シミュレーション・机上訓練を 取り入れた ... · 2 目的...

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1 シミュレーション・机上訓練を 取り入れたスタート法トリアージ の院内講習会 市立八幡浜総合病院 ○川口久美 宮谷理恵 越智元郎 背景 ◆当院では、 医師数減少のため、時間外災害などで、 トリアージ担当に医師を配置できない 可能性がある。 ◆地震・津波避難などの災害時、院内各所で、 同時にトリアージを行う必要があり得る。 以上より、看護師などがトリアージを実施できる よう訓練が必要と考えられた。

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Page 1: シミュレーション・机上訓練を 取り入れた ... · 2 目的 そこで今回、連絡網運用、治療ゾーン立ち上げ、 搬送などの災害医療基礎訓練の一つとして、

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シミュレーション・机上訓練を取り入れたスタート法トリアージ

の院内講習会

市立八幡浜総合病院○川口久美

宮谷理恵越智元郎

背景◆当院では、

医師数減少のため、時間外災害などで、

トリアージ担当に医師を配置できない

可能性がある。

◆地震・津波避難などの災害時、院内各所で、

同時にトリアージを行う必要があり得る。

以上より、看護師などがトリアージを実施できる

よう訓練が必要と考えられた。

Page 2: シミュレーション・机上訓練を 取り入れた ... · 2 目的 そこで今回、連絡網運用、治療ゾーン立ち上げ、 搬送などの災害医療基礎訓練の一つとして、

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目的

そこで今回、連絡網運用、治療ゾーン立ち上げ、

搬送などの災害医療基礎訓練の一つとして、

スタート法トリアージの習得を 目的とした、

全職種対象の講習会を計画した。

特に今回は、シミュレーション・机上訓練を

取り入れた、スタート法トリアージの講習会を

開催し、終了後に無記名でアンケート調査を

実施したので、報告する。

平成25年度の災害関連研修スケジュールタイトル 日時 内容 備考

緊急連絡網運用訓練

6月5日(水)時間未定

災害を仮定して緊急時の連絡網を実際に運用。日付のみ事前周知。

電話・メールを

別々に運用

ミニ講習会 7月29日(月)17:30~18:30

トリアージ(スタート法)対象:医師・看護師・その他

中央診療棟3F

ミニ講習会 8月30日(金)17:30~18:30

ゾーン立ち上げ 中央診療棟3F

搬送訓練 9月9日(月)17:30~18:30

平地におけるストレッチャー搬送訓練、階段搬送訓練、搬送器具使用の実技など

外科・眼科外来前

災害講演会 9月20日(金)17:30~18:30

「原発直近の自治体病院・初期被ばく医療機関として、当院が考えるべきこと」

講師:元四国電力技師・元原子力発電技術機構、緊急時対策技術開発室長 松野元静岡県中部危機管理局 望月俊明

中央診療棟3F

災害訓練 11月19日(火)17:30~19:00

初めての夜間訓練を予定

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方法

開催日時

●トリアージ・スタート法についての講義●机上訓練タッグ記載訓練・カテゴリー判定訓練

●シミュレーション訓練模擬患者とトリアージ班の2班に分かれて実施

講習会の内容

平成25年7月29日

17時30分~18時45分(1時間15分)

方法

方法

スライドを使用し、災害医療・トリアージに

ついて講義。

①トリアージ講義・5分

多数傷病者を想定し、トリアージセンターでトリアージを開始する場面から、各治療ゾーンへの振り分けまでをスライドで解説・説明。

②スタート法トリアージ講義・5分

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結果

看護師12人(46%)

医師・看護師以外17人(44%)

医師4人(10%)

◆参加者44人の職種

回答率88.6%、39人から回答。

3枚複写①災害現場用②搬送機関用③収容医療機関

ミシン目

八幡浜 花子 25 ○

○疼痛 腫脹

八幡浜市大平

白浜 次郎

0894-22-3211

右大腿骨骨折疑い

平成24年10月12日18時10分

市立八幡浜総合病院

研修棟3階

Ⅱ(黄色)を残しそれより下をもぎる!!

市立八幡浜総合病院

✂もぎる

地震発生時に階段から転落した。歩行不能。

方法練習用に白黒印刷して準備した

トリアージタッグを使用。

③トリアージタッグ記載練習・5分

トリアージタッグについて解説し記載方法を説明後、進行係が想定内容を読み上げる。

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八幡浜 花子 25 ○

疼痛 腫脹

八幡浜市大平

白浜 次郎

0894223211

右大腿骨骨折疑い

24。7.29.16時10分

研修棟3階

市立病院

✂もぎる

地震発生時に階段から転落した。歩行不能。

結果トリアージタッグ記載練習

トリアージタッグについて解説し記載方法を説明後、進行係が想定内容を読み上げる。タッグに記入する。

①傷病名や観察事項は、医師・看護師以外の参加者は、すぐに、記載することができず、空欄が目立った。

②班メンバーは、職種を混ぜて構成したため、職種により記載がスムーズにできないことがあり、理解度にバラツキがあるとうかがわれた。

参加者が、順に症例カードを読み上げ、分かった時点でトリアージカテゴリ―を宣言する。

指導者は、参加者が宣言したトリアージカテゴリーが正答かどうか他の参加者に問いかけ、指導者資料の☆印のキーワードを説明する。

参加者用症例カード

指導者用症例カード

方法

1)トリアージ訓練6~8人の班で1人当たり2症例を

目標に、ローテーションした。

④カテゴリー判定・机上訓練・15分

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参加者が、順に症例カードを読み上げ、分かった時点でトリアージカテゴリ―を宣言する。

指導者は、参加者が宣言したトリアージカテゴリーが正答かどうか他の参加者に問いかけ、指導者資料の☆印のキーワードを説明する。

参加者用症例カード

指導者用症例カード

結果

1)トリアージ訓練

カテゴリー判定・机上訓練

6~8人の班で1人当たり2症例を目標に、

ローテーションした。

①カテゴリーの宣言は、スタート法のフローチャートを確認しながら実施したため、スムーズに、おこなうことができた。

②職種に関係なく、ほぼ正答した。

*全部の班で、2順以上(1人2症例)実施ができた。

記載できたらトリアージする参加者がトリアージカテゴリーを宣言する。

指導者が解説を加え、また、タッグの記載状況をチェックし、指導。

方法

1班1症例を実施

指導者が症例を読み上げ、参加者は訓練用トリアージタッグに記載していく。

2)トリアージタッグ記載訓練

④カテゴリー判定・机上訓練・15分

参加者用症例カード

指導者用症例カード

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記載できたらトリアージする参加者がトリアージカテゴリーを宣言する。

指導者が解説を加え、また、タッグの記載状況をチェックし、指導。

結果指導者が症例を読み上げ、参加者は訓練用トリアージタッグに記載していく。

カテゴリー判定・机上訓練

2)トリアージタッグ記載訓練参加者用症例カード

指導者用症例カード

①慎重に記載する参加者が多く、記載を終えるまでの時間が長くなった。

②医師・看護師は2症例を実施。

③それ以外の職種の参加者は、医療用語などに関する事項で、記載に時間がかかり、1症例を実施した。

方法

◆傷病者役とトリアージ役に分かれ、トリアージを実施。

◆傷病者役は、設定内容を演技。

◆トリアージ役は

2人1組で1人の傷病者30秒を目標に実施。

◆スタッフが搬送班を担当。

⑤シミュレーション訓練-前後半20分ずつ

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傷病者役

1)指導者が傷病者役に症例カードを手渡す。

2)CRTの秒数シールを爪に貼りつける。

3)呼吸・意識障害は演技するように指導。

2秒

4)トリアージ班には症例カードを見せないよう指導。

5)トリアージ後、タッグを装着されたら、スタッフ(搬送班)の指示に従って、治療ゾーンに移動。

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トリアージ役

2)トリアージ実施者と補助者を決定。

1)リーダーを決定。他のメンバーは、2人1組になる。

3)意識のない・緊急度の高い傷病者からトリアージ開始。

4)タッグ装着後、搬送班を呼び、傷病者を治療ゾーンに搬送。搬送終了した傷病者の情報をリーダー(本部)に報告。

5)リーダーの指示で、次傷病者のトリアージを実施する。

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★トリアージ開始時に傷病者に声をかけ、歩行可能者を緑ゾーンへ移動させる。

リーダーに、以下の4点の手順を説明。トリアージ役

★意識がある傷病者に手を挙げてもらう。

★メンバーに、トリアージ開始の指示を出す。

★本部の役割を担い、トリアージ終了した傷病者の人数をホワイトボードに書き出す。

結果

傷病者役とトリアージ役に分かれトリアージを実施。

傷病者役は、設定内容を演技。

トリアージ役は2人1組で1人の

傷病者30秒を目標に実施。

スタッフが搬送班を担当。シミュレーション訓練

①意識のある傷病者からトリアージをおこなったり、意識や呼吸の確認を忘れた参加者があった。

②全参加者44人。トリアージ役の10組が15分で傷病者28人を振り分けた。③時間・トリアージカテゴリー・傷病名の記載漏れがあった。

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結果◆スタート法を知っていたか?

知らなかった13人(33.3%)

少し知っていた6人(15.4%)

知っていた20人(51.3%)

職種

知っていた

少し知っていた

知らなかった

合計

医師 4人(100%)

0人(0%)

0人(0%)

4人(100%)

看護師 10人(55.5%)

3人(16.7%)

5人(27.8%)

18人(100%)

その他 6人(35.2%)

3人(17.6%)

7人(41.2%)

17人(100%)

回答率 88.6%(39人から回答あり)

結果

◆タッグに記載した経験はあるか?

経験なし22人(56.4%)

2回以上あり12人(30.8%)

1回あり5人(13%)

◆タッグの記載法について、理解できたか?

できなかった0人(0%)

まずまず理解できた22人(56.4%)

*アンケートには受講者88.6%(39人)が回答。

よく理解できた

17人(43.6%)

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結果

◆時間について

短い0人(0%)

ちょうどよい20人(51.3%)

長い19人(48.7%)

◆内容の量について

少ない0人(0%) 多い

2人(5.1%)

ちょうどよい37人(94.9%)

*アンケートには受講者88.6%(39人)が回答。

考察

1)タッグ記載練習は1回のみで、習得度が低かった。

その結果、シミュレーションでは記載漏れが目立った。

次回はタッグ記載の練習時間を増やしたい。

2)カテゴリー判定訓練では、直前にフローチャートを

確認して実施したため、正答が多かった。

トリアージの流れは十分に体験できたと考える。

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結論

シミュレーション・机上訓練を取り入れた講習会は、

参加者が実際にトリアージを体験することができ、

トリアージ技術の習得だけでなく、

緊急度・優先度の判断や災害時のトリアージの意義

についても実感できる機会となった。

今回の結果を生かし、講習会を継続して行きたい。

講習会風景(平成25年7月29日)