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ソーシャルゲームの 先行者利益は いかにして破られたか 201573井上明人 国際大学GLOCOM

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ソーシャルゲームの 先行者利益は いかにして破られたか

2015年7月3日 井上明人

於 国際大学GLOCOM

「ソーシャル」のいくつかの意味

ソーシャル・ゲーム五〇〇〇年の歴史 (C)Jon Radoff‘s Internet Wonderland http://radoff.com/blog/2010/05/24/history-social-games/

Chin-Lung Hsu , Hsi-Peng Lu(2003) Why do people play on-line games? An extended TAM with social influences and flow experience

ゲームの面白さを論じる際に、しばしば「フロー体験(Flow Experience)が支配的なものとして論じられるが、UIの使いやすさや、社会的要素もゲームの面白さに対して、強く寄与していることを示す。

CGMの マネタイズ構造

サイト参加ユーザー

広告費

調査情報の提供 広告スポットの提供等

代金

支払い等 ア

フィリエイト等

活動プラットフォーム の提供等

コンテンツ生成 会員費等

その他の消費者

システム利用等

その他の企業

CGM 運営企業

利用料等

広告主(企業) A.直接回収モデル

B.間接回収モデル

D.CGM二次利用

C.広告モデル

井上(2011)@ユリイカ 「ソーシャルゲームの交わらない欲望」

• 無課金、重課金、微課金ユーザーが欲望しているものは違う

• しかしながら、ひとつのゲームのマジックサークルとして機能している状態

• マネタイズ手法も、無課金ユーザー、重課金ユーザー、微課金ユーザーで異なる

• 無課金ユーザーは直接的ネットワーク外部性を上昇させることと、広告チャネルとしての価値。

田中辰雄/山口真一(2015)

• フリーミアム

• 価格差別

• ネットワーク外部性(実証的に検証)

Hagiu,Kotosaka(2013),HBS greeの競争優位性が日米でどのように差が出たか

TVCMの アライアンス

◯電博を通した、寡占状況があるため、全国放映のコストが低い。

TVCMの うち方

◯全国に放映。しかも、地域ごと、時間帯を変えてスポットで効果を測定。CMの時間帯効果別の利益率の違い等を自社内にデータとして保有することが可能に。

表示プラットフォーム、

ランキング

◯KDDIから上中下レイヤーまるごとゲット。ランキング、表示レイヤーを抑えられたことに加え、ゲーム間横断の統一仮想通貨発行が可能になるなど、施策が多面的に可能に。

ABテスト のやりやすさ

◯ガラケー時代は特に強力。スマホシフト以後、アップデートのタイミングでのみデータ取得可能。

その他 ◯KDDI提携を通じて、芸能人コンテンツをGree内に持ち込むことに成功

Hagiu、Kotosaka(2013) データ分析の影響力の大きさ

• Zyngaなどと比べて、Gree、DeNAのARPUは2倍〜5倍。月利益5000万円の釣りスタの売上が、5倍になれば2億5000万円の世界。利益が1%伸びるだけでも、月250万円、年間で3000万円の価値。

• 釣りスタ自体の面白さはそこまで問題ではなく、スポット広告の分析やABテストによる、課金タイミングのチューニングと、流通チャネルを抑えたことで、利益率を改善できたことは大きい。

テスト構造の変化

ソーシャルゲームは ここで「テストと調整」をする 2000年台末~

α

β

β’

μ

リリース

リリース後

の運用

任天堂の「マリオクラブ」 80年代中盤~

ミドルウェアによる開発コスト低下 90年台末~

バグチェック

インカムテスト 80年代初期~

ソーシャルゲームで作品の洗練構造にどういう変化が起こったか

• 基礎アーキテクチャの調整 – (メカニズムデザインの調整):

–開発コストのサイズダウンによって、ある程度多様な試みが可能に

• 各モジュール間の調整 – (レベルデザインの調整):

–作品の洗練プロセスにかかる初期コストが安くなり、多くの事業者が洗練プロセスを設けやすくなった。

–ただし、運用時の調整コストは増大

先行者利益が強い構造?

2つの点で先行者利益が大きく働く構造

1. ネットワーク外部性が有利に働く事業構造。

(田中,山口[2015])

2. データ分析事業への投資(Hagiu,Kotosaka[2013])

– CM効果の測定

– ABテスト等を複雑に成立させる仕組み

→いずれも分析フロー構築に相当程度の投資

が必要であり、早い段階で高い水準の事業

システムを構築できると相当有利に。

プロダクト・ライフサイクル

• MMORPGなどは実際に、World of Warcraftや、FFXIなど、他のゲームソフトに比べて製品として息が長い。 –スクウェア・エニックスは2000年代において、固定収入に準ずるものとしてFFXIを位置づけている。※1

• しかし、ソーシャルゲームの流行タイトルは、現状ではMMOとくらべて交代頻度が高い。(パズドラなどは例外的)

※1 スクエニ和田会長とやまもといちろう氏が語る任天堂の苦境、これからのパブリッシャー、スクエニの経営戦略・・・黒川塾(16)レポート

http://www.inside-games.jp/article/2014/01/25/73796.html

Hagiu,Kotosaka(2013),HBS greeの競争優位性が日米でどのように差が出たか

日本 米国

TVCMの アライアンス

◯電博を通した、寡占状況があるため、全

国放映のコストが低い。

△多チャンネルのため、地域ごと契約が

必要。コスト効率低い

TVCMの うち方

◯全国に放映。しかも、地域ごと、時間帯

を変えてスポットで効果を測定。CMの時間帯効果別の利益率の違い等を自社内に

データとして保有することが可能に。

△基本的に、TVCMの効果そのものが日本よりも高くないため、相対的に効果が

薄れる。

表示プラット

フォーム、 ランキング

◯KDDIから上中下レイヤーまるごとゲット。ランキング、表示レイヤーを抑えられたことに加え、ゲーム間横断の統一仮想通貨発行が可能になるなど、施策が多面的に

可能に。

△Apple,Googleが入り口のプラットフォームを握る。ランキングコントロールはで

きず。Implicit platformという発想へシフト。

ABテスト のやりやすさ

◯ガラケー時代は特に強力。スマホシフト以後、アップデートのタイミングでのみ

データ取得可能。

△海外進出時(2010)にはすでに、スマホシフトが相当程度まで完了。ネイティ

ヴ・アプリでは苦戦。

その他 ◯KDDI提携を通じて、芸能人コンテンツをGree内に持ち込むことに成功

後発のソーシャルゲーム参入企業はいかにして成長したか?

成長 時期

企業例 コアスキル 重要人材

第一期 00年代 後半

DeNA、

gree

プラットフォームレイヤーのコント

ロール。

ABテスト等のデータサイエンティスト

第二期 10年 前後

グループス、

クルーズ など

駆け引き構造の複雑なカード型ゲー

ムの提供

ゲーム内の駆け引き構造などの作り込み

の構築

第三期 12年 以後

ガンホー、

アカツキ など

UIデザインを含めたゲーム全体のデ

ザイン

UIデザイン等含めた作品構成力。ABテスト等の重要性は相

対的に低下

事例:アカツキ

• ABテストへの投資はあまり行えていなかった。

• 2011年〜2012年前半のガラケー期の参入では、振るわず。

• 2012年末から、UIを中心としたゲームデザインにこだわった、スマホタイトル『サンザントメモリーズ』でヒットをつかむ。

ネットワーク外部性のリセットは なぜ起こったか

1. ガラケーからスマホへの以降タイミングで、携帯電話にインストールしているゲームが変化

2. ゲームという商品の性質として満足度が一定程度まで上昇したのち、反転(飽きる)性質が一般的。※いわゆる「フロー体験」と「飽き」という現象は連続的な現象

3. 直接的ネットワーク外部性の負の効果?(いわゆる「SNS疲れ」など)

4. MMOなどと比べると、ソーシャルゲームのコミュニケーション構造にはロックイン効果が薄い?(コミュニケーションの相手が誰であってもあまり問題ない。)

まとめ

競争要因 影響力低下要因 新たな競争力 のポイント

ネットワーク外部性 スマホシフト、ロックイン効果の薄さ?

再度のユーザー数を獲得

データ分析フローへの投資

ネイティヴ・アプリへのシフトにより、ABテストの効果が相対的に低下。(Hagiu,Kotosaka,2013)

基礎となるアーキテクチャ(ゲームデザイン)を再構築