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Page 1: 岡山醫學會雜誌第四百八號ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/4/47584/...岡山醫學會雜誌第四百八號 大正十三年一月三十一日發行 原 著 皮膚消毒藥トシテノ「ピクリン」酸ノ價値ヲ論ジ併テ

岡 山醫 學 會雜 誌 第 四百八 號

大 正 十 三年 一 月 三 十 一 日發 行

原 著

皮 膚 消毒 藥 トシテ ノ「ピク リン」酸 ノ價 値 ヲ論 ジ併 テ

沃 度 丁幾(グ ロッシッヒ氏法)ト ノ優劣 比較 ニ及 ブ

京都帝國大學醫學部外科伊藤教授ノ「クリニック」ヨリ

二 川 元 治 郎 述

目 次

第 一 編  緒 論

第 一章  文 獻

第一節 「ピク リン」酸 ノ皮膚消毒藥 トシデ

ノ用 途 ニ關 スル歴史的觀察

第二節  欧洲 大戦 中ニ於ケ ル「ピクリン」酸

ノ皮膚消毒藥 トシ テノ使用 ニ就 テ

第二章  余 ノ本研究 ヲ企 テタ ル所 以

第 二 編  「ピ ク リ ン」酸 ノ化 學 的 性 状

殊 ニ 其 ノ 殺 菌 力 ニ 關 ス ル 考

第 三 編  實 驗

第一章  「ピクリン」酸 ノ殺菌 力ニ關 ス ル實驗

第一節  「ヒク リン」酸 ノ試驗管内 ニ於 ケ ル

殺 菌力 ニ關 ス ル實驗

第 一項  文獻竝 ニ實驗 ニ對 スル企圖

第二項  實驗準備

第一 目 實驗 ニ供 シタ ル消毒藥竝 ニ中

和藥

第二 目 實驗 ニ供 シタ ル細菌

第三 目 實驗 ニ供 シタ ル培 養基

第三項  實驗方法竝 ニ次第

第一 目 余 ガ考按

第二 目 實驗 次第

第四項  實驗結果

第一 目 黄金色葡萄状球菌 チ以 テセ ル

實驗結果

第二 目 其 ノ他 ノ化膿菌 チ以 テセ ル實

驗 結果

第三 目 先人 ノ實驗結果 トノ比較

第五項 結 論

第二節 「ピクリン」酸 ノ臨牀的消毒力 ニ關

ス ル實驗

第一項  文獻竝 ニ實驗 ニ對 スル企圖

第二項 實驗 第一 皮 膚 ニ常存 セ ル細菌

ニ對 スル「ピク リン」酸 ノ殺菌力

ニ就 テ

第一 目 實驗 ノ目的

第二 目 實驗 準備

第三 目 實驗方法竝 ニ次第

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第四 目 實驗結果

第五 目 結 論

第三 項  實驗 第二 皮膚 ニ附著 セシメタ

ル病原菌 ニ對 スル「ピク リン」酸

ノ殺菌 カ ニ就 テ

第一 目 實驗 ノ目的

第二 目 實驗準備

第三 目 實驗方法竝 ニ次 第

第四 目 實驗結果

第五 目 結 論

第四項  實驗第三 「ピクリン」酸 ノ滅 菌

度 ニ就 テ

第一 目 實驗 ノ目的

第二 目 實驗 準備

第三 目 實驗 イ

第四 目 實驗 ロ

第五 目 結 論

第二章  「ピク リン」酸 ノ皮膚深達作 用 ニ關 ス

ル實驗

第 一節  實驗 ノ 目的

第二節  實驗準備

第三節  實驗 第一

第一項  實驗方法竝 ニ次 第

第二項  實驗結果

第四節  實驗 第二

第一項  實驗方法竝 ニ次 第

第二項  實驗結果

第五節  結 論

第三 章  「ピク リン」酸 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟 作

用 ニ關 ス ル實驗

第一節  實 驗 ノ目的

第二 節  實驗 第一  腹腔内 ヘノ消毒藥注射

ニヨ ル實 驗

第 一項 序 説竝 ニ實驗準備

第二項  實 驗方法竝 ニ次 第

第三項  實驗結 果

第 四項  結 論

第三節  實 驗 第二  腸管係蹄 ヘノ消毒藥塗

布 ニヨル實驗

第 一項  序 説

第 二項  實驗 方法竝 ニ次 第

第三項  實驗 結果

第四項  結 論

第四節  總括的決論

第 四章  「ピクリン」酸 中毒 ト皮膚消毒藥 トシ

テ用ヰ ラ レタ ル場 合 ニ於ケ ル 「ピク

リン」酸 ノ吸收 ニ就 テ竝 ニ 「ビクリ

ン」酸 ノ毒 性 ハ皮 膚消毒藥 トシテノ

價値 ヲ減 少 ス ルコ トナ キヤ

第一節 緒 論

第二節  「ピグリン」酸 ノ醫 冶的 用途 ニ關 ス

ル歴 史的叙述竝 ニ中毒 ニ關 ス ル文

獻及中毒症状叙説

第三節  「ピクリン」酸 ノ皮 膚消毒藥 トシテ

用 井 ラ レタ ガ場合 ニ於ケ ル中毒例

ノ有無 ニ就 テ

第四節  結 論

第五章  「ピク リン」酸 ニ因 スル皮膚及 衣類 ノ

黄染斑除去 ニ就 テ

第 四 編  皮 膚 消 毒 藥 ト シ テ ノ 五%

「 ビ ク リ ン」酸 「ア ル コ ホ ル 」

ノ 臨 牀 的 應 用 竝 ニ 知 見

第一章  五%「 ビク リン」酸「ア ルヨホル」ヲ以

テス ル皮膚 消毒法 ニ就 テ

第 一節  ヂプ ソン氏消毒 法

第二 節 余 ノ五%「 ピク リン」酸 「ア ルコホ

ル」ヲ以 テス ル皮膚 消毒 法

第一項  其 ノ一  尋常 消毒法

第二項  其 ノ二 急 速消毒法

第二 章 五%「 ピク リン」酸「ア ルコホ ル」ヲ以

テ スル皮 膚消毒法 ノ臨牀 的經驗

第三 章  論

第 五 編  皮 膚 消 毒 藥 ト シ テ ノ 五%

「ピ ク リ ン」酸 「ア ル コ ホ ル 」

竝 ニ 一 ○%沃 度 丁 幾 ノ優 劣

比 較

第一章  沃度丁 幾 ノ皮 膚消毒藥 トシテノ長所

竝 ニ短 所

第一節  グ ロッシッヒ氏法 ニ就 テ

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第二節  グ ロッシッヒ氏 法 ノ長 所

第三節  グ ロッシッヒ氏 法ノ短 所

第 二章  五%「 ピク リン」酸「ア ルコホ ル」ノ皮

膚 消毒藥 トシテノ長所竝 ニ短所

第一節 五%「 ピク リン」酸「ア ルコホ ル」

ノ皮 膚消毒藥 トシテノ長所

第二卸 五%「 ビク リン」酸「ア ルコホル」

ノ皮膚消毒藥 トシテノ短 所

第三章  理想的皮膚消毒藥 トシテ具備 ス可 キ

條 件

第四章  グロッシッヒ氏 皮 膚 消 毒 法竝 ニ五%

「ピクサン」酸「ア ルコ ホル」消毒法 ノ

優劣 ニ就 テ

第 一節  沃度丁幾消毒 法 ノ五%「 ピク リン」

酸「ア ルコ ホ ル」消毒法 ニ對 ス ル長

第二節  五%「 ビクリン」酸「アルコホ ル」消

毒法 ノ沃 度丁幾消毒法 ニ對 スル長

第五章  結 論

第 六 編  總 括

引 用 書 目

第 一 編  緒 論

第 一 章  文 獻

第 一節  「ピク リ ン」酸 ノ皮膚 消 毒藥 トシテノ用 途 ニ關 スル

歴 史 的觀 察

抑 モ「ビク リン」酸 ノ皮膚 消 毒藥 トシ テノ使 用 ハ之 ヲ文 獻 ニ徴 スル ニナイ フォ

ングF. G. Nifong (1911)ヲ 以 ク嚆 矢 トス,尋 デ ミッチヱルO. W. H. Mittchell (1912),

フ ォ ンタ ナA. Fontana (1912)ニ 依 リテ多 數 使 用 例 ノ結果 報 告 ヲ見 タ リシガ,

ミッチヱルハ其 ノ實 驗 的研 究竝 ニ臨 牀 的經 驗 ヨ リ,ナ イ フォング及 ビフ オ ンタ ナ ノ

兩 氏ハ其 ノ臨牀 的 經驗 ヨ リシタ,「 ビク リン」酸 水飽 和液 及 ピー%「 ビク リ ン」酸

「アル コホ ル」溶 液 ノ皮膚 消 毒藥 トシテ有效 ニシテ且 ツ確 實 ナル コ トヲ賞 揚 シ,

「ピク リ ン」酸 ハ從 來用 井 ラ レタル皮 膚消 毒藥 中 ニ於 テ優 秀 ナル地 位 ヲ占 ムル ニ

足 ル モ ノニ シ テ,蓋 シ此 ハ「ピク リン」酸 ノ強 キ殺 菌 力 ト其 ノ大 ナル滲 透 力 トニ

基 因 スル モ ノ ナリ ト言 ヘ リ.而 シテ 「ピク リ ン」酸 ハ沃度 丁幾 ニ比 シ著 シク廉

價 ナ リ ト附 言 セ リ.

第 二節  歐 洲 大戦 中 ニ於 ケル「ピク リ ン」酸 ノ皮膚 消 毒藥 ト

シ ラノ使 用 ニ就 テ

ニュー ヨー ク病 院 第 一外 科 部 長 タル ヂ プ ソ ンCharles L, Gibson (1919)ノ 報 告

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ニ ヨ レバ,氏 ハ1908年 以來皮 膚 ノ消 毒 ニ際 シグ ロッシッヒ氏 法 ヲ使 用 シタ リシ

モ,種 々 ナル 場 合 ニ於 テ沃度 ニ因 スル甚 ダ不快 ナル腐 蝕 性結 果 ヲ生 來 スル ヲ經

驗 シ,一 時 ハ沃度 丁幾 ノ使 用 ヲ放棄 スル ノ止 ムナ キ ニ至 リシガ,往 時 ノ消毒 法

ヘ ノ歸 還 ノ結 果 ハ兩 者 ノ對 照 ニ ヨ リテ失 望 ニ歸 セ シヲ以 テ,再 ビ手術 ノ終 局 ニへ

於 テ「アル コホル」ヲ以 テ沃度 ヲ彿除 スル テフ注 意 ノ下 ニ沃度丁 幾 ル使 用 ヲ開始

セ リ.氏 ガ修 正 ハ概 ネ良 好 ニ シテ沃度 ニ因 スル腐 蝕性結 果 ノ減 少 ヲ生 來 セル モ,

尚 且 ツ往 々ニ シテ如 上 ノ惡 結果 ヲ惹 起 セ シ場 合 ニ遭遇 セ シヲ以 テ,爾 來長期 間

之 ガ適 當 ナル代用 藥 ノ物 色 ニ勉 メツ ツア リキ.

然 ル ニ過般 ノ歐 洲大戰 ニ於 テ, 1917年 氏 ハ某英 國 野戦 病 院 ニ屯 セ シ コ トア リ

シガ,其 ノ際 氏 ハ英 國軍 隊 ニ於 テ皮 膚 ノ消毒 ニ當 リ,沃 度 丁幾 ノ代 用藥 トシテ

五%「 ピ ク リ ン」酸「アル コホル」溶 液 ヲ使 用 シ,嘗 テ手術 創 ノ傳染 ヲ見 タル コ ト

ナク,手 術 創 ハ何 レモ完 全 ナル 一次 的癒 合 ヲ營 ミ,加 之,沃 度 丁 幾使 用 ノ際 ニ

於 ケル ガ如 キ何 等皮 膚 ニ對 スル刺 戟 作用 ヲ生 來 セル 一例 ヲモ經 驗 セザ リ シヲ以

テ,歸 來氏 ハ 自 己 ノ臨 牀 ニ於 テ之 ガ使用 ヲ試 ミ,約 二年 間數 百例 ニ就 キテ之 ガ

應 用 ヲ施 行 セル ガ,使 用結 果 ハ甚 ダ良好 ニ シテ全 例 ニ於 テ極 メテ輕度 ナル 皮 膚

刺 戟 ノ徴 ス ラナ ク,加 之,何 等 不快 ノ形跡 ヲモ生 來 セル コ トナカ リキ.茲 ニ於

テカ氏 ハ斷 言 シテ日 ク五%「 ピク リン」酸 「アル コホ ル」ヲ以 テスル皮 膚 ノ消 毒

法 ハ當 然 グ ロッシッヒ氏 法 ニ優 越 ヲ以 テ代用 セ ラ レザ ル可 カラズ,何 ン トナ レバ

「ピク リ ン」酸 ハ沃 度 丁幾 ノ長 所 ノ總 ヲ具 備 シ,且 ツ沃度 丁幾 ノ缺點 ルー ツヲモ

所持 セズ,加 之,沃 度 丁幾 ニ比 シ遙 ニ廉 價 ナ ルガ故 ナ リ ト.

第 二 章  余 ル本研 究 ヲ企 テ タル 所 以

然 リ,我 ガ京 都 帝國 大學 醫學 部 外科教 室 ニ於 テモ,グ ロッシッヒ氏法發 表後 間

モ ナク1908年12月2日,結 核性 脊髄 炎 ヲ病 メル患 者 ノ手術 野 ノ皮 膚 ノ消 毒 竝

ニ同 時 ニ手術 者 ノ手 ノ皮 膚 ノ消 毒 ニ沃度 丁幾 ヲ應 用 セ シ ヲ嚆矢 トシテ,其 ノ後

幾 多 ノ手術 例 ニ就 キ テ之 ガ應用 ヲ見 タ リ シガ,使 用結 果 ハヂ プ ソ ンノ提 言 ニ於

ケルガ如 ク嫌 惡 ス可 キ皮膚 刺 戟性 状 ル發揮 ア リ シヲ以 テ,之 ガ發現 ヲ防 止 ス可

ク種 々 ナル變 改 法 ヲ試 ミタ リ シモ,尚 且 ツ往 々 ニ シテ皮 膚 ニ對 スル刺 戟 作用 ヲ

發 現 シ,吾 人 ヲ シテ遺 憾 ヲ感 ゼ シメタ ル コ ト多 ク,ヨ リ完全 ナル皮膚 消 毒 法 ノ換

言 ス レバ理 想的皮 膚 消毒 法 ノ發 見 セ ラルル ヲ翹 望 スル ヤニ甚ダ切 ナル モノ ア リ.

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茲 ニ於 テカ余 ハ果 シテ前記諸報告 ニ見ルガ如 ク,「 ビク リン」酸「アル コホル」

溶液ノ皮膚消毒藥 トシテ臨牀上應用 ニ於 テ優 秀 ナル結 果ヲ生來 シ,且 ツ吾人 ガ

目下達成 シ得ル皮膚 ノ消毒程度 ニ於 テ,從來最 モ優秀 ナ リト認 メラ レタルグ ロッ

シッヒ氏法 ニ優 ル所 ノ者 アラバ,其 ノ實際醫學上 ニ齎ス貢獻 ノ蓋 シ鮮少 ニ非 ラザ

ル ヲ惟 ヒ,果 シテヂプ ソンノ提言 ノ眞實 ナルヤ否 ヤヲ検 シ,加 之,如 上 ノ 「ビ

ク リン」酸 ノ皮膚消毒藥 トシテノ應用 ノ未 ダー ツノ完全 ナル價 値批判 ニ關 スル

實驗的研究 ヲ根 據 トセザル ヲ以 テ,先 ヅ,之 ガ精密 ナル試驗管 内竝 ニ臨牀的殺

菌力 ニ關スル實驗 ヲ企 テ,尋 デ,之 ガ臨牀 上應用 ノ效 果如 何 ヲ決定 シ,併 テ沃

度丁幾 トノ優劣批判 ニ及 バ ント欲 ス.

第 二 編  「ピク リン」酸 ノ化學的性状殊 ニ

其 ノ殺菌力 ニ關スル考察

飜 ツテ惟 フニ「ピク リ ン」酸 ハ,光 澤 アル黄 色 小葉 状 或 ハ鍼 状 ノ結 晶 ニ シテ,

マー シヤ ンMarchandニ 據 レバ 氏 十五 度 ニ於 テ八 十六 分 ノ水 ニ溶 解 シテ強 キ

黄 色 ヲ呈 シ,烈 シキ苦 味 ア リ,酸 性 ニ反 應 シ,毒 性 ヲ有 ス.沸 騰 セル水 竝 ニ 「ア

ル コホル」(1:9)及 ビ「ヱー テル」(1:44)ニ ハ容 易 ニ溶解 ス.攝 氏百 二十 二 度

五 分 ニ於 テ熔融 シ,注 意深 キ加 温 ニ際 シテ昇 華 シ,急 速 ナル加 熱 ニ依 リテ爆 發

ス.而 シテ「ピク リ ン」酸 溶液 ハ動 物 性起 原 ノ物 質,例 之,羊 毛,絹 糸,皮 膚 等

ヲ直 接 ニ持 績 的 ニ黄染 シ,(之 レ嘗 テ「ピク リ ン」酸 ノ染 料 トシテ用 井 ラ レタル コ

トアル所 以 ナ リ)植 物 性物 質,例 之,綿 糸,紙 等 ヲ染 色 セズ.強 キー鹽基 性 酸

ニ シテ其 ル鹽 即 チ「ピク ラー ト」ハ總 テ良 ク結 晶 ス.

「ピク リ ン」酸(C6H2(NO2)3OH)ハ 石 炭 酸(C6H5OH)ノ 分 子中三 箇 ノ 「H」 ノ

「ニ トロ」属 ニ依 リラ換 置 セ ラ レタル モ ノ ニ シテ,由 來石炭 酸 ニ比 シ著 シク強 大

ナル殺 菌力 ヲ有 スル モ ノナ リ.蓋 シ此 ハ成 書 ニ明 ナル ガ如 ク石炭 酸 ノ消 毒 力 ハ

其 ノ 「ケル ンワッサー ス トップヱ」ニ對 シテ,「 ハ ロゲ ン」基 或 ハ「アル キー ル」屬 ノ

侵 入 スル ニ依 リテ昇 騰 シ,亦 「ニ トロ」屬 ノ侵 入 ニ ヨ リテ其 ノ著 シキ増 進 ヲ見 ル

モ ノ ナル ガ故 ニ シテ,此 レ黄 色「ニ トロ」染 料 ノ固 有 ナル二作 用 ハ一 ツハ其 ノ芳

香 核中 ニ於 ケル「ニ トロ」屬 ノ作 用 ト,一 ツハ其 ノ基 礎 ヲ構 成 セル化 合 物,例 之,

石炭 酸 ノ作 用 トニ因 スル モ ノ ナ リ ト謂 ヘル ニ徴 シ瞭 カ ナル コ トナ リ トス.而 シ

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テ茲 ニ留 意 ス可 キハ石炭 酸 ハ「アル キー ル」基 ヲ收 容 セル場 合 ニ反 シ,「 ニ トロ」

屬 ヲ收 容 セル際 ニ於 テハ,著 シク其 ノ毒 性 ヲ昇騰 スル一 事 ニ シテ,此 レ畢 寛「ニ

トロ」屬 自己 ノ毒 性 作用 ニ基 因 スル モ ノ ナ リ.

由 是 觀 此,「ビ ク リ ン]酸 即 チ[ト ゥリイ ニ ト ロ フ ヱノ ー ル](Trinitrophenol 〓)

ハ ー ツノ強 カ ナル 消 毒藥 タ ル ト共 ニ,亦 有力 ナル毒 藥 ナルガ,之 ヲ成 書 竝 ニ文

獻 ニ徴 スル ニ從 來多 ク内 用 ニ向 ヒテハ其 ノ赤 血 球破 壞 作用,痙 攣 惹 起,腎 臟 障

碍 竝 ニ呼吸 中樞 麻痺 作用 ノ爲 メニ用 井 ラ レザ リシモ,外 用 ニ向 ヒテハ殆 ン ド其

ノ吸收 ニ ヨル中毒 作 用 ヲ見 ズ加 之夫 ガ鎭 痛作 用 ノ有 ル ニ ヨ リテ良 ク應 用 セ ラ レ

タ ル モ ノノ如 ク,蓋 シ之 ニヨ リテ「ビク リ ン」酸 ノ皮 膚 消毒 藥 トシテノ使用 ノ亦

故 ナキ ニ非 ラザル ヲ察 知 シ得 可 シ.

第 三 編  實 驗

第 一 章  「ピ ク リン」酸 ノ殺 菌力 ニ關 スル實 驗

第 一節  「ピク リ ン」酸 ノ試驗 管 内 ニ於 ケル殺 菌 力 ニ關 スル實驗

第 一項  文 獻

曩 ニエー レ ンフ リー ドEhrenfried (19911),ミ ッチヱルO. W. H. Mitchell (1911)

タ イ ドイH. L. Tidy (1915)等 ニ依 リテ創傷 消 毒藥 トシテノ 「ビク リ ン」酸 水 溶

液 ノ窒 扶斯 菌,黄 金 色 葡 萄 状 球 菌 及 ビ緑膿 菌 ニ對 スル殺 菌 力實 驗 ヲ見,次 デ

フ イ ラーWheeler (1921)ニ 依 リテ九五%「 アル コホ ル」ヲ溶媒 トセル五%「 ビク

リ ン」酸 「アル コホル」ル消 毒 力實驗 ヲ見 タ リ シモ,何 レモ其 ノ操 作 ニ於 ラ「ビク

リン」酸 ヲ中 和 シ以 テ其 ノ培 地 ニ於 ケル菌 發育 障碍 作用 ヲ防 止 スル ノ處 置 ヲ施

ス ナ ク,從 ツ テ其 ノ實驗 方法 ニ於 テ未 ダ完壁 ト謂 フ可 カ ラズ,此 ヲ以 テ余 ハ先

ヅ「ピク リ ン」酸 水溶 液竝 ニ「アル コホ ル」溶液 ノ兩 者 ニ就 キテ種 々 ナル濃 度 ヲ有

ス ル溶 液 ヲ調 製 シテ之 ガ殺 菌 力 ヲ檢 定 シ,尋 デ沃度 丁幾 トノ殺 菌 力 比較 考慮 ノ

下 ニ之 ガ臨 牀 上應 用 シ得 可 シ ト推 スル濃 度 ヲ檢 出 セ ンコ トヲ企 圖 セ リ.而 シテ

果 シ テ石炭 酸 ノ消 毒 力 ハ成 書 ニ記載 セルガ如 ク,其 ノ 「ベ ンツオー ル」核 中 ニ

「ニ トロ」屬 ノ侵 入 スル ニ ヨ リテ増 強 スル モル ナル ヤ否 ヤ ヲ定 メ ン ト欲 セ リ.

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第 二項  實 驗 準 備

第一目  實驗 ニ供 シタル消毒藥竝 ニ中和藥

先 ヅ「ビク リン」酸(メ ル ク製)ノ 水 溶 液即 チ「ピ ク リ ン」酸 水飽 和 液,一%水 溶

液,○ ・五%水 溶 液 及 ビ○・二%水 溶液 ノ四種 竝 ニ「ピク リ ン」酸 「アル コホル」溶

液 即 チ 八%,五%,四%,三%,二%,一%,○ ・五%及 ビ○・二%ノ 八 溶 液 ヲ調

製 シ,對 照 トシテ一○%沃 度丁幾,一%石 炭酸 水溶 液,八 五%「 アル コホル」及

ビ六 〇%「 アル コホル」ノ四種 ヲ用 〓タ リ.

而 シ テ各溶 液 ハ先 ヅ攝 氏十五 度 ニ於 テ其 ル幹 液Stammlosungヲ 調 製 シ,尋

デ定規 液 作製 ノ場 合 ト同様 ナル操 作 ヲ以 ラ順 次 所要 ノ稀 釋 液 ヲ調 製 セ リ.而 シ

テ水 溶液 ハ蒸餾 水 ヲ以 テ「ビク リン」酸「アル コホ ル」深 液 ハ フイ ラー ノ用 井タ ル

九五%「 アル コホル」 ノ其 ル殺 菌 力 ニ於 テ八 五%「 アル コホル」ヨ リヨ リ小 ニ シ

テ且 ツ其 ノ價 高値 ナル ヲ惟 ヒ之 ヲ溶 媒 ニ採 用 ヒズ シラ後 者 ヲ以 テ セリ,而 シテ

「アル コホル」ヲ除 ク ノ外 ハ何 レモ皆 重量百分率Gewichtsprozentヲ 用 井 ヌ.

各消 毒藥 ノ中和 藥 トシ テ夫 々「ビク リン」酸 ニハ 一%滅 菌鹽 酸「モ ル ヒネ」水 溶

液 ヲ,沃 度丁 幾 ニハ一%滅 菌 次亜硫 酸曹 達 水溶液 ヲ,石 炭 酸 ニハ○・〇五%苛 性

曹 達 水溶液 ヲ用 井タ リ.

第 二 目  實驗 ニ供 シタル細 菌

供 試 菌種 ハ化膿 性葡 萄状 球 菌.化 膿性 連鎖 状 球菌.普 通 大腸 菌及 ビ緑膿 菌 ノ

四種 ニ シテ,何 レモ新 シク膿 汁 ヨ リ採 取 シ,純 粋培 養 ヲ行 ヒ,之 ガ毒 力 ヲ上 昇

且 ツ一定 セ ンガ爲 メ ニ幼 若天 竺 鼠 ニ就 キ ラ動物 通 過Tierpassageヲ 行 フ事 三度,

最 後 ノ試 獸 ハ之 ヲ接 種 後四 十八 時間 ニ シラ撲殺 シ,之 ヨ リ斜面 寒天 上 ニ純粹 培

養 ヲ五 日間 行 ヒ,更 ニ其 ノ都 度 行 ヘル新鮮 培 養 ヲ以 テ殺 菌 力 ニ關 スル實驗 ヲ遂

行 セ リ.

第 三 目  實驗 ニ供 シタ ル培 地

寒天 培養 基 二 〇 ・四%ノ 比 ヲ以 テ葡 萄 糖 ヲ注加 シテ試驗 ニ供 シタ ル細 菌 ノ色

素 ノ産 出 ヲ檢 スル ニ便 ジ,且 ツ培 養 基製 造 ニ際 シテハ材 料殊 ニ牛 肉 ノ選 澤 ニ當

リ毎 常一定 ニ シ テ同 一 ナル見 地 ヲ以 テ之 ニ從事 シ,培 養基 ノ集 成 ノ不 同 ニ因 ス

ル菌 發育 試驗 ニ於 ケル之 ガ影響 ヲ除 去 シ,併 セ テ作 製 セ ラ レタル各培 養 基 ニ就

キラ菌 發育 ニ關 スル對 照 試驗 ヲ行 ヒ之 ガ變 動 ノ防 止 ニ努 力 セ リ.

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第 三項  實 驗 方 法

第 一 目  余 ガ 考 按

實 驗 ニハ短 時 間 ニ於 ケル各 消毒 藥 ノ殺 菌 力比較 ノ操 作 ニ便 ゼ ンガ爲 メ所 謂硝

子 板 方 法(Glasplattenmethode)ヲ 以 テヌ.即 チ余 ハ此 ノ目的 ニ向 ヒテ豫 メ一粍

ノ厚 サ ヲ有 スル物 體 硝 子 ヲ以 テ一平 方糎 ル廣 サヲ有 セル小硝 子板 ヲ作 製 シ,之

ニ コル ネット鑷 子 ヲ以 テ 保持 スル ニ足 ル餘 地 ヲ存 セル物 ヲ考 按 シ 實驗 ニ充 テタ

リ.

而 シテ各 實驗 ハ何 レモ攝 氏 二十 度 ノ室温 ニ テ行 ヒ,其 ノ都 度試 驗 ス可 キ消 毒

藥 ハ悉 ク之 ヲ同時 ニ用 井,同 様 ナル條 件下 ニ作用 セ シメテ可 及 的正 確 ナル比較

殺 菌價 ヲ得 ンコ トニ努 力 セ リ.

第 二同  實 驗 次 第

(一)豫 メ攝氏三十七度 ニ於 テ二十時間孵卵器中 ニテ斜面寒天上 ニ培 養セル

試驗菌 ノー 白金耳(直 径 四粍)ヲ 採 リ,之 ヲ滅 菌生理的食鹽 水一立方糎 ニ投 ジテ

浮游液 ヲ作成 シ,尋 デ之 ヲ薄 キ滅 菌濾過紙 ヲ以 テ濾過 ス.

(二)而 シテ斯 ク シテ得 タル浮游液 ヨリ更 ニ一 白金耳 ヲ採 リテ之 ヲ余 ガ考按

ニ係 ル無菌小硝 子板 上 ニ薄ク平等 ニ塗抹 シ,次 デ日光 ノ直射竝ニ塵埃 ニヨル汚

穢 ヲ避 ケテ乾燥 セシム(約 五分間).

(三)乾 燥後滅菌 セル 「ピベット」ヲ以 テ豫 メ攝氏十五 度 ニ保 テル各消毒藥 ヲ

菌塗抹面上 ニ滴下 シ(約○・三糎),所 定ノ時間作用 セシメタル後,「 アル コホル」

ヲ除 クノ外ハ各 々其 ノ匹敵 セル滅菌中和藥 ヲ以 テ中和 シ,以 テ遺殘 セル各消毒

藥 ノ培養基移行 ニ因スル菌發育制止作用 ヲ除去 スルニ努 メ,次 デ滅菌水 ヲ以 テ

短 時間洗 ヒ

(四)豫 メ攝 氏四十五度 ニ溶融 セ 弘メタル寒天培養器(十 竰)中 ニ小硝子板 ヲ

投 ジ,愼 重ニ振蘯 セル後,培 養基 ヲ硝 子板 ト共 ニペー トリー氏「シヤー レ」中 ニ

注 ギ,其 ノ凝固 スル ヲ待 チテ孵 竈 ニ納 メ

(五)攝 氏三十七度 ニ於 テ二十四時間後,四 十八時間後竝 ニ八 日後ニ於 ケル

聚落發生 ノ有無 ヲ檢 セリ.

(六)而 シラ實驗 毎ニ對照 トシテ沃度丁幾,八 五%「 アル コホル」,六○%「 ア

ル コホル」及 ビ一%石 炭酸水溶液 ヲ用 井 テ之 ガ殺菌力 ヲ比較 シ,且 ツ供試菌 ノ

浮游液 ノ一 白金耳 ヲ小硝子板上 ニ塗抹乾燥 シテ消毒藥 ヲ作用 セシメズ シテ平板

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培 養 ヲ行 ヒ,以 テ菌發育 ニ對 スル對照 ト爲 シ,及 ビ何等 菌 ヲ塗 抹 セザ ル小硝 子

板 ヲ實驗 操 作 ニ要 スル時 間中空 中 ニ曝 露 セ シメ テ「ル フ トカイ メ」(Luftkeime)

ニ依 ル小 硝 子板 ノ傳 染 度 ヲ檢 セ リ.而 シテ實 驗操 作ハ凡 テ無 菌 的 ナル ハ勿 論,

實 驗 ニ要 セル洗 滌 水,硝 子製 器具,コ ル ネット鑷 子等 ハ豫 メ皆 完全 ニ滅 菌 シ且 ツ

屡 々ナル 對照 ニ ヨ リテ其 ノ無 菌 ナル ヲ確 メタ リヤ必 セ リ.

第 四項  實 驗 結 果

第 一 目  黄 金 色化膿 性 葡萄 状 球菌 ヲ以 テセル實驗

第 一表 ニ表 示 セル ガ如 ク「ピク リ ン」酸 水溶液 ハ何 レモ黄 金色 化膿 性葡萄 状 球

菌 ヲ五 分 間 以 内 ニ滅 殺 ス,即 チ○ ・二%溶 液 ハ五分 間,○ ・五%溶 液 ハ二分 間,

一%溶 液 及 ビ飽 和液 ハ十五 秒 間 ニ於 テ完 全 ニ殺 菌 ス.

「ビク リン」酸「アル コホル」溶 液 ハ各濃 度 ヲ通 ジテ黄 金色 化膿 性 葡 萄 状菌 ヲ一

分 間 珍内 ニ テ滅殺 ス.即 ヂ○ ・二%,〇 ・五%,一%,二%,三%及 ビ四%ノ 各

溶 液 ハ何 レモ一 分 間 以内 ニ於 テ之 ヲ殺 シ,五%竝 ニ八%ノ 兩 液 ハ十五 秒 間 以 内

ニ テ殺 菌 ス.而 シテ今少 シク之 ヲ詳細 ニ檢 スル ニ最 短試 驗 時間 タル五 秒 間 作用

セ シメタル結 果 ニ就 テ見 レバ,「 ピク リン」酸 「アル コホル」溶 液 中八%,五%,

四%ノ 各溶 液 ハ何 レモ其 ノ聚落 發 生ノ有無(±)ナ レ共 實 驗數 三十 囘 ヨ リ計 出 セ

ル 百分率 ヲ以 テ見 レバ其 ノ陰 性 ナル場 合 多 ク且 ツ其 ノ聚 落 發生 數 亦 多 ク十 箇 ヲ

出 デズ.三%及 ビ二%ノ 兩者 ニ於 テハ其 ノ結 果 同 ジク(±)ニ シ テ就 中陽性 ナル

場 合 多 ケ レ共 前着 ハ其 ノ聚落 數 十箇 ヲ出 デズ,後 者 ハ凡 テ百箇 ヲ超 エザル ヲ見

タ リ.而 シテ一%,○ ・五%及 ビ○ ・二%ノ 各 溶 液 ニ於 テハ何 レモ其 ノ結 果 陽性

ナ レ共聚 落 發生 數亦 百 箇 ヲ超 エ ズ,以 テ如何 ニ其 ル殺 菌 力 ノ強 大 ナル カ ヲ知 ル

ヲ得可 シ.

次 デ 「ビク リ ン」 酸 水溶 液 ニ就 テ之 ヲ見 ルニ,飽 和液 竝 ニ一%溶 液 ニ於 テハ

(±)ニ シテ就 中陽性 ナル場 合多 ケ レ共 聚落 發 生 數 ニ至 リテハ何 レモ百 箇 ヲ出 デ

ズ,○ ・五%,○ ・二%ノ 兩 液 ニ於 テハ同 ジク陽性 ナ レ共,其 ノ聚 落 發生 數 百箇

内外 ニ シ テ,亦 其 ノ殺 菌 力 ノ強 大 ナル ヲ見 ル.而 シ テ對 照 トシテ何 等消 毒 藥 ヲ

作 用 セ シメザ ル モノ ニ於 テハ常 ニ無 數 ノ菌 聚落 ヲ發生 セル ヲ見 タ リ.

由是 觀 此,「 ピク リ ン」酸「アル コホル」溶 液 竝 ニ「ビク リン」酸 水 溶液 ノ兩 者 ハ

其 ノ殺 菌 力極 メテ強 大 ナ リ ト謂 フヲ得 可 シ.

而 シテ「ピク リン」酸「アル コホル」溶 液 竝 ニ「ビク リ ン」酸水溶 液 ノ兩 者 ニ就 キ

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テ其 ル比 較殺 菌 力 ヲ見 ル ニ,○ ・二%竝 ニ〇 ・五%ノ 各溶 液 ニ於 テハ 「アル コホ

ル」溶液 ハ三 十 秒 間 ニ シテ(±),一 分 間 ニ シテ陰 性 ナル ニ反 シ,水 溶液 ニ於 テ

ハ前者 ハ二分 間 ニ シ テ(±) ,五 分 間 ニ シテ陰 性,後 者 ハ一分 間 ニ シ テ(±),二

分 間 ニ シテ何 等 聚落 ノ發 生 ヲ見 ズ,水 溶液 ノ其 ノ殺 菌力 ニ於 テ著 シク 「アル コ

ホ ル」溶 液 ニ劣 レル モノ ア リ.此 レ蓋 シ 「アル コホ ル」溶 液 ニ於 テハ其 ノ溶 媒 タ

ル八五%「 アル コホ ル」ノ細菌 ニ對 スル可 ナ リ強 大 ナル殺 菌 作用 ノ共 同 作用 アル

ガ故 ニ恰 モ昇汞 ノ殺 菌 作用 ル「アル コホ ル」ノ附 加 スル ニ ヨ リテ増 強 スル ガ如 ク

「ピク リン」酸 ニ於 テモ「アル コホ ル」ノ附 加 ニヨ リテ其 ノ殺 菌 作用 ノ自乘 的増 強

ヲ見 タル結 果 ニ外 ナカ ル可 シ.是 ヲ以 テ此 ヲ觀 ルモ亦 一面 消毒 藥 ノ消 毒 力發揮

ニ對 シ,其 ノ溶媒 ノ適 否 ル如 何 ニ其 ノ消 毒結 果 ニ影響 ヲ及 ボス モ ノナル ヤ ヲ知

ル ヲ得可 ク,亦 「アル コボル」ノ消 毒 藥 ノ溶媒 トシテ優 秀 ナル貢 獻 ヲナ ス コ トア

ル ヲ知 ル可 シ.

而 シテ茲 ニ興味 アル事 實 ハ,前 述 セル ガ如 ク「ピク リン」酸 ル水溶 液 ハ概 シテ

同濃 度 ノ「アル コホ ル」溶 液 ヨ リモ其 ノ殺 菌 カ ニ於 テ劣 レル モ ノナ レ共,只 「ピ

ク リ ン」 酸 水飽 和液 及 ビ殆 ンド之 ニ近 キ濃 度 ヲ有 セル一%「 ビク リ ン」酸 水溶 液

ノ兩者 ニ於 テハ,却 テ同 濃度 ノ「アル コホ ル」溶 液 ニ比 シ著 シク強 大 ナル殺 菌 力

ヲ有 スル モ ノ ニ シテ其 ノ強 度 ハ殆 ン ド五%「 ピ ク リ ン」酸 「アル コホル」ノ ソ レニ

一致 ス.蓋 シ此 ハ恐 ラク其 ノ飽 和液 ナル ノ故 ニ結 晶性 物 質 ノ一 ツノ性 状 トシテ

其 ノ溶 液 ヲ形成 スル 時,電 氣 分解 ヲ生 來 シテ多量 ノ帶電 原 子(Ionen)ヲ 生 ジ,

其 ノ結 果 他 ノ稀 薄 ナル水溶 液 ニ比 シテ著 シク其 ノ細 菌 ニ對 スル滲 透速 度 ヲ増 強

シ,從 ツテ「ビク リ ン」酸 ノ細 菌體 内滲透 量 ノ増 大 ヲ生 來 セル結 果斯 ク ノ如 キ強

大 ナル殺 菌 力 ヲ發 現 セ ルモノ ニ シテ,從 ツテ同濃 度 ノ「アル コホ ル」溶 液 ニ比 シ

甚 ダ強 大 ナル殺 菌 力 ヲ發 揮 セル モノ ナル可 シ.蓋 シ「ビク リン」酸 溶 液 ノ彼 ノ強

カ ナル黄 色調 ハ「ニ トロ」屬 ノ帶電 セル結 果 ナル ガ故 ナ リ.尚 此 ノ事 實 ニ就 キ テ

ハ別 ニ稿 ヲ起 シテ詳 論 スル所 アル可 シ.

次 ニ對 照 藥 ニ就 テ之 ヲ見 ル ニ,一%石 炭 酸 水溶 液 ハ其 ノ殺 菌 力甚 ダ劣 レル モ

ノ ヽ如 ク,黄 金 色葡 萄状 球 菌 ヲ十五 分 以 内 ニ テ滅 殺 セズ,三 十 分 ニ シテ漸 ク滅

殺 ス.之 ヲ一%「 ピク リ ン」酸 水溶液 ノ一分 間以 内 ニシ ラ滅 菌 シ盡 スニ比 ス レバ

著 シク劣 弱 ナル モ ノ ニ シテ,之 レ畢 竟石炭 酸 ハ其 ノ「ペ ン ツォー ル」核 中 ニ「ニ ト

ロ」 屬 ノ侵 入 ス ル ニ ヨ リテ著 シク共 ノ消 毒 力 ヲ増 強 スル モ ノ ナ リテフ事 實 ヲ證

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スル モ ノ ナ リ.

「ビク リ ン」酸「アル コホル」溶 液 ノ溶媒 タル八五%「 アル コホル」ニ於 テハ五 分

間 ニ シテ(±)ニ シ テ尚百 箇 ニ及 ブ聚 落 ヲ發生 シ,十 分 間 ニ シ テ漸 ク陰性 ノ結 果

ヲ得 タ リ.故 ニ是 ニ由 ツク此 ヲ推 セバ「ピク リ ン」酸「アル コホル」ノ強 大 ナル殺

菌 作 用 ハ其 ノ溶 媒 タル八 五%「 アル コホル」ノ殺 菌 作用 ニノ ミ歸 ス可 キモ ノニ非

ズ シ テ亦「ピク リン」酸 自己 ノ強 大 ナル殺 菌作用 ニ因 スル モ ノナル コ トヲ知 ル可

シ.

六 〇%「 アル コホ ル」ニ於 テハ八五%「 アル コホル」ニ於 ケル ヨ リモ著 シク殺 菌

力 ヲ増 加 シ,三 十秒 間 ニ シテ聚落 發生陰 性,十 五秒 間 ニ シテ(±)ニ シテ,就 中

陰性 ナル場 合 多 ク,且 ツ聚落 發 生 數十 箇 ヲ超 エズ,八 五%「 アル コホル」ヨ リモ

殺 菌 力著 シク強 大 ニ シテ,「 アル コホル」ノ殺 菌 カ ハ之 ヲ適 度 ニ稀 釋 スル時 ハ著

シク其 ノ細 菌 ニ對 ス ル滲透 作用 ヲ増 加 シ從 ツテ著 シク其 ノ殺 菌 力 ヲ増 ス テフ從

來 ノ知 見 ヲ證 スル モノ ナ リ.

沃度 丁幾 ハ對照藥 中殺 菌 力最 モ強 大 ニ シテ,五 秒 間 ニ シ テ黄 金 色化膿 性 葡 萄

状 球菌 ヲ悉 ク滅 殺 シ,三 秒 間 ニ シテ尚且 ツ多 ク然 リ.故 ニ之 ヲ八%「 ビク リン」酸

「アル コホル」,五%「 ビク リ ン」酸 「アル コホル」及 ビ「ピク リ ン」酸 水飽 和液 ノ三

者 ニ比 ス レバ,其 ノ殺菌 力 ニ於 テ ヨリ大 ナル コ トヲ知 ル ヲ得可 シ.然 リ ト雖 モ

該 三 者 ニ於 テモ其 ノ絶 對殺 菌 力 ヲ以 テ之 ヲ論 ぜバ甚 ダ強 大 ナル殺 菌 力 ヲ有 シ十

秒 間 ニ シテ(±),然 モ聚落 發生陰 性 ナル場 合殆 ンド多 ク,假 令 陽 性 ナル場 合 ト

雖 モ僅 ニ數 箇 ヲ發 生 スル ニ過 ギズ.是 ニ由 ツテ此 ヲ觀 レバ蓋 シ五%「 ビク リ ン」

酸 「アル コホ ル」及 ビ「ピク リ ン」酸水飽 和液 ノ兩 者 ノ嘗 テ皮 膚消 毒 藥 トシナ應 用

セ ラ レ,亦 現 今 同 目的 ニ向 ヒテ應 用 セ ラルル,故 無 キ ニ非 ズ ト謂 フ可 シ.

而 シテ之 ヲ先 人 ノ實驗 ニ徴 スル ニ,詳 言 ス レバ實驗 操 作 ニ當 リ沃度 丁 幾 ノ培

養 基移 行 ニ因 スル菌 發育 障碍 作 用 ヲ防 止 セ ンガ爲 メ,沃 度 ヲ中和 スル コ トニ ヨ

リテ實驗結 果 ニ如 何 ナル影響 ヲ及 ボス ヤ否 ヤ,換 言 ス レバ沃度 ヲ中 和 スル コ ト

ニ ヨ リテ菌 復 活 現 象 ニ如何 ナルレ影響 ヲ及 ボス ヤ否 ヤ ノ問題 ニ關 シ,ク ッチ ヤー

Kutscher (1910)竝 ニ プ リュー ニ ングBruning (1911)及 ビ野 口(1911)竝 ニ尾 崎 良

胤(1912)兩 氏 ノ行 ヘル實驗 結 果 ニ比 ス レバ,余 ノ結 果 ノ甚 ダ シク前 ニ氏 トハ其

ノ趣 ヲ異 ニ シ,後 二 氏 トハ甚 ダ良 ク其 ノ軌 ヲ-ニ セル ヲ認 ム.即 チ前者 ニ ヨ レ

バ沃 度丁幾 ヲ中和 スル事 ニ依 リラ著 シク消 毒結 果 ノ陽性 度 即 チ菌 聚 落 發生數 ノ

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増 加竝 ニ菌滅 殺 ニ要 スル時 間 ノ延 長 ヲ生 來 スル ニ反 シ,後 者 ニ依 レバ中和 ス ル

ト否 トニ ヨ リラ其 ノ間著 シキ差 違 アル ヲ見 ズ ト謂 フ ニ在 リ.

詳 言 ス レバ尾崎 氏 ハ種 々ナル原 産地 ヲ有 スル黄金 色 化膿 性葡 萄状 球菌 ヲ硝 子

球 上 ニ薄 ク且 ツ平 等 ニ塗 抹乾 燥 シ,之 ニ沃度 丁幾 ヲ塗 布 シ,餘 剩 ヲ中 和 スル時

五 秒 間 ニ シテ僅 ニ二,三 ノ聚落 ヲ發 生 シ,十 秒 間 ニ シテ折 々陽性 ナル事 ア リ,三

十 秒 間 ニ シ テ完 ク菌 ヲ滅殺 ス ト云 フ.野 口氏 ノ物 體硝 子 ヲ以 テ セル實驗 ニ ヨ レ

バ,化 膿 菌 ハ一 囘 ノ沃 度 丁幾塗 布 後一分 間 ニ シテ既 ニ乾燥 セル時 之 ヲ中 和 スル

事 ニ依 リテ五 分 ノー ノ細 菌 ノ發 育 ヲ見 タル ニ反 シ,乾 燥 セザ ル時 ハ 中和 セル ト

否 トニ係 ラズ陰 性 ニ シテ,二 分 間 ニ於 テハ全 ク兩 者 共陰 性 ナリ ト云 フ.ブ リュー

ニ ング ニ依 レバ硝子 球 上 ニ塗抹 乾燥 セシメ ラ レタ ル 白色化 膿 性 葡萄 状球 菌 ハ中

和 セザ ル時 ハ十五秒 間乃至 三十 秒 間 ニ シテ滅 殺 セラルル モ,中 和 スル時 ハ一 分

間 ニ シテ陽性,十 分 問 ニ シテ尚 ホ且 ツ陽性 ナル結 果 ヲ生 來 ス ト.余 ハ沃 度丁 幾

ヲ中和 スル時,五 秒 間 ニ シテ全 ク陰性,三 秒 間 ニ シテ偶 々陽 性 ナル ヲ見 タル ガ,

結 果 ハ甚 ダ良 ク尾 崎,野 口兩 氏 ル ソ レ ト相 一致 ス.只 異 ナル處 ハ氏等 ハ實驗 ニ

際 シ菌 ノ浮 游 液 ヲ用 〓 ズ シテ直 ニ菌 自己 ヲ用 井タ ルニ反 シ,余 ハ浮游 液 ヲ用 井

タ ル ニ在 リテ存 ス.從 ツ テ其 ノ實 驗結 果 ニ於 テ余 ノ得 タル所 ノ者 ノ氏等 ノ得 タ

ル所 ノモ ノ ヨ リヨ リ強 力 ナル ハ論 ヲ俟 タズ.

實驗 ニ際 スル「ル フ トカイ メ」ノ影響 ニ就 テ一 言 センニ,余 ハ前述 セルガ 如 ク

實驗 操作 ニ當 リ其 ノ要 セル時間 中實驗 用硝 子板 ヲ室 中 ニ曝 露 セ シメ,尋 デ之 ヲ

培 養基 中 ニ投 ジラ其 ガ聚 落發 生 ノ如 何 ヲ檢 シタル ガ,最 長實驗 時 間 タル一 時 間

ニ於 テモ多 ク何 等 ル影 響 ナク,偶 々二 三 ノ雜 菌 ノ發生 ヲ見 タル ノ ミニ シ テ,之

ニ ヨ リテ何 等著 シキ實 驗結果 ノ成績 ニ對 スル惡影 響 ヲ認 メザ リキ.

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第一

表 

黄金

色化膿

性葡

萄状

球菌

ヲ以

テセル實

驗1 3

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第 二目  其 ノ他 ノ化膿菌 ヲ以 テセル實驗

「ビオチアネウス」菌ハ化膿菌中最 モ抵抗 力弱 ク,八%「 ピク リン」酸 「アル コ

ホル」,五%「 ピク リン」酸 「アル コホル」及 ビ「ビク リン」酸水飽和液 ノ三者何

レモ皆五秒間 ニシテ滅殺 ス.而 シテ普通大腸菌,化 膿性連鎖状球菌ハ其 ノ抵抗

力黄金色葡萄状球菌 ニ相亞 ギ,上 述 ノ三溶液 ニヨリテ何 レモ皆十五秒間以内 ニ

シテ滅殺 セラレタ リ.沃 度丁幾ハ該三菌 ヲ五秒間以内ニ シテ完全 ニ殺戮 ス.白

色葡萄状球菌,機 黄色葡萄状球菌ハ其 ノ抵抗 力黄金色葡萄状球菌 ト全 ク相 一致

ス.

第 三 目  先 人 ノ實 驗結 果 トノ比 較

先 人 ノ實 驗 中採 リテ以 テ比 較 スル ニ足 ル完全 ナル業 績 ノ報 告 アル ナ ケ レ共,

茲 ニ一 言 ヲ要 ス ルハ,フ イ ラー ノ九五%「 アル コホル」ヲ溶 媒 トセル五%「 ビク

リ ン」酸 「アル コホル」 ニ就 キテ行 ヘル石炭 酸 係數 ノ測 定結 果 ニ シテ(Rideal-

Walker-tetニ 據 ル),氏 ニ ヨ レバ五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ハ其 ノ係 數 ○ ・

三五,沃 度 了幾 バ一五 ・五,九 五%「 アル コホル」ハ○ ・一五 ナ リ ト云 フ.是 ヲ以

テ此 ヲ觀 レバ五%「 ビク リン」酸「アル コホル 」ハ其 ノ殺 菌 力 ニ於 テ余 ノ實驗 結 果

ニ反 シ甚 ダ著 シク沃度 丁幾 ニ劣 レル モ ノ有 ル ガ如 キモ,仔 細 ニ觀 察比較 セ ンニ

ハ勿論供 試菌 ノ抵 抗 力及 ビ種類 ノ相 違,培 養 基 ノ適 否 ,培 養 時 間 ノ長短,實 驗

中 ノ温 度 ノ高 下,不 平 等 ナル供 試菌 ノ消 毒藥 ニ對 スル分 割,實 驗 方法 竝 ニ 自 己

ノ缺點 其 ノ他種 々ナル原 因 ニヨ リテ差 違 アル可 キモ,主 ト シテ氏 ハ(一)「 ビク

リ ン」酸 ノ溶 媒 トシテ其 ノ殺 菌 カ ノ八 五%「 アル コホル」 ヨ リモ劣 弱 ナル九 五%

「アル コホ ル」ヲ採 用 セル ト(二)實 驗 操 作 ニ於 テ沃度 及 ビ「ビク リ ン」酸 ヲ中和

シ,以 テ其 ガ培 養 基 移行 ニ因 スル菌發 育障 碍 作用 ヲ防 止 スル ニ勉 メザ リシ等 ノ

缺點 ア リ.從 ツテ其 ノ結 果 ニ於 テ其 ノ得 タル石 炭酸 係 數 ノ兩者 ニ於 テ甚 ダ著 シ

キ差 違 アル ヲ見 タ ル者 ナル可 シ.

第五 項  結 論

敍 上 ノ結 果 ヲ約 言 スル バ

(一)○ ・二%以 上 ノ濃 度 ヲ有 セル「ピク リン」酸 水溶 液 ハ化膿 菌 ヲ五 分間 以内

ニ シテ滅 殺 シ,同 濃 度 ノ「アル コホル」溶 液 ハ 一分 間 以 内 ニ シテ殺 戮 ス.

(二)皮 膚消 毒 藥 トシテ用 ヰ ラ レタル五%「 ビク リ ン」酸 「アル コホ ル」,一%

「ピク リン」酸 「アル コホル」及 ビ「ビク リ ン酸」水飽 和 液 ハ前者 ハ十 五秒 間以 内 ニ

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シテ化膿 菌 ヲ殺 シ,後 二者 即 チ一%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ハ一 分間 以 内 ニ

テ,「 ピク リ ン」酸 水飽 和液 ハ十 五秒 間以 内 ニ テ之 ヲ滅 殺 ス.

(三)「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」溶 液 ハ同濃 度 ノ水 溶液 ニ比 シヨ リ張 キ殺 菌

力 ヲ現 スモ ノ ナ リ.此 レ其 ノ溶 媒 タル八五%「 アル コ ホル」ノ著 シク「ピ ク リン」

酸 自己 ノ殺菌 作用 ヲ幇 助 スル ニ在 リ テ存 ス.

(四)「 ビク リ ン」酸 水飽 和液 ハ概 シテ「ビク リン」酸 水溶液 ノ「ピク リ ン」酸 「ア

ル コ ホル」溶 液 ニ比 シ其 ノ殺 菌 力微 弱 ナル ニ反 シ,却 テ同濃 度 ノ 「ピク リン」酸

「アル コホ ル」溶 液 ヨ リモ其 沙殺菌 力著 シク強 大 ナ リ.

(五)一%「 ピク リ ン」酸 水溶液 ハ化膿 菌 ニ對 シ化學 的 同 種 タル 一%石 炭 酸 水

溶 液 ニ比 シ甚 ダ強 大 ナル殺 菌 カ ヲ有 スル モノ ナ リ.即 チ前者 ノ化 膿 菌 ヲ一分 間

以 内 ニ シ テ滅 殺 スル ニ反 シ後 者 ハ十五分 間 ニ シテ尚 ホ滅 殺 セズ,三 十分 間 ニ シ

テ漸 ク滅殺 セル ヲ認 ム.

(六)八%「 ビク リ ン」酸 「アル コ ホル」,五%「 ピク リ ン」酸「アル コホ ル」竝 ニ

「ビク リ ン」酸 水飽 和液 ハ ,試 驗管 内殺菌 力 ニ於 テ僅 ニ沃 度丁幾 ニ劣 ル所 ア レ共,

其 ノ絶 對殺 菌 カハ甚 ダ強 大 ナル モ ノニシ テ,蓋 シ該 三者 ハ多望 ヲ以 テ臨 牀 上皮

膚 ノ消毒 ニ對 シ應 用 シ得 可 シ ト推 シ得.

而 シテ茲 ニ附 加 セ ン ト欲 スル ハ

(七)八 五%「 アル コホル」ノ殺 菌 力 ハ六 〇%「 アル コホ ル」ノ ソ レヨ リ著 シク

劣 勢 ナル モノ ニ シテ,之 即 チ「アル コホル」ヲ一 定度 マデ稀 釋 スル時,著 シク其

ノ殺 菌 力 ヲ増 加 スル テフ從 來 ノ知 見 ヲ證 スル モル ナ リ.

(八)「 アル コホル」 ハ消毒 藥 ノ溶媒 トシ テ著 シク優 秀 ナル 效果 ヲ擧 グル コ ト

ア リ,此 ハ一 ツニ其 ノ細 菌 ニ對 スル可 ナ リ強 大 ナル殺 菌作 用 ノ共 同 作用 ニヨ リ

テ著 シク其 ノ消 毒 藥 固有 ノ殺 菌 作用 ヲ幇 助 スル ニ ア リ.而 シテ他方本 實驗 ニ見

タル ガ如 ク當 該試驗 藥 ノ水溶 液 ニ比 シ著 シク濃厚 ナル「アル コホ ル」溶 液 ヲ調 製

スル ヲ得 テ,從 ツテ其 ノ消 毒藥 ヲ シテ一層消 毒效 果 ヲ大 ナ ラシ ムル利點 ア リ.

(七)沃 度 丁幾 ヲ以 テセル殺 菌 力實驗 ニ際 シ,沃 度 ヲ中和 スル コ トニ ヨ リテ

陽性 度 ノ増 加,即 チ菌 聚落 發生 數 ノ増 加 竝 ニ菌滅 殺 ニ要 スル 時間 ノ延 長 ヲ生 來

スル コ トアル ハ,彼 ノクッチ ヤー 竝 ニブ リュー ニ ング ノ唱 フル ガ如 ク左 様 ニ大 ナ

ル變 動 アル モ ノ ニ非 ズ シテ,實 ニ野 口,尾 崎 兩氏 ノ證 明 セル ガ如 ク僅 少 ナル菌

復 活現 象 ヲ見 ルモ ノナ リ.

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(十)石 炭酸 ハ其 ノ「ペ ンツォー ル」核 中 ニ「ニ トロ」屬 ノ侵 入 ス ル ニ ヨ リテ甚 ダ

著 シク殺 菌 カ ヲ増 強 ス ルモ ノナ リ.

第 二 節 「ビク リ ン」酸 ノ臨牀 的消 毒 力 ニ關 スル 實驗

第 一項  文獻 竝 ニ實驗 ニ對 スル企 圖

曩 ニヂ プ ソ ンハ其 ノ臨 牀 的經 驗 ヨ リシテ「ビク リ ン」酸 ノ皮 膚 消 毒藥 トシテ沃

度 丁幾 ニ優 レル モノ ナル ヲ提 唱 シ,爾 後グ ロッシッヒ氏 法 ニ換 フル ニ「ビク リ ン」

酸 「アル コホル」消 毒法 ヲ以 テスル コ トノ當 ヲ得 タ ルモ ノナル ヲ推 奨 セル ガ,惜

ム ラク ハ其 ノ主張 ノ正 確 ナル實驗 的 研究 ニ發足 セズ,從 ツ テ科學 上 前 記 ル主張

ヲ肯定 ス可 ク餘 リニ其 ノ根 據 ノ薄弱 ナル ヲ憾 ムノ感 アル ヲ以 テ,余 ハ茲 ニ親 シ

ク「ピク リ ン」酸 ノ臨 牀 的消 毒 力 ニ關 スル實驗 的研 究 ヲ企 圖 シ,前 述 セル 「ビ ク

リン」酸 ノ殺 菌 力 ニ關 スル試 驗管 内實 驗結 果 ト併 照 シ,果 シテ氏 ノ主 張 ノ正當

ナル ヤ否 ヤ ヲ確 定 セ ン ト欲 ス.況 ンヤ余 ノ寡 聞 ナル未 ダ余 ノ本 實驗 ニ著 手セル

大正八 年 十月 迄 ニ於 テハ嘗 テ本 實驗 ニ關 スル研 究 報告 ノ之 アル ヲ聞 カズ,大 正

十 年一月 ニ至 リテ漸 クヂ プ ソ ン門 下 ノフ アー(Farr)ノ 皮 膚消 毒 藥 トシ テノ「ピ

ク リ ン」酸 ニ關 スル研 究 ノ發 表 セ ラ レタ ル ア リ ト雖 モ,之 ガ臨牀 的消 毒 カ ニ關 ス

ル實 驗 ニ至 リテハ單 ニ余 ノ實 驗 第三 ノ條 下 ニ於 ク後 述 スル ガ如 ク,「 ビク リン」

酸 ノ滅 菌 度 ニ關 スル不完 全 ナル研 究報告 ノ之 アル ノ ミナル ニ於 テオ ヤ.即 チ余

ハ先 ヅ余 ノ前膊 竝 ニ手 ノ皮 膚 ニ就 キ テ,親 シク「ビク リン」酸 ヲ用 井 テ之 ガ臨 牀

的消 毒 力 ニ關 スル實驗 ヲ行 ヒ,尋 デ,例 之,大 腿 截斷術 等 ノ如 キ手術 時 ニ機 會

ヲ求 メテ最 早患者 ニ對 シテ不 用 トナル可 キ生體 皮膚 ニ就 キテ「ビク リ ン」酸 ノ滅

菌 度 ニ關 スル實 驗 的研 究 ヲ遂 行 セ リ.以 下序次 ヲ正 シテ之 ヲ述 ブ可 シ.

第 二項  實 驗 第一  皮膚 ニ常在 セル細菌 ニ對 スル

「ビク リ ン」酸 ル殺 菌力 ニ就 テ

第 一目  實驗 ノ目的

「ピク リ ン」酸 ノ皮 膚 ニ常 在 セル 所謂 皮膚細 菌(Hautbakterien)ニ 對 スル殺 菌

カ ヲ檢 定 セ ンガ爲 メ,余 ノ前膊 竝 ニ手 ノ皮膚 ニ就 キテ親 シク之 ガ實驗 ヲ遂 行 セ

リ.蓋 シ實 驗消 毒 野 ニ手竝 ニ前膊 ノ皮膚 ヲ選 定 シタル所 以 ノモ ノハ,凡 ソ身體

皮膚 中 ニ於 テ該 兩者 ガ比 較 的消 毒操 作 ニ際 シ困難 ナル部 分 ノ一 ニ屬 ス可 キモ ノ

ナル ヲ以 テ,一 般 ニ手 竝 ニ前膊 ニ就 キテ得 タル ノ結 果 ハ之 ヲ他 ノ身體 部 分 ニ適

用 シテ大差 ナカ ラ ント信 ズルガ故 ナ リ.

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抑 モ皮膚 ノ消 毒 ニ當 リ,吾 人 ガ皮 膚 表面 竝 ニ皮 膚 ノ深 部 ニ存在 セル細 菌 ノ滅

殺 ニ際 シ喫 スル消 毒操 作 ノ困 難 ハ,個 人 ニ ヨ リ,身 體 部 位 ニ ヨ リテ其 ノ度 ヲ異

ニ シ,皮 膚 ノ纎 弱度 竝 ニ不潔 度 ニ比 例 シテ其 ノ難 易 ヲ異 ニスル モ ノナ リ.然 リ

而 シテ女 子 竝 ニ小兒 ニ於 テハ其 ノ皮膚 甚 ダ纎 弱 ナル ガ故 ニ,消 毒 ノ成 果 ヲ獲 得

ス ル コ ト容 易 ニ シテ,胸 部 竝 ニ腹 部亦 比 較 的消 毒操 作容 易 ナ ルニ反 シ,手 及 ビ

前膊 ノ皮膚 ニ至 リテハ著 シク其 ノ纎 弱度 ヲ減 少 スル ガ故 ニ從 ツテ消毒 ノ成 果 亦

著 シク減 少 シ吾 人 ヲ シテ毎 常消 毒 ニ際 シ大 ナル困 難 ヲ感 ゼ シムル モ ノ ア リ.詳

言 ス レバ此 ハ蓋 シ吾 人 ノ熟知 セル ガ如 ク,手 ノ皮 膚 ノ造 構 ノ解 剖 學 的特殊 ナル

ニ因 スル モ ノニ シテ,其 ノ強 ク角 化 シ,加 之,脂 肪 ヲ飽 和 シ,爲 メニ容 易 ニ消

毒 藥 ヲ シテ濕 潤 セシメ得 ザル表皮 ヲ以 テ被 覆 セ ラル ル皮 膚 深層 就中多 クノ皮膚

皺 壁,皮 膚腺,爪 溝 竝 ニ爪 下腔(Unternagelraume)中 ニ存 在 セル細 菌 ニ對 シ,化

學 的消毒 藥 ノ作用 ノ到達 ニ當 リ大 ナル障碍 ヲ感 ズル ガ故 ナ リ.

而 シテ余 ノ實驗 ニ際 シ消 毒 野 ノ皮 膚 ヲ動 物 ニ求 メザ リシハ蓋 シ其 ノ解 剖學 的

造構 ノ人 體皮膚 ト著 シク相 違 セル ヲ顧 慮 シテ,可 及 的 實驗結 果 ノ正確 ヲ期 セ ン

ガ爲 メニ外 ナラズ.以 下之 ニ倣 フ.

第 二 目  實 驗 準 備

「ピク リ ン」酸 ノ試驗 管 内 ニ於 ケル殺 菌 力實 驗 ノ結 果 ,臨 牀上 用 〓得可 シ ト信

ズ ル八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」,五%「 ピク リン」酸 「アル コホル」及 ビ

「ピク リ ン」酸 水飽 和液 ノ三 者 ヲ實驗 消毒藥 ニ選 定 シ,之 ニ比較 ノ目的 タル沃 度

丁幾 竝 ニ八 五%「 アル コホル」ヲ併 用 セ リ.而 シテ中和 藥 トシ テ各 匹敵 セル一%

鹽 酸「モル ヒネ」水溶 液,一%次 亞 硫酸 「ナ トリウ ム」水 溶 液 ヲ無 菌 的 ニ準備 シタ

ル ハ試驗 管 内實驗 ニ於 ケル ト等 シ.

培 養基 ハ試 驗管 内實驗 ニ於 ケル ト等 シク寒 天培 地 ニ○ ・四%ノ 比 ニ葡 萄糖 ヲ

注 加 セル モ ノ ヲ以 テセ リ.其 ノ他 實驗 ニ要 ス ル器具 材料 ニ就 キ テハ,一,一 之

ヲ擧 グル ノ繁 ヲ避 ケテ實驗 次第 中 ニ述 ブ可 キモ豫 メ皆滅 菌 シテ苟 モ實驗 結果 ヲ

シ テ過 ル ナ カ ラ ンコ トヲ期 セル ヤ必 セ リ.

第 三 目  實驗 方 法竝 ニ次第

實驗 方 法 ヲ敍 スル ニ當 リ,余 ガ専 ラ顧 慮 シタル注 意事 項 二,三 ニ就 テ述 ブ可

シ.即 チ余 ハ實驗 ニ際 シ可及 的常習 ノ過因 ヲ除去 セン ト欲 シ,精 細 ナル注 意 ヲ

以 テ總 テノ實驗 ハ室温 ニ於 テ之 ヲ例 外 ナク企 圖 シ斷 ジテ手 術 ノ際 ニ其 ノ機 會 ヲ

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選定 セザ リキ.而 シテ全實驗的操作中嘗 テ試驗野 ヲ昇汞竝 ニ其 ノ他 ノ消毒藥 ニ

觸 レシメタル事 アル無 シ.

實驗材料 タル洗滌 水,脱 脂綿,硝 子器具,「 ピ ンセット」及 ビ其 ノ他 ハ豫 メ皆之

ヲ完 全 ニ滅菌 シ加之屡 々ナル對照試驗 ニヨリテ其 ノ無菌 ナル事 ヲ證 セリ.

試驗野 ヨリノ細菌採取ハ通常大 ノ試驗管内ニ持 チ來 シ得 ル小脱脂綿片 ヲ以 テ

シ此ハ使用 前豫 メ滅菌水 ヲ以 テ濕 シタル モノナ リ.

實 驗 次 第

(一)前 處置  肉眼的ニ不潔 ナラザル余 ノ偏側 ノ手及 ビ前膊 ヲ,石鹸 ト清水 ト

ヲ以 テ短 時間(約 一分間)洗 滌 シ,之 ガ舊態 ニ乾燥 スル ヲ待 チテ(約 三時間後),

(二)滅 菌脱脂 綿片ニ各消 毒藥 ヲ充 分ニ含有 セシメテ強 ク平等 ニ塗布 シ,乾燥

セル後(約 二分間後),「 ピク リン」酸 ハ一%鹽 酸「モル ヒネ」水溶液 ヲ以 テ,沃 度

丁幾 ハ一%次 亞硫酸「ナ トリウム」水溶液 ヲ以 テ中和 シ,即 チ沃度丁幾 ニ於 テハ

暗褐色 ニ染 マ レル皮膚 ノ明 ナル黄色 ニ變 ジテ最早脱色 セザルニ至 ルマ デ數囘液

ヲ交換 シテ中和 シ,「 ピク リン」酸亦之 ニ倣 フ.依 ツテ以 テ兩消毒藥 ノ殘留細 菌

採 取 ニ際 シ,培 養基移行 ニヨル菌發育障碍 作用 ノ防 止ニ努 メ,

(三)尋 デ滅菌微温湯 ヲ以 テ輕 ク短時間洗滌 シテ,中和 ニヨ リテ生 ゼル化合物

竝 ニ餘剩 ノ中和藥 ヲ除去 シ,

(四)豫 メ滅菌水中 ニ浸 セル無菌小脱脂綿片(マ イスネルMeissnerニ 據 ル)ヲ

滅菌 セル鑷子 ニテ保持 シテ,五 糎平方 ノ消毒野 ヨ リ可及的同様 ナル壓 力 ヲ以 テ

強 ク摩擦 スル(約 二分間)コ トニ依 リ,消 毒後尚 ホ殘存 セル皮膚細菌 ノ採取 ヲ試

ミ,

(五)斯 ク シテ多數 ノ表 皮 鱗 屑 ヲ負ヘル綿 片 ヲ豫 メ攝氏四十五度 ニ溶融 セル

寒天培養基十竰中 ニ投 ジ,注 意深 ク振蘯 セル後,綿 片 ト共 ニペー トリー氏 「シ

ャー レ」ニ灌 ギ,塞 天 ノ凝 固スル ヲ待 ツテ孵竈中 ニ納 メ,攝 氏三十七度 ニ於 テ二

十四時間竝ニ四十八時間培養 シテ「コロニー」發生 ノ有無 ヲ檢 シ,尋 デ尚 ホ所謂

皮膚細菌 ノ室温 ニテヨリ良 ク發育 スル ヲ惟 ヒ,更 ニ二十四時間攝氏十八度 ノ室

温 ニ止 メテ其 ノ結 果 ヲ檢 シ,而 シテ尚ホ細 菌ノ色素産出 ヲ充分 ニ觀察 セ ンガ爲

メ,「 シヤー レ」ヲ四 日乃至五 日間室内 ニ放置 ス.殊 ニ此ハ「ルフ トカイ メ」ノ檢

査 ニ當 リ必要 ナル顧慮 ニシテ此 ノ目的 ニ對 シ豫 メ寒天培養基中 ニ葡萄糖 ヲ附加

セルハ甚 グ肝要 ノ事 ニ屬 ス.

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(六)次 ニ「ピ ク リ ン」酸 「アル コホル」,沃 度 丁幾 及 ビ八五%「 アル コホル」等

ニ依 リテ惹 起 セ ラ レタ ル表皮 硬 化作 用或 ハ鞣 化 竹用 ヲ可 及的 完全 ニ緩 解 シ,依

テ以 テ皮膚 ノ深 部 ニ或 ハ尚 ホ殘 留 セル細 菌 ノ存 在 ス可 キヲ惟 ヒ,此 ノ 目的 ニ向

ヒテ豫 メ滅菌 セル微 温 湯 中 ニ消 毒野 ヲ十五分 間 浸 シ,

(七)尋 デ滅 菌微 温湯 ヲ以 テ短 時間 洗滌 シタ ル後,再 ビ上 述 ノ殘 留細菌 採 取

ヲ行 ヒ,以 下同様 ナル操 作 下 ニ菌聚 落 發生 ノ有無 ヲ見 タ リ.

而 シテ上 述 セル操 作 ニ關 シ茲 ニ一言 ヲ要 スル ハ

(一)實 驗 ニ際 シ細 菌 採取 場所 ノ比較 ス可 キ消 毒藥 ニ對 スル可 及 的 同 様 ナル

選 定 ニ シテ,此 ノ目的 ニ向 ツテ,例 之,余 ハ前膊 或 ハ 手 ノ背 面中 央 ニ於 テ脂肪

筆(Fettstift)ヲ 以 テ一線 ヲ描 キ,該 線 ヲ境 界 トシテ左 側 所 定 大 ノ皮 膚 ハ五%

「ピク リ ン」酸 「アル コホル」ヲ以 テ處 置 シ,右 側 同大 ノ皮 膚 ハ沃 度丁幾 ヲ以 テ處

置 シ,斯 ク シテ可 及 的同 様 ナル皮膚 部 ヲ消 毒野 ニ選 定 セ リ.而 シテ毎 常比 較 主

體 ヲ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニ採 リ,之 ニ八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ

ル」,「ピク リン」酸 水飽 和 液,沃 度丁幾 及 ビ八五%「 アル コボル」ノ各 々 ヲ其 ノ都

度 ノ對 照 トセ リ.而 シテ比 較實 驗 ニ際 シ餘 剩 ノ皮 膚 野 ハ五%「 ピク リ ン」酸 「ア

ル コホル」 ヲ以 タ同 様 ニ處 置 シ,其 ノ無 處 置 ニ因 スル 實驗 結果 ヘ ノ影響 ヲ除去

スル ニ努 メタ リ.尚 ホ一 囘 ノ實 驗 ニ際 シ,偏 側 ノ手及 ビ前膊 ノ全 部 ヲ一 ツ消 毒

藥 ノ試 驗野 ニ供 シタル事 ア リ.斯 ク シ テ種 々ナル場所 ニ於 ケル各 消毒 藥 ノ消 毒

結 果 ヲ窺 フ事 ト爲 セ リ.

(二)各 消 毒藥塗 布 ニ當 リ,豫 メ石 鹸 ト水 トヲ以 テ短 時 間(約 一分 間)消 毒野

ヲ洗 滌 セル ハ,蓋 シ之 ヂ プ ソ ンノ報 告 ニ見 ル ガ如 ク五%「 ピク リン」酸 「アル コ

ホル」 ヲ以 クセル皮膚 消毒 法 ニ際 シ,患 者 ハ豫 メ手術 臺 上 ニ於 テ石 鹸 ト剃 刀 ヲ

持 チ テ手術 野 ヲ剃 毛 セラ レ,尋 デ石鹸 ト水 トヲ以 テ望 マ シク ナル マデ強 ク摩 擦

セ ラルル テフ記載 ニ據 ルモ ノ ニ シテ,即 チ余 ハ多 ク之 ニ倣 ヒタル モ,操 作 ノ便

宜 上手術 野 ノ剃 毛 ハ之 ヲ施 スコ トナク,單 ニ實 驗 前二,三 時間 ニ於 テ消 毒 野 ノ

洗 滌 ヲ爲 シ,其 ノ完 ク乾 燥 スル ヲ待 チ テ各消 毒藥 ノ塗布 ヲ遂 行 セ リ.而 シテ比

較 ノ目的 タル沃 度丁 幾 ハ先 人 ノ實驗 ニ徴 スル ニ皮膚 ノ濕 潤 セル時 ハ著 シク消毒

作用 ヲ輕減 セ ラルル モ ノ ニ シテ,此 ハ一 ツニ沃 度 丁幾 ノ殘 留 セル水 ニ ヨ リテ稀

釋 セ ラルル ト,更 ニ沃 度 ノ水 ニ難 溶性 ナル化學 的性状(飽 和液 ハ約 ○・〇二%ナ

リ)ニ 基 キ,其 ノ稀 釋 度 ニ比 例 シテ沃 度 ノ結 晶 ノ丁幾 ヨ リ析 出 スル トニ因 スル

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モノ ニ シテ,試 ニ水 ヲ以 テ濕 潤 セ シメタ ル皮膚 上 ニ沃 度丁幾 ヲ齎 ス時 ハ直 ニ一

ノ褐 色塗 料 ヲ現 出 スル ハ吾 人 ノ熟 知 セル處 ニ シテ,此 ノ際 該 現 象 ノ濕 潤 セル皮

膚 深 部 ニ於 テモ亦結 果 ス ルハ 自明 ノ事 ニ屬 ス.此 ノ故 ニ沃 度 丁幾 塗 布 前 ニ水 及

ビ石 鹸 ヲ以 テ處 置 セ ラ レ,尚 ホ未 ダ舊 態 ニ乾燥 セ シメラ レザ ル皮膚 ニ於 テハ,

沃 度丁幾 ノ皮膚 深部 ヘノ侵 入 ノ ヨ リ劣 弱 ニシ テ其 ノ消 毒結 果 ノ ヨ リ不 完全 ナル

ハ明 ナル コ トナ リ.茲 ヲ以 タ余 ハ「ピク リン」酸 及 ビ沃 度丁幾 ノ消 毒 力 比較 ニ際

シ,沃 度 丁幾 ノ水 ヲ以 テスル稀釋 ニ對 ス ル缺點 ニ鑑 ミ,實 驗操 作 ニ於 テ水 及 ビ

石 鹸 ヲ以 テ短 時 間(一 分 間)洗 滌 セル後,試 驗 野 ノ舊 態 ニ乾 燥 セル ヲ待 チ テ各 消

毒 藥 ノ塗 布 ヲ行 ヒ,實 驗 結 果 ノ比較 ニ際 シ,可 及 的其 ノ正 鵠 ヲ得 ル ニ努 力 セ リ.

由來 グ ロッシッヒノ皮 膚 消毒 法 ニ際 シ,手 術野 ノ前處 置 トシテ如 何 ナル操 作 ヲ

爲 スヤ否 ヤヲ講 究 スル ニ,蓋 シ氏 ノ原 著(1908)ニ 據 レバ,患 者 ハ通 常特 定 ノ場

合 竝 ニ急救 ノ場 合 ヲ除 クノ外 ハ凡 テ手術 當 日未 明 ニ於 テ全 身溶 ヲ爲 サ シメ,且

ツ手術 野 ハ手 術 直 前或 ハ手術 前 日 ニ剃 毛 セ ラレ,前 者 ニ於 テハ乾 燥 状 態 ニ於 テ,

後 者 ニ於 テハ濕 潤状 態 ニ於 テ施 行 セラルル ヲ常 トス.然 レ共 此 ノ處 置 ニ關 スル

野 口氏 ノ追 試 ニ ヨ レバ,(イ)手 術 直 前 ニ於 ケル乾燥 剃 毛 ハ著 シク消毒 野 ヲ荒蕪

シ,爲 メニ沃 度 丁幾塗 布 ニ際 シテ甚 ダ シキ皮 膚 刺戟 作 用 ヲ呈 シテ多 ク所 謂 「沃

度濕 疹 」 ノ發 生 ニ由 來 シ,多 毛 ナル身 體 部分殊 ニ頭部 ノ消 毒 ニ際 シテハ該刺 戟

作用 ハ恰 モ一 ノ苦 惱 ニ シテ殆 ンド麻 醉 ナク シテ施 行 スル コ ト能 ハズ,且 ツ敍 上

ノ如 ク乾燥 剃 毛 ニ ヨ リテ更 ニ及 膚 ノ荒 蕪 セラ レテ,表 皮上 層 ノ除 去 セ ラルル事

ナク シテ擧 上 セ ラ レテ存 スル ガ故 ニ,此 ニ因 リテ更 ニ沃 度 丁幾 ノ皮膚 深 部 ヘ ノ

侵 入 困難 トナ リ,從 ツテ消 毒效 果 ノ減 少 ヲ生 來 スル缺點 ア リ,且 ツ(ロ)手 術

前 ニ於 ケル濕 潤剃 毛 ニ於 テモ,既 ニ十 二時 間以 内 ニシテ,殊 ニ多毛 ナル 箇所 ニ

於 テハ屡 々發 疹 ヲ生 來 シ,且 ツ剃 刀 ニ ヨ リテ過成 セ ラ レタ ル小損 傷 ハ同 ジク十

二時 間後 ニ於 テハ全 ク新 鮮 ナル損傷 ル如 ク沃 度 丁幾 ヲ以 テ確 實 ニ消 毒 セ ラル ル

コ ト不 可 能 ナル ガ故 ニ,其 ノ最 モ當 ヲ得 タル ノ處 置ハ 手術 前 二 ,三 時間 ニ於 テ,

水 ト石 鹸 トヲ以 テ濕 性剃 毛 ヲナ シ,沃 度丁幾 塗 布 時迄 ニ乾 燥 セ シムル ヲ可 ト シ,

斯 ル操 作 ヲ以 テ得 タ ル消 毒結 果 ノグ ロッシッヒノ提 唱 ニヨル操 作 ニ於 ケル ト何 等

差 違 アル ナ シ ト謂 フ.茲 ヲ以 テ余 ハ余 ガ實驗操 作 ニ際 シ,比 較 主體 タル沃 度 丁

幾 ノ塗布 ニ當 リ,野 口氏 ノ知 見 ニ範 ヲ採 リテ豫 メ水及 ビ石鹸 ヲ以 テ消毒 野 ヲ短

時 間(約 一 分 間)洗 滌 シ,尋 デ舊態 ニ乾燥 セ シメタ ル後,即 チ約 三 時間 後,初 メ

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テ沃 度 丁幾 ヲ塗 布 シタル モ ル ニ シテ,蓋 シ該操 作 ニ ヨ リテ何 等 其 ノ消 毒結 果 ニ

差 違 ヲ生 來 スル モ ノニ非 ザル ヲ期 待 セ リ.

尚 ホ他方斯 ル前處 置 ヲ行 ハズ ンテ直 接五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」竝 ニ沃

度丁 幾 ヲ塗 布 シ,其 ル消毒結 果 ノ如 何 ヲ檢 シ,以 テ器械 的 清 淨作 用 ノ皮膚 細 菌

ノ減 少 ニ對 シ如 何 ナル數 果 ヲ齎 スヤ否 ヤ ヲ檢 セリ.

(三)グ ロッシッヒ氏 法 トノ比較 研究 ノ爲 メ第一 囘 ノ塗 布 後,五 分 間 ニ シテ五

%「 ピク リン」酸 「アル コホル」及 ビ沃 度丁幾 ノ再 塗 布 ヲ行 ヒ,乾 燥 後之 ヲ中和 シ

(以 下 前 述 セル操 作 ニ準 ズ),結 果ニ於 テ第 二囘塗 布 ノ如 何 ナル程 度 ニ於 テ一囘

ノ塗 布 ノ ミ ヨ リ有效 ナル ヤ否 ヤ ヲ檢 セ リ.

(四)八 五%「 アル コホル」ヲ以 テセル消毒 操 作 ニ際 シ,塗 布 後此 ハ「アル コホ

ル」 ヲ中和 スル ノ必 要 ヲ見 ザ ル ガ故 ニ,單 ニ滅 菌 微温 湯 ヲ以 テ輕 ク短 時 間洗滌

セル後,次 ノ操 作 ニ移 行 セ リ.

(五)實 驗 間 隔 ハ 一週 間 トナ シ,兩 側 ノ手及 ビ前膊 ニ就 キ テ交 互 ニ之 ヲ施 行

セ リ.

(一)五%「 ピク リ ン」酸「アル コホ ル」ヲ以 テセル實 驗結 果

(イ)前 處 置 ヲ行 ヒ一囘 ノ塗 布 ヲ以 テセル實驗 結 果

先 ヅ消 毒 後 ニ於 ケル聚 落發生 ノ有無 ヲ述 ベ,尋 デ緩解 後 ニ於 ケル聚 落發 生 ノ

有無 ヲ論 ジ,而 シテ此 ガ綜 合的觀 察 ノ下 ニ消 毒結 果 ノ全 豹 ヲ窺 ハ ンコ トヲ期 ス.

各 試 驗野 ニ就 キ 消 毒 後 ニ於 ケル聚落 發生 ノ有 無 ヲ見 ル ニ,第 二 表 ニ掲 出 セル

ガ如 ク,陰 性 ナル コ トア リ,陽 性 ナル コ トア リテ,時 ニ其 ノ完 全 ナル消毒 結 果 ヲ

得 タ リ ト思惟 セラル ル コ トア レ共,之 ヲ八 十八 消 毒野 ヨ リ得 タル 百分 率 ヨ リ見

レバ概 シテ陽性 ナル 場 合多 ク,陽 性六 五 ・九〇 九%ナ ル ニ對 シ,陰 性 三四 ・〇九一

%ナ ル比率 ヲ示 セ リ.然 レ共 今仔細 ニ之 ヲ觀 察 スル時,假 令 其 ノ陽 性 ナル場 合 ト

雖 モ其 ノ聚落發 生 數 ハ極 メ テ僅 少 ニ シテ,一 試驗 野 ニ於 テ九箇 ノ聚 落 發生 ヲ見

タル ノ外 ハ,總 テ五 箇 以下 ニシ テ著 シク陽性 度 ノ劣 弱 ナル ヲ見 ル.即 チ今八 十

八 稍 毒野 ヨ リ得 タル全 聚落 發生數 ヲ各消 毒野 ニ分 配 ス レバ,平 均 一・五 二三 箇 ト

ナ リ,之 ヲ對照 トシテ何 等消 毒藥 ヲ作用 セシメ ザ リ シ一試 驗野 ヨ リ發生 セル聚

落 數 ニ比 ス レバ霄壤 ル差 違 ア リ,即 チ後者 ニ於 テハ時 ニ三七 二箇 ノ聚落 ヲ發 生

セ ル コ トア レ共 多 ク一千 内外 ノ聚落 ヲ發 生 セル ニ比 ス レバ,亦 以 テ五%「 ピク リ

ン」酸 「アル コホル」ノ臨牀 的消 毒力 ノ大 ナル ヲ窺 フ コ トヲ得可 シ(第 一表 參 照)

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第 一 表

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第二表  實驗第五  大正九年二月四 日施行

次 ニ各試 驗 野 ニ就 キテ緩解 後 ノ聚落 發生 ノ有無 ヲ見 ル ニ(第 二表參 照),消 毒

後 ニ於 ケル ト同 ジク陰性 ナル コ トア リ,陽 性 ナル コ トア リテ一 定 セザ レ共,之

ヲ全消 毒 野 ヨリ得 タ ル百分 率 ヨ リ見 レバ同 ジク陽性 ナル場 合多 ク,陽 性 五 九 ・〇

九一%ナ ル ニ對 シ,陰 性 四〇 ・三 〇九%ナ ル比率 ヲ示 セ リ.然 レ共 其 ノ聚落 發生

數 ノ多 寡 ニ至 リテハ同 ジク僅 少 ニ シテ,全 例中 二例 ニ於 テ十 一箇 及 ビ六 箇 ノ聚

落 發生 ヲ見 タル ノ外 ハ何 レモ皆五 箇 以 下 ニ シテ,亦 以 テ其 ノ陽性 度 ノ著 シク低

劣 ナル ヲ知 ル.即 チ消毒 後 ニ於 ケル ト同 ジク 一消 毒野 ヨ リ得 タ ル平 均聚 落 發生

數 ヲ求 ム レバ,一 ・三 三箇 ニ シテ,同 ジ ク對照 ニ比 シ其 ノ聚 落發 生 數極 メテ僅 少

ナル ヲ見 ル(第 一 表參 照).

而 シテ消 毒 後竝 ニ緩解 後 ノ兩者 間 ニ於 テ,聚 落 發生 ノ有無 ニ關 シ,何 等 カ因

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果 關係 ノ存 ス ル アル ヤ否 ヤヲ見 ル ニ,消 毒 後聚 落 發生陰 性 ナル場 合 ニ於 テ緩解

後聚 落 發生 陰 性 ナル コ トア リ,陽 性 ナル コ トア リ,消 毒後聚 落發 生 陽 性 ナル場

合 ニ於 テ緩解 後聚 落發 生 陽性 ナル事 ア リ,陰 性 ナル コ トア リテ其 ノ間 何等 定則

ナ ケ レ共,前 者 ノ陽性 ナル場合 ニ於 テハ 後 者 ノ其 ノ多 ク陽性 ナル場 合 アル ヲ見

ル.而 シテ兩者 ニ於 テ其 ノ聚 落 發生 數 ノ多寡 ヲ見 ル ニ,同 ジク前者 ニ於 テ大 ナ

ル コ トア リ,後 者 ニ於 テ大 ナル コ トア リテ其 ノ間何等 定則 ナ シ(第 二表 參 照).

即 チ今少 シ ク此 ガ因 果 關係 ニ關 スル解 説 ヲ試 ム レバ,(甲)消 毒 後聚 落 發 生陰 性

ナル場 合 ニ於 テ,緩 解 後聚 落發 生陰 性 ナル場 合ハ,五%「 ピ ク リ ン」酸 「アル コホ

ル」 ノ消 毒 力 ノ強大 ニ シ テ,五 糎 平方 ノ皮膚 野 ニ存在 セル細 菌 ヲ能 ク撲 滅 シ盡

シタル カ,或 ハ該消 毒 野 ニ存 在 セル細 菌 ノ僅少 ニ シ テ能 ク滅殺 シ得 ラルル状 態

ニ在 リシカ,乃 至 ハ假令 其 ノ存 在 セル細菌 ニ シテ多 數 ナ リ シ トスル モ同 ジク良

ク滅殺 セ ラレ得 ル状 態 ニ在 リ シ ト解 ス可 ク,之 ニ反 シ(乙)消 毒 後聚 落 發生 陰

性 ナル場 合 ニ シテ,緩 解 後聚 落 發生 陽 性 ナ リシ場 合 ハ,五%「 ピ ク リ ン」酸 「ア

ル コホ ル」 ノ一 囘 ノ塗 布 ニ ヨ リテ能 ク一定 ノ皮膚 ノ深 部中 ニ存 在 セル細菌 ハ滅

殺 セ ラ レタル モ,ヨ リ以上 ノ一定 皮膚 深 部 中 ニ存 在 セル細 菌 即 チ,消 毒 後 ノ細

菌 採取 法 ヲ以 テ シ テハ採 取 セ ラ レザ リ シ細 菌中 ノ消 毒藥 ノ作 用 ヲ免 レタル細 菌

(後 述 セル 「ピク リ ン」酸 ノ滅 菌度 竝 ニ皮膚 深 達作 用 ニ關 スル實驗 條 下參 照,以

下 之 ニ準 ズ)ノ,所 謂皮膚 緩 解 法 ニ ヨ リテ緩解 セラ レテ,採 取 セ ラ レ,以 テ培

養基 上 ニ齎 サ レタ ル結 果 ト解 ス可 ク,之 レ甚 ダ興味 アル事 實 ニ シテ,曩 ニ余 ハ

實驗 操 作 ニ當 リ,豫 メ「ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニヨル皮膚 硬化 作用,或 ハ鞣

化 作 用 ノアル可 キ ヲ豫 想 シ,從 ツ テ消 毒 後 ル殘 留細菌 採 取後 尚 ホ皮 膚 ノ一 定深

部 中 ニ定 着 セラ レタ ル細 菌 ノ存 スル アル ヲ惟 ヒ,滅 菌 微温 湯 中 ニ十五 分 間消毒

野 ヲ浸漬 シタ ル後,再 ビ殘 留細菌 採 取 ヲ試 ミタ リシガ,果 シテ其 ノ結 果 ハ聚 落

發 生 陽性 ナル場 合 アル ヲ見,吾 人 ノ豫 想 ノ徒 爾 ナ ラ ザ リシヲ證 セ リ.蓋 シ此 ハ

臨 牀 的消毒 學 上 ニ於 テ甚 ダ重 要 ナル 意義 ヲ有 スル モ ルニ シ テ,嘗 テ,ヘ グ レル

Haegler (1900),マ イ スネ ルMeissner (1908),マ ル キーMarquis (1912),尾 崎(良

胤)(1913)及 ビラ ウべ ンハイ マーLaubenheimer (1914)諸 氏 ノ 「アル コホル」消

毒 法 ニ於 テ證 明 シタル所 ニ シ テ蓋 シ其 ノ趣 ヲ一 ニス.

(丙)而 シテ消毒 後聚落發生 陽性 ナル場合 ニ於 テ,緩 解 後聚 落 發生 陽性 ナル場

合 ハ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ノ一囘 ノ塗布 ヲ以 テハ,皮 膚 ノ表 面 ヨ リ

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皮膚 ノ一 定 深部 中 ニ存 在 セル細 菌,即 チ皮膚 表 層 細菌 竝 ニ消毒 後 ノ殘 留細 菌 採

取 法 ヲ以 テシテハ,採 取 シ得 ザ リ シ細 菌 ノ全 部 撲滅 セラ レザ リシニ歸 因 ス可 ク,

換 言 ス レバ一 囘 ノ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」塗布 ニ於 テハ一 ハ其 ノ全 キ消

毒 力 ヲ保持 スル「ピク リ ン」酸 ノ皮膚 深 達 作用 ノ缺 如 セル ト,一 ハ其 ノ皮膚 表面

ヨ リ到達 シ得 ル範 圍 内 ニ存 在 セル細 菌 ノ餘 リニ多 數 ニ シテ,能 ク五%「 ピク リ

ン」酸 「アル コ ホル」ノ消 毒 作用 ノ發現 セザ リシ ニ因 ル カ,或 ハ後 述 セルガ如 ク

消 毒 野 ノ皮膚 ノ解 剖 學 的造構 ノ複 雜 ナル ガ 故 ニ,細 菌 ニ對 シテ一 ノ保 護裝 置 ト

ナ リシモ ノナル カ ニ因 スル ナル 可 シ.之 ニ反 シ(丁)緩 解 後聚 落 發生 陰 性 ナル

場 合 ニ於 テハ,消 毒 後 ノ殘 留細 菌採 取 法 ヲ以 テシテハ能 ク採 取 シ得 ル範 圍 ニ存

在 セル細 菌 ノ全 部撲 滅 セ ラ レザ リ シニ反 シ,緩 解 後 ノ細菌 採 取 法 ヲ以 テ シ テハ

能 ク採 取 シ得 ル範圍 ノ,皮 膚 ノ一 定深 部 ニ存 在 セル細 菌 ノ能 ク撲 滅 セテ レタル

カ,或 ハ同 部 ニ實驗 前 ヨ リ細 菌 ノ存 在 セザ リ シニ ヨル モ ノ ナル可 シ.之 ヲ要 ス

ル ニ敍 上 ノ如 キ種 々ナル實驗 結 果 ノ相違 ハ,他 ニ種 々ナル理 由 ノ存 スル アラ ン

モ,一 ハ試 驗野 ニ存 在 セル細 菌 ノ多寡 ニモ關 ス レ共,一 ハ當 該皮膚 野 ノ汚穢 度

竝 ニ後 述 セル ガ如 ク解 剖學 的 造構 ノ複 雜 ナル ニ因 スル モ ノ ニ シテ,此 レ蓋 シ生

體皮 膚 ノ消毒 ノ困難 ナル所 以 ナ リ.

由來 人體 皮膚 ハ其 ノ基 底層 ニ於 ケル 不斷 ノ細 胞 増殖 ニ伴 フ表 皮落 屑 形成 ヲ以

テ新 陳 代謝 ヲ行 フモノ ナルガ,基 底層 ニ於 ケル細 胞増 殖 ノ結 果 ハ表 皮 表層 細胞

ノ大 ナル面 積 ヘ ノ分 付 竝 ニ伸 展 ヲ生 來 シ,從 ツテ其 ノ排列 鬆疎 トナ リ,裂 溝 ヲ

生 ジ,曳 イ テ所 謂表皮 ノ水平 落屑 ヲ形成 ス,而 シ テ該 機轉 ハ決 シテ急 激 ニ行 ハ

ルル モ ノ ニ非 ズ シ テ間 斷 ナク徐 々 ニ行 ハルル モ ノ ナル ガ故 ニ,斯 ク シテ生 ゼル

落 屑 ノ一 時 ニ表皮 トノ連絡 ヲ失 フガ如 キコ トアル ナク,從 ツテ其 ノ不完 全 ナル

落屑 ノ下 ニハ幾 多 ノ毛細 間腔 ヲ形 成 シ,此 ハ細 胞 間隙 竝 ニ空氣 ト交 通 シ,常 ニ

脂肪,汗 及 ビ明 ニ細 菌 ヲ保 有 スル ニ至 ル.加 之 人體皮 膚 深 部就 中夥 シキ皮 膚 皺

襞 竝 ニ皮 膚腺 中 ニ於 テハ,常 ニ健康 状 態 ニ於 テ多數 ノ細 菌 存 在 シ,該 細 菌 中 ニ

ハ甚 ダ屡 潜伏 状 態 ニ於 テ病 原 菌 ヲ認 ムル ヲ常 トスル ガ故 ニ,皮 膚 ノ消 毒 ニ當 リ,

外 表 ヨ リ作 用 セ シメタ ル化學 的消 毒 藥 ル良 ク此等 如 上 ノ避難 所 トモ稱 ス可 キ箇

處 ニ存 在 セル細 菌 ニ到達 スル コ ト難 ク,從 ツテ試驗 管 内實驗 ニ反 シ消 毒操 作 ニ

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當 リ大 ナ ル困 難 ヲ喫 スル所 以 ニ シテ,消 毒 後竝 ニ緩 解 後 ノ兩者 ニ於 テ尚 ホ甚 ダ

屡 聚 落 ノ發 生 ヲ見 タル ハ 一ニ此 ノ理 由 ニ因 ス.蓋 シ此 ノ關 係 ハ後 述 セル各種 消

毒藥 ニ於 テモ等 シク認 メ ラ レタル所 ナ リ トス.

由是 觀 此,吾 人 ハ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」ヲ以 テスル一 囘 ノ塗 布 ニ

於 テハ,假 令 箇 々 ニ於 テ往 々 ニ シテ緩 解 後聚 落 發生陰 性 ナル場合 アル ヲ見 レ共

(外 觀 上無 菌 ナ リ,後 述 セル「ピク リン」酸 ノ滅 菌 度 ニ關 スル實驗 條 下參 照),未

ダ尚 ホ五糎 平方 ノ皮膚 野 ヲ完 全 ニ消毒 スル コ ト能 ハ ズ,試 驗管 内實 驗 ニ比 シ著

シク其 ノ殺 菌 力 ノ減 少 スル ヲ見 ルモ ノナ リ.

實驗 ニ對 スル「ル フ トカイ メ」ノ影響 ニ就 キ テ一 言 セ ンニ,余 ハ余 ノ實 驗操 作

中 決 シテ此 ヲ除外 スル事 可能 ナ リ シ トハ斷 言 セザ レ共,比 較 試驗 ニ於 テ其 ノ比

較 對 照 ハ凡 テ皆 同様 ナル影 響 ヲ受 ケタ ル ヲ以 テ,何 等重 大 ナル障碍 ヲ感 ゼ ザ リ

キ,加 之余 ガ實驗 操作 中屡 ナル小脱 脂 綿 片 ヲ以 テセル之 ガ無 菌 度 竝 ニ 「ル フ ト

カ イ メ」 ニ依 ル傳 染度 ヲ試 驗 シタ ル一〇五 箇 ノ對 照 ニ ヨ レバ,何 レモ皆無 菌 ナ

リシ事實 ヨ リ推 シ,「 ル フ トカ イ メ」ハ余 ノ全 實驗 ニ際 シ何 等 ノ影 響 ヲ付與 セザ

リ シモ ノ ト斷 ジ得 可 シ.

而 シテ發 生 セル細 菌種 ハ全 實驗 ヲ通 ジ,偶 白色葡 萄状 球 菌 ノ存 スル アル ヲ認

ム レ共,殆 ン ド多 クハ雜 菌(Saprophytische Bakterien)ナ ル ヲ見 タ リ.

(ロ)前 處 置 ヲ行 ハズ一 囘 ノ塗布 ヲ以 テセル實驗 結 果

所 謂 前處 置 ニ ヨル器械 的 皮膚 清潔 法 ヲ除去 シ,直 ニ試 藥 ヲ充 分 ニ塗布 シテ其

ノ消毒 結 果 ル如 何 ヲ觀 タ リ.即 チ四十 五 試驗 野 ヨ リ得 タル消毒 後 ノ平 均聚 落發

生 數 ハ二 ・七 ニ シテ,緩 解 後 ノ聚 落 發生 數 ハ平 均 二・三五 六 ヲ算 シ,各 例 ニ就 キ

テ其 ノ消 毒 後 竝 ニ緩 解 後 ノ聚 落 發生 ノ有無 ヲ見 ルニ,前 者 ニ於 テハ陰 性 ナル 場

合 二 ナル ニ對 シ,陽 性 ナル場合 四十 三 ヲ示 シ,後 者 ニ於 テハ凡 テ皆陽性 ニ シ テ,

前處 置 ヲ伴 へル者 ノ如 ク大 ナル陰 性率 ヲ見 ズ.概 シテ其 ノ消 毒結 果 ハ實驗(イ)

ニ及 バ ズ.然 レ共 其 ノ聚 落 發生 數 ハ全 例 ニ於 テ十 箇 ヲ出 デズ且 ツ多 ク其 ノ雜 菌

ナル ヲ見 タ リ(第 三表參 照).

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第 三 表

是 ニ由 ツ テ之 ヲ推 セバ,畢 竟 兩者 間 ノ消 毒 力 ノ差 違 ハ前處 置 ニ依 ル器械 的清

潔 ノ有 無 ニ胚 胎 スル コ ト勿 論 ニ シテ,蓋 シ石 鹸 ト水 トヲ以 テセル短 時 間(約 一

分 間)ノ 洗 滌 ニ於 テ,皮 膚 表面 ニ殖 民 セル細 菌 ノ多 數 ハ汚 物 ト共 ニ除 去 セ ラル

ル テ フ操 作 ヲ缺 クガ爲 メニ,其 ノ效 果 減 少 スル モ ノ ナル可 シ.即 チ消毒 後 ニ於

テモ,緩 解 後 ニ於 テモ,前 處 置 ヲ伴 ヘル モ ノ ヨ リ其 ノ結 果 ニ於 テ聚 落發 生 數 ノ

多 キハ爾 ク此 ガ理 由 ニ因 スル モ ノナル ヲ知 ル可 ク,如 何 ニ表皮 落屑,脂 肪,汗

及 ビ塵 埃等 ノ皮膚 ノ消 毒 ニ當 リ,困 難 ヲ生 來 スル モ ノナル ヤ ヲ知 リ,併 セ テ器

械的 清潔 法 ノ從 來 ライ ニッケReinicke,パ ウルPaul,ザ ル ウェーSarwey,シ ヱ ッ

フェルSchaeffer,シ ュンブル グSchumburg,尾 崎 及 ビ其 ノ他 ノ諸 家 ニ ヨ リ ラ認 メ

ラ レタ ル ガ如 ク,一 程 度 マ デノ皮 膚 表層 ニ於 ケル細 菌減 少 ニ貢 獻 フル モノ ナル

ヲ確 メ得 可 シ.蓋 シ本 實驗 ニ於 テ,消 毒 後 嘗 テ一消毒 野 ヨ リ百 箇 ニ餘 ル聚 落 ノ

發 生 ヲ見 タル ノ例外 アル ハ,主 トシテ此 ノ理 ニ基 クモ ノナル可 シ.

(ハ)前 處 置 ヲ伴 ヒ二囘 ノ塗布 ヲ以 テセル實驗 結 果

本 研 究 ノ主題 タル グ ロッシッヒ氏沃 度丁幾 皮膚 消 毒 法 ト比較 講 究 セ ン爲 メ,一

囘 ノ五%「 ピク リン」酸 「アル コホル」塗 布 後五 分 ニ シテ再 度 ノ試 藥塗布 ヲ行 ヒ,

乾燥 セル 後之 ヲ中和 シ,爾 餘 ハ上 述 セル實驗 操 作 ニ依 リテ消 毒 後竝 ニ緩 解 後 ノ

聚 落 發生數 ヲ見 タル モ ノ ナ リ.

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第 三 表 ニ掲 出 セル ガ如 ク消 毒 後竝 ニ緩解 後 ル平 均聚 落 發生 數 ハ,前 者 ハ一 ・

二 四 四箇,後 者 ハ一 ・○八 九箇 ニ シテ,其 ノ四十五 消 毒野 ノ各 例 ニ就 キ テ緩 解後

竝 ニ消 毒 後 ノ聚 落發 生 ノ有無 ヲ見 ル ニ,多 數 例 ニ於 テ聚落發 生 陰 性 ナル ヲ認 ム

レ共,其 ノ百分率 ハ尚 ホ陽性 ナル場 合多 ク,消 毒 後 ニ於 テハ陰 性 四〇%ナ ル ニ

對 シ陽性六 〇%ヲ 示 シ,緩 解 後 ニ於 テハ陰 性 三五 ・五 五六%,陽 性六 四・四四 四

%ヲ 示 セ リ.而 シテ聚 落 發生 數何 レモ五箇 ヲ出 デズ,且 ツ多 ク雜 菌 ノ發 生 ヲ見

タ リ.

由 是 觀之,前 處 置施 行 ノ下 ニ試 藥 二囘 ノ塗布 ニ於 クハ,同 ジク一 囘 ノ塗 布 ニ

於 ケル ヨ リモ其 ノ消 毒 力大 ニ シテ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ヲ以 テスル

皮膚 ノ消 毒 ニ當 リ本 方 法 ノ最 モ優 秀 ナル ヲ知 ル.而 シテ茲 ニ興 味 アル ノ事 實 ハ,

仔 細 ニ兩者 ノ消 毒結 果 ヲ比較 講 究 スル 時,二 囘 ノ塗 布 ニ ヨ リタ得 タル稍 毒 結果

ハ一 囘 ノ塗布 ニ ヨ リテ得 タル 消 毒結 果 ヨ リヨ リ強大 ナ レ共,二 囘 ノ塗 布 ニ ヨ リ

テ得 ラル ル全 消毒 作用 ノ大 部分 ハ,既 ニ一 囘 ニ塗 布 ニ ヨリテ數 分 後 ニ達 成 セ ラ

ルル モ ノ ナル コ トナ リ.

而 シ テ茲 ニ特 筆 ス可 キハ實驗 三者 ヲ通 ジテ吾 人 ガ 日常沃 度 丁幾 ノ使 用 ニ際 シ

テ經驗 セル ガ如 ク,何 等 「ピク リ ン」酸 ノ皮 膚 ニ對 スル刺 戟作 用 ノ發 現 アル ヲ見

タ ル コ トナク,一 囘 ノ塗 布 ニ於 テハ勿 論,二 囘 ノ塗 布 ニ於 テモ尚 ホ且 ツ然 ル コ

トナ リ.故 ニ此 ノ點 ヲ以 テ論 ズ レバ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ノ臨 牀 上應

用 ニ當 リ,何 等沃 度丁幾 使用 ニ見 ルガ如 ク其 ノ皮 膚 刺戟症 状緩 解 ノ目的 ヲ以 テ

沃 度 ヲ中和 シ,或 ハ「アル コホル」ヲ以 ク拂拭 スル テフ操 作 ヲナス ノ面 倒 ナク,

一 層 消毒 操 作 ヲ シテ簡 單 ナ ラ シメ,加 之,「 ピク リン」酸 ハ沃 度 ニ見 ル ガ如 ク揮

發 スル コ トナ キ ヲ以 テ長 ク皮膚 中 ニ止 リ,從 ツテ手術 中皮 膚 深部 ニ殘 留 セル生

存 細 菌 ノ表 皮 上層 ノ糜 爛 セラル ル ニ ヨリ,或 ハ「アル コホル」ノ揮 發 ニ ヨル皮 膚

硬 化作 用 ノ緩 解 及 ビ汗 ノ分 泌 ニ ヨ リテ,腺 排泄管 中 ヨ リ徐 々 ニ表 皮 表層 ニ這 出

スル細 菌 ニ對 シタ,殺 菌 作用 ヲ呈 スル ナ キ ヲ保 セズ.從 ツテ沃 度 丁幾 ニ比 シ斯

ル優 越 點 ヲ有 スル モ ノ ト謂 フ可 シ.

(二)八%「 ピク リン」酸 「アル コホル」ヲ以 テセル實驗 結 果

前 處置 ヲ行 ヒ一囘 ノ試 藥 塗布 ヲ以 テセル實驗 ニヨ レバ,其 ノ結 果 ハ殆 ン ド五

%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」ヲ以 テ セル 實驗 結果 ト大 差 ナク,消 毒後 竝 ニ緩解

後 ニ於 ケル聚落 發生 ノ状 況 及 ビ兩者 間 ニ於 ケル聚 落 發生 ニ關 スル 因果 關係 ノ有

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無 等何 レモ皆 酷似 セル ヲ認 ム.詳 言 ス レバ消 毒後 竝 ニ緩解 後 ノ兩 者 ニ於 テ各 々

聚 落發生 陰 性 ナル コ トア リ,陽 性 ナル コ トア リテ一定 セザ レ共 其 ノ多 ク ニ於 テ

陽性 ナル場 合 多 ク五 十 九消 毒 野 ヨ リ得 タル百 分率 ニ ヨ レバ,前 者 ニ於 テハ 陽性

七 七 ・九六 六%ナ ル ニ對 シ,陰 性 二 二 ・〇三 四%ニ シテ,後 者 ニ於 テハ陽性八 八 ・

一 三 三%ナ ル ニ對 シ,陰 性 一一 ・八六 七%ナ ル ノ比率 ヲ示 セ リ.然 レ共其 ノ聚落

發 生 數 ノ多 寡 ニ至 リテハ兩者 共何 レモ僅 少 ニ シテ,前 者 ニ於 テ六 箇,後 者 ニ於

テ六 箇,七 箇 及 ビ八 箇 ノ聚 落 ヲ發 生 セル 四例 ヲ除 クノ外 ハ,何 レモ皆五 箇以 下

ニ シ テ同 ジク陽性度 ノ著 シク低劣 ナル ヲ見 ル.而 シテ今五%「 ピク リ ン」酸 「ア

ル コホ ル」 ノ例 ニ倣 ヒタ兩 者 ニ於 ケル平 均聚 落 發生 數 ヲ求 ム レバ,前 者 ニ於 テ

一・四 七五箇 ,後 者 ニ於 テ一・五 九三箇 ニ シタ,之 ヲ對照 ニ比 シ亦 著 シク其 ノ臨

牀 的殺 菌 力 ノ大 ナル ヲ惟 ハ シムル モ ノア リ(第 四表及 ビ第 五 表參 照).

第 四 表

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第五表  實驗第三  大正九年二月十五 日施行

次 ニ消 毒後竝 ニ緩 解 後 ノ兩 者 ニ於 ケル聚 落發 生 ノ因 果關係 ヲ見 ル ニ,之 亦 全

ク五%「 ピ ク リ ン」酸 「アル コホ ル」ニ於 ケル ト同様 ニ シテ,消 毒 後陰 性 ナル場 合

ニ於 テ緩解 後陰 性 ナル場 合 ア リ,陽 性 ナル場 合 ア リ.消 毒 後陽性 ナル場 合 ニ於

テ緩 解 後陰 性 ナル場合 ア リ,陽 性 ナル場 合 ア リテ其 ノ關係 全 ク相 一致 シ,其 ノ

聚落 發生 數 ノ多寡亦 之 ニ準 ジ,其 ノ間 何等 定則 アル ナ シ(第 五 表參 照).

由是 觀 此,吾 人 ハ五%「 ピク リ ン」酸「アル コホル」ニ於 ケル ト同 ジク,八%「 ピ

ク リ ン」酸 「アル コホ ル」ヲ以 テスル一 囘 ノ塗 布 ニ於 テハ,未 ダ 尚 ホ五 糎 平 方 ノ

皮 膚 野 ヲ完全 ニ消 毒 スル コ ト能 ハズ,試 驗 管 内實 驗 ニ比 シ著 シク其 ノ殺 菌 力 ノ

減 弱 スル ヲ見 ル.而 シテ五%「 ピ ク リ ン」酸 「アル コホル」ノ條 下 ニ於 テ述 ベタル

ガ如 ク,本 實驗 ニ於 テモ等 シク人體皮 膚 ノ清 毒 ノ困 難 ナル ヲ認 メ,且 ツ 「ピ ク

リ ン」酸 「アル コホ ル」ニ ヨ リテ消 毒野 皮膚 ノ硬 化 セ ラ レ,爲 メニ皮 膚細 菌 ノ一

定皮 膚 深 部 中 ニ定著 セラル ル コ トアル ヲ見 タ リ.再 言 ス レバ八%「 ピク リン」酸

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「アル コホル」ノ臨 牀 的消毒 力 ハ殆 ンド五%「 ピ ク リ ン」酸「アル コホ ル」ノソ レ ト

一 致 シ,其 ノ間何 等 逕庭 アル ナ ク,試 驗 管 内實驗 ニ於 ケル ト其 ノ趣 ヲ一 ニス.

(三)「 ピ ク リ ン」酸 水飽 和液 ヲ以 テセル實驗結 果

一囘 ノ試藥 塗布 ノ下 ニ行 へ ル實驗結 果 ニ シテ前處 置 ヲ先驅 ス.消 毒 後 ノ平 均

聚 落 發生 數 ハ四 ・五 三三,緩 解 後 ノ平 均聚 落發 生 數 ハ一 二・四六 七 ニ シテ,緩 解

後 ノ聚 落 發生 數 ノソ レノ ヨ リ大 ナル ヲ見 ル.之 ヲ三 十消 毒野 ノ各 々 ニ就 キテ見

ル ニ,等 シク緩解 後 ノ聚 落 發 生數大 ナル場 合多 ク,試 驗管 内實驗 ニ反 シ 「ピク

リ ン」酸 水飽 和 液 ハ五%「 ピク リン」酸 「アル コホ ル」及 ビ八%「 ピク リン」酸 「アル

コホ ル」 ニ比 シ其 ル臨牀 的消毒 力 ノ著 シク劣 レル ヲ見 ル.而 シ テ最早 消毒 後竝

ニ緩解 後 ノ兩者 ニ於 テ聚 落發 生 陰性 ナル場 合 ヲ見 ズ,悉 ク陽性 ニ シテ五十 七 箇

ノ聚落 ヲ發 生 セル ヲ其 ノ最 トス.之 ヲ聚 落數 ノ多寡 ニ ヨ リテ類別 ス レバ十箇 以

下 ノ發 生 ヲ見 タルハ消 毒後 九 三 ・三 三 三%ニ シ テ,百 箇 以下 ノ發 生 ヲ見 タル ハ

六 ・六 六七%,緩 解 後 ニ於 テハ前者 ハ六 三・三 三 三%ナ ル ニ對 シ,後 者 ハ三六 ・六

六 七%ナ ル比 ヲ示 セ リ.而 シ テ依 然 トシテ試 驗管 内實驗 ニ於 ケル ニ反 シ 「ピク

リ ン」酸 水飽 和液 ノ八%乃 至五%「 ピク リン」酸 「アル コホル」ヨ リモ其 ノ臨 牀 的

消 毒 力 ニ於 テ劣 弱 ナル ヲ示 セ リ(第 六 表竝 ニ第 七表參 照).

第 六 表

備 考 表 中w. K.ト 記 載 セ ルハ1乃 至10箇 ノ聚 落 ヲ發 生 シ5%「 ピ ク リ ン」酸 「ア ルコ ホ ル」 ニ見 タ ル

ガ如 グ多 ク5箇 以 下 ナ ヲズ

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第七表  實驗第一  大正九年三月十三 日施行

蓋 シ此 ハ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ハ「アル コホル」溶 液 ナ ラザル ガ故 ニ,從 ツテ

「アル コホル」溶 液 ニ見 ルガ如 ク「アル コホ ル」ノ皮 膚 ニ對 スル 四 作用,即 チ(一)

脂肪 溶 解 作用,(二)殺 菌 作用,(三)表 皮 硬化 或 ハ鞣 化 作用,(四)滲 透 作用 ヲ缺

ク ガ故 ナルモ,主 トシ テ其 ノ皮膚 ヘノ塗 布 ニ當 リ溶媒 タル「アル コホル」ニ ヨ リ

テ直 ニ表皮 ニ存在 セル脂 肪 就 中表皮 表 面,細 胞 間隙 及 ビ組 織 裂 隙殊 ニ皮 膚 皺襞,

汗腺 竝 ニ毛 嚢 中 ニ存 在 セル脂肪 ノ溶 解 セ ラ レ,依 ツテ以 テ,表 皮 ト消 毒藥 トノ

接 觸 ヲ速 ニ可 能 ナ ラ シムル コ トナキ ト,一 ハ溶媒 タ ル「アル コホル」ノ強 キ深 達

作 用(廣 義 ニ於 ケル皮膚 滲 透作 用 ニ シテ,後 述 セル「アル コホル」ノ皮膚 滲 透 作用

ノ分類 條 下參 照)ニ ヨ リテ,皮 膚 深 部就 中細 胞 間隙,組 織 裂隙 ,殊 ニ皮 膚 皺 襞,汗

腺 竝 ニ毛嚢 中 ヘノ消毒 藥 ノ侵 入 ノ容易 ナ ラ シメ ラ レザ ル トニ因 リ,「 ピク リ ン」

酸 水飽 和 液 ノ消毒 作 用發揮 ニ於 テ大 ナル困難 ヲ感 ズル ガ故 ナ リ.即 チ第 一 ノ理

由 ハ余 ガ實驗操 作 ニ當 リテ明 ニ經驗 シタル所 ニシ テ,試 藥 ノ塗 布 ニ當 リ表 皮 表

層 ハ假 令 前處 置 ニ ヨル一程 度 マ デノ脂肪 ノ除 去 ア リ ト雖 モ,尚 ホ且 ツ其 ノ脂肪

ニ ヨ リテ浸漬 セラルル ニ ヨ リテ,試 藥 ト皮 膚 ト相 反撥 シテ多 ク ノ困難 ヲ感 知 セ

ル ニ ヨ リテ モ明 ニ シテ,此 ハ嘗 テフュー ル ブ リンゲ ルEurbringer,フ レー ハ ム

Freyham,ラ イ ニッケReinicke,シ ェツ フェルSchaeffer,尾 崎 及 ビ其 ノ他 諸 家 ル皮

膚 ニ 對 ス ル 「ア ル コ ホ ル」ノ作 用 ニ就 キ テ 認 メ タ ル 所 ニ シ テ,蓋 シ「ア ル コ ホ ル 」

ノ器 械 的清 淨 作用 ニ期 スル モ ノ トス.而 シテ其 ノ單 獨 ニ用 〓 ラ レタ ル ト,「ピク

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リ ン」酸 ノ溶媒 トシテ用 ヰ ラ レタ ル ト否 トニ ヨ リテ,何 等「アル コホル」ノ作 用

ニ差違 ヲ生 來 スル モ ノ ニ非 ザル可 シ,由 是觀 此,「 アル コホ ル」ハ試 驗 管 内實驗

ニ テ證 明 セル ガ如 ク,「 ビク リ ン」酸 ノ溶媒 トシテ用 ヰ ラルル 時,單 ニ其 ノ固 有

ノ殺 菌 力 ニ依 リテ「ビク リン」酸 ノ消毒 力 ヲ幇 助 スル 以外,亦 臨 牀 的消 毒 ニ當 リ

テハ別種 ノ貢 獻 ヲナス モ ノナル ヲ知 ル ヲ得可 シ.之 ヲ要 スル ニ「アル コホ ル」ハ

消毒 藥 ノ溶媒 トシテ用 井 ラルル 時,單 ニ其 ノ固 有 ノ殺 菌 力 ニ ヨ リテ消 毒藥 ノ殺

菌 力 ヲ著 シク幇 助 スル ノ ミナ ラズ,之 ガ臨牀 上 應 用 ニ際 シテハ,其 ノ強 キ器械

的清 淨 作用,竝 ニ皮 膚 深達 作 用 ニ ヨ リテ著 シク其 ノ消 毒效 果 ヲ助 長ス ル モ ノナ

リ.

由來消 毒 藥 トシテノ「アル コホル」ノ價値 ハ其 ノ加 水 セ ラルル ト否 トニ ヨ リテ

著 シク其 ノ度 ヲ異 ニ シ,適 度 ニ加 水 セ ラルル ニ ヨ リテ頓 ニ其 ノ價値 ヲ上昇 ス ル

モノ ナル ガ,此 ハ一 二「アル コホ ル」ノ其 ノ大 ナル動 物 細胞 竝 ニ細菌 ニ對 スル滲

用 發 現 ノ結果,純 「アル コホル」中 ニ於 テハ細 菌 ハ水 分 ヲ失 ヒテ萎 縮 乾燥 シ,

換 言 ス レバ細 菌膜 ノ硬 化 セ ラ レテ 「アル コホル」 ノ細胞 原 形 質 内侵 入 ノ妨 ゲ ラ

レ,從 ツテ其 ノ消 毒 作用 ヲ シテ逞 シクスル コ ト能 ハザ ル ニ反 シ,稀 釋 液 ニ於 テ

ハ却 テ細 菌 ノ膨 大 ヲ生 來 シテ「アル コホル」ノ細 菌 内移 行 ノ著 シク強 大 トナ リ,

換 言 ス レバ「アル コホ ル」ノ細 菌 ニ封 スル滲 透 作用 ノ増 強 セル結 果 其 ノ著 シキ殺

菌 カ ノ増 強 ヲ見 タル モノ ニ シテ,畢 竟適當 ナル加 水 ニ ヨ リテ其 ノ著 シキ殺 菌 力

ノ上 昇 ヲ見 ル モ ノナ リ.即 チ今「アル コホル」ノ消 毒藥 ノ溶媒 トシテ用 ヰ ラル ル

時,本 實驗 ニ見 ル ガ如 ク,其 ノ固有 ノ殺 菌 力ノ共 同 作用 ニ ヨ リテ,著 シク 「ビ

ク リン」酸 自 己 ノ殺 菌作用 ヲ幇 助 スル ガ如 キ場 合 ニ於 テハ,上 述 ノ如 キ「アル コ

ホル」 ノ適 當 ナル稀 釋 ニ因 スル殺 菌 力 ノ上 昇 ハ重 要視 ス如 キ事 項 ニシ テ,亦 溶

媒 トシテノ選 定 ニ當 リ「アル コホル」ノ濃 度 ノ顧 慮 セ ラル可 キ ヲ示 ス モ ノナ リ.

而 シ テ ア ー ル フ 〓ル ドAhlfeld,パ ー レVahle,ウ イ ソ ク レルWinkler,ル ス

Russ,マ ン テ ィーManthy,ヱ プ ス タ イ ソEpstein,ザ ル ツ ウ 〓ー デ ルSalzwedel,

ヱ ル ス ネ ルElsner,バ ル シ コ ッフBarsikow,ウ イ ル ギ ンWirgin,尾 崎,ブ イ ウ

イ ドBujwid及 ビ共 ノ他 諸 家 ノ種 々 ナ ル 材 料 ヲ以 テ セ ル 實 驗 的 研 究 ニ 於 テ,「 ア

ル コ ホ ル 」 ノ 殺 菌 カ バ 供 試 細 菌 ノ濕 潤 セ ル 度 ニ 比 例 シ テ ヨ リ大 ナ リ,換 言 ス レ

バ 「ア ル コ ホ ル 」ハ 適 度 ニ 稀 釋 セ ラ ル ル 時,著 シ ク 其 ノ滲 透 作 用 ヲ増 強 シ テ殺 菌

カ ヲ昇 騰 ス ル モ ノ ナ リ テ フ 知 見 ヲ 追 證 ス ル モ ノ ナ リ.

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而 シテ臨 牀 的消 毒 ニ於 テモ此 ル事 實 ノ アー ル フ〓ル ドAhlfeld,ザ ル ツ ウ〓ー

デルSalzwedel,マ ル キーMarquis及 ビ ルスRuss等 諸 氏 ニ ヨ リテ證 明 セ ラ レ

タ ル威 ナル ガ,先 輩尾 崎 良胤氏 ハ純「アル コホ ル」ヲ以 テセル皮 膚 ノ消 毒 ニ於 テ

前洗 滌 ヲ施 ス時 ハ著 シク其 ノ殺 菌作用 ヲ大 ナ ラシ ムル コ トヲ確 メ,其 ノ理 由 ト

シテ述 べ テ日 ク,單 獨 ニ純 「アル コホ ル」ヲ以 テセル消 毒 ニ於 テハ其 ノ大 ナル吸

水 作用 ニ ヨ リテ皮 膚 ハ著 シク萎 縮 シ,從 ツ テ皮 膚 面上 ニ髪疎 ニ附著 セル細 菌 ハ

除 去 セ ラルル コ トナ ク只 不完 全 ニ固 定 セ ラ レ,殘 餘細 菌 バ ミ僅 ニ滅殺 セ ラルル

ノ ミナル ニ反 シ,前 洗 滌 ヲ行 フ時 ハ,殘 留水分 ニ ヨ リテ「アル コホル」ノ稀 釋 セ

ラルル ニ ヨ リ,其 ノ硬 化 作用 ハ多少 トモ影 響 セ ラルル ト雖 モ,却 テ消 毒操 作 中

ニ於 テ表 面 ニ存 在 セル細菌 ハ表皮 鱗屑 ト共 ニ大 部 分除 去 セ ラル ル ノ ミナ ラズ,

其 ノ深 達 作用 ニ ヨ リテ皮膚 深部 ニ隱 遁 セル細 菌 ハ確 實 ニ硬 化 セ ラ レ,加 之,強

ク水 ニ ヨ リテ濕 潤 セ ラル ル細菌 ハ 良 ク「アル コホル」ノ滲 透 作用 ヲ大 ナ ラ シメ,

從 ツテ容 易 ニ滅 殺 セ ラルルガ故 ナ リ ト.

由是觀此,「 アル コホル」ハ加水 セラルル時單 ニ試驗管内實驗 ニ於 テル ミナラ

ズ,臨 牀 的實驗 ニ於 テモ其 ル著 シキ滲透作用發揮 ノ結果著 シク大 ナル殺菌カ ヲ

現 シ,加 之,其 ノ溶媒 トシテ用 ヰラルル時,其 ル殺菌力 ニ加 フル ニ皮膚 ニ對 ス

ル 器械 的清 淨 作用 竝 ニ深 達 作用 ノ附 加 ニ ヨ リテ,著 シク消 毒 藥 ノ作 用 ヲ幇 助 シ,

從 ツテ其 ノ消 毒 效果 ヲ シ テ一層 顯著 ナ ラシムル コ トアル ヲ知ル 可 ク,第 ニノ理

由 ル 自 ラ了解 セラル ル處 アル 可 シ.即 チ前述 セル消 毒 結 果 ニ就 キ テ消 毒 後 竝 ニ

緩解 後 ノ聚 落發 生 數 ヲ五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」及 ビ八%「 ビク リン」酸

「アル コホル」ル ソレ ト比較 對照 スル 時 ,其 ノ間吾 人 ヲ シテ自 ラ首肯 セ シムル モ

ノ ア リ.

而 シテ茲 ニ附言 セ ント欲 スルハ,尾 崎氏ハ「アル コホル」ノ皮膚 ニ對 スル作用

ニ就 キテ從來諸家 ル報告 シタル處 ヲ綜 合 シ,之 ニ自己 ノ實驗 ニ ヨル考慮 ヲ附加

シ 『「アル コホル」ノ皮膚 ノ消毒 ニ際 スル有效作用 ハ就中其 ノ殺菌力竝 ニ表皮 硬

化作用 ノ共同 ニ基 クモソニシテ,之 ニ其 ル強 キ滲透能力 竝ニ器械的清淨機縛,即

チ脂肪及 ビ汚物等 ノ溶解性状 ル多少共貢獻スル モノナ リ』 ト論斷 セルガ,余 ハ

之 ニ反 シ其 ノ強 キ滲透能力 竝 ニ器械的清淨機轉 ノ決 シテ忽諸 ニ附ス可 カ ラズ,

從 ツテ斯ル等差 ヲ附スル ノ當 ヲ得ザル ナキヤヲ主張 セ ント欲 ス.蓋 シ 「アル コ

ホル」 ノ殺菌カ バ其 ノ適度 ニ加水セ ラレタル ノ故 ニ動物細胞或 ハ細菌 ニ對 スル

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強 キ滲 透 作用 發現 ノ結 果,「 アル コホル」ノ細 胞 内移 行 ノ ヨ リ可 能 トナ リ,從 ツ

テ純「アル コホル 」ニ見 タル ガ如 キ細 菌 ヨ リ水 分 ヲ吸收 シテ恰 モ細 菌 ヲ シテ空 中

ニ テ乾 燥 セ シメタル ト同 ジク,此 ニ多 少 ノ殺 菌 作用 竝 ニ發育 制 止作用 ヲ付 與 ス

ル ノ ミナル ニ反 シ,其 ノ細 胞 内移 行 ニ ヨ リテ固 有 ノ殺 菌作 用發揮 ノ結 果 大 ナル

消毒 カ ヲ現 ハス モ ノ ニ シテ,若 シ夫 レ該滲 透作 用 ニ シテ發 現 セザ ラ ンカ,其 ノ

消 毒效 果 ノ微 力 ナル 知ル 可 キノ ミ.由 是 觀 此,「 アル コホル 」ノ滲 透作 用 ハ畢 竟

「アル コホル」ノ殺 菌 作用 ノ補 導 ヲナス モノ ニ シテ,此 無 ク シテ「アル コホル 」ノ

殺 菌作用 ノ發 現 ヲ望 ムハ蓋 シ木 ニ縁 リテ魚 ヲ求 ムル ガ 如 シ ト謂 フ可 シ.況 ンヤ

他 方 グ ロッシッヒ及 ビ其 ノ他 二,三 ノ學 者 ニ ヨ リテ唱 ヘ ラ レタル ガ如 ク,「 アル コ

ホル」ハ其 ノ小 ナル表面張力 ニヨ リテ細胞 間隙竝 ニ組織裂隙,就 中,皮 膚皺襞,

汗腺及 ビ毛嚢中ニ侵入 スル事 ヲ得 テ初 メテ,該 部 ニ定著 セル細菌 ニ對 シ殺菌作

用 ヲ逞 シクスル ヲ得ル ニ於 テオヤ.

亦一面余 ガ「ビク リン」酸水飽 和液 ノ實驗 ニ於 テ證明セルガ如 ク,若 シ夫 レ「ア

ル コホル」 ノ脂肪或 ハ汚物溶解作用 ニシテアラザ ランカ,表 皮 ト消毒藥 トノ密

接 ナル接觸 ノ不可能 トナ リ,從 ツテ細 菌ニ對 スル殺 菌作用 ヲ現 ハスニ由 ナク,

加之,器 械的清淨作用 ニヨリテ脂肪 ノ速 ニ除去 セ ラルル結果,細 胞 間隙,組 織

裂隙,就 中皮膚皺襞,汗 腺及 ビ毛嚢中ヘノ「アル コホル」ノ深達可能 トナ リ(廣

義 ニ於 ケル 滲 透作用 ニ シテ,次 述 セル 「アル コホル 」ノ皮膚 ニ對 スル 滲透 作用 ノ

條 下參 照)從 ツテ其 ノ消 毒カ ヲ シテ發 揮 セ シムル ヲ得 ル モノ ニ シテ,畢 竟 「ア

ル コホル 」 ノ皮 膚 ニ對 スル 四 作用 中其 ノ全 キ先 驅 ヲ負 擔 スル モ ノ ト謂 ア可 シ.

即 チ余 ハ如 上 ノ事實 ニ徴 シ,「 アル コホル 」ノ皮膚 ニ對 スル 滲透 作用 ヲニ分 シテ,

一 ハ「アル コホル」ノ皮膚 細胞 及 ゼ皮 膚 細菌 ニ對 スル 滲透 作 用(狭 義 ニ於 ケル 滲

透 作用),及 ビー ハ「アル コホル」ノ細胞 間隙,組 織 裂 隙,就 中皮 膚 級壁,汗 腺及

ビ毛 嚢 ヘノ浸入 作 用 即 チ皮膚 深達 作用(廣 義 ニ於 ケル 滲 透 作用)ノ ニ者 ニ分 タ ン

ト欲 ス.而 シテ前者 ハ適 度 ニ「アル コホル 」ノ加水 セ ラル ル ニ依 リテ著 シク其 ノ

滲 透速 度 ヲ上 昇 シ,從 ツテ「アル コホル 」ノ細 胞 竝 ニ細 菌 内移 行 ノ ヨ リ可 能 トナ

リ,曳 イ テ其 ノ殺 菌カ ヲ シテ著 シク上 昇 セ シムル モ ノニ シテ,之 ニ反 シ後者 ハ

其 ノ加水 セラル ル ト共 ニ著 シク其 ノ深 達 能力 ヲ減 少 シ,從 ツ テ其 ノ殺 菌力 ヲ シ

テ皮膚 深部 ニ至ル マ デ發揮 スル コ ト能 ハ ザル モ ノナ リ.蓋 シ此 ハ種 々 ナル 理 由

ノ裡 ニ存 スル アラ ンモ,主 トシテ(一)細 胞 間隙,組 織裂 隙 中 ニ存 在 セル 脂 肪 ル,

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「アル コホル 」ル稀 釋 セ ラル ル ニ ヨ リテ著 シク其 ル溶解 セ ラル ル コ トヲ減 少 セル

ト,(二)「 アル コホ ル」ル稀 釋 ニ ヨ リテ,其 ノ表 面張力 ノ増 大 スル トニ ヨ リ テ著

シク其 ノ細 胞 間隙 及 ビ組 織裂 隙 内侵 入 ノ困難 トナ レル結 果 ナル可 シ.

余 ハ曩 キニ尾崎 氏 ニ倣 ヒ實驗操 作中消 毒後 ノ殘留細 菌採 取 ヲ行 ヘル後,十 五

分間滅菌微温湯中 ニ消毒野 ヲ浸漬 シテ「アル コホル」ニヨル皮膚 竝 ニ細菌硬化作

用 ヲ緩解 シ,場 テ皮膚 深部 ノ殘留細 菌採取 ニ便 ジタルガ,本 實驗 ニ於 テハ水溶

液 ナルノ故 ヲ以 テ一見カカル操作 ノ必要 ナキガ如 キモ,余 ハ必ズ ヤ該緩解操作

ノ單 ニ「アル コホ ル」ニ ヨル皮膚 硬化作 用 ヲ溶解 シ去 ル ニノ ミ必 要 ナル モノ ニ非

ズ シテ,一 面 皮膚 深 部 ニ殘 留 セル細菌 採 取 ニ向 ヒ何 等 力利 スル處 アル 可 キヲ惟

ヒ,本 實 驗 ニ於 テモ敢 テ緩 解 操 作 ヲ施 行 シ,再 度 ノ殘 留細 菌採 取 ヲ試 ミタ リ.

然 ル ニ其 ノ結 果 ハ上 述 セル ガ如 ク平 均一消 毒 野 ヨ リ一 二 ・四 六 七箇 ノ聚 落 發生

ヲ見,果 シタ余 ガ豫 想 ノ徒 爾 ナラザ リシヲ確 知 セ リ.

今其 ノ理 由 ヲ講 究 スル ニ,蓋 シ此 ハ皮膚 深 部 ニ殘 留 セル細 菌 ハ,假 令 其 ノ「ア

ル コホ ル」 ニ ヨル硬 化作 用 ニ依 リテ同部 ニ定著 セ ラルル次 第 無 ク トモ,吾 人 ノ

以 テセル細 菌採 取方 法 ニ於 テハ到 底其 ノ採 取 不 可能 ナル ガ故 ニ,所 謂緩 解操 作

ヲ加 フル時 ハ恐 ラクー ハ皮膚 ノ膨脹 軟化 スル ト,一 ハ爲 メニ深 部 細 菌 ノ ヨ リ表

層 ニ這 出 スル カ,或 ハ ヨ リ採 取 容易 ナル状 態 ニ置 カルル トニ ヨ リテ,採 取 セ ラ

レタル モ ノ ニ シ テ,皮 膚 深部 細菌 採取 ニ對 シ緩 解操 作 ノ新 意 義 ヲ説 明 スル モ ノ

ナ リ.而 シテ吾 人 ハマイ スネル ニ從 フ消 毒 後 ノ細 菌採 取方 法 ノ決 シテ理 想 的 ニ

シテ萬全 ナル モ ノ トハ斷 言 セザ レ共,此 ノ間 ノ消 息 ノ決 シテ該操 作 ノ不 完 全 ニ

ノ ミ期 ス可 キモ ノ トハ信 セズ,況 ンヤ消毒 後 ノ細 菌採 取 後更 ニ再 度 ノ細 菌採 取

ヲ行 ヒタル培 養結 果 ニ於 テ殆 ン ド總 テ陰性 ナ リ シニ於 テオ ヤ.

對 照 實 驗

(四)八 五%「 アル コホル」ヲ以 テセル實 驗 結果

前處 置 ラ行 ヒ一囘 ノ塗 布 ヲ以 テ セル實 驗 ニ シテ此 ル際決 シテ摩 擦 セズ.故 ハ

之 ヲ以 テ如 何 ナル結 果 ヲ招致 スル ヤ否 ヤ ヲ確 メ,以 テ「ビク リン」酸 ノ消 毒作 用

ノ其 ノ溶媒 タル八 五%「 アル コホル」ノ存否 ニヨ リテ如 何 ナル影 響 ヲ受 クル モ ノ

ナル ヤ否 ヤ ヲ確 メンガ爲 メニ外 ナ ラズ.

四十五清 毒野 ヨ リ得タル消 毒後 ノ平均聚落發生 數ハ二四・二六 七箇 ニシテ,緩

解 後 ル平均聚落 發生 數 ハ一三・三三三箇 ナリ.即 チ緩解 後 ノソレノ消毒後 ノソ

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レヨ リ小 ナル ヲ見 ルレ.之 ヲ各消 毒野 ニ就 キテ見 ル モ同 ジク緩 解 後 小 ナル場 合 多

ク,最 早兩 者 ニ於 テ陰 性 ナル 場合 ヲ見 ズ.而 シテ聚落 發 生 數 ハ何 レモ百箇 以下

ナル モ之 ヲ數 ノ多 寡 ニ ヨル類 別 ニ ヨ レバ,消 毒 後 ニ於 テ十箇 以 下 ハ 二八 ・八 八

九%ナ ル ニ對 シ,百 箇 以下 ハ七 一 ・一一 一%ナ ル ニ反 シ,緩 解 後 ニ於 テハ前者 ハ

四 四・四四 四%ニ シテ,後 者 ハ五 五 ・五五 六%ヲ 占 メ,兩 者 ヲ通 ジテ十 箇 以上 ノ

場 合多 ク其 ノ最 大發生 數 ハ八 十 二箇 ヲ算 セ リ(第 八表 及 ビ第九 表參 照).

第 八 表

備 考 表 中w. K.ト 記 載 セ ルハ1乃 至10箇 ノ聚 落 ヲ發 生 シ5%「 ビ ク レン」酸 「ア ル ヨ ホ ル」 ニ見 タ ル

が如 ク多 ク5箇 以 下 ナ ラズ

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第九表  實驗第三  大正九年三月二十二日施行

之 ヲ五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ニ於 ケル結果,即 チ平 均消 毒後 ニ於 テ

一 ・五 二 三箇 ,緩 解 後 ニ於 テ一 ・三 三箇 ノ聚落 發生 ヲ見 タル ニ比 ス レバ,其 ノ消

毒 力 ル著 シク劣 弱 ナル ヲ知 ル可 ク,試 驗管 内實驗 ニ於 ケル ト一致 セル ヲ見 ル.

而 シテ殊 ニ其 ノ消 毒 後 ニ於 ケルレ聚落 數 ノ,緩 解 後 ニ於 ケル ソ レヨ リヨ リ大 ナル

ハ,尚 ホ良 ク八五%「 アル コホル」ノ殺 菌 力 ノ小 ナル ヲ證 スル モ ノ ニ シテ,彼 ノ

「アル コホル」溶 液 ナ ラザル 「ビ ク リン」酸 水飽 和 液 ノ清 毒 後 ノ結 果 ,即 チ四 ・五

三 三箇 ヨ リモ著 シク劣 レリ.然 レ共 緩 解 後 ニ於 テハ兩 者 ニ於 テ甚 シク差 違 アル

ヲ見 ズ,八 五%「 アル コホル」 ノ一 三 ・三三 三 箇 ナル ニ對 シ「ビク リン」酸 水飽 和

液 ハ一二 ・四 六七 箇 ナ リ.即 チ前者 ハ其 ノ強 キ滲 透 作 用 ヲ有 スル モ殺 菌力 ニ乏

シク,後 者 ハ強 キ殺 菌力 ヲ有 スル モ滲 透作 用 ニ乏 シキ ヲ以 テ,蓋 シ深部細 菌 ニ

對 シテ其 ノ殺 菌力 ヲ逞 シク スル コ ト能 ハ ザル ガ故 ナル可 シ.

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八 五%「 アル コホル」ノ緩 解 後平 均 一三 ・三 三三 箇 ノ聚 落 ヲ發 生 セル ニ反 シ,

五%「 ビク リン」酸 「アル コホル 」ノ平 均 一・三三 箇 ノ聚落 發生 ヲ見 タル ハ,前 者

ハ其 ノ強 キ滲透作 用 ニ ヨ リテ皮膚 深 部 ニ達 ス可 キモ殺 菌カ ニ於 テ缺乏 セル ガ故

ニ大 ナル聚落 ノ發生 ヲ見 タル ニ反 シ,後 者 ハ「ビ ク リン」酸 ル強 大 ナル殺 菌カ ニ

加 フル ニ其 ノ溶媒 タル「アル コホル」ノ皮膚 深部 ヘ ノ「ビク リン」酸 誘導 ニ ヨ リテ

其 ノ著 シキ殺 菌力 ノ發 現 ヲ見 タル モノ ニ シ テ,是 ニ由 ツ テ此 ヲ觀 レパ,「 ビク リ

ン」酸「アル コホル」ノ臨 牀 的消 毒力 ハ素 ヨ リ「ビ クリン」酸 自己 ノ強 大 ナル殺 菌

力 ニ因 ス レ共,亦 一面 試驗 管内實驗 ニ於 ケル ト反 シ,甚 ダ著 シク溶媒 タル「アル

コホ ル」 ノ消 毒力竝 ニ皮膚 深達 作 用及 ビ器 械 的清淨 作 用 ノ幇 助 ニ ヨ リテ清 毒 效

果 ノ増 大 ヲ見 ルモ ノ ナ リ.換 言ス レバ「アル コホ ル」ハ消 毒藥 ノ匹敵 セル溶媒 ト

シテ用 〓 ラルル時,試 驗管 内實 驗 ニ於 ケル ト等 シク其 ノ消 毒效 果 ニ對 シ大 ナル

貢 獻 ヲ致 ス モ ノナ リ.

(五)十%沃 度丁幾 ヲ以 テセル實驗結果

(イ)前 處置 ヲ伴 ヒ一囘 ノ塗布 ヲ以 テセル實驗結果

先 ヅ消 毒 後 ノ聚落 發生 ノ有無 ニ就 キテ見 ルニ,第 十 表 竝 ニ第 十 一表 ニ掲 出 セ

ル ガ如 ク聚 落 發生陰 性 ナル コ トア リ,陽 性 ナル コ トア リテ一定 セザ レ共,之 ヲ

四十消 毒 野 ヨ リ得 タ ル百分率 ヨ リ見 レバ,概 シテ陽性 ナル場 合 多 ク,陽 性 六 五

%ナ ル ニ對 シ,陰 性 二五%ノ 少 數 ヲ示 セ リ.然 レ共 其 ノ聚 落 發生 數 ノ多寡 ニ至

リテハ極 メ テ少 數 ニ シ テ,十 二箇 ノ聚落 發生 ヲ見 タル一 例 ヲ除 クル外 ハ何 レモ

皆五箇 以下 ニ シテ,從 ツテ假 令其 ノ陽性率 多 シ ト雖 モ其 ノ陽性度 ニ至 リテハ極

メ テ劣 弱 ナル ヲ見 ル.而 シテ今五%「 ビク リン」酸「アル コホル」ノ例 ニ倣 ヒテ全

消 毒 野 ヨ リ得 タル全 聚落 發 生數 ヲ各 消毒 野 ニ分 配 ス レバ,其 ノ平 均聚 落 發生 數

ハ一 ・四七 五箇 ナル ヲ見,五%「 ビク リン」酸 「アル コホ ル」 ノ ソ レト大差 ナ キ

ヲ知 ル.

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第 十 表

第十一表  實驗第二  大正九年三月六日施行

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次 ニ緩 解 後 ノ聚 落 發生 ノ有 無 ニ就 キ テ見 ルレニ,同 ジク第 十表 竝 ニ第 十 一表 二

示 セル ガ如 ク其 ノ状 態恰 モ消 毒 後 ノ ソ レ ト酷似 シ,緩 解 後聚落發 生 陰 性 ナル コ

トア リ,陽 性 ナル コ トア リテ一定 セザ レ共,之 ヲ全 實驗 ヨ リ見 レバ同 ジク陽 性

ナル場 合 多 ク,陽 性六 五%ナ ル ニ對 シ陰 性 三五%ノ 比率 ヲ示 セ リ.而 シテ其 ノ

聚落 發生 ノ多寡 ニ至 リテモ亦 全 ク消 毒後 ノ ソ レ ト一致 シ,何 レモ皆五 箇 以 下 ニ

シテ從 ツテ其 ノ陽性 度 ノ著 シク低 劣 ナル ヲ見 ル.之 ヲ消 毒 後 ノ ソ レニ倣 ヒテ各

消 毒野 ニ分配 セル平 均聚落發 生數 ヲ求 ム レバ,一 ・一五 箇 トナ リ,之 亦 五%「 ビ

.クリ ン」酸「アル コボル」ノソ レト大 差 ナ キ ヲ見 タ リ.

而 シ テ五%「 ビク リン」酸「アル コホル」ノ條 下 ニ述 ベタ ル ト同 ジク,消 毒 後竝

ニ緩 解後 ノ兩 者 ニ於 テ其 ノ聚 落發 生 ニ關 スル因 果關 係 ノ存 スル アル ヤ否 ヤヲ見

ル ニ,其 ノ間 ノ種 々 ナ ル現象 全 ク五%「 ビ ク リン」酸「アル コホ ル」ニ於 ケル ト一

致 シ,消 毒 緩聚落發 生陰 性 ナル場合 ニ於 テ緩解 聚落 發生陰 性 ナル コ トア リ,陽

性 ナル コ トア リ,消 毒後聚落 發生 陽性 ナ ル場 合 ニ於 テ緩 解後 聚落 發生 陽性 ナル

コ トア リ,陰 性 ナル コ トア リテ 一定 セズ,加 之,兩 者 相 共 ニ陽性 ナル場 合 ニ於

テ其 ノ聚 落 發生 數 ノ多寡 ヲ見 ル ニ,之 亦兩 者 ニ於 テ交 互 ニ大 ナル コ トア リ テ一

定 セズ,其 ノ間何等 定則 ナキ ヲ知 ル.然 レ共消 毒 後 ニ於 テ陽性 ナル場 合 ハ概 シ

テ緩 解 後 ニ於 テモ陽性 ナル場 合 多 キヲ見 タ リ.

由是 觀 此,一 〇%沃 度丁幾 ノ一 囘 ノ塗 布 ヲ以 テスル皮膚 ノ消 毒 ニ於 テハ,吾

人 ハ五%「 ビク リン」酸「アル コホル 」ニ於 ケル ト同 ジク假令 其 ノ數 例 ニ於 テ消 毒

後竝 ニ緩 解 後 ノ聚 落 發生 陰性 ニ シテ,其 ノ全 キ消 毒效 果 ヲ擧 ゲ得 タル ダ如 ク思

惟 セ ラル ル 場 合 ア リ ト雖 モ,此 ハ後章 ニ於 テ述 ブル ガ如 ク(「 ビク リン」酸 ノ滅

菌 度 ニ關 スル實 驗條 下參 照),實 ハ外觀 上無 菌 ナル状 態 ナル ヲ以 テ,未 ダ尚 ホ完

全 ナル消 毒結 果 ヲ獲 得 スル コ ト能 ハズ,從 ツテ茲 ニ モ亦試 驗管 内實驗 ニ比 シ人

體 消 毒 ノ困 難 ナル ヲ知ル モノ ナリ.而 シテ此 ヲ五%「 ビク リン」酸「アル コホル」

及 ビ八%「 ビク リン」酸「アル コホル 」ノ實驗 結 果 ト比較 スル 時,其 ノ間何等 逕 庭

アル ナク殆 ン ド相 一致 ス.

(ロ)前 處 置 ヲ件 ハズ一囘 ノ塗布 ヲ以 テセル實驗結果

消毒後ノ平均聚落 發生數ハ一・六七五箇,緩 解後 ノ平均聚 落發生數ハ一・三七

五 箇 ナリ.而 シテ四十消毒野 ノ各例 ニ就 キテ兩者 ニ於 ケル消毒結果 ノ陽性率竝

ニ陰性率 ノ多寡 ヲ見ル ニ,前 者 ニ於 テハ陽性七十%ナ ル ニ對 シ,陰 性三十%ニ

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シタ,後 者 ニ於 テハ陰 性 二七 ・五%ナ ル ニ對 シ,陽 性 七 二・五%ヲ 示 シ,何 レモ

其 ノ陽 性率 ヨリ大 ナル ヲ見ル.然 レ共 其 ノ聚 落 發生數 ニ至 リテハ極 メ テ少數 ニ

シテ,一 例 ニ於 テ八 箇 ノ聚 落 發生 ヲ見 タル ノ外 ハ何 レモ五箇 以下 ヲ示 シ,亦 殺

菌 力 ノ著 シク強 大 ナル ヲ惟 ハ シムル モノ ア リ(第 十 二表參 照).

第 十 二 表

此 ヲ前處 置 ヲ伴 ヘル 實驗(イ)ト 比 較 スル 時,五%「 ビク リン」酸 「アル コホル 」

ノ實驗 ニ於 テ見 タル ト異 リ,其 ノ潰 毒 結 果 ニ於 テ大 ナル 逕 庭 ヲ見 ズ,只 僅 ニ其

ノ劣 レル ヲ見ル ノ ミ.由 是 觀 此,一 〇%沃 度丁 幾 ニ於 テハ假令 石 鹸 ト水 トヲ以

テ セル短 時間 ノ洗 滌 ニ ヨ リテ,皮 膚 表面 ニ鬆 疎 ニ附著 セル 汚物 ヲ除去 スル 事 ナ

ク トモ,肉 眼 的 ニ不 潔 ナ ラザル 手竝 ニ前膊 ル皮膚 ノ消 毒 ニ際 シ テ,大 ナル 障碍

ヲ感 ズル コ トナク,沃 度丁 幾 ノ消毒 力 ノ試驗 管 内實驗 ニ於 ケル ト同 ジク,臨 牀

的消 毒力 ニ於 テモ亦五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ニ優 レル 處 アル ヲ知 ル可

シ.

(ハ)前 處 置 ヲ伴 ヒ二囘 ノ塗布 ヲ以 テセル實驗結果

グ ロッシッヒ氏皮膚消毒法 ニ從 ヒタル モノニシテ,第 一 囘 ノ塗布 後五分 ニシテ

第 二囘 ノ塗布 ヲ行 ヒ,乾 燥後(約 二分 後)之 ヲ中和 シ,爾 餘 ノ操作 ハ本編 ノ初 頭

ニ於 テ掲ゲタル處 ニ憑據ス.消 毒 後得タル聚 落 發生 數ハ平均 一・二 四四箇 ニシ

テ,緩 解後得 タル聚落發生數 ハ平均一・○八九 ナ リ.而 シテ四十五消 毒野 ニ就 キ

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テ其 ノ結 果 ノ陽怪 竝 ニ陰 性率 ヲ見ル ニ,消 毒 後 ニ於 テハ前者 ハ六 〇%,後 者 ハ

四〇%,緩 解 後 ニ於 テハ前 者 ハ六 四 ・四四 四%,後 者 ハ三五 ・五五 六%ニ シテ兩

者 ニ於 テ何 レモ陽性 ナル 場 合多 キ ヲ見ル.然 レ共 其 ノ聚 落 發生 數 ニ至 リテハ同

ジク僅 少 ニ シ テ,各 例 ヲ通 ジテ何 レモ皆五 箇 以 下 ニ シテ甚 ダ強 大 ナル殺 菌 力 ヲ

現 ハ セ リ(第 十二表 參 照).

此 ヲ一 囘 ノ塗 布 ヲ以 テセル 實 驗(イ)ト 比較 スル 時,其 ノ消 毒 結 果 ニ於 テ更 ニ

優 レル モノ ア リ.然 レ共 仔細 二觀察 スル 侍,所 謂 グ ロッシッヒ氏 法 ニ ヨ リテ數 分 間

後 ニ獲 得 セ ラル ル 優 秀 ナル消毒 結果 ノ大部 分 ハ,既 ニ第 一 囘 ノ塗 布 ニ ヨ リテ達

成 セ ラル ル モノ ナル コ トヲ知ル ヲ得 可 シ.之 ヲ先 人 ノ實驗 二徴 スル ニ野 口氏 ハ

嘗 テ沃 度丁 幾 ヲ以 テセル 實驗 的研 究 ニ於 テ(1911),吾 人 ハ一 囘 ノ沃 度丁幾 塗 布

後 二分 ニ シテ已 ニ消毒 野 ノ乾 燥 セル 時 ハ手術 ヲ開始 シ得 可 ク,グ ロッシッヒ氏 ニ

據ル 第 二囘 ノ塗 布 ハ必 ズ シモ絶 對 ニ必 要 ナル モ ノ ニ非 ズ シテ,此 ハ第 一囘 ノ塗

布 後遺 殘 セル細 菌 數 ノ之 ニ ヨ リテ僅 ニ低 下 セ ラル ル ノ ミナル ガ故 ナ リ ト述 べ,

尾 崎 氏亦僅 ニ之 卜時 ヲ異 ニ シ(1912),同 様 ナル 實驗 ヲ追 試 シテ沃 度丁幾 ヲ以 テ

スル皮 膚 ノ消毒 ニ於 テハ已 ニ第 一 囘 ノ塗 布 後一 分 ニ シテ他 ノ消 毒 法 ヲ場 テ シテ

ハ殆 ン ド達 成 シ得 ザル 細菌 減 少 ヲ生 來 シ,且 ツグ ロッシッヒ氏法 ノ數 分後 ニ シテ

獲 得 シ得 ル消毒 作 用 ノ大部 分 ハ,既 二第 一 囘 ノ塗布 ニ ヨ リテ成 就 セ ラルル モ ノ

ナ リ.而 シテ假 令 二 囘 ノ塗 布 ヲ以 テスル モ決 シテ皮膚 ノ無菌 状 態 ヲ獲 碍 シ得 ズ,

加 之,嫌 惡 ス可 キ皮 膚 刺 戟症 状 ヲ呈 スル短 所 アリ ト稱 シ,余 ノ結果 ト酷似 セル

ヲ見ル.蓋 シ此 ノ間 ノ消 息 ハ五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ニ於 テモ既 ニ余 ノ

證 明 シタル 處 ニ シテ,其 ノ消毒 結 果 ハ五%「 ビク リン」酸「アル コ秒ル」ニ於 ケル

ト大 差 ナ シ.

之 ヲ要 スル ニ五%「 ビク リン」酸「アル コ秒ル 」ハ臨 牀的消 毒 力 ハ,試 驗管 内 實

驗 ニ於 ケル ガ如 ク其 ノ絶 對價 バ一○%沃 度丁 幾 ノソ レニ及 バザ レ共,豫 メ消 毒

野 ヲ石鹸 ト水 トヲ以 テ短 時間(約 一分 間)洗 滌 シ,尋 デ舊 態 ニ乾燥 セ シムル 時 ハ

敢 テ之 ニ劣 ラズ,其 間何等 逕庭 アル ナ シ.由 是觀 此,ヂ プ ソンノ提 言 ニ見ル ガ

如 ク,五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ハ皮膚 消毒 藥 トンテ能 ク一〇%沃 度丁 幾

ニ代 用 シ得ル モ ノ ナ リ.加 之,五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」二於 テハ沃 度丁

幾 ニ見ル ガ如 ク往 々 ニ シ テ皮 膚 ヲ刺 戟 スル コ トナク,從 ツテ此 ヲ中和 スル ノ面

倒 ナキ ヲ以 テ消 毒 操作 ノ短 縮 ヲ來 シ,且 ツ皮膚 中 ニ長 ク止ル ノ故 ヲ以 テ手 術中

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滑毒 野 ノ深部細菌這出ニ ヨル不潔 ヲ防止 ヌル ニ效 アリ,此 點却 テ沃 度丁幾 ニ優

レル ヲ見ル.只 其 ノ消毒操作 ニ於 ラ前處置 ヲ要 スル ノ故 ニ,或 ハ時間的關係 ニ

於 ラ沃 度丁幾 ニ劣 レル ガ如 キモ,此 ハ現今吾人ガ沃度丁幾消毒 法 ニ當 リテ手術

前二,三 時間 ニ シテ石鹸 ト水 トヲ以 テ手術野 ヲ剃毛 シ,尋 デ消毒藥塗布 前マデ

ニ乾燥 セ シムル ニ徴 ス レバ何等其 ノ操作 ニ於 テ長時 ヲ要 スル コ トアル ナシ.只

急速消毒 法 ニ於 テ其 ノ前處置 ヲ要 ヌル ノ故 ニ適 セザル ガ如 キモ,二 囘 ノ塗布實

驗 ニ於 テ證明 シタル ガ如 ク,更 ニ大 ナル消毒結果 ヲ得ル ガ故 ニ或 ハ之 ヲ應用 シ

テ其 ノ大 過 ナカランカヲ惟 フ.況 ンヤ二度 ノ塗布 ニ於 テモ何等皮膚 ニ對スル刺

戟作用 ヲ呈 セザル ニ於 テオヤ.而 シラ茲 ニ注意 ヲ要 スル ハ第 二囘 ノ塗布 後數分

間 ニシテ得 ラルル消毒結果 ノ大部分 ハ,第 一囘 ノ塗布 後既 ニ達成 セラルル コ ト

ニシテ,由 是觀此,第 一囘塗布 ノ正 ニ力強 ク企圖 セラルル コトノ重要 ナル ヲ知

ル可 シ.

終 ニ莅 ミ比較對照 ニ便ぜンガ爲 メ各消 毒藥 ノ消 毒結果 ヲ一表 ニ纒 メテ次 ニ載

セタ リ.

第 十 三 表

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第五目  結 論

(一)五%「 ビ ク リ ン」酸 「アル コホル」ハ一囘 ノ塗布 ニ ヨ リラ吾 人 ソ皮膚 ヲ完

全 ニ滅 菌 スル ヲ得 ザ レ共,之 ヲ一〇%沃 度丁 幾 ノ ソ レ ト比 較 スル時 甚 ダ強大 ナ

ル殺 菌 力 ヲ現 ハ スヲ知 ル.即 チ其 ノ絶 對消 毒 價 ハ試 驗管 内實驗 ニ於 ケルガ如 ク

稍 沃 度丁幾 ニ劣 ル處 ア レ共,現 今 ノ沃 度丁幾 ヲ以 テスル皮 膚 ノ消 毒 ニ際 シ行 ハ

ル ル消 毒野 ノ剃 毛,即 チ消 毒 前二,三 時間 ニ シテ消 毒野 ヲ石 鹸 ト水 トヲ以 テ短 時

間 洗滌 シ,尋 デ舊 態 ニ乾燥 セシムル時 ハ,毫 モ沃 度丁幾 ニ劣 バレ處 アル ナ シ.

(二)五%「 ビ ク リ ン」酸 「アル コボル」ヲ以 テス ル實驗 ニ於 ラ前處 置 ヲ行 ヒ,

第 一 囘 ノ塗 布 後五 分 ニ シ ラ第 二囘 ル塗布 ヲ行 フ時,其 ノ消 毒 結 果 ハ第 一 囘 ノ塗

布 ニ ヨ リラ得 ラルル處 ル ソ レヨ リ大 ナル モノ アル ヲ知 ル.然 レ共 第 二囘 ノ塗 布

後數分 ニシ テ得 ラルル強 大 ナル消毒 作 用 ノ大部 分 ハ,第 一 囘 ノ塗 布 後既 ニ達 成

セラル ル モ ノニ シ ラ,沃 度丁 幾 ヲ以 テセル實驗(グ ロッシッヒ氏 法)ニ 於 テモ其 ノ

同 様 ナル ヲ證 セ リ.而 シテ其 ノ清 毒結 果 ハ兩者 間 ニ於 ラ何 等逕 庭 アル ナ シ.

(三)八%「 ビク リ ン」酸「アル コホル」ノ消 毒 力 ハ五%「 ピク リ ソ」酸 「アル コホ

ル」ル消毒 力 ト等 シキニ反 シ,「 ピ ク リン」 酸 水飽 和液 ノ消 毒 力 ハ試 驗 管 内實驗

ニ於 ケル ト反 シ其 ノ著 シク劣 レルLヲ見 ル.此 ハ一 ニ其 ノ溶 媒 タル物 質 ノ 「アル

コホ ル」 ナ ラザル ニ因 スル モ ノ ニ シ ラ,蓋 シ之「アル コホル」ノ「ピク リ ン」酸 ル

殺 菌 作用 ニ對 スル幇助 作 用之無 キニ由 ル モ ルナ リ.然 リ而 シテ臨牀 的消 毒 ニ於

ラハ「ピク リン」酸 ル水溶 液 ノ其 ノ目的 ニ適 セザ ル ヲ證明 スル モ ノナ リ.

(四)五%「 ピク リ ン」酸 「アル コボ ル」ノ強大 ナル殺 菌 作用 ハ試 驗管 内實驗 ニ

於 テ證 明 セル ガ如 ク,素 ヨ リ其 ル溶媒 タル八 五%「 アル コホル」ル殺 菌 作用 ニノ

ミヨル モ ノニ非 ズ シテ,「 ビク リン」酸 自己 ノ強 大 ナル1殺菌 力 ニ因 スル モ ノ ナ レ

共,斯 ク ノ如 キ「ピク リ ン」酸 ノ強 大 ナル殺 菌 作用 ハ著 シク其 ル溶媒 タル八五%

「アル コホル」ノ殺 菌 力竝 ニ皮 膚 ニ對 スル器 械 的清淨 作用 及 ビ其 ノ強 大 ナバレ皮膚

深 達作 用 ノ幇助 ニ ヨ リラ始 メテ達 成 セ ラル ル モル ナ リ.蓋 シ之 試 驗管 内 實驗 ニ

於 ケル ト聊 カ其 ノ趣 ヲ異 ニス.

(五)消 毒藥 ノ溶媒 トシラ「アル コホル」ノ優 秀 ナル殺 菌 力幇助 作用 ヲナス コ

トアル ハ,蓋 シ其 ノ強 大 ナル殺 菌 カ ニ ヨ リラ消 毒 藥 固 有 ノ殺 菌 力 ヲ著 シク幇 助

スル ニ ア レ共,之 ガ臨 牀 上應 用 ニ當 リテハ更 ニ其 ノ器械 的清 淨作 用 竝 ニ強 大 ナ

ル皮 膚 深達 作 用 ル附加 ニヨ リテ,著 シク其 ノ消毒 效 果 ヲ増大 セ シムル モ ノニ シ

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テ,併 セテ其 ノ強 キ皮 膚 硬化 作 用 ニ ヨリテ皮膚 深 部 ニ存在 セル細 菌 ヲ該部 ニ固

定 シ,以 テ消 毒藥 ニ ヨ リテ達 成 シ能 ハザル滅 菌操 作 ヲ補 足 ス ル モノ ナ リ.

(六)「 アル コホ ル」ノ皮膚 ニ對 スル作 用 ハ主 トシラ(イ)器 械 的 清淨 作用,(ロ)

殺 菌作用,(ハ)滲 透 作用,(ニ)表 皮 硬 化 或 ハ鞣 化 作用 ル四 者 ニ シテ,各 々其 ノ

消毒 操 作 ニ際 シ特 有 ノ能 力 ヲ發揮 シ,其 ノ間何 等 等差 ナク,從 ツテ之 ニ優劣 ヲ

附 スル ノ當 ヲ得 ザ ルレモ ノナ リ.

(七)五%「 ピク リ ン」酸「アル コホル」ヲ以 テセル皮 膚 ノ稍毒 ニ於 テ,溶 媒 タル

八 五%「 アル コホ ル」ハ其 ノ溶媒 ト シテノ貢 獻 以外,其 ノ強 力 ナル表 皮 硬化 作用

ニ ヨ リテ殘 存 セル生 存細 菌 ヲ皮 膚 ノ深 部 ニ固 定 シ,以 テ一定期 間其 ノ表 皮表 層

ニ現 出 スル ヲ妨 ゲ,「 ピ ク リン」酸 ニ ヨリク遂 行 シ能 ハ ザル消毒 作用 ヲ別 途 ヲ以

テ幇 助 スル モ ノニ シ テ,蓋 シ消毒 後試 驗 野 ノ無 菌 ナル ニ反 シ,表 皮 硬 化 作用 ヲ

緩解 スル 時 ハ甚 ダ屡 尚 ホ數 箇 ノ聚 落 發生 ヲ見 タル ハ此 ル故 ニ シテ,所 謂 外觀 消

毒(Scheindesinfektion)ノ 語 アル所 以 ナ リ.

(八)消 毒 後 ノ殘 除 生菌 ニ シテ一 定 ノ皮 膚 深 部 ニ存 在 セル モ ンハ,假 令 其 ノ

「アル コホル」ニ ヨ リラ硬 化 セ ラルル コ ト無 シ トスル モ,吾 人 ノ現 今途 行 シ得 ル

マイ スネ ル其 ノ他 ノ細 菌採 取 法 ヲ以 テ シテハ之 ヲ採 取 スル 事能 ハズ,所 謂 微温

湯皮膚 緩 解 法 ニ ヨ リラ一定 度 マデ之 ヲ助成 シ得 ル モノ ニ シテ,之 余 ノ新 知見 ナ

リ.

(九)器 械 的皮膚 清潔 法 ハ表 皮 麦層 ニ存 在 セル細 菌 減 少 ニ對 シ一程 度 マ デノ

貢 獻 ヲナス モ ル ナ リ.

(十)五%「 ビク リ ン」酸「アル コホ ル」ヲ以 テセル皮 膚 消毒 後殘 留 セル細 菌 ハ,

稀 ニ白色 葡 萄状 球 菌 ノ存 ス ル アル ヲ見 レ共,多 ク雜 菌 ナ リ.

(十 一)五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」及 ビ 八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ

ル」 ハ ヂ プ ソンノ提 言 ニ見 ルガ如 ク前處 置 ヲナス時 ハ ,一 〇%沃 度丁幾 ニ代用

シ得ル モ ノニ シテ,何 等皮膚 ニ對 スル刺戟 作用 ヲ呈 スル ナク,從 ツテ之 ヲ中和

ネ ル ノ面 倒 ヲ要 セズ,延 イ テ消 毒 操 作 ノ短 縮 ヲ來 シ,且 ツ波 膚 中 ニ長 時間 留 ル

ヲ以 テ手術 中 ニ於 ケル手術 野 ノ感 染 ヲ防 グニ一 定 ル效 ア リ,寧 ロ其 ノ優 レル ヲ

見ル.

(十 二)五%「 ビ ク リ ン」酸 「アル コホル」ヲ以 テスル皮膚 ノ消 毒 ニ於 テハ ,其

ノ一囘 ノ塗 布 ニ ヨリテ消 毒 效果 十分 ナ ラ ンモ,例 之 ,指 頭 ル如 キ比 較 的消 毒操

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作 ノ困難 ナル箇 所 ニ於 テハ二囘 ノ塗布 ヲ試 ムルノ好果 アラント信 ズ.殊 ニ急速

消 毒法 ニ於 テ亦用 〓得可 シ.

(十 三)五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」竝 ニ一 〇%沃 度丁幾 ヲ以 テスル モ未

ダ吾 人 ハ完全 ナル皮膚 ノ消 毒 ヲ遂 行 スル コ ト能 ハズ,之 試驗管 内實驗 ニ反 シ生

活體消 毒 ノ困難 ナル所 以 ニ シテ,蓋 シ技膚 ル解 剖學 的 造構 ノ複雜 ナル ニ基 因 ス.

第三項  實驗第 二 皮膚 ニ附著 セシメタル病原菌 ニ對 スル

「ピク リン」酸 ノ殺 菌力ニ就 テ

第一目  實驗 ノ目的

「ビク リン」酸 ノ皮膚 ニ附著 セハ病原 菌 ニ對 スル消 毒力 ヲ檢 セ ンガ爲 メ,人 工

的 ニ余 ル手指 末節 ノ掌面 ニ黄 金色化 膿 性葡 萄状 球菌 ヲ傳 染 セ シメ ラ實驗 ヲ遂行

シ,實 驗 第一 ニ於 ケ ル結 果 ト參照 シテ「ビク リ ン」酸 ノ臨 牀 的消 毒力 ニ關 スル檢

定 ル 一 助 ト ナ セ リ.

第二目  實 驗 準 備

實驗 ニ供 シタル黄金色化膿性葡萄状球菌 ハ試驗管 内實驗 ニ用 井タルモ ノニシ

テ,之 ヲ更 ニ三度天竺鼠 ノ腹腔 ヲ通過セ シメ,斯 クシテ得 タル純粹培養 ヨリ更

ニ實驗 ル都度新鮮培養 ヲ行 ヒテ之 ニ供 セリ.

消 毒藥 トシテハ八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コ

ホル」,一 ・二%「 ピク リ ン」酸「アル コホ ル」及 ピ「ピク リン」酸 水飽 和 液 ノ外 ニ,

對照 トシテ八 五%「 アル コホル」,六 〇%「 アル コホル」及 ビ一 〇%沃 度丁幾 ノ三

種 ヲ用 〓,之 ニ各 匹敵 セル中 和藥 ヲ併 用 セ リ.

實驗用培地 トシテハ上述 セルガ如 ク○・四%ル 比 ニ葡 萄 糖 ヲ附加 セル寒 天 培

養基 ル外,肉 汁培養基 ヲ用 〓タ リ.其 ノ他質驗 ニ要 スル器具材料 ハ凡 テ無菌的

ナル ヲ期 セル ヤ必 セ リ.

第 三目  實驗方法竝 ニ次第

實驗ハ室温 ニテ遂 行 シ操 作ハ總 テ無菌的 トス.

(一)攝 氏三十七度 ニ於 テ寒天斜面上 ニ二十 時間培 養 セル黄金色化膿性葡萄

状球菌及 ビ三 日或 ハ四 日間同境地 ニ於 テ培養 セル同一菌 ニツキ一白金耳 ヲ採取

シ,之 ヲ滅菌生理的食鹽水一立方糎中 二投 ジテ浮游液 ヲ作 リ,尋 デ,滅 菌濾過

紙 ニ テ濾 過 ス.

(二)而 シテ豫 メ石鹸 ト水 トヲ以 テ短 時間(約 一分 間)洗 滌 シ,舊 態 ニ乾燥 セ

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シメタル後,余 ル左右 ノ手指末師掌面 ノ等大皮膚野 ニ該浮游 液 ル一 白金方耳 ヲ可

及的平等 ニ力強 ク塗擦 シ,依 リテ其 ノ可及的皮膚 深部 ニ到達 セ とコ トヲ期 シ,

日光 ノ直射竝 ニ〓埃 ヲ避 ケラ空中 ニ テ乾燥 セシメタル後(約 二分 後),

(三)指 頭全體 ニ消毒藥 ヲ塗布 シ,乾 燥 スル ヲ待 チテ(約 二分後)各 匹敵 セル

中和藥 ニテ中和 シ,尋 デ,滅 菌微温湯 ニテ輕 ク短時間洗 ヒ,乾 燥 セシム.

(四)而 シテ(イ)豫 メぺー トリー氏「シヤー レ」ニ灌 ギテ凝 固 セシメタル寒天

培 地面 上 ニ試驗野 ヲ輕 ク壓迫 シ,更 ニ試驗野 ヲ肉汁培地中 ニ浸 シテ注 意深 キ振

蘯 ル下 ニ細菌接種部位 ノ自然的洗滌 ヲ企 テ,尋 デ指頭 ヲ滅 菌綿紗 ニテ拂拭 ス.

(ロ)或 ハ豫 メ滅 菌水中 ニ浸 セル滅菌小脱脂綿片 ヲ以 テ細菌接種野 ヲ可及的同様

ナル壓力 ヲ以 テ強 ク摩擦 シ,以 テ細菌採取 ヲ試 ミ,小 脱脂綿片 ヲ攝 氏四十五度

ニ溶融 セシメタル寒天培 養基 中 ニ投 ジ,次 デ之 ヲペー ト可一氏「シヤー レ」ニ注

ギラ凝固 セシム.

(五)而 シテペー ト リー 氏 「シヤー レ」ヲ孵 竈 中 ニ納 メ,攝 氏三十 七 度 ニ於 テ

ニ 十 四 時間,四 十 八 時 間及 ビ八 日間 培 養 セル 結果 ニ就 キ其 ノ聚 落 發 生 ノ有無 ヲ

見 タ リ.

第 四 目  實 驗 結 果

(一)表 示 セル ガ如 ク八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」,五%「 ピク リン」酸 「ア

ル コホル 」 ニ於 テハ,何 レモ實驗 ニ供 シタル 黄 金色 化膿 性葡 萄状 球菌 ヲ發生 セ

ズ,其 ノ能 ク一 囘 ル塗 布 ニ ヨ リテ滅 殺 セラル ル ヲ見 タ リ.而 シテ對照 タル 何 等

消 毒藥 ヲ作用 セ シメザ リシモ ノニ於 テハ計 算不 能 ノ聚落 ヲ發 生 セ リ.

(二)殺 菌力 比較 ノ目的 ニ用 〓タル 一 ・二%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」及 ビ

一 ・二%「 ピク リン」酸 水溶液 ニ於 テハ,何 レモ其 ノ結 果 陽性 ナル 事 ア リ,陰 性 ナ

ル事 ア レ共,仔 細 ニ之 ヲ觀 察 スル 時 ハ「アル コホル」溶 液 ノ全 實 驗 中陰性 ナル 場

合 多 ク,其 ノ聚 落 發生 數亦一,二 箇 ナル ニ反 シ,水 溶液 ニ於 テハ陽性 ナル 場 合

多 ク,聚 落 發生數 亦三十 箇 ヲ數 ヘタル コ トア リ.由 是 觀 此,「 ビク リ ン」酸 水飽

和 液 ハ其 ル試 驗管 内實驗 ニ於 テ黄 金 色葡 萄状 球菌 ヲ十五 秒 間 蹴 内 ニ テ滅殺 ズル

ニ反 シ,一 ・二%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」ハ三 十秒 間 ニ シ ラ陰 性 ナル 事 ア リ,

陽 性 ナル 事 ア リ,一 分 間 ニシ テ漸 ク陰 性 ニ シテ著 シク,「 ピク リ ン」酸 水飽 和 液

ノ殺 菌カ ル ヨリ張 大 ナル ニ反 シ,臨 牀 的實驗 ニ於 テハ寧 ロ其 ノ劣 レル ヲ見ル.

之 蓋 シ實驗 第 一 ニ於 テ述 べタル ガ如 ク,其 ノ 「アル コホル」 溶 液 ナ ラザル ガ故

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ニ,「 アル コホル 」ノ皮膚 ニ對 スル 器械 的清 淨 作用 竝 ニ滲 透作用 ノ缺 如 セル ガ 故

ニ シ タ,甚 ダ興 味 アル コ トナ リ トス.

第 一 表

對 照

(一)八 五%「 アル コホル 」及 ビ六 ○%「 アル コホル 」ニ於 テハ兩 者何 レモ陽性

ナル 事 ア リ,陰 性 ナル 事 ア リテー 定 セ ザ レ共,其 ノ百分 率 ヨ リ見 レバ寧 ロ共 ノ

陰性 ナル 場 合 多 ク,加 之,聚 落 発生數 何 レモ十 箇 内外 ニ シテ,可 ナ リ強 大 ナル

殺 菌力 ヲ現 出 ス.此 ヲ試驗管 内實驗 ニ於 ケル 結 果 ト比 較 ヌル 時,八 五%「 アル

コホル 」 ノ黄 金色 葡 萄状 球菌 ヲ五 分 間 ニシ テ尚 ホ殺 戮 セザル コ 卜ア リ,十 分 間

ニ シテ全 ク滅 殺 スル ニ反 シ,六 ○%「 アル コホル 」ハ三十秒 間 ニ シテ全 ク滅殺 ス

ル ニ徴 セバ,前 者 ノ其 ノ殺 菌力 ニ於 ヲ著 シク上 昇 セル ヲ見ル モ,蓋 シ此 ハ種 々

ナル 理 由 ノ裡 ニ存 スル ア ランモ,主 ト シテー ニ細菌 塗擦 物 ノ硝 子體 ナル ト,生

體 皮膚 ナル トニ ヨ リ テ,後 者 ニ於 テハ外 觀 上乾燥 セル ガ如 キモ常 ニ一 定 ノ濕 度

ヲ保持 セル ガ故 ニ,從 ツテ之 ニ塗擦 セル細 菌 ノ多 少共 濕潤 セラル ル ト,且 ツ供

試 細 菌 ノ實 驗 前浮 游 液 中 ニ於 テ濕 潤状 態 ニ ア ラ シメ ラ レタル ノ故 ニ,亦 多 少 ト

モ濕 潤 セル ヲ テ,從 ツテ作 用 セ シメクル「アル コホル」ノ稀 釋 ヲ來 シ,其 ノ滲

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透 作 用増 強 ニ ヨル殺 菌力 ノ上昇 ヲ見 タル 卜,兩 者 ニ於 テ脂 肪溶 解 度 ヲ異 ニ セル

卜ニ ヨル モノナル 可 シ.之 諸家 ノ「アル コホル」ノ殺 菌 力 ハ適 度 ニ稀 釋 セラル ル

時其 ノ度 ヲ増 強 スル モ ノナ リテフ知見 ヲ追 證 スル モノ ナ リ.

(二)一 ○%沃 度丁幾 ニ於 テハ其 ノ結 果陰性 ニ シテ,八%「 ピク リン」酸 「アル

コホル」及 ビ五%「 ピク リン」酸 「アル コ ホル」ノソ レ ト一致 ス.

第五目  結 論

敍 上 ノ結果 ヲ約 言 ス レバ

(一)人 工 的 ニ皮膚 ニ塗抹 セ ラ レタル黄 金 色葡 萄状 球 菌 ハ,八%「 ピク リン」酸

「アル コホル」,五%「 ビク リ ン」酸「アル コホル」及 ビ十%沃 度丁 幾 ヲ以 テセル一

同 ノ塗 布 ニ ヨ リテ滅 殺 シ盡 サル ル モノ ナ リ.

(二)「 ビク リン」酸 水飽 和 液 ハ試 驗 管 内 實驗 ニ反 シ,臨 躰 的實驗 ニ於 テハ著 シ

ク其 ノ殺 菌 カ ヲ減 少 ス.蓋 シ此 ハ其 ノ溶 劑 ノ「アル コホル 」ナ ラザル ガ故 ナ リ.

第 四 項  實 驗 第 三

第 一 目  實驗 ノ 目的 「ピク リ ン」酸 ノ滅 菌度 ニ就 テ

五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」ヲ以 テセル 皮膚 ノ消毒 ニ於 テ,吾 入 ハー ハ

「ピク リ ン」酸 ノ皮膚 滲透 カ ノ不完全 ナル ト,一 ハ皮 膚 ノ解 剖學 的 造構 ノ複雜 ナ

ル トニ ヨ リテ未 ダ其 ノ完 全 ナル 消 毒結 果 ヲ得ル コ 卜能 ハザル ハ實驗 第一 ニ於 テ

證 明 セル 處 ナル ガ,果 シテ其 ノ如 何 ナル 程度 マ デ ノ滅 菌 果 ヲ得ル ヤ否 ヤヲ檢 セ

ンガ爲 メ,茲 ニ消 毒野 ヨ リ皮下組 織 ニ至 ル皮 膚 片 ヲ切除 シ,以 テ殘 留 細菌 ヲ適

當 ナル 培 養境 地 ニ齎 シ,其 ノ聚 落発 生 ノ状 況 ニヨ リテ此 ヲ檢 シ,併 テ實驗 第 一

ニ於 ケル 結 果 卜参 照 シテ臨 躰 的消毒 力 ノ全豹 ヲ窺 ハ ンコ トヲ期 セ リ.

1921年1月 米 國 醫 フアー(Charles E. Farr)ハ 本 項 ニ關 ス ル唯一 ノ研 究 ヲ発表

シテ日 ク,三 十 餘 例 ノ手術 創 ニ於 テ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」ヲ以 テセ

ル 皮膚 ノ消 毒 後皮 膚 切開 ヲ行 ヘル 後,皮 膚 ノ全 層 ヲ通 ジ テ順 次 表層 ヨ リ深 部 ニ

向 ヒテ外 科 用小 刀 ヲ以 テ皮膚 ヲ削除 シ,血 液 ヲ避 ケ テ可 及 的 多 ク ノ皮膚 削 屑 ヲ

作 成 シ,尋 デ斯 ク シテ得 タル皮膚 屑 片 ヲ肉汁 培 養基 中 ニ齎 シ,更 ニ皮膚 屑 片 ニ

附著 セル 「ピク リ ン」酸 ノ培 地 ニ混 ズル ニ ヨ リテ多 少共 殺 菌 力或 ハ細 菌 発育 制 止

作 用 ヲ現 ハ ス ノ虞 アル ヲ以 テ,之 ヲ防 止 セ ンガ爲 メ大 ナル 肉汁 ヲ滿 セル 「フ ラ

ス コ」 ニ移 乗 シ,之 ヲ孵 竃 中 ニ納 メ,組 織 深部 ニ隱 遁 セル 細 菌 ヲ シテ発 育 ス可

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キ ア ラユル機 會 ニ遭 遇 セ シメ ンガ爲 メ,少 ク トモ之 ヲ九 日以上 孵 竃 中 ニ留 メ テ

其 ノ結 果 ヲ觀察 セ リ.而 シテ共 ノ得 タル 二 十七例 ノ結 果 ニ就 キテ述 べ テ日 ク,

陰 性 例十 六 ニ對 シ,陽 性 例十 一 ニ シテ,就 中五 例 ニ於 テ白色 葡 萄状 球菌 ヲ認 メ,

一 例 ニ於 テ白色葡 萄 状球 菌 竝 ニ「ヂ フ ラ リヤ」類似 菌(Diphtheroids)ヲ 認 メ,三

例 ニ於 テ枯 草桿 菌 ヲ,及 ビ二例 ニ於 テ大 ナル グ ラム陽性桿 菌 ヲ認 メタ リ.而 シ

テ二,三 ノ同 僚 ニヨ リテ反 覆 セ ラ レタル 同様 ナル 實驗 ニ於 テ,眞 皮 ヲ除外 セル

淺 表 ヲル 皮膚 削屑 ヲ以 テセル 際 ニ於 テハ,沃 度 丁幾 ニ於 テモ 「ピク リン」酸 「ア

ル コホル」 ニ於 テモ何 レモ其 ノ結 果 陰性 ニ シ テ,之 ヲ以 テ此 ヲ觀 レバ,蓋 シ兩

者 間 ニ於 ケル 實驗 結果 ノ相 違 ハ皮膚 削切 操作 ノ如 何 ニ深 ク完全 ニ行 ハ レクル ヤ

否 ヤ ニ關 ス ト結 べ リ.然 レ共 今仔 細 ニ氏 ガ實驗經 過 ヲ觀察 スル ニ,惜 ム ラクハ

其 ノ操 作 ニ於 テ遺 憾 ノ點 多 ク,從 ツテ亦其 ノ結 果 ニ於 テ全 然信 ヲ措 ク能 ハザル

ノ憾 ア リ.今 之 ヲ列 擧 ス レバ(一)皮 膚 ノ削 切 野 ノ大 サノ記 載 ナ キ事,(二)結 果

ニ於 テ聚落 數 ノ計 出 ヲナ サザ リ シ事,(三)患 者 ニ對 シ最早 不 要 ノ皮 膚 野 ニ付 キ

テ實驗 ヲ行 ハザ リシ事,(四)「 ピク リ ン」酸 ヲ中和 シ「ピク リ ン」酸 ノ培 地 移行 ニ

ヨル殺 菌 作用 乃至 ハ菌 発育 障碍 作 用 ヲ除 去 セザ リシ事,(五)皮 膚 ノ削 屑 片 ヲ直

ニ培 地 中 ニ投 ジテ,組 織 中 ニ於 ケル 残留 細 菌 ヲ シテ良 好 ナル 発育 環 境 ニ齎 ラ サ

ザ リシ事 トノ五 者之 ナ リ.今 共 ノ理 由 ヲ説 明 セ ンニ,蓋 シ第 一項乃 至第 四 項 ニ

於 テハ詳 述 スル ノ必 要 ヲ認 メザ レ共,暫 ク第 五 項 ニ就 キ テ其 ノ因由 スル處 ヲ述

ブ レバ,今 皮膚 ヲ削 除 ヌル ニ際 シ,吾 人 ノ爲 シ得ル技 術 ノ範 圍 ニ於 テハ,之 ヲ

如 何 ニ薄切 スル トモ尚 ホ且 ツ一 定 ノ厚 サ ヲ有 シ,從 ツテ其 ノ深部 中 ニ隱 遁 セル

細 菌 ナ キニ シモ非 ラザル ヲ以 テ,若 シ夫 レ消毒 藥 ノ作用 ノ到 底 到達 シ能 ハザル

皮膚 深 部 ニ存 在 セル 細菌 ニ シテ,皮 膚削 屑 片 ノ表面 ニ横 ハ ラザル 者 ニ於 テハ其

ノ表 在 セル モノ ニ反 シ直 ニ培 地 ヲ得 テ発育 スル コ ト能 ハズ,組 織 ノ弛 緩 スル ヲ

俟 ツテ初 メテ発 育 シ得ル モノ ナル ガ故 ニ,假 令之 ヲ九 日間孵 竃 中 ニ靜 置 スル ト

雖 モ其 ノ培 養 方 法 ニ於 テ缺陥 ナキ ヲ保 セズ.蓋 シ第 四及 ビ第 五 ノ兩者 ハ其 ノ缺

點 ノ重 大 ナル モ ノ ト謂 フ可 シ.而 シテ該 報 告 ハ既 ニ余 ノ本 實 驗 ヲ途 行 セ シ後 ニ

於 テ発 表 セ ラ レタル モ ノナル モ(後 述 セル 實驗 次第 ノ條下 參 照),余 ハ實驗 ニ際

シ夙 ニ此 等諸 點 ニ留意 シ苟 モ實驗操 作 ニ於 テ缺點 ナカ ラ ンコ 卜ヲ期 シ,併 テ十

%沃 度丁幾,八 五%「 アル コホル」及 ビ六 〇%「 アル コホル」ノ三者 ヲ併 用 シテ消

毒 力比較 ニ便 ぜ リ.

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第二目  實 驗 準 備

消毒 藥 トシテハ五%「 ピク リン」酸「アル コホル」,八%「 ピク リン」酸 「アル コ

ホル」及 ビ「ピク リン」酸水飽和液 ノ三者 ヲ用〓對照 トシテ十%沃 度丁幾,八 五

%「 アル コホル」及 ビ六〇%「 アル コホル」ノ三者 ヲ以 テセ リ.而 シテ之 ニ各匹敵

セル中和藥 ヲ併用 セ リ.

培養墓 トシテハ○・四%ノ 比 ニ葡萄糖 ヲ附 加 セル寒 天培 地 ヲ用 フ.其 ノ他實

驗用器具材料ハ一,一 之 ヲ擧 グル ノ繁 ヲ避 ケ,此 處 ニハ豫 メ滅菌 シテ苟 モ實 驗

結果 ニ對 シ惡影響 ヲ與 フル ナカラ ンコ トヲ期 セシヲ附言ス.

第三 目  實 驗 イ

大正九年十一月二十四 日午後 ニ時,吾 ガ京都帝國大學醫學部外科教室 ニ於 テ,

左下腿 肉腫 ノ爲 メ左大腿截斷術 ヲ施行 セル五十六歳 ノ男子油比某(農 夫)ノ 足背

ノ皮膚 ニ就 キテ行 ヘル實驗 ニシテ,豫 メ試驗野 ヲ石鹸 卜水 トヲ以 テ短時間ノ前

洗滌竝 ニ剃 毛 ヲ行 ヒ,乾 燥 セシメタル モ ノナ リ.

(一)手 術直後各試驗野 ニ各匹敵 セル七消毒 藥 ヲ塗 布 シ,乾 燥 セシメタル後

(約 二分後),「 ピク リン」酸及 ビ沃度 ヲ以 テ處置 シタル者 ニ於 テハ,前 者ハ滅菌

一%鹽 酸「モル ヒネ」水溶液 ヲ以 テ,後 者ハ滅菌 一%次 亞硫酸曹達水溶液 ヲ以 テ

中和 シ,依 ツテ以 テ残餘「ピク リン」酸 竝ニ沃度 ノ培地移行 ニ因 スル菌発育制 止

作用 ヲ除去スル ニ勉 メ,尋 デ,滅 菌微温湯 ヲ以 テ輕 ク短 時間洗滌 シ,乾 燥 セシ

ム.

(二)而 シテ斯 ク シテ消毒 操 作 ヲ終 レル各 消 毒 野 ヨ リ,滅 菌 セル小 刀 ヲ以 テ

皮 下組 織 ニ至 ル一糎 大 ノ皮 膚 片 各二 箇宛 ヲ切 除 シ,

(三)尋 デ之 ヲ豫 メ保 温 器 中 ニ保 持 セル滅 菌 セル乳 鉢 中 ニ移 シテ殆 ン ド粥 状

ニ磨滅 シ,豫 ノ四十 五度 ニ溶 融 セ シメタ ル寒天培 地 ヲ此 ノ内 ニ注 ギ,注 意深 キ

振 蘯 ノ下 ニ良 ク混 和 セ シメタ ル後,更 ニペー 卜リー 氏「シヤー レ」中 ニ灌 ギ,

(四)寒 天 ノ凝 固 スル ヲ待 ツテ直 ニ之 ヲ孵 竃 中 ニ納 メ,二 十 四 時間 後,四 十八

時 間後 及 ビ十 日後 ニ於 ケル聚 落発生 ノ有無 ヲ檢 セ リ.

實 驗 結 果

第一 表 ニ示 セル ガ如 ク八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」ニ於 テハ二皮 膚 片 ヨ

リ平 均 四・五 箇 ノ聚落 ヲ登 生 シ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニ於 テハ平 均

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二箇 ノ聚落 ヲ発 生 セル ニ對 シ,「 ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ニ於 テハ平 均二八 ・五 箇

ノ聚 落 ヲ發 生 セ リ.之 畢 竟 實驗 第一 及 ビ第 二 ニ於 テ證明 セル ガ如 ク其 ノ溶 媒 ノ

「アル コホル 」ナ ラザ ル ニ ヨリテ,「 アル コホル」ノ殺 菌 作 用,器 械 的 清浄 作用 竝

ニ皮膚 深達 作用 ノ幇 助 之無 キガ故 ナ リ.

對 照

十%沃 度 丁幾 ニ於 テハ三箇 ノ聚落 ヲ発 生 シ,其 ノ消 毒果五%「 ピク リン」酸 「ア

ル コホル」及 ビ八%「 ビク リ ン」酸 「ア ル コホル」ノ ソ レニ彷 彿 タル モ ノア リ.之

ヲ故尾 崎 氏 ノ同様 ナル 實驗結 果 卜比較 ス ル ニ,氏 ハ沃度丁 幾 塗布 後 一分,五 分

及 ビ十分 ノ間隔 ヲ以 テ沃 度 ヲ中和 シ,以 テ平板 培 養 ヲ行 ヒタル ガ,十 分間 ノ長

時沃 度丁幾 ヲ作用 セ シメタル モノ ニ於 テモ尚 ホニ,三 ノ聚落 ノ発生 ヲ見 タ リ ト

云 フニ徴 シ,其 ノ結 果 ノ符 合セ ル ヲ認 ム.

八五%「 アル コホル」及 ビ六 ○%「 アル コホル」ニ於 テハ前者 ハ 一〇箇,後 者 ハ

ー 一 ・五箇 ノ聚 落 ヲ発 生 シテ兩 者 殆 ンド同様 ナル モ ノア リ.其 ノ試驗 管 内實 驗

ニ於 テ八 五%「 アル コホル」ハ化膿 菌 ヲ五 分 間 ニ シテ完 ク滅殺 セズ,十 分 間 ニ シ

テ漸 ク滅殺 スル ニ反 シ,六 〇%「 アル コホル」ハ三 十秒 間 ニ シラ滅殺 シテ其其 ノ間

著 シキ殺 菌力 ノ相 違 アル ニ反 シ,之 ニ於 テハ何 等逕 庭 ナ キガ如 キハ,畢 竟 實驗

第 ニ ニ於 テ證明 セル ガ如 ク,其 ノ理 由 ノ種 々ナル モ ノノ裡 ニ存 スル アラ ンモ,

主 トシ テ通 常皮膚 ノ外 觀 上乾燥 セル ガ如 キモ,亦 常 ニ尚 ホ多少 濕潤 シ テ從 ツテ

其 ノ間 ニ介在 セル細 菌 モ多少 共濕 潤状 態 ニ置 カル ル ヲ以 テ,「 アル コホル 」ノ稀

釋 ヲ生 來 シ,共 ノ殺 菌 力 ノ増 強 ヲ生 來 セル ト,一 ハ其 ノ脂 肪 溶解 性 ノ強 弱 ノ差

違 アル 卜ニ ヨル モ ノナ ラ ンカ.而 シテ之 ヲ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ノ結 果 卜比 較

ス ル ニ八五%「 アル コホル」ノ殺 菌 力 ルヨ リ著 シク強 大 ナル ヲ見 ル.即 チ前述 セ

ル ガ如 ク,實 驗 第 一 ニ於 テハ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ノ消毒 後 一試 驗 野 ヨリ平 均

四 ・五 三三 箇 ノ聚落 ヲ発 生 シ,緩 解 後平 均一 二 ・四六 七箇 ヲ発 生 セル ニ對 シ,八

五%「 アル コホル」ニ於 テハ消 毒 後平 均 二四 ・二六 七箇 ノ聚落 ヲ発 生 シ,緩 解 後

平 均一 三 ・三 三三箇 ノ聚 落 ヲ発生 シテ,八 五%「 アル コホル」 ノ消 毒 後 ニ於 テ著

シク強大 ナル陽性 ヲ示 シ,緩 解後 ニ於 テモ尚 ホ且 ツ多少 共 ヨ リ大 ナル 陽性 度 ヲ

現 ハ セル ニ反 シ,本 實驗 ニ於 テハ却 テ此 ノ事 ナク其 ノ著 シキ陽性 度 ノ減 少 ヲ見

ク ル ハ甚 ダ興 味 アル事 實 ニ シテ,此 ハ畢 竟 「ピク リ ン」酸 水飽 和液 ノ「アル コホ

ル」溶 液 ナ ラザル ガ故 ニ,皮 膚 ニ對 スル深達 作用 ノ八 五%「 アル コホル」ニ比 シ

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著 シク劣 弱 ナル ガ故 ナ リ(後 述 セル「ピク リ ン」酸 ノ皮 膚 深 達作 用 ニ關 スル 實驗

條 下參 照).詳 言 ス レバ,如 止ノ理 由 ニ ヨ リテ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ニ在 リテハ

皮 膚 ノ深 部 ニ存在 セル細 菌 ニ對 シテ其 ノ殺 菌 力 ヲ現 ハス ニ由 ナク,從 ツテ本 實

驗 ニ於 テハ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ノ攻 撃 ヲ免 レ得 タル皮膚 深 部細 菌 ノ発 生 ヲ見

タ ルモ ノ ニ シテ,畢 竟實驗 第 一 ニ於 テ證 明 セル ガ如 ク緩 解 後発 生 セル細 菌 ニ加

フル ニ術 ホ ヨ リ深 部 ニ存 在 セル細 菌 ノ附加 アル ガ故 ナ リ.即 チ此 ノ事 實 ハ吾人

ノ現 今企 テ得 ル消 毒 野 ノ細 菌採 取方 法 ヲ以 テ シテハ假 令 之 ヲ微 温 湯緩 解 法 ヲ以

テ幇 助 スル トモ尚 ホ且 ツ採 取 シ能 ハザ ル皮 膚 深 部,就 中汗 腺,皮 脂腺 及 ビ毛嚢

中 ニ隱 遁 セル 細 菌 ノ存 在 セル ヲ實證 スル モ ノニ シテ,亦 一面 皮膚 消 毒 ノ如 何 ニ

困難 ナル カ ヲ物 語ル モノ ト謂 フ可 シ(第 二表參 照).勿 論余 ハ斯 ク斷 ズル モ決 シ

テ其 ノ消 毒野 ノ身 體 部分 ニ ヨ リ亦 日ヲ異 ニスル ニ ヨ リテ其 ノ不 潔 度 ヲ異 ニ シ,

且 ッ個 體 ノ相 違 ニ ヨ リテ,同 様 ナル 事 情 ヲ具 有 スル ヲ除 外 スル モノ ニ ハ非 ザ レ

共,後 述 セル 實驗(ロ)ニ 於 ケル 結 果 卜照 合 シ,且 ツ前述 セル ガ如 ク實 驗 第 一 ニ

於 テ得 タル 聚落 數 ノ多 數例 ヨリ計 出 セル 平 均數 ナル ノ故 ヲ以 テ,斯 ク推論 スル

事 ル大 過 ナカ ラ ンコ トヲ惟 フモ ノ ナ リ.

對照 卜 シテ何 等 消 毒 藥 ヲ作用 セ シメザ リシモ ノニ於 テハ平 均 一 ○五 ・五箇 ノ

聚落 ヲ発 生 セ リ,亦 以 テ吾人 ノ皮 膚 ノ一竰 大 ノ極小 部 ニス ラ如 何 ニ多數 ノ細 菌

ノ存 在 セル カ ヲ知ル ヲ得 可 シ.而 シテ之 ヲ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」及 ビ

十%沃 度 丁幾 ニ於 ケル結 果,即 チ一 大 ノ皮膚 片 ヨ リ,前 者 ハ消 毒 後僅 ニ平 均

二箇 ノ聚落 ヲ発生 シ,後 者 ハ三箇 ノ聚 落 ヲ発 生 セル ニ徴 セ バ,假 令 五%「 ピク

リン」酸 「アル コホル」及 ビ十%沃 度丁 幾 ノ其 ノ完 全 ナル殺 菌 力 ヲ保 持 シ ツツ皮

膚 ノ全 層 ヲ滲 透 スル コ 卜能 ハズ ト雖 モ,其 ノ殺 菌 力 ノ著 シク強大 ナル ヲ窺 フ ヲ

得 可 ク,亦 一面 皮膚 ニ常 在 セル細 菌 ノ比 較的 其 ノ表層 ニ多 ク シテ,深 部 ニ至 ル

ニ從 ヒ其 ノ數 ヲ減 少 スル モ ノ ナル コ 卜ヲ知 ル ヲ得 可 シ.而 シテ此 ノ間 ノ消 息 ノ

軈 テ從 來 吾 人 ガ皮膚 ノ消毒 ニ當 リ,假 令 グ ロッシッヒ氏 法 ヲ以 テスル モ其 ノ完 全

ナル 滅 菌 ヲ得 ズ,所 謂外 觀 上無 菌 ナル状態 ヲ以 テ シテ尚 ホ且 ツ比 較 的 滿 足 ナル

手術 結果 ヲ擧 ゲ得 タル ヲ説 明 ス ルモ ノナ リ.

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第 一 表

第四 目  實 驗 ロ

尋 デ余 ハ大正九年十二月九 日午後三時,我 ガ京都帝國大學醫學部外科教室 ニ

於 テ,火 傷瘢痕 ヨリ発生 セル右膝部肉腫 ノ爲 メ,右 大腿 截斷術 ヲ施行 セル五十

一歳 ノ女子松岡某農夫 ノ下腿 ノ皮膚 ニ就 キテ實驗(イ)ト 同様 ナル實驗 ヲ遂 行 セ

リ.平 板培養 ノ結果 ハ重複 スル ノ嫌 アル ヲ以テ今 ニー,一 敍 述スル ノ繁 ヲ避

ケ ンモ,第 一表 ニ表示 セルガ如 ク實驗(イ)ニ 於 ケル結 果 ト酷似 シ,兩 者 ヲ照合

シテ各消毒藥 ノ皮膚 ニ對 スル滅菌度 ヲ窺 ヒ得可ク,純 對照 ト比較 シテ興味 アル

ヲ覺ユ.

之 ヲ上述 セルフアー ノ實驗結果 ト比較 スルニ,氏 ニ於 テハ五%「 ピク リン」酸

「アル コホル」ヲ以 テセル實驗 ニ於 テ二十七例中十六例ノ陰性 ヲ見 タルニ反 シ,

余 ニ於 テハ一例 モ聚落 発生陰性 ナリシ場合ニ遭遇 セズ,其 ノ殺 菌力ニ於 テ大 ナ

ル逕庭 アルガ如 キモ,要 ハ前述 セルガ如 ク氏ノ實驗方法 ニシテ餘剰 ノ 「ピク リ

ン」酸 ヲ中和 シ,以 テ培 地 ニ於 ケル殺 菌作用乃至菌発育制止作用 ヲ除去 セザ リ

シト,皮 膚深部 ニ殘留 セル細菌 ヲ良好 ナル培養境地 ニ齎 サザ リシトニ因スルモ

ノニシテ,之 ヲ故尾崎博士 ノ沃度丁幾 ヲ以 テセル實驗結果 ニ徴 シ,十 二例中嘗

テ陰性 ナル場 合ヲ見ザ リシ ト照合 シ,余 ノ主張 ノ必 ズシモ誤 リナカ ランコトヲ

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首 肯 シ得 ン.

飜 ツテ之 ヲ前述 セル「ピク リ ン」酸 ノ臨牀 的消 毒カ ニ關 スル實 驗 第 一 ニ於 ケル

結 果 ト比較 スル ニ,實 驗第 三 ニ於 テハ其 ノ聚落 発生 數甚 ダ著 シク増 大 セル ヲ見

ル ガ如 ク,今 其 ノ由 ツテ來 ル處 ヲ講 究 スル ニ蓋 シ本 實驗 ニ於 テハ,皮 下組 織 ニ

至 ル迄培 養 ニ供 シタ ル ヲ以 テ,皮 膚 ノ深 部細 菌 ノ悉 ク培 地 ニ移乘 セラ レタ ル ニ

因 ル ト思惟 セラ レ得 ル點 ア リ.依 ツ テ試 ニ實驗 第三 ニ於 テ得 タル平 均聚落 発生

數 ヲニ十 五 倍 スル時 ハ,二 十五 竰 ノ皮膚 片 ヨ リノ聚 落 発生數 ヲ得 ル ガ故 ニ,之

ヲ實 驗 第一 ニ於 ケノレ結 果 即 チ五 糎 平 方 ノ皮膚 野 ヨリ得 タ ル平 均 聚落 発 生 數 ト比

較 スル 時,其 ノ間 ニ生 ぜ ル聚 落 発生 數 ノ差 違 ハ,軈 テ其 ノ間 ノ消 息 ヲ説 明 スル

ニ足 ル モ ノア テ ン.

第 二表 ニ掲 出 セルガ 如 グ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニ於 テハ實驗 第 一

ニ於 ケル消 毒 後 ル聚 落発 生數 ハ平 均二 ・八 五 三箇 ナル ニ反 シ,實 驗第 三 ヨ リ推 論

シテ計 出 セル聚落 発生 數 ハ五 六 ・二五 箇 ニ シテ,其 ノ間五 三・二九 七 箇 ノ聚 落 発

生數 ノ差 違 ヲ見 ル.而 シテ八%「 ピク リン」酸 「アル コホル」 ニ於 テハ九六 ・九 三

二 箇 ヲ,十%沃 度 丁幾 ニ於 テハ六八 ・一二五 箇 ノ増 加 ヲ見 タ リ.之 蓋 シ前 述 セル

ガ如 ク實 驗第 一 ニ於 テハ培 地 ニ齎 サ レタル細 菌 ハ,吾 人 ノ現 今皮 膚 外表 ヨ リ爲

シ得 ル範 圍 内 ニ於 テノ細 菌採 取 法 ニ依 リテ採 取 サ レタル細 菌 ナル ニ反 シ,實 驗

第 三 ニ於 テハ皮膚 ノ全層 中 ニ隱 遁 セル細 菌 ヲ悉 ク培 地 ニ齎 シタ ル ヲ以 テ,所 謂

細 菌採 取 法 ヲ以 テシ テハ到 底 採 取 シ得 ザル細 菌 ノ附加 スル ニ因 ル モ ノ ト解 スル

ノ至當 ナル ヲ思 ハ ザル可 カ ラズ.而 シ テ余 ハ消毒 野 ノ身 體 部分 ヲ異 ニスル ニ ヨ

リ亦 日ヲ異 ニスル ニ ヨ リテ不 潔 度 ヲ異 ニ シ,且 ツ個 人 ニ ヨ リテ其 ノ度 ヲ異 ニス

ル モ ノ ナル ヲ顧 慮 セザル ニハ非 ラザ レ共,少 ナク トモ兩 者 間 ノ相違 ノ餘 リニ甚

ダ シキ懸隔 アル ハ,蓋 シ此 ノ理 二基 クモ ノナ ラ ンカ.亦 一面 所謂 皮膚 片 ヲ以 テ

スル細 菌採 取法(Hautstuckchenmethode)ノ 消 毒藥 ノ消 毒 力檢 査 ニ對 シ,優 秀 ナ

ル ヲ推 奨 セズ ンバ アル可 カ ラズ.

之 ニ反 シ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ニ於 テハ三 七六 ・七五 箇 ヲ,八 五%「 アル コホ

ル」ニ於 テハ,二 九 九 ・九 箇 ノ聚 落 発生 ノ増 加 ヲ見 タル ガ,之 ヲ五%「 ビ ク リン」

酸「アル コホル」,八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」及 ビ十%沃 度 丁幾 ノ結 果 ト比

較 スル ニ大 約 五倍 乃 至 四倍 ノ培 加 率 ヲ表 示 ス.蓋 シ此 ハ後者 ハ其 ノ固有 ノ強 大

ナル殺 菌力 ニ加 フル ニ溶媒 タ ル「アル コホ ル」ノ殺 菌作用,器 械 的清 淨 作用 竝 ニ

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及 膚 深達 作用 ニ ヨ リテ該殺 菌作 用 ヲ幇助 セ ラルル ニ反 シ,前 者 ニア リテハ即 チ

「ピク リ ン」酸 水飽 和液 ニ於 テハ ,「 アル コホル 」ニ ヨル 該幇 助 作用 ヲ缺 ク ト,八

五%「 アル コホル 」ニ於 テハ假令 其 ノ強 キ深達 作用 ニヨ リテ皮 膚 深 部 ニ深 ク深達

シ得ル ト雖 モ,其 ノ固 有 ノ殺 菌 作用 ノ劣 弱 ナル トニヨ リテ斯 ル大 ナル 相違 ヲ生

來 セル をノ ナル 可 シ.然 リ而 シテ前 兩者 ノ其 ノ聚落 発生 數 ノ差 違 ノ甚 ダ シク大

ナル ニ反 シ,後 三 者 ノ著 シク小 ナル ハ畢 竟「アル コホ ル」溶 液 ノ緩 解 後 ニ採 取 シ

得 ル細 菌 ノ存在 部 ヨ リモ更 ニ深 ク滲透 シ得ル モ ノ ナル ヲ示 スモ ノニ シテ,此 ノ

事 實 ヨ リ推 論 ス レバ少 ナ ク トモ吾 人 ノ細 菌採 取 法 ヲ以 テ皮膚 外表 ヨ リ取 リ得ル

細 菌 ハ,假 令其 ノ緩解 法 ヲ用 フル トモ多 ク能 ク一囘 ノ塗 布 ニ ヨ リテ 「アル コホ

ル 」 溶液 ノ滲 透 シ得 ル皮膚 深 部 ヨ リモ ヨ リ淺 表 ナル 皮 膚層 中 ニ存 在 セル 細 菌 ナ

ル ヲ推 定 シ得可 ク,如 何 ニ皮膚 外 表 ヨリ ヌル細 菌採 取 ノ困難 ナル カ ヲ證 シ,其

ノ到達 シ得ル細 菌採 取能 力 ハ「アル コホル 」溶 液 ノ皮膚 滲 透 作用 ノ深 サニモ及 バ

ズ,極 メテ薄 弱 ナル ヲ推 シ得可 シ.而 シ テカク ノ如 キ殘 留細 菌 ノ從 來 〓經 驗 ニ

徴 シ手 術 中一 定期 間皮膚 深部 中 ニ止 リテ,吾 入 ヲ シテ比 較 的無 菌 的 ナル手術 操

作 ヲ爲 スヲ得 セ シムル モ ノハ,一 ハ「アル コホル」ノ皮膚 硬化 作用 或 ハ縣 化作用

ニ負 フ處 大 ニ シテ,亦 以 テ「アル コホル」ノ之 ニ貢 獻 スル 所鮮 少 ニ非 ラザル ヲ惟

フ可 キナ リ(後 述 セル 「ピク リ ン」酸 ノ皮膚 深達 作用 ニ關 スル 實驗 條 下參 照).

第 二 表

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第五目  結 論

(一)通 常人體皮 膚 ニ寄宿 セル細菌 ヲ吾人 ハ五%「 ピク リン」酸「アル コホル」,

八%「 ピク リン」酸「アル コホル」及 ビ十%沃 度丁幾 ヲ以 テ完全 ニ滅殺 シ得 ズ.故

ハ一 ッハ當該消毒藥 ノ其 ノ固有 ノ強力 ナル殺 菌力 ヲ以 テ皮膚 ノ全層 ヲ滲透 シ得

ザル ト,一 ッハ皮膚 ノ解剖學的造構 ノ複雜 ナル トニ依 リテ,消 毒藥 ニ對 シ皮膚

ノ深部 ニ潜在 セル細 菌 ノ恰好 ナル隱遁 所 ヲ得ル ガ爲 メナリ.

(二)前 處 置 ヲ爲 ス時ハ五%「 ピク リン」酸「アル コホル」,竝ニ八%「 ピク リン」

酸「アル コホル」ノ滅菌度ハ略,十%沃 度丁幾 ノソレト一致 ス.

(三)吾 人 ノ現今皮膚表面 ヨリ爲 シ得ル細 菌採 取方法 ヲ以 テ シテハ,皮 膚深

部 ニ殖民 セル細 菌 ヲ悉 ク採取 シ得ズ,共 ノ到達 シ得ル範圍 ハ「アル コホル」ノ皮

膚滲透能力 ヨリモ小 ナリト推 シ得 ルモノナ リ.

(四)「 アル コホル」 ハ適度 ナル稀釋 ニヨリテ其 ノ殺菌 カヲ増 強 シ,其 ノ強カ

ナル器械的清淨作用竝 ニ滲透作用 ニヨリテ皮膚消毒藥 ノ溶媒 トシテ用 ヰラルル

時,著 シク其 ノ消毒作用 ヲ幇助 シ,併 セテ皮膚 硬化作用 ニ ヨリテ皮膚 深部 ニ殘

留 セル生存細 菌ヲ固定 シ,以 テ其 ノ不完全 ナル消毒 作用 ヲ幇助 スル モノナリ.

(五)細 菌採取方法中皮膚 片 ヲ以 テスル方法最 モ優 秀 ナリ.

(六)皮 膚 ニ存在 セル細 菌 ハ就 中 其 ノ表 層 ニ於 テ最 モ多 ク,深 部 ニ至ル ニ從

ヒテ其 ノ數 ヲ減少 スル モノニシテ,余 ノ實驗 ニヨ レバ一竰 ノ皮膚野 ニ九十三箇

乃至百九十五箇(平 均百四十九箇弱)ノ 細菌 ノ存在 セル ヲ證明 シタ リ.

第 二 章  「ピク リン」酸 ノ皮膚深達作用ニ關スル實驗

第一節  實驗ノ目的

「ピク リン」酸 ヲ以 テスル皮膚 ノ消毒 ニ際 シ,其 ノー囘 ノ塗布 ニヨリテ,如 何

ナル程度 ニ於 テ「ピクリン」酸 ノ皮膚深 部中 ニ深達 スル ヤ否 ヤヲ確 メ,而 シテ之

ヲ曩 ニ余 ガ臨牀的消毒 カ ニ關 スル實驗 ニ於 テ得 タル結 果 ト照合 シ,以 テ吾人ガ

現今皮膚 表面 ヨリナ シ得ル消毒操作 ノ深達度 ノ如何 ヲ捕捉 シ,併 セテ通常皮膚

中 ニ存在 セル細菌 ノ深 在度 ヨ窺 ハント欲 ス.蓋 シ皮膚 消毒藥 ノ臨牀的價値 ハ其

ノ殺 菌力 ニ關 スル實驗 ニ於 ケル ヨリモ,其 ノ皮膚深達力 ニ關 スル檢 索 ニヨリテ

ヨリ良ク正確 ニ算定 セラルルガ故 ナ リ.

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第二節  實 驗 準 備

試 驗 藥 ト シテ五%「 ピク リ ン」酸「アル コホ ル」,八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ

ル」及 ビ 「ピク リ ン」酸 水飽和 液 ノ三 者 ヲ用 〓,對 照 トシテ十%沃 度丁幾,十%

「メ チ レンブ テウ」水溶 液及 ビ五%「 メ チ レ ンブ ラク」「アル コホ ル」溶 液(六 〇%

「アル コホル」ヲ其 ル溶劑 トス)ヲ 以 テセ リ.

實驗 ニ供 セ シ皮膚 ハ共 ノ結 果 ノ可及 的 正確 ナ ラ ンコ トヲ期 シテ之 ヲ動物 ニ採

ラズ,親 シク人體 皮膚 ニ就 キ テ機 會 ヲ手術 ニ求 メ,例 之 關 節離 斷術 ノ如 キ手術

ヲ行 フ ニ際 シテ最 早個 人 ニ對 シテ不 必 要 ナル皮膚 野 ヲ物 色 スル ニ努 メタ リ.而

シテ之 ニ配 スル ニ死體 ノ皮 膚 ヲ以 テス.

第 三 節  實 驗 第 一

第 一 項  實驗 方 法竝 ニ次第

大正 十 年三 月三十 日午 後二 時我 ガ京都 帝 國 大學 醫學 部 外科 教 室 ニ於 テ,特 発

脱 疽 ノ爲 メ右 大腿 截斷 術 ヲ行へ ル西 村某 農夫(〓)ノ 右 大腿 ノ皮 膚 ニ就 キ テ行 へ

ル 實驗 ニ シテ,豫 メ試 驗 野 ヲ石 鹸 ト水 トヲ以 テ短 時間 前洗滌 竝 ニ剃 毛 ヲ行 ヒ,

乾燥 セ シメタル モ ノナ リ.即 チ手術 直 後各試驗 藥 竝 ニ對照 藥 ヲ所 定 ノ皮膚 ニ塗

布 シ,乾 燥 セル後(約 二分 後),所 要 ノ皮 膚 片 ヲ切除 シ,直 ニ凍 結切 片 ヲ調 製 シ

テ其 ノ深 達 度 ノ如何 ヲ檢 セ リ.而 シテ凍 結切 片調 製 ニ當 リテハ皮 膚 片 ノ 「フ ォ

ル マ リ ン」硬 化 後 ノ水洗 ヲ廃 止 シ,且 ツ凍結 薄 切 後之 ヲ血 清 中 ニ淨 べ テ,水 ニ

因 リ テ薄切 片 ニ滲 透 セル試驗 藥 ノ脱 出 スル ヲ防止 スル ニ努 メタ リ.

第 二項  實 驗 結 果

凍結 切片 ヲ鏡 檢 スル時,吾 人ハ其 ノ皮膚 深 達 度 ヲ各試 驗藥 固 有 ノ色 ニ ヨ リテ

著 色 セラ レタル細胞 層 ニ ヨ リテ明 ニ認 メ得 可 シ.即 チ「ピク リ ン」酸 ニ於 テハ帯

緑 黄 色 二,「 メ チー レン」青 ニ於 テハ青 色 ニ,沃 度 丁幾 ニ於 テハ黄 褐 色 ニ之 ヲ認

ノ,明 ニ其 ノ限界 ヲ確知 シ得 タ リ.

(一)五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニ於 テハ表 皮 角質層 ヲ外 表 ヨ リ深部 ニ

向 ヒテ全 層 ノ約 四分 ノ三 ヲ滲 透 セル箇 所 ア リ,全 層 ヲ滲透 セル處 アリ テ一定 セ

ザ レ共,其 ノ多 ク ニ於 テハ殆 ン ド全層 ヲ滲 透 セル ヲ觀 ル.之 ニ反 シ毛嚢 中 へ ハ

比 較 的深 ク深 達 シ,マ ル ビ ギー 氏層底 ニ達 スル事 ア リ,或 バ之 ヲ超 エ テ更 ニ眞

皮 中 ニ侵入 シ,小 ナル毛 髪 ニ於 テハ殆 ンド毛 根 ニ迄達 スル事 ア リ.大 ナル毛 髪

ニ於 テハ全 長 ノ約 二分 ル一乃 至三分 ノ一 ノ深 サマ デ達 スル事 ア リテ某 ノ度 ハ種

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種 ナ リ.皮 脂 腺 中 ニハ全 ク侵入 セ ズ.汗 腺 中 ニハ毛嚢 ニ比 ス レバ其 ル度 概 シテ

淺 ケ レ共,其 ノ排 泄 管 内 ニ可 ナ リ深 ク侵入 シ,多 クマル ビギー 氏層 ノ中程 ニ於

テ止 ル ヲ最 トス レ共,稀 ニハ該層 ヲ超 ユル事 ア リ.但 シ汗腺 中 ニハ達 セズ.此

ハ畢 竟顯 微鏡 下 ニ認 メタル如 ク毛 嚢 ニ比 シ汗腺 孔 ノ脂 肪 及 ビ其 ノ他 ル汚 物 ニヨ

リテ填 塞 セ ラル ル事 多 キニ因 シ,從 ツ テ種 々ナル程 度 ニ於 テ其 ノ侵 入 ヲ阻碍 セ

ラルル ガ故 ニ シテ,之 ニ反 シ毛嚢 中 へ ハ其 ノ良 ク毛髪 ニ沿 ヒテ試 藥 ノ侵 入 シ得

ル便 ヲ得 ルガ故 ニ外 ナ ラズ.由 是 觀 此,畢 竟 其 ノ深 達度 ノ,處 ニ ヨ リテ多 少 ノ

差 違 ヲ呈 ズル ハ蓋 シ塗 布部 ノ生 體皮膚 ナル ノ故 ヲ以 テ,曩 ニ臨牀 的消毒 力實驗

條 下 ニ於 テ述 べタ ル ガ如 ク(第 三編 第 一章 第 二節第 二 項 第 四 目參 照).種 々 ナル

汚物 ノ皮膚 表面 ニ附著 セル ニ ヨ リ,「 ビク リン」酸 「アル コ ホル」ノ皮 膚 ヘ ノ侵 入

ニ際 シ,種 々 ナル抵 抗 ヲ受 クル ニ ヨル モノ ナル可 ク,亦 以 テ臨 牀 的消毒 結 果 ノ

種 々 ナル現象 ヲ窺 フ ヲ得可 シ.

(二)八%「 ピク リン」酸 「アル コホル」ニ於 テハ其 ノ度 五%「 ピク リ ン」酸 「アル

コホル」ニ於 ケル ト同大 ナ リ.

(三)「 ピク リ ン」酸 水飽 和液 ニ於 テハ,表 皮 角 質層 ノ約 上三 分 ノ一 ヲ滲透 シ,

汗腺 竝 ニ毛嚢 ニ於 テハ殆 ンド其 ノ開 口部 ニ深 達 シ,皮 脂 腺 中 ニハ全 ク侵 入 セズ,

「ピク リ ン」酸 自 己 ノ皮膚 滲透 度 ハ サマ デ強大 ナル モノ ニ非 ラザル ヲ示 セ リ.即

チ此 ヲ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニ於 ケル結 果 ト比 較 ヌル 時,其 ノ著 シク

弱 度 ナル ヲ見 ル.蓋 シ此 ハ屡 述 セル ガ如 ク,「 ピク リ ン」酸 水飽 和液 ノ 「アル コ

ホ ル」 溶液 ナ ラザル ガ故 ニ,其 ノ器 械 的清 淨 作用 竝 ニ滲 透 作用 ノ幇 助 ヲ缺 クガ

故 ナ リ.而 シテ臨牀 的實驗 ニ於 テ,「 ピク リン」酸 水飽 和 液 ノ試 驗管 内 實驗 ニ反

シ,著 シク劣 弱 ナル消 毒 力 ヲ現 ハ シタ ル所 以 ハ蓋 シ此 ニ存 ス.亦 以 テ屡 述 セル

ガ如 ク消毒 藥 ノ溶媒 トシテ「アル コホル 」ノ優 秀 ナル貢獻 ヲ爲 ス事 アル ヲ知ル 可

ク,今 ヤ明 ニ其 ノ理 由 ヲ證 明 シ得 タ リ ト信 ズ.詳 言ス レバ「ピク リ ン」酸 水飽 和

液 ニ於 テハ其 ノ深 達 度皮膚 ノ殆 ンド最 上層 ニ限 ルガ故 ニ,臨 牀 的 實驗 第 一 ニ於

テ示 セル ガ如 ク,消 毒 後 ノ平 均聚 落 発生 數 ハ四 ・五 三三 箇 ナル ニ反 シ,緩 解 後 ニ

於 テハ 一二・四六七 箇 ノ多數 ヲ発生 シタ ル モ ノニ シテ,之 ヲ五%「 ピク リン」酸

「アル コホル 」ノ消毒 後平 均 一・五 二 三箇,緩 解 後平 均 一・三 三 箇 ノ少數 ナル ニ比

シ,其 ノ深 達 度 卜併 セ考慮 スル時,蓋 シ思 ヒ半 ニ過 グル モ ノア ラ ン.即 チ「ピク

リ ン」 酸 水飽 和液 ニ於 テハ,汗 腺 竝 ニ毛 嚢 中 ニハ僅 ニ其 ル開 口部 ニ侵 入 スル ノ

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ミナル ヲ以 テ,啻 ニ開 口部 中 ニ存 在 セル細 菌 ノ滅殺 セラ レザ ル ノ ミナ ラズ,此

ニ隣 接 セル管 腔 内 ニ存 在 セル細 菌 ル少 シモ消 毒作用 ヲ蒙 ラザ ル ヲ以 テ,從 ツテ

此等 細菌 ノ消 毒 後 ノ細 菌 採 取 ニ當 リテ採 取 セ ラレズ シテ,緩 解 後 ニ於 テハ容 易

ニ採 取 サ レ得ル 状 態 ニ齎 サル ル ヲ以 テ,當 然緩 解 後 ノ聚 落発 生 數 ノ多數 トテル

ハ 自明 ノ事 ニ屬 シ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」ニ於 テハ其 ノ深 達 度 前者

ニ比 シ大 ナル ガ故 ニ,緩 解後 ノ聚 落 発生數 ノ著 シク少 數 ナルハ 自 ラ首 肯 シ得可

ク,加 之,臨 牀 的 實驗 第三 ニ於 テ述 べタ ル ガ如 ク,假 令 五%「 ピ ク リ ン」酸「アル

コホル」ル深 達 力大 ナ リ ト雖 モ,其 ノ深達 力殆 ン ド表 皮 ノ ミニ止 ル ヲ以 テ,ヨ リ

以上 ノ深 部細 菌 ハ滅 殺 セラ レズ,消 毒 後尚 ホ多數 ノ聚 落 発生 ヲ見 タ ル所 以 ナ リ.

而 シテ此 ノ事 實 ヨリ推 論 シ,余 ノ臨 牀 的 實 驗 第 三 ノ條 下 ニ於 テ述 べタル ガ如

ク,吾 人 ノ現 今皮 膚 外表 ヨ リスル細 菌 採取 法 ヲ以 テ シテ,尚 ホ「アル コホル」溶

液 ノ深 達 シ得 ル深部 ニ存 在 セル細 菌 ヲモ採 取 シ能 ハザル モ ノナ リテフ余 ノ推 論

ヲ一層 確 メ得 可 シ ト信 ズ.

對 照

(一)一 ○%「 メチー レ ソ」青 水溶液 ニ於 テハ其 ノ深達 度 全 ク 「ピク リン」酸 水

飽 和液 ニ於 ケル ト同 程度 ニ シテ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コ モル」ノ ヨ リ優 秀 ナ

ル ヲ觀 ル.之 ニ反 シ五%「 メチー レ ン」青 「アル コホル」溶 液 ニ於 テハ,其 ノ水溶

液 ニ比 シ表皮 角 質層 ノ殆 ンド上 半 及 ビ毛 嚢 竝 ニ汗腺 開 口部 ニ侵 入 シ テ僅 ニ其 ノ

優 レル ヲ見 タ リ.之 溶媒 タル六 〇%「 アル コホル」ル器 械 的清 淨 作用 竝 ニ深 達 作

用 ノ補 助 ニ俟 ツ可 キモ ノ トス.

(二)十%沃 度丁幾 ニ於 テハ共 ノ深 達 度五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」 ニ

於 ケル ト酷 似 シ,殆 ンド其 ノ同程 度 ナル ヲ見 ル.此 ヲグ ロッシッヒ,ド ゥルー ゼ

A. Druse及 ビ野 口等 ノ實驗 結果 ト比較 スルニ,甚 ダ相 似 タル モ ノ ア リ.即 チ

グ ロッシッヒニ於 テハ沃 度丁 幾 ヲ二度 塗 布 スル時 ハ水溶 液 ノ只不 完全 ニ表皮 最 上

層 ニ侵 入 スル ノ ミナル ニ反 シ,「 アル コホ ルレ」溶 液 ニ於 テハ表 皮鱗 屑 間隙,全 細

胞 間腔 竝 ニ淋 巴道 ニ浸潤 セル ヲ認 メ,ド ャルー ゼ ニ於 テハ沃 度丁幾 ヲ乾 燥 状 態

ニ テ塗布 スル時 ハ毛嚢 中,皮 脂腺 開 口中及 ビ汗腺 ノ表皮 在 中 ノ排 泄 管 中 ニ侵 入

シ,前 洗 滌 ヲナス時 ハ著 シク其 ノ度 ヲ減 弱 スル ヲ確 メ,而 シテ最 モ正確 ニ シテ

詳細 ナル 記載 ヲナセ ル野 口氏 ニヨ レバ,氏 ハ グ ロッシッヒ氏消 毒 法 ヲ施 シタ ル手

術 野 ヨ リ手術 開始 期 ニ所 要 ノ皮膚 片 ヲ切 除 シテ鏡 檢 セル ガ,沃 度丁幾 ハ表 皮 ニ

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於 テハ常 ニ全 角 質 層 ノ上 部 ニ浸 潤 シ,毛 嚢 ニ於 テハ更 ニ深 ク侵 入 シテマル ピ

ギー氏層ヲ 超 工,毛 根 ニハ達 セズ.汗 腺 ニ於 テハ毛 嚢 ヨ リ淺表 ナ レ共 尚 ホ且 ツ

其 ノ排 泄 管 内 ニ侵 入 シ,汗 腺 内 ニハ入 ラズ,皮 脂腺 中 ニハ侵 入 スル 事 ナ シ ト謂

ヘル ニ徴 シ,余 ノ結 果 ト畧相似 タル モ ノア リ.由 是觀 此,五%「 ピク リ ン」酸 「ア

ル コホ ル」ル皮膚 深 達 作用 ハ,十%沃 度 丁幾 ト畧 同様 ナル ヲ知 ル ヲ得 可 シ.

飜 ツテ此 ヲ「ピク リ ン」酸 ノ皮膚深 達 作用 ニ關 スル唯一 ル實驗 者 タル フ アー ノ

報告 ニ就 キテ見 ルニ,其 ル記 載 ル甚 ダ簡 單 ニ シテ爲 メニ比 較 講 究 スル ノ資 ヲ得

ル ニ苦 シメ共,「 ピク リ ン」酸 水溶 液 竝 ニ「ア ル コホル 」溶 液 ニ於 テハ他 ノ殺 菌藥

ト同 ジク表 皮 角質層 ノ ミニ侵 入 シ,沃 度 丁幾 ニ於 ケル ト同 様 ナ リ ト謂 ヘル ニ徴

シ,余 ノ結 果 ト參 照 シテ聊 カ闡 明 ル資 ヲ得 ル ヲ得 ンカ.

第 四 節  實 驗 第 二

第 一項  實驗 方法 竝 ニ次第

余 ハ「ピク リ ン」酸 〔C6H2(NO2)3OH〕 ル水酸 基 「OH」 ノ水素 原 子 ハ金 属 或 ハ金

屬 様 素 ニ ヨ リテ換 置 セ ラ レテ,即 チ匹敵 セ ル金屬 ノ水酸 化物 或 ハ炭 酸 鹽類 及 ビ

「キ サ ンチ ン」鹽基 ,植 物性 類鹽 基 竝 ニ二,三 ル炭 化水 素,例 之,「べ ン ツオー ル」,

「ナフタ リン」,「 ア ン トラ セ ン」及 ビ「ク リー ぜ ン」等 ニ ヨ リテ中和 セ ラ レテ,黄

色 或 ハ赤 色 ノ良 ク結 晶 スル 「ピク リ ン」酸鹽,即 チ 「ピク ラー ト」ヲ形 成 シ,共

ノ多 クハ水 溶 性 ナル モ,就 中 二,三 ル鹽 基 性化合 物 ハ不 溶 性 ナル ニ徴 シ,一 旦

「ピク リ ン」酸 ヲ皮膚 中 ニ深 達 セ シメ テ後 ,之 ニ「ピク リン」酸 ト化合 シテ水 ニ不

溶 性 ナル化合 物,即 チ「ピク テー ト」ヲ形 成 スル藥 物 ヲ作用 セ シメテ其 ル深 達層

中 ニ於 テ結 晶 ヲ形成 セ シメ テ此 ヲ目標 トシ,實 驗 第一 ニ於 ケル結 果 ト参 照 シテ

其 ノ深 達作 用 ノ全豹 ヲ窺 ハ ンコ トヲ企 圖 セ リ.即 チ此 ノ目的 ニ向 ヒテ種 々ナル

化 合物 ヲ渉 獵 セル ガ,其 ル結 果 「ブル チ ン」及 ビ硫 酸 銅 ルニ 者 ル本 目的 ニ適 ヘル

ヲ確 メ得 タ リ.蓋 シ「ブル チ ン」Brucin (C23H26N2O4+4H2O)ハ 番木 鼈 屬Strychnos

arten殊 ニ番 木鼈Str. Nux Vomica中 ニ 「ス トリヒニ ン」 ト共 ニ含 有 セ ラル ル

「アル カ ロイ ド」ニ シテ,直 ニ「ピク リ ソ」酸 ト化 合 シ,水 ニ溶 性 ナル 橙黄 色 多稜

形 ノ結 晶 ヲ析 出 シ・ 加之,該 結 晶 ハ「フ オル マ リン」ニ不 溶性 ナル ヲ以 テ,實 驗

第 一 ニ於 テ述 べタルガ如 ク凍 結切 片調 製 ニ當 リ,滲 透 セル「ピ ク リ ン」酸 ノ脱 出

ヲ恐 レテ「フ オル マ リ ン」硬 化後,組 織片 ヲ水 洗 スル處 置 ヲ省 畧 スル ノ必 要 ナク,

且 ツ薄 切 後之 ヲ血清 中 ニ浮游 セ シムル面 倒 ナク,加 之,深 達層 中 ニ於 テ既 ニ結

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晶 ヲ形成 セア ヲ以 ラ,長 時 間 之 ヲ放 置 スル モ尚 ホ良 ク其 ノ滲 透 度 ヲ窺 ヒ得 ル

便 ア リ.此 ヲ以 テ余 ハ一%「 ブル チ ン」 「アル コホハレ」溶 液 ヲ調 製 シ此 ノ目的 ニ

充 テ ント企 圖 セ リ.

次 ニ硫 酸 銅Kupfervitriol (CuSO4+5H2O)ハ 其 ノ「ア ンモニ ヤ ク」性 溶液 ヲ「ピ

ク リ ン」酸 溶 液 ニ注 加 スルレ時 ハ,尚 ホ 「ピク リ ン」酸 ノ八 千分 ノ一倍 ノ稀 釋 液 ニ

於 テモ良 ク「ピク リン」酸 ト結 合 シテ,緑 色 無晶形 ノ結 晶 ヲ析 出 スル モノ ニ シテ,

該 結 晶 ハ強 ク分 極 光線 ニ作用 シ,「 ア ンモニ ヤク」及 ビ「フオ ルマ リ ン」ニ不溶 性

ニ シテ,水 ヲ以 ヲ處 置 スル コ トニ ヨ リヲ分解 ヌ.茲 ヲ以 テ余 ハ凍 結切片調 製 ニ

當 リテハ,全 ク實 驗 第 一 ニ述 ペタル注 意 ヲ テ一%硫 酸 銅 水溶 液 ニ 「ア ンモ ニ

ヤ」水(一 〇%)ヲ 適 宜 ニ注 加 シ,所 謂硫 酸銅 ノ「ア ンモニ ヤ ク」性 溶 液 ヲ調 製 シ

テ實 驗 ニ充 テタ リ.而 シテ對 照 タル 一〇%沃 度丁 幾 ニ於 テハ嘗 ラ尾崎 氏 ル爲 シ

ル ガ如 ク之 ニ昇汞 水 ヲ作用 セシムル コ トニ ヨ リテ,「Hg」 ト「J」 トヲ化 合 セ シ

タ メ,而 シテ其 ノ黒 褐色 ナル顆 粒 状結 晶 ヲ目標 ト シヲ實 驗 ヲ遂 行 セ リ.

大 正十 年六 月 二十八 日午 後一 時三 十分,我 ガ京 都帝 國 大學 醫學 部外 科 教室 ニ

於 テ,右 側 穿足症 ノ爲 メ,右 膝 關 節離 斷術 ヲ施 サルレ可 キ五 十三 歳 ノ男 子眞 下某 農

夫 ノ下 腿 ル皮膚 ニ付 キ テ,豫 メ濕 性剃 毛 ヲ行 ヒ,尋 デ舊 態 ニ乾 燥 セ シメタ ル後

所 定 ノ場 所 ニ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コボル」,八%「 ピ ク リ ン」酸 「アル コボル」,

「ピ ク リ ン」酸 水飽 和 液及 ピ對照 タル十%沃 度 丁幾 ン四者 ヲ塗 布 シ,約 二分 ノ後,

「ピク リ ン」酸 溶 液塗 布部 ニ於 テハ,一 箇 所 ニ於 ター%「 ブル チ ン」「アル コホ ル」

溶液 ヲ,他 ノー箇 所 ニ於 テハ 「ア ンモ ニ ヤク」性硫 酸 銅 水溶 液 ヲ過 剰 ニ塗 布 シ,

沃 度丁幾 ニ於 テハ一 〇%昇 汞 水 ヲ同 ジク過 剩 ニ塗布 シタ乾燥 セ シメ,尋 デ滅 菌

壓抵 布 ヲ以 テ之 ヲ掩 ヒ,下 腿 ラ離 斷 セル後,直 ニ各試 驗 野 ヨ リ所 要 ノ皮 膚 片 ヲ

切除 シ,上 述 セル操 作 ニ ヨ リラ凍 結切 片 ヲ調 製 シ,各 其 ノ固有 ノ結 晶 ノ組 織 内

形成 ヲ目標 トシヲ其 ノ深 度 ヲ檢 セリ.併 セ ヲ關 節離 斷 後直 ニ他 ル剩 餘 ノ皮膚 野

ニ付 キテ同様 ナノレ處 置 ヲ施 シ同 様 ナルレ實驗 ヲ反 覆 セ リ.

第 二項  實 驗 結 果

(一)一%「 ブル チ ン」「アノレコボ ル」溶 液 ヲ作用 セ シメ所謂

「ブルレチ ン,ピ ク ラー ト」ヲ形成 セ シメタ ルモ ノ.

實驗 第 一ニ於 テ得 タル ガ如 ク其 ノ深 達 度 ハ全 ク同様 ニ シテ,例 之,五%「 ピク

リ ン」酸 「アル コボル」ニ就 キラ 述 ブ レバ,表 皮 角 質層 ノ殆 ン ド全 層 ニ亙 リヲ其

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ノ固 有 ノ橙 黄 色多稜 形 ノ結 晶 ヲ多數 ニ認 メ,殊 ニ其 ノ上 層 ニ於 テ ヨ リ多 キヲ認

ム.結 晶 ノ存 在 セザノ部 分 ハ,實 驗 第 一 ニ於 テ認 メタル ガ如 ク,「 ピク リ ン」酸

ニ ヨ リテ帶緑 黄 色 ニ染 色 セラルル ヲ觀 タ リ.毛 嚢 竝 ニ汗腺 排 泄管 中 ニ ハ,前 者

ニ於 テハ多 クマ ル ビ ギー氏層 底 迄 ヲ其 ノ限度 トナセ共,尚 ホ該層 ヲ超 エ テ固 有

ノ結 晶 ノ存 在 ヲ認 メ,後 者 ニ於 テハ聊 力之 ニ劣 リ,マ ル ピ ギー 氏層 ノ中程 迄 ニ

於 テ多 ク結 晶 ヲ認 ムル モ,稀 ニ該層 ヲ超 エ テ尚 ホ結 晶 ノ存 在 スル ヲ認 メタル 事

ア リ.而 シテ此等 ノ部 分 ノ「ピク リ ン」酸 ニヨ リテ染色 セ ラルル コ トニ ヨ リ,併

セ參 照 シテ一層 良 ク其 ノ深 達 度 ヲ捕 捉 スル事 ヲ得 タ リ.但 シ皮 脂 腺 中 ニハ全 ク

滲透 セザ リキ.

八%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」,「 ピク リ ン」酸 水飽 和液 ニ於 テ モ其 ノ深 達度

ハ 實驗 第一 ニ於 ケル ト全 ク同様 ニシ テ,何 レモ其 ノ固有 ノ結 晶 ヲ全深 達層 中 ニ

認 メ,對 照 タ ル十%沃 度丁幾 ニ於 テハ,「Hg」 卜「J」トノ黒 褐 色穎 粒 状結 晶 ヲ五

%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ノ條下 ニ述 べ タル ト等 シク,同 様 ナル皮 膚 ノ深 部

ニ於 テ多 數 ニ認 メ,實 驗 第一 ニ於 ケル結 果 ヲシ テ一層 確 實 ナ ラ シムル ヲ得 タ リ.

(二)「 ア ンモ ニヤク」性硫 酸銅 水 溶液 ヲ作 用 セ シメ所 謂

「クッペル,ピ ク ラー ト」 ヲ形成 セ シ メタル モ ノ.

深 達度 ハ 「ブル チ ン,ピ ク ラー 卜」 ヲ形 成 セ シメク ル モ ノ 卜全 ク同 様 ニ シテ,

其 ノ固有 ノ無定 形 結 晶 ヲ至 深 達層 中 ニ多 數 ニ認 ノ,爲 メニ深 達層 ハ單 ニ 「ピク

リン」 酸 ヲ滲 透 セ シメタ ル際 ニ於 ケル ヨ リモ更 ニ黄緑 色 ナル外 觀 ヲ呈 セ リ.而

シ テ(一)及 ビ(二)ヲ 通 ジ概 シテ肝 腺 ハ毛 嚢 ニ比 シテ其 ノ深 達度 弱 ク,且 ツ表 皮

角 質層 ヘ ノ深 達度 モ處 ニ ヨ リテ多 少 ノ相 違 アル ヲ認 メタル ガ,此 ハ實 驗 第一 ニ

於 テ既述 セル ガ如 ク,汗 孔 ノ毛 嚢 開 口 ニ比 シテ ヨ リ多 ク汚物 ニ ヨ リテ閉塞 セ ラ

ル ルガ故 ニ,斯 ル差 違 ヲ生 來 セ ルモ ノ ニ シテ,併 セ テ消 毒藥 ノ皮 膚 深 達 力 ハ著

シク皮 膚 ノ汚穢 度 ニ關係 スル 毛ノ ナル ヲ識 ル ヲ得 可 シ.

而 シテ余 ハ同 様 ナル實驗 ヲ死體 ノ皮膚 ニ就 キ テ施 行 セル ガ,概 シテ其 ノ深 達

度 ハ生 體 皮膚 ニ於 ケル ヨ リモ ヨ リ淺表 ナル ヲ見 タ リ.此 ノ故 ニ眞 ノ深 達 度 ヲ窺

ハ ン 卜欲 セバ生 體 皮膚 ニ就 キ テ爲 サザ ル可 カ ラズ.尚 ホ皮膚 ノ厚 サ ハ個 人 ニ ヨ

リ竝 ニ身體 部分 ニヨ リテ多 少共 其 ノ度 ヲ異 ニス レ共,以 上 ノ下腿 ノ皮 膚 及 ビ大

腿 ノ皮膚 ヲ以 テセル實驗 ニヨ リテ略其 ノ概 要 ヲ窺 フ ヲ得 可 シ.即 チ余 ハ實 驗第

一及 ビ第 二 ニ於 ケル結 ヲ參 照 シ次 ノ決 論 ニ移 ラ ン 卜欲 ス.

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第五 節  結 論

(一)五%「 ビク リ ン」酸 「アル コホ ル」ハ一囘 ノ塗布 ニ ヨ リテ中等厚 ノ生 體 皮

膚 ノ表 皮 角 質層 ヲ殆 ン ド全 部滲 透 シ,竝 ニマル ビギー氏層 在 中 ノ毛 嚢及 ビ汗 腺

排 泄 管 中 ニ深 達 シ,毛 嚢 ニ於 テハ屡 々同層 ヲ超 エ テ更 ニ眞皮 中 ニ侵 入 スル事 ア

リ.然 レ共 毛根 ニハ達 セズ.皮 脂腺 中 ニハ全 ク侵 入 セズ.八%「 ビク リン」酸「ア

ル コホル」 ノ皮 膚 深 達度亦 之 ト酷似 ス.

(二)十%沃 度丁幾 ノ皮膚 深 達 力 ハ五%「 ビク リン」酸 「アル コホル」ノ ソ レ ト

逕 庭 ナ シ.

(三)「 ビク リン」 酸 水飽 和 液 ノ深 達 力 ハ殆 ン ド表 皮 角質 層 ノ最 表層 ニ限 リ,

五%「 ビ ク リ ン」酸 「アル コボ ル」ニ比 シ著 シク劣 弱 ナ リ.之 溶媒 タル 「アル コボ

ル」 ノ皮膚 ニ對 ヌル器械 的 清淨 作用 竝 ニ深 達 作用 ニ ヨル幇 助 ナ キニ因 ス.換 言

ス レバ「ビク リ ン」酸 ハ ソ レ自身 ニ於 テ多 少 ノ皮 膚深 達作 用 ヲ有 ス レ共,一 囘 ノ

塗 布 ニ於 テハサ マデ強大 ナル モ ノニ非 ズ シテ,「 アル コホ ル」ノ附 加 ニヨ リテ初

メ テ其 ノ著 シキ深 達 度 ノ増 強 ヲ見 ルモ ノ ナ リ.此 即 チ「アル コボル」ノ特 ニ溶媒

卜シテ優秀 ナル貢 獻 ヲ爲 ス コ トア ル ヲ證 スル モ ノニ非 ズ シテ何 ゾヤ.

(四)「 ビク リ ン」 酸 ノ皮膚 深 達度 ハ,皮 膚 ノ汚穢度 ノ如 何 ニ ヨ リテ著 シク左

右 セ ラル ル モ ノナ リ.

(五)本 實驗 ニ ヨル各 消 毒藥 ノ深 達 作 用 ノ強 弱 ニ ヨ リテ,既 二得 タ ル臨 牀 的

消 毒 力 ノ實驗 結 果 ヲ明 ニ説 明 スル ヲ得 可 ク,併 セ テ消 毒藥 ノ臨 牀 的價 値 ハ其 ノ

殺 菌力 ニ於 ケル ヨ リモ滲 透 力ノ研 究 ニ ヨ リテ一層 正 シク算 定 セ ラルル モ ノナル

所以 ヲ知 リ得 可 シ.而 シテ「ピ ク リ ン」酸 水飽 和 液 ノ條 下 ニ於 テ述 ベタル ガ如 ク

其 ノ深達 度 ト參 照 シ,併 セ テ臨 牀 的 消毒 力實驗 第三 ニ於 ケル結 果 ノ滅 菌 度 ト參

照 シ,吾 人 ノ現 今皮 膚外表 ヨリ爲 シ得 ル細 菌採 取 法 ノ可 能度 ヲ窺 ヒ得 可 シ.

(六)「 ビク リン」酸 ノ皮 膚深 達 作用 ハ死體 ノ皮 膚 ニ於 テハ ヨ リ微 弱 ナ リ.

(七)五%「 ビク リ ン」酸 「アル コホル」及 ビ十%沃 度丁幾 ハ皮膚 ノ消 毒 ニ際 シ,

完全 ニ皮 膚 ノ全層 ヲ滲透 スル事能 ハ ズ,從 ツテ吾 人 ノ現 今 有 スル皮膚 消毒藥 ヲ

以 テ シテハ未 ダ充分 ナル殺 菌濃度 ヲ以 テ皮膚 ノ全 層ヲ 滲透 シ,而 シテ完 全 ナル

皮膚 ノ消 毒 ヲ遂 行 スル事 ヲ期 待 スル 能 ハズ,然 レ共 茲 ニ留 意 ス可 キハ 「ビク リ

ン」 酸 ハ強 力 ナル染 色藥 ニ シテ且 ツ石 灰除 去藥 ナル ガ故 ニ,長 ク皮 膚 中 ニ留 リ,

從 ツテ共 ノ殺 菌 作用 ヲ長時擴 充 シ得 ル可能 性 アル事 ニ シテ,彼 ノ沃 度 ノ揮 發性

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ヲ有 スル ガ故 ニ一 旦表皮 細 胞 卜結 合 セル沃度 モ徐 々 ニ解 離 シ,以 テ長時塗 布 野

ニ留 ル事 無 ク,從 ツテ手術 中皮 膚 深 部細 菌 ノ這 出 ニ因 スル消 毒 野 ノ傳 染 ニ對 シ,

貢 獻 スル コ 卜少 ナキ缺點 ヲ有 セザル コ トナ リ.

第 三 章  「ビク リ ン」酸 ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟 作 用 ニ關 スル實 驗

第 一節  實驗 ノ目的

叙 上 ノ實 驗 ニ ヨ リテ余 ハ「ビ ク リン」酸 ノ殺 菌 力 ニ關 シ可 ナ リ詳 細 ナル知 見 ヲ

得 タル モ,「 ビク リ ン」酸 ル皮膚 消 毒 藥 ト シテノ價 値 ハ啻 ニ以上 ヲ以 テ決 定 セ ラ

レタ リ ト爲 スハ 早計 ニ シテ,彼 ノ沃 度丁 幾 ヲ以 テスル腹 壁皮膚 ル消 毒 ニ際 シ,

沃 度 ノ腹 膜 ヲ刺 戟 シテ腹膜 癒 著 ヲ惹 起 シ,尋 デ不幸 ナハ 轉機 ニ於 テハ手術 後 ノ

腸 管 閉塞 症 ヲ生 來 ス ル コ トアル ハ既 ニプ ロッピ ングK. Propping(1921)竝 ニ其

ノ他諸 家 ノ提 唱 セ ル所 ニ シラ,此 ヲ以 ラ沃 度丁幾 ハ其 ノ殺 菌力 ノ甚 シク優 秀 ナ

リ トハ云 へ,腹 膜 ニ對 スル嫌 惡 ス可 キ刺 戟作 用 ヲ有 スル ガ故 ニ,未 ダ以 テ俄 ニ

理 想 的皮膚 消 毒藥 トシ テ許 ス可 カ ラズ,加 之,其 ノ皮膚 ニ對 スル刺 戟 作用 ヲ有

ス ル ノ缺 點 ト相俟 チ テ,甚 シク皮膚 消 毒 藥 卜シ テノ聲 價 ヲ減 少 スル所 アルハ既

知 ル事 ニ屬 ス.茲 ヲ以 テ余 ハ「ピ ク リ ン」酸 ル共 ノ殺 菌 力實驗 ニ於 テハ沃 度 丁幾

ニ代 用 シ得 ル モ ノナル ヲ確 定 セ ルモ,果 シテ沃 度 丁幾 ニ見 ル ガ如 キ嫌惡 ス可 キ

腹 膜 刺 戟作 用 ノ缺 如 セ ル ヤ否 ヤ ヲ確 メ ン ト欲 シ,次 ノ實驗 ヲ遂 行 セリ.況 ンヤ

曩 ニヂ プ ソン(1919)ノ 其 ノ臨 牀 的經驗 ヨ リ シテ皮 膚 消 毒藥 トシテ五%「 ビク リ

ン」酸 「アル コホ ル」 ル沃 度 丁幾 ニ優 ルモ ノナル ヲ提唱 セル後, 1920年5月 「慢

性 蟲 様突起 炎 ノ手術 結 果」 ナル題 下 ニ其 ノ統計 的 觀 察 ヲ發 表 シラ日 ク, 1918年

12月 以 降,氏 ハ,氏 ル外科 臨 牀 ニ於 テ,皮 膚 ノ消毒 ニ際 シ沃 度 丁幾 ニ代 フル ニ

五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」ヲ以 テセル ガ,其 ル結果 ハ從 來 慢性 蟲 様突 起 炎

ノ手術 結果 ニ於 テ,手 術 後假 令 手術 ノ完 全 ニ行 ハ レタル 場 合 卜雖 モ,尚 ホ種 々

ナル痛訴 ヲ遺殘 シ吾 人 ヲ シテ遺 憾 ヲ感 ぜ シムル モ ノ多 ク, 1913年 以降1917年

ニ至 ル五 年 間 ニ於 テハ其 ノ惡 結 果 ヲ生來 セル比率 殆 ン ド二八%ニ 達 セル ニ反 シ

「ビク リ ン」酸 使 用 後 ニ於 テハ其 ノ著 シキ減 少 ヲ生 來 シ, 1918年 ニ於 テハ二 ○%

1919年 前半 期 ニ於 テハ一 一%ノ 少數 ヲ示 セ リ,而 シテ此 ガ改 善 ノ原 因 ハ畢 竟

「ビク リ ン」酸 ハ沃度 ニ見 ルガ如 キ腹 膜 ニ對 スル 刺 戟 作用 ヲ有 セザル ガ故 ニ,手

術 後 ノ腹 膜 癒著 ヲ惹 起 スル コ トナク,從 ツテ敍 上 ル如 キ著 シキ惡結 果 ノ減少 ヲ

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生 來 セル モ ハ ナ リ ト論斷 セル ニ於 テオ ヤ.試 ニ氏 ガ1913年 以降1919年 ニ至 ル

六 箇 年 間 ノ慢 性 蟲様 突起 炎 ノ手術 例 ニ就 キ テ,不 滿 足 ナル結果 ヲ生來 セル症 例

ニ就 キ,其 ノ百分 率 ヲ計 出 セル統 計 ヲ表 示 ス レバ

上 表 ル如 ク ニ シラ全 例即 チ五 百五 十五 例中不 滿足 ナル結果 ヲ生 來 セル ハ六十

八 例 ナル ガ,就 中四 十 一例 ハ手術 後 ノ反 動或 ハ神 經性愁 訴 卜見 做 ス可 キモノ ニ

シテ,二 十七 例 ハ手 術 ル不 完 全 ニ歸 スル モノ ニ非 ズ シラ多 ク婦 人科 的疾 患 或 ハ

癒 著 ニ因 スル モ ノナ リ ト謂 ヘ リ.而 シテ癒 著惹 起 ヲ生 來 スル モノハ蟲様 突起 ノ

斷 端竝 ニ手術 前 ニ存 在 セル癒 著 モ之 ニ關與 ス レ共,其 ノ多 クハ沃 度 ノ刺戟 ニ因

スル モノ ニ シラ,ヂ プ ソ ン門 下 ノフ アー ハ亦 一文 ヲ草 シラ日 ク,該 痛訴 ノ大 半

ハ切 開 部 ニ近 接 セル周圍 ニ於 テ訴 ヘ ラ レタ ル モノ ナル ガ故 ニ,當 然瘢 痕 周 圍 ニ

於 ケル癒 著 障碍 ト認 メザル可 カ ラズ,且 ツ余等 ノ手術 的技 術 ハ,之 ヲ往 時 ト比

較 スル ニ「ピク リ ン」酸 ル使 用 ヲ除 クノ外 ハ全 ク同様 ニシ テ,診 斷 的聰 明竝 ニ手

術 的技 巧 ノ斯 クノ如 キ著 シキ惡結 果 ノ減 少 ヲ生 來 スルガ如 キコ トハ信 ぜ ラ レズ

ト謂 ヘ リ.由 是觀 此,腹 膜 癒著 ノ如 何 ニ手術 後 ノ惡結 果 ニ重 要 ナル 意 義 ヲ有 ス

ル カ ヲ知 ル可 ク,亦 如 何 ニ沃 度 ノ腹 膜 刺戟作用 ノ開腹 術 ノ結 果 ニ惡 影響 ヲ及 ボ

ス カ ヲ推 シ得 可 シ.

第 二節  實驗第一 腹腔 内ヘノ消毒藥注射 ニヨル實驗

第 一項  序 説竝 ニ實驗準備

先 ヅ 「ピクリ ン」 酸 ヲ其 ノ中毒 量顧慮 ノ下 ニ天竺鼠 ノ腹腔 内 ニ注射 シ,以 テ

「ピク リン」酸 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟作用 ノ有無 ヲ檢 シ,尋 デ之 ガ腹膜癒著 ヲ惹起

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スル ヤ否 ヤ ヲ見 タ リ.試 驗藥 卜シテハ「ピク リン」酸 自 己 ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟 作

用 ヲ見 ンガ爲 メニ,其 ル最 高濃 度 タル「ピク リ ン」酸 水飽 和液 ヲ用 ヰ,之 ガ比較

對 照 卜シ テ一 ・二%「 ピク リン」酸 「アル コホル」,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ

ル」,○ ・〇 二%「 ピク リ ン」酸 水 溶液,八 五%「 アル コホル」及 ビ比較 主體 タル五

%沃 度 丁幾 竝 ニ五 千倍沃 度 水溶 液 ノ六 者 ヲ用 ヰタ リ.

曩 ニフ アー ハ同 僚 スペ ンサーSpencer竝 ニ キ ンジヱ リーKingeryノ 助 力 ニ

ヨ リテ,同 様 ナル 目的下 ニ四頭 ノ天竺 鼠 ニ就 テ,順 次 一%「 ピク リ ン」酸 水 溶液

一 竰 及 ビ二竰 ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」○ ・五 竰 及 ピ一竰 ヲ腹 腔 内 ニ注 射

シ,以 テ其 ノ腹 膜 刺戟 作用 ノ有 無 ヲ檢 シタ ルガ,試 驗 獸 ハ「ピク リン」酸 ヲ腹 腔

内 ニ注 射 セ ル時,腹 腔刺 戟 ニ因 リテ輕 キ「シヨック」様 症状 ヲ呈 セ ル ノ外 ハ何 等

惡 結果 ヲ生 來 セ ズ,六 週 日後麻醉 ノ下 ニ開腹 術 ヲ行 ヒタ ル ニ何等 ノ癒 著 ヲ發 見

セズ,全 腹腔 臟 器 ハ完 全 ニ通 常 ナ リキ.而 シテ該 開腹 術 ハ腹 壁 ノ毛 髪 ヲ剃 除 ス

ル コ トナク,單 ニ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」ヲ塗 布 セル ノ ミニ テ施 行 サ レ

タ ル モ ノ ニ シラ,加 之,手 術 者 ル手 ハ洗滌 スル コ 卜ナク「ピク リ ン」酸 「アル コホ

ル」中 ニ浸 サ レタ ル ノ ミナ リ.内 臟 ハ腹 壁 上 ニ自由 ニ提 出 セ ラ レ乾 燥 「ガー ぜ」

ヲ以 ラ甚 グ粗 暴 ニ取 リ扱 ハ レタ リ.手 術 創 ハ再 ビ縫 合 サ レ,全 試驗 獸 ハ完全 ニ

恢 復 セ リ.一 試 驗獸 ハ第 六 週 終 ニ於 テ流 産 ノ爲 メニ死 亡 セ リ.他 ル三 試驗 獸

ハ スベ ンサー ニ ヨ リテ行 ハ レタ ルレ最 後 ノ撲殺 ニ ヨル試 驗 時 マ デ生 存 シ,何 等 ノ

異 常 ヲ呈 セザ リキ.而 シテ氏 ハ決論 シテ日 ク,天 竺 鼠 ニ於 ラバ,少 ナク 卜モ「ビ

ク リ ン」 酸 ハ寧 ロ其 ノ大量 ニ於 ラ腹 膜 癒 著 ヲ惹 起 スルカ ナ シ,然 リ而 シテ氏 ガ

屡 々「ピク リ ン」酸 ヲ何等 明 ナル惡 結果 ナ シニ蟲様 突 起 ル斷 端 ニ用 ヰ得 タ ルハ 蓋

シ之 ニ因 由 スル モノ ナ リ 卜謂 ヘ リ.

由是 觀 此,「 ピク リ ン」酸 ハ其 ノ大 量 ニ於 テ何等 腹膜 ニ對 スル刺戟 性 状 ヲ有 セ

ザル ガ如 キ モ,今 氏 ル實驗 ヲ仔細 ニ觀 察批判 スル 時,蓋 シ亦缺 點 ナ シ 卜云 フ可

カ ラズ.即 チ氏 ル論 文 ハ詳細 ナル記載 ナク シテ實 驗操 作 ノ捕 捉 ニ苦 シム處 ア レ

共,今 其 ノ主 ナル缺 點 ヲ擧 グ レバ,(一)氏 ハ「ピク リ ン」酸 ノ腹 腔 内注 射 ニ際 シ,

何 等 注 射量 ヲ試 驗獸 ノ體 重 ニ標 準 ヲ攝 ラザ リシヲ以 テ,其 ノ正確 ナル 「ピク リ

ン」酸 ノ分 量 如何 ニ關 スル腹 膜 刺 戟 作用 ル有 無 ヲ捕捉 スル ニ難 ク,(二)「 ピク リ

ン」酸 ノ同 濃度 タル水溶 液 竝 ニ 「アル コホ ル」溶 液 ヲ併 用 セザ リ シガ爲 メ,假 令

氏 ノ實驗 結 果 ニ シラ,「 ピク リ ン」酸 自己 ノ何 等腹 膜 ニ對 スル刺 戟作 用 ヲ有 セズ

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ト爲 スモ,未 グ之 ヲ以 テ俄 ニ「ピク リン」酸 自己ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟 作用 ノ有 無

ヲ檢 定 セ ル モノ トハ斷 ズ可 カ ラズ,況 ンヤ其 ノ溶劑 タル「アル コホル」ノ既 ニ知

ラ レタ ルガ如 ク,開 腹 術 ニ際 シ腹 膜 癒著 惹 起 ニ對 シ有 力 ナルi組成 因 卜爲 ル ニ於

テオ ヤ.茲 ニ於 テカ,帥 チ之 ガ 劉照 卜シテ,當 然,其 ノ溶媒 タノ・「アル.コボル」ノ

腹 膜 ニ對 スルし刺戟 作 用 ヲ見 ザ リ シバ,其 ノ重大 ナル・缺點 ニ シテ,加 之,後 述 セ

ル ガ如 ク,余 ル實驗 結 果 ニ於 テ證 明 セル ガ如 ク,「 アル コホル」ノ毎 常 可 ナ リ強

大 ナル腹膜 刺戟 作用 ヲ呈 セル コ 卜ヲ確 證 セル ニ於 テ オ ヤ.茲 ニ於 テカ余 ハ前述

セルガ如 ク一・二%「 ピク リ ン」酸 水溶 液竝 ニ一 ・二%「 ピ ク リ ン」酸 「アル コホル」

ヲ用 フル ト共 ニ,其 ノ溶媒 タル八 五%「 アル コホル」ヲ併 用 シテ,之 ガ比較 對照

ニ便 ジ,加 フル ニ本 業績 ノ比 較 主體 タル沃 度 ノ腹 膜 ニ對 ス ル刺戟 作用 ノ有 無 ヲ

追試 シ,以 テヂ プ ソ ン竝 ニ フアー ノ唱 フルガ如 ク,果 シテ「ピク リ ン」酸 ノ腹 膜

ニ對 スル刺 戟作用 ヲ有 スル ヤ否 ヤ ヲ確 定 セ ン ト企 圖 セ リ.

第 二項  實驗 方法 竝 ニ次 第

成 熟 セ ル天 竺 鼠 ニ就 テ可及 的體 重 ノ等 シク(四 百瓦 内外)且 ツ同様 ナル生 活状

態 ニアル モ ノ ヲ選 定 ン,體 重百瓦 ニ ツキ試 驗 藥 ○ ・一竰 ノ比 ヲ場 ク腹 腔 内 ヘノ

注 射 量 ヲ定 メ,豫 メ毛髪 ヲ剃 除 シ ラ消毒 セル下腹 部 ヨ リ,試 驗藥 ヲ滿 セル注 射

器 ヲ斜 ニ横 隔膜 ニ向 ヒテ刺 人 シ,此 ノ際 盲腸 竝 ニ大脈 管 ノ損 傷 ヲ囘避 シツ ツ注

射 針 ヲ廻 轉 シテ徐 々ニ〇・〇 二竰 宛 可及 的 諸 所 ニ注射 シ,拔 針 セル 後,輕 ク腹 部

ヲ摩 擦 ス,而 シテ之 ニ依 リテ可及 的 試驗藥 ヲ諸 所 ニ作用 セ シメ,且 ツ可 及的 一

局 所 ニ多 量 ノ試驗藥 ヲ作 用 セ シメザ ラ ンコ トヲ期 セ リ.而 シテ各消毒 藥 ノ注 射

ニ際 シ,當 該試驗 獸 ノ腹 壁 皮膚 ノ消 毒 ハ,恐 ラク實驗 結 果 ヲ亂ル ノ虞 ナカ ラ ン

モ,試 驗藥 ノ種類 ヲ異 ニスル ニ ヨ リテ,夫 々當 該 試驗 藥 ヲ以 テ腹 壁 ノ皮膚 ヲ消

毒 セ リ.即 チ沃 度 ニ於 テハ一 ○%沃 度 丁幾 ヲ以 テ シ,「 ピク リン」酸 ニ於 テハ五

%「 ピク リン」酸 「アル コホル」ヲ以 テシ,「 アル コホル」 ニ於 テハ六 〇%「 アル コ

ホル」 ヲ以 テ シ,且 ツ沃 度丁 幾竝 ニ「ピク リ ン」酸 ニ於 テハ之 ヲ中和 シテ剩 餘 ノ

消 毒藥 ノ除 去 ニ勉 メタ リ.後 述 セル實驗 第 二ニ於 テモ此 ノ注 意 ヲ拂 ビタル ハ勿

論 ナ リ 卜ス.而 シテ 一方 注射 後 二十 四時 間 ニ シテ撲殺 シテ其 ル腹 膜 炎 ヲ惹 起 セ

ル ヤ否 ヤ ヲ見 ル 卜共 ニ,他 方 注射 後多 ク之 ヲ三 週 日 ニ シ テ撲 殺 シ テ腹 膜 癒著 惹

起 ノ如何 ヲ見 タ リ.

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第三項  實 驗 結 果

第一 目  「ピリク ン」酸 水飽和液

第 一表 ニ示 セ ルガ如 ク,注 射後 三週 日 ヲ經 過 セル モ ノニ於 テハ,何 レモ皆腹

膜 癒著 ヲ惹 起 セル モ ノ ヲ認 メズ啻 時 卜シテ僅 ニ經 過 セル腹 膜 炎 ノ痕 跡 ヲ腸 管 壁

ニ認 ムル事 アル ノ ミ.即 チ注 射 後 二十 四 時間 ニ シテ開腹 術 ヲ行 ビ,其 ノ腹 膜 ニ

對 スル刺 戟作用 ノ有無 ヲ檢 シタ ル モ ノ ニ於 テ,僅 ニ極 メテ輕 度 ノ限 局 セル腹 膜

炎 ヲ惹 起 セ ル ヲ認 メタ リ.今 其 ノ一例 ニ就 キテ述 ブ レバ(第 八 表參 照).

天 竺 鼠 第 四十八 號,體 重四 二〇瓦,腹 腔 内注 射量 ○ ・四二竰, ♀

横 行結腸 ニ於 テ一箇 所,盲 腸 ニ於 テ三箇 所,腸 管 壁斑 點 様 ニ輕 ク充 血 シ,何

等 滲 出液 ノ認 ム可 キモ ノナク,繊 維 素 ノ析 出 ヲ認 メズ,其 ノ他 ノ腹 膜 ニ於 テ何

等 ノ異 状 ヲ認 メザ リキ.由 是 觀 此,「 ピク リ ン」酸 ハ其 ノ水 溶 液 中最 高濃 度 タル

飽 和液 ニ於 テ,體 重 百瓦 ニ對 シ○ ・一竰 ナル比 率 ヲ以 テセル腹 腔 内 注 射 量 ニ於

テハ,假 令 腹膜 ニ對 スル極 メ テ輕 度 ナル刺 戟性 状 ア リ ト雖 モ,未 グ以 テ腹 膜 癒

著惹 起 ヲ生 來 スル ニ至 ラ ズ,從 ツテ其 ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟作 用 ハ サ マ デ強 大 ナ

ル モノ ニ非 ラザル ヲ知 ル可 シ.然 レ共 茲 ニ留 意 ス可 キハ,上 述 セル分 量 ニ於 テ

已 ニ微 弱 ナ リ ト雖 モ腹 膜 ヲ刺 戟 シテ,極 メラ輕 キ充血 ヲ生 來 セル モ ノナル ガ故

ニ,若 シ夫 レ一局 所 ニ長 時間同 溶液 ヲ作 用 セ シメタル 時 ,即 チ作 用 セ シ ムル分

量 及 ビ時 間 ノ延 長 ヲ見 タル時 ハ,必 ズ ヤ多少 共其 ノ刺 戟 強 度 ヲ増 加 スル ハ 自 明

ノ コ 卜ニ屬 セ ンモ,例 之,體 重四四 〇瓦 ヲ有 セ ル試 驗獸 ニ對 ス ル「ピ ク リン」酸

水飽 和 液 ノ注 射 量 ○ ・四 四竰 ヲ以 テ實 驗 第二 ノ條 下 ニ後 述 セル ガ如 ク,良 ク該

試 驗 獸 ノ空腸 竝 ニ囘腸 壁 全部 ニ一囘 ノ塗 布 ヲ行 ヒ得 可 キ ヲ以 テ,決 シテ此 ノ注

射 量 ヲ以 テ僅 少 ナ リ ト謂 フ可 カ ラズ,況 ンヤ「ピク リ ン」酸 ノ消毒 藥 卜シテ,臨

牀 上應 用 ニ當 リ,手 術 操 作中腸 管 壁其 ノ他 ノ腹 膜 ニ附 著 スル分 量 ノ當 然 ヨ リ僅

少 ニ シテ,假 令五%「 ピク リン」酸 「アル コホル」ヲ使用 スル 卜モ,腹 膜 ニ附 著 セ

ル「ピク リ ン」酸 ハ既 ニ「アル コホル」ノ揮 發 セル後皮 膚 ニ殘 留 セル モ ノ ナル ヲ以

テ,「 ピク リン」酸 自身 單獨 ニ腹膜 ニ作 用 スルモ ノ ナル ニ於 テオ ヤ.茲 ヲ以 テ余

ハ斯 ル實驗 注 射 量 ニ於 テ,其 ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟 作用 ル有 無 ヲ トスル ノ俄 ニ早

計 ニ非 ラザル ヲ惟 ヒ,本 實驗結 果 ヲ以 テ,「 ピク リン」酸 ノ開腹 術 ニ於 ケル腹膜

面 移 行 ニ因ル腹 膜刺 戟作 用 ノ如何 ヲ窺 フ コ トヲ得 ン ト信 ズ.

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第 一 表

第 二目  一 ・二%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」

前述 セル 「ピク リ ン」酸 水飽和 液 ハ室温 ニ於 テ約一 ・二%ノ 濃 度 ヲ保 有 セル モ

ノ ナル ガ,余 ハ茲 ニ同濃度 ヲ有 セル「ピク リン」酸 ノ「アル コホ ル」溶 液 ヲ實驗 ニ

用 〓 テ,腹 膜 ニ對 スル刺 戟作用 ノ有 無 ヲ檢 シ,果 シテ其 ル溶 劑 ノ蒸 餾 水 ナル ト,

「アル コホル」ナル 卜ニ ヨ リテ,其 ノ結 果 ニ如 何 ナル影 響 ヲ及 ボス モ ノナル ヤ否

ヤ ヲ見 タ リ.

實驗 結 果 ハ「ピク リ ン」酸 水飽 和 液 ニ於 ケル 卜甚 シク異 リ,五 試 驗 獸 中何 レモ

皆腹 膜 癒著 ヲ惹 起 シ,中 等 度 ノ癒著 ヲ見 タル モ ノ一,弱 度 ノ癒著 ヲ見 タル モ ノ

一 ,微 弱 ナル癒 著 ヲ見 タル モ ノ二 ニ シ テ,殘 餘 ノ一 例 ハ試驗 藥 ノ刺戟 ニヨ リテ

強 キ急 性漿 液性纎 維 素性腹 膜炎 ヲ惹 起 シ,試 驗 藥 ル利 キタ ル腸 管 壁表 層壞 死 ニ

陷 リ,注 射後 四 十一 時間 ニシテ斃 レタ リ.而 シテ中等 度 ノ腹膜 癒著 ヲ見 タル モ

ノハ爲 メ ニ腸 管 係 蹄 ノ屈 曲 ヲ來 シ,所 謂 手術 後 ノ閉塞 性 吐糞症 ヲ生 來 シテ,等

シク八 日餘 ニ シテ死 ノ轉 機 ヲ取 レリ.

由是 觀 此,「 ピク リン」酸 ハ之 ヲ八 五%「 アル コホル」卜共 ニ腹 膜 ニ作用 セ シム

ル時,甚 グ著 シク其 ノ刺 戟 作用 ヲ増 強 スル モ ノニ シ テ,之 果 シテ「ピク リ ン」酸

ノ腹膜 ニ對 ス ル刺 戟作用 發揮 ノ,「 アル コホル」ニ ヨリテ甚 シク助 長 セ ラ レタ ル

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結 果 ナ リヤ,或 ハ其 ノ溶媒 タル八 五%「 アル コホル」ノ腹 膜 ニ對 ス ル刺 戟作用 ノ

強 大 ナル ニ因 由 スル モ ノナル ヤ,俄 ニ斷 定 スル コ ト能 ハザ レ共,兎 ニ角 「ピ ク

リ ン」 酸 ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟 作用 ハ,其 ノ溶媒 タ ル「アル コホル」ト共 ニ作 用 セ

シ ムル時,甚 ダ著 シク増 強 スル モ ノ ナ リ ト謂 フ ヲ得 可 シ.

第 二 表

第 三 目  五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」

第 三 表 ニ掲 出 セル ガ如 ク,全 六 例 中,何 レモ皆甚 グ著 シキ腹膜 刺 戟 作用 ヲ現

ハ シ,微 弱 ナル腹 膜 癒 著 ヲ惹起 セル モ ノ一 例,弱 度 ノ腹 膜 癒著 ヲ惹 起 セル モ ノ

二例 及 ビ中 等度 ノ腹 膜 癒 著 ヲ惹 起 セル モ ノ一例 ニ シテ,就 中 二例 ハ試 驗 藥 ノ爲

メ急性 漿液 性纎維 素性腹 膜 炎 ヲ惹起 シ,試 驗藥 ヲ注 射 セル部 位 ニ横 ハ レル腸 管

壁 ニ於 テ其 ノ表 層壞 死 ニ陷 レル箇所 ヲ生 ジ,一 ハ注 射 後七十 時間 ニ シラ斃 レ,

一 ハ四 十一 時間 ニ シテ死 セ リ.由 是觀 此,一 ・二%「 ピク リ ン」酸 「アル コホ ル」

ニ於 テ證 明 セル ガ如 ク,五%「 ピ ク リ ン」酸「アル コホル」ニ於 テモ其 ル腹 膜 ニ對

スル刺 戟 作 用 甚 ダ強 大 ニ シテ,試 驗 獸 ノ體 重一 〇 〇瓦 ニ對 シ注射 量 ○ ・一 竰 ニ

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於 テハ毎 常必 ズ腹 膜 癒著 ヲ惹 起 ス.只 茲 ニ注 意 ス可 キハ,五%「 ピク リ ン」酸 「ア

ル コホル」ニ於 テハ,一 ・二%「 ピク リン」酸 「アル コホル」ニ於 ケル ヨ リモ其 ノ

「ピク リ ン」酸 ノ絶 對含 有量 ヨ リ強 大 ナル ガ故 ニ,從 ツ テ其 ノ腹 膜 ニ對 スル刺 戟

作用 モ ヨ リ強大 ナ ラ ン 卜推 セ ラル ル點 ナ リ トス.以 下八 五%「 アル コホル」ノ腹

膜 ニ對 スル刺 戟 作用 ノ如 何 ヲ述 べ,這 般 ノ刺 戟作用 増 強 ノ如何 ニ關 スル消 息 ヲ

述 ベ ン ト欲 ス.

第 三 表

第四目  八五%「 アル コホル」

實驗六例中腹膜癒著 ヲ惹起 セルモノ三例,癒 著惹起 ヲ生來 セザ リシモノ二例,

急性漿液性纎維素性腹膜炎 ヲ惹起 シテ中途斃 レタルモノ一例 ニシテ結果 ハ(±)

ノ成績 ヲ示 セリ.然 レ共 之 ヲ詳細 ニ窺 フ時,假 シ腹膜癒著 ヲ惹起 セザ リシ場合

卜雖 モ,何 レモ經過 セル腹膜炎 ノ痕跡 ヲ止 メ,毎 常八五%「 アル コホル」ノ腹膜

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ニ對 スル刺戟 作 用 ノ甚 ダ強 大 ナル ヲ示 セ リ(第 四表 參照).試 ミニ注 射後 二十 四

時 間 ニ シテ開腹 術 ヲ行 ヒ,以 テ其 ル腹 膜 ニ對 スル刺 戟 作用 ノ有無 ヲ見 タル 一例

ニ就 キテ述 フ レバ(第 八表 參 照) .

天 竺 鼠第五 十 一號,體 重三八 ○瓦,腹 腔 内注 射量 ○ ・三 八 竰, ♀

囘腸 ニ於 テ一箇 所 ニ於 テハ其 ノ長 軸 ニ沼 ヒテ約 四糎 長,三 箇 所 ニ於 テハ約 一

糎 長 ニ シ テ,腸 管 壁 ノ全 周 圍 ニ及 バザル 中等 度 ニ充 血 セル箇 所 ヲ認 メ,該 部 ノ

腸 間膜 血管擴 張 ス.大 網 膜 ノ周縁 ノ一部 及 ビ上 行結 腸,下 行結 腸 竝 ニ蟲様突 起

ノ尖 端 ニ於 テ,同 様 ナル充 血部 ヲ斑 點様 ニ數 箇所證 明 ス.而 シテ當 該腸管 壁 稍

稍 不透 明 ニ シテ,纎 維 素 ノ析 出 ヲ認 メ,腸 管 ヲ把 持 セル手指 ニ粘 稠 性 ヲ感 知 セ

シム.滲 出液 ヲ肉眼 的 ニ殆 ン ド證 明 スル能 ハ ズ 即 チ由是 觀 此,八 五%「 アル

コホル」 ハ假 シ腹膜 癒著 ヲ惹 起 スル コ トナ シ ト雖 モ,其 ノ腹 膜 ニ對 スル刺戟 作

用 ハ強 大 ニ シテ,試 驗獸 ノ體 重 百瓦 ニ對 シ,注 射量 ○ ・一竰 ナル比率 ニ於 テハ多

ク腹 膜 癒著 ヲ惹 起 スル ヲ見 ル可 ク,況 ンヤ一例 ニ於 テハ爲 メニ急 性腹 膜 炎 ヲ惹

起 シ テ斃死 セル モ ノアル ニ於 クオ ヤ,以 テ如何 ニ「アル コホル」ノ單 獨 ニ テ腹 膜

刺 戟 作用 ル強 大 ナル カ ヲ知 ルヲ得 可 シ.

之 ヲ上 述 セル一 ・二%「 ピク リ ン」酸「アル コホ ル」及 ビ五%「 ピク リン」酸 「アル

コホ ル」 ノ刺 戟結 果 卜比較 スル ニ,假 令 一例 ニ於 テ急 性腹 膜 炎 ニ ヨル 死 亡 ア リ

卜雖 モ,兩 者 ヨリ稍 々著 シキ其 ノ刺戟 度 ニ於 テ微弱 ナル點 ア リ.由 是 觀 此,一 ・

二%「 ピク リン」酸 「アル コホル 」ノ一 ・二%「 ピ クリン」酸 水溶 液 ヨ リ其 ル刺戟

度 ニ於 テ甚 シク強 大 ナル所 以 ハ,即 チ後者 ニ於 テハ,全 實驗 例 中一 例 モ腹 膜 癒

著 ヲ惹起 セズ,且 ツ經 過 セル腹 膜 炎 ノ痕跡 ヲ止 ムル コ ト少 ナ キニ反 シ,前 者 ニ

於 テハ前 述 セル ガ如 ク甚 ダ著 シキ腹 膜 刺戟 作用 ヲ呈 セル ハ,一 ハ其 ノ溶 劑 ノ八

五%「 アル コホル 」ナル ガ故 ニ,其 ノ固 有 ノ腹 膜刺 戟 作用 ノ發 現 アル 卜,一 ハ爲

メ ニ「ピ ク リン」酸 ノ腸 管壁 ヘ ノ滲 透 作用 ノ幇助 セラルル 結 果,水 溶液 ニ見 タル

ガ如 キ微 弱 ナルレ滲 透作 用 ヲ見 ザル ガ故 ニ,從 ツテ「ピク リン」酸 固有 ノ腹 膜 刺 戟

作 用 ノ増 強 セル結 果 ナ リ 卜云 フ可 シ.試 ニ今天 竺鼠 ノ腹腔 ヲ開 キ,腸 管壁 ニ試

驗 藥 ヲ塗 布 スル 時,假 令腸 管壁 ヲ掩 フ漿 液 ニ ヨ リテ當 該試 驗藥 ノ稀 釋 セ ラルル

コ 卜ア リ ト雖 モ,「 ピク リ ン」酸 水飽 和液 ニ於 テハ殆 ン ド當 該塗 布 部 タル漿 液膜

ノ黄染 セザル ニ反 シ,同 濃 度 ノ「アル コホル 」溶 液(一 ・二%)ニ 於 テハ直 ニ塗 布

部 ノ漿 液 膜 斑點様 ニ黄染 シテ,「 ピク リン」酸 ノ腸 管 壁 内滲 透 ノ可 能 ナル ヲ見ル.

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之 即 チ前者 ハ水溶 液 ナル ガ故 ニ其 ノ滲 透 作用 弱 ク,後 者 ハ「アル コホル 」溶 液 ナ

ル ガ故 ニ其 ノ滲 透 作用 強大 ナ リ 卜解 スル ヲ得 可 ク,且 ツ一 囘 ノ塗 布 ニ依 ル腸 管

壁黄 染 ノ度 ハ一 ・二%「 ピク リン」酸 「アル コホル 」ニ於 ケル ヨ リモ,五%「 ピク リ

ン」酸 「アル コホル」ニ於 テ ヨ リ強大 ナル ヲ見 ル.之 即 チ腹 膜 刺戟 作 用 ノ同様 ナ

ル操 作 ニ於 テハ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ノ一 ・二%「 ピク リン」酸 「アル

コホル」ヨ リモ強大 ナル ヲ證 スル モ ノタ リ.而 シテ腸 管 壁 黄染 ノ度 ハ,一 囘 ノ塗

布 ニ於 ケル ヨ リモ,連 續 セル 二 囘 ノ塗 布 ニ於 テ更 ニ強 大 ナル モ ノ ニ シテ,殆 ン

ド塗布 野 ノ全 部 ヲ黄 染 スル コ トア リ.而 シテ「ピク リン」酸 水飽 和液 ニ於 テモ該

塗 布 ヲ同 一部 ニ數 囘 連續 反 覆 スル時 ハ遂 ニハ其 ノ黄染 ヲ見 ル モ ノナ リ.此 ノ事

實 ヨ リ見 レバ全然 腹膜 ニ對 スル刺戟 作用 ノ缺 如 セル モ ノハ 問 ハズ,苟 モ些少 タ

リ 卜モ其 ノ刺 戟 作用 ヲ有 スル モ ノ ニ於 テハ,如 何 ニ其 ノ作 用 セ シメタル 試驗 藥

ノ分 量 竝 ニ作用 時 間 ノ,其 ノ刺 戟結 果 ニ重大 ナル 意義 ヲ有 セル カ ヲ知ル ヲ得 可

シ.而 シテ余 ガ試 驗藥 ノ腹 腔 内注 射 ニ當 リ,可 及 的 一局 所 ニ作用 セ シムル 試 驗

藥 ヲ シテ僅 少 ナ ラ シメ ント欲 シ,○ ・〇 二竰 宛 諸 所 ニ注 入 シタル ハ畢 竟之 ヲ顧

慮 シタル ガ故 ニ外 ナ ラズ.ソ ル マ ンSollmannニ ヨ レバ,家 兎 ニ於 テハ「ピク リ

ン」酸 ノ致 死 量靜脈 内注射 ニ於 テ○・〇 一五竓,皮 下注 射 ニ於 テ○ ・〇二竓 ナル

ガ,本 實驗 ニ於 テハ五%「 ピク リ ン」酸「アル コホル」ニ於 テ其 ノ絶 對腹 腔 内注 射

量五 竓,一 ・二%「 ピク リ ン」酸 水溶 液 竝 ニ「アル コホル 」溶 液 ニ於 テハ 一・二竓 ニ

及 ベ共 何等 「ピク リ ン」酸吸 收 ニ因 スル著 シキ中毒 症状 ノ發現 ヲ見 ザ リキ.之 ヲ

フ アー ノ實 驗結果 卜比 較 スル ニ,氏 ハ一%「 ピク リン」酸 水 溶液 一竰 竝 ニ二竰 及

ビ五%「 ピク リン」酸 「アル コホル」○ ・五 竰 竝 ニ一竰 ヲ各 天竺 鼠 ノ腹 腔 内 ニ注 射

シ,六 週 日後 試驗 的開腹 術 ヲ行 ヒテ其 ノ腹 膜 刺 戟 作用 ノ如何 ヲ見 タル ニ,全 例

ニ於 テ何等腹 膜 癒著 ヲ惹 起 セル モノ ヲ認 メザ リキ 卜云 フ.即 チ余 ハ試驗 藥 ノ注

射 量 ヲ天 竺 鼠 ノ體 重一 〇〇瓦 ニ對 シ○ ・一竰 ノ比 ニ計 出 セル ガ,從 ツ テ全 例 ニ於

テ最 モ大量 ニ昇 リタル ハ 「ピ ク リ ン」酸水飽 和液 ニ於 テハ總 量○ ・四八 竰,五%

「ピク リン」酸 「アル コホル」 ニ於 テハ○ ・四 九竰 ニ シテ,フ アー ノ用 ヰタ ル量 ヨ

リ前者 ニ於 テニ分 ノ一及 ピ四分 ノ一,後 者 ニ於 テ二分 ノ一 ニ該 當 スル少 量 ナル

ガ,「 ピク リン」酸 水飽 和液 ニ於 テハ時 トシラ極 メテ輕度 ナル 限 局 セル 經 過 セル

腹 膜 炎 ノ痕 跡 ヲ見 タル ニ反 シ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ニ於 テハ毎 常種

種 ナル程度 ニ於 テ腹 膜 癒 著 ヲ惹 起 シ,就 中爲 メニ急 性腹 膜 炎 ヲ發 シテ斃 死 セル

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モ ノ アル ニ比 ス レバ,其 ノ結 果 ニ於 テ甚 シキ差 違 ア リ,即 チ一%「 ビク リン」酸

水溶 液 ニ於 テハ何 等腹 膜 ノ癒 著 ヲ惹 起 セザル點 バ一致 ス レ其,五%「 ピク リ ン」

酸 「アル コホル」ニ於 テハ甚 ダ其 ノ趣 ヲ異 ニ シ,「 ピク リン」酸 ハ其 ノ溶劑 タル

「アル コホル」ノ共 同 作用 ニ ヨ リテ甚 ダ 著 シク其 ノ刺戟度 ヲ増強 シ,毎 常 中等 度

以下 ノ腹 膜 癒著 ヲ惹起 スル モ ノナル コ トヲ檢 知 シ得 タ リ.然 レ其 茲 ニ注意 ス可

キハ五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル 」ハ皮膚 消毒 藥 トシテ用 ヰ ラ レル 時,其 ノ腹

膜面 移 行 ヲ見 ル ノ時 ハ,其 ノ溶媒 タル「アル コホル 」ハ既 ニ蒸 發 シ盡 シテ亦 留 ル

ナ キガ故 ニ,從 ツテ「ピク リ ン」酸 自己 ノ腹 膜面 移 行 ヲ見 ル ガ,故 ニヂ ブ ソ ンノ

慢性 蟲様 突起 炎 ノ手 術結 果 ニ於 テ,五%「 ピク リ ン」酸 「アル コホル」ヲ皮膚 消毒

藥 ボシテ使 用以 來,著 シキ手術 後 ノ腹膜 癒著 ニ因 スル愁 訴 ヲ減 少 シ得 タ リ ト爲

ス ハ故 ナ キニ非 ザル コ トナ リ.

第 四 表

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第五 目  五%沃 度丁幾

沃度丁幾 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟作用ハ極 メテ峻烈 ニ シテ,試 驗獸 ノ體 重百瓦 ニ

對 シ五%沃 度 丁 幾 ○・一竰 ヲ注射 セルモノニ於 テハ,何 レモ皆殆 ンド注射部位

ニ相當 セル腸管壁 ノ壞死 ヲ生來 シ,其 ノ波及度腸管壁全層 ニ及 ベルア リ,或 ハ

全層 ニ及 バザル場合 ト雖 モ,甚 ダ深 ク當該腸管壁 ヲ侵襲 シテ激 烈ナル急性漿液

性纎維素性腹膜炎 ヲ惹 起 シ,何 レモ皆注射後二十四時間 ニシテ斃死 ス.試 ニ注

射量 ノ比率 ヲ體重一○○瓦 ニ對 シ○・〇五竰 ニ減 少スルモ其 ノ結 果 ハ同 様 ニ シ

テ,○ ・○二五竰 ニ減少 スル時,初 メテ注射後三 日乃至四 日ノ試驗獸 ル生存 ヲ見

タル モ,此 ノ注射量 ニ於 テモ注射液 ヲ受 ケタル腸管壁 ノ變化ハ同様 ニシテ,等

シク激烈 ナル急性漿 液性纎維 素性腹膜炎 ヲ惹起 シ,遂 ニ死 ノ轉機 ヲ 卜ルニ至 レ

リ.此 ハ畢 竟假令其 ノ生存期 間 ノ比較的 長時 ナルノ差違 アレ共,要 ハ注射量 ノ

小 ナルガ故 ニ,注 射部位 ノ減 少 ヲ來 シ,從 ツラ沃度丁幾 ニ侵 襲 セラルル腸管部

位 ノ少數 ナル ガ故 ニ外 ナラズ.之 ヲ五%、「ピク リン」酸 「アル コホル」ノ結果 ニ

比 ス レバ,其 ノ刺戟度 ニ於 テ甚 シキ差違 ア リ,即 チ後者 ニ於 テハ實驗例六例中

僅 ニ二例 ノ急性腹膜炎 ニヨル斃死 ヲ見 タルノ外 ハ,殘 餘 ノ四例ニ於 テハ何 レモ

所定 ノ試驗期間生存 シ,五%沃 度丁幾 ニ見 タルガ如 ク,九 實驗例中僅 ニ二例 ノ

注射後三 日乃至四 日ニシラ急性腹膜 炎 ヲ惹起 シテ斃 レタルモノ ヲ除 クノ外 ハ,

何 レモ皆二十四時間以内 ニシテ死 セルニ比 シ,霄 壤 ノ差 ア リ,即 チ兩者 ニ於 テ

何 レモ其 ノ溶媒 ニ 「アル コホル」 ヲ選 定 セル モ ノ,以 テ如 何 ニ沃 度丁幾 ノ腹 膜

ニ對 スル 刺戟 作用 ノ強 烈 ナル カ ヲ知 ル ニ足 ル可 ク,亦 如何 ニ沃度 ノ「ピク リ ン」

酸 ニ比 シ腹 膜 刺戟 作用 ノ強 大 ナル カ ヲ知 ルヲ得 可 シ.而 シテル イ ス,フ ラ ンク

Louis Frank(1913)ニ ヨ レバ沃 度 ノ致死 量 ハ動物 ノ體 重 ノ○ ・三五%ナ ルガ 故

ニ,本 實 驗 ニ於 テモ其 ノ最 大注 射 量即 チ試驗 獸 ノ體 重一 ○○瓦 ニ對 シ五%沃 度

丁 幾○ ・一竰 ナル比 率 ニ於 テハ,沃 度 ノ絶 對含 有量 五竓 ナル ガ故 ニ,尚 ホ致死

量 ニ及 バザ ル コ 卜甚 ダ遠 ク,從 ツテ實驗 ニ際 シ試 驗獸 ノ斃 レタル ハ全 ク沃 度 ノ

腹膜 刺戟 作用 ニ因 スル モ ノニ シテ,即 チ何 等 沃度 ノ吸 收 ニ因 スル中毒 症状 ノ發

現 ヲ認 メザ リキ.

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第 五 表

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次 ニ余 ハ沃度單獨 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟作用 ヲ知 ラン ト欲 シ,之 ヲ蒸餾水 ニ飽

和状態 ニ溶解 セシメテ實驗 ニ供 シ,他 方「ピク リン」酸 ヲ同濃度 ニ溶解 セシメテ

併用 シ之ガ腹膜刺戟作用 ノ比較 ニ便ぜ リ.以 下少 シク其 ノ得タル所 ニ就 テ述 ブ

可 シ.

第六 目  沃度水飽和液

五千倍 沃度水ナ リ.即 チ其 ノ得 タル結 果ハ全實驗例五例中何 レモ皆腹膜癒著

惹起 ヲ見ズ,本 濃度 ニ於 テハ何等腹膜 ニ對 スル刺戟作用 ヲ見ザルガ如 キモ,仔

細 ニ點檢スル時ハ斯 ル稀釋度 ニ於 テモ尚 ホ且 ツ腹膜 ニ對 スル刺戟作用 アリ,注

射液 ヲ受 ケタル腸管壁及 ビ其ノ他 ニ於 ラ經過 セル腹膜炎 ノ痕跡 ヲ留 メ,以 テ沃

度 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟作用 ノ如何 ニ強烈 ナル カヲ知 ラシムル モノアリ.試 ニ五

例中三例 ル經過 セル腹膜炎 ノ痕跡 ヲ留 ムルモノ ニ就 テ解屍所見 ヲ擧 グ レバ,一

例 ニ於 テ,上 行結腸 ニ於 テ,盲 腸 ニ近 ク其 ノ長軸 ニ沿 ヒテ約 四糎 ニ亙 リ,殆 ン

ド腸管壁 ノ半周 ニ及ベル廣 ナニ於 テ,血 管 ノ中等度 ニ擴張 セル ヲ認 メ,且 ツ該

部 ノ漿液膜稍 々紫藍色 ニシテ不透明且 ツ粗〓 ナ リ.而 シテソ レヨリ稍 々肛 門端

ニ於 テ斑點状 ニ血色素機色調 ヲ帯 ベル纎維素 ノ粘著 セル ヲ認 メタ リ.

更 ニ本試驗藥 ヲ注 射率 ニ從 ヒテ注 射 シ,二 十四時間後試驗的開腹術 ヲ行 ヒテ

其 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟作用 ノ如何 ヲ見タル一例 ヲ擧 グ レバ,

天竺鼠第五十二號,體 重四四〇瓦,腹 腔 内注射量○・四四竰, 〓

盲腸 ノ諸所 ニ於 テ約三分 ノ一乃至二分 ノ一平方竰 ノ中等度 ニ充血セル腸管壁

ヲ認 メ,腸 管係蹄 ヲ手指 ヲ以 テ檢 閲スル ニ粘稠液 ヲ以 テ被覆 セラルル ヲ感 ジ,

纎維素 ノ析出 セル ヲ想ハ シム.附 近 ノ腹膜血管輕度 ニ充血 シ,腹 膜炎 ヲ惹 起セ

ル ヲ認 ム.由 是觀此,如 何 ニ沃度 ノ腹膜 ニ對 スル刺戟作用 ノ強大 ナルカ ヲ知 ル

ヲ得可 ク,亦 以 テ開腹術 ニ際 シ沃度 ノ腹膜面移行豫 防ノ重大ナル意義 ヲ有スル

カ ヲ知 ルヲ得可 シ.之 ヲ一・二%「 ピク リン」酸水溶液 ノ結果 ニ比 スレバ,兩 者殆

ンド相同 ジキモノア リ,否 注射後二十四時間經過 セルモノニ於 テ認 メラ レタル

處 ヲ併 セ參照 スレバ,寧 ロ其 ノ腹膜刺戟度 ニ於 テヨリ強大 ナル傾 アル ヲ知ル.

以 テ如何 ニ沃度 ノ腹膜刺戟作用 ノ「ピク リン」酸 ニ比 シ著 シク強烈 ナル カヲ知ル

ヲ得可 シ.

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第 六 表

(以下次號)

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