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19 2008.5 金属資源レポート ブラジル金属鉱物資源の魅力 ―地質構造発達史とメタロジェニーの視点から― 中山 健 195-1-2. São Francisco クラトン São Francisco クラトンでは、花崗岩グリーンスト ンベルトに関係した“鉄の四角地帯”(Quadrilátero Ferrífero) 中 に は 金 お よ び マ ン ガ ン 鉱 床 を、Rio Itapicura グ リ ー ン ス ト ン ベ ル ト 中 に は Itapicuru を はじめとする造山型(グリーンストン型)金鉱床を、 塩基性・超塩基性岩に関係したものとしては Jacaré お よ び Campo Alegre de Lourdes シ ル 中 の 鉄・ チ タン・バナジウム・白金族鉱床、Rio Jacrici/Campo Formosa のクロマイト鉱床および Rio Curaçá/Caraiba の銅鉱床を産する。噴気堆積性鉱床としては、“鉄の 四角地帯”Minas 超層群の鉄鉱床を、リフト環境で形 成された Boquira 鉛・亜鉛鉱床を、Urandi-Licinio de Alameida 鉄・マンガン鉱床を産する。また熱水鉱床 として、Jacobina および Moeda の金・ウラン・黄鉄 鉱鉱床(No.22)を産する。 (1) São Francisco クラトン北部 ① Rio Itapicuru 金鉱床地帯(No.19) Rio Itapicuru 金 鉱 床 地 帯 は、Bahia 州 Salvador 市 の北北西に分布する Rio Itapicuru グリーンストンベ ルト中に発達する。Rio Itapicuru グリーンストンベ ルトは、原生代前期(2.20 ~ 2.03Ga)に島弧および背 弧海盆環境で形成されたと考えられており(Silva et al., 2001; Mello et al., 2006)、下位よりソレアイト質安 山岩・デイサイト・流紋岩、グレイワッケ・泥質岩 と累重し、これらを貫いてドーム状の花崗岩・片麻 岩が貫入する(図29)。金鉱化作用は島弧の衝突時 期(2.05Ga)に生じたせん断帯に胚胎しており、造山 型(グリーンストン型)金鉱床に分類される。金を伴 うせん断帯は強い炭酸塩化を被っており、金は地殻ス ケールの低塩濃度・炭酸質流体から沈殿したと考えら れている。金を含む熱水の起源については変成熱水起 源およびマントルウェッジ起源の2つが考えられてい る(Silva et al., 2001)。Fazenda Brasileiro 鉱床(図 30)は、年産 5t の金を生産している。 前号(金属資源レポート 2008.3(Vol.37.6))からの続き(図 1 ~図 28 は前号掲載図) 図 29 Rio Itapicuru グリーンストンベルトの地質 (Silva et al., 2001) 前サンティアゴ事務所 所長 [email protected]

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    ブラジル金属鉱物資源の魅力 ―

    地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ―

    ブラジル金属鉱物資源の魅力―地質構造発達史とメタロジェニーの視点から―

     中山 健

    (19)

    5-1-2. São Francisco クラトンSão Francisco クラトンでは、花崗岩-グリーンスト

    ンベルトに関係した“鉄の四角地帯”(Quadrilátero Ferrífero) 中 に は 金 お よ び マ ン ガ ン 鉱 床 を、Rio Itapicura グリーンストンベルト中には Itapicuru をはじめとする造山型(グリーンストン型)金鉱床を、塩基性・超塩基性岩に関係したものとしては Jacaréお よ び Campo Alegre de Lourdes シ ル 中 の 鉄・ チタン・バナジウム・白金族鉱床、Rio Jacrici/Campo Formosa のクロマイト鉱床および Rio Curaçá/Caraibaの銅鉱床を産する。噴気堆積性鉱床としては、“鉄の四角地帯”Minas 超層群の鉄鉱床を、リフト環境で形成された Boquira 鉛・亜鉛鉱床を、Urandi-Licinio de Alameida 鉄・マンガン鉱床を産する。また熱水鉱床として、Jacobina および Moeda の金・ウラン・黄鉄鉱鉱床(No.22)を産する。

    (1) São Francisco クラトン北部① Rio Itapicuru 金鉱床地帯(No.19)

    Rio Itapicuru 金鉱床地帯は、Bahia 州 Salvador 市の北北西に分布する Rio Itapicuru グリーンストンベルト中に発達する。Rio Itapicuru グリーンストンベ ルトは、原生代前期(2.20 ~ 2.03Ga)に島弧および背弧海盆環境で形成されたと考えられており(Silva et al., 2001; Mello et al., 2006)、下位よりソレアイト質安山岩・デイサイト・流紋岩、グレイワッケ・泥質岩と累重し、これらを貫いてドーム状の花崗岩・片麻岩が貫入する(図 29)。金鉱化作用は島弧の衝突時期(2.05Ga)に生じたせん断帯に胚胎しており、造山型(グリーンストン型)金鉱床に分類される。金を伴うせん断帯は強い炭酸塩化を被っており、金は地殻スケールの低塩濃度・炭酸質流体から沈殿したと考えられている。金を含む熱水の起源については変成熱水起源およびマントルウェッジ起源の2つが考えられている(Silva et al., 2001)。Fazenda Brasileiro 鉱 床(図30)は、年産 5t の金を生産している。

    前号(金属資源レポート 2008.3(Vol.37.6))からの続き(図 1 ~図 28 は前号掲載図)

    図 29 Rio Itapicuru グリーンストンベルトの地質(Silva et al., 2001)

    前サンティアゴ事務所 所長[email protected]

  • 2008.5 金属資源レポート20

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    地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ―

    ② Rio Curaçá 銅鉱床地帯(No.20)Rio Curaçá 銅鉱床地帯は、Bahia 州 Salvador 市の

    北西約 150km に発達する。原生代前期(2.0Ga)にSerrinha ブロックと Gavião ブロックの衝突によって形成され I-S-C(Itabuna -Salvador-Curaça)ベルト(図 8)に貫入した塩基性-超塩基性層状岩体中に正マグマ型銅鉱床を産する(図 31)。代表的鉱床である Caraíba鉱床の地質は、角閃岩を挟む片麻岩、パラ片麻岩、BIF(縞状鉄鉱層)、カルクシリケイト岩、かんらん石大理石からなる基底部、斑れい岩、ノーライト質斑れい岩、優白質斑れい岩、ペリドタイト、かんらん石輝岩、銅鉱化作用を伴う斜方輝石、優黒色ノーライトおよびノーライトからなる中位、ミグマタイト質片麻岩からなる上位から構成される。複数回の変形作用を受け、軸面が垂直でタイトな褶曲構造を示し、鉱体はマッシュルーム状の複雑な形態を示す(図 32)。鉱床は北部と南部からなり、南部の鉱床は Mineração Caraíba S.A. が 1978 年から採掘している。埋蔵量は60.5 百万 t、Cu 品位は 1.6%である。鉱石鉱物は、黄銅鉱、斑銅鉱からなり塊状-鉱染状で周囲の岩石の構造と調和的である。鉱化作用を伴う層状岩体は、D1変形前に上昇したマントル起源の貫入岩である。貫入 時 期 は 2.2 ~ 1.9Ga で あ る(Oliveira et al., 2004)。1998 年までに 6 億 t、品位 1.6%の銅を生産した。現在も年産 20,000t 規模の生産を行っているが残存鉱量が少なく近々閉山される見込みである。北部は Vale(旧CVRD)が所有しているが、開発されていない。また、

    Caraíba 鉱 床 の 北 に は Serrote da Laje 銅・ニッケル・コバルト鉱床が知られている。

    ③ Medrado およびIpueira クロマイト鉱床Medrado お よ び Ipueira 鉱 床 は、

    Caraíba 銅鉱床の南南東約 100km に位置しており、Serrinhaブロックに属する(図8 および図 33)。Jacurici Valley のミグマタイト中に南北に伸長する塩基性-超塩基性層状貫入岩体が多数分布しており、その中に 20 か所以上のクロマイト鉱床および鉱徴地が知られている。そのうちの1つである Medrado・Ipueira貫 入 岩 体 に は、Medrado(3.1 百 万 t)、Ipueira(11.5 百万 t)、Sul del Ipueira(12.9百万 t)といった鉱床が知られている。貫入岩体は延長 7km に亘って広がるが、強い変形作用を受けており、軸面が垂直なタイトな褶曲構造をなす。貫入岩の厚さは約 300m である。原岩はダナイト、ハルツバージャイト、輝岩および斑れい岩であるが角閃岩~グラニュライ

    (20)

    図 30 Fazenda Brasileiro 鉱床平面図( Silva et al., 2001)

    図 31 Caraiba 銅鉱床周辺の地質(Oliveira et al., 2004)

  • 2008.5 金属資源レポート 21

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    ト相の変成作用により再結晶化している。Medrado鉱床は平均厚さ 5 ~ 8m、部分的には 15m に及ぶ沈積性クロマイトを産する(図 34 および図 35)。品位はCr2O3:38%、Cr/Fe:1.8 である。また白金族鉱物については、品位が 350ppb 未満と低く、かつ未分化パターンを示すこと、また硫化物によるスカベンジングが殆どないことから白金族鉱物のポテンシャルは低いと考えられている(Lord et al., 2004)

    ④ Campo Formoso クロマイト鉱床(No.21)Campo Formoso 鉱床は、Medrado・Ipueira 鉱床の

    南西約 150m に位置しており、Govian~o ブロックに属する(図 8)。鉱床の母岩は塩基性・超塩基性層状岩体で、延長 40km に亘って分布し、平均幅は 1km である(図 36)。鉱床周辺の地質は、大古代の Caraiba層群の片麻岩・ミグマタイト、それを被う 2.0Ga の火山岩・堆積岩層および 1.9Ga の Campo Formoso 花崗岩からなることから塩基性・超塩基性層状岩体の貫入時期は 2.0Ga 以前と考えられている(Girardi et al., 2006)。層状岩体は蛇紋岩化したペリドタイトおよび斑れい岩・ノーライトからなる。クロマイト鉱床は、南西端の岩体にのみ存在しており、Cascabulhos、 Camarinha、Campinhos、Pedrinhas、Coitezeiro およびLim-oeiro といった鉱床がかつて稼行された。クロマイト層は厚さ 5 ~ 15m で沈積岩組織を呈する。Cr2O3/Al2O3=3.12 でクロム組成に富む。またクロマイト中には白金族鉱物である laurite(RuS2)を含有する(Girardi et al., 2006)。

    (21)

    図 32 Caraiba 銅鉱床詳細地質(Oliveira and Tarney, 1995)

    図 33 Medrado-Ipueira 層状貫入岩体周辺の地質(Oliveira et al., 2004)

    図 34 Medrado 鉱床断面(Oliveira et al., 2004)

  • 2008.5 金属資源レポート22

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    ⑤ Jacobina 金鉱床(No.22)Jacobina 鉱床は、Campo Fermos 鉱床の南約 150km

    に位置しており、Gaviáo ブロックに属する。 地域一帯は、TTG(トーナル岩・トロニエム岩・花崗閃緑岩)質片麻岩およびこれを被う大陸内リフト堆積物である Jacobina 層の珪質砕屑岩層、塩基性・超塩基性層状岩体からなる。金の採掘は、18 世紀からはじまり、1998 年まで断続的に行われた。当初、採掘対象は礫岩を母岩とする鉱床であったことから、Jacobina 層群の厚い珪質砕屑岩層下部の Serra do Córrego 層の石英礫岩を母岩とする化石漂砂鉱床と考えられ、南アの

    Witwartersrand 金鉱床モデルが適用された。しかし、最近の研究によると、当地域の金鉱床は、礫岩層のみならず塩基性岩、超塩基性岩および珪岩を母岩としており(図 37)、これらは何れも構造規制を受けた熱水性の鉱化作用を受けていることが判明してきた。鉱化作用の時期は 1.9Ga の後衝突期に形成された過アルミナ花崗岩の活動に伴って形成された後成鉱床であると考えられる(Teixeira et al., 2001)。礫岩を母岩とする

    (22)

    図 36 Campo Fermoso の地質(Girardi et al., 2006)

    図 35 Ipueira 鉱床断面(Lord et al., 2004)

    図 37 Jacobina 金鉱床モデル(上)および礫岩中の金含有量(下)(Teixeira et al., 2001)

    1:礫岩および珪岩を母岩とするもの2:斑れい岩および閃緑岩を母岩とするもの3:ペリドタイトおよび輝岩を母岩とするもの4:珪岩中の含金石英脈

  • 2008.5 金属資源レポート 23

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    鉱床は、Canavieiras、Itapicuru、João Belo 鉱床などが知られている。含金礫岩層は、円磨度の良い多結晶質石英中礫、含クロム雲母緑色珪岩中礫と石英、セリサイト、クロム雲母等よりなる基質から構成される。3g/t 以上の金を含む層準(リーフ)は 2 層に限定されるが、連続するせん断と硫化物細脈が発達し、このリーフはクロム雲母に富むゾーンに取囲まれており熱水変質作用によるものであること、金は繊維状もしくは球状をなし黄鉄鉱および石英に付着していること、硫化物の硫黄同位体が 0‰に近くマグマ起源を示唆していることから、熱水性鉱床と考えられている。金品位は 2 ~ 100g/t まで変化する。

    ⑥ Boquira 鉛・亜鉛鉱床(No.25)Boquira 鉱床は、Bahia 州 Salvador 市の西約 500km、

    NW-SE 方向に解析された Paramirim 渓谷沿いに分布する。本鉱床は閃亜鉛鉱、方鉛鉱、磁鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱および少量の黄銅鉱よりなる層状鉱床で、Boquira 層(2.8Ga)の珪岩、角閃岩、大理石、BIF(縞状鉄鉱層)、緑泥石・柘榴石・黒雲母片岩、ミグマタイトを母岩とする。Boquira 層の原岩は海洋もしくは湖の堆積物とされている。また本層は軸面の立った等斜褶曲構造を繰返しており(図 38)、鉱床も同様に褶

    曲構造を示す。鉱床は、走向方向に~ 1,400m、傾斜方向に~ 450m、幅数 m の層状をなすが(Fleischer and Espourteille, 1999)、初生的構造を残しており、周囲の BIF(縞状鉄鉱層)と同起源の SEDEX 型鉱床 と み な さ れ て い る。Sabarado、Pelado、Cruzeiro、 Maranhão といった鉱床が知られている。硫黄同位体比はδ34S=+8.3 ~ +12.8%で堆積岩起源の硫黄であることを示している。鉱床生成年代は 2.7 ~ 2.5Ga

    (Pb/Pb 同位体年代)とされている。本鉱床は、1952年に発見され、1959 ~ 1992 年までに約 650,000t の鉛・亜鉛を生産した。地表下 20 mまで酸化帯が発達し、cerrussite(Ag5Pb14Sb21S48)、smithonite(ZnCO3)、

    anglesite(PbSO4)といった硫化・硫酸塩・酸化鉛亜鉛を産する。鉱量 :5.6 百万 t、Pb 品位:8.9%、Zn 品位:1.4%と見積もられている。

    ⑦ Jacaré シル中の鉄・チタン・バナジウム・白金鉱床(No.26)Jacaré 鉱床は、Bahia 州 Salvador 市の南西約 150km、

    Jequiré ブロックの西端部に位置する。本鉱床は、Jacobina リニアメントに沿う Contendas-Mirante グリーンストンベルトに貫入した 2.9 ~ 2.8Ga の Jacaré班れい岩・輝岩に伴う鉄・チタン・バナジウム鉱床で白金族鉱物を伴う。この塩基性貫入岩は、延長70km、幅 1.2km に亘って直線状に分布しており、生成年代、産状、岩石・鉱物組合せ等はジンバブエのGreat Dyke と類似すると言われている。

    変形・変成作用により初生鉱物は殆ど残存していないが、かんらん石の沈積構造、輝岩と斑れい岩からなる層状構造とった初生の構造が認められる。岩体は下部と上部に区分される。下部(幅 400m)は粗粒塊状で磁鉄鉱を欠くはんれい岩、ノーライト、斜長岩からなる。上部(幅 600m)はリズミカルな層状構造で特徴付けられ、下位の磁鉄鉱と輝石の互層、中位の輝岩を挟む優黒色斑れい岩、上位の輝岩と磁鉄鉱を挟在する層状斑れい岩からなる。主なバナジウムに富む磁鉄鉱鉱床は、下位の磁鉄鉱と輝石の互層中に産しており、Gulçari-A、Gulçari-B お よ び Novo Amparo 鉱 床などからなる。このうち Gulçari-A 鉱床(図 39)は最も規模が大きく、平均厚さ 23m で 400m × 150m の同心円構造を持つ円筒状をなし、外側の角閃石から中心に

    (23)

    図 38 Boquira 鉛・亜鉛鉱床断面(Misi et al., 1999)

    図 39 Jacaré バナジウム鉱床(Sá et al., 2005)

  • 2008.5 金属資源レポート24

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    向かって輝岩、磁鉄鉱+輝岩、磁鉄鉱へと変化する。鉱量:80,000t、V2O5 品位 2.2%、TiO2 品位 1.6%と見積もられている。鉱化作用は主に Ti 磁鉄鉱、イルメナイト、ウルボスピネルからなる。イルメナイトは不完全な結晶若しくは磁鉄鉱のリボン状離溶として産する。脈石は単斜輝石である。また 1%以上の鉱染状硫化物を伴う。資源量は 6.1 百万 t、V2O5 品位は 1.27%。同様な鉱床として Bahia 州中央部の北には Campo Alegre de Lourdes シル中に鉄・チタン・バナジウム・白金族鉱床を産する。

    Maracas 地域で探査を行っているカナダのジュニアカンパニーである Largo Resources 社は、鉱量(確定+推定)17.3 百万 t、V2O5 品位:1.44%を発見したと発表している(2008 年 1 月 Largo Resources HP)。

    磁鉄鉱に伴って白金族鉱物および硫化鉱物を産し、幾つかの磁鉄鉱鉱体の分析によると Ni:0.004%、Cu:0.1%、S:0.18%、Ir:1ppb、Rh:3ppb、Pt:160ppb、Pd:120 ppb、Au:37ppb と周辺のケイ酸塩鉱物からなる母岩よりも明らかに白金族元素に富んでいる。磁鉄鉱鉱体中のニッケルおよび白金族元素は磁鉄鉱とともに晶出した少量の硫化物に付随し、その後白金族鉱物として離溶したものと考えられている。Bushveld、Stillwater、Great Dyke といった層状岩体では、白金族元素に富む層(あるいはリーフ)は岩体の下部 1/3 に存在し、酸化物はクロマイトであり、白金族元素を含まない磁鉄鉱に富む層は分化の進んだ岩体の上部に存在する(上部層の形成時には白金族元素に枯渇していた)。Jacaré 岩体に見られるような産状は白金族元素の新しいターゲットになる可能性を秘めている(Sá et al., 2005)。

    ⑧ Lago Real ウラン鉱床(No.30)Lago Real 鉱床は、Bahia 州 Salvador 市の南西約 300km

    の Paramirim 渓谷の南端に位置する。本地域にはEspinhaço オーラコーゲンの基盤をなす太古代~原生代前期のミグマタイト、花崗岩、変堆積岩および火山岩とこれらに貫入する A タイプ花崗岩である Lagoa Real 花崗岩が分布しており、ウラン鉱床はこれらを切るせん断帯中の曹長石岩に伴われる。ウラン鉱化作用を伴う曹長石岩体は、せん断作用とナトリウム交代作用を伴う 2 つの主要なリニアメントに沿って分布し、その規模は幅数 cm ~ 100m、延長は数 m ~数km に亘る。曹長石岩体は線構造に沿ってプランジし深さ 850m にも達する。これらのウランは元々 Lagoa Real 花崗岩および正期片麻岩に含まれていた放射性元素が、後次の交代溶液によって移動・濃集してウラン鉱床を形成したと考えられている(Misi et al., 2005)。ウラン鉱石は微細な閃ウラン鉱で、鉱化作用の年代は 1.5Ga で Espinhaço イベントに関係したと考えられている。Lago Real 地域のウラン資源量は U3O8で 93,190t と推定されており、ブラジルで重要なウラン資源の1つとされている。

    ⑨ Riacho de Santana 金・ベースメタル鉱徴(No.28)本鉱徴地は、グリーンストンベルトと考えられる

    Riacho de Santana の火山岩・堆積岩層中のゴッサンとして捉えられており、金およびベースメタルの異常

    (Cu:1.3%,Au:2 ~ 5g/t)が捕捉されている。

    ⑩ Almas-Dianópolis 金鉱床(No.31)原生代前期の Almas-Dianópolis グリーンストンベ

    ルト(2.2Ga)の BIF(縞状鉄鉱層)を挟在する火山岩中に多数の金鉱徴が知られている。最大の Córrego Paiol 鉱床の金鉱化作用は強い熱水変質作用を受けた塩基性岩中のせん断帯に産する。

    (2) São Francisco クラトン南部⑴“鉄の四角帯”の金、鉄、マンガン鉱床(No.40)“鉄の四角帯”は Sáo Francisco クラトンの南部に

    位置し、太古代のグリーンストンベルトを構成するRio das Velhas 超層群(2.77Ga)中の金およびマンガン鉱床、銅・ニッケル・コバルト・白金族鉱床および原生代前期の Minas 超層群の鉄・金鉱床が知られている(図 9)。

    Rio das Velhas グリーンストンベルトと TTG(トーナル岩・トロニエム岩・花崗閃緑岩)を形成した一連の変動は Rio das Velhas Event(2.78 ~ 2.70Ga)として知られている。Rio das Velhas 超層群は Nova Lima 層 群 と Maquiné 層 群 に 分 け ら れ る。 下 位 の Nova Lima 層群はコマチアイトと Algoma 型の BIF(縞状鉄鉱層)を伴うトーナル岩、塩基性~超塩基性火山岩、千枚岩、グレイワッケ、珪長質火山岩・火山砕屑岩からなる。上位の Maquiné 層群は礫岩、珪岩、千枚岩、グレイワッケよりなる。

    太古代プラットフォームのリフティングに伴って形成された原生代前期の Minas 超層群には、大規模な Itabirite 鉄鉱床を産する。また Itabirite 中にはCaué や Conceiçon といった高品位の金鉱床が知られている。これらは原生代後期の Brasiliano 造山期に形成されたと考えられている。Minas 超層群基底部のMoeda 層には Witwatersrand 型の金・ウラン・黄鉄鉱を伴う礫岩層を産する。① Conselherio Lafaiete マンガン鉱床“鉄の四角帯”の南端の Conselheiro Lafaiete-Ritápolis-

    Nazareno 地域には Rio das Velhas 超層群 Nova Lima層群相当の Barbacena 層群中の火山-堆積岩シーケンスに多数のマンガン鉱床を産する。マンガン鉱床は、gondite(変成珪酸マンガン)と queluzite(変成炭酸マンガン)を特徴とする 2 つのタイプに分かれる。初生的には火山・堆積性と考えられている。Morro da Mina 鉱床は 1997 年時点で鉱量:3 百万 t、MnO 品位 :30~ 37%とされている。

    ② Nova Lima 層群中の金鉱床Nova Lima 層群中には、Morro Velho (470t

  • 2008.5 金属資源レポート 25

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    Raposos(40t

  • 2008.5 金属資源レポート26

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    kyite([Pd, Pt](Te, Bi)2)、testibiopalladite([PdTe(Sb, Te)])および含 Ru、Te、As 合金相である。特に白金族鉱物は、硫化物相の内部、周辺、割目充填として産しており、初生鉱床からの再移動によって形成されたと考えられている。また Cr に乏しく、Kambalda タイプの特徴を示している。資源量は 6.6百万 t、品位は Ni:0.4%、Cu:0.05%、PGM+Au:1.2ppmと推定されている(Almeida et al., 2007)。

    5-2. São Francisco クラトン非活動的大陸縁辺部原生代中期から後期にかけて São Francisco クラト

    ン周辺は非活動的大陸縁となり、プラットフォーム堆

    積物が広範に堆積した。これらは、原生代前期~後期の砂岩、シルト岩、泥質岩からなる Espinhaço 超層群、原生代後期の炭酸塩岩に特徴付けられる Bambuí 層群

    (Vazante および Una 層群)に分けられる。Bambuí層群中には図 42 に示すように、小規模ではあるが、多数の SEDEX ~ Irish ~ Mississippi Valley 型の鉛・亜鉛鉱床を産する。そのうち Morro Agudo およびVazate 鉱床が現在操業されている。また炭酸塩岩にともなって燐灰石鉱床を産する。① Morro Agudo 鉛・亜鉛鉱床(No.36)

    Morro Agudo 鉱床は、Minas Gerais 州の州都 Belo Horizonte 市の北西約 400km São Francisco 盆地の西端に位置している。鉱床は Vazate 層群のドロマイト中に産する。ドロマイトは Morro do Calcário ストロマトライト質バイオハームの西斜面を占めており、鉱床は層状の形態をなし I、J、K、L、M、N の 6 層準からなる。鉱石鉱物は閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱、重晶石である。鉱床層準は、堆積期の正断層に規制されており、この断層が鉱液の通路になったものと考えられている(図 43)。これらの特徴から Irish あるいは SEDEX 型の鉛・亜鉛鉱床と考えられている。Votlantim Metais が操業しており、2006 年の生産量は亜鉛:37,210t、鉛:16,063t である(DNPM, 2007)。2000 年時点で埋蔵量は 17.5 百万 t、品位は Zn:5.1%、Pb:1.53%と見積もられている。

    ② Vazante 亜鉛鉱床(No.36)Vazante 鉱床は、Morro Agudo 鉱床の南約 80km に

    位置するブラジル最大の亜鉛鉱床である。本鉱床はVazante 層群中のドロマイトを母岩とするが、Morro Agudo 鉱床よりは下位の層準になる。層準規制型と異なり、層理に平行な N50°E、50°~ 70°NW のせん断帯に産する(図 44)。鉱石は珪亜鉛鉱(willemite:Zn2SiO4)を主体とし、赤鉄鉱、紅亜鉛鉱(zincite:Zn

    (Mn)O)、フランクリン鉄鉱(franklinite:ZnFe2O4)、菱亜鉛鉱(smithonite:ZnCO3)、閃亜鉛鉱、方鉛鉱を伴う。成因については、金属に富む還元的流体と酸化的で硫黄に乏しい流体の混合によって生成したものと考えられている(Hitzman et al., 2003)。80km 北にあ

    (26)

    図 42 Bambui 層群の分布(Misi et al., 2005)

    図 43 Morro Agudo 鉛・亜鉛鉱床(Cunha et al., 2007)

    図 41 Fortaleza de Minas ニッケル硫化物鉱床(Brenner, 2006)

  • 2008.5 金属資源レポート 27

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    地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ―

    る Morro Agudo 鉱床が SEDEX ~ Irish 型鉱床であるに対して、本鉱床は断層を充填した珪酸亜鉛鉱床という違いがある。亜鉛の起源は同じであるが生成環境が異なったと考えることが出来る。 本鉱床は、Morro Agudo 鉱床と同様に Votolantim Metais が操業しており、2006 年には 134,233t を生産した。2000 年時点で埋蔵量:8.5 百万 t、Zn 品位:23%と見積もられている。

    ③ Irecê 鉛・亜鉛鉱床(No.23)Irecê 鉱床は、Bahia 州 Salvador 市の北西約 300km

    に位置する。鉱床は氷河堆積物(diamictite)を被う厚さ約 1.2km の浅海性炭酸塩岩層である Salitre 層中に産する小規模な複数の層状鉱床からなる。閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱、白鉄鉱、四面銅鉱、ヨルダン鉱、銅藍からなる。後述する燐灰石鉱床と近接して産する。1979 年に CPRM により発見され、埋蔵量は 1.5百万 t、品位は Pb+Zn:8%、Ag:120g/t と見積もられている。

    ④ Irecê 燐灰石鉱床Irecê 燐 灰 石 鉱 床 は、Salitre 層 中 の Irecê 鉛・ 亜

    鉛鉱床のやや下部の斜交葉理を有する Jurussaina Krylov タイプのストロマトライトに伴なわれる。1985 年に CPRM によって発見された。ドロマイトと燐灰石に富む層厚は約 18 mに達し、重晶石ノジュールと黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱に富む珪化ドロマイトに覆われる。燐灰石鉱床は細粒の蛍石、方解石、ドロマイトを伴い、その形態は、柱状、ラミナ質ストロマトライトを伴うもの、砕屑岩を挟在するものに分かれる。柱状のもので P2O5 :20%に達する。燐灰石化はドロマイト化に先行した続成作用により形成されたが、ストロマトライト質ラミナを持つことから、その後、シアノバクテリアコロニーの形成とも関係したことがわかる。これら初生の燐灰石が炭酸塩鉱物の溶脱に

    より品位が高まったと考えられている。資源量は 40百万 t、P2O5 品位:14%と推定されている。

    5-3. Brasiliano 造山期構造帯São Francisco クラトン、Amazonian クラトンおよ

    び Rio de la Plata クラトンに挟まれた Tocantins プロビンスには、Paraguai-Araguaia 構造帯、Brasilia 構造帯(始生代の Goiás マシッフ、原生代前期ブロック、大陸内リフト期の塩基性・超塩基性岩層状岩体、非造山型花崗岩、前リフト、リフト、後リフト期の Araí and Serra da Mesa 堆積岩、Goiás マグマ弧からなる)が発達する。

    5-3-1. Paraguai および Araguaia 構造帯両構造帯は Amazonian クラトンの東および南東縁

    に発達する。Paraguai 構造帯には Corumbá 周辺のUrucum-Mutún 鉄・マンガン鉱床が、Araguaia 構造帯にはオフィオライトメンバーの超塩基性岩起源のラテライトニッケル鉱床が知られている。① Urucum-Mutún 鉄・マンガン鉱床(No.43)

    Urucum-Mutún 鉱 床 は ボ リ ビ ア と の 国 境 近 く のMato Grosso do Sul 州 Corumbá 市 周 辺 に 発 達 し ており、Paraguai および Araguaia 構造帯では最大の鉄鉱床である(図 45)。同鉱床は NNW-SSE 方向のParaguai 構 造 帯 と E-W 方 向 の Chiquitos-Tucavacaオーラコーゲンの交錯部付近に発達する Corumbá グラーベン中に存在する。Corumbá グラーベンにはJacadigo 層群の堆積物が堆積しており、下位の礫岩、砂岩、赤鉄鉱に富んだ赤色砂岩からなる Urucum 層およびその上位のマンガンに富んだ層を挟むジャスピライトからなる Santa Cruz 層に区分される。グラー

    (27)

    図 44 Vazante 鉱床(Hitzman et al., 2003)

    図 45 Corumbá 鉄鉱床(Klein and Ladeira, 2004)

  • 2008.5 金属資源レポート28

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    ベンの南および北は Corumbá 層群の炭酸塩岩に覆われる。礫岩と砂岩はグラーベン縁の断層崖堆積物を示している。ジャスピライトとマンガン層は化学的に沈殿した酸化鉄とシリカからなる。ジャスピライトには幾層ものダイアミクタイト(氷河堆積物)と砂岩を挟在しかつ漸移しており、化学的沈殿作用時にタービダイトや重力流が起こったことを示している。化学的

    沈殿のみによって形成されたシリカと赤鉄鉱からなる純粋なジャスピライトはリズミカルな層の上部に産する。すなわち、下位から上位に向かって、鉄質ダイアミクタイト、礫岩-鉄質砂岩-鉄質頁岩-ラミナの発達した純粋な細粒ジャスピライトと累重する。細粒赤鉄鉱からなるピンク色をしたノジュールにより目玉状の組織を示す。変質作用によりこのノジュールは溶脱を受け、液胞状の組織がジャスピライトの特徴となっている。マンガン層はクリプトメレーン(cryptomelane:K(2-X)Mn8O16)>ブラウン鉱(braunite:Mn6SiO12)よりなる。成因については鉄およびマンガンは化学的沈殿、シリカは SEDEX 型の熱水起源で、リフトもしくは Corumbá グラーベン直下の上部マントル起源の玄武岩から溶脱したシリカによるものとされている。Urucum-Mutún 鉄・マンガン鉱床は現在 Rio Tinto により採掘され、Paraguai 川を経由してアルゼンチンから輸出されている。鉄鉱床の埋蔵量は 31 億 t、品位は Fe:62%、一方、マンガン鉱床の埋蔵量は 11.5百万 t、品位は MnO:30 ~ 44.5%と見積もられている。

    ② Araguaia ラテライトニッケル鉱床Carajás の東側で南北に発達する Araguaia 川に沿っ

    て、原生代後期の付加体が発達し、超塩基性岩体がオフィオライトメンバーとして分布する(図 46)。2005年 に Falconbridge( 現 Xstrata) は、 こ の 超 塩 基 性岩分布域でグラスルーツからの探査で大規模ラテライトニッケル鉱床を発見した。それらのうち、Serra do Tapa 鉱床は、資源量:60.6 百万 t、品位 Ni:1.5%、Valedos Sonhos 鉱床は、資源量:13 百万 t、品位 Ni:1.5%と発表している(2006 年 5 月 Falconbridge HP)。

    5-3-2. Brasilia 構造帯(1)Goiás マシッフ

    Goiás マシッフは、Brasilia 構造帯に大規模な異地性のブロックとして産する太古代のテレーンで 3.0-2.5Gaの年代を示す。Crixás ほかのグリーンストンベルト、花崗岩・片麻岩よりなる。Crixás グリーンストンベルト中には Mina Ⅲ、Mina Nova といった Brasiliano造山期の低角せん断に関係した造山型(グリーンストン型)金鉱床、コマチアイト中の Boa Vista 硫化物ニッケル鉱床、エメラルド鉱床を産する。① Crixás 金鉱床(No.34)

    Crixás グリーンストンベルトには Mina Ⅲ、Mina Nova、Meia Pataca、Pompex、Mina Inglesa と い った造山型(グリーンストン型) 金鉱床を産する。Mina III 鉱床は Ribeiráo das Antas 層の堆積岩の下底と Rio Vermelho 層の塩基性火山岩との境界付近に発達しており(図 47)、1990 年から Mineração Serra Grande S.A. により操業されている。1994 年時点で鉱量:4.8 百万 t、Au 品位:10.12g/t と見積もられている。下位ゾーンは葉理面に沿った幅 0.5 ~ 5.0m の石英脈に含まれる。この石英脈は、断続的であるが、幅 500 m、

    図 46 Araguaia ophiolite の分布(Kotschoubey et al., 2005)

    (28)

  • 2008.5 金属資源レポート 29

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    傾斜方向には線構造に沿って 1,200 m連続する。上位ゾーンは厚さ 0.5 ~ 2.0m の塊状磁硫鉄鉱・硫砒鉄鉱に伴われる。鉱体は幅 50 ~ 200m、延長 400m のレンズ状を呈する。Mina Nova 鉱床も Mineração Serra Grande S.A. により 1996 年から操業されている。1996年時点で埋蔵量:3 百万 t、品位 Au:6g/t と見積もられている。これらの鉱床は、Brazilia 造山期の低角度のせん断帯に関係している。

    ② Boa Vista 硫化物ニッケル鉱床Boa Vista 硫化物ニッケル鉱床は、Crixás グリーン

    ストンベルトの北西端に位置しており、東西に方向に 7km 亘って広がる塩基性・超塩基性岩に伴って産する。超塩基性岩はペリドタイト質コマチアイトでニッケル硫化物鉱床は塩基性岩を覆う超塩基性岩の底部に発達する。鉱化帯の幅は変化に富むが数m以下である。上位から下位に向かって、細脈状-鉱染状-塊状鉱-マトリックス充填鉱に区分される。鉱石鉱物は磁硫鉄鉱(70%)を主とし、ペントランダイト、黄銅鉱、磁鉄鉱、閃亜鉛鉱から構成される。Ni/Cu は10 と高く、Kambalda 型鉱床に類似する(Costa et al., 1997)。ブラジルでは、現在操業中のコマチアイトに伴われる Kambalda 型の硫化ニッケル鉱床は、Morro do Ferro グリーンストンベルトの Serra da Fortaleza

    (O’Toole)鉱床のみで、今後の探査が期待されている。

    (2)原生代中期~原生代後期大陸内リフト原 生 代 中 期 に 大 陸 内 リ フ ト が 形 成 さ れ、Cana

    Brava、Niquelândia、Barro Alto といった大規模な塩基性-超塩基性層状岩が貫入した(1.3Ga、0.8Ga)。また非造山型錫花崗岩が Rio Paraná 準州(1.77Ga)および Rio Tocantins 準州(1.59Ga)に発達する。塩基性・超塩基性岩層状岩体の風化残留鉱床としてラテライトニッケル鉱床を産しており、ブラジルの重要なニッケル生産地となっている。Niquelândia 岩体ではCodemin と Votolantim が既に操業をしており、Barro Alto 鉱床は Anglo American が現在開発工事を行っている。またマグマ性鉱床として、Niquelândia およびCana Brava 岩体で白金族鉱床が期待されている。① Niquelândia、Barro Alto および Cana Brava 塩基性・

    超塩基性層状岩体とクロマイト・白金族鉱床ポテンシャルBrasilia 構造帯には南北約 350km、最大幅 30km(厚

    さ 10 ~ 14km)に亘って伸張する Niquelândia、Barro Alto および Cana Brava 塩基性・超塩基性層状岩体が貫入する(図 48)。これらを合わせるとジンバブエのグレイトダイク(延長 540km、幅 11km)に匹敵する

    規模を有する。各岩体の西側は、原生代前期のバイモーダル火山岩層と断層で接する。これら岩体はBrazilian 造山運動(795 ~ 770Ma)により高度変成作用と延性変形作用を受けている。Niquelândia 岩体は一回の貫入活動で形成されたと考えられてきたが、NNE 断層に沿う異なった時代の 2 回に亘る塩基性マグマの貫入により形成された複合岩体であることが判ってきた(Pimentel et al., 2006)(Barro Alto 岩体についても同様)。かんらん岩、斜方輝石かんらん岩、複輝岩、花崗閃緑岩よりなる下位の貫入岩(LS)は原生代後期(0.8Ga)に Goiás マグマ弧と同時期に背弧のリフト環境で貫入した。優白質かんらん石斑れい岩、斜長岩、斑れい岩、輝岩よりなる上位の貫入岩

    (US)は岩体西側に分布するバイモーダル火山岩・堆

    図 47 Crixás 金鉱床 (Jost and Fortes., 2001)

    (29)

    図 48 Barro Alto - Niquelândia-Cara Braras岩体の分布(Pimentl, 2006)

  • 2008.5 金属資源レポート30

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    積岩層と同時期の原生代中期(1.25Ga)に貫入したと考えられている(Pimentel et al., 2006)。両者はマイロナイトを伴う NNE 方向の垂直な断層で境される。Cana Brava 岩体では上位の貫入岩(US)が欠如する。Niquelândia 岩体の地質を図 49 に示す。

    クロマイト・白金族鉱物については、まとまった鉱床と称されるものはこれまで知られていないが、図50 に示すように貫入岩中にクロミタイト層の存在することが分かっている。クロミタイトに伴う硫黄は

    0.005 ~ 0.035%であるがダナイトに近づくと 0.04 ~0.12%まで上昇しており、この時期に硫黄に飽和したと考えられている。Filho ほか(1995)によると下位の超塩基性岩と塩基性岩の Pt 含有量が高く、それより上位のものは Pt 含有量が低いこと、またマグマが硫黄に飽和していたことを示す証拠から Pt 枯渇ゾーンと Pt 未枯渇ゾーンの漸移部に Pt 濃集部が存在する可能性が高いと推定している。ダナイト中に Pt-Pd 硫化物の存在が確かめられている(Garuti et al., 2002)。またクロマイトに含有される Pt・Pd 硫化物および合金鉱物の存在も知られている(Dardenne and Schoubbenhaus, 2003)。

    ② Niquelândia ラテライトニッケル鉱床(No.33)Niquelândia 鉱 床 は Niquelândia 岩 体 1800km2 の 中

    の 40 × 20km の範囲に分布する。ダナイト、ペリドタイト、輝岩のラテライト化による風化残留鉱床で、Ni に富むスメクタトからなる(図 51)。資源量:60百万 t、Ni 品位:1.45%と見積もられている。現在Niquelândia 岩体では、Votlantim Metais と Codemin

    (Anglo American の現地法人)が操業を行っている。

    (30)

    図 49 Niquelândia 岩体の地質(Pimentel, 2006)

    図 51 ラテライトニッケル断面図 (Dardenne and Schoubbenhaus, 2000)

    図 50 Niquelândia 岩体のクロミタイト分布(Garutietal., 2002)

  • 2008.5 金属資源レポート 31

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    2006 年前者は 21.337t、後者は 8,913t のニッケル(純分)を生産した(DNPM, 2007)

    ③ Barro Alto ラテライトニッケル鉱床(No.33)Barro Alto 鉱床は Barro Alto 岩体の蛇紋岩のラテ

    ライト化による風化残留鉱床である(図 52)。資源量:116 百万 t、Ni 品位:1.54%と見積もられている。Anglo American は 2007 年から開発を開始、2010 年から 36,000t/ 年のニッケルを生産する予定である。

    ④ Palmeirópolis 火山性塊状硫化物鉱床Palmeirópolis 鉱床は、Palmeirópolis の北東~東約

    15 ~ 20km に分布する。1977 年代に空中磁気探査結果を手掛りにして CPRM により発見された。同鉱床は Cana Brava、Niquelândia、Barro Alto 塩基性・超塩基性岩体の西側の Palmeiripólis 火山岩・堆積岩層

    (1.28 ~ 1.26Ga)中に産する(図 53)。火山岩は塩基性岩と珪長質岩からなりバイモーダルな組成を示しており(Araujo, 2000)、Moraes ほか(2006)はリフト期から、更に海洋地殻形成時に生じたと推定している。本層は下位の変 BIF(縞状鉄鉱層)および変チャートを含む細粒角閃岩(N-MORB 組成)、中位の変珪長質火山岩、上位の化学的沈殿岩・変泥質岩よりなる。鉱床は下位および中位で C-1、C-2、C-3 の 3 鉱体が確認されているが、初生的な産状は、高度の変形・変成作用により残されていない。下位のものは角閃岩とその上に重なる熱水変質岩(角閃石レンズを伴う直閃

    石・黒雲母・珪線石)からなる不均質岩石(源岩不明)の境界部に産し、珪長質火山岩は近傍には存在しない。鉱体付近は、下位から角閃岩-柘榴石・黒雲母角閃岩-硫化物鉱染を伴う変質岩-塊状硫化物-角閃岩と類重する。塊状鉱は縞状部を含み、磁硫鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱よりなる。母岩を数 mm ~数 cm の磁硫鉄鉱・閃亜鉛鉱・黄銅鉱が覆う角礫鉱を含むものもある。資源量は 4 百万 t、品位は Cu:1.23%、Zn:4.64%、Pb:0.72%、Ag:25.1%と見積もられている。

    ⑤ Goiás 錫鉱床区Goiás 錫鉱床区は Goiás 州の北部の広域を占め、Rio

    Parana 地区と Rio Tocantins 地区の 2 つに分けられる。いずれも非造山型である A タイプ花崗岩に関係している。これら花崗岩は活動年代から 1.77Ga と 1.58Gaの 2 つに分けられる。古期花崗岩(1.77Ga)は Rio Parana 地区のみに分布し、MgO/TiO₂ <1、K、Ba、Zn、F、Y、Th、Nb、Ga、REE の含有量が高い。新規花崗岩(1.58Ga)は両地区に分布しており Fe、F、Sn、Rb、Y、Th、Nb、Ga、REE、I、Rb、Nb、Sn、Ta に富み、K/Na が低く、Nb/T および F/Li が高い。最も重要な錫鉱床は新規花崗岩に関係しており、1960年以来の生産量は 15,000t で埋蔵量は、25,000t と推定されている。

    (3)Goiás マグマ弧Brazilia 構造帯の西端に位置する Goiás マグマ弧は、

    900Ma に出現し 600Ma まで存在した。島弧起源の火山・堆積岩、花崗岩および片麻岩からなる。鉱床は島弧火成活動に関連して形成されたもので Chapada 銅・鉛・亜鉛・金鉱床、Zacarias 金・銀・重晶石鉱床やBom Jardim de Goiás 銅・金鉱床を産する。これらは火山性塊状硫化物鉱床とされていたが、Chapada 鉱床については高度変成作用を被ったポーフィリー銅・金鉱床であることが判明している。① Chapada ポーフィリー銅・金鉱床

    Chapada 鉱床は、Brazilia の北西約 270km に位置している。1973 年に Inco(現 Vale)によって発見された。基盤となる 太古代の Pilar de Goiãs 層群を不整合に覆う火山岩・堆積岩層であるMara Rosa層を母岩とする。これらは Brasiliano 造山運動時期に角閃石相の変成作用を受け、黒雲母片岩、白雲母片岩、角閃岩長石質珪岩に変化している(図 54)。このため顕生代のポーフィリー鉱床の変質とは異なることから、火山性塊状硫化物鉱床とされていた。Rb/Sr 全岩年代で 5.6Ma を示す。また火山岩がカルクアルカリ岩系列を示すこと、REEパターンが Eu の異常のない右下りを示すこと、87Sr/86Srinitioal 値が 0.70414 であることからマグマ弧で形成されたと考えられている(Richardson et al., 1986)。Yamana Gold 社が 2006 年 11 月から生産を開始した。埋蔵量は 3 億 t、品位は Cu:0.35%、Au:0.26g/t と見積もられている(2007 年 8 月 Yamana Gold HP)。

    (31)

    図 52 Barro Alt. ラテライトニッケル断面(Baete. Jr, 1986)

    図 53 Palmeirópolis の地質(Araujo, 2000)

  • 2008.5 金属資源レポート32

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    ② Bom Jardin de Goiás 火山性塊状硫化物鉱床

    本鉱床は、ゴイアニア市の西方約300km に位置する。チャートを挟む安山岩~石英安山岩層に銅・金鉱化作用が存在しており、熱水変質を伴う火山性塊状硫化物鉱床とみなされている(Lobato et al., 1999)。資源量は 3.2 百万 t、品位は Cu:0.9%と見積もられている。ブラジル政府は近々公開入札に付す予定である。

    ③ Morro do Ouro 金鉱床(No.35)630Ma に Araxá、Ibiá、Canastra 堆

    積体が Vazante および Bambui 層群に衝上した。これに伴って、Burac-ão、Santa Rita、Rio do Carmo、Buraco do Ouro、Araxá、Luziânia、Morro do Ouro といった多数の造山型金鉱床が形成された。Morro do Ouro 金鉱床は、Vazante 層群に衝上したParactu 層の炭素質千枚岩を母岩としている。この母岩には緑色岩相の変成作用を被り、衝上断層に関係した同斜~横臥褶曲が発達する。金鉱化作用は、ブーディン化したセグレゲーション石英中に見られ、硫砒鉄鉱、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、菱鉄鉱、セリサイトを伴う。2000 年時点で、埋蔵量は金量ベースで 250t <、品位は Au:2.5g/t と見積もられている。

    5-3-3. Borborema 構造帯Borborema 構造帯にはマグネサイト(José de Alen-

    car、Cerá: 蒸発岩)、銅(Pedra Verde:SEDEX 型)、金(São Francisco、Catingueira、Maé D’Agua、Cariús、Itajubatiba ほか : 造山型・スカルン型)、タングステン(Rio Gran do Norte お よ び Paraíba 州 : ス カ ル ン

    型)、ウラン(Itataia 州)といった鉱床が知られている(No.17)。

    タングステン鉱床は、Rio Gran do Norte 州と Paraíba州 に ま た が る 範 囲 に お い て Brejui、Barra Verde、Boca de Laga、Bodó、Parelhas、Bom Fim といった灰重石鉱床として産し、Seridó 灰重石地帯として知られている(図 55)。第二次世界大戦から 1985 年の間に 60,000t の精鉱(WO3:70%)が生産された。灰重石は、変堆積岩よりなる基盤 Jucrutu 層と 600 ~500Ma の貫入岩の接触部に形成されたスカルン鉱床である。

    Itataia ウラン鉱床は、Fortaleza 市から 220km 離れた Santa Quitéira 郡に産する。原生代前期の変成岩とこれに貫入する Brazilian 造山期のペグマタイトおよび花崗岩よりなる。ウラン鉱化作用は閃長岩の貫入に伴うアルカリ交代作用に関したもので、塊状からストックワーク状の collophanite(微晶質燐灰石)に伴う。資源量は 79.5 百万 t、品位は U3O8:0.1%である。

    ま た Paraiba 州 の Espinharas ウ ラ ン 鉱 床 は 550 ~450Ma に生じた環状貫入岩に関係しており、10,000tの U3O8 を有する。

    5-3-4. Araçuai 構造帯Araçuai 帯 は ク ラ ト ン の 分 裂 か ら 再 衝 突 ま で の

    Wilson サイクルを経験しており様々な地質環境を経ているが際立った鉱床は知られておらず、わずかに次の鉱床が知られているに過ぎない。

    ・Riacho dos Macados Au 鉱床:太古代もしくは原生代の火山堆積岩層を母岩とする。

    ・SEDEX 型 鉄 鉱 床:Porterinha 地 域 の Macaúbas層群のダイアミクタイト(氷河堆積物)中に存在する。

    ・グラファイト鉱床:Minas Gerais-Bahia 州に分布。せん断帯を伴う片岩および片麻岩中に存在する。

    図 55 Borborema 構造帯スカルン型タングステン・金鉱床分布(Neto et al., 2007)

    (32)

    図 54 Chapada ポーフィリー銅鉱床(Richardson et al., 1986) 初生のポーフィリー変質に戻すと石英・セリサイト・藍晶石片岩がリソキャップに、黒雲母片岩がカリ変質帯、白雲母片岩がセリサイト変質帯に対応される

  • 2008.5 金属資源レポート 33

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    堆積岩を伴う海洋地殻断片には BIF(縞状鉄鉱層)、塊状硫化物鉱床を伴う。

    5-3-5. Ribeira 構造帯Araçuai 帯の南西延長にあたる Ribeira 帯には主に

    Ribeira River 渓谷に次のような鉱床が知られている。原生代中期の Perau/Água Clara コンプレックス中にSEDEX 型の鉛・亜鉛・銀・重晶石が、原生代中期から後期の Lageado および Itaiacoca 層群の炭酸塩岩中に垂直な鉱脈群からなるマント状の鉛・亜鉛・銀鉱床を、また Itacóa 花崗岩に伴ってタングステン鉱床を産する。

    5-3-6. Dom Feliciano 構造帯原生代後期のマグマ弧である Dom Feliciano 構造

    帯には、Vacacaí 火山・堆積岩層の火山性塊状硫化物鉛・亜鉛鉱床、Brasiliano 造山運動後期の Lavras do Sul 花崗岩コンプレックス中のポーフィリー金鉱床(No.45、Vota Grande、Bloco Buiá、Cerrio 鉱床)、Brasi-liano 造山運動期のCorrales 花崗岩に伴うポーフィリー金鉱床(No.47、San Gregorio 鉱床)が知られている。また Rio Grande do Sul 州中央~南部の Camaquá 地域には 600 ~470Ma に形成されたモラッセないし前地盆地中に Red bed 型銅・金、鉛・亜鉛鉱床を産する(図 56)。本鉱床は熱水変質を伴う鉱脈~鉱染状の特異な産状を呈する。1865 年に発見され、1996年までに São Luiz と Uruguai 鉱床で粗鉱 398 百 万 t、 品 位 Cu:1.06 %、Au:0.2g/t、Ag:8g/t が採掘された。Santa Maria 鉱床の資源量は 33.4 百万 t、品位 は Pb:1.44 %、Zn:1.08 %、Ag:12~ 14g/t と見積もられている。

    5-4. 顕生代顕生代には、安定化した南米プラッ

    トフォームでは、シルル紀・オルドビス紀から二畳紀にかけて Amazon-Solimões、Paranaiba、Panará、Chaco-Paraná と い っ た ク ラ ト ン 間 の 堆 積

    盆地が発達した。三畳紀からジュラ紀にかけて西Gondwana 大陸の分裂で生じたアフリカと南米の分裂に伴う大西洋の拡大により、洪水玄武岩の活動が起こり、また大陸縁辺部では堆積盆地が形成された。同時にリフティングに伴ってアルカリ岩、カーボナタイト、キンバライト、ランプロファイヤーの貫入が起こりニオブ、タンタル、レアアース、燐灰石、蛍石、ダイアモンドといった鉱床が形成された。新生代にはラテライト質風化が進展し、ボーキサイト、ラテライト型ニッケル鉱床が形成された。

    (1)アルカリ岩―カーボナタイト貫入岩に伴う鉱床大西洋の拡大に伴って多数のアルカリ岩、カーボ

    ナタイトが貫入した。これらは 2 ステージに亘って起こった。最初のステージは 130 ~120Ma に生じたもので Jacupiranga、J u q u i á 、 I p a n e m a 、 B a r r a d o Itapirapuá、Anitápolis と い っ た ブ ラジル南部に集中する。次のステージは、90 ~ 65Ma に生じた白亜紀後期のリフトの再活動に関係したもので、Iporá、Santa Fé、Catalão、Araxá、Serra Negra、Salitre、Tapira、Poços de Caldas、Mato Preto な ど で あ る。

    これらは Paraná 盆地の周辺に沿って分布する。これら貫入岩に伴って、ニオブ、タンタル、レアアース、燐灰石、磁鉄鉱、蛭石、重晶石、蛍石、ウラン等を産する(図 57)。

    図 56 Santa Maria 銅・鉛・亜鉛鉱床断面(Remus et al., 2000)

    図 57 カーボナタイト分布(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

    (33)

  • 2008.5 金属資源レポート34

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    地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ―

    ① Araxá ニオブ鉱床Araxá ニオブ鉱床は、Minas Gerais 州 Beo Horizonte

    市の北方約 300km に位置する。2005 年 34,833t の酸化ニオブと 3,399t の金属ニオブを生産した。

    鉱床は原生代後期の Araxá 層群の珪岩および片岩中に貫入する白亜紀後期(91Ma)のアルカリ岩-カーボナタイトに伴って産する。Araxá カーボナタイトは図 58 に示すように直径約 4km でドーム構造をなし、 中 心 か ら 外 側 に 向 か っ て、befosite>glimetite、befosite、glimerite、glimerite>befosite、fenite 化珪岩からなる。現在採掘されている表層部約 200m はラテライト化による風化残留部で基盤よりも高品位である。含ニオブ鉱物は、パイロクロア((Ca、Na)2Nb2O6F)でその他に方解石、アンケライト、ドロマイト、フロゴパイト、アパタイト、ペロブスカイト、褐鉄鉱、重晶石、磁鉄鉱、モナズ石、石英からなる(Silva, 1986)。またレアアースおよび白金も含むが同鉱山では回収されていない。

    この風化残留鉱床の埋蔵量は 4.4 億 t、品位は Nb2O5 2.5%、その下部の初生鉱床は 9.36 億 t、Nb2O51.57%と

    見積もられている(CBMM 社内資料)。ニオブについては、Araxá のほか Catalão において

    Anglo American により操業されている。

    (2)Figueira ウラン鉱床Paraná 盆 地 の Rio Bonito 層 の 基 底 に 相 当 す る

    Triunfo 部層にウラン鉱床を産する。この鉱床は石炭層と中粒~粗粒砂岩層の間に発達する板状鉱床である。砂岩ユニットではウランは石英粒の間を埋める閃ウラン鉱で黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱といった硫化物を伴う。また、モリブデン(0.2%)、バナジウム(200~ 500ppm)、セレン、ニッケル、ゲルマニウムの異常を伴う。生成環境は、ピート層を伴う島嶼バリアを持つラグーンであったと推定され、還元的なピート層が閃ウラン鉱の沈殿をもたらしたと考えられている。なお、鉱量は U3O8 ベースで 8,000t と見積もられている。

    (3)Pananá 洪水玄武岩に期待される銅・ニッケル・白金族鉱床

    白亜紀後期に西 Gonadwana 大陸の分裂に伴って、ブラジル南部で噴出した Paraná 洪水玄武岩の深部のシルに Norilsk 型のニッケル・銅・白金族鉱床が期待され、多くの企業が注目したが、削剥レベルが浅く、深部状況が不明であるため探鉱リスクが高く本格的な探査には至っていない。

    (4)風化残留・漂砂鉱床南米プラットフォームの多くは、熱帯気候区が占め

    ており、ラテライト化に適している。ラテライト化は主に新生代始新世と中新世-鮮新世に起こった。ラテライト鉱床は、アルミ、マンガン、ニッケルおよびチタンのような不溶性~難溶性元素の相対的濃集によるものと曹長岩中の錫石、イタビライト中の赤鉄鉱、アルカリ・カーボナタイトコンプレックス中のパイロクロア、燐灰石、重晶石のような安定的鉱物の残留蓄積によるものに区分される。①ボーキサイト鉱床

    ボーキサイト鉱床は、東アマゾン盆地、ガイアナとスリナムに跨る Berbice 盆地*、ベネズエラの Los Pijiguaos、ブラジル中央東部、ブラジル南東部に産する。

    東アマゾン盆地の Amazonas と Pará 州の主な鉱床はTrombetas、Nhamundá、Juruti、Almeirim、Paragoniasである。これらは、白亜紀前期~後期の Ipixuna、Itapecuru、Alter do Chão 層の粘土質堆積岩のラテライト化により生じたもので 15 億 t のボーキサイトが存在すると言われている。

    ブラジル中央東部のボーキサイト鉱床は Minas Gerais 州の Zona da Mata に分布しており、様々な先カンブリア時代の岩石の上に発達する。鉱量は 1 億 tと見積もられている。これらは、Rio de Janeiro、São

    (34)

    図 58 Araxá カーボナタイトの地質・断面(Silva, 1986)

  • 2008.5 金属資源レポート 35

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    Paulo および Belo Horizonte といった消費地に隣接するというメリットがある。

    ブラジル南東部のボーキサイト鉱床は、Rio de Janeiro、São Paulo 州 の 海 岸 地 帯 で あ る Poços de Caldas 地方および Santa Catarina 州 Lages-Anitápolis地方のアルカリ岩のラテライト化によるものである。Poços de Caldas の鉱量は 50 百万 t と見積もられている。※ Berbice 盆地のボーキサイトは古第三紀に形成された高品位のギブ

    サイト質で耐火物、化学および金属用原料用に適している。ガイアナでは Berbice および Demerara 川地域、スリナムでは Moengo、Onvervacht および Paranam に産する。ベネズエラの Los Pijiguaos鉱床は原生代中期の Parguaza ラパキビ花崗岩の上に発達し、白亜紀後期から第三紀前期に形成されたもので、厚さ約 7.5m で表土は1m 以下で資源量は 2 億 t、品位は Al2O3 48.7% , と見積もられている。主要鉱物はギブサイトで少量のカオリンを伴う。

    ②ラテライト金鉱床Carajás 地域の Igarapé Bahia あるいは Amapá 地域

    の Cassiporé 金鉱床ではラテライト化により金の濃集が見られる。

    ③漂砂鉱床ブラジルで重要な漂砂鉱床は金および錫で、金は、

    Amapá、Tapajós、Rio Maderia および Alto Florestaといった初生鉱床周辺の沖積層や古沖積層に、錫石

    は、Pitinga、Rondônia といった初生錫鉱床周辺に産する。

    モナズ石(REE 酸化物)、イルメナイト / ルチルおよびジルコンを含む漂砂鉱床はブラジルの沿岸に沿って産する。(イルメナイト鉱床はアルゼンチンの沿岸に沿って発見されている。) 最も重要な鉱床はParaíba、Bahia、Espirito Sazntos、Rio de Janeiro 州の沿岸地域のものである。モナズ石鉱床の最大のものは Rio de Janeiro 州の São João da Barra に産し、約40,000t のモナズ石を含有する。Paraíba 州の Matarca鉱床ではイルメナイト精鉱とジルコンが生産されている。鉱量は 2.7 百万 t でイルメナイト:81.54%、ルチル:2.4%、ジルコン:16.06%と推定されている。また Rio Grande Sul 州の Bujuru 鉱床は 10.8 百万 t のイルメナイトを有する。

    6.南米プラットフォームの成長とメタロジェニー

    上記においてブラジルの主要な金属鉱物資源の分布・産状等について紹介したが、本項では、南米プラットフォーム成長とこれらのメタロジェニーについて俯瞰してみる。なお図 59 にブラジルの金属鉱物資源形成の時代変遷と地質イベントを示す。

    (35)

    図 59 ブラジルの金属鉱物床形成の時代変遷と地質イベント(Dardenne and Schobbenhaus, 2000)

  • 2008.5 金属資源レポート36

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    (1)クラトン形成期①太古代前期(3.7 ~ 3.2Ga)

    初源的な大陸地殻が形成され始めた時期で、ブラジルで最古の年代値は São Francisco クラトン Gaviáoブロックの 3.7Ga(灰色片麻岩の Sm/NdTDM モデル年 代、Cordani and Sato, 1999)。Amazonian ク ラ ト ンRio Maria 花崗岩-グリーンストンベルトの 3.7Ga(原生代後期の花崗岩および堆積岩中のジルコンの U-Pb年代、Tassinari and Macambira,1999)、Imataca コンプレックスの 3.7 ~ 3.4Ga(片麻岩・ミグマタイトの U/Pb、Sm/NdTDM モデル年代、Dardenne and Schobbenhaus,2000)および Borborema 構造帯の太古代ブロッの 3.7Ga(片麻岩の Sm/NdTDM モデル年代、Dantas、et alo., 2004)である。これらは原生代の造山運動で形成された二次地殻中等にに異地性岩体や残存体として産する。このため分布も狭く生成環境もよく分かっていない。

    Imataca コンプレックスの Superior タイプないしAlgoma タイプの BIF(縞状鉄鉱層)およびこれらに伴われるマンガン鉱床が最古の金属鉱床となる。これらは、2.8 ~ 2.7Ga の Aroense 造山運動に伴うグラニュライトおよび角閃岩相の変成作用を受け、更に 2.15~ 2.0Ga の Transamazonian 造山運動を受けている。

    ②太古代中期(3.2 ~ 2.8Ga)この時期には、Rio Maria(Amazonian クラトン)、

    Crixás(Goiás マシッフ)、Piumi-hi、Fortaleza de Minasおよび Gavião(いずれも São Francisco クラトン)といったブラジル最古の花崗岩-グリーンストンベルトが形成された。Rio Maria グリーンストンベルトでは、リフティングとコマチアイトからソレアイトおよびカルクアリカリ岩へと変化する火山岩系列が認められ、この頃から既にサブダクションがあったことを示している。このことは 3.0 ~ 2.9Ga に微小大陸が存在したことを示しており、Aroense 造山運動期の変形・変成作用を受けた造山型金鉱床(Babaçu、Lagoa Seca、Diadema)が形成された。またこの時期に Jacaré および Campo Alegre de Lourdes シル(São Francisco クラトン)の鉄・チタン・バナジウム・白金族鉱床、Morro de Ferro グリーンストンベルト

    (São Francisco ク ラ ト ン ) で は Serra da Fortaleza(O’Toole)ニッケル・銅・コバルト・白金族鉱床が、Pium-hi グリーンストンベルト(São Francisco クラトン)のクロマイト鉱床が形成された。

    ③太古代後期(2.8 ~ 2.5Ga)この時期に存在していた現在の南米プラットフォー

    ムを構成するクラトンは Atlantica 大陸の一部をなしており(図 1 および図 2)、Carajás(Amazonian クラトン)と“鉄の四角帯”において大規模な金属鉱床が形成された。

    ・Carajás 地域:大陸地殻中に鉄、銅、金、マンガ

    ン、クロム、ニッケル、タングステンといった複数の金属からなる大規模な金属鉱床生成区が形成された。2.76Ga に Grão-Pará 火山岩・堆積岩層中に深部断層とマグマ活動に伴って鉄が沈殿しCarajás タイプの BIF(縞状鉄鉱層)を形成した。Luanga 塩基性・超塩基性層状岩体に伴ってクロマイト・白金族鉱床が形成された。また同時期に多くの酸化鉄銅金鉱床が形成された。Igarapé Bahia-Alemão、Salobo 鉱 床 は 火 山・ 堆 積 岩 中 に、Sossego、Cristalino、118 鉱床は花崗岩質貫入岩に伴なって形成された。この時期に続いて、Águas Claras 堆積岩層中に Azul マンガン鉱床が形成された。更に 2.6Ga の塩基性・超塩基性岩体の貫入とせん断帯の再活動に伴って Serra Pelada-Serra Leste 金・白金鉱床が形成された。また Vermelho、Onça、Puma、Jacaré および Ja-carezinho といった塩基性・超塩基性層状岩体が貫入した。これらは新生代のラテライト化により大規模なラテライトニッケル鉱床の原岩となっている。

    ・“鉄の四角帯”:Rio das Velhas グリーンストンベルト(2.77Ga)中には Cuiabá、Morro Velho、Ra-posos、Lamengo、São Bento、Juca Viera 等の金鉱床および Lafaite マンガン鉱床を産する。金鉱床は 2.6Ga の構造運動で形成された低角度せん断帯に伴っており、更に Transamazonian 造山運動期(2.0 ~ 1.8Ga)に再移動したと考えられている。

    ④原生代前期(2.5 ~ 1.8Ga)この時期は Transamazonian 造山運動の起こった時

    期で、地球規模の最初の超大陸 Columbia の形成が始まった時期でもある(図 2)。

    Amazonian ク ラ ト ン 北 部 の Guiana 楯 状 地 で はTransamazonian 造山運動のせん断作用に関係して火山岩・堆積岩層中に Pastora、Barama-Mazaruni、Paramaka、Vila Nova といった造山型(グリーンストン型)金鉱床が生成された。1.8Ga には非造山型花崗岩活動に伴って Pitinga 地域で錫、ニオブ、タンタル、レアアースの鉱化作用が起こった。1.9 ~ 1.8Ga にはTapajós および Alta Froresta においてカルクアルカリ質花崗岩活動に伴うポーフィリー型金鉱床、浅熱水性金鉱床が形成された。またこの時期に Amazonianクラトンでは非造山型花崗岩(1.88Ga)に伴って、錫・タングステン鉱床(Musa)および Águas Claras銅・金鉱床(Carajás)、Gameleira 銅・金鉱床(Pojuca Gr-anite)が形成された。

    São Francisco クラトンでは、Itapicuru グリーンストンベルト(2.2 ~ 2.1Ga)の火山岩・堆積岩層に Fazenda Brasileiro、Maria Preta といった Transamazonian 造山運動のせん断作用に関係して形成された造山型(グリーンストン型)金鉱床が形成された。“鉄の四角帯 ” で は Passagem de Mariana、Antônio Perira 金鉱床が形成された。また “鉄の四角帯”の Moeda 層

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  • 2008.5 金属資源レポート 37

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    (2.5Ga)では Witwatersrand 型の礫岩を母岩とする漂砂金鉱床が形成された。Jacobina 金鉱床(2.0Ga)はWitwatersrand 型とみなされてきたが、最近では熱水鉱床とされている。“鉄の四角帯”では Itabirite と称される Superior 型の大規模 BIF(縞状鉄鉱層)Caué鉱床が形成された。São Francisco クラトン北部では、塩基性・超塩基性層状岩体に伴って正マグマ型銅鉱床(Caraiba)やクロマイト鉱床(Ipueira、Medrado、Campo Formoso)が形成された。Goiás 地域では、クラトン間のリフトに塩基性・超塩基性層状岩体(Barro Alto、Niquelândia、Cana Brava)が貫入し、Barro Alto、Niquelândia および Codemin ラテライトニッケル鉱床の原岩となっているほか、Barro Alto およびNiquelândia 岩体ではクロマイト・白金族鉱床が期待されている。

    ⑤原生代中期(1.8 ~ 1.0Ga) この時期、Columbia 超大陸の形成、更にその分

    裂(1.3Ga 頃) から次の Rodinia 超大陸が形成された。Rodinia 超大陸の形成に伴って Grenville 造山帯が形成された。Amazonian クラトンの西縁部に当たる Rodonia-San Ignacio 地帯が Grenville 造山運動を被った(図 6)。Rondonia-San Ignacio 地帯の更に西側は、Laurencia 大陸(現在の北米大陸)として分裂した。Rondonia-San Ignacio 地帯の西側は、リフト境界

    (rifted border)として古生代前期から始まる Andes造山運動が起きるまで、非活動的大陸縁辺部(passive margin)あるいは前縁盆地(foreland basin)の状態にあり、大量の陸源性堆積物が堆積した。

    南米では大陸地殻の弱線部で大陸内火山活動、非造山型花崗岩の貫入や砕屑岩の堆積を伴うリフトが形成された(1.8 ~ 1.75Ga に São Francisco クラトンとAmazonian クラトンで生じた)。これに伴って非造山型花崗岩活動が起こり錫鉱床を形成した。Amazonianクラトンでは非造山型花崗岩活動は次のように北東か ら 南 西 に 移 動 し た。 ~ 1.88Ga:Carajás-Musa 花 崗岩、~ 1.8Ga:Pitinga 花崗岩、~ 1.5Ga:Surucucus 花崗岩、~ 1.3Ga:Sáo Lourenço-Caripus 花崗岩、~ 950Ma:Rondônia 花 崗 岩。Goiás 地 域 で は Paraná(1.75Ga)と Tocantins(1.59Ga) で 生 じ た。 こ れ ら の リ フ トは海洋地殻に発展することは殆どなかったが、Mato Grosso 州 の Alto Jauru 火 山 岩・ 堆 積 岩 層(1.75Ga)には Cabaçal 銅・金鉱床を、Goiás 州の Palmeirópolis-Juscelândia 火山岩・堆積岩層(1.3Ga)には海洋地殻に伴って鉛・亜鉛鉱床が形成された。

    Rio Negro-Jurena ベルトの Alto Jaura グリーンストンベルトには火山性塊状硫化物鉱床である Aripuana鉱床を産する。

    Ribeira ベルトでは 1.7Ga に SEDEX 型銅・鉛・亜鉛・バリウム・銀鉱床である Perau、Canoas 鉱床が形成された。

    Sunsas ベ ル ト で は 1.0Ga の Sunsas 造 山 運 動 で

    Aguapeí リフト(failed rift)が再び開き、高角度のせん断帯に小規模ではあるが多数の造山型金鉱床が形成された。

    (2)クラトン安定期から Brasiliano 造山期①原生代後期(1.0Ga ~ 550Ma)

    Rodinia 超大陸の形成から分裂、Gondwana 超大陸形成の時期で、特に São Francisco クラトン周辺では、Rodinia 超大陸安定期にはクラトンを被う非活動的大陸縁辺およびプラットフォーム堆積物体が形成された。Gondwana 超大陸形成に伴って地球規模造山運動が起こり(Pan-African 造山運動、南米では Brasiliano造山運動と呼ばれている)、南米のクラトンとアフリカのクラトン、マダガスカル、インド、オーストラリアが衝突した。南米では、Araguaia、Paraguai、Brasiliano、Araçuaí、Ribeira、Borborema と い っ た構造帯が形成された。これに伴って地域的な地質環境に支配された様々な鉱物資源が形成された。◦ Brasília 構造帯

    非活動的大陸縁辺部のプラットフォーム堆積体である São Francisco 超層群 Bambuí 層群は炭酸塩岩- 珪質砕屑岩からなり、SEDEX 型~ Irish 型~Mississippi Valley 型鉛・亜鉛鉱床および Irecê 燐灰石鉱床を、Bambuí 層群の更に外側に当たるプラットフォーム堆積体である Vazante 層群には SEDEX型~ Irish 型~ Mississippi Valley 型鉛・亜鉛鉱床

    (Vaszante、Morro Agudo) が 形 成 さ れ た。Goiásマグマ弧(950 ~ 600Ma)ではポーフィリー銅・金鉱床(Chapada)、火山性塊状硫化物鉱床(Bom Jardin de Goiás)、Morro do Ouro 金鉱床などが形成 さ れ た。Americano do Brasil お よ び Mangabal塩基性・超塩基性層状岩体(610Ma)に伴って正マグマ型銅・ニッケル・コバルト鉱床が形成された。

    ◦ Paraguai 構造帯Corumbá 地 域 の 堆 積 盆(650Ma) を 充 填 し て

    Urumu-Mutún 鉄・マンガン鉱床が、Brasiliano 造山活動末期の Cuiabá 層群の千枚岩に伴う金鉱床が形成された。

    ◦ Araçuai 構造帯Porteirnha 地域の SEDEX 型に類似する鉄鉱床

    (900Ma)、550Ma の花崗岩に関係したペグマタイト中のリチウムおよびベリル鉱床が形成された。

    ◦ Borborema 構造帯スカルン中の灰重石鉱床、せん断帯に伴われる金

    鉱床、ペグマタイトに伴われるニオブ・タンタル・錫・ベリル鉱床が形成された。

    ◦ Ribeira 構造帯Águas Claras 層の炭酸塩岩に伴う層準規制型鉛・

    亜鉛鉱床および花崗岩に伴われるタングステン・金鉱床が形成された。

    ◦ Dom Feliciano 構造帯ポーフィリー金鉱床(650Ma)およびモラッセ中

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  • 2008.5 金属資源レポート38

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    の銅・鉛・亜鉛鉱床が形成された。

    (3)顕生代(560-0Ma)古生代になると南米プラットフォームは完全に安

    定化し、アフリカ大陸とともに西 Gondwana 大陸の一部をなしていた(図 2)。シルル紀~オルドビス紀に ク ラ ト ン 内 部 に Paraná、Paranaíba、Amazonas、Solimoes、Chaco といった大規模な堆積盆が形成された。中生代になると、西 Gondwana 大陸が分裂し、大西洋が形成された。この分裂に伴って、南米プラットフォームが再び活動的になり、白亜紀前期には大西洋の拡大に伴って Paraná 盆地では洪水玄武岩の活動が始まると同時にブラジル南部でアルカリ岩-カーボナタイト、キンバライトパイプが貫入した。また同時に大西洋岸には小規模な堆積盆地が形成された。白亜紀後期になるとリフトの活動が再び活発になり、キンバライトパイプと共ににニオブ、タンタル、燐灰石、ニッケル、重晶石、ウラン、蛍石、レアアース元素を伴うアルカリ岩-カーボナタイトが貫入した。新生代になるとラテライト化が進展し、ボーキサイト、カオリン、ニッケル、チタン、金、ニオブ、マンガンといった風化残留鉱床が形成された。また錫石、金、ダイヤモンド、ジルコン、モナズ石、イルメナイト、ルチルといった漂砂鉱床が形成された。

    (4)São Francisco クラトン北部(図 6 の A の範囲)における太古代から原生代中期の Wilson Cycleと金属鉱物資源

    Condani ほか(2000)、Oliveira ほか(2004)、Figu-eiredo(1989)等から São Francisco クラトン北部における 太古代から原生代中期までの構造発達史とメタロジェニーを Wilson Cycle(図 3)と関連付けて纏めると図 60 のように推定される。

    ・3.7 ~ 2.8Ga:Gaviáo ブロックの灰色片麻岩が 3.7Gaを示しており、規模は分からないが TTG からなる 1 次地殻からなる大陸地殻が形成され大陸内盆地火山活動により BIF が形成された(図 60 Ⅰ)。

    ・2.8 ~ 2.5Ga:小大陸が分裂を起し、西の Gaviáoブロックと東の Serrinha ブロックに分裂、このリフト帯では 2.6Ga に硫化物銅鉱床を伴う Curaça塩基性・超塩基性層状岩体が貫入した(図 31)。堆積岩中に SEDEX 型鉛・亜鉛鉱床(Boquira 鉱床、2.7Ga)が形成された(図 60 Ⅱ)。Jequié ブロックでは 2.9 ~ 2.8Ga に鉄、チタン、バナジウム、白金族を伴う Jacaré 塩基性層状岩体が貫入した。この時期は Wilson サイクルのステージⅠに相当し、図 4 の B から C の時期に相当する。

    ・2.4Ga:拡大したリフト内で東向きのサブダクションが起こり、Caraíba グラニュライトの原岩となったカルクアルカリ岩バソリスが形成され、最終的に付加ウェッジを形成した。Wilson サイクルのステージⅢ~Ⅳに相当し、図 4 の E もしく

    は F の時期に相当する。・2.3Ga:Gavião ブロックと Serrinha ブロックが斜

    め衝突を起し、I-S-C ベルトを形成し、高度変成岩が形成され、造山期花崗岩が貫入した。Wilsonサイクルのステージ V に相当し、図 4 の H の時期に相当する。

    ・2.2Ga:I-S-C ベルトで更に変形・変成作用が進展するとともに、Serrinha ブロックと Gavião ブロックでリフティングが起こり、前者では背弧盆地で Rio Itapicuru グリーンストンベルトが形成され、後者では、Jacobina でリフティングが始まりWitwatersrand 型を含む熱水性金鉱床を形成した

    (図 60 Ⅲ)。Wilson サイクルのステージ V の時期に相当するがまた I の要素も持ち合わせている。

    ・2.1Ga:再度 Gavião ブロックと Serrinha ブロックが衝突し、I-S-C ベルトで角閃岩相の変成作用と造山期花崗岩の貫入が起った。I-S-C ベルとSerrinha ブロックの境界の構造線に沿って大規模な閃長岩が貫入した。また Serrinha ブロック内には後造山期の複数の塩基性・超塩基性層状岩体が貫入した。この中の Medrado 岩体にクロマイト鉱床を産する。一方、この頃 São Franciscoクラトンの南部では同クラトン東端部において、Mantiqueira 陸弧および海洋性島弧が形成され、大陸側に付加した。2.3Ga からこの頃はTransamazonia 造山運動の時期に相当する。

    ・2.0Ga ~ 5.5Ma:こうした造山帯は安定してクラトン化したが、一部クラトンが分裂しオーラコーゲンを形成(Paramirim オーラコーゲン)、非造山型花崗岩が貫入した。これらをプラットフォーム堆積物が広く覆うとともに(São Francisco 超層 群、Espinhaço 超 層 群 )、 周 辺 部 の 非 活 動 的大陸縁では炭酸塩岩からなる Bambui 層群が堆積した。プラットフォーム堆積物、非活動的大陸 縁 堆 積 物 い ず れ に も SEDEX 型 ~ Irish 型 ~Mississippi Valley 型 鉱 床 を 産 す る( 図 60 Ⅳ )。Wilson サイクルのステージ V に相当し、図 4 では必ずしも最適ではないかもしれないが、の時期に相当する。

    (5)Brasiliano 構造帯(図 6 の B の範囲)における原生代後期の Wilson Cycle と金属鉱物資源

    Pimental ほ か(2000)、Dardenne(2000)、Moraesほか(2006)等から原生代後期の Brasilia 構造帯の構造発達史とメタロジェニーを Wilson Cycle と関連付けて纏めると図 61 のように推定される。

    Brasiliano 構造帯は、原生代後期に生じた Rodinia超大陸の解体から Gondwana 超大陸形成に至る地球規模の変動である Brasiliano 造山運動で形成された。

    ・1.30 ~ 1.26Ga:São Francisco ク ラ ト ン で リ フティングが起こり塩基性・超塩基性層状岩体

    (Niquelandia 岩体の上部に相当部)が貫入した。

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  • 2008.5 金属資源レポート 39

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    リフティングに伴う火山活動により火山性塊状硫化物鉱床(Palmeirópolis)また非造山型花崗岩に伴って Rio Paraná、Rio Tocantins といった錫鉱床が形成された(図 61 Ⅰ)。図 4 の B、Wilson Cycle のステージ I に相当する。

    ・790Ma:クロミタイトおよび白金族鉱物を伴う塩基性・超塩基性層状岩体(Niquelandia 岩体の下部に相当する部分)が貫入した。 Amazonian クラトンと間に海洋性島弧である Goiás マグマ弧が出現・発達した。Goiás マグマ弧の火成活動に伴って Chapada ポーフィリー銅・金鉱床および Bom Jardin de Goiás 火山性塊状硫化物鉱床が形成され

    (6)西 Gondwana の鉱物資源分布西 Gondwana(南米とアフリカ)の金

    属鉱物資源の分布(Teixeira et al., 2007)を図 62(P.26)に示す。アフリカと南米は、Pan African 造山運動では一連の構造運動を受けており原生代後期には共通した地質構造発達史とメタロジェニーを有する。両大陸の金属鉱物資源ポテンシャルを比較検討することが出来る。

    7. ブラジルの鉱物資源ポテンシャル既述のように、現在ブラジルに見られ

    る地質体は、37 億年前に始まる大陸地殻の形成から原生代後期の造山運動、更に顕生代のアフリカ大陸との分裂というイベントを経ており、複数回の Wilson サイクルを経ている。地質構造発達史という時間軸のなかで一時的に形成された地質環境に対して既知の鉱床生成モデルを当てはめて考えると、ブラジルの 37 億年の歴史のなかで次のようなポテンシャルが考えられる。

    (1)ブラジルの金属鉱物生産量と埋蔵量Minera l Commodity Summaries

    (USGS)によると、ブラジルの 2005 年の金属鉱物資源の生産量は、表 2 に示

    すようにニオブが世界の 94%、タンタル 47%、鉄18%、アルミニウム 13%、マンガン 15%、ニッケル 3%であった。銅の生産は Carajás の銅鉱床の本格操業が開始されれば、年産 50 万 t 近くになり、世界の第 12~ 13 位になる。2007 年のニッケル生産量は 48,000tであるが、2013 年には 390 千 t となり、世界最大の生産国になると予想されている(Belther, 2007)。

    一方ブラジルの金属鉱物の資源量は表 3 に示すように、ニオブが世界のほぼ全量、タンタル 49%、錫23%、鉄 23%を占めるが、銅、クロムおよび白金族元素はデータなし(僅少)、ニッケルも僅か 6%と見積もられている。Mineral Commodity Summaries に示さ

    (39)

    図 60 São Francisco クラトンの構造発達史

    初期大陸地殻

    Ⅰ 3.7~2.8 Ga

    Ⅱ 2.8~2.5 Ga

    Jequie ブロック

    SEDEX型Pb・Zn鉱床(Boquira)

    正マグマ型Cu鉱床(Caraiba)

    塩基性・超塩基性層状岩体

    塩基性貫入岩

    Gaviaoブロック

    Serrinhaブロック

    正マグマ型Fe・Ti・V鉱床(Rio Piau)★

    →→

    ´

    ⇒⇒

    ▲▲

    ▲▲

    ▲▲

    ▲▲

    ▲▲

    Ⅲ 2.5~2.0 Ga

    Jacobina 堆積盆 正マグマ型Cr・PGM鉱床(Melado)★閃長岩

    塩基性・超塩基性層状岩体(後造山期)

    Mantiqueira陸弧

    Juit do Fora島弧

    Itapicuru G.B.(背弧海盆

    (Tramsonagonian 造山期を含む)

    (I‑S‑C)Itabuna‑Salvador‑Curaca褶曲帯

    ⇒⇒ ⇒

    Ⅳ 1.6~0.7 Ga

    プラットフォーム堆積体(Sao Francisco超層群)

    非活動的大陸縁辺部堆積体(Vazante層群)

    SEDEX型Pb・Zn鉱床

    (TTG, GB)

    島弧

    大陸内盆地

    サブダクション

    縞状鉄鉱層(Uranidi‑Licino de Almeida Belt)

    ★ 造山型金鉱床(Itapicuru)

    Contendas Mirante G.B.

    塩基性貫入岩★

    正マグマ型Fe‑Ti‑V‑PGM鉱床(Jacare)

    Paramirim(Espinhaco)オーラコゲン

    (Irece)★

    Morro Agudo

    Vazante

    SEDEX型Pb・Zn鉱床

    CongoクラトンSao Franciscoクラトン

    Sao Franciscoクラトン Congoクラトン

    CongoクラトンSao Franciscoクラトン

    ★Pb・Zn

    Pb・Zn

    非造山型花崗岩

    Lago Real U鉱床

    オーラコーゲン/プラットフォーム堆積体 (Espinhaco超層群)

    た(図61 Ⅱ)。図 4 の C、Wilson CycleのステージⅢないしⅣに相当する。

    ・750Ma: 両クラトンの接近により Goiásマグマ弧が東進し、両クラトンの間にあった太古代の異地性岩体であるCrixá 岩体ともに São Francisco クラトン側に衝突した(図 61 Ⅲ。図 4 のH、Wilson Cycle のステージ V に相当する。更に両クラトンの接近によりAmazonian クラトン側では、オフィオライト(海洋地殻・マントル断片)が付加し、第四紀にこれを原岩としてラテライトニッケル鉱床が形成された。

  • 2008.5 金属資源レポート40

    レポート

    ブラジル金属鉱物資源の魅力 ―

    地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ―

    れた数値の算出根拠は分からないが、銅の資源量については既に増加しており、ニッケルについては更に増加することは確実と思われる。またメタロジェニーの視点からみてもクロム、白金族、レアアースのポテンシャルも数値以上のものが期待されると思われる。

    (2)ブラジルの金属鉱物資源ポテンシャル①正マグマ型ニッケル・銅鉱床、白金族鉱床およびク

    ロマイト鉱床塩基性・超塩基性層状岩体は、マントルプルーム上

    昇により大陸性リフトやオーラコーゲンで形成されるが、特に先カンブリア時代は地球内部が高温で、地殻浅所へのマントル物質が上昇し易かった。ブラジルには先カンブリア時代の様々な時期に塩基性・超塩基性層状岩体が貫入するとともにグリーンストンベルト

    中に超塩基性溶岩(コマチアイト)が噴出した。また中生代には大西洋の拡大に伴って大量のParana 洪水玄武岩が噴出し、その深部には、塩基性・超塩基性層状岩体の存在が推定されている。

    Amazonian ク ラ ト ン 北 部 のBacuri 塩 基 性・ 超 塩 基 性 コ ンプレックス(2.0Ga

  • 2008.5 金属資源レポート 41

    レポート

    ブラジル金属鉱物資源の魅力 ―

    地質構造発達史とメタロジェニーの視点から ―

    査によっては更に類似鉱床の発見が期待される。ブラジルの現在操業されている正マグマ型鉱床

    は、銅鉱床は Caraiba 鉱床、ニッケル鉱床は Serra da Fortaleza のみであるが、現在 Mangabal(Goiás 州)や Santa Rita(Bahia 州)などで正マグマ型ニッケル鉱床のアドバンスドステージ探査が行われている。既述のように、ブラジルには多くの層状貫入岩体が分布

    しており、このタイプの鉱床賦存ポテンシャルには注目すべきものと思われる。

    ② ラテライトニッケル鉱床既述のように、ブラジルでは、クラトン内のリフト

    帯では塩基性岩・超塩基性岩層状岩体が貫入し、グリーンストンベルト(島弧)では超塩基性溶岩(コマ

    鉱種 ブラジル生産量 世界生産量 単位世界に占める割合(%)

    ブラジルの順位 主な生産国 出典

    ニオブ 56,000 59,900 t 93.5 1 ⑴ Brazil    ⑵ Canada   ⑶ Australia⑷ Nigeria    ⑸ Rwanda MCS

    ボーキサイト 22,836 182,447 103t 12.5 2 ⑴ Australia   ⑵ Brazil     ⑶ Guinea⑷ China    ⑸ Jamaica WBMS

    マンガン 1,600 11,000 103t 14.5 2 ⑴ South Africa ⑵ Brazil    ⑶ Gabon⑷ Australia   ⑸ China MCS

    鉄鉱石 300 1,690 106t 17.8 2 ⑴ China    ⑵ Brazail   ⑶ Australia⑷ India     ⑸ Russia MCS

    タンタル 601 1290 103t 46.6 5 ⑴ China    ⑵ North Korea ⑶ USA⑷ India     ⑸ Brazil MCS

    錫 11.7 324.4 103t 3.6 5 ⑴ Indonesia   ⑵ China    ⑶ Peru⑷ Bolivia    ⑸ Brazil WBMS

    ニッケル 36.3 1,427.3 103t 2.5 10 ⑴ Russia    ⑵ Canada   �