ミニ・シンポジウム

JICA中米シャーガス病対策の経験と教訓－理想と現実の融合

• 座長 – 上田直子： JICA元人間開発部感染症対策課

• 発表者 – 橋本謙： 元広域専門家 2012-2014

– 吉岡浩太： 元ニカラグア専門家 2010-2014

– 橋場文香： 現役ニカラグア協力隊員 2013-2015

• 進行 – 広域、国、地方の視点からの発表60分

– 上記発表に基づいた議論（議題：人材育成） 30分

JICA中米シャーガス病対策 プロジェクトの概要

元JICA中米シャーガス病対策広域専門家 ハーバード公衆衛生学院フェロー

橋本謙

2014年11月3日

ミニ・シンポジウム

目次

1. シャーガス病と対策

2. プロジェクトの成果

3. 援助戦略

シャーガス病有病者の分布

媒介虫による感染がない国

媒介虫による異例の感染がある国

媒介虫による通例の感染がある国

媒介虫による感染の状況 推定有病者数

出典 WHO 2010

2006-2009年の推定 患者数：8-9百万人

1. シャーガス病と対策

症状・診断・治療

• 急性期 – 約6～8週間：発熱、局所リンパ節腫大、 吸血部やまぶたの腫れ等（発症率<5%）

• 慢性期 – 約5～20年後に、心筋症、巨大消化管症（巨大食道・巨大結腸）等（発症率30-40%）

• 診断・治療 – 血液・血清検査

– Nifurtimox, Benznidazole Trypanosoma cruzi

中南米における感染症の社会への影響Disability-Adjusted Life Year (DALY), 2008

0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000

Leprosy

Trachoma

Lymphatic Filariasis

Schistosomiasis

Leishmaniasis

Dengue

Malaria

Chagas

Tuberculosis

VIH/AIDS

出典: Hotes et al. 2008

• Hookworm, Acariasis and Trichuriasis were not included for presenting a broad range of 130,500–1,923,000, 124,800–1,092,000 and 265,600–1,062,000 respectively.

シャーガス病 マラリアの6.0 倍 デング熱の9.6倍

輸血

80%

16%

2% <1%

その他 • 経口 • 臓器移植 • ラボでの事故など.

感染経路

母子 媒介虫

Triatoma dimidiata

Rhodnius prolixus

感染 リスク

時間 準備・攻撃フェーズ 監視フェーズ

殺虫剤散布

昆虫・血清調査ベースライン

昆虫・血清調査評価

啓発活動

住民による監視

殺虫剤散布

シャーガス病媒介虫対策の戦略

目標

感染の中断

年間殺虫剤撒布家屋数

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

GuatemalaEl SalvadorHondurasNicaragua

Source: Ministry of Health, Guatemala, El Salvador, Honduras and Nicaragua

2. プロジェクトの成果

1997-2012 2013

0 300 600

1200 1800 3000

Altitude (m)

R. prolixusの生息集落

Source: Ministry of Health, Guatemala, El Salvador, Honduras and Nicaragua

グアテマラ

ホンジュラス

ニカラグア

エルサルバドル

T. dimidiata生息家屋率 1997-2012

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

Guatemala El Salvador Honduras Nicaragua

%

Source: Ministry of Health, Guatemala, El Salvador, Honduras and Nicaragua

R. prolixus生息歴のある集落での 15歳未満児童血清陽性率

5.3

1.3

5.0

0.5

6.7

00

2

4

6

8

2010

2003-07 1999

2005-06

2003-04

Honduras

2008-10

%

Source: Ministry of Health, Guatemala, Honduras and Nicaragua

Guatemala (小学生)

Nicaragua

PAHO/WHOによる国際認定

R. prolixus による感染中断

R. prolixus の消滅

グアテマラ 2008

ホンジュラス 2011

ニカラグア 2011

エルサルバドル 2010

グアテマラ ホンジュラス ニカラグア エルサルバドル

中米7カ国のシャーガス病患者の推移

推定有病者数

1,769,600

806,600

386,566

2000 2006 2010

推定年間新規感染者数

61,823

8,500

3,758

2000 2006 2010

Source: WHO/CDS/WHOPES/GCDPP/2000.1 , OPS/HDM/CD/425-06, Comunicación Personal OPS 2010

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

グアテマラ

ホンジュラス

エルサルバドル

ニカラグア

中米広域

準備・攻撃フェーズ

監視フェーズ

プロジェクトの展開と投入

知識運営 知識運営

準備・攻撃フェーズ

攻撃・監視フェーズ

準備・攻撃フェーズ

監視フェーズ

監視フェーズ

他のJICAの投入： 殺虫剤、散布器、車両、血清検査キット、研修、教材など

A国 保健省

各国の専門家 プロジェクト運営管理

技術支援

青年海外協力隊 現場活動支援

B国 保健省

広域専門家 知識運営

３．援助戦略

広域戦略の要点

• 中米シャーガス病対策イニシアチブ IPCA – 国際目標、国際評価、国際認定

• 保健省、JICA、WHOのWin-Win戦略

人材育成にかかる教訓

• 広域プロジェクトの設計 – 既存の広域プラットフォームの活用

• 国際アジェンダ IPCA-PAHO/WHO、研究ネットワーク ECLAT

– 小さく生んで大きく育てる

• パイロット県→国内他県→広域展開

• 保健システム全体の強化 – 異なる視点から仕組みと取組みを補強する

• 虫・鳥・魚の目、多様な日本チーム・現地組織

– 国内外で成長を促す機会を提供する

• 知識の創造と運営→集団知力、当事者意識

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ありがとうございました