工作機械産業 (2)我が国工作機械産業の強みと弱 …...3...

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248 表507-1 近年の我が国工作機械産業の受注額、従業者数、輸出輸入額の推移 05年 06年 07年 08年 09年 10年 受注額(億円) 13,632 14,370 15,900 13,011 4,118 9,786 従業者数(千人) 23 24 25 25 25 23 輸出額(億円) 8,151 9,215 8,920 8,747 3,214 6,085 輸入額(億円) 1,075 1,356 726 602 287 307 資料:(社)日本工作機械工業会「工作機械受注実績調査」、財務省「貿易統計」、経済産業省「機械統計」 表507-2 我が国企業の世界における位置付け (億円) 売上順位 企 業 名 決 算 月 売 上 高 純 利 益 1 ヤマザキマザック 日本 2009年3月 2,495 未公表 2 シンヨウ 中国 2010年12月 1,731 未公表 3 ギルデマイスター ドイツ 2009年12月 1,409 6 4 トルンプ ドイツ 2010年6月 1,402 ▲87 5 ジェイテクト 日本 2010年3月 1,396 ▲196 6 ダイレン 中国 2008年12月 1,377 未公表 7 アマダ 日本 2010年3月 1,151 ▲38 8 シューラー ドイツ 2009年9月 1,001 ▲79 9 ハース 米国 2007年12月 991 未公表 10 マグ 米国・ドイツ 2009年12月 930 未公表 備考:売上高および営業利益は工作機械事業ベース。為替レートは、各決算月末の終値 資料:Metal Working Insiders' Report から経済産業省作成 (1)現状(表507-1・2) 工作機械は金属などの材料から切削、研削などによっ て不要な部分を取り除き、必要な形状に作り上げる機械 である。金属製部品や金型の多くが工作機械で加工され ており、機械を作るために必要な機械であることから、 工作機械は「マザーマシン」とも呼ばれており、工作機 械産業は我が国製造業の基盤となる産業となっている。 我が国の工作機械の生産額は1982年から2008年まで 27年間連続世界第1位となっていたが、2009年は2008 年後半からの景気減速の影響を大きく受け、中国、ドイ ツに続く第3位にとどまった(図507-3)。その後、中国 を中心とした新興国の旺盛な設備投資に支えられ、2010 年はドイツを抜き第2位に回復した。 震災による影響は、一部企業の被災や、半導体関連部 品等の部品調達難などにより、一時的に生産に影響が生 じたものの、震災影響は軽微であった。また、被災地の 顧客工場設備に対しては、震災発生直後から工作機械メー カーによる復旧支援が積極的に実施され、工場の早期立 ち上げに貢献した。 7.工作機械産業 (2)我が国工作機械産業の強みと弱み ①強み 我が国の工作機械産業は、NC旋盤、マシニングセン ターに代表される NC 工作機械の高級・中級機分野に競争 力を有し、保守・補修などのアフターサービス体制が充実 していることから、国内外のユーザーからの信頼も高い。 また、優れた技術力を基盤とした高い開発力を有して おり、自動車産業や IT 産業に加え、医療や航空機など新 興市場のユーザー業界とも緊密に連携しながら、新しい 技術開発に取り組んでいる。例えば、複数の加工工程を 一つにまとめた複合加工やチタン、金属以外のセラミッ クスやガラスなど難削材料の加工、光コネクタのような 精密かつ複雑な形状の加工などを実現させている。 ②弱み 海外市場においては、低級・中級機分野に競争力を有 する中国、韓国、台湾メーカーの躍進がめざましく、価 格競争力を背景として、アジア市場を中心にシェアを拡 大している。また、欧州メーカーのアジア市場への参入 も進められていることにより、海外メーカーとの競争は 激しさを増しており、我が国工作機械メーカーはより一 層の競争力強化を求められる状況となっている。 一方、国内の受注規模を見ると、これまで年間で7,000億

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Page 1: 工作機械産業 (2)我が国工作機械産業の強みと弱 …...3 ギルデマイスター ドイツ 2009年12月 1,409 6 4 トルンプ ドイツ 2010年6月 1,402 87 5

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表507-1 近年の我が国工作機械産業の受注額、従業者数、輸出輸入額の推移

05年 06年 07年 08年 09年 10年

受注額(億円) 13,632 14,370 15,900 13,011 4,118 9,786

従業者数(千人) 23 24 25 25 25 23輸出額(億円) 8,151 9,215 8,920 8,747 3,214 6,085輸入額(億円) 1,075 1,356 726 602 287 307

資料:(社)日本工作機械工業会「工作機械受注実績調査」、財務省「貿易統計」、経済産業省「機械統計」

表507-2 我が国企業の世界における位置付け

(億円)

売上順位 企 業 名 国 決 算 月 売 上 高 純 利 益

1 ヤマザキマザック 日本 2009年3月 2,495 未公表

2 シンヨウ 中国 2010年12月 1,731 未公表3 ギルデマイスター ドイツ 2009年12月 1,409 64 トルンプ ドイツ 2010年6月 1,402 ▲875 ジェイテクト 日本 2010年3月 1,396 ▲1966 ダイレン 中国 2008年12月 1,377 未公表7 アマダ 日本 2010年3月 1,151 ▲388 シューラー ドイツ 2009年9月 1,001 ▲799 ハース 米国 2007年12月 991 未公表10 マグ 米国・ドイツ 2009年12月 930 未公表

備考:売上高および営業利益は工作機械事業ベース。為替レートは、各決算月末の終値資料:Metal Working Insiders' Report から経済産業省作成

(1)現状(表507-1・2)工作機械は金属などの材料から切削、研削などによっ

て不要な部分を取り除き、必要な形状に作り上げる機械である。金属製部品や金型の多くが工作機械で加工されており、機械を作るために必要な機械であることから、工作機械は「マザーマシン」とも呼ばれており、工作機械産業は我が国製造業の基盤となる産業となっている。

我が国の工作機械の生産額は1982年から2008年まで27年間連続世界第1位となっていたが、2009年は2008年後半からの景気減速の影響を大きく受け、中国、ドイツに続く第3位にとどまった(図507-3)。その後、中国を中心とした新興国の旺盛な設備投資に支えられ、2010年はドイツを抜き第2位に回復した。

震災による影響は、一部企業の被災や、半導体関連部品等の部品調達難などにより、一時的に生産に影響が生じたものの、震災影響は軽微であった。また、被災地の顧客工場設備に対しては、震災発生直後から工作機械メーカーによる復旧支援が積極的に実施され、工場の早期立ち上げに貢献した。

7.工作機械産業 (2)我が国工作機械産業の強みと弱み①強み

我が国の工作機械産業は、NC 旋盤、マシニングセンターに代表される NC 工作機械の高級・中級機分野に競争力を有し、保守・補修などのアフターサービス体制が充実していることから、国内外のユーザーからの信頼も高い。

また、優れた技術力を基盤とした高い開発力を有しており、自動車産業や IT 産業に加え、医療や航空機など新興市場のユーザー業界とも緊密に連携しながら、新しい技術開発に取り組んでいる。例えば、複数の加工工程を一つにまとめた複合加工やチタン、金属以外のセラミックスやガラスなど難削材料の加工、光コネクタのような精密かつ複雑な形状の加工などを実現させている。

②弱み海外市場においては、低級・中級機分野に競争力を有

する中国、韓国、台湾メーカーの躍進がめざましく、価格競争力を背景として、アジア市場を中心にシェアを拡大している。また、欧州メーカーのアジア市場への参入も進められていることにより、海外メーカーとの競争は激しさを増しており、我が国工作機械メーカーはより一層の競争力強化を求められる状況となっている。

一方、国内の受注規模を見ると、これまで年間で7,000億

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円程度の国内市場が2009年は1,500億円程度に縮小した。国内には、大小100社以上の企業が存在しており、市場をめぐり競争が激しく、各社が投じた経営資源の有効活用が必ずしも適切とは言い難い状況にあり、今後の課題と言える。

また、業界の研究開発費の状況を見ると、縮減傾向に加えてこの度の世界同時不況の影響があり、国内外ともに十分な経営資源が投じられているとは言いがたいことから、将来の競争力強化に向けた更なる投資も必要と思われる。また中型で汎用の旋盤やマシニングセンターを製造している会社が多く、特色のある製品作りが求められている。

(3)世界市場の展望2008年後半の金融危機の影響により、2009年に入っ

ても自動車産業をはじめ、全ての業種で受注環境が停滞し僅かな回復にとどまったことから、国内向け工作機械受注額は1,596億円(対前年比71.8%減)となった。 

また世界市場は、国内同様に悪化したことにより、欧米で大きく減少した。中国を始めとするアジア市場については、前半は低調に推移したものの、夏以降は電子機器、小型自動車、エネルギー・鉄道といったインフラ関係の需要があり、ピーク時の水準に回復するまでに至った。しかし、

全体としては、欧米の不調が大きく足を引っ張り、海外向け受注額は2,522億円(対前年比65.7%減)となった。

2010年については、国内では、自動車を中心に前年比約2倍の3,075億円まで回復したが、2009年の落ち込みが大きく、本格的な回復とは言い難い状況にある。また海外では、中国を始めとするアジアを中心に回復傾向を示し、6,711億円と前年比約2.7倍まで増加した。今後もアジアの新興国を中心に堅実な回復が続くと考えられ、世界経済の不透明感もあるが、中長期的には全世界での市場は拡大していくものと見込まれる。

(4)我が国工作機械産業の展望と課題①今後の競争力強化に向けた対応

国内製造業の海外展開が進展する中、多様化するユーザーニーズ、変革スピードの加速化に対応する開発力の保持が事業発展の鍵となっている。今後ますます要求が高まる超精密微細加工、セラミックスや複合材料等の新材料加工、生産準備段階まで含めたトータルリードタイムの大幅削減に向けた多軸・複合工作機械の開発等の技術開発を進める必要がある。また、団塊の世代の大量退職により優れた技術を持つ技術者や技能者が退職してい

(百万ドル)

(年)

備考:1.「ロシア」の90年までは,「旧ソ連」。「ドイツ」の90年までは,「旧西ドイツ」。 2. 成形型を含まず 3. 2010年統計は2011年2月時点の推定値,また2010年の値は遡及改訂されることがある。

資料:American Machinist,Gardner Publications,Inc.資料より日本工作機械工業会作成

日本米国イタリアドイツスイス中国台湾韓国英国ロシア

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図507-3 主要国の切削型工作機械生産高の推移

付 論

主要製造業の課題と展望

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く中、それらの技術を受け継ぐ人材が不足している。若い人材の確保とともに、技術や技能の伝承を効率よく行う体制づくりなど人材育成が重要となっている。

②グローバル展開我が国工作機械産業の外需比率をみると、受注額で過

去最高水準を示していた1990年には26.4%と3割にも満たない状況にあったが、その後経済のグローバル化と新興市場の急速な発展により旺盛な設備投資が見られ、2009年、2010年と外需比率が約7割まで上昇した。こうした外需を世界の主な市場毎に見ると、1998年には2

割弱であったアジア市場は成長を続け、2009年のアジア向け受注は、外需全体の54.7%、2010年は、60.9%を占めるまでに至り、北米、欧州といった需要地を抜き最も大きな市場になっており、今後もこの傾向は続くものと考えられる。また、BRICS に代表される新たな市場も中長期的に拡大傾向にあり、今後も低級・中級機を中心とした継続的な需要の成長が見込まれる。また、我が国の自動車、家電産業など工作機械のユーザーも中国やアセアンを中心に生産拠点を構築しており、工作機械メーカーは現地生産の充実やサービスセンターや販売拠点などの整備に努め、アジアでの市場拡大を進めている。

コラム

第25回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2010)開催2010年10月28日(木)から11月2日(火)までの6日間東京ビックサイト全館を貸し切り、第25回日本国際

工作機械見本市(JIMTOF2010)が開催された。今回の JIMTOF は円高の進行等により経済状況に不安が見られたことから、来場者の大幅な減少を危惧する声

が聞かれた。また開催初日は雨天、例年来場者が最も集中する土曜日には台風14号が襲来するなど、会期前半は天候に恵まれなかった。

しかし会期後半に天候が好転することで客足は増加し、結果として、来場者数は11万5千人(重複無し)の来場者となった。史上最高を記録した前回実績(14万2千人)からは約2割減少したが、悪天候と現下の経済状況を考慮すれば上々の出来と言える。商談に関しても、多くの出展者から、「今回は前回より中身の濃い商談が多かった」等、受注増加を期待させる来場者の質の高さを評価する感想も多く聞こえ、成功裏の内に閉会した。

(1)現状(表508-1)建設機械とは、土木・建設業等において土砂の掘削、

運搬などを行う機械であり、トラクタ、油圧ショベル、建設用クレーン、道路機械、高所作業車など用途に応じて様々な建設機械に分類される。

我が国の建設機械の出荷額は、2010年度は1兆9,630億円である。そのうち、油圧ショベル(ミニショベル含む)が9,354億円(全体の47.7%)、トラクタが2,412億円(全体の12.3%)となっている。

2009年度の国内出荷額は、民間設備投資の減少等により4,576億円であったが、2010年度は、民間設備投資が持ち直し、5,110億円となった。

輸出は全世界的に好調な海外需要にけん引されて2005年度に初めて1兆円を超えた。この傾向は2008年度まで継続したものの、2008年9月以降の世界金融危機の影響により2009年度の輸出額は8,046億円となった。2010年度は中国をはじめとしたアジア諸国や資源開発国の需

8.建設機械産業 要が増加するとともに、北米や欧州が回復したことから、1兆4,520億円となった。

我が国を含む世界の有力建機メーカーとしてキャタピラー(米)、小松製作所(日)、日立建機(日)、Volvo グループ(スウェーデン)、CNH グローバル(オランダ)、ディア(米)などが挙げられる(表508-2)。

我が国では、狭い場所での工事が多いことから比較的

表508-1 我が国建設機械産業の受注額、従業者数、     輸出額及び輸入額の推移

10年度 00年度

出荷額(億円) 19,630 13,102

従業者数(千人) 13 15

輸出額(億円) 8,753 3,744

輸入額(億円) 795 390備考:1. 従業者数は暦年の数値を記載。   2. 上記は、土木建設機械、鉱山機械、トラクタ及び破砕機、摩砕機、

選別機の値を合計したもの。資料: 財務省「貿易統計」、経済産業省「機械統計年報」、日本建設機械

工業会統計

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表508-2 我が国建設機械メーカーの世界における位置付け

企業名 国 部門別売上高 部門営業利益 部門営業利益率 ROAキャタピラー 米国 非公表 非公表 - -

コマツ 日本 15,312 1,953 12.8 5.8日立建機 日本 6,791 394 5.8 2.1

VOLVO グループ スウェーデン 6,457 741 11.5 2.3ディア 米国 3,705 119 3.2 5.6

CNH グローバル オランダ 2,946 351 11.9 2.8備考:1. 部門別売上高、部門営業利益は、建設機械部門のみ   2. 全社10年暦年データ(ただし、ディア社は2009年11月~2010年10月)   3. 換算レートは、1US$=100円、1SEK =12円、1€=110円   4. 部門別営業利益率は、建設機械部門における営業利益の割合資料:各社公開資料から経済産業省作成

場所をとらず1台で様々な作業を行える建設機械の需要が高く、油圧ショベルに関する技術が発達した。一方、米国では広い場所での工事が多いことからトラクタに関する技術が発達した。

また、我が国には、アイチコーポレーション(高所作業車)、酒井重工業(締固機械)、タダノ(ラフテレーンクレーン、トラッククレーン)など特定分野に強い企業が存在する。

建設機械業界は、以前は欧米メーカーからの技術提供を受ける形の提携があったが、最近では、国内メーカーが海外メーカーに技術供与する形の提携に変わってきており、また、クレーン部門などでは国内メーカー同士の連携も徐々に見られるようになってきている(図508-3)。

2011年3月の東日本大震災では、主要メーカーの工場が被災した他、協力企業の被災や、オイルシール等の油圧機器関連部品やエンジンなど部品調達難に伴い、一時的に生産に影響が生じたものの、その影響は比較的軽微であり、4月中におおむね復旧している。

今後は震災の復興需要が見込める一方で、電力需要の抑制による影響が懸念される。

(2)我が国建設機械産業の強みと弱み①強み

我が国建設機械メーカーは、中小型建設機械の競争力が高い。特に油圧ショベルに関しては、我が国建設機械メーカーが、世界の5~6割のシェアを占め、我が国で設計された機種で見ると8~9割を占めると推定される。

また、我が国建機メーカーは、技術的に難しく複雑な油圧システムを組み込んだ高性能かつ高品質の製品を供給している。加えて、設計や素材などの変更・多様化などのユーザーニーズにもきめ細かく対応する能力が高いほか、保守・補修などのアフターサービスも充実している。さらに、品質面、サービス面では韓国、中国のメーカーよりも優位性を持っているほか、価格面で欧米メーカー

と比較しても競争力を有している。

②弱み国内の公共事業の縮減などにより建設投資が近年は減少

傾向にある。さらに、市場縮小により建設機械の主要ユーザーである建設業者間の競争が激化しているため、建設機械メーカー間の価格競争は依然として厳しい状況にある。

(3)世界市場の展望建設機械の主要市場のうち国内市場については、工事

量の代表的な指標となる建設投資見通しにおける2010年度の建設投資は2年連続減少の前年度比3.0%減の41.1兆円となる見込みだが、2011年度は東日本大震災からの早期復旧等に係る建設投資が見込まれることから、前年度比5.1%増の43.2兆円となる見通しである。

一方で建設機械の出荷動向については、国内向けの出荷は2008年9月以降の世界金融危機の影響を受け、10月以降出荷額が前年度比で2けたの減少となり、2009年度は前年同期比66%の4,576億円となったが、2010年度は、アジア、中国など新興国を中心に油圧ショベルやトラクタなどの需要が増加し、前年同期比112%の5,110億円となった。

(4)我が国建設機械産業の展望と課題①今後の競争力強化に向けた対応

技術面では、これまでの省エネ対策、耐久性向上などに加え、排出ガス規制、騒音対策、安全対策などが求められてきており、これらの課題を着実に解決していくことが、世界市場においての競争力確保の原動力となる。省エネ対策や排出ガス対策として、ハイブリッド建設機械の開発を各メーカーで進めているところである。また、2011年10月から建設機械(オフロード車)に対する次期排出ガス規制が開始されることもあり、後処理装置の導入など、排ガス対策に向けた技術開発が進められている。

付 論

主要製造業の課題と展望

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ど東アジアを中心としたアジア市場での市場開拓に更に取り組んでいく必要がある。

特に、近年経済成長が著しいインドの建設機械市場は、今後伸びていくことが見込まれ、インド市場への参入について取り組んでいくことが重要である。また、ロシアも広大な国土を持っており、今後需要が大きく増加すると考えられる国の1つで、各メーカーが今後参入していく余地は大きい。

②東アジア、ロシア等を中心としたグローバル戦略我が国建設機械産業にとって中国を中心とするアジア

市場は、引き続き重要かつ有望な市場であり、油圧ショベル分野を中心として性能面から日本製品の評価が高い。しかし、一部の他国建設機械メーカーが、中国向けに低価格製品の輸出を増大させており、日本メーカーとしては、最適な生産体制の構築、アフターサービスの充実な

図508-3 建設機械産業界における提携状況

20%

住友重機械工業

生産・購買分野で提携

北・中南米の販売事業統合

世界第1位 (4 兆2,588億円)

50%

約53%

80%

100%

約71%

国内第4位 (3,131億円)

国内第2位(世界第4位) (6,791億円)

国内第3位 (売上高非公表)

国内第5位 (1,412億円)

世界第5位 (6,457億円)

世界第7位 (3,705億円)

ボルボ CE (スウェーデン)

ディア(米)

キャタピラージャパ

ン(14.3%)

コベルコ建機 (6.8%)

住友建機 (4.0%)

国内第1位(世界第2位) (1 兆5,312億円)

コマツ (33.1%)

50%

資本提携

販売提携

世界第9位 (2,946億円)

CNH グローバル(蘭)

出資 提携

社名 (国内シェア) 建機メーカー

2002 年7月設立日立住友重機械 建機クレーン(1.0%)

世界5大グループ

日立建機(17.5%)

フィアットグループ(伊)

キャタピラー (米)

三菱重工業

日立製作所

神戸製鋼所

コベルコクレーン (1.9%)

100%

2004 年 4 月設立

クレーン部門分社

備考:企業名の下段は、2010年(歴年)の連結売上高。日本企業は、建設機械部門以外の売上高を含む。資料:各社公開資料及び業界資料等から経済産業省作成

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コラム

建設機械の盗難は減少傾向建設機械は、高額商品でありながら屋外で保管せざるを得ないことが多いことから、相次ぐ盗難に悩まされて

いたが、このところ減少傾向にある。1996年に265台だった国内の盗難台数は、2001年には1,511台に増えた。盗難された建機は、海外に不正輸

出されたり、犯罪に使われたりするケースもある。一時期多発した、銀行ATM機が盗難建機により破壊され強奪された事件は、ニュースでも大きく取り上げられた。

さらに、2008年末頃から建機本体の盗難に加え、油圧ショベルの油圧ポンプ・走行モータ・電子制御装置など特定の部品が集中的に盗難の被害に遭う事件が発生しているが、これらの修理費は高額であり、ユーザーにとって非常に重い負担となっている。

他方、盗難防止対策として、多種類キーや電子式盗難防止装置やGPSによる機械所在地の確認に有効な追跡装置などの開発と製品への標準装備化を推進したところ、こうした対策が奏功して、盗難建機の台数は2001年をピークに減少傾向にある。また、2010年には警察による全国一斉のヤード(建設機械を分解し、コンテナに収める作業場)の摘発が実施されたことを受け、2010年の盗難件数は420台まで減少した。

(1)現状重電産業は、国内外の電力産業などに用いられる発電・

送変電設備及び産業用電気機器を供給する我が国の基幹産業である。

1990年代中頃までは、国内電力産業の定期的な設備投資や公共投資などにより一定規模の発注量があったが、電力自由化の下での設備投資効率向上への取組や公共投資の削減などにより電力産業及び官公庁の需要は減少傾向で推移している。特に、国内の主要電力会社の2007年度の設備投資は約1.9兆円であったが、これは1993年の設備投資額(ピーク時)の半分以下の水準であり、全体としての生産規模は大きく減少してきた。一方、近年、経済活動の活発化するアジア諸国での電力需要の高まりの中で、輸出額は2004年度以降2007年度まで順調に増加している

(表509-1)。特に中国、韓国、台湾、タイなどのアジア諸国向けに輸出額は急激に伸びてきており、2001年度以降6年間でアジア向けの輸出額は、約0.7兆円(2001年度)から、約1.4兆円(2007年度)とほぼ倍増している。

なお、2009年については、世界的な経済危機により国内外の経済が縮小し、産業用電気機器を中心に国内の設備投資の抑制に加えて輸出にも勢いが無くなり、生産は大幅に落ち込み、生産額は3兆809億円、輸出額は1兆8,269億円となった。

2010年は、世界的に景気後退した2009年から反転し、生産額は3兆2852億円、輸出額は2兆1205億円となっ

9.重電産業 た。生産額は、国内の景気が徐々に回復傾向に戻ったことにより、僅かながらではあるがプラスに転じた。輸出額の伸びは、全体としては、20%弱の伸びを示しており、2009年には大幅なマイナスであったアジア向けで増加に転じたことが、プラス要因となっている。

なお、東日本大震災によるサプライチェーンへの影響は、一部の部素材では入手しにくいなどの状況はあったが、流通在庫等での対応などで、予想より影響が少なかった。

(2)我が国重電産業の強みと弱み①強み

我が国には、高度な技術ニーズに応えられる高い技術力・製品開発力を有した企業が多い。具体的には、発電分野では、超々臨界発電や石炭ガス化複合発電(IGCC)、CO2分離技術など、世界最高レベルの発電効率と低炭素化が強みであり、また、予防保全等の運転・管理ノウハ

表509-1 我が国重電産業の生産額、従業者数、     輸出額及び輸入額の推移

10年 00年

生産額(億円) 32,852 36,195

従業者数(千人) 112 128

輸出額(億円) 21,205 17,054

輸入額(億円) 8,114 7,358資料: 生産額は経済産業省「生産動態統計」、従業者は経済産業省「機械

統計(労務統計)」、輸出額及び輸入額は財務省「貿易統計」

付 論

主要製造業の課題と展望

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コラム

高効率モータのトップランナー規制導入に向けてモータ(三相誘導電動機)は、国内で毎年1千万台弱出荷されており、1億台超もの台数が国内にて普及してい

る。これらのモータの多くは、ポンプ、圧縮機、送風機を始め様々な産業用機械において使用されており、我が国における産業用の電力消費量の約75%を、我が国のエネルギー消費量の相当量をモータが消費している。

一方、モータに関しては、欧米では高効率化が進んでいるのに対して、我が国では、インバータの導入促進や負荷低減の取組が優先され、また、ロシアやインドと並びモータ単体に対する効率規制が取られておらず、高効率化が進んでいないのが現状。

仮に、現在普及しているすべてのモータが高効率のものに転換した場合の効果を試算すると、年間155億 kWhの省エネ、約500万 t - CO2の CO2の削減が期待される。

我が国における産業部門の更なる省エネ・低炭素化を図るためにも、モータを省エネ法のトップランナー基準の対象機器として追加することとし、その基準策定のための検討を行うこととしている。

加。これに伴って、石炭火力の発電設備容量も2030年までに現在から倍増すると見込まれている。

また、発電・送配電分野における市場規模を見ると、現在から2030年までの間に、全世界の電力セクターで約14兆ドルの投資が必要とされ、中国市場で約3兆ドル、インド市場で1.3兆ドル、ASEAN も6千億ドルと、日本の5千億ドルを大きく上回ることが見込まれている(出典:IEA World Energy Outlook 2009)。

(4)我が国重電産業の展望と課題①今後の競争力強化に向けた対応

地球規模での環境配慮が国際的にも求められているなか、近年、途上国においても、資源制約や環境問題から高効率等の技術を評価する動きがあり、我が国重電産業が持つ省エネルギー、環境対策に関する高い技術の活用が期待される。このため、例えば、発電分野では、高い製造技術力や優れた運転・管理ノウハウを活かした事業に重点を置いて、海外展開することが重要であり、日本の強みを顕在化させるための相手国への働きかけや公的金融支援の強化等を通じた日本企業の海外展開を支援する取組が必要である。

②アジアを中心としたグローバル戦略成長するアジア市場に参入していくためには、現地ユー

ザーのニーズに的確に対応したものづくりを行っていくことが重要である。そのためには、我が国メーカーにおいても更なる現地化を進め、現地ニーズへの適合とコスト競争力の強化を戦略的に図っていくとともに、知的財産権の保護、技術流出防止対策などに配慮することが必要と考えられる。

ウにより、こうした高効率・高稼働プラントを長期にわたって維持できるところに強みを有している。また、送配電分野では、世界最高品質の系統制御技術による高い系統信頼度、高効率・大容量の超高圧送電技術や変圧器のコンパクト化などに強みを有している。

②弱み我が国重電産業は、欧米企業に比べて海外展開が遅れ

ており、海外シェアの獲得に苦戦している。特に、欧米企業が現地企業へのライセンスや合弁等の協業や、現地調達、現地雇用等のローカライゼーションを先行して推進してコスト競争力を高めており、一方、中韓企業は、安価な人件費等を背景とした圧倒的な価格競争力を有しており、相対的に日本企業は高い品質と技術力を有しているもののコスト競争力が弱く、十分に強みを発揮できていないというのが現状である。

このため、例えば、発電分野では、発電ボイラーや蒸気タービンの世界シェアの半分以上を中国企業が、ガスタービンの世界シェアも80%以上を欧米企業が有しており、また、送配電分野でも、欧州企業が世界シェアの半分を占めるなど、日本企業のグローバル化は、発電、送配電ともに苦戦を強いられている状況にある。

(3)世界市場の展望国内市場は、電力需要の将来的な伸びの鈍化や公共事

業への投資抑制などにより設備需要の拡大は期待できない状況にある。

一方で、世界の発電電力量は2007年の20兆 kWh から2030年には34兆 kWh に7割増加する見通しであり、このうち石炭火力は8兆 kWh から15兆 kWh と9割近く増

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※三相誘導電動機の年間消費電力量:5,430億 kWh(うち、産業用3,620億 kWh)   電力消費量全体(電力10社の販売量+自家発電 = 約1兆 kWh)の55%に相当   産業用電力量(約4,850億 kWh)の75%に相当

※省エネ効果と CO2削減効果:年間155億 kWh、約500万t- CO2

   我が国電力消費量全体の約1.5%に相当   我が国温室効果ガス排出量(12億8,200万 t)の約0.4%に相当    (国内に普及している三相誘導電動機(約1億台)がプレミアム効率(IE3)に転換した場合の省エネ効果

を試算)

資料:資源エネルギー庁(平成21年度エネルギー消費機器実態等調査報告書)

(1)現状(表510-1)分析機器は、物質固有の組成、性質、構造、状態など

を計測するための機械器具・装置で、科学研究、材料開発、品質管理、環境計測など、製造業からサービス業に至るまで広範な分野で用いられている。最近では医療や食品検査など、安全・安心な社会を維持するためにも活用されている。1機種当たりの年間生産台数は、注文に応じて設計するような特殊かつ高価な機器で数台、多くてもハンディタイプのような安価な分析機器は数万台であり、分析機器産業は多品種少量生産型である。

国内生産額は、日本経済の停滞により2001年度に一時減少したが、その後徐々に増加し、2007年度は4,406億円(対前年度比103.1%)と過去最高となった。特に輸出は全世界的に好調な海外需要に牽引され、2,260億円(対前年度比108.1%)と、初めて生産額の半分を超えた。しかし、2008年度の秋以降、世界的な景気後退は自動車、半導体など主要産業の多くを減速させ、特定の産業分野の動きに左右されにくい分析機器業界においてもその影響が出ている状況である。2009年度生産額は3,659億円

(対前年度比87.0%)、輸出額は1,885億円(対前年度比89.2%)となり、昨年に引き続き前年比を割った。しかし、2009年秋以降、半導体産業などで、一部受注の回復が見られ、2010年度第3四半期までの生産額は2,748億円(対前年同期比115.3%)、輸出額は1,600億円(対前年同期比118.2%)であった。2008年度の秋以前までには及ばないものの、輸出が比較的堅調に回復し、全体としても回復基調であることから、来年度に向けても生産額は徐々に回復していくことが期待される。

東日本大震災の影響については、一部の企業で甚大な

10.分析機器産業 被害があったものの、分析機器産業界全体としては、それほど被害はなかった。

世界の有力分析機器メーカーは、日立ハイテクノロジーズ、島津製作所、堀場製作所などの日本メーカーに加え、サーモフィッシャー・サイエンティフィック(米)、アジレントテクノロジー(米)、ベックマン・コールター(米)などが挙げられる(表510-2)。

現時点では、先進国である日米が有力メーカーとなっているが、昨今の中国、インドを中心とするアジア地域の成長は著しく、技術開発力ではいまだに劣るとしても将来においては、わが国の分析機器産業にとって大きな競争相手となってくると思われる。

(2)我が国分析機器産業の強みと弱み①強み

我が国分析機器産業は、粒子光学設計のエンジニアリング技術や光学素子の量産技術など得意とするコア技術を持ち、またこれを市場に適応させる応用技術を有している。このため、電子顕微鏡、自動車用排ガス分析装置などの各分野において、世界でも有数の競争力のある製品を持つ企業が存在している。また、装置に対してユーザーニーズに

表510-1 我が国の分析機器産業の生産額、従業者数、     輸出額及び輸入額の推移

10年度 00年度

生産額(億円) 3,942 3,146

従業者数(千人) 15 12

輸出額(億円) 2,180 1,126

輸入額(億円) 745 713資料: 生産額、従業者、輸出額は「(社)日本分析機器工業会統計」、輸

入額は財務省「貿易統計」

付 論

主要製造業の課題と展望

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じ、官公庁・大学市場も低迷したことにより、ほぼ全ての分類において大きく減少したが、半導体分野の回復をはじめとして直近の受注状況は好転の兆しを見せており、2011年度も回復基調が続くことが期待される。世界市場は、中国において食品の安全性や環境関連の需要が拡大し、欧米ではバイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどの分野で先端技術開発向けを中心にラボ用分析機器の需要が拡大するとともに、環境分析、食品安全性、健康管理向けへの簡易かつ極微量分析が可能な分析機器への需要拡大が見込まれる。

(4)我が国分析機器産業の展望と課題①今後の競争力強化に向けた対応

世界の分析関連企業は、企業買収などを中心とした経営体制の強化改善や、製品の相互供給などの企業間連携による競争力強化に向けた取組を行っている(表510-3)。

国内各社にあっては、企業買収を行うとしても技術力

対応したきめ細かな保守サービスも充実している。一方、バイオ関連分野においては現状では欧米企業が

先行しているものの、DNA 解析とは様相が異なるポストゲノムの解析で、我が国が競争力を高める可能性を有しており、今後の展開が期待される。②弱み

欧米企業は、機器の性能・機能の技術的競争力だけでなく、分析を行う際の抽出・希釈などの前処理装置、その作業で必要となる試薬、検出したデータの解析処理に用いるソフトウェアそれぞれに強みを持っており、トータルサービスの提供を可能としている。また、分析機器の校正に必要な標準物質の開発や供給も進んでいる。この傾向は特にバイオ関連用途向けの機器で顕著であり、こうした分野における競争力の強化が我が国の課題である。

(3)世界市場の展望国内市場は、設備投資や研究開発需要が減速傾向に転

表510-2 世界における我が国分析機器産業の位置づけ

売上高順位 企業名 国 売上高(億円)

営業利益(億円)

営業利益率(%)

1 サーモフィッシャーサイエンティフィック 米国 8,631 1,012 11.7

2 日立ハイテクノロジーズ 日本 6,534 279 4.33 アジレント・テクノロジー 米国 4,355 547 12.64 ベックマン・コールター 米国 2,931 320 10.95 島津製作所 日本 2,527 163 6.56 バイオラット・ラボラトリーズ 米国 1,542 227 14.77 パーキンエルマー 米国 1,363 123 9.08 ウォーターズコーポレーション 米国 1,315 400 30.49 堀場製作所 日本 1,186 123 10.410 日本電子 日本 753 102 13.5

備考:1. 海外企業は2010年(暦年)の決算情報、国内企業は2010年度の決算情報を使用。   2. 売上高、営業利益(率)は、全社ベースの値による。   3. 換算レートは1ドル=80円にて換算。資料:有価証券報告書等のデータから経済産業省作成

表510-3 近年の分析機器産業界における再編等の動向

時期 企業名 事例

2008年10月 リガク X線分析装置製造の理学電機工業を吸収合併。

2009年8月 ベックマンコールター ベックマン・コールターがオリンパスの分析機事業部を買収し、日本ベックマンコールターに統合した。

2010年2月 ダナハー ダナハーが質量分析を得意とする AB SCIEX 及びバイオ分析を得意とするモレキュラーデバイスを買収。

2010年5月 アジレントテクノロジー アジレントテクノロジーが科学機器企業のバリアンを買収。2010年7月 オリンパス オリンパスが蛍光 X 線分析装置開発企業のイノベックスシステムズを買収。

2010年12月 サーモ・フィッシャー サーモ・フィッシャーがイオンクロマトグラフィーを得意とするダイオネクスを買収。

2011年2月 ダナハー ダナハーがバイオメディカル分野を得意とするベックマン・コールターを買収。資料:経済産業省作成

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強化や不得意分野の相互補完といった目的がその大勢を占めており、開発力、製品品質の強化により競争力を高めようという動きの方が主流となっている。

中長期的な取組としては、市場の拡大が期待される分野への迅速な新製品の投入が必須であるため、高感度・高分解能・高速高効率である分析や、抽出・濃縮といった前処理の自動化など、次世代の分析に求められる要素技術の開発を各社行っている。

②東アジアを中心としたグローバル戦略分析機器は多品種少量生産のものが多く、かつ、開発

生産には高度な技術力を要することから、クロマトグラフ、分光器など技術的に成熟しコスト競争力が支配的な一部の製品を除けば、開発・製造拠点は国内にとどまっている。中国などの東アジア諸国の地場企業が分析機器

に参入する事例も、現状ではこうした一部の限定的な分野に限られる。このためアジア市場においても日米欧からの供給が主となっているが、後発国の研究・開発力の伸びは急速であり、我が国の分析機器産業としてもなお一層の企業努力が求められる所である。

中国を始めとするアジア地域における分析機器の需要は、従来の製薬・食品・環境・大学分野に加え、自動車・半導体・石油化学等の分野でも伸びている。インドでは製薬、IT、自動車関連業界の成長が著しい。いずれの地域も近年日系企業の投資が増加しており、それに伴う分析機器の新規需要も増大が見込まれる。しかしながら、分析機器を取り扱える技術者や保守・補修を行うことができる技術者が不足しており、これらの人材をいかに育成していくかが更なる需要拡大に対応するための課題となる。

コラム

我が国分析機器産業における国際的な競争力について我が国の分析機器産業は国際競争力の強い産業分野である。2010年はその強みを生かし、分析・科学機器分野でアジアのハブとなる国際展示会「分析展2010/科学機器

展2010」を開催した。海外からの来場者も多数参加し、最新機器展示や関連技術情報を発信し、盛況裡に終了した。この合同展示会は(社)日本分析機器工業会と日本科学機器団体連合会の共催により2010年から開催されているもので2011年以降も継続して開催される。

また、「世界化学年」である2011年には、(社)日本分析化学会及び国際純正・応用化学連合の主催で、分析化学の分野では世界最大級の国際会議「ICAS2011」が5月に京都にて開催される。(社)日本分析機器工業会も共催団体としてシンポジウムや展示などを予定するなど、我が国の分析機器産業は、国内外の関係諸団体との関係を強化し、活発に国際交流を行なっている。

新成長戦略や産業構造ビジョン2010で掲げられている「グリーンイノベーション」や「ライフイノベーション」などを実現していく上で、分析機器は重要な役割を担っている。今後とも我が国の高い技術力を生かし、世界に貢献しつつ我が国の新たな発展を実現することを期待される。

(1)現状(表511-1)ロボットは、製造業の分野で生産財として利用される

産業用ロボットと、製造業以外の分野で活躍するサービスロボットに大別できる。

現在、産業用ロボットは、その多くが自動車製造での溶接、塗装、電子・電機機器製造での電子部品実装、半導体のウエハ搬送、組立などで稼働している。我が国ロボット産業は、主要ユーザーである自動車産業及び電子・電機産業を中心に、製造業の様々な分野における多様な

11.ロボット産業

表511-1 我が国ロボット産業の出荷額、従業者数     及び輸出額の推移

10年 00年

出荷額(億円) 5,570 6,403

従業者数(千人) 7.0 8.1

輸出額(億円) 4,076 3,226資料:(社)日本ロボット工業会調べ

付 論

主要製造業の課題と展望

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出荷額(億円) うち輸出額の割合(%)

資料:(社)日本ロボット工業会調べ

1008 09070605040302010094 95 96 97 98 999391 92

(億円) (%)

(年)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0

1,000

2,000

3,000

4,000

6,000

5,000

7,000

8,000

図511-2 我が国ロボット産業の出荷額及び輸出割合の推移

作業へと普及することにより、生産面、技術面とも世界トップレベルへと発展してきた。近年は、多軸系とセンサー系が進化し、一部で状況変化に対応する知能化も行われ、セル生産システムにおける組み立て作業などこれまでロボット化が難しかった作業も代替をはじめている。

総出荷額は、バブル崩壊後におおむね横ばいで推移した後、1990年代後半にデジタル需要による回復を見せたが、IT バブル崩壊で2002年には1993年以来の4,000億円を割ったが、国内外需要の復調により2006、2007年には7,000億円台まで回復した。しかし、米国の金融破綻に端を発した世界不況を受け、2009年の出荷額は3,000億円(前年比約53.8%減)となった。しかし、2010年は中国、韓国、台湾等の東アジア市場や、インド、ブラジル、ロシア等の BRICs など海外向け輸出が伸びたことから、約5,570億円(前年度比約85.7%増)となった(図511-2)。2011年は、旺盛な海外需要がある一方で、東日本大震災により、産業用ロボットの基礎部材であるベアリング、半導体、ケーブル等が入手困難となり、減産を強いられる事態となった。世界不況後の回復基調に水を差された格好となり、前年同期比の回復ペースが鈍化している。

一方、1990年代中頃から、ロボットの開発には新しい

動きが出てきている。従来、ロボットは工場内の省力化を図る機械として用いられ、基本的に人間の生活空間とは別の空間において使われていた。これに対し、介護・医療、清掃、警備、メンテナンス、農林水産業、災害救助など人間の生活により近いさまざまな分野でロボットを利用しようというサービスロボット分野での試みが、多用な主体によってなされている。労働力人口減少と超高齢化の時代を迎えるにあたり、ロボット技術による生産性向上や QOL

(生活の質)向上などへの期待が高まっている。

(2)我が国ロボット産業の強みと弱み①強み

国際的に競争力を有する自動車産業、電子・電機産業を始めとするユーザー産業からの厳しい要求に、アフターサービスを含めてきめ細かく対応し、絶え間なく技術開発に取り組んできた実績とノウハウの蓄積が、我が国ロボット産業の大きな強みとなっている。同時に、国内市場における激しい競争を経て、国際的な競争力も獲得している(表511-3)。

技術面では、マニピュレーション、移動技術など、特にハードウェア開発については世界一の技術開発力を有している。

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②弱み高度な知能ソフトウェアやネットワーク技術などの情

報通信技術を取り込んだロボットの開発については、欧米に一部先行されているとの指摘もある。また、最近のサービスロボットの開発については、欧米における軍事や宇宙産業などを背景とした開発やベンチャー企業による意欲的な取組と比較すると、産業用ロボットでは優位である我が国も積極的な取組が必要な状況にある。

(3)世界市場の展望産業用ロボットの国内市場については、少子高齢化の

進行による労働力不足やロボット技術の高度化による適用分野の広がりへの期待はあるものの、中長期的には飽和しているとの見方が強い。特に米国の金融破綻に端を発した世界不況の影響により、世界的な設備投資が大幅に冷え込んだことで、漸増傾向にあった市場が一気に縮小した。その後、2010年は中国、韓国、台湾等の東アジア市場や、インド、ブラジル、ロシア等の BRICs など海外需要に牽引されたことから、約5,570億円まで回復(図511-2)。我が国としては欧米市場とあわせ、これら新興市場における我が国ロボット産業の市場確保に向けて、販売拠点、メンテナンス等サービス拠点等の体制整備を積極的におこなっている。

一方、生活分野、医療・福祉分野、公共分野といったサービスロボットに対する国内外の潜在的需要は大きく、産業用ロボットとサービスロボットを合わせた国内市場規模は2020年に2.9兆円、2035年に9.7兆円との試算もある。国連欧州経済委員会(UNECE)及び国際ロボット連盟(IFR)の調査によると、水中用、医療用、農業用、家事用、教育用などの、従来の産業用ロボット以外のロ

ボットは、業務用・民生用合計で、2009年末時点では全世界で約864万台が保有されていると推測されるところ、2010年から2013年の4年間で、新たに約1,141万台の導入が見込まれるとされている。

(4)我が国ロボット産業の展望と課題①今後の競争力強化に向けた対応

ロボットの今後の需要は、従来の製造業分野に加え、医療・福祉、オフィス、家庭を対象とする生活分野、防災、警備などの公共分野、建設、農林畜産、物流、清掃など、多くの分野に拡大することが期待される。こうした社会ニーズに応えてロボットの活用範囲を拡大するためには、以下に挙げるような取組を行うことが重要である。

まず、安全性の確保などの制度基盤の整備が挙げられる。人間生活の中で、ロボットが安全に人間と共存するために、対人安全の技術や基準・ルールの整備に向けた概念整理や技術水準の形成及び事故が起きた際の責任と補償に係る仕組み、医療・福祉等の現行制度下における取扱いの整理など制度的な基盤の整備が必要である。

次に、メーカー、ユーザーの両方に対するロボット導入促進策である。今後は実証試験よりも一歩進め、実用化を前提にユーザーとメーカーとがロボットの役割・機能・周辺の環境・コストなどについて十分に分析と議論を行い、ユーザーが実際にロボットを導入して運用するまでを実現させる取組が必要である。この際、ロボット単体ではなくサービスの一環としてロボットを位置づけて提供する視点や、機能に見合ったコストの実現が非常に重要になってくる。

加えて、要素技術、システム化技術の開発によるロボットの更なる高度化が必要である。ロボットの活用範囲が

表511-3 世界における我が国ロボット産業の位置づけ

企業名 国 当該事業売上高(億円)

総売上高(億円)

当該事業営業利益(億円)

当該事業営業利益率

(%)

ROA(%)

川崎重工業 日本 1,403 12,269 223 15.9 1.9安川電機 日本 847 2,968 17 2.0 2.5

ファナック 日本 780 4,462 - - 11.9ヤマハ発動機 日本 1,998 12,941 191 9.6 1.9富士機械製造 日本 861 942 248 28.8 9.5

不二越 日本 426 1,348 5 1.2 3.3ABB スイス - 31,589 - - -

KUKA Roboter GmbH ドイツ [百万ユーロ]486 [百万ユーロ]1,079 [百万ユーロ]436 5 -備考:1. 当該事業売上高は、各社においてロボット事業を含むセグメント別売上高を記載(例:川崎重工業において、ロボット部門は、2010年4月より

「精密機械事業」に分類)   2. ROA =当期純利益/総資産で算出。   3. 川崎重工業、安川電機、ファナック、富士機械製造は2011年3月期、ヤマハ発動機は2010年12月期、不二越は2010年11月期連結決算、ABB 及

び KUKA は2010年(暦年)連結決算数値を記載。資料:各社公開情報から経済産業省作成

付 論

主要製造業の課題と展望

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260

コラム

プロセスイノベーションによる省スペース、省エネルギー化トヨタ自動車(株)は安全・快適に人と協働できる省エネロボットを自動車のスペアタイヤ積み込みラインに

適用した。従来ではスペアタイヤのような20kg を越える重量物の搬送、組み付けはパワーアシスト機を用いて人が組み付けるが、これをロボットにより自動化する場合、従来機構のロボットでは自重を支えるために使用するモータの出力が1500W といったキロワットクラスのモータが必要となる問題や、高出力のモータを持つロボットでは危険回避のため人を隔離する安全柵を必要とするといった問題があった。そこで同社ではロボットの駆動にバネによる本体自重保証機構を採用することによりモータの出力を80W に抑制し、飛躍的な使用エネルギーの削減や、安全柵なしに人と協調作業を行うことを可能とした。またロボットのどこに人がぶつかっても検知し、柔らかく制御する技術を開発、安全性を向上させ、作業者の安心感も高めた。これらの技術を応用することで女性や高齢者でも安心・快適に働ける生産環境をさらに作り出すことが期待される。

②東アジアを中心としたグローバル戦略中国を始めとするアジア諸国については、生産活動の

活発化(特に EMS(電子機器製造請負サービス)企業)の影響から、電子・電機産業向けを中心にロボット需要は伸びており、今後も堅調に推移する見込みである。アジアにおけるロボット需要の拡大に対応するため、これら地域における販売、ロボット据付、メンテナンス等を行うサービス拠点の整備が一層重要になっている。

広がることにより、ロボットの安全性、信頼性、利便性に係る技術的要求が、従来の産業用ロボットの場合に比べて格段に高くなると考えられる。人に対する安全性と親和性を確保するためには、ロボットの更なる知能化のほか、アクチュエータの小型軽量化、センサー技術及び認識技術の高度化、通信のセキュリティ確保など、要素技術の高度化が期待される。また、共通インフラとなる基盤技術としてハード/ソフトのモジュール化、標準化などによる、多様な主体がロボット開発に参加しやすい技術基盤づくりも有効と考えられる。

表512-1 我が国半導体製造装置産業の販売額、     従業者数、輸出額及び輸入額の推移

09年度 99年度

販売額(億円) 6,528 11,302

従業者数(千人) 17 -

輸出額(億円) 5,131 6,639

輸入額(億円) 733 1,643備考:従業者は「機械統計年報」から、2009年のデータを利用資料:(社)日本半導体製造装置協会統計

(1)現状(表512-1)半導体製造装置産業は、半導体の製造に必要となる各

種装置を製造する産業である。半導体の製造工程は複雑かつ高度な技術を必要とし、製造工程ごとに多種多様な装置が存在しており、我が国では、装置ごとに生産している企業が異なっている。

世界市場におけるシェアは、米国製造装置メーカーが約47%、我が国製造装置メーカーが約33%と両国が突出しており、その他は一部の欧州製造装置メーカー以外には主な製造装置メーカーは存在していない(図512-2、表512-3)。

半導体製造装置産業の業況は、一般に半導体産業の設備投資動向に左右される傾向がある。2009年度の日本製半導体製造装置の販売高は、世界経済の低迷等により半

12.半導体製造装置産業 導体デバイスメーカーが設備投資を凍結・先送りしたことから、半導体製造装置産業の業況は大きく後退し、年度後半で回復の兆候が見られたものの、前年度比17.9%減の6,528億円となった。2010年度は、世界半導体の市

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況回復に伴い、半導体デバイスメーカーの設備投資が再開され、半導体製造装置市場も大幅な回復が期待される。2011年度からは継続的な成長局面に入ると思われる。

我が国製造装置メーカーの装置の販売先は、比較的外需比率も高くグローバルに事業を展開しているものの、依然として国内市場にも依存している。また、外需の内訳に関し、近年輸出は、韓国や台湾及び中国を始めとするアジア向けが伸びてきている傾向がある。

2011年3月に発生した東日本大震災により、東北地方を中心に東京エレクトロン、日立ハイテクノロジーズ、ニコン、キヤノンなどの多くの半導体製造装置メーカーが被災し、インフラの停止や建物、工場設備の一部損傷により一時的に操業停止となったが、その後の復旧作業により3月下旬から5月上旬にかけて生産が再開された。

(2)我が国半導体製造産業の強みと弱み①強み

半導体製造装置には幅広い技術が必要になるが、我が国半導体製造装置産業は、米国と並び高い技術力・製品開発力を有している。これは我が国半導体デバイスメーカーとの間で構築されたものであり、例えば、量産工程での使用結果を製造装置にフィードバックし共同で評価実験を行うなど、密接な関係によるところが大きい。加えて、我が国は、ウェハ、薬品、ガスなどの部品・材料産業、及びクリーンルーム、搬送装置などの設備産業など、半導体産業全体として分厚い産業集積を形成しており、これらが総体として競争力を有している。

また、製造装置別に見ても、塗布・現像装置、洗浄装置、

メモリテスタなど、我が国製造装置メーカーが世界市場においてトップシェアを獲得しているケースが少なくない。

②弱み我が国主要製造装置メーカーの売上高に対する研究開

発費比率が、海外製造装置メーカーと比べて概して低い。半導体市場において、DRAM(記憶保持動作が必要な随

資料:VLSIリサーチ

AMAT(米)       東京エレクトロン(日)    ASML(蘭)ニコン(日)         KLA-Tencor(米)     Lam(米)大日本スクリーン製造(日)   ASMI(蘭)        Novellus(米)テラダイン(米)      その他

21.3%

13.7%

13.4%

9.1%

7.8%

7.1%

4.8%

4.1%

3.4%

3.3%

12.0%

図512-2 半導体製造装置産業界の売上高シェア(2009年)

表512-3 世界における我が国半導体製造装置産業の位置付け

順位 企業名 国 部門売上高 企業全体売上高 営業利益 営業利益率 研究開発費

1 Applied Materials 米国 4,508 8,116 797 9.8% 972

2 東京エレクトロン 日本 2,624 4,186 ▲22 ▲0.5% 5413 ASML オランダ - 5,139 1,165 22.7% 5974 ニコン 日本 1,501 7,855 ▲139 ▲1.8% 6035 KLA - Tencor 米国 - 1,693 292 17.3% 3066 Lam Research 米国 - 1,984 322 16.2% 2987 大日本スクリーン製造 日本 1,009 1,641 ▲140 ▲8.5% 1168 ASMI オランダ - 1,394 126 9.1% -9 Novellus Systems 米国 - 1,106 215 19.4% 14310 TERADYNE 米国 - 1,319 311 23.6% -

備考:1. 売上順位は、VLSI リサーチ社の2009年半導体製造装置売上高順位を採用   2. 部門売上高は、各社ごとに半導体製造装置が含まれるセグメントの売上高で、東京エレクトロン、大日本スクリーン製造は半導体製造装置のみで、

ニコンは FPD 装置も含む。AMAT の部門売上はサービス含まず。   3. 部門売上高以外は、全社ベースの数値。   4. 上記数字は下記の決算期のレートに基づき記入(基準外国為替相場及び裁定外国為替相場より算出)。    ① Applied Materials は2010年10月決算、②東京エレクトロン、ニコン、大日本スクリーン製造は2010年3月決算、③ ASML、Novellus

Systems、TERADYNE は2010年12月決算、④ KLA - Tencor、Lam Research は2010年6月決算資料:VLSI リサーチ社及び各社発表資料から経済産業省作成

付 論

主要製造業の課題と展望

Page 15: 工作機械産業 (2)我が国工作機械産業の強みと弱 …...3 ギルデマイスター ドイツ 2009年12月 1,409 6 4 トルンプ ドイツ 2010年6月 1,402 87 5

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(4)我が国半導体製造産業の展望と課題①今後の競争力強化に向けた対応

半導体デバイスの急速な微細化・高集積化、ウェハの大口径化、銅配線・低誘電率絶縁膜などの新材料利用などに対応するため、ますます高度な技術が要求されており、積極的な研究開発の取組が必要となっている。一方、そのための研究開発コストが増大しつつあり、製造装置メーカーは各プロセス装置分野において高いシェアを有さなければ収益が維持できない状況にある。

我が国製造装置メーカーの世界市場におけるシェア拡大のためには、半導体デバイスメーカーを始めとする他企業との連携を一層強化し、研究開発費や実用化リスクを分担しながら得意技術を持ち寄って新たな装置開発に取り組んでいくような戦略的な提携関係を構築していく必要がある。また、現状の優位性に楽観することなく、半導体デバイスメーカーとの緊密な連携を維持・強化し、今後とも高いアドバンテージを維持する必要がある。

②東アジアを中心としたグローバル戦略我が国製造装置メーカーの輸出比率が年々高まっている

中で、特に近年、韓国や台湾及び中国を始めとしたアジア市場の重要度が増してきている。こうした中で、これら東アジア地域において、独自の製造装置産業の育成を国策として講じていることから、我が国においてもより一層の技術開発や徹底した知的財産管理などを講じる必要がある。

時書き込み読み出しメモリ)などのメモリから MPU(超小型演算処理ユニット)などのロジック(演算などデータを処理する IC)への投資が増加傾向の中で、これに応える検査装置等における我が国製造装置メーカーのシェアは低い傾向にあり、今後、こうした分野における我が国製造装置メーカーの競争力の強化が必要となっている。

また、我が国製造装置メーカーはプロセス装置ごとに競争力を持っているのに対し、海外大手製造装置メーカーは、製造工程を幅広くカバーし製造ラインの一括受注をするビジネスモデルを構築している。

(3)世界市場の展望2009年度における半導体製造装置の日本市場は、世界

経済の低迷等により半導体デバイスメーカーの設備投資が凍結・先送りされたことから、前年比61.7%減の2,130億円と大幅な減少を記録した。

また世界市場においては、年度後半から回復の兆候が見られたものの、前年度に引き続き低迷し、前年比7.9%減の20,301百万ドルとなった。地域別販売高シェアは、台湾が31.0%と最大の仕向地となり、次いで韓国が20.8%、北米が15.7%、日本が11.4%となった(図512-4)。

今般の世界的な半導体需要の低下を受け、我が国半導体デバイスメーカーによる統合などの業界再編の動きもでてきており、半導体製造装置業界にとっても大きな影響が生じるものと見込まれる。

資料:(社)日本半導体製造装置協会、SEMI、SEMIジャパン

09080706050403020100999897

販売高

対前年同期比

(百万ドル) (%)

(年度)

▲80

▲60

▲40

▲20

0

20

40

60

80

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000日本 北米 欧州 韓国(1996~)台湾(1997~) 中国(2004~) その他 前年同月比

表512-4 半導体製造装置産業の市場規模推移