マイクロクレジットが及ぼす インフォーマルクレジット場に 対 … ·...

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1 平成 23 年度卒業論文 マイクロクレジットが及ぼす インフォーマルクレジット市場に 対する影響の調査 東京外国語大学 外国語学部 ロシア・東欧過程 ロシア語専攻 6708622 串田裕梨

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平成 23 年度卒業論文

マイクロクレジットが及ぼす

インフォーマルクレジット市場に

対する影響の調査

東京外国語大学 外国語学部

ロシア・東欧過程 ロシア語専攻

6708622 串田裕梨

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目次

略語一覧 ................................................................................................................... 5

はじめに ................................................................................................................... 6

1.研究の背景 ......................................................................................................... 6

2.研究の対象 ......................................................................................................... 9

3.論文構成 ............................................................................................................ 9

第 1 章 アフリカにおける融資サービス ................................................................. 11

1-1 南アフリカについて ...................................................................................... 11

1-2 銀行へのアクセス状況 .................................................................................. 11

1-3 雇用について ................................................................................................ 13

1-4 零細事業者の融資利用について ..................................................................... 15

1-5 南アフリカの人々の融資への需要 ................................................................. 16

第 2 章インフォーマルクレジットについて .............................................................. 18

2-1 インフォーマルクレジットとは ..................................................................... 18

2-2 インフォーマルクレジットの分類 ................................................................. 18

2-3 文献における「インフォーマルクレジット」の留意点 ................................... 20

2-4 マイクロクレジットについて ........................................................................ 21

第 4 章 分析 .......................................................................................................... 25

4-1 南アフリカにおけるマイクロクレジットの利用の変化 ................................... 25

4-2 南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用の変化 ......................... 28

4-3 内訳でみたインフォーマルクレジットの利用の変化 ...................................... 29

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4- 4 インフォーマルクレジット利用率とマイクロクレジット利用者数の関連 ....... 31

第 5 章 結論 .......................................................................................................... 35

付録 1 ..................................................................................................................... 37

銀行 ( Formal bank / Bank) ............................................................................ 37

その他フォーマル機関 (Formal other) ............................................................. 37

インフォーマル機関(Informal) ......................................................................... 37

Banked ........................................................................................................... 38

Formally included ........................................................................................... 38

Informally served ............................................................................................ 38

Financially excluded ....................................................................................... 38

付録 2 ..................................................................................................................... 39

difference in difference 分析について .................................................................. 39

in difference 分析の留意点 .................................................................................. 41

付録 3 ..................................................................................................................... 42

参考文献 ................................................................................................................. 44

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図目次

図 1 南アフリカにおける金融サービスのカテゴリー別の利用状況 (出典:

FinScope South Africa 2010) .................................................................... 13

図 2 アフリカ諸国にカテゴリー別利用状況(FinScope 2009) .......................... 13

図 3 零細事業のタイプ .................................................................................. 14

図 4 南アフリカにおける零細事業者の融資利用率(出典:FinScope South Africa

2010 より筆者作成) ................................................................................. 15

図 5 融資を受けている零細事業者の融資を受ける目的................................... 16

図 6 南アフリカの人々が融資を受ける理由 TOP10 (出典:FinScope South

Africa 2010).............................................................................................. 17

図 7 アフリカ諸国の ROSCAs (出典:Isabelle et al(2009)より筆者作成) . 20

図 8 ZA における MFI の総資産(米ドル) (出典:MixMarket ZA 2003~2009 よ

り筆者作成) ............................................................................................ 26

図 9 ZA における MC の現在の利用者数(人)(出典: MixMarket ZA 2003~2009

より筆者作成) ......................................................................................... 26

図 10 金融サービスのアクセス (FinScope South Africa 2006, 2010 より筆者

作成)....................................................................................................... 28

図 11 南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用率の変化(FinScope

South Africa 2004~2010 より筆者作成) .................................................. 29

図 12 南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用内訳の変化(FinScope

South Africa 2004~2010 より筆者作成) .................................................. 30

図 13 南アフリカのみの、IC 利用率と MC 利用者数...................................... 33

図 14 南アフリカと他 4 カ国を含んだ、IC 利用率と MC 利用者数 ................. 34

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図 15 金融サービスのプロバイダーの定義 (出典:FinScope South Africa2010

を参考に筆者作成) .................................................................................. 37

図 16 金融サービスの利用が複数利用されていることを表す図 (Finscope2009

より筆者作成) ......................................................................................... 38

略語一覧

MC:マイクロクレジット

MFI:マイクロファイナンス機関

ROSCA:回転型貯蓄信用講

ZA:南アフリカ

IC:インフォーマルクレジット

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はじめに

1.研究の背景

途上国では、貧困層の多くが穀物や果物の卸売・手工品等を売る零細事業に従事してい

る。零細事業を立ち上げる際には、必要な商品や資材を購入する必要がある。しかしなが

ら、貧困者は十分な資金を持っていないために、これらの商品や資材を購入するためには

資金を調達する必要がある。また、事業を拡大する場合にも、資金が必要となる。したが

って、事業を収益性のあるものとするためには、事業立上時および事業実行時において第

三者から適切な融資を受けることが重要となる。しかしながら、担保や身分証明証の不所

持・低収入・所得の不安定さなどが要因となり、貧困者は銀行の提供する金融サービスへ

のアクセスが制限されることがほとんどである。したがって、貧困者は非正規融資である

インフォーマルクレジットに資金調達を頼らざるを得ない。インフォーマルクレジットに

よる融資は高利子であることが多く、また返済は翌日など返済期間が短く、貧困者にとっ

て有利な融資ではない。貧困者の所得の大半は、元金と利子の返済に適用されるため、貧

困者は再びインフォーマルクレジットに資金調達を求めることとなる。このように借金を

繰り返す状況は、貧困者がぎりぎりの生活レベルから抜け出せない悪循環を生み出し、仕

事を始めたり、貯蓄や資産を増やしたりすることを困難にしている1。その結果として貧困

層の稼得能力は低くなり、貧困からの脱出を困難としている。

このような現状を解決するために、1970 年代からムハマド・ユヌス2によってマイクロク

レジットという融資方法が採られるようになった。マイクロクレジットとは、貧困層や低

所得層向けの尐額融資のことであり、担保や身分証明証を要求される度合が銀行による融

資のものと比較すると厳しくない。したがって、銀行からは融資の対象にならない貧困者

でも、金融サービスへのアクセスが容易となる利点がある。また利子はインフォーマルク

1 Coleman(1999) p105-106

2 ムハマド・ユヌスは、マイクロクレジットの創始者であり、バングラデシュにあるマ

イクロファイナンス機関であるグラミン銀行の元総裁である。2006 年にはマイクロク

レジットの事業が評価され、ノーベル平和賞を受賞している。

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レジットのものよりも低いため、貧困層の稼得能力の向上が見込まれ貧困からの脱出に対

し有効な手法として注目されている3。

実際に、ムハマド・ユヌスがバングラデシュのジョブラ村において、竹椅子を作って売

っていた女性たちに低利子で尐額の資金を貸し付けた。彼女らは、銀行の金融サービスに

アクセスできず、仲売人からの高利子なインフォーマルクレジットによって融資を受けて

いた。今まで彼女らは、借金と利子を差し引かれて、ほとんどただ同然で仲売人に商品を

引きとられ、手元に資金が残らず、再び借金をしなければ、材料を手に入れられなかった。

しかし、ムハマド・ユヌスの融資によって、自ら市場で商品を売ることで、収益をあげ、

きちんとお金を返済しつつ、貯蓄を増やすことができた。 そして同時に、インフォーマル

クレジットを借りていた時に陥っていた、借金の連鎖からも抜け出すことができた。この

実験によって、ユヌスはマイクロクレジットの貧困削減における効果を確信した。そして、

1970 年代初頭、バングラデシュにグラミン銀行を設立し、マイクロクレジット事業を成功

させた。

池見(2004)は、「仲売人兹高利貸しとして商品を買い叩いていた主体を排除し、代わ

りに融資の機会を与え製造した商品は自分で市場で売るという形態に移行したため、農村

女性が作った製品の付加価値がそっくり本人の手元に残り、借入金を返済してもなお所得

が上昇した」、という実証によってマイクロクレジット事業が、成功とみなされたとして

いる。さらに池見(2004)はこのことが、「インフォーマルな高利貸しなど、在来金融の

持つ強固な関係性を捨て、独立的に資金調達ができるのなら、農村女性でも自らが持つス

キルを生かして生計を立てることができる」ことを示唆していると言っている。つまり、

マイクロクレジットから資金調達が可能になることで、人々が、在来金融であるインフォ

ーマルクレジットからの融資に対する依存がなくなり、結果として貧困脱却に寄与すると

いうことである。

マイクロクレジットは、このようにして貧困削減に寄与し得るものであるとして、グラ

ミン銀行から始まった。現在では、マイクロファイナンス機関4(MFI)は世界中で増加し、

4 マイクロファイナンスとは、貧困者向けの尐額の金融サービスの総称である。従って、マ

イクロクレジットは、マイクロファイナンスの一部である。マイクロファイナンスには、

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マイクロクレジットの利用者も増加した。しかし、マイクロクレジットが本当に、ムハマ

ド・ユヌスの筋書き通り、人々とインフォーマルクレジットとの関係を断ち、貧困削減に

貢献しているのかどうかには疑問もある。

次のような研究では、マイクロクレジットが必ずしも、貧困削減に有効な効果を上げて

いるとは言えない結果を示唆している。Coleman(1999)のタイのデータを使った研究では、

マイクロクレジットが資産の増加に貢献してないという結果を出している。さらに研究で

は、マイクロクレジットを借りる人が、インフォーマルクレジットも借りる確率が高いと

いう証拠を見つけている。マイクロクレジットの返済のために一時的にインフォーマルク

レジットから借金をし、その返済のために、マイクロクレジットをさらに利用するといっ

たことを示唆する結果である。マイクロクレジットが資産を増大させないという結果には、

この示唆されたことと関連性があるかもしれないが、研究ではそのことについて言及して

いない。また、Aryeetey(2008)は、マイクロクレジットの利用が著しく伸びているにも

関わらず、いまだにインフォーマルクレジットの利用率はほとんど変わっていないと指摘

している。このことの原因としては、借り手が複数の貸し手から融資を受けており、マイ

クロクレジットもアクセス可能な融資機関の一つに過ぎないために、結果的に利用率が変

わっていないことや、マイクロクレジットをインフォーマルクレジットの融資のための資

金調達として、インフォーマルクレジットの融資者が多く利用しているということなどが

示唆されている。

インフォーマルクレジットを受けている貧困層の人々は、インフォーマルクレジットに

頼る生活が、貧困脱却を阻んでいると自覚している人が多くいる。5それならば、インフォ

ーマルクレジットよりも稼得能力の向上を見込めるマイクロクレジットへのアクセスが可

能になることで、インフォーマルクレジットの利用は減尐し、代替的に、マイクロクレジ

ットの利用は増加すると考えられる。実際にマイクロクレジットの利用は、マイクロファ

イナンス機関の増加にともなって、増えている。貧困者にとって、インフォーマルクレジ

ットが一般的であった状況の中で、新たに、貧困者向けの融資としてマイクロクレジット

が登場することで、人々が今まで利用していたインフォーマルクレジットの利用に何らか

マイクロクレジットの他に、保険サービスを行うマイクロインシュランスや、貯蓄サービ

スを行うマイクロセービングなどがある。

5 Areetey(2008) p,5

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の影響を及ぼしているのだろうか。このことが貧困脱却と関係があるのだろうか。

Coleman(1999)や Areetey(2008)の研究のように、マイクロクレジットとインフォーマ

ルクレジットに関して言及している研究はいくつかある。本研究では、マイクロクレジッ

トの利用の増加に伴って、インフォーマルクレジットの利用状況がどのように変化してい

るのかを、南アフリカのデータから明らかにする。南アフリカのデータを用いて分析する

ことを通してマイクロクレジットが人々の生活の向上に役立っているのかを考察し、これ

まで貧困脱却を阻んでいた一つの原因であると考えられるインフォーマルクレジットの利

用状況を変えたのかどうかを分析する。この分析から、南アフリカの国の特性を考慮しつ

つ、最終的にはアフリカ全体の傾向を考察したい。

2.研究の対象

本研究では南アフリカを対象として研究を行う。理由は、FinMark Trust から、南アフ

リカにおける、インフォーマルクレジットの利用を含む人々の金融行動の時系列データを

見つけることができたからである。インフォーマルクレジットに関するデータは、非常に

尐ない。あったとしても、個々の研究者が自らデータを集めたものしか見つからず、時系

列データもほとんどない。マイクロクレジットに関するデータは、Mix Market からのも

のを使って分析する。本研究では、南アフリカにおけるマイクロクレジットの利用が、イ

ンフォーマルクレジットの利用に変化を及ぼしているのか検討し、南アフリカの人々の貧

困脱却や、生活の向上に貢献しているのか、またはしていないのかを検証する。

インフォーマルクレジットの利用率についてのデータは FinMark Trust が出している

FinScope South Africa 2004~2009 年を用いる。マイクロクレジットについてのデータは

Mix Market のデータから、南アフリカにあるマイクロファイナンス機関の 2004 年から

2010 年の現利用者数のデータを利用する。

3.論文構成

第 1 章は、南アフリカの人々の融資サービスへのアクセス状況を詳述する。まず、南ア

フリカが、どのような国であるか概観する。その上で、人々の銀行へのアクセス状況を示

す。次に、南アフリカの人々の、融資サービスに対する需要について検証する。南アフリ

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カでは、零細事業によって生計を立てている割合が高い。どのくらいの人々が零細事業で

収入を得ているのか、雇用の在り方について見ていき、そのような雇用によって生計を立

てている人々が、どれほど融資を必要としており、またどのプロバイダーから融資を得て

いるのかを見る。また、一般的に融資は、どのような理由で、どのくらい人々に必要とさ

れているのかということも合わせて見ていく。

第 2 章は、インフォーマルクレジットとマイクロクレジットについて詳しく見ていく。

南アフリカにおいて、銀行の代わりに融資サービスへの需要を満たしてきたインフォーマ

ルクレジットについて検証する。第 1 章で、南アフリカにおいて、融資サービスへの需要

があるにもかかわらず、それが十分に満たされていないことを確認した。次に、マイクロ

クレジットに関して詳しく見ていく。マイクロクレジットのメリット・デメリットを合わ

せて性質を見ていく。

第 3 章は、マイクロクレジットの利用の推移や、インフォーマルクレジットの利用の推

移を見ていき、マイクロクレジットが、インフォーマルクレジットの利用率に影響を与え

たかどうかを分析する。

第 4 章は、マイクロクレジットの利用がインフォーマルクレジットに影響したのかどう

かの結論を述べる。分析から、南アフリカの国の特性を考慮しつつ、最終的にはアフリカ

全体の傾向を考察したい。南アフリカのデータを用いて分析することを通してマイクロク

レジットが人々の生活の向上に役立っているのかを考察する。

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第 1 章 アフリカにおける融資サービス

アフリカの人々は、融資サービスを必要としている。しかしながら、アフリカの多くの

国では、銀行による金融サービスへのアクセスは制限されている。第 1 章では、まず、銀

行への金融サービスへのアクセス状況を詳しく見ていく。次に、南アフリカの人々の、融

資サービスに対する需要について検証する。マイクロクレジットは、事業設立や事業拡大

のための資金として融資することで、貧困者に雇用の機会を与え、収入を創出し、貧困緩

和に貢献するとして、始められた。南アフリカでは、このように想定されたマイクロクレ

ジットの借り手となる零細事業者の割合が高い。どのくらいの人々が零細事業で収入を得

ているのか、雇用の在り方について見ていき、そのような雇用によって生計を立てている

人々が、どれほど融資を必要としており、またどのプロバイダーから融資を得ているのか

を見る。

1-1 南アフリカについて

まず、南アフリカの経済状況について概観する。アフリカ大陸の南端に位置する南アフ

リカは、アフリカ諸国の中で、経済的に最も進んだ国である。特に 1994 年ごろから、急速

な経済成長を果たし、2010 年の GDP は 363,703,902,727 米ドル6に及ぶ。経済成長を遂げ

ている一方で、国内では、アパルトヘイト政策や、高い非雇用率の改善されない政治、広

範囲に及ぶ貧困や犯罪の増加によって、社会経済において、人々の間に大きな不平等が、

蔓延している状態でもある。非雇用者が非常に多いことや、様々な社会的課題の積み重な

っているため、経済のインフォーマルセクターは非常に発達し、それが南アフリカの経済

発展につながっている。7

1-2 銀行へのアクセス状況

途上国やアフリカでは、銀行へアクセスできる人々は、主に中所得者層や高所得者層で

あり、農村部や都市部の低所得者層は、銀行へのアクセスがかなり制限されている。その

原因は、まず、融資において、貧困者は、担保になるものや身分証明書を持っていないこ

とが挙げられる。そのために、貧困者は信用貸しするに値しないとみなされて、融資の審

査を通ることができない。第二に、銀行の支店や ATM が近所にないために、交通費や時間

6 世界銀行のデータより引用

7 http://www.mbendi.com/land/af/sa/p0005.htm#15 参照(2012/1/20)

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が多くかかる。銀行のサービスを利用するまでにかかる取引コストが、貧困者にとって負

担となっている。第三に、貧困者の必要とする融資額が銀行の最低融資額よりも尐額過ぎ

て、融資を受けられない。第四に、貧困者は収入をすぐに使ってしまいがちであり、銀行

は返済期間が比較的長いために利用しにくい。また、銀行の預金サービスにおいては、口

座を開設するための手数料や、最低いくらか入れておかなくてはいけない預金が障害にな

っている。主にこれらの理由によって、貧困者は銀行の金融サービスにアクセスできない

でいる。

しかし、銀行サービスを利用したいと考える人は多い。南アフリカの 52%の人々は、銀

行が最も理想的な金融機関だと考えている8。同様に、融資サービスにおいても、47%の人々

が、銀行融資を一番良い融資だと考えている9。家具の裏やカーペットの下などに現金隠す

こともできるが、質素な貧困者の家には隠し場所となるようなところはほとんどなく盗難

に合う可能性が高い。また、家族や友人から無心されたり、アルコールやギャンブル好き

の夫がいたりすると、手元に余剰の現金を置いておくことは難しい。そのために、病気や

災害等の急な出費にも対応しにくい。このように、貧困者ほど、預金や融資サービスが必

要であるにもかかわらず、アクセスできていないという現状がある。

8 FinScope SouthAfrica2004 より

口座を持つことができる 16 歳以上の 2988 人を対象とした「Who is the ideal financial

provider?」のアンケート結果。全体のうち、44%は「わからない」という回答。

9 同上 48%は「わからない」と回答。

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図 1 南アフリカにおける金融サービスのカテゴリー別の利用状況 (出典:FinScope South Africa 2010)

南アフリカは、62.5%の人が銀行にアクセスできている。これは他のアフリカ諸国と比

べると、とても多いほうである。南アフリカは、アフリカ最大の経済大国であり、中高

所得階層10の国であるため、比較的銀行にアクセスできる人が多いのだと考えられる。

図 2 アフリカ諸国にカテゴリー別利用状況(FinScope 2009)

1-3 雇用について

国によって差はあるがアフリカ諸国や南アフリカでは、多くの人が、失業中やフォーマ

ルな企業に勤められないという理由から、他に収入源のないために、インフォーマル経済

の中で働いている。インフォーマル経済の中での事業は、法的な登録や許可を得ないで行

われており、税金の支払いや政府からの監督もなく、基本的な社会的保護や法的保護もな

10 一人あたりの GNI が 3,976 $~12,275 $ 世界銀行より引用

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い。アフリカでは、フォーマル企業での雇用口は尐なく、雇用自体も安定していない。ま

た、公式にフォーマルな商売をするために必要となる権利や商売を行う土地利用の認可を

されなくてはいけないが、そのための手続きには、資金や時間や手間が膨大にかかる。そ

のため、誰でも物を売るなどして、簡単に商売を始められ、すぐに収入を得られる、イン

フォーマル労働に流れる人が多い。このようなインフォーマル経済の中での事業は、たい

てい零細事業である。これには、一人で事業を行う自己雇用や、家族の尐数のメンバーで

行う事業、一人か二人のみを雇って行う事業がある。事業のタイプには図 3 のように、主

に小売業とサービス業がある。国際労働機関(ILO)の統計調査11によると、ウガンダでは

72.7%(2010 年)、ザンビアでは 76.3%(2008 年)、マリでは 83.2%(2004 年)、南アフ

リカでは 32.7%(2010 年)、リベリアでは 60.9%(2020 年)、レソトでは 70.7%(2008 年)

が、インフォーマル経済で働いている。アフリカ最大の経済大国である、南アフリカは比

較的尐ないが、アフリカは全体的にインフォーマル経済で働いている人が多い。

図 3 零細事業のタイプ

11 ILO(2011)の表 1 より、Persons in informal employment outside the informal

sector と、Persons employed in the informal sector の項目を合わせた、インフォーマ

ル経済で働いている非農業従事者の全体の割合の数値。

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1-4 零細事業者の融資利用について

図 4 南アフリカにおける零細事業者の融資利用率(出典:FinScope South Africa 2010 より筆者作成)

図 4 は南アフリカにおける、零細事業者の融資の

利用率を表したものである。これを見ると、南アフリ

カの零細事業者の 40%の人は、融資を必要とし、利

用している。図 5 は融資を受ける目的別の割合であ

る。これを見ると、事業の拡大や仕事で必要となる日

用品や、事業設備のアップグレードなどに必要な資金

など、事業に関する目的で融資を受ける人がほとんど

である。事業の生産性を上げるために融資を必要とし、

利用している人が多くいるということがわかる。しか

し、図 4 をみると、融資を利用しない人が 60%おり、自己資産に頼っている人の割合も多

い。また、融資を受けている人のうち、「いつも融資を受けている」という人が 10%いる。

さらに、図 5 を見ると、融資を受けている零細事業家の小売業者のうち 1.9%と、融資を受

けている零細事業家のサービス業者のうち 5.2%が、借金の返済のために融資を受けている。

このことから、融資を繰り返さないと事業が継続出来なかったり、融資の返済のために融

資を受けていたりと、融資が必ずしも利用者の生産性の向上に貢献していないということ

が考えられる。

毎回利用 10%

時々利用 30% 利用しない 60%

30%

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図 5 融資を受けている零細事業者の融資を受ける目的

1-5 南アフリカの人々の融資への需要

融資の需要があるのは、零細事業家のみではない。アフリカの人々は、常に資金がない

状態である。南アフリカの人々は、銀行へのアクセスが制限されているため、貯蓄もイン

フォーマルなやり方で行うがリスクが高い。よくある方法として、カーペットの下や家具

に隠して貯蓄を行うやり方があるが、貧困者の家は質素であるため、隠し場所などほとん

どない。そのために、盗まれることや、ギャンブルやアルコール好きの夫がいる場合は、

それらの購入に勝手に使われてしまうことがある。また、地域の祭事などの社会とのつな

がりのための行事に対する出費は、見栄から出費額を気にせずに資金を使ってしまうとい

う傾向もある12。このように、貯蓄がしにくく、現金を持ちにくい状況では、日常生活にお

12公益財団法人 国際通貨研究所『自制心と貯蓄~先進国と途上国の違いと接点~』

http://www.iima.or.jp/topics/2011/data/198.pdf (2011/12/21 閲覧) 参照

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ける必要な資金の一時的不足や、病気や災害等に急な出費に対するリスクに対して脆弱に

なりがちである。

図 6 は南アフリカの人々が資金を借りる理由の上位 10 である。

融資サービスは零細事業家の需要だけに限定されず、一般の人々の、日常生活における

リスクへの対処をスムーズにする役割も果たしている。融資は、貧困者にこそ必要なサー

ビスであるといえる。

図 6 南アフリカの人々が融資を受ける理由 TOP10 (出典:FinScope South Africa 2010)

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第 2 章インフォーマルクレジットについて

第 1 章では、融資サービスの需要が多いにもかかわらず、貧困者ほど、銀行にアクセス

できないアフリカの現状を確認し、南アフリカの融資への需要について見てきた。銀行に

アクセス出来ない貧困者の、金融サービスに対する需要は、インフォーマルファイナンス

によって埋められてきたことを確認した。インフォーマルファイナンスは、銀行とは対照

的に、非常にアクセスしやすいために、その市場は急速に成長してきた。第 2 章では、イ

ンフォーマルクレジットに関して、その市場の拡大と需要について検証する。

2-1 インフォーマルクレジットとは

途上国の人々は銀行へのアクセスが制限されているため、彼らの融資サービスへの需要

を満たしてきたのはインフォーマルクレジットである。インフォーマルクレジットは、法

的な登録のなされていないプロバイダーによる、金融サービスのことである。この特徴と

しては、手続きが簡単であることや、物理的な距離が短いことからアクセスしやすいこと、

利子率や担保の要求がプロバイダーによって大きく幅があることなどが挙げられる。

2-2 インフォーマルクレジットの分類

Isabele et.al(2009)によると、インフォーマルクレジットには、個人あるいは集団によ

る様々な形態があるとして、以下のようにインフォーマルクレジットを 3 種類に分類して

いる。

まず、個人によるインフォーマルクレジットには大きく 2 種類ある。1 つ目は、家族や親

族、友達などの近しい間柄同士での、非商業的な融資がある。これは、途上国や、アフリ

カの国々において、幅広く行われているものである。家族や友達同士の間では、連帯意識

や相互依存の意識があるために、それが信用となる。また、一方が固定的に貸し手になる

のではなく、状況によって借り手になったり貸し手になったりして、交互に融資がなされ

ている。この種類の融資では、利子をほとんど取らずに、口約束で貸し借りが行われるこ

とがほとんどである。

2 つ目は、まとまった現金がすぐ使える地位や特権を持っている個人による商業的な融資

である。Isabelle et.al(2009)は、このようなインフォーマルクレジットには、個人で専門

的に融資を行うマネーレンダーと呼ばれる金貸し、質屋、貸付けを行なっている小売店の

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19

経営者による融資も含むとし、また、収穫物を先に渡す代わりにトレーダーから融資を受

けることや、肉体労働者が雇用主から給料を前借りすることもインフォーマルクレジット

であるとしている。Isabelle et. al(2009) は資金をもっている地域のエリートが貸し付ける

理由は、増えすぎた流動性資産を投資したいということと、貸し付けることで自身の社会

的勢力の領域を広げたいと考えているからではと、指摘している。

3 つ目は、地域住民でメンバーを組み、自分たちで運営が行われる融資で、

ROSCAs(Rotating savings and credit associations:回転型貯蓄信用講13)と呼ばれる形態のも

のである。これは、地域住民によってメンバーが構成され、自分たちで資金を循環させて

行う融資と貯蓄である。ROSCAs のメンバーは、まず資金を出しあってまとめて貯蓄し、

その中から無担保で融資を行い、資金を循環させて運営している。地域に根ざしたもので

あるがゆえに、この ROSCAs は持続的な運営を行なっている。返済が出来ない人は、メン

バーから追い出さなくてはいけない。そのため、メンバーの選別が重要になるが、地域内

の隣近所同士では、お互いのことをよく把握できているために、選別もうまくなされてい

る。それでも返済が出来なかった場合は、メンバーからひどく非難されることになる。こ

のプレッシャーは法律よりも強い強制力を持って返済義務を課す役割をしている。細かい

方式や呼び方はそれぞれの地域によって異なるが、この形態のインフォーマルクレジット

は、世界各地に見られる。図 7 ではアフリカの諸国で行われている、ROSCAs をあげてい

る。アフリカ各国でも、ROSCAs は存在し、伝統的なインフォーマルクレジットとして広

く利用されている。

13 経済産業研究所の和訳名を参照

http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/06091201_flash.html 2011/12/19

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20

図 7 アフリカ諸国の ROSCAs (出典:Isabelle et al(2009)より筆者作成)

国名 ROSCAs の名称

ナイジェリア esusu, osusu, oha, adashi

エチオピア Ekub

チャド Pare

コートジボワール diari moni

カメルーン Djanggi

ローデシア Chilemba

南アフリカ chita, chitu, stokfel, mahodisana

エジプト、スーダン sanduk,gameya

2-3 文献における「インフォーマルクレジット」の留意点

Isabelle et .al(2009)では、インフォーマルクレジットを以上のように分類しているが、多

くの文献では、「インフォーマルクレジット」という言葉は、まとまった現金がすぐ使え

る地位や特権を持っている個人による融資を指していることが多い。これは、2 つ目に挙げ

たマネーレンダーなどによる融資である。インフォーマルクレジットが借り手の貧困脱却

を困難にしていると言われているのも、2 つ目に挙げた種類のものである。

IMF(2010)は、「…インフォーマルクレジットの利子率は、平均してフォーマル金融機関

のものよりも高く、利子率の幅は年利 0~200%である」14と述べている。これに比べて、「友

達や家族による融資の利子率は、インフォーマルクレジット市場の中では比較的低15」く、

ROSCAs も組織が運営できる最低限の利子率しかとらない。従って、年利 200%もの利子

率をとるのは、2 つ目に挙げた、マネーレンダーなどの融資である。このようなインフォー

マルクレジットは、支払期日までの期間が非常に短く、翌日に全額の返済を求めることも

ある。(IMF2010)この、インフォーマルクレジットを商売の元手にして収入を得ても、利

益分は高額な利子にあてられ、手元にお金が残らない。利益が出なければ、返済はできな

いため、さらに他のプロバイダーから融資を受け、返済に当てることになる。このような

14 IMF(2010) p.3 より筆者和訳

15 同上

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21

インフォーマルクレジットを仕事の投資に利用しても、貯蓄や資産を貯めることが困難で

あり、生活ぎりぎりのレベルを強いられ、いつまでたっても貧困から脱却できない。

インフォーマルクレジットと一言で言っても、その種類はいくつかあり、ひとまとめに

することはできない。インフォーマルクレジットの利用率に着目するときは、どの種類の

融資を利用しているのかという内訳を見ることが大切である。

これらのように、インフォーマルクレジットは、貧困者にとってよくない融資であるとい

う指摘をされている一方で、Isabelle et.al (2009)では、このような搾取的な高利貸しのよ

うなインフォーマルクレジットの形態は減尐してきているとも指摘している。インフォー

マルクレジットは利子率が高い、といった性質を挙げられしばしば、よくない融資とし誇

張されるが、実際はそのような融資ばかりではない。

2-4 マイクロクレジットについて

マイクロクレジットとは、貧困層向けの尐額融資のことである。1970 年代にムハマド・

ユヌスによって、バングラデシュにグラミン銀行が設立され、マイクロクレジットが始ま

った。当初は融資サービスから始まったが、現在では、貧困者向けの保険(マイクロイン

シュランス)や貯蓄(マイクロセービング)、送金をも含む、幅広い金融サービスが行わ

れるようになってきた。マイクロクレジットは、「マイクロファイナンス」という言葉で

表されることがある。一方で、マイクロクレジットを他の金融サービスと区別するときに、

「マイクロファイナンス」は貧困者向け金融サービスの総称として使われるようになって

きている。本論文では融資に着目しているため、マイクロファイナンスと区別して、特に

マイクロクレジットという言葉を用いる。

マイクロクレジットが始まった発端は、バングラデシュのジョブラ村における、次の

ような出来事である。竹製の腰掛けを作って稼ぎを得ていた農村の女性がいた。女性は、

材料を仕入れるための十分な資金がなく、銀行からの融資を受けることが出来なかったた

め、仲売人からの借金によって、材料を仕入れていた。この仲売人からの借金は、非正規

融資であるインフォーマルクレジットであり、法外な利子を課されていた。そのため、竹

椅子を引き取ってもらう際、借金と利子が差し引かれるため、タダ同然で引き取られ、1 日

1 タカ(約 2.5 円)の収益しか上げることが出来なかった。これでは、翌日からの竹椅子の

材料を得るための十分な資金はたまらないために、借金を繰り返し貧困から抜けだせない

でいた。そこで、ムハマド・ユヌスは、自らのポケットマネーで、10 タカを女性に貸し付

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22

けると、女性は市場で竹椅子を売るようになり、1 日 60 タカ以上の稼ぎを得ることができ

た。さらに、ユヌスは女性と同じようインフォーマルクレジットによる借金に頼って生計

を立てていた他の 42 人にも、合計 1000 タカを貸し付けると、全員手取りを増やすことが

でき、返済をすることもできた16。そして、1970 年代初頭、バングラデシュにグラミン銀

行を設立し、マイクロクレジット事業を開始した。

貧困者は、原料や商品を仕入れ、市場で手工品の販売や、卸売をして生計を立てる。こ

のような零細事業を行う人々は、融資を得る手段としてインフォーマルクレジットしかな

いと、これを元手にして事業を行なって収入を得ても、短期間に高い利子率をつけて返済

するよう要求されるため、貯蓄や資産を貯めることが困難である。創始者であるムハマド・

ユヌスはバングラデシュのジョブラ村において、このような現状をみて、インフォーマル

クレジットよりも低い利子率で尐額の貸付けを行う実験を行い、長い返済期間で、ごく尐

額ずつ返済をさせることで、融資を受けた人々は貯蓄することができた。マイクロクレジ

ットの目的は、銀行による融資サービスにアクセスできず、資金や資産を持たない貧困者

に資金を提供することで、その資金を元に零細事業を行うための短期運転資本とし、雇用

の機会を生み出すことにある17。

マイクロクレジットは、貧困者も融資を受けられ、きちんと返済出来る、画期的な融資

である。貧困者が借りやすい要因として、一つに手続きが簡単であることが挙げられる。

銀行では、手続きに担保や身分証明証の提示し、公的書類を書かなくてはならない。識字

能力の低い者は、書類を書くことができず、この時点で融資の利用から排除されるが、マ

イクロクレジットの場合はその障害をなくしている。公的書類を役所までとりにいくにも、

交通費や時間が必要となり、負担となる。マイクロクレジットの場合は、口頭での約束で

あるため、手続きが簡単でわかりやすい。また、融資の際、担保や身分証明証がいらない

ことも貧困者にとってアクセスしやすい大きな要因に成っている。

また、貧困者に貸す際に、懸念されるであろう貸し倒れの問題に対して、借り手に返済

への拘束力をもたせているのは、グループレンディングという手法である。マイクロクレ

ジットは、個人に融資をするのではなく、借り手をグループにまとめて、融資を行う。ま

16池見 (2004)p.3

17 濱田(2006) p.31

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23

ず、グループのメンバーの一人が融資を受け、その後みんなの前で返済をすると、次の人

が融資を受けることができる。もし返済できなかった場合、グループの他のメンバーたち

が代わりに払わなくてはならない。このような連帯責任制があるため、著しく返済能力の

务る者がいれば、メンバーは同じグループに入れたがらない。メンバーたちは、同じ地域

社会で生活をし、お互いの経済状況をよく把握しているため、返済能力の見込めるものが

自然と選別されやすく、お互いを監視し、返済を行うようピアプレッシャー18をかけること

ができる。また、返済はメンバーの前で行われるため、これらのことから、グループレン

ディングは担保の代わりとなっており、「社会的担保」19と呼ばれている。

また、このグループレンディングは貸し手の取引費用の抑制にもつながる。貸し手側に

とって最もコストが掛かるのは、スクリーニングやインセンティブ、借り手の情報の収集

などの契約執行の諸問題であり、さらに尐額融資で貸付を行うと、一件あたりのこれらの

業務コストが高くなる。しかし、グループレンディングによっていくつかの業務コストが

抑えられる。まず、グループで貸し付けると、借り手の選抜をグループメンバー自身が自

然に行うため、スクリーニング問題が解決される。また、ピアプレッシャーによって、借

り手に返済するようにメンバーが相互で監視することで、インセンティブ問題は解決され

る。20

しかし、マイクロクレジットには問題もある。貸付を回収し、借り手の情報を集めるコ

ストや手間は全くかからないわけではない。さらにマイクロクレジットは尐額の融資であ

るため、一回に返済する額は、返済可能な尐額であっても、最終的に利子率は商業銀行よ

りも高めに設定しなければ、収益をあげ、持続可能に事業をやっていくことが困難である。

実際に、政府やドナーからの補助金に頼っている機関は多くある。しかし、収益が上がら

なければ、そういった補助金も打ち切られる可能性がある21。

18メンバー同士で、返済をするようにプレッシャーをかけることである。メンバーの誰か一

人でも返済を怠ると、次のメンバーが借りられなくなり、連帯責任で他のメンバーが代わ

りに返済しなくてはならないため、お互い返済するように プレッシャーをかけ合うことが

できる。

19ILO(2001) p.9

20 池見(2004)参照

21 http://www.daiwa.jp/impact/column/05.html (2011/12/8) 参照

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24

マイクロクレジットの元々の融資の対象は、マイクロクレジットを元手にして収入を得

る零細事業者であるが、実際はそのような人だけではなく、一時的な貧困による食費や教

育費の不足した人や、病気等の急な出費が必要になった人も借りている。また、マイクロ

クレジットを返済するために、インフォーマルクレジットを受けて、マイクロクレジット

を返済し、そのお金で、インフォーマルクレジットの返済をするといった人も多くいる。

マイクロクレジットは、雇用の機会をあたえることで、貧困緩和を狙った融資である。し

かしながら、借り手にとって、マイクロクレジットは、融資が受けられる機関の一つにす

ぎず、他の融資を受けるのと同じように使われる22。マイクロクレジットを収入の創出のた

めに使うどころか、他の所からの借金の返済のためのその場しのぎに利用し、貧困脱却ど

ころか多重債務に陥ってしまう人もいる23。

マイクロクレジットは、銀行にアクセス出来ない貧困者を対象にしているが、アフリカ

の場合は特に、貧困者の多くが人口密度の低い都市から離れたところに住んでいるため、

このような場所へのサービスの提供は、手間もコストも掛かるという理由で、あまり積極

的に行われず、潜在的な顧客を多く逃しているという指摘がある。また、アクセスしやす

いマイクロクレジットの融資を、インフォーマルクレジットプロバイダーが、貸付業務の

資金調達に利用していると示唆されていることもある24。マイクロクレジットが貧困削減に

寄与しない25という主張もあるが、持続可能に事業を行おうとすることによってマイクロク

レジットが本当に必要としている人に届きにくいということや、借り手のマイクロクレジ

ットの利用行動が一つの原因であるだろう。

22 図 5 に、MC に限らず、南アフリカの人々が融資を受ける際の理由を載せている。

23 Craig et.al(2002)参照

24 同上

25 Coleman(1999)

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25

第 4 章 分析

南アフリカやアフリカ諸国では、融資サービスへの需要があるにもかかわらず、銀行か

らの融資を受けることが困難であるため、マイクロクレジットの登場以前は、人々の融資

を受ける際の手段はインフォーマルクレジットが主であった。そこに、70 年代にマイクロ

クレジットが始まり、アフリカでもマイクロクレジットの利用者が増えてきている。この

章では、マイクロクレジットの利用の推移や、インフォーマルクレジットの利用の推移を

見ていき、マイクロクレジットが、インフォーマルクレジットの利用率に影響を与えたか

どうかを分析する。

4-1 南アフリカにおけるマイクロクレジットの利用の変化

まず、南アフリカのマイクロクレジットの利用の状況を見る。図 8 は南アフリカにおけ

るマイクロファイナンス機関の総資産26の変化を表したもので、図 9 はマイクロファイナン

ス機関の利用者数27の変化を表したものである。

26 MixMarket http://www.mixmarket.org/mfi/country/South%20Africa (2011/12/20 現

在)を参照し、複数ある南アフリカの MFI のそれぞれの総資産を、年ごとで合計してグラフ

に表した。詳しくは、付録 3 に示す。

27 MixMarket(同上) の南アフリカに存在する MFI は複数あるが、各年で、全ての MFI

の利用者数を合計してグラフに表した。詳しくは、付録 3 に示す。

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26

図 8 ZA における MFI の総資産(米ドル) (出典:MixMarket ZA 2003~2009 より筆者作成)

これらを見ると、マイクロクレジットの利用は増加し、マイクロファイナンス機関の資

産も増加していることがわかる。マイクロクレジットの利用率28は、2009 年には 2003 年の

約 26 倍にもなっている。

図 9 ZA における MC の現在の利用者数(人)(出典: MixMarket ZA 2003~2009 より筆者作成)

28 南アフリカのマイクロファイナンス機関は 1 機関を除いてローンのみを扱っている。

0

200,000,000

400,000,000

600,000,000

800,000,000

1,000,000,000

1,200,000,000

1,400,000,000

ZAにおけるMFIの総

資産(米ドル)

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

900,000

1,000,000

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年

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27

図 10 は 2005 年から 2009 年で、南アフリカの人々の金融サービスへのアクセス状況を

表した図である。「Formal bank」29の項目は、銀行へアクセスしている人の割合を示して

いる。この中に含まれる人は、「formal other」30のその他金融機関からのサービスやイン

フォーマルクレジットも利用している可能性がある。「formal other」の項目は、銀行にア

クセスできないが、その他フォーマル機関を利用している人の割合で、インフォーマルク

レジットを同時に利用している可能性もある。「informal」31の項目は、インフォーマルサ

ービスしかアクセスしていない人々の割合を示している。「unbanked」32は、どの金融サ

ービスにもアクセスしていない人の割合である。「informal」の項目を見ると、2005 年と

くらべて、2009 年は増加していることがわかる。その他フォーマル金融であるマイクロク

レジットの利用が増加しているにもかかわらず、「インフォーマルクレジット」の項目が

増加している。マイクロクレジット利用の増加は、今までインフォーマルクレジットしか

利用していない人々がマイクロクレジットを利用するようになったために増加したのでは

ないと考えられる。

また、「formal bank」の割合が増加し、「formal other」の割合が減尐している。この

ことから、今まで、その他フォーマル金融機関しか利用できず、銀行にアクセス出来なか

った人々が減尐し、銀行にアクセスできるようになった割合が増えているということがわ

かる。マイクロクレジットはその他フォーマル金融に分類される。マイクロクレジットに

よって資産を増加できたことで、その他フォーマル機関のみの利用から、銀行へのアクセ

スもできるようになったということが考えられる。

29 付録1を参照

30 同上

31 同上

32 同上

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28

図 10 金融サービスのアクセス (FinScope South Africa 2006, 2010 より筆者作成)

4-2 南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用の変化

南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用の変化を見る。図 11 は 2004 年か

ら 2010年の南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用率の変化を表したもので

ある。マイクロクレジットの利用が増加しているため、インフォーマルクレジットの利用

は減尐するのではないかと始めに考えていたが、図 11 を見ると、南アフリカでは、インフ

ォーマルクレジットの利用は、増加の傾向にある。

47

50

63

60

8

7

3

4

8

9

11

10

37

33

24

26

2005年

2006年

2008年

2009年

Formal-Bank formal other Informal Unbanked

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29

図 11 南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用率の変化(FinScope South Africa 2004~2010

より筆者作成)

4-3 内訳でみたインフォーマルクレジットの利用の変化

図 12 では 2004 年から 2010 年の南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用

の内訳の変化を表している。第 3 章で、インフォーマルクレジットの利用率を見る際は、

どのプロバイダーからの融資によるものかという内訳を見ることが大切であると筆者は述

べた。よって、図 12 では、インフォーマルクレジットのプロバイダーの別に利用率の変化

を示した。

グラフを見ると、「家族や友達」による融資が、インフォーマルクレジットの利用の中

で最も多い。図 11 のグラフの形に重なるように変化しているため、インフォーマルクレジ

ットの利用率の変化に最も影響していると言える。

高利子で商業目的のインフォーマルクレジットは micro lender、雇用主、mashoniza/

loan/ shark33、local spaza (食品雑貨店)である。これらの利用率の変化を見ると、micro

33 mashoniza/ loan/ shark FinScope の説明で、South Africa2004 年によると、

“Highest association of all FSPs[financial service providers] with respect to interest

charges being too high”

6 6 7

8

13 14

12

0

2

4

6

8

10

12

14

16

informal

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30

lender の利用はほとんど変わらないが、2010 年には 0%になっている。雇用主はほとんど

変化していないが、2010 年には減尐している。mashoniza/ loan/ shark は、2008 年に増加

している。local spaza は増加傾向にある。商業的に融資を行う者からのインフォーマルク

レジットは、高利貸しと呼ばれるほど利子が高い。このグラフを見ると、この商業目的の

インフォーマルクレジットの利用が若干増加しているものもあるが、「家族や友達」の項

目に比べると、低い割合での変化でしかない。stokvel/umgalelo/saving club は、先に述べ

たような ROSCAs という種類の、インフォーマルクレジットである。この割合は、2004

年から 2010 年まで 1%で変化していない。

図 12 南アフリカにおけるインフォーマルクレジットの利用内訳の変化(FinScope South Africa

2004~2010 より筆者作成)

このように、インフォーマルクレジットの利用率の変化を、プロバイダー別にして見て

いくと、インフォーマルクレジットは増加しているが、ほとんどが家族や友達からの融資

によるものである。商業的なインフォーマルクレジットは、借り手の生産性を上げにくく、

貧困脱却を困難とさせる融資である。それらは、若干増加している項目もあるほとんど利

用率が変化していない。

マイクロクレジットは資産を増大させ、貧困脱却を望める生産的な融資であるとされて

いる。一方で、マイクロクレジットが、雇用の創出や収入を増やすために使われず、マイ

クロクレジットが、借り手から単なる融資先のひとつとみなされて、他のところから借り

0

2

4

6

8

10

12

14

micro lender

友達や家族

雇用主

mashoniza/loan

shark

stokvel/umgalelo/sa

ving club

local spaza

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31

た融資への返済にあてられることや、それを繰り返して、多重債務に陥っているという指

摘がある。商業的なインフォーマルクレジットの利用が若干上がっているのは、このこと

を表している可能性もある。ROSCAs の項目は、ほとんど利用率に変化がなく、南アフリ

カの人々にずっとコンスタントに利用され続けていると考えられる。

4- 4 インフォーマルクレジット利用率とマイクロクレジット利用者数の

関連

これまでに、南アフリカにおけるマイクロクレジットの利用状況とインフォーマルクレ

ジットの利用状況を見てきた。マイクロクレジットの利用者数が、インフォーマルクレジ

ットの利用率に関係しているのかどうか回帰分析する。これまでの南アフリカのデータを

見ると、マイクロクレジットの利用者数は増加し、インフォーマルクレジットの利用も増

加していることがわかる。南アフリカのデータのみで分析をした場合、2 つの事柄の相関は

強いという結果が出ると考えられる。しかし、マイクロクレジット以外の要因でインフォ

ーマルクレジットの利用が増加している可能性は十分にある。マイクロクレジットの利用

は世界的に増加している傾向にある34ため、南アフリカでもマイクロクレジットの利用が増

加しているのは特別なことではなく、インフォーマルクレジットの利用率に特別に影響し

ているのかどうか分からない。そのため、南アフリカ以外に、インフォーマルクレジット

利用率のデータがあった、スワジランド、ガーナ、モザンビーク、ウガンダ35のデータを含

めて、分析を行う。

データは、下記の表に示している、マイクロクレジットの利用者数と、インフォーマル

クレジットの利用率を用いる。両方のデータがそろっている 2004 年~2009 年の南アフリ

カのデータ36と、2009 年のスワジランド37、2010 年のガーナ38、2009 年のモザンビーク

34 Mixmarket データより http://www.mixmarket.org/mfi (2012/1/22)参照

35 これらの国はインフォーマルクレジット利用率の時系列データはなかった

36 2004 年~2009 年の南アフリカの MC の利用者数のデータは図 9 のデータと、また IC

の利用率は図 11 のデータと同じ物を使う。

37 MC の利用率は Mixmarket より引用 http://www.mixmarket.org/mfi (2012/1/22 現在)

ガーナ、モザンビーク、ウガンダも同様。IC 利用率は FinScope Swaziland 2011 より引用

38IC の利用率は FinScopeGhana 2010 より引用

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32

392009 年のウガンダ40のデータを用いる。南アフリカ以外の国を加えることで、より一般化

してインフォーマルクレジットの利用率と、マイクロクレジットの利用者数の関係を明ら

かにする。

国 ICの利用率(%) MCの利用者数(人)

スワジランド(2009) 0.504 0.504

ガーナ(2010) 0.29 194786

モザンビーク(2009) 0.075 90258

ウガンダ(2009) 0.36 432440

南アフリカ(2004) 0.06 278,650

南アフリカ(2005) 0.06 386,995

南アフリカ(2006) 0.07 411,521

南アフリカ(2007) 0.08 632,190

南アフリカ(2008) 0.13 722,699

南アフリカ(2009) 0.14 869,479

まず、南アフリカのみのデータで、分析を行った結果が、図 13 である。決定係数で

ある R² (0≦R²≦1)は、y=で示されている推定回帰線の観測データに対する説明力、当て

はまりの良さ(適合度)を表している。南アフリカのデータのみで分析を行った場合、R²は

0.863 で、やはり高い数値が出た。この結果のみをみると、マイクロクレジットの利用の増

加に伴って、インフォーマルクレジットの利用も増加するという強い相関関係があるよう

に見える。

39 IC の利用率は FinScope Uganda 2009 より引用

40 IC の利用率は FinScope Mozanbique 2009 より引用

Page 33: マイクロクレジットが及ぼす インフォーマルクレジット場に 対 … · その結果 として貧困 層の稼得能力は低くなり、貧困からの脱出を困難としている。

33

図 13 南アフリカのみの、IC 利用率と MC 利用者数

次に、図 14 は、南アフリカとスワジランド、ガーナ、モザンビーク、ウガンダのデータ

による分析結果である。南アフリカのみのデータでは、インフォーマルクレジットの利用

率とマイクロクレジットの利用者数には強い相関があると見られたが、南アフリカ以外の 4

カ国をふくめると、R²は 0.163 とかなり低い数値となり、ほとんど相関がないという結果

になっている。さらに、相関は非常に弱いが、近似曲線をみると、マイクロクレジットの

利用が増加するにしたがって、インフォーマルクレジットの利用が減尐するという傾向が

見られる。

南アフリカの分析では、インフォーマルクレジットの利用率増加に、マイクロクレジッ

トの利用者数が影響しているように見えるが、世界的にマイクロクレジットの利用は増加

しているため、これがインフォーマルクレジットの利用率に影響しているとは言えそうに

ない。図 13 で、他の国を含めて分析したことで、インフォーマルクレジットの利用率は、

マイクロクレジットの利用に影響されないということがわかる。

y =1.467 x + 0.0093

R² = 0.868

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

0.16

0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000

I

C

の利用率(%)

MCの利用者数

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34

図 14 南アフリカと他 4 カ国を含んだ、IC 利用率と MC 利用者数

y = -2.257x + 0.2677

R² = 0.163

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0 200000 400000 600000 800000 1000000

I

C

の利用率(%)

MCの利用者数(人)

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35

第 5 章 結論

銀行へアクセス出来ない人々でも、利用が可能であるマイクロクレジットは、多くの人々

が利用すると考えられ、実際に、利用者数も増加している。マイクロクレジットは、資金

をもたない貧困者に融資を材料費として与える。これを用いて借り手は、自ら雇用を生み

出し、収入を安定化させ資産や貯蓄を増加させることが、マイクロクレジットの効果とし

て期待されている。その結果、銀行へのアクセスもできるようになる可能性があり41、マイ

クロクレジットがあればインフォーマルクレジットを借りる必要がなくなるのではないか

と考えた。

南アフリカのデータを見ると、インフォーマルクレジットの利用率は、逆に増加しており、

インフォーマルクレジットの利用率は増加している。南アフリカのデータを見ると、マイ

クロクレジットの利用者数は増加し、インフォーマルクレジットの利用も増加しているこ

とがわかる。南アフリカのデータのみで、この 2 つの事柄に関係があるのかどうかを分析

した場合、強い相関が見られた。しかし、南アフリカ以外に、スワジランド、ガーナ、モ

ザンビーク、ウガンダのデータを含めて、同じように、インフォーマルクレジットの利用

率とマイクロクレジットの利用が関係しているのかを分析すると、両者にほとんど関係性

は見られなかった。尐ない国数での分析結果からではあるが、アフリカではマイクロクレ

ジットの普及によって、人々はインフォーマルクレジットの利用が尐なくなったとは言え

ないことがわかった。インフォーマルクレジットは、アフリカにおいて、マイクロクレジ

ットの登場にかかわらず、人々にとって必要とされている融資であるようだ。

マイクロクレジットが必ずしも貧困削減に有効な効果を出していないという指摘42があ

るが、これはインフォーマルクレジットの利用が減尐しないことが問題だけではないと考

えられる。雇用のために融資受けず、非生産的なことのために融資を受ける人々の利用の

仕方や、第 3 章で見たように、アフリカは面積が広く人口密度が低いため僻地の農村部ま

でマイクロクレジットが届かないといった問題やマイクロクレジット機関が持続可能的に

運営していけるように規格化され、様々な事情を抱えた貧困者のニーズに答えられないと

41 Basu (2004) 参照

42 Coleman(1999)等

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いったマイクロクレジットがうまく機能できないという問題がある。南アフリカやアフリ

カ諸国においてマイクロクレジットはまだまだ、改善される余地があるといえる。

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37

付録 1

プロバイダーの分類

本稿では金融サービスを行うプロバイダー(機関または個人)をカテゴリーに分けて使用

する。この分類は、プロバイダーの法規制度合いによって定義する。定義は、FinScope

South Africa (2010)を参考にした。

銀行 ( Formal bank / Bank)

これは、法的な登録がなされ、中央銀行によって認可された機関である。中央銀行等が

これを監督している。法的登録がされているため、フォーマル機関である。

その他フォーマル機関 (Formal other)

これも「銀行」と同様に法的な登録がなされ、中央銀行によって認可された機関である。

ただし、中央銀行等に監督されていない。

インフォーマル機関(Informal)

これは法的な登録がなされていない機関、または個人である。

図 15 金融サービスのプロバイダーの定義 (出典:FinScope South Africa2010 を参考に筆者作成)

金融サービスを利用する個人の分類

本稿では、金融サービスを利用する個人が、どのプロバイダーを利用するのかによって

分類する。主に、図表で使用する。

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Banked

これは、銀行サービスを利用している個人である。銀行サービスとは、ATM / クレジット

カード、預金通帳( saving book) / 郵便貯金 / 送金口座 、当座預金口座、定期預金、抵当

貸付、ガレッジカード(クレジットカードの一種)、マネーマーケット口座(政府の保険

つき預金口座)である。

Formally included

これは、銀行を含む、フォーマルの金融サービスを利用している個人である。インフォ

ーマルの金融サービスを利用していても、同時に一つ以上フォーマルの金融サービスを受

けていればこれに含む。

Informally served

これは、インフォーマルの金融サービスのみを利用している個人である。

Financially excluded

これは、フォーマルの金融サービスも、インフォーマルの金融サービスも利用していな

い個人である。

図 16 金融サービスの利用が複数利用されていることを表す図 (Finscope2009 より筆者作成)

金融サービスを利用する人は、複数のプロバイダーを利用する人もいる。図 1 はそれを表

した図である。

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39

付録 2

マイクロクレジットの効果を測るためには、difference in difference 分析が効果的である。

以下に difference in difference 分析の考え方を示す。43

difference in difference 分析について

difference in difference分析では、以下の 2つの考え方に基づく分析による問題を克服し、

正確にマイクロクレジットの効果を測り得る分析方法である。

まず、マイクロクレジットが導入された前後で比較する考え方がある。マイクロクレジ

ット導入前とマイクロクレジット導入後を比較し政策の効果を推計する場合、以下の式を

推計することになる。

Yt=β0+β1 Dt+εt

ここで、Yt はマイクロクレジット導入により影響を受ける変数である。Dt はマイクロク

レジット導入前の年であれば 0、マイクロクレジット導入後の年であれば 1 となるダミー

変数である。εt は正規分布を仮定した誤差項、β0、β1 は推計するパラメーターである。

この式を推計した場合、仮にβ1 がプラスになったとしても、マイクロクレジットが Y を

どうかさせたとは必ずしもいえない。もちろん、この推計結果を素直に解釈すれば、マイ

クロレクレジット導入後に Y が増加した、という解釈をすることは可能である。しかし、Y

が増加した要因が、マイクロクレジットによるものかどうかは断定できない。例えば、マ

イクロクレジット導入と同時期にマクロ経済的なショック(景気の回復など)や国レベル

の政策の変更が発生したとする。このようなケースでは Dt がマクロショックもしくは国レ

ベルの政策の変更の効果のどちらを表しているのか、識別不可能である。故に仮にβ1 がプ

ラスになったとしても、マイクロクレジット導入が Y に対してプラスの影響を与えたとは

いえない。

43地域の知財政策に関する経済計量分析 参照

http://www.jpo.go.jp/sesaku/pdf/daigaku_shien/seisaku_honpen_03.pdf

(2011/12/20 閲覧)

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2 つめの考え方としては、マイクロクレジットを実施した地域と実施しなかった地域を比

較し、Y の違いを比較する方法も考えられる。このようなケースでは、以下の式を推計する。

Yi=γ0+γ1 Pi+εi

ここで、Yt はマイクロクレジット導入により影響を受ける変数である。Pt はマイクロク

レジットを導入した地域であれば 1、それ以外の地域であれば 0 となるダミー変数である。

εt は正規分布を仮定した誤差項、γ0、γ1 は推計するパラメーターである。仮にγ1 の

推計値がプラスだったとする。この推計結果を解釈すれば、マイクロクレジットを導入し

た地域は政策を導入していない地域に比べて Y の水準が高い、という解釈になる。ただし、

Y の水準の違いはマイクロクレジットの効果によるものなのか、もともとの Y の水準の違

いによるものなのかは不明であり、この推計結果から政策の導入により Y が増加したとは

いえない。

Difference indifference 分析は、上記の 2 つの考え方の欠点を克服し、マイクロクレジッ

トの効果を正確に推計することができる。推計の際、以下の値が計測できれば正確なマイ

クロクレジット効果を推計できる。

マイクロクレジットの効果=A-B

A:ある地域におけるマイクロクレジット導入前と導入後の Y の変化分

B:ある地域における、仮にマイクロクレジットを導入しなかった場合の Y の変化分

ただし、現実の経済を分析している社会科学の分野では実験は不可能であるため、B の効

果は観察不能である。そのため、B の効果を何らかの形で近似しなければならない。そこ

で、現実のデータを使用して推計可能なフレームワークにするために、以下の式によりマ

イクロクレジット効果を推計する。

マイクロクレジットの効果=A-B’

A:ある地域におけるマイクロクレジット導入前と導入後の Y の変化分

B’:マイクロクレジットを導入しなかった地域における Y の変化分

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41

このケースが Difference in Differences 分析の考え方である Difference in Differences 分

析では、トリートメントグループ、コントロールグループという 2 つのグループを特定し

て分析を行う。トリートメントグループはマイクロクレジット導入によって影響を受けた

グループ(A の効果に相当)であり、コントロールグループはマイクロクレジット導入に

よって影響を受けていないが、それ以外の点ではトリートメントグループと同質のグルー

プ(B の効果に相当)である。この考え方により分析を行うと、上述した 2 つの考え方で

問題になった 2 つの要因を取り除くことができる。まず、1 つ目の考え方で問題になったマ

イクロクレジットの導入前後と同時期に発生したマクロ的なショックや国レベルの政策変

化の影響は A、B’に対する共通の効果として分析できるため、マイクロクレジットの効果

には現れない。また、それぞれの地域における Y の差分をとることで、2 つめの考え方で

問題となったマイクロクレジット導入以前に存在している地域ごとの Y のレベルの差に

起因する効果を消すことができる。

in difference 分析の留意点

Difference in differences 分析は政策効果を推計する手法として非常に優れた手法であ

るが、いくつかの留意点が存在する。第一に政策変化前から政策変化後にかけて、コント

ロールグループの被説明変数はトリートメントグループの被説明変数と、全く同じ政策変

化以外の影響を受けていなければならない。例えば、石油ショックが発生したケースを考

えてみると、石油に依存する産業が中心の都道府県と、石油に依存しない産業が中心の都

道府県では石油ショックの影響は異なる。つまり、たとえマクロ的な影響であっても、都

道府県によって影響にバラつきがある。マクロショックの都道府県ごとの影響の違いと政

策の導入の効果が識別できない状況では、Difference in differences 分析を行っても政策効

果を正しく推計することはできない。

第二に政策変化後と変化前で、トリートメントグループの構成とコントロールグループ

の構成が一定でなければならない。例えば、A 県でのみ生活保護の支給額を増加させたケ

ースを考える。政策の影響として、生活保護の増加が労働供給を減尐させるかを検討した

い。Difference in differences 分析の考え方を利用して、A 県をトリートメントグループ、

近接する B 県をコントロールグループとすると、支給額が増加したA県には余暇へのより

強い選好を持った住民が移住し、一方で、変化のない B 県には労働供給へのより強い選好

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42

を持った住民が残る可能性がある。このようなケースでは、内生性の問題が発生し、一致

性をもつ推計が得られないことが知られている。

第三に政策変化の時点の特定化の問題がある。通常は政策変化の時期を法改正が決定し

た時点もしくは法律が執行された時点として認識するケースが多い。しかし、影響を受け

る経済主体は必ずしもその時点に反応するとは限らない。例えば、数年前から法律改正の

議論が始まっており、法律改正が行われるという情報が各経済主体にとって既知となって

いる場合、法律改正が決定される以前から、各経済主体は行動を変化させていると考えら

れる。このようなケースでは政策効果は、法律を改正した時点ではなくその数年前に現れ

るので、法律を改正した時点(もしくは執行された時点)以降を1とするダミーを利用し

て推計しても、正確な政策効果を推計することができない

マイクロクレジット自体、1997 年代に始まったが、マイクロクレジットに関するデータ

は 90 年代以降の最近のものしかなく、MixMarket からも 1993 年からしかデータを出せて

いない。さらにインフォーマルクレジットのデータにない状況である。Difference

indifference 分析に必要なデータがない状況であるため、本稿では、先行文献からの情報と、

マイクロクレジットとインフォーマルクレジットの限られたデータから、南アフリカにお

いて、マイクロクレジットの利用率がインフォーマルクレジットの利用率にどの影響を与

え、マイクロクレジットが南アフリカおいて、貧困削減効果をあげているのかどうかを考

察する。

付録 3

MFIの名前 総資産(US$) 現在の利用者数(人)

2003年 ARTPAC 519,879 115

Kuyasa 1,068,732 920

Nations Trust 676,355 147

Protea FSG 4,394,649 8,450

SEF-ZAF 4,125,516 22,110

Siyakhula 186,514 946

Tiisha 219,488 740

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43

2004年 Capitec Bank 139,069,775 250,000

Kuyasa 1,409,339 1,112

SEF-ZAF 4,926,276 27,538

2005年 Capitec Bank 202,799,352 350,000

Kuyasa 1,896,301 1,219

SEF-ZAF 6,549,846 35,776

2006年 Capitec Bank 303,972,538 368,854

Kuyasa 1,810,492 1,372

SEF-ZAF 8,066,221 41,295

2007年 Capitec Bank 380,359,067 579,802

Opportunity Finance 1,785,202 2,069

SEF-ZAF 10,912,100 50,319

2008年 Capitec Bank 491,049,605 638,616

Marang 6,903,124 24,522

Opportunity Finance 3,761,131 3,396

SEF-ZAF 12,819,418 56,165

2009年 Capitec Bank 1,229,044,430 801,809

Opportunity Finance 4,434,452 3,640

SEF-ZAF 16,149,954 64,030

年 MFI総資産の合計 MFI利用者数の合計

2003 11,191,133 33,428

2004 145,405,390 278,650

2005 211,245,499 386,995

2006 313,849,251 411,521

2007 393,056,369 632,190

2008 514,533,278 722,699

2009 1,249,628,836 869,479

Page 44: マイクロクレジットが及ぼす インフォーマルクレジット場に 対 … · その結果 として貧困 層の稼得能力は低くなり、貧困からの脱出を困難としている。

44

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