (AMPC) was analyzed. The results were as follows.

1. The auxotypes of Neiseria gonorrhoeae isolated in Sapporo were similar to those distributed in Southeast Asia.

2. In a study of the auxotypes by year, the frequency of proto and Pro decreased, while the frequency of AHU- increased.

3. The serotypes of all strains of Neisseria gonorrhpeae investigated were WII/WIII, there was no WI serotype.

4. With respect to the relation between auxotypes and sensitivity to AMPC, the AHU- strains were more sensitive than proto or Pro-.

平成 2年11月20日