アンモニアを燃料とし,二酸化 炭素を排出しない水素生成 ... …ru/al2o3 12...
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アンモニアを燃料とし,二酸化炭素を排出しない水素生成装置
工学院大学
グローバルエンジニアリング学部
機械創造工学科
学部長・教授 雑賀 高
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研究背景
燃料電池が様々な場面で利用されることが予想される
燃料である水素は可搬性や貯蔵性に問題がある
燃料電池用の液体燃料(水素キャリア)
としてアンモニアを提案
メタノール
プロパンDME
改質時に温室効果ガスを排出
そこで・・・水素含有燃料から水素を取り出す
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燃料電池用の液体燃料
水素は可搬性が低いため,液体燃料であるメタノール,LPG,ガソリン等が有力である。
しかし,これらの燃料は炭化水素系であるので,改質時にCO2,CH4等の温室効果ガスを排出する。
→地球温暖化の根本的解決にならない!
新しい液体燃料として
非炭化水素系のNH3(アンモニア)を提案する。
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アンモニアを使用するメリット アンモニアの分解反応
水素含有率が高い→17.8wt% メタノールは12.6wt%
輸送・貯蔵が容易→20℃、0.846MPaで液化
改質が容易→加熱のみで水素が得られる
改質時にCO2の排出なし→非炭化水素系であるため
取り扱いの経験が十分にある
吸熱反応
適切な触媒のもと、加熱のみで分解可能
分解後は体積2倍となる
PEMFCの燃料中にNH3濃度が13 ppm以上混入した場合,固体高分子膜が被毒して1時間後に出力電圧の低下が起こる
分解しきれなかったアンモニアは取り除く必要がある
2NH3 → 3H2 + N2⊿HO = 46 kJ/mol
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アンモニアの性質 アンモニアの用途
分子式 : NH3気体密度 : 0.688 kg/m3
液体密度 : 0.680 kg/L液化圧力 : 846 kPaエネルギー密度: 18.49 kJ/kg溶解度: 90 g
(100 mL of water at 0̊C )
刺激臭を持った無色の気体
肥料用→無水ガスや水溶液として土壌へ
–硝酸塩、硫酸塩、ニリン酸塩など
工業用→プラスチック、火薬類、硝酸、尿素
– ヒドラジン、殺虫剤、洗剤など
約8割を占める
全世界で約1億5千万t の生産量
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他の燃料との比較
エネルギー密度 水素含有率 価格
kWh/kg kWh/L wt% $/kWh
圧縮水素(156atm)
83.4 0.28 100 25.40
プロパン(C3H8)
1.96 1.15 18.2 0.34
メタノール(CH3OH)
1.45 1.15 12.6 3.80
アンモニア(NH3)
1.87 1.45 17.8 1.17
出展:DOE Hydrogen, Fuel Cells & Infrastructure Technologies 2004
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物理・化学的性質
分子名 : NH3加熱のみで水素を得られる
( 2NH3→3H2+N2 )
無色,刺激臭のある気体
(毒性有り)
CO2,NOXの排出がない
液化しやすいため、貯蔵・輸送が容易
(液化:常温・8.5気圧⇒LPGと同等・技術流用可)
水に非常によく溶ける
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NH3の及ぼす影響
アンモニアは有毒性のガスであり、高濃度では人体に悪影響を与える。アンモニアの人体に対しての許容値を25[ppm]とする。
PEMFCの燃料中にアンモニア濃度が13[ppm]以上混入した場合、1時間後に出力電圧の低下が起こる。
300[ppm]の残留アンモニアを除去
(※米国政府衛生学者会議(ACGIH))
(※Journal of the Electrochemical Society )
完全分解 or 除去しなければならない!!7
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従来のアンモニアの製造方法 廃プラスチックからのアンモニア製造
石炭LPGLNGナフサ天然ガスオフガス
原料とし水蒸気改質で
H2を精製
Haber-Bosch法等で
空気中のN2と合成
(高温・高圧)
アンモニア1トンの製造に多くのCO2が排出
化石燃料を用いない新たなアンモニア製造方法が必要
現状は・・・
廃プラスチック
水素を主体とする合成ガス
アンモニア合成
破砕成形しガス化
水素ガスを取り出す
アンモニア1kg製造するのに排出されるCO2は2. 4kg廃プラスチック使用比率34%※昭和電工㈱ホームページより
ECOANNとして既に商品化
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アンモニア分解の平衡計算結果
0 200 400 600 800 10000
20
40
60
80
100
H2
N2
NH
3 Con
cent
ratio
n [%
]
Catalyst temperature (℃)
NH3
500℃以上で分解される
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アンモニア分解水素生成システム
特徴NH3をシステム内で循環できる窒素と水のみの排出で環境負荷が小さい
水素と比較し燃料タンクの小型化が可能10
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実験結果
Ni/Al2O3触媒での分解実験結果
Ru/Al2O3触媒での分解実験結果
0
10
20
30
40
50
60
70
500 600 700 800
NH3Co
ncen
tration(%)
Temperature (℃)
2L/minSV=400
4L/minSV=800
6L/minSV=1200
8L/minSV=1600
0
10
20
30
40
50
60
70
500 600 700 800
NH3Co
ncen
tration(%)
Temperature (℃)
2L/minSV=400
4L/minSV=800
6L/minSV=1200
8L/minSV=1600
実験条件
触媒容量:300[ml]分解温度:500~800[̊C]空間速度:400~1600[h-1]
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Ru触媒とNi触媒の比較
SV=1600で比較500℃から600℃ではRu触媒の分解性能が明らかによい
Ni触媒は空間速度が小さいと600℃でRu触媒と同等の分解性能がある
空間速度を大きくすると分解効率は落ちる
Ru触媒は空間速度にあまり影響されずに600℃以上で高い分解効率を示す
本システムはRu/Al2O3を使用する010
20
30
40
50
60
70
500 600 700 800
NH3Co
ncen
tration(%)
Temperature (℃)
Ni/Al2O3
Ru/Al2O3
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触媒形状の違いによる影響
触媒粒子間が不均一
触媒層壁間が均一
滞留時間分布
偏流
吹き抜け
高い圧力損失
整流
低い圧力損失
伝導伝熱
ペレット触媒
ハニカム触媒13
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触媒形状による特性の違い
形状 メタルハニカム セラミックハニカム ペレット
熱伝導率 大 小 小
熱容量 小 中 大
空間速度 30,000~60,000h-1 20,000~40,000h-1 10,000~30,000h-1
圧力損失 53.9Pa 69.6Pa 406.7Pa
機械的強度 強 弱 中
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電気加熱式触媒とは
ヒーターと触媒が一体構造
触媒部はメタルハニカム形状–機械的強度が高い
–昇温速度が速い
–装置の小型化が可能
–圧力損失が小さい
heater catalyst
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実験結果
ハニカム触媒での分解実験結果 ペレット触媒とハニカム触媒での比較(同じ空間速度で実験)
010203040506070
500 600 700 800
NH3
Conc
entra
tion(
%)
Temperature(℃)
21%
3% 0%以下0
20
40
60
80
100
500 600 700 800
NH3C
once
ntra
tion(
%)
Temperature(℃)
Pellet Honeycomb
電気加熱式触媒はアンモニア分解に効果的であることが分かった→分解温度を従来の800℃から700℃に下げることができた
本システムは電気加熱式ハニカム触媒を使用する16
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水素生成装置の概要
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水素生成装置の外観
水素生成装置の特徴
アンモニアを燃料として水素を生成し燃料電池システムへ水素の供給を行う
装置に10Lのアンモニアボンベ、1.2kWの燃料電池を接続した場合、10時間の連続運転が可能
19インチラックに収まる大きさ
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水素生成装置の使用例(1) 家庭用の発電システム
External Water SupplyH2O
External Power Supply
Electric Power
Ammonia cylinder
10LElectrically
Heated Catalyst700 °C
NH3 Separator
2L
Fuel Cell
1.2kW
Thermal Controller
H2, N2,NH3
H2OH2, N2
Inverter/
Converter
Battery
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水素生成装置の使用例(2) 車載用オンボード改質装置
NH3cylinder
CrackingReactorFuel Cell
Secondary Cell
Motor
Converter
Controller
Converter
Throttle
ベース車両 スズキ マイティボーイ
全長×全幅×全高 3195×1395×1365mm
重量 934kg(←734kg)
燃料 アンモニア
燃料タンク容量 10L
アンモニア流量 72.1L/min
燃料電池出力(定格) 6.9kW
総電力 16.5kWh(←9.6kWh)
モーター出力(定格) 14.4kW
航続距離(40km/h一定) 93.5km(←46.75km)
システム稼働時間 100min
最高速度 100km/h
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まとめ
本システムでのアンモニア分解の最適条件は以下の通りである
担持触媒:Ru/Al2O3触媒形状:ハニカム
分解温度:700℃
反応容器形状、熱交換器の見直しを行うことでさらにシステムの効率を上げることが可能である
アンモニア燃料水素生成装置試作機では回収した残留アンモニアは排出しているが、アンモニア蒸留器を組み込めば装置内でアンモニアを循環させることができる
尿素からのアンモニア製造が可能となればアンモニアの製造エネルギーが下がる
アンモニアを燃料とする水素生成装置は将来の燃料電池用水素供給システムとしての可能性がある
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本技術に関する知的財産権
発明の名称:水素生成装置
出願番号 :特願2009-043915出願人 :タマティーエルオー株式会社
発明者 :雑賀 高、他5名
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お問い合わせ先
工学院大学グローバルエンジニアリング学部
雑賀 高
TEL :03-3340-2576
FAX :03-3340-0108
E-mail: [email protected]
タマティーエルオー株式会社研究成果移転事業部
田島 伸明
TEL:042-570-7240
FAX:042-570-7241
E-mail:[email protected]