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EDITORIAL 03 OFF SEASON magazine AFTER SPING/BEFORE SUMMER 2017 relax, refresh, rejoice in life. ISSUE NO.10 EDITOR TAKASHI SANO ART DIRECTOR SHOGO MINAKI PRODUCER RYO MOGI SALES NOBORU MATSUMURA TRANSLATOR YASUKO HIRATA PRINT DAISHINSHA LAID BACK corporation 5-12-30-B ZAIMOKUZA, KAMAKURA, KANAGAWA, JAPAN ALL RIGHT RESERVED BY OFF SEASON PRINTED IN JAPAN 本誌は再生紙を使用しています。 OFF SEASON 1% FOR THE PLANET」の メディア・パートナーです。 1960 年代から、もう半世紀も経ったのか…。 今回の特集を編集しながら、 ふと、そんな感慨にふけった。 自分は、あの空気を吸ったことはない。 だが、60 年代を過ぎ去った時間とするには、 あまりにも濃密で鮮烈すぎる。 1970 年代生まれの自分だが、 自己の価値観や志向性の形成の多くを あの時代に負っている。 小説、音楽、映画、アート、写真、サーフィン…。 どの年代にも、その時代を彩る何かがある。 しかし、60 年代のそれは、時の流れとともに、 その輝きは増しているのではないか。 これは 21 世紀に生きる自分の、 単なる憧憬なのだろうか。 佐野崇 『OFF SEASON』編集長 『時を超えて』 COVER MODEL: Jimi Hendrix COVER PHOTO: Shutterstock/Aflo EDITORIAL 03 1960s REVOLUTIONS EDITORIAL 04 SURFING ショートボード革命 EDITORIAL 06 JIMI HENDRIX 素顔のカリスマ  EDITORIAL 06 HIPPIE MOVEMENT  Absolute Beginner Revolution EDITORIAL 08 YAYOI KUSAMA 永遠の前衛 OFF SEASON KAMAKURA MOVIE 16 THE WAVE I RIDE MUSIC 17 OFF SEASON に聴きたいアルバム 麻田浩 MOVEMENT 19 FROM SAN FRANCISO TAYLOR STICH MOVEMENT 21 FROM AMAZON SAMBAZON PEOPLE 22 ステファニー・ギルモア POETRY 23 COFFEE BREAK 10 片岡義男 PHOTO 24 the scene of OFF SEASON 佐藤秀明 magazine No.10 10 www.offseason.jp [email protected] relax, refresh, rejoice in life. 1960 年代を、ひとすとしたら、「革命時代がふさわしいだろう。第二次世界大戦によって再構 された世界はひずみがじ、社会体制きしみめた。ベトナム戦争激化によるヒッピー・ ムーブメント、公民権運動…。その中心にいたのは、 当時若者達だった。らのありるエネルギーは 社会システムにだけでなく、音楽、アート、サーフ ィンなどのサブカルチャーにもかっていった。科学者達は、人類し、「きな一歩させた。地球上しい到来させる空気ちていた。までの価値観破壊 し、しいモノをしたい。それは既存権威 とのいであり、れもない “ 革命 ” だった。革命 時代から半世紀たして世界しくわった のだろうか? これからをきる々が、それをることは、して無意味作業ではないだろう。 The 1960s is often defined as an era of Revolution. In that decade, it seemed that the golden age of the nations of the world restructured after World War II started to fall apart. The Vietnam War, Hippie movement, the Civil Rights movement, and so forth became central issues among young people at that time. And many of them were so into subculture such as music, art, and surfing. They struggled to create something new to disintegrate the old values, and they called it “the Revolution”. It has past a half century since then. Have we succeeded in changing the world? Looking back how it was in the 1960s must be worthy of consideration. # Jimi Hendrix # Apol lo 11 # Surfing # Yayoi Kusama SPECIAL

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Page 1: #Jimi Hendrix - OFF SEASON magazineoffseason.jp/vol10_sample.pdf · off season magazine editorial 03 issue no.10 relax, refresh, rejoice in life. after sping/before summer 2017 editor

EDITORIAL 03OFF SEASON magazine

AFTER SPING/BEFORE SUMMER 2017r e l a x , r e f r e s h , r e j o i c e i n l i f e .ISSUE NO.10

EDITORTAKASHI SANO

ART DIRECTOR SHOGO MINAKI

PRODUCERRYO MOGI

SALESNOBORU MATSUMURA

TRANSLATORYASUKO HIRATA

PRINTDAISHINSHA

LAID BACK corporation5-12-30-B ZAIMOKUZA, KAMAKURA, KANAGAWA, JAPAN

ALL RIGHT RESERVED BY OFF SEASON

PRINTED IN JAPAN

本誌は再生紙を使用しています。OFF SEASON は

「1% FOR THE PLANET」のメディア・パートナーです。

1960 年代から、もう半世紀も経ったのか…。

今回の特集を編集しながら、

ふと、そんな感慨にふけった。

自分は、あの空気を吸ったことはない。

だが、60 年代を過ぎ去った時間とするには、

あまりにも濃密で鮮烈すぎる。

1970 年代生まれの自分だが、

自己の価値観や志向性の形成の多くを

あの時代に負っている。

小説、音楽、映画、アート、写真、サーフィン…。

どの年代にも、その時代を彩る何かがある。

しかし、60 年代のそれは、時の流れとともに、

その輝きは増しているのではないか。

これは 21 世紀に生きる自分の、

単なる憧憬なのだろうか。

佐野崇『OFF SEASON』編集長

『時を超えて』

COVER MODEL: Jimi HendrixCOVER PHOTO: Shutterstock/Aflo

EDITORIAL 03

1960s REVOLUTIONS EDITORIAL 04

SURFING ショートボード革命

EDITORIAL 06

JIMI HENDRIX 素顔のカリスマ 

EDITORIAL 06

HIPPIE MOVEMENT Absolute Beginner Revolution

EDITORIAL 08

YAYOI KUSAMA 永遠の前衛

OFF SEASON KAMAKURAMOVIE 16THE WAVE I RIDE

MUSIC 17OFF SEASON に聴きたいアルバム 麻田浩

MOVEMENT 19

FROM SAN FRANCISO TAYLOR STICHMOVEMENT 21

FROM AMAZON SAMBAZON

PEOPLE 22

ステファニー・ギルモア

POETRY 23

COFFEE BREAK 10 片岡義男

PHOTO 24

the scene of OFF SEASON 佐藤秀明

magazine No.10

10

www.offseason.jp [email protected]

r e l a x , r e f r e s h , r e j o i c e i n l i f e .

1960年代を、ひと言で表すとしたら、「革命の時代」がふさわしいだろう。第二次世界大戦によって再構築された世界はひずみが生じ、社会体制は至る所できしみ始めた。ベトナム戦争の激化によるヒッピー・ムーブメント、公民権運動…。その中心にいたのは、当時の若者達だった。彼らのあり余るエネルギーは社会システムにだけでなく、音楽、アート、サーフィンなどのサブカルチャーにも向かっていった。若い科学者達は、人類を月に送り出し、「大きな一歩」を踏み出させた。地球上は新しい世の中の到来を予感させる空気で満ちていた。今までの価値観を破壊し、新しいモノを生み出したい。それは既存の権威との戦いであり、紛れもない “革命”だった。革命の時代から半世紀、果たして世界は新しく変わったのだろうか? これからを生きる我々が、それを振り返ることは、決して無意味な作業ではないだろう。

The 1960s is often defined as an era of Revolution. In that decade, it seemed that the golden age of the nations of the world restructured after World War II started to fall apart. The Vietnam War, Hippie movement, the Civil Rights movement, and so forth became central issues among young people at that time. And many of them were so into subculture such as music, art, and surfing. They struggled to create something new to disintegrate the old values, and they called it “the Revolution”. It has past a half century since then. Have we succeeded in changing the world? Looking back how it was in the 1960s must be worthy of consideration.

# Jimi Hendrix

#Apollo 11

# Surfing

# Yayoi Kusama

SPECIAL

Page 2: #Jimi Hendrix - OFF SEASON magazineoffseason.jp/vol10_sample.pdf · off season magazine editorial 03 issue no.10 relax, refresh, rejoice in life. after sping/before summer 2017 editor

EDITORIALEDITORIAL04 OFF SEASON magazine 05OFF SEASON magazine

r e l a x , r e f r e s h , r e j o i c e i n l i f e .ISSUE NO.10 AFTER SPRING/BEFORE SUMMER 2017r e l a x , r e f r e s h , r e j o i c e i n l i f e .

   分が 4 〜 13 歳を過ごした 1960 年代の記憶なんてない。そ   れはちょっとはあるけれど、世界が見えてきた幼児体験の記憶とか、房総の磯での素晴らしい素潜りの思い出、それとかTVで始まった怪獣番組を見た衝撃なんかをここで述べてもしょうがない。だいたい 1960 年代というか、1969 年がどれだけ凄い年だったかを実感するのは、ビートルズが解散した後のことなのだから…。 1969 年の梅雨明け前に初めて本物のファイバーグラス巻きのサーフボードで波に乗った。その時のことは 48 年経った今でもハッキリ覚えている、この世に産まれ出でた瞬間って、きっとあんななんだろう、1970 年代的に言うならミレニアム ファルコン号が光速にワープしたかんじ。それからは生きているからサーフィンするのか、サーフィンするために生きるのか? いつしかわからなくなった。もちろんまだ自分のボードなんて無かったけれど、とにかく毎週日曜には新しいタイプのサーフボードが海に登場して来るような夏を迎えていたので、地元の浜のサーフィンクラブの艇庫に置き去りにされている鈍重なロングボードの無断借用をとがめる大人なんていなかった。今やサーフボードはワーゲンや日野コンテッサクーペの屋根に乗せられ、あるいはスバル 360 のキャンバストップに突き刺され、常にサーファーさんと行動を供にする存在に変貌を遂げていたのだ。 1969 年には、サーフィンの専門誌も存在してなくて、けれどその年の(第 4 回)全日本サーフィン選手権大会プログラムはあった。いまページをめくると、その 30 ページにわたる印刷物からもロングボードの姿が消えかけていたのがわかる。たとえばテッド阿出川さんがエド小川さんと世に出したテッド・ED モデルの広告写真が表2を飾っているが、そのアウトラインは格好いい完璧なショートボードである。長さは6'10" ほどだろうか? それから裏表紙のマリブサーフボードの広告写真もミッキー川井さんがすでに短いボードでボトムターンしているものだ。ただし記事内にまだ当時の日本のトップサーファーの多くが、ロングボードでのライディング写真をプロフィール画像に使っているのが時代の変わりめを感じさせる。 そんなだったから流行遅れのロングボードは結構好き勝手に乗れた。信じられないことに、自分はボードに腹ばいになって水泳のクロールみたいに交互に水を掻くプローンパドリングを知らず、ただひたすらボードに正座してニーパドルで明けて暮れた。そのうちにトップサーファーが短く細く薄いボードでサーフィンしている光景を目にして、それまで自分が積み上げてきたロングボーディングの経験が無に帰したことを悟った。 波の上以外で振り返ってわかるのは、1969 年が自分の暮らす房

総半島の漁村にやってきたのは、1970 年以降だということ。だから映画『イージー☆ライダー』の影響が原付バイクのチョッパーとなって地元のさびれた交差点を通過したのは 1970 年だし、ウッドストックだって 1972 年に鴨川のノンキーサーフショップでレコード盤として登場するまでどこか他の時間軸の途中にあった。古典的サーフィン映画『パシフィック バイブレイション』がプロジェクターから光となって茅ヶ崎ゴッデス店内の壁に吐き出されるのを目にしたのなんか 1976 年のこと。あんな作品が 1969 年に公開されていたなんて…つまり歴史に記されている昔の事象は、当時実際に身近に現れるまでにほとんど数年のタイムラグを要していた。 それに加え、文化や意識の変革とかが田舎に到達するまでのフィルターに濾されると、ドラッグはプラボンドやシンナーに、ロック音楽はベンチャーズやグループサウンズに変貌を遂げていた。ヒッピーにだって成り得るはずがなく、それを目指す連中がどう頑張っても地元ではフーテンと呼ばれた。 サーフボードは短く、サーファーの髪は長くなり、ずっと盛り上がっていたサーフィンクラブ意識は翳りを見せ始め、クラブ員お揃いのジャンパーは見かけなくなっていった。1969 年が暮れる前には自分の乗るボードも3m 近くから 175cmまで短くなっていた。

ショートボード革命古代ポリネシアで誕生したサーフィンだが、1960 年代に大きな変革が訪れた。

「ショートボード・レボリューション」と呼ばれた、その革命は、今に至るサーフシーンを激変させることになった。

Surfing culture had continued to evolve by itself over a long period of its history since Polynesian origins. In 1960, “Short Board Revolution” brought a drastic change into the history of surfing.

Surfing

抱井保徳◎文Text: Yasunori Kakai

「ショートボード・レボリューション」の立役者であるサーフボード・シェイパー、デイック・ブルーワーを囲んで、サーフィン界のカリスマ、ジェリー・ロペス(左)とリノ・アベリア。ロングボードからショートボードへの革命が日本に波及するまでには時差があった

かかい・やすのりサーファー、シェイパー。1956 年生まれ。千葉県勝浦出身、鎌倉・稲村ガ崎出身。1970 年代からプロサーファーとして活躍。そのスタイリッシュなライディングから根強いファンを持つ。現在はサーフボードビルダー、サーフィンジャーナリストとしても活動する

Photo: 2010 Going Vertical Pty LTD